特許第6236521号(P6236521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニッタ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236521
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/34 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   F16L37/34
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-507399(P2016-507399)
(86)(22)【出願日】2015年2月9日
(86)【国際出願番号】JP2015053470
(87)【国際公開番号】WO2015137027
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2016年4月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-49800(P2014-49800)
(32)【優先日】2014年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】林 昌史
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨 秀一
(72)【発明者】
【氏名】浅里 信之
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−49791(JP,U)
【文献】 特開平11−201358(JP,A)
【文献】 米国特許第8109290(US,B2)
【文献】 特開2009−144785(JP,A)
【文献】 特開平11−257565(JP,A)
【文献】 米国特許第3035857(US,A)
【文献】 特開平2−8591(JP,A)
【文献】 特開2005−315420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/28 − 37/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状着脱部を含む筒状の雄型部材の前記筒状着脱部を雌型部材に挿入して嵌合した様態で、前記筒状着脱部内に内部流体の流路が形成される管継手であって、
前記雄型部材および雌型部材は単体時にばねの弾性により内部流体漏洩防止状態保持するバルブを具備し、
前記雄型部材の筒状着脱部を前記雌型部材の孔に挿入し嵌合が完了する過程において、前記雄型部材の前記バルブと前記雌型部材互いに当接することにより前記雄型部材の前記バルブと前記雌型部材との間での内部流体の漏洩防止されると共に、雌型部材の前記バルブと前記雄型部材互いに当接することにより前記雌型部材の前記バルブと前記雄型部材との間での内部流体の漏洩防止され
前記雄型部材の前記バルブは、
前記雄型部材の内周面にガイドされて前記雄型部材の軸方向に沿って移動可能な3枚以上のフィンを有するバルブ本体と、
前記雌型部材側における前記バルブ本体の端部に設けられたバルブシールとを含み、
前記3枚以上のフィンは、
前記雄型部材の軸方向に沿って配置されるとともに、略全長に亘って前記雄型部材の内周面に摺接可能な状態で前記雄型部材の内周面に摺接してガイドされ、かつ、略全長に亘って前記雄型部材の径方向中心部で放射状に相互に連結され、
前記雌型部材とは反対側における前記3枚以上のフィンの端部よりも前記反対側に、前記雄型部材用の前記ばねが配置され、
前記バルブシールは、単体時の前記雄型部材において、前記筒状着脱部の先端部内面に当接することにより前記バルブシールと前記筒状着脱部の先端部内面との間での内部流体の漏洩防止する
ことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記雄型部材の前記バルブが、弾性部材と一体成形した樹脂部材から構成される請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記雄型部材の中央部に前記雌型部材の樹脂製操作部材と嵌合する段部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雄型及び雌型の継手部材の一対を接続して、配管を接続する管継手において、筒状の継手部材の内部に流路の開閉を行うためのバルブ有し、前記雄型、雌型の継手部材を着脱する際に内部の流体が漏れない機構のものがある。例えば、両継手部材共に、バルブにゴム等の材質の弾性体であるシール材を有し、接続及び脱離時も流体の漏れがない機構である。
【0003】
図4は、従来のバルブを有する管継手の構成を示す図である。図4Aは、雄型の継手部材(雄型部材)の断面図である。図4Bは、雌型の継手部材(雌型部材)の断面図である。図4Cは、バルブ450とバルブストップ411の斜視図である。図4Dは、雌型部材と雄型部材を結合した状態を示した図である。
【0004】
図4A図4Cにおいて、雄型部材410は、雄型部材本体415、アダプタ416、アダプタOリング417、バルブストップ411、バルブスプリング412、バルブ450を有する。バルブ450はバルブ本体413とバルブシール414とを有する。バルブシール414は、材質がゴム等の弾性体であって、筒状のバルブ本体413に取り付けられる。バルブ450は、バルブストップ411に取り付けられたバルブスプリング412で押さえられた状態で、雄型部材本体415に挿入され、アダプタOリング417を装着したアダプタ416で固定される。そして、図4Cに示すように筒状のバルブストップ411は、流体移動用の複数の孔418と、バルブ450の移動の際のガイドとなる孔419を有する。
【0005】
一方、図4Bに示す雌型の継手部材である雌型部材420は、バルブストップ421、バルブスプリング422、バルブ460、バルブシール閉塞部材(以下、ピントルと称する)423、スナップリング426を有する。バルブ460は、バルブ本体425、バルブシール424、Vシール429を有し、Vシール429は材質がゴム等の弾性体で、バルブ本体425に取り付けられる。バルブ460は、バルブストップ421に取り付けられたバルブスプリング422で押さえられた状態で、ピントル423に当接している。ピントル423は、スナップリング426によりバルブストップ421に固定される。バルブストップ421は、雌型部材本体427とアダプタ428で固定される。
【0006】
図4Dは、雌型部材420と雄型部材410を結合した状態を示した図である。雌型部材420のピントル423と雄型部材410のバルブシール414、雄型部材410のバルブスプリング412の弾性力で当接し、Vシール425と共に流路内の流体の漏れを防止する。雄型部材本体415の先端部と雌型部材420のバルブシール424は、バルブスプリング422の弾性力で当接し、流路内の流体の漏れを防止する。雌型部材420と雄型部材410を分離する際も、雌型部材420と雄型部材410が完全に離れるまで、前記3つのシール部材で流体の漏れを防止する。
【0007】
前記雌型部材420と雄型部材410の着脱時の雄型部材側のバルブ450の移動は、バルブストップ411の孔419をガイドにして行っているため、孔419の長さが短いとバルブ450が傾斜して雄型部材本体415に弾接し、漏れが発生する可能性がある。漏れ防止のためにバルブストップ411が長くする必要があるため、圧力損失が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−128285号公報
【特許文献2】特開平11−141775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
雄型及び雌型の継手部材の一対を接続して、配管を接続する管継手において、バルブ形状を変更する事で圧力損失が小さい管継手を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の管継手は、筒状着脱部を含む筒状の雄型部材の前記筒状着脱部を雌型部材に挿入して嵌合した様態で、前記筒状着脱部内に内部流体の流路が形成される管継手であって、前記雄型部材および雌型部材は単体時にばねの弾性により内部流体漏洩防止状態保持するバルブを具備し、前記雄型部材の筒状着脱部を前記雌型部材の孔に挿入し嵌合が完了する過程において、前記雄型部材の前記バルブと前記雌型部材互いに当接することにより前記雄型部材の前記バルブと前記雌型部材との間での内部流体の漏洩防止されると共に、雌型部材の前記バルブと前記雄型部材互いに当接することにより前記雌型部材の前記バルブと前記雄型部材との間での内部流体の漏洩防止され、前記雄型部材の前記バルブは、前記雄型部材の内周面にガイドされて前記雄型部材の軸方向に沿って移動可能な3枚以上のフィンを有するバルブ本体と、前記雌型部材側における前記バルブ本体の端部に設けられたバルブシールとを含み、前記3枚以上のフィンは、前記雄型部材の軸方向に沿って配置されるとともに、略全長に亘って前記雄型部材の内周面に摺接可能な状態で前記雄型部材の内周面に摺接してガイドされ、かつ、略全長に亘って前記雄型部材の径方向中心部で放射状に相互に連結され、前記雌型部材とは反対側における前記3枚以上のフィンの端部よりも前記反対側に、前記雄型部材用の前記ばねが配置され、前記バルブシールは、単体時の前記雄型部材において、前記筒状着脱部の先端部内面に当接することにより前記バルブシールと前記筒状着脱部の先端部内面との間での内部流体の漏洩防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
実施形態の管継手によれば、バルブ形状を変更し、バルブストップを無くす事で圧力損失が小さくなる。そして、油圧等の回路中では作動圧力を小さくできる。また、流体輸送の回路では同圧力で流量が大きくなる。更に、継手の材質の一部を樹脂にする事で継手重量が小さくなる。しかも、単体時の雄型部材において、筒状着脱部の先端部を内部流体の漏洩防止状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】実施形態の管継手の雄型部材構造の一部断面図。
図1B】実施形態の管継手の雌型部材単体の一部断面図。
図1C】実施形態の管継手の雄型部材構造の部分拡大図。
図2A】実施形態の管継手の雄型部材のバルブの斜視図。
図2B】実施形態の管継手の雄型部材のバルブの背面図。
図2C】実施形態の管継手の雄型部材のバルブの平面図。
図3】実施形態の管継手の雌型部材と雄型部材の嵌合状態の一部断面図。
図4A】従来技術の雄型部材の断面図。
図4B】従来技術の雌型部材の断面図。
図4C】従来技術のバルブとバルブストップの斜視図。
図4D】従来技術の雄型部材と雌型部材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態の管継手の構成を示す図である。図1Aは、雄型の継手部材(以下、雄型部材と称する)の一部断面図である。図1Bは、雌型の継手部材(以下、雌型部材と称する)の一部断面図である。図1Cは、雄型部材110の有する着脱部品114の先端の段310にバルブシール113が当接する部分の拡大図である。
【0014】
図1A図1Cにおいて、雄型部材110は、配管取付部品115、着脱部品114、バルブスプリング111、バルブ220、シール材116、段部311などを有している。雄側のバルブ220は、ゴムなどの弾性体であるバルブシール113とバルブ本体112を有している。バルブ220は、配管取付部品115に、バルブスプリング111を圧縮させた状態で内部に装着し、着脱部品114を取り付けている。配管取付部品115と着脱部品114は、配管取付部品のねじ118と着脱部品のねじ119にて取り付けられている。着脱部品114の雌型部材側の端部には、バルブ本体112及びバルブシール113の外径より内径が小さい開口部117を有し、雄型部材先端の段310を有する。そして、バルブ220のバルブシール113は、バルブスプリング111の弾性力により雄型部材先端の段310に漏洩防止状態で当接する。
【0015】
図1Bは、雌型の雌型部材120の断面図である。雌型部材120は、着脱部品129、配管取付部品128、シール用Oリング132、操作部材(以下、リテーナと称する)130、131、シール用Oリング133、バルブシール閉塞部材(以下、ピントルと称する)127、バルブストップ121、スナップリング123、バルブスプリング122、バルブ140、内部に図示しない雄型部材110の挿入孔を有する。
【0016】
雌側のバルブ140は、バルブ本体124、Vシール125、バルブシール126を有する。バルブ140は、バルブストップ421に取り付けられたバルブスプリング422で押さえられた状態で、ピントル423に当接している。ピントル423は、スナップリング426によりバルブストップ421に固定される。バルブストップ421は、雌型部材本体427とアダプタ428で固定される。バルブ140は、バルブスプリング122の弾性力によりピントル127の裏側に漏洩防止状態で当接する。バルブ本体124と着脱部品129は、Vシール125により漏洩防止状態となる。
【0017】
図2は、雄型部材110のバルブ220の形状を示す図で、筒状のバルブ本体112にバルブシール113を取り付けた状態の図である。図2Aは前記バルブ本体112の斜視図、図2Bはバルブシール113と反対側の軸方向から見た図(バルブシール113側を正面とした場合の背面図)であり、図2Cは軸に対して垂直方向から見た図(平面図)である。
【0018】
雄側のバルブ220は、バルブ本体112を樹脂材質で一体成形し、バルブ移動時のガイドである少なくとも3枚以上の複数のフィン211を有する事で、移動時にバルブ220の傾斜が発生しにくい。複数のフィン211は、バルブ220の軸上で等角度にあるのが望ましい。図2では、90度ずつ4等分したプラス形状が長手方向に形成された立方体を示したが、これに限定されるものではない。例えば、3等分乃至6等分で構成したフィンであっても良い。バルブ本体112を樹脂成形することで、フィン211の形状が比較的自由な形状とすることができ、圧力損失も小さくなる。
【0019】
図3は、実施形態の雌型部材120と雄型部材110を結合した時の接続図である。
雌型部材120の挿入孔に向けて、雄型部材110の筒状着脱部(図1Aの右端から雄型部材中央部の溝311の左端まで)を挿入するとき、雄側のバルブ220の複数のフィン211が雄型部材110の内周面をガイドにして、スムーズに移動することができる。そして、雄型部材110の先端部が雌型部材120のバルブシール126の位置まで当接すると、同時に雄側のバルブ220のバルブシール113が雌型部材120のピントル127に当接する。さらに、雄型部材110が図3の右側に移動すると、雄型部材110側は、バルブ220がピントル127に押されて、バルブスプリング111が縮み、気密性を保持していたバルブシール113が雄型部材先端の段310から離れて、雄型部材120内に流路が形成される。
【0020】
一方、雌型部材120側は、雌側のバルブ140が雄型部材110に押されて、バルブスプリング122が縮み、気密性を保持していたバルブシール126がピントル127から離れて、雌型部材120内にも流路が形成される。
【0021】
このように本実施形態によれば、雌型部材120のピントル127と雄型部材110のバルブシール113は、雄型部材110のバルブスプリング111の弾性力により漏洩防止状態で当接し、流路内の流体の漏れを防止する。雄型部材本体114の先端部と雌型部材120のバルブシール126は、バルブスプリング122の弾性力により漏洩防止状態で当接し、Vシール125及びシール用Oリング132と共に流路内の流体の漏れを防止する。
【0022】
雄型部材110と雌型部材120の結合時には、雄型部材110の先端部が雌型部材120のバルブシール126の位置まで当接してバルブスプリング122が縮むと共に、雄型部材110の雄型部材本体114とピントル127に当接してバルブスプリング111が縮むことにより、雄型部材110と雌型部材120間の流路が形成されることになる。そして、その結合を解除すると、雄型部材110と雌型部材120は元の漏洩防止状態に戻る。
【0023】
なお、雄型部材110と雌型部材120の固定は、樹脂製の部品であるリテーナ130,131(樹脂製操作部材)を雄型部材110の中央部の溝311に嵌合し、リテーナに形成されたばねで押し付けることにより行われる。
実施形態の管継手の形状によれば、バルブストップ411を使用する必要がある従来の形状と比較すると流路面積が大きく、圧力損失が小さくすることができる。
【0024】
(変形例)
本実施形態のバルブを、図1Aに示す雄型部材の構成でも使用可能である。また、バルブ本体112の材質は、射出成形粉末冶金などで一体成形可能な金属でも良い。さらに、フィン211と別部品に分けて成型し、接着、溶着等で1つの部品にしてもよい。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
110 雄型部材
111 バルブスプリング
112 バルブ本体
113 バルブシール
117 開口部
120 雌型部材
121 バルブストップ
122 バルブスプリング
124 バルブ本体
125 Vシール
126 バルブシール
127 バルブシール閉塞部材(ピントル)
128 配管取付部品
130、131 操作部材(リテーナ)
135 バルブ
140 バルブ
211 フィン
220 バルブ
310 雄型部材先端の段
311 雄型部材中央部の溝
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D