特許第6236513号(P6236513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236513交換用コンクリート製まくらぎの施工方法と交換用コンクリート製まくらぎ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6236513
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】交換用コンクリート製まくらぎの施工方法と交換用コンクリート製まくらぎ
(51)【国際特許分類】
   E01B 7/22 20060101AFI20171113BHJP
   E01B 3/28 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   E01B7/22
   E01B3/28
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-217744(P2016-217744)
(22)【出願日】2016年11月8日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】502316913
【氏名又は名称】大和軌道製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】森 敏博
(72)【発明者】
【氏名】唐須 崇
(72)【発明者】
【氏名】小西 勝成
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−248648(JP,A)
【文献】 特開2007−297886(JP,A)
【文献】 特開昭55−023271(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1700954(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 7/22
E01B 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐部に応じて交換用コンクリート製まくらぎを施工する施工方法であって、
前記分岐部における既設まくらぎを除去し、
固定部材が設置されていないコンクリート製まくらぎ本体を前記既設まくらぎを除去した分岐部の所定位置に配置し、
前記分岐部において前記コンクリート製まくらぎ本体に前記固定部材を適切に配置できる固定位置に固定穴を形成し、
前記固定穴に前記固定部材を設置することで前記分岐部に応じた位置に前記固定部材を設置する、
ことを特徴とする交換用コンクリート製まくらぎの施工方法。
【請求項2】
前記コンクリート製まくらぎ本体の床板固定面の下方における該コンクリート製まくらぎ本体の側面を、隣接する交換用コンクリート製まくらぎと連結して一体化する、
請求項1に記載の交換用コンクリート製まくらぎの施工方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の交換用コンクリート製まくらぎの施工方法において使用する交換用コンクリート製まくらぎであって、
前記固定部材の配置位置を除く範囲に補強部材を配置したブロック状のコンクリート製まくらぎ本体を備え、
前記コンクリート製まくらぎ本体は、前記固定部材の配置可能な範囲に目印を有している、
ことを特徴とする交換用コンクリート製まくらぎ。
【請求項4】
前記コンクリート製まくらぎ本体は、床板固定面の下方における該コンクリート製まくらぎ本体の側面に、隣接する前記コンクリート製まくらぎ本体と連結する連結用固定部を備え、
少なくとも2本の前記コンクリート製まくらぎ本体は、前記連結用固定部が連結部材で連結されている、
請求項3に記載の交換用コンクリート製まくらぎ。
【請求項5】
前記コンクリート製まくらぎ本体に前記固定部材を配置し、
前記固定部材で前記コンクリート製まくらぎ本体に床板の長辺方向両端部を固定し、
前記床板と前記固定部材との接触部は、前記床板の中心を円の中心とする円弧状部に形成され、前記床板が前記固定部材の間で該床板の中心を中心として水平方向の面内で回動可能に構成され、
前記固定部材は、前記床板を回動させた状態で固定できるように構成されている、
請求項3または4に記載の交換用コンクリート製まくらぎ。
【請求項6】
前記床板は、長辺方向に差込式ヒータの挿入部を有し、
前記挿入部は、前記床板の長辺方向一端部に開口を有している、
請求項5に記載の交換用コンクリート製まくらぎ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐部における木まくらぎなどと交換する交換用コンクリート製まくらぎの施工方法と、その交換用コンクリート製まくらぎに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道用の軌道部材であるまくらぎには、木まくらぎ、合成まくらぎ、コンクリート製まくらぎ(以下、コンクリート製まくらぎとして、PCまくらぎ(プレストレストコンクリートまくらぎ)を例に説明する)などがある。近年の軌道では、ロングレール化などにより、高強度で長寿命化が図れるPCまくらぎが用いられている。
【0003】
一方、分岐部におけるまくらぎは、長さが多種多様であるとともに、現地において、本線に沿って延びる基本レールと、分岐線へと導くトングレールの位置関係や曲率などの仕様から、それぞれのレールを固定する固定部材の取付位置を決める必要がある。このため、分岐部においては、一般的に現地で固定部材の取付位置を決めることができる木まくらぎや合成まくらぎが使用されている。そして、分岐部において基本レールやトングレールを適切な位置に固定できるように、固定部材の取付位置が決められて固定される。
【0004】
なお、分岐部に関する先行技術として、分岐器用床板の長辺方向両端面を床板中心を円の中心とする円弧形状に形成し、この床板両端の円弧面に当接する床板締結装置の面を同一円弧面に形成した締結構造がある(例えば、特許文献1参照)。この締結構造では、床板を円弧面に沿って回動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−257001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、分岐部においては、分岐器の分岐線側はレールが曲線であるため、列車が通過する際に大きな横圧が発生する。このため、レールを締結している床板やタイプレートなどに大きな負荷がかかり、木まくらぎや合成まくらぎを使用している場合は、その負荷の繰り返しで床板やタイプレートが木まくらぎや合成まくらぎに食い込むことがある。そして、床板やタイプレートがまくらぎに食い込むと、レールの高さに狂いを生じるため、まくらぎを交換する必要がある。
【0007】
しかし、分岐部においてまくらぎを交換するためには基本レールとトングレールを含む多くの部材を分離して除去する必要があり、作業が複雑で多くの時間を要する。したがって、分岐部におけるまくらぎの交換間隔を長くすることが望まれている。
【0008】
この対策として、例えば、分岐部に高強度で長寿命化が図れるPCまくらぎなどのコンクリート製まくらぎを用いることが考えられる。しかし、コンクリート製まくらぎは工場において、予め金型内の所定位置にインサートやPC鋼材などの補強部材を配置してコンクリートで固めて製造される。このため、分岐部における多種多様なまくらぎとして用いるには、その分岐部に適した位置にインサートを配置した多種多様のコンクリート製まくらぎを製造する必要があり、多くの金型が必要になり、生産効率が非常に悪くなる。
【0009】
なお、上記特許文献1に記載の締結構造では、分岐部における基本レールとトングレールの角度に応じて床板を回動させることである程度の調節はできるが、多種多様の分岐部における全ての仕様に対応するためには複数種類が必要であり、この場合も生産効率が悪くなる。
【0010】
そこで、本発明は、分岐部におけるまくらぎをコンクリート製まくらぎに交換することが効率良くできる交換用コンクリート製まくらぎの施工方法と、その交換用コンクリート製まくらぎを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る交換用コンクリート製まくらぎの施工方法は、分岐部に応じて交換用コンクリート製まくらぎを施工する施工方法であって、前記分岐部における既設まくらぎを除去し、固定部材が設置されていないコンクリート製まくらぎ本体を前記既設まくらぎを除去した分岐部の所定位置に配置し、前記分岐部において前記コンクリート製まくらぎ本体に前記固定部材を適切に配置できる固定位置に固定穴を形成し、前記固定穴に前記固定部材を設置することで前記分岐部に応じた位置に前記固定部材を設置する。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「固定部材」は、「ショルダー」、「インサート」などの部材を含む。
【0012】
この構成により、分岐部における基本レールやトングレールの構成などに応じて、現地にてコンクリート製まくらぎ本体の適切な位置に固定部材を固定することができ、多種多様な分岐部の仕様に応じて、交換用コンクリート製まくらぎを適切に施工することができる。分岐部のまくらぎをコンクリート製まくらぎに交換することで、長期間の安定した位置保持と長寿命化を図ることができる。
【0013】
また、前記コンクリート製まくらぎ本体の床板固定面の下方における該コンクリート製まくらぎ本体の側面を、隣接する交換用コンクリート製まくらぎと連結して一体化するようにしてもよい。
【0014】
このように構成すれば、レール配置部の下方において隣接するコンクリート製まくらぎ本体が連結されるため、バラストの充填が不十分となりやすい分岐部におけるまくらぎの剛性を高めることができる。しかも、床板固定面の下方で連結しているので、まくらぎの周囲に敷き詰められるバラストを固める作業に影響することもない。
【0015】
一方、本発明に係る交換用コンクリート製まくらぎは、前記いずれかの交換用コンクリート製まくらぎの施工方法において使用する交換用コンクリート製まくらぎであって、前記固定部材の配置位置を除く範囲に補強部材を配置したブロック状のコンクリート製まくらぎ本体を備え、前記コンクリート製まくらぎ本体は、前記固定部材の配置可能な範囲に目印を有している。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「補強部材」は、PC鋼材を含む。
【0016】
この構成により、分岐部に配置するコンクリート製まくらぎ本体は、固定部材を配置する部分の目印が固定部材の配置部となるように容易に配置することができる。その後、基本レールとトングレールの配置が適切にできる目印の範囲に固定部材を設置するように固定穴が形成され、その固定穴を用いて固定部材を適切に設置することができる。よって、分岐部の仕様に応じて、適切な位置にショルダーやインサートなどの固定部材を固定することが容易にできる。分岐部のまくらぎをコンクリート製まくらぎに交換することで、長期間の安定した位置保持と長寿命化を図ることができる。
【0017】
また、前記コンクリート製まくらぎ本体は、床板固定面の下方における該コンクリート製まくらぎ本体の側面に、隣接する前記コンクリート製まくらぎ本体と連結する連結用固定部を備え、少なくとも2本の前記コンクリート製まくらぎ本体は、前記連結用固定部が連結部材で連結されていてもよい。
【0018】
このように構成すれば、分岐部に配置するコンクリート製まくらぎ本体同士を連結部材で容易に連結することができる。これにより、交換用コンクリート製まくらぎに分岐器などの機器を配置することでバラストを十分に敷き詰めることが難しい部分でも、連結された複数のコンクリート製まくらぎ本体によって剛性を高めて長期間の安定した位置保持を図ることができる。
【0019】
また、前記コンクリート製まくらぎ本体に前記固定部材を配置し、前記固定部材で前記コンクリート製まくらぎ本体に床板の長辺方向両端部を固定し、前記床板と前記固定部材との接触部は、前記床板の中心を円の中心とする円弧状部に形成され、前記床板が前記固定部材の間で該床板の中心を中心として水平方向の面内で回動可能に構成され、前記固定部材は、前記床板を回動させた状態で固定できるように構成されていてもよい。
【0020】
このように構成すれば、コンクリート製まくらぎ本体に固定部材を取り付けた後でも、基本レールとトングレールの角度などに応じて床板を水平方向の面内で回動させて適切な角度に調節することが容易にできる。
【0021】
また、前記床板は、長辺方向に差込式ヒータの挿入部を有し、前記挿入部は、前記床板の長辺方向一端部に開口を有していてもよい。
【0022】
このように構成すれば、分岐部における床板の挿入部に差込式ヒータを備えさせることができる。そして、差込式ヒータを点検・交換する場合には、床板を回動させることで床板の長辺方向一端部の開口部を固定部材の側方に向けて開放することができる。これにより、開口部から差込式ヒータを引き抜いて点検・交換することができる。したがって、分岐部の床板に差込式ヒータを備えさせた場合には、効率良く差込式ヒータの点検・交換などの保守作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、分岐部のまくらぎを交換用コンクリート製まくらぎとする場合に、分岐部に応じて固定部材を適切な位置に配置して施工することが可能となる。これにより、分岐部のまくらぎの長寿命化を図ることができる。また、複数のコンクリート製まくらぎ本体を連結することで、機器を配置する部分などをより剛性の高い交換用コンクリート製まくらぎとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る交換用PCまくらぎを示す図面であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)はI−I矢視の断面図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態に係る交換用PCまくらぎを示す図面であり、(A)は平面図、(B)はII−II矢視の断面図である。
図3図3は、図2に示すIII−III矢視の拡大断面図である。
図4図4は、本発明に係る交換用PCまくらぎに交換した分岐部の平面図である。
図5図5は、図4に示すV−V矢視の拡大断面図である。
図6図6は、図4に示すVI部の平面図であり、(A)は回動前の状態を示す平面図、(B)は回動後の状態を示す平面図である。
図7図7は、図6に示す床板の他の実施形態に係る床板を示す図面であり、(A)は回動前の状態を示す平面図、(B)は回動後の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、図4に示す分岐部100において、トングレール102がスライドする部分に配置される交換用コンクリート製まくらぎ(以下、交換用PCまくらぎ10)を例に説明する。また、交換用PCまくらぎ10に固定される固定部材として、線ばね式締結具55(図5)を取り付けるショルダー30を例に説明する。この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、交換用PCまくらぎ10の長手方向と交差する基本レール101の延びる方向を軌道方向R(図4)という。軌道方向Rに対して直交する方向を左右方向という。
【0026】
(交換用PCまくらぎの第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る交換用PCまくらぎ(交換用コンクリート製まくらぎ)10を示す図面であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。第1実施形態の交換用PCまくらぎ10は、軌道方向と交差する方向に所定長さを有し、矩形状断面に形成されたブロック状のPCまくらぎ本体11を有している。PCまくらぎ本体11の上面には、長手方向の左右位置に離れて床板固定面12が形成されている。床板固定面12は、PCまくらぎ本体11の上面から凹状に形成されている。この床板固定面12の左右位置が、ショルダー(固定部材)30の配置部13となる。
【0027】
PCまくらぎ本体11の内部には、ショルダー(固定部材)30の配置部13を除く範囲にPC鋼材(補強部材)16が設けられている。PC鋼材16の配置は、ショルダー30を配置部13の所定範囲に設置することができる配置となっている。
【0028】
そして、上記ショルダー30の配置部13に、ショルダー30(固定部材)を配置可能な範囲として目印14が設けられている。目印14は、PCまくらぎ本体11の内部にPC鋼材16が設けられていない位置で、ショルダー30を配置することが可能な範囲である。すなわち、目印14の範囲は、分岐部100においてPCまくらぎ本体11にアンカー穴(固定孔)15を形成することが可能な範囲となっている。図示する目印14は一例である。目印14は、ショルダー30(固定部材)30を配置するアンカー穴15を設けるまで示されていればよく、インクなどによって示すことができる。目印14を設ける位置としては、多種多様な分岐部100において利用可能な範囲とすることができる。
【0029】
なお、図示するPCまくらぎ本体11の下面には、弾性被覆部材17が設けられている。弾性被覆部材17は、PCまくらぎ本体11とバラストとの間に介在させる弾性部材であり、ゴム材などを用いることができる。
【0030】
この交換用PCまくらぎ10によれば、後述する分岐部100において、PCまくらぎ本体11の床板固定面12に固定する床板50が基本レール101とトングレール102を配置するのに適切な位置となるように、目印14の範囲にショルダー30を配置するためのアンカー穴15が設けられる。アンカー穴15は、目印14の範囲に設けることで、PCまくらぎ本体11の内部に設けられたPC鋼材16を避けた適切な位置に設けることができる。
【0031】
したがって、上記交換用PCまくらぎ10によれば、ブロック状のPCまくらぎ本体11を有する交換用PCまくらぎ10を製作しておき、分岐部100(現地)において、基本レール101とトングレール102を配置する床板50を適切に配置できるように、後付けでショルダー30やインサートなどの固定部材が設置される。したがって、多種多様な分岐部100の仕様に応じて適切な位置にショルダー30やインサートなどの固定部材を固定することができ、分岐部100に使用する交換用PCまくらぎ10の種類を少なくして、生産効率良く交換用PCまくらぎ10を製造することが可能となる。
【0032】
(交換用PCまくらぎの第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る交換用PCまくらぎ(交換用コンクリート製まくらぎ)20を示す図面であり、(A)は平面図、(B)はII−II矢視の断面図である。図3は、図2に示すIII−III矢視の拡大断面図である。第2実施形態の交換用PCまくらぎ20は、隣接するPCまくらぎ本体21同士を連結して剛性を高めた例である。なお、上記第1実施形態の交換用PCまくらぎ10における配置部13、目印14、アンカー穴(固定孔)15、PC鋼材16、弾性被覆部材17と同一の構成には、配置部23、目印24、アンカー穴(固定孔)25、PC鋼材26、弾性被覆部材27の符号を付して、それらの説明は省略する。
【0033】
この実施形態の交換用PCまくらぎ20も、軌道方向と交差する方向に所定長さを有し、矩形状断面に形成されたブロック状のPCまくらぎ本体21を有している。PCまくらぎ本体21の上面には、長手方向の左右位置に離れて床板固定面22が形成されている。
【0034】
そして、交換用PCまくらぎ20は、2本のPCまくらぎ本体21の床板固定面22の下方における側面が、連結部材29によって連結されている。この図では、2本のPCまくらぎ本体21が連結部材29によって連結されている。
【0035】
図3に示すように、PCまくらぎ本体21には、予め連結部材29を固定するための連結用固定部材28が備えられている。連結用固定部材28は、PCまくらぎ本体21の成形時に一体的に埋め込まれている。連結用固定部材28は、中心部分に雌ねじ部28aが設けられたアンカーとなっている。
【0036】
また、図2に示すように、この実施形態の連結部材29は、H形鋼29aの両端面に面板29bが固定されたものとなっている。H形鋼29aと面板29bは溶接で一体化されており、面板29bには、左右位置にボルト穴29cが設けられている。連結部材29は、面板29bがPCまくらぎ本体21の連結用固定部材28に設けられた雌ねじ部28aにボルト29dで固定される。この実施形態における交換用PCまくらぎ20は、少なくとも2本のPCまくらぎ本体21を連結部材29で連結したものを用いることができるが、図に二点鎖線で示すように、さらに複数のPCまくらぎ本体21を連結部材29で連結することができる。
【0037】
第2実施形態の交換用PCまくらぎ20によれば、連結部材29で2本のPCまくらぎ本体21を一体的に連結することで剛性が高い交換用PCまくらぎ20となっている。このため、交換用PCまくらぎ20によれば、分岐部100において転てつ棒103や控え棒104(図4)などを配置することでバラストを敷き詰めることが難しい部分でも、連結された複数のPCまくらぎ本体21によって剛性を高めて長期間の安定した位置保持を図ることが可能となる。しかも、床板固定面22の下方で連結部材29によって連結しているので、交換用PCまくらぎ20の周囲に敷き詰められるバラストを固める作業に影響することもない。
【0038】
(分岐部における交換用PCまくらぎの配置例)
図4は、交換用PCまくらぎ10,20に交換した分岐部100の平面図であり、図5は、図4に示すV−V矢視の拡大断面図である。この例は、主に上記第1実施形態に係る交換用PCまくらぎ10を用い、一部に上記交換用PCまくらぎ20を用いた例となっている。
【0039】
図4に示す分岐部100は、基本レール101に対して図示する上方にトングレール102が配置されており、緩やかに分岐する例を示している。トングレール102の端部は転てつ棒103で結合されており、転てつ器(図示略)によって図の状態から下方に向けて切り替えられる。トングレール102の中間部分は控え棒104で連結されており、横剛性が保たれている。トングレール102は、図示する左端の部分が転てつ棒103で基本レール101に密着させられる。図示する状態は、トングレール102の端部が図の上方に位置させられており、列車は基本レール101に沿って走行する。転てつ棒103でトングレール102の端部を図の下方に切り替えることで、列車は基本レール101からトングレール102へと分岐させられる。
【0040】
図示する分岐部100において、まくらぎを交換用PCまくらぎ10,20に交換する作業としては、既設のまくらぎが除去され、固定部材が設置されていないPCまくらぎ本体11,21が分岐部100の所定位置に配置される。そして、分岐部100において、基本レール101とトングレール102の配置が適切にできる目印14(図1)、目印24(図2)の範囲にショルダー30を設置するアンカー穴15,25(固定穴)が設けられる(図1,2)。そして、アンカー穴15,25にショルダー30を設置することで(図5)、分岐部100における交換用PCまくらぎ10,20を配置する場所などに応じた位置にショルダー30(固定部材)を設置することができる。
【0041】
図5にも示すように、上記分岐部100における交換用PCまくらぎ10のPCまくらぎ本体11には、所定位置にショルダー30が固定される。ショルダー30は、PCまくらぎ本体11の配置部13における目印14(図1)の範囲で、基本レール101とトングレール102とが適切に配置できる位置に床板50を固定するように設けられる。PCまくらぎ本体11にアンカー穴15が形成され、そのアンカー穴15にショルダー30がねじ込まれて固定される(図5では、アンカー穴15をショルダー30をねじ込み部分と同一形状で示す)。
【0042】
そして、ショルダー30の間に床板50が線ばね式締結具55で固定され、この床板50に基本レール101がレールブレス56で固定され、トングレール102が水平方向にスライド可能なように配置される。このようにして、多種多様な分岐部100において、基本レール101とトングレール102の配置が適切にできるように交換用PCまくらぎ10(20)に交換する施工ができる。
【0043】
さらに、上記分岐部100によれば、図4に示すように控え棒104が設けられた位置に交換用PCまくらぎ20が用いられており、控え棒104が設けられた部分においても、2本のPCまくらぎ本体21が連結された交換用PCまくらぎ20によって剛性を高め、長期間の安定した位置保持などを図ることができる。
【0044】
(分岐部における床板の構成)
図6は、図4に示すVI部の平面図であり、(A)は回動前の状態を示す平面図、(B)は回動後の状態を示す平面図である。なお、図6(B)は、PCまくらぎ本体11の傾きを誇張している。
【0045】
図6(A)に示すように、この実施形態の交換用PCまくらぎ10に固定される床板50は、ショルダー30との接触部である長辺方向両端部が、床板50の中心51を中心とする円弧状部52に形成されている。また、PCまくらぎ本体11に配置するショルダー30の床板押え部31には、床板50の円弧状部52と同一の円弧状部32が形成されている。いずれの円弧状部52,32も、床板50の中心51を円の中心とする円弧となっている。これにより、床板50は、床板押え部31の間において水平方向の面内で回動可能となっている。床板50は、長辺方向両端部がショルダー30の床板押え部31によってPCまくらぎ本体11に固定される。
【0046】
図6(B)に示すように、このような交換用PCまくらぎ10によれば、例えば、PCまくらぎ本体11の設置が多少傾いたとしても、床板50とショルダー30の円弧状部52,32により、基本レール101とトングレール102を基準に床板50が適切な角度となるように回動させることができる。そして、床板50を回動させた状態で、長辺方向両端部をショルダー30の床板押え部31でPCまくらぎ本体11に固定することができる。
【0047】
このように、PCまくらぎ本体11にショルダー30などの固定部材を取り付けた後でも、ショルダー30の固定位置や、交換用PCまくらぎ10の配置位置の誤差などを床板50の角度調節で吸収することができる。したがって、基本レール101またはトングレール102の角度などに応じて床板50を適切な角度に調節することが容易にできる。
【0048】
(分岐部における床板の他の実施形態)
図7は、図6に示す床板50の他の実施形態に係る床板50を示す図面であり、(A)は回動前の状態を示す平面図、(B)は回動後の状態を示す平面図である。この実施形態は、床板50に融雪用の差込式ヒータ40を備えさせた例である。なお、図6と同一の構成には同一符号を付して、その説明は省略する。
【0049】
図7(A)に示すように、床板50には基本レール101の固定位置から水平方向に延びるように、トングレール102がスライドするスライド部53が設けられている。このスライド部53の長辺方向に延びるように、差込式ヒータ40の挿入部54が設けられている。挿入部54は、床板50の内部に設けられており、差込式ヒータ40は、床板50の長辺方向一端部(図の左端)に設けられた開口54a(図7(B))から挿入部54に差し込むようになっている。
【0050】
図7(B)に示すように、上記交換用PCまくらぎ10によれば、差込式ヒータ40の保守点検を行う場合、レールブレス56及び線ばね式締結具55と床板50を押えている線ばね式締結具55を取り外す。これにより、基本レール101及びトングレール102を床板50の上方から取り除くことなく床板50を大きく回動させることができ、床板50の開口54aをショルダー(固定部材)30から側方にずれた位置にできる。したがって、分岐部100における床板50に備えさせた差込式ヒータ40を点検・交換する場合には、床板50を開口54aがショルダー30から側方にずれる位置まで大きく回動させ、その開口54aから差込式ヒータ40を引き抜いて点検・交換することができる。差込式ヒータ40の点検・交換後は、床板50を逆方向に回動させて、長辺方向両端部をショルダー30の床板押え部31でPCまくらぎ本体11に固定することができる。
【0051】
このように、分岐部100の床板50に差込式ヒータ40を備えさせた場合には、基本レール101及びトングレール102を床板50の上方から取り除くことなく、効率良く差込式ヒータ40の点検・交換などの保守作業を行うことが可能となる。
【0052】
(総括)
以上のように、上記交換用PCまくらぎ(交換用コンクリート製まくらぎ)10(20)の施工方法によれば、分岐部100における多種多様な仕様において、少ない種類の交換用PCまくらぎ10(20)で適切な位置にショルダー30などの固定部材を設けることができる。よって、分岐部100における交換用PCまくらぎ10(20)を生産効率良く製造することが可能となる。しかも、分岐部100における既設まくらぎを除去した後に交換用PCまくらぎ(交換用コンクリート製まくらぎ)10(20)を配置することで、分岐部100におけるまくらぎを高強度化して長寿命化を図ることが可能となる。
【0053】
また、分岐部100におけるまくらぎを高強度で長寿命化が図れる交換用PCまくらぎ(交換用コンクリート製まくらぎ)10(20)に交換することで、列車が通過する際に大きな横圧が発生する分岐部100においてレールの高さに狂いを生じることを防ぐことができる。よって、分岐部100におけるまくらぎを交換する期間を大幅に延ばすことが可能となる。
【0054】
さらに、分岐部100における床板50を、この床板50の中心を中心として水平方向の面内で回動可能とすることで、床板50の上方からレールを除去することなく融雪用の差込式ヒータ40の保守点検を容易に行うことができ、分岐部100における保守点検作業に要する労力・時間の大幅な低減が可能となる。
【0055】
なお、上記した実施形態の分岐部100は一例であり、曲率が異なる分岐部100や機器の構成が異なる分岐部100でも同様に交換用PCまくらぎ10(20)を用いることができ、分岐部100の構成は上記実施形態に限定されるものではない。
【0056】
また、上記した実施形態における交換用PCまくらぎ10(20)は一例であり、断面形態の異なる交換用コンクリート製まくらぎや長手方向の長さが異なる交換用コンクリート製まくらぎなどにおいても同様に構成することができ、交換用PCまくらぎ10(20)の形態は上記実施形態に限定されるものではない。
【0057】
さらに、上記した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
10 交換用PCまくらぎ
11 PCまくらぎ本体
12 床板固定面
13 配置部
14 目印
15 アンカー穴(固定孔)
20 交換用PCまくらぎ
21 PCまくらぎ本体
22 床板固定面
23 配置部
24 目印
28 連結用固定部材
29 連結部材
30 ショルダー(固定部材)
31 床板押え部
32 円弧状部
40 差込式ヒータ
50 床板
51 中心
52 円弧状部
54 挿入部
100 分岐部
101 基本レール
102 トングレール
【要約】      (修正有)
【課題】分岐部におけるまくらぎをコンクリート製まくらぎに交換することが効率良くできる交換用コンクリート製まくらぎの施工方法を提供する。
【解決手段】分岐部に応じて交換用コンクリート製まくらぎ10を施工する施工方法であって、分岐部における既設まくらぎを除去し、固定部材が設置されていないコンクリート製まくらぎ本体を既設まくらぎを除去した分岐部の所定位置に配置し、分岐部においてコンクリート製まくらぎ本体に固定部材を適切に配置できる固定位置に固定穴15を形成し、固定穴に固定部材を設置することで分岐部に応じた位置に固定部材を設置する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7