【文献】
Tissue Eng. Part A,2009年,vol.15, no.11,pp.3635-3644
【文献】
Tissue Eng. Part A,2009年,vol.15, no.6,pp.1291-1299
【文献】
Biotechnol. Bioeng.,2010年,vol.106, no.1,pp.127-137
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記本体部分と前記蓋部分を互いに分離した状態で、前記第1の培養室の前記本体部分と、前記蓋部分に形成されている前記第2の培養室とで、それぞれ細胞を培養した後、前記本体部分と前記蓋部分とを接合する、請求項10に記載の細胞培養方法。
前記腸由来の細胞が培養されている前記第2の培養室に前記第2の導入流路から試薬を導入し、それによって得られる前記腸由来の細胞の代謝物を前記第1の多孔質膜と前記第1の導入流路を介して前記第1の培養室に導入する、請求項12又は13に記載の細胞培養方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の細胞培養用デバイスにおいて、上記第1の排出流路は第2の多孔質膜を介して上記第1の培養室に接続されている例を挙げることができる。これにより、例えば細胞や足場材(ゲル)などの第1の培養室内の物質が第1の排出流路に流入することに起因する第1の排出流路の目詰まりを防止できる。ただし、本発明の細胞培養用デバイスにおいて、上記第2の多孔質膜は配置されていなくてもよい。
【0013】
本発明の細胞培養用デバイスにおいて、上記第1の導入流路は、上記第1の培養室と上記第2の培養室との間に液体採取部を備え、上記液体採取部は、その壁面の少なくとも一部分が、尖端の鋭利な吸引器具により貫通でき、かつ貫通後に上記吸引器具を引き抜くとその貫通孔を弾性によって閉じることができる弾性部材によって形成されている例を挙げることができる。これにより、第2の培養室を通過した液体、例えば第2の培養室内で培養されている細胞の代謝物を含む液体を、その液体が第1の培養室に導入される前に採取できる。ただし、本発明の細胞培養用デバイスにおいて、上記第1の導入流路は上記液体採取部を備えていなくてもよい。
【0014】
本発明の細胞培養用デバイスにおいて、本体部分と、上記本体部分に着脱可能に取り付けられる蓋部分とを有し、上記第1の培養室は、上記本体部分に形成され、かつ上記本体部分の上記蓋部分との接触面に開口を有している例を挙げることができる。これにより、本体部分と蓋部分を分離させた状態で、例えば細胞や足場材、培地などの物質を第1の培養室に第1の導入流路及び第1の排出流路を介さずに配置することができる。ただし、本発明の細胞培養用デバイスは、着脱可能な本体部分と蓋部分を備えていない構造であってもよい。
【0015】
さらに、上記本体部分及び上記蓋部分の接触面の材料がPDMS(ポリジメチルシロキサン)又はシリコーン系ゴムである例を挙げることができる。これにより、例えばネジや粘着剤などの特別な固定手段を用いることなく、自己吸着性によって蓋部分を本体部分に安定して固定することができる。さらに、必要に応じて容易に本体部分と蓋部分を着脱することができる。ただし、上記本体部分及び上記蓋部分の接触面の材料はPDMS及びシリコーン系ゴムに限定されず、他の材料であってもよい。
【0016】
また、上記本体部分及び上記蓋部分の接触面のうち少なくともいずれか一方の面が凸形状に形成されており、上記本体部分と上記蓋部分の接触面の平面サイズは該デバイスの平面サイズよりも小さい例を挙げることができる。本体部分と蓋部分の接触面を小さくすることにより、不要な部分への力の分散を抑制することができ、本体部分と蓋部分の密着性を向上させることができる。ただし、本発明の細胞培養用デバイスにおいて、上記本体部分及び上記蓋部分の接触面はともに平坦面であってもよい。
【0017】
また、上記第2の培養室は上記蓋部分に形成されている例を挙げることができる。これにより、第1の培養室が形成された本体部分と、第2の培養室が形成された蓋部分とを分離して、第1の培養室内と第2の培養室内で互いに異なる条件及び環境でそれぞれ細胞を培養できる。ただし、本発明の細胞培養用デバイスにおいて、第2の培養室は上記本体部分に形成されていてもよいし、上記本体部分と上記蓋部分にまたがって形成されていてもよい。
【0018】
本発明の細胞培養用デバイスにおいて、上記第1の培養室内に少なくとも内皮細胞と肝実細胞を含む共培養系が共培養されており、上記第2の培養室内に腸由来の細胞が培養されている例を挙げることができる。これにより、腸由来の細胞の代謝物を内皮細胞と肝実細胞を含む共培養系に供給することができ、より生体内に近い環境を実現できる。ただし、本発明の細胞培養用デバイスにおいて、第1の培養室内及び第2の培養室内で培養される細胞はこれらの細胞に限定されない。
【0019】
さらに、本発明の細胞培養用デバイスにおいて、上記第1の培養室の中に細胞の足場材となるゲルが収容されており、上記ゲル上で管状構造をもつ上記共培養系がネットワーク構造で形成している例を挙げることができる。
【0020】
本発明の細胞培養用システムにおいて、上記培地供給部は、上記第1の培養室内に培地を循環させて供給するものであり、上記培地供給部の培地循環ラインの途中に透析部をさらに備えている例を挙げることができる。これにより、透析部によって不要な物質を除去しながら第1の培養室内に循環式で培地を供給できる。この構成は、上記第1の培養室内に少なくとも内皮細胞と肝実細胞を含む共培養系が共培養されており、上記第2の培養室内に腸由来の細胞が培養されている場合に特に有用である。ただし、本発明の細胞培養用システムは透析部を備えていなくてもよい。
【0021】
本発明の細胞培養方法において、第2の培養室が蓋部分に形成されている本発明の細胞培養用デバイスを用い、上記本体部分と上記蓋部分を互いに分離した状態で、上記第1の培養室の上記本体部分と、上記蓋部分に形成されている上記第2の培養室とで、それぞれ細胞を培養した後、上記本体部分と上記蓋部分とを接合する例を挙げることができる。これにより、第1の培養室内と第2の培養室内で互いに異なる条件及び環境でそれぞれ細胞を培養できる。ただし、本発明の細胞培養方法は、細胞培養用デバイスの上記本体部分と上記蓋部分が接合された状態で第1の培養室内及び第2の培養室内でそれぞれ細胞を培養してもよい。
【0022】
本発明の細胞培養方法において、上記第1の培養室内で少なくとも内皮細胞と肝実細胞を含む共培養系を共培養し、上記第2の培養室内で腸由来の細胞を培養する例を挙げることができる。これにより、腸由来の細胞の代謝物を内皮細胞と肝実細胞を含む共培養系に供給することができ、より生体内に近い環境を実現できる。ただし、本発明の細胞培養方法において、第1の培養室内及び第2の培養室内で培養される細胞はこれらの細胞に限定されない。
【0023】
さらに、本発明の細胞培養方法において、上記第1の培養室の中に細胞の足場材となるゲルを収容し、上記ゲル上で管状構造をもつ上記共培養系のネットワーク構造を形成させる例を挙げることができる。
【0024】
さらに、本発明の細胞培養方法において、上記腸由来の細胞が培養されている上記第2の培養室に上記第2の導入流路から試薬を導入し、それによって得られる上記腸由来の細胞の代謝物を上記第1の多孔質膜と上記第1の導入流路を介して上記第1の培養室に導入する例を挙げることができる。
【0025】
さらに、本発明の細胞培養方法において、上記第1の培養室から排出された培地を透析して上記第1の培養室内に循環供給する例を挙げることができる。これにより、より生体内に近い環境を実現できる。
【0026】
本発明は、細胞培養のための技術であり、例えば人工肝臓など人工臓器や薬物代謝試験などに用いて有用な技術である。
【0027】
本発明の細胞培養デバイスは、例えば、肝組織が培養されている第1の培養室に導入される培養液の流路(第1の導入流路)の途中に、第1の多孔質膜を介して接続された第2の培養室を備えている。第2の培養室で例えば腸由来の細胞が培養され、その培地の中に試験したい薬剤が投与される。
【0028】
図1は、細胞培養用デバイスの一実施例を説明するための概略的な平面図及び断面図である。
図2は、この実施例の細胞培養用デバイスを分解して示した平面図である。
【0029】
この実施例の細胞培養用デバイス1は、大きく分けて本体部分3と蓋部分5で形成されている。本体部分3は例えば肝組織を培養するための部分である。蓋部分5は例えば腸管上皮細胞を培養するための部分である。蓋部分5は本体部分3に脱着可能になっている。
【0030】
本体部分3は、ベースプレート7、PDMSブロック9及びPDMSブロック11を備えている。
【0031】
本体部分3のベースプレート7は例えば合成石英で形成されている。なお、ベースプレート7は平板形状のものに限定されない。ベースプレート7はPDMSブロック9が吸着可能なものであればよい。例えばベースプレート7は培養用のディッシュであってもよい。
【0032】
PDMSブロック9及びPDMSブロック11は例えばSILPOT184(東レダウコーニング社製)で形成されている。PDMSブロック9,11の平面サイズは例えば25mm×25mm(ミリメートル)である。PDMSブロック9の厚みは例えば2.0mmである。PDMSブロック11の厚みは例えば1.0mmである。
【0033】
PDMSブロック9は例えば直径10mmの貫通孔9aを備えている。
PDMSブロック11は貫通孔11a、凹部11b、凸部11c、貫通孔11dを備えている。
【0034】
貫通孔11aはPDMSブロック9とPDMSブロック11が貼り合わせられたときに貫通孔9aに重なる位置に形成されている。貫通孔11aは例えば直径が10mmである。
【0035】
凹部11bはPDMSブロック9との接触面に形成されている。凹部11bの深さは例えば0.2mm程度である。凹部11bは貫通孔11aの周囲部分とその周囲部分から突出した突起部分を備えている。貫通孔11aの周囲部分における凹部11bの幅は例えば1.0mm程度である。凹部11bの突起部分の寸法は例えば幅が2.0mm程度、長さが2.0mm程度である。
【0036】
凸部11cはPDMSブロック9との接触面とは反対側の面に、その面から出っ張った凸形状に形成されている。凸部11cの高さは例えば0.5mm程度である。凸部11cの上面は蓋部分5との接触面を構成する。凸部11cは貫通孔11aの形成位置を含む位置に形成されている。なお、PDMSブロック11の厚みは凸部11cを含んだ厚みである。
【0037】
貫通孔11dは凹部11bの突起部分と重なる位置に形成されている。貫通孔11dの直径は例えば1.5mmである。
【0038】
本体部分3の形成工程を簡単に説明する。
凹部11bと凸部11cが形成されたPDMSブロック11が準備される。凹部11bは直径が12mm程度の円形部分と円形部分から突出した突起部分を備えている。その突起部分と重なる位置に直径が1.5mmの貫通孔11dが開けられる。
【0039】
貫通孔11aが形成されていないPDMSブロック11と貫通孔9aが形成されていないPDMSブロック9が貼り合わされる。この際、貼り合わせ前に、PDMSブロック9とPDMSブロック11の接触面に酸素プラズマ処理が施されることが好ましい。PDMSブロック11のPDMSブロック9との接触面は凹部11bが形成されている面である。
【0040】
貼り合わされたPDMSブロック9,11に、凹部11bの円形部分の中央と重なるようにして直径が10mmの貫通孔が形成される。これにより、PDMSブロック9に貫通孔9aが形成され、PDMSブロック11に貫通孔11aが形成される。
【0041】
PDMSブロック9のPDMSブロック11とは反対側の面がベースプレート7に貼り合わされて本体部分3が完成される。この際、PDMSブロック9のベースプレート7との接触面に酸素プラズマ処理が施されることが好ましい。なお、酸素プラズマ処理が施されなくても、PDMSブロック9の自己吸着性を利用して、PDMSブロック9をベースプレート7や細胞培養用のディッシュに貼り付けることも可能である。
【0042】
次に蓋部分5について説明する。
蓋部分5は、シリコーンゴムシート13、フィルター15(第1の多孔質膜)、フィルター17(第2の多孔質膜)、シリコーンゴムシート19、PDMSブロック21、シリコーンゴムシート23、PDMSブロック25及びPDMSブロック27を備えている。
【0043】
シリコーンゴムシート13,19,23及びPDMSブロック21,25,27の平面サイズは例えば25mm×25mmである。
シリコーンゴムシート13,19,23は例えばシリウス 極薄シリコーンゴムシート(株式会社扶桑ゴム産業の製品)である。
PDMSブロック21,25,27は例えばSILPOT184(東レダウコーニング社製)で形成されている。
【0044】
シリコーンゴムシート13とシリコーンゴムシート19はフィルター15,17を挟み込んで保持するためのものである。シリコーンゴムシート13,19の厚みは、それぞれ例えば0.1mmである。
【0045】
シリコーンゴムシート13は、例えば打ち抜き等の方法によって形成された長穴13a、貫通孔13b、長穴13c、貫通孔13d及び貫通孔13eを備えている。
長穴13aの幅寸法は例えば2.0mmである。長穴13aの一端は貫通孔13bとつながっている。
【0046】
貫通孔13bは直径が例えば4.0mmである。
長穴13cの幅寸法は例えば2.0mmである。長穴13cの一端は長穴13aとは異なる位置で貫通孔13bとつながっている。長穴13cの他端はPDMSブロック11の貫通孔11dと重なる位置に形成されている。
【0047】
貫通孔13dは本体部分3の貫通孔11dと重なる位置に形成されている。貫通孔13dの直径は例えば1.5mmである。
貫通孔13eは本体部分3の肝組織培養室29と重なる位置に形成されている。貫通孔13eの直径は例えば5.0mmである。
【0048】
シリコーンゴムシート19は、例えば打ち抜き等の方法によって形成された貫通孔19a,19b,19c,19dを備えている。
貫通孔19aはシリコーンゴムシート13の長穴13aの端部と重なる位置に形成されている。貫通孔19aの直径は例えば1.5mmである。
【0049】
貫通孔19bはシリコーンゴムシート13の貫通孔13bと重なる位置に形成されている。貫通孔19bの直径は例えば4.0mmである。
貫通孔19cはシリコーンゴムシート13の長穴13cの端部と重なる位置に形成されている。貫通孔19cの直径は例えば1.5mmである。
【0050】
貫通孔19dはシリコーンゴムシート13の貫通孔13dと重なる位置に形成されている。貫通孔19dの直径は例えば1.5mmである。
貫通孔19eはシリコーンゴムシート13の貫通孔13eと重なる位置に形成されている。貫通孔19eの直径は例えば5.0mmである。
【0051】
フィルター15は、例えばトラックエッチドメンブレン PET ポアサイズ1μm(it4ip社の製品)である。フィルター15の直径は例えば5mmである。フィルター15は、貫通孔13b及び貫通孔19bに重なるようにしてシリコーンゴムシート13,19の間に配置される。
【0052】
フィルター17は、例えばトラックエッチドメンブレン PC ポアサイズ5μm(it4ip社の製品)である。フィルター17の直径は例えば6mmである。フィルター17は、貫通孔13e,19eに重なるようにしてシリコーンゴムシート13,19の間に配置される。
【0053】
例えば、シリコーンゴムシート13,19の互いに貼り合わされる表面に対して酸素プラズマ処理が施された後、2つのフィルター15,17を挟んだ状態でシリコーンゴムシート13,19が貼り合わされる。フィルター15は例えば腸管上皮細胞の培養面を構成する。フィルター17は肝組織培養室29の培地排出部フィルターを構成する。
【0054】
PDMSブロック21の厚みは例えば1.0mmである。PDMSブロック21は、貫通孔21a,21b,21c,21d、凹部溝21e及び貫通孔21fを備えている。例えば、凹部溝21eはPDMSブロック21のモールディング時に形成されたものである。貫通孔21a,21b,21c,21d,21fはPDMSブロック21のモールディング後に形成されたものである。
【0055】
貫通孔21aはシリコーンゴムシート19の貫通孔19aと重なる位置に形成されている。貫通孔21aの直径は例えば1.5mmである。
貫通孔21bはシリコーンゴムシート19の貫通孔19bと重なる位置に形成されている。貫通孔21bの直径は例えば4.5mmである。
【0056】
貫通孔21cはシリコーンゴムシート19の貫通孔19cと重なる位置に形成されている。貫通孔21cの直径は例えば1.5mmである。
貫通孔21dはシリコーンゴムシート19の貫通孔19dと重なる位置に形成されている。貫通孔21dの直径は例えば1.5mmである。
【0057】
凹部溝21eはシリコーンゴムシート19と貼り合わされる面に形成されている。凹部溝21eの深さは例えば0.2mmである。凹部溝21eは肝組織培養室29及びシリコーンゴムシート19の貫通孔19eと重なる位置から肝組織培養室29とは重ならない位置にまたがって形成されている。凹部溝21eの深さは例えば0.2mmである。貫通孔19eと重なる位置の凹部溝21eに複数の突起が形成されている。これらの突起はフィルター17が凹部溝21eの底面に貼り付くことを防止するためのものである。
【0058】
貫通孔21fは肝組織培養室29とは重ならない位置で凹部溝21eと重なる位置に形成されている。貫通孔21fの直径は例えば1.5mmである。
【0059】
シリコーンゴムシート23の厚みは例えば0.2mmである。シリコーンゴムシート23は貫通孔23a,23b,23c,23d、長穴23e及び貫通孔23fを備えている。
貫通孔23aはPDMSブロック21の貫通孔21aと重なる位置に形成されている。貫通孔23aの直径は例えば1.5mmである。
【0060】
貫通孔23bはPDMSブロック21の貫通孔21bと重なる位置に形成されている。貫通孔23bの直径は例えば4.5mmである。
貫通孔23cはPDMSブロック21の貫通孔21cと重なる位置に形成されている。貫通孔23cの直径は例えば1.5mmである。
【0061】
貫通孔23dはPDMSブロック21の貫通孔21dと重なる位置に形成されている。貫通孔23dの直径は例えば1.5mmである。
長穴23eの幅寸法は例えば2.0mmである。長穴23eの一端は貫通孔23bとつながっている。
貫通孔23fはPDMSブロック21の貫通孔21fと重なる位置に形成されている。貫通孔23fの直径は例えば1.5mmである。
【0062】
PDMSブロック25の厚みは例えば1.0mmである。PDMSブロック25は、貫通孔25a,25b,25c,25d,25e,25f及び凹部溝25g,25hを備えている。例えば、凹部溝25g,25hはPDMSブロック25のモールディング時に形成されたものである。貫通孔25a,25b,25c,25d,25e,25fはPDMSブロック25のモールディング後に形成されたものである。
【0063】
貫通孔25aはシリコーンゴムシート23の貫通孔23aと重なる位置に形成されている。貫通孔25aの直径は例えば1.5mmである。
貫通孔25bはシリコーンゴムシート23の貫通孔23bと重なる位置に形成されている。貫通孔25bの直径は例えば4.5mmである。
【0064】
貫通孔25cはシリコーンゴムシート23の貫通孔23cと重なる位置に形成されている。貫通孔25cの直径は例えば1.5mmである。
貫通孔25dはシリコーンゴムシート23の貫通孔23dと重なる位置に形成されている。貫通孔25dの直径は例えば1.5mmである。
【0065】
貫通孔25eはシリコーンゴムシート23の貫通孔23eと重なる位置に形成されている。貫通孔25eの直径は例えば1.5mmである。
貫通孔25fはシリコーンゴムシート23の貫通孔23fと重なる位置に形成されている。貫通孔25fの直径は例えば1.5mmである。
【0066】
凹部溝25g,25hはシリコーンゴムシート23が貼り合わされる面とは反対側の面(PDMSブロック27が貼り合わされる面)に形成されている。凹部溝25gの深さは例えば0.6mmである。凹部溝25gの幅寸法は例えば2.0mmである。凹部溝25hの深さは例えば0.2mmである。凹部溝25hの幅寸法は例えば1.7mmである。
【0067】
凹部溝25gの一端は貫通孔25bとつながっている。
凹部溝25gの一端は貫通溝25cと重なる位置に形成されている。凹部溝25gの他端は貫通溝25dと重なる位置に形成されている。
【0068】
PDMSブロック27の厚みは例えば1.0mmである。PDMSブロック27は、貫通孔27a,27b,27c,27dを備えている。例えば、貫通孔27a,27b,27c,27dはPDMSブロック27のモールディング後に形成されたものである。
【0069】
貫通孔27aはPDMSブロック25の貫通孔25aと重なる位置に形成されている。貫通孔27bはPDMSブロック25の貫通孔25fと重なる位置に形成されている。貫通孔27cはPDMSブロック25の凹部溝25gの先端部分と重なる位置に形成されている。貫通孔27dはPDMSブロック25の貫通孔25eと重なる位置に形成されている。
貫通孔27a,27b,27c,27dの直径は例えば1.5mmである。
【0070】
蓋部分5の形成工程を簡単に説明する。
凹部溝25g,25hが形成されたPDMSブロック25が準備される。また、長穴23eが形成されたシリコーンゴムシート23が準備される。凹部溝25g,25hが形成された面とは反対側のPDMSブロック25の面にシリコーンゴムシート23が貼り付けられる。この際、貼り合わせ前に、PDMSブロック25のシリコーンゴムシート23が貼り付けられる面に酸素プラズマ処理が施されることが好ましい。
【0071】
貼り合わせ後のPDMSブロック25及びシリコーンゴムシート23に対して直径が1.5mmの貫通孔25eが形成される。
【0072】
凹部溝21eが形成されたPDMSブロック21が準備される。凹部溝21eが形成された面とは反対側のPDMSブロック21の面と、シリコーンゴムシート23のPDMSブロック25とは反対側の面が貼り合わされる。この際、貼り合わせ前に、PDMSブロック21のシリコーンゴムシート23が貼り付けられる面に酸素プラズマ処理が施されることが好ましい。
【0073】
貼り合わせ後のPDMSブロック21、シリコーンゴムシート23及びPDMSブロック25に対して、貫通孔21a,23a,25a、貫通孔21b,23b,25b、貫通孔21c,23c,25c、貫通孔21d,23d,25d及び貫通孔21f,23f,25fが形成される。この際に貫通孔21b,23b,25bの直径は5mmに拡げられる。貫通孔21a,23a,25a、貫通孔21c,23c,25c、貫通孔21d,23d,25d及び貫通孔21f,23f,25fの直径は1.5mmである。
【0074】
2つのフィルター15,17が挟み込まれたシリコーンゴムシート13,19が準備される。貼り合わせ後のPDMSブロック21、シリコーンゴムシート23及びPDMSブロック25に対して、PDMSブロック21の凹部溝21eが形成された面にシリコーンゴムシート19が貼り合わされる。
【0075】
貫通孔27a,27b,27c,27dが形成されたPDMSブロック27が準備される。貼り合わせ後のシリコーンゴムシート13,19、PDMSブロック21、シリコーンゴムシート23及びPDMSブロック25に対して、シリコーンゴムシート13にPDMSブロック27が貼り合わされる。これにより、蓋部分5が完成される。
【0076】
細胞培養用デバイス1において、本体部分3と蓋部分5は、例えばPDMSブロック11とシリコーンゴムシート13の自己吸着性によって接合される。これにより、本体部分3と蓋部分5は、例えばネジや粘着剤などの特別な固定手段を用いることなく、安定して固定される。さらに、必要に応じて本体部分3と蓋部分5を容易に着脱することができる。
【0077】
細胞培養用デバイス1において、本体部分3の貫通孔9a,11aは肝組織培養室29(第1の培養室)を構成している。また、蓋部分5のシリコーンゴムシート13の貫通孔13eは肝組織培養室29の一部分を構成している。肝組織培養室29の底面はベースプレート7で構成されている。肝組織培養室29の上面はフィルター17で構成されている。
【0078】
蓋部分5の貫通孔19b,21b,23b,25bは腸管上皮細胞培養室31(第2の培養室)を構成している。腸管上皮細胞培養室31の下面はフィルター15で構成されている。腸管上皮細胞培養室31の上面はPDMSブロック27で構成されている。
【0079】
蓋部分5の貫通孔27a,25a,23a,21a、長穴13a、貫通孔13b、長穴13c、貫通孔19c,21c,23c,25c、凹部溝25h、貫通孔25d,23d,21d,19d,13dは培地供給路33(第1の導入流路)を構成している。また、本体部分3の貫通孔11d及び凹部11bも培地供給路33の一部分を構成している。貫通孔27aの端部は培地導入口33aとなる。
【0080】
蓋部分5の貫通孔19e、凹部溝21b及び貫通孔21f,25f,27bは培地排出路35(第1の排出流路)を構成している。貫通孔27bの端部は培地排出口35aとなる。
【0081】
蓋部分5の貫通孔27c,25i及び凹部溝25gは試薬導入路37(第2の導入流路)を構成している。貫通孔27cの端部は試薬導入口37aとなる。
蓋部分5の貫通孔27d,25e及び長穴23eは試薬排出路39(第2の排出流路)を構成している。貫通孔27dの端部は試薬排出口39aとなる。
【0082】
試薬導入路37を構成する凹部溝25gの深さは例えば0.6mmである。また、試薬排出路39を構成する長穴23eの深さであるシリコーンゴムシート23の厚みは例えば0.2mmである。試薬導入路37の流路の高さが試薬排出路39の流路の高さよりも大きくなっている理由は、腸管上皮細胞培養室31への細胞導入を容易にするためである。
【0083】
また、培地供給路33において、例えば長穴13c及び貫通孔19c,21c,23c,25cの部分と、貫通孔25d,23d,21d,19d,13dの部分は、それぞれ液体採取部41を構成している。液体採取部41は培地供給路33において肝組織培養室29と腸管上皮細胞培養室31との間に設けられている。
【0084】
液体採取部41の上壁面を構成するPDMSブロック27は、尖端の鋭利な吸引器具により貫通でき、かつ貫通後に吸引器具を引き抜くとその貫通孔を弾性によって閉じることができる弾性部材である。液体採取部41から必要に応じて液体、例えば培地が採取される。
【0085】
なお、この実施例では2箇所の液体採取部41が設けられているが、液体採取部41は1箇所であってもよい。また、凹部溝25hの部分が液体採取部として使用されることも可能である。
【0086】
細胞培養用デバイス1において、肝組織が培養される本体部分3と、腸管上皮細胞が培養される蓋部分5は着脱可能である。
蓋部分5の腸管上皮細胞培養室31に、試薬導入口39aから腸由来の細胞、例えば腸管上皮細胞(ここではCaco2)が培地と共に導入される。腸管上皮細胞はフィルター15上でタイトジャンクションが形成されるような条件で培養される。例えば、本体部分3と蓋部分5が分離された状態で、蓋部分5のみで腸管上皮細胞が培養される。
【0087】
肝組織の培養方法の例について説明する。例えば本体部分3が冷却された状態で、肝組織培養室29にゲルが足場として導入される。このゲルは例えばEHS−gelである。EHS−gelは、EHSマウス肉腫細胞から単離した基底膜調製物であり、ラミニン、IV型コラーゲン及びプロテオグリカンを豊富に含んでいる。EHS−gelは低温で液状化し、常温で固体状となる。したがって、細胞培養用デバイス1を冷却した状態でEHS−gelを肝組織培養室29に流し込み、例えば37℃のインキュベーター内又は室温で静置することにより肝組織培養室29の底面にEHS−gelを固定させることができる。
【0088】
ゲル上に内皮細胞(例えばGH7)が播種される。ゲル上で内皮細胞のネットワークが形成される。内皮細胞のネットワークに肝実細胞が播種される。肝組織培養室29内において、ゲル上で内皮細胞系の細胞と肝細胞系の細胞を含む共培養系が管状の構造をもつように共培養される。内皮細胞系の細胞は、例えば、類胴内皮細胞やヒト臍帯静脈(動脈)内皮細胞、TD2、GH7などである。肝細胞系の細胞は、例えば、肝実質細胞やHepaRG、Huh−7、Hep G2、TLR2、Hepa1−6、肝前駆細胞などである。なお、内皮細胞系の細胞と肝細胞系の細胞を含む共培養系において、内皮細胞系の細胞及び肝細胞系の細胞とは異なる細胞が含まれていてもよい。
【0089】
蓋部分5の腸管上皮細胞培養室31で腸管上皮細胞が十分増殖し、タイトジャンクションを形成していることを確認する。肝組織培養室29で肝組織が培養されている本体部分3と、腸管上皮細胞培養室31で腸管上皮細胞が培養されている蓋部分5とが貼り合わされる。本体部分3と蓋部分5の接合面はともにシリコーンゴム系の素材である。したがって、本体部分3と蓋部分5が貼り合わされた状態で適切な圧力を保持できるような簡単なジグが用いられることによって、本体部分3と蓋部分5の間の液密が維持される。
【0090】
また、本体部分3のPDMSブロック11の蓋部分5との接触面に凸形状の凸部11cが形成されている。凸部11cの上面が蓋部分5のシリコーンゴムシート13と接合される。本体部分3と蓋部分5の接触面の平面サイズは細胞培養用デバイス1の平面サイズよりも小さくなる。この構造は、送液や培養に無関係な細胞培養用デバイス1の外周部での本体部分3と蓋部分5の接触を無くし、不要な部分への力の分散を抑制でき、液漏れを防止する効果を奏する。
【0091】
培地導入口33aに例えばシリンジポンプ等で培地が送り込まれる。送り込まれた培地は、腸管上皮細胞が培養されている腸管上皮細胞培養室31のフィルター15の下を通る培地供給路33を経て、肝組織培養室29へと流れ込む。この培地は、フィルター17と培地排出路35を経て、培地排出口35aから排出される。
【0092】
腸管上皮細胞培養室31には、試薬導入口37aから試薬導入路37を経て培地又は試薬を供給することができる。この培地や試薬は、腸管上皮細胞培養室31を通って試薬排出路39を経て試薬排出口39aから排出される。腸管上皮細胞培養室31に試薬が供給された際には、試薬が腸管上皮細胞に吸収された後に、代謝物が培養面のフィルター15を通過して肝組織培養室29に繋がる培地供給路33に供給される。したがって、フィルター15上に腸管上皮細胞がタイトジャンクションを形成して密に培養されていることが重要である。
【0093】
培地供給路33に供給された薬物の代謝物は、培地供給路33及び液体採取部41を介して、肝組織培養室29内で培養されている肝組織へ到達する。この構造は、腸壁から取り込まれた薬物が肝臓に届く仕組みを模擬的に形成でき、生体内に近い薬物動態評価が可能になる。
【0094】
このように、細胞培養用デバイス1は、2種類の細胞を培養でき、一方の細胞の代謝物を他方の細胞に導入することができる。
【0095】
また、細胞培養用デバイス1は、肝組織培養室29が形成されている本体部材3と腸管上皮細胞培養室31が形成されている蓋部材5が着脱可能である。そして、本体部材3と蓋部材5を分離した状態で、それぞれ適切な条件で肝組織の培養と腸管上皮細胞の培養を進めておいて、良いタイミングで本体部材3と蓋部材5を組み合わせることができる。したがって、細胞培養用デバイス1は効率的な計測が可能である。
【0096】
図3は、本実施例に係る細胞培養用デバイス1を用いた細胞培養用システムの一実施例を説明するための概略図である。
【0097】
細胞培養用システム43は、細胞培養用デバイス1と、細胞培養用デバイス1に培地を供給する培地供給部を組み合わせたものである。その培地供給部は、培地収容部45、培地供給管47、培地排出管49、廃液収容部51、送液ポンプ53及び制御部55を備えている。
【0098】
培地供給管47の一端は培地収容部45に挿入されている。培地供給管47の他端は細胞培養用デバイス1の培地導入口33aに接続されている。培地排出管49の一端は細胞培養用デバイス1の培地排出口35aに接続されている。培地排出管49の他端は廃液収容部51に挿入されている。送液ポンプ53は培地供給管47に接続されている。制御部55は送液ポンプ53の動作を制御する。
【0099】
培地収容部45に収容された培地は、送液ポンプ53によって吸引され、培地供給管47を通って培地導入口33aから細胞培養用デバイス1に送られる。培地導入口33aから細胞培養用デバイス1に供給された培地は、培地供給路33を通過して肝組織培養室29の周面から肝組織培養室29内に導入される(
図1を参照。)。
【0100】
肝組織培養室29への培地の導入に伴い、肝組織培養室29内の培地の一部は、肝組織培養室29からフィルター17及び培地排出路35を介して培地排出口35aから外部へ排出される。培地排出口35aから排出された培地は培地排出管49を介して廃液収容部51に排出される。
【0101】
細胞培養用デバイス1は、肝組織培養室29内の培地を培地排出路35から排出する際にフィルター17を通過させるので、剥離したゲル等によって培地排出路35が詰まる確率を低減することができる。
【0102】
細胞培養用システム43は、培地を生体内と同様に少しずつ供給することにより、細胞や組織の周辺の環境を安定させることが可能である。したがって、安定した細胞の培養を実現できる。このように、細胞培養用デバイス1及び細胞培養用システム43は細胞の長期培養に有利である。
【0103】
また、腸管上皮細胞培養室31に試薬が供給された際には、試薬が腸管上皮細胞に吸収された後に、代謝物が培養面のフィルター15を通過して肝組織培養室29に繋がる培地供給路33に供給される。培地供給路33に供給された代謝物は培地とともに肝組織培養室29に供給される。このように、細胞培養用デバイス1及び細胞培養用システム43は、生体内に近い環境で試薬の試験を行うことができる。
【0104】
また、細胞培養用デバイス1は、腸管上皮細胞培養室31から培地供給路33に供給された代謝物を培地とともに液体採取部41で採取することが可能である(
図1を参照。)。この代謝物の採取は、例えば、尖端の鋭利な吸引器具を液体採取部41の上壁面を構成するPDMSブロック27を貫通させて液体採取部41内に挿入し、代謝物及び培地を吸引することによって行われる。吸引器具がPDMSブロック27から引き抜かれると、吸引器具の貫通によって形成された貫通孔は、PDMSブロック27の弾性力によって閉じられる。したがって、液体採取部41で代謝物等が採取された後においても、肝組織培養室29に培地等の供給を続けることができる。
【0105】
図3に示された細胞培養用システム43は、送液ポンプ53を培地供給管47に備え、肝組織培養室29内に培地を連続送液する機能を備えているが、本発明の細胞培養用システムはこれに限定されない。
【0106】
例えば、
図4に示されるように、本発明の実施例である細胞培養用システム57は、培地排出管49に送液ポンプ53を備え、肝組織培養室29内から培地を連続吸引する機能を備えているようにしてもよい。なお、本発明の細胞培養用システムは、
図3又は
図4に示された構成に限定されない。
【0107】
本発明は、培地を生体内と同様に少しずつ供給することにより、細胞や組織の周辺の環境を安定させることが可能である。したがって、本発明は安定した細胞の培養を実現できる。
【0108】
ところで、生体内において、体液は腎臓により透析されながら循環している。そういった意味では、上述した細胞培養用システム43,57は微量な発現物質の蓄積のような効果を評価することができない。
【0109】
そこで、本発明の細胞培養用システムは、培地を循環するような系とし、その途中に透析の機能が追加されることにより、実際の生体により近い評価系を実現することができる。
【0110】
本発明によれば、例えば薬物動態試験を行う際に、腸での吸収の影響を加味した肝機能評価が可能であり、生体に近い試験が実現できる。また、本発明の細胞培養システムは流体制御技術を用いたシステムであり、例えば腎臓での透析の効果を加えること、さらには他の臓器の影響も加味するような統合的なシステム構築への展開も可能である。
【0111】
図5は、本実施例に係る細胞培養用デバイス1を用いた細胞培養用システムのさらに他の実施例を説明するための概略図である。
図5において、
図3及び
図4と同様の機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0112】
細胞培養用システム59の培地供給部は、細胞培養用デバイス1の肝組織培養室29内に培地を循環させて供給するものである。その培地供給部は、培地収容部45、培地供給管47、培地排出管49、送液ポンプ53、制御部55及び透析部61を備えている。
【0113】
培地排出管49の一端は細胞培養用デバイス1の培地排出口35aに接続されている。培地排出管49の他端は培地収容部45に接続されている。培地排出管49の途中に透析部61が設けられている。透析部61は例えば小型の透析器である。透析部61は、循環される培地に対して不要な物質の濾過を行う機能を備えている。
【0114】
細胞培養用システム59は、培地が収容された培地収容部45から例えばシリンジポンプ等の送液ポンプ53によって培地を吸い上げ、細胞培養用デバイス1に供給した後、透析部61を経て元の培地収容部45に戻す。これにより、細胞培養用システム59は、実際の生体により近い環境で試薬の評価等をすることができる。
【0115】
図6は、本実施例に係る細胞培養用デバイス1を用いた細胞培養用システムのさらに他の実施例を説明するための概略図である。
図6において、
図5と同様の機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0116】
本発明の実施例である細胞培養用システム63は、
図5に示された細胞培養用システム59と比較して、送液ポンプ53の接続位置が異なっている。細胞培養用システム63において、送液ポンプ53は細胞培養用デバイス1と透析部61の間で培地排出管49に接続されている。なお、送液ポンプ53は、透析部61と培地収容部45の間で培地排出管49に接続されていてもよい。
【0117】
図7は、本実施例に係る細胞培養用デバイス1を用いた細胞培養用システムのさらに他の実施例を説明するための概略図である。
図7において、
図3と同様の機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0118】
本発明の実施例である細胞培養用システム65は、
図3に示された細胞培養用システム43と比較して、透析部67をさらに備えている。透析部67は、培地供給管47と培地排出管49の2本の流路の間に設けられた透析膜によって構成されている。この透析膜は、例えばSpectraシリーズ(SPECTRUM社の製品)である。
【0119】
本発明の実施例である細胞培養用デバイス1は、例えば流速40μL/h(マイクロリットル/時)程度の培地の供給によって肝組織培養室29内で細胞を培養することができるので、必要な培地の量が少ない。したがって、本発明の実施例である細胞培養用システム65は、透析部67として透析膜を用いることも可能である。
なお、細胞培養用システム65は、培地に替えて透析液を細胞培養用デバイス1に供給するようにしてもよい。
【0120】
また、送液ポンプ53は、
図8に示された本発明の実施例である細胞培養用システム69にように、細胞培養用デバイス1と透析部61の間で培地排出管49に接続されていてもよい。また、送液ポンプ53は、透析部61と廃液収容部51の間で培地排出管49に接続されていてもよい。また、送液ポンプ53は、培地収容部45と透析部61の間で培地供給管47に接続されていてもよい。
【0121】
ところで、上記で説明した細胞培養用デバイス1は液体採取部41を備えている。これに対して、本発明の細胞培養用デバイスは液体採取部を備えていなくてもよい。
【0122】
図9は、細胞培養用デバイスの他の実施例を説明するための概略的な平面図及び断面図である。
図10は、この実施例の細胞培養用デバイスを分解して示した平面図である。
図9及び
図10において、
図1及び
図2と同じ部分には同じ符号が付されている。
【0123】
この実施例の細胞培養用デバイス71は、
図1及び
図2を参照して説明された細胞培養用デバイス1と比較して、液体採取部41を備えていない。つまり、細胞培養用デバイス71は、貫通孔19c,21c,23c,25cと貫通孔13d,19d,21d,23d,25d(
図1及び
図2を参照。)を備えていない。また、細胞培養用デバイス71は凹部溝25h(
図1及び
図2を参照。)を備えていない。
【0124】
細胞培養用デバイス71のシリコーンゴムシート13において、貫通孔13bとは反対側の長穴13cの端部の先端はPDMSブロック11の貫通孔11dと重なる位置に形成されている。
培地供給路33は、貫通孔27a,25a,23a,21a,19a、長穴13a、貫通孔13b、長穴13c、貫通孔11d及び凹部11bによって形成されている。
【0125】
細胞培養用デバイス71は、液体採取部41(
図1及び
図2を参照。)の効果を除いて、
図1及び
図2を参照して説明された細胞培養用デバイス1と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0126】
また、例えば
図3から
図8を参照して説明された細胞培養システムは、細胞培養用デバイス1に替えて細胞培養用デバイス71を用いることが可能である。
【0127】
以上、本発明の実施例を説明したが、実施例における構成、配置、数値等は一例であり、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0128】
例えば、本発明の細胞培養用デバイスの上記実施例において、第1の培養室は肝組織培養室29であり、第2の培養室は腸管上皮細胞培養室31であるが、本発明の細胞培養用デバイスにおいて第1の培養室及び第2の培養室はこれらに限定されない。第1の培養室及び第2の培養室において培養される細胞はどのような細胞であってもよい。
【0129】
また、細胞培養用デバイスの上記実施例において、培地排出路35(第1の排出流路)はフィルター17(第2の多孔質膜)を介して肝組織培養室29(第1の培養室)に接続されている。これにより、例えば細胞や足場材(ゲル)などの肝組織培養室29内の物質が培地排出路35に流入することに起因する培地排出路35の目詰まりが防止される。ただし、本発明の細胞培養用デバイスにおいて、フィルター17(第2の多孔質膜)は配置されていなくてもよい。
【0130】
また、上記実施例の細胞培養用デバイス1,71は、本体部分3と、本体部分3に着脱可能に取り付けられる蓋部分5とを有している。さらに、肝組織培養室29(第1の培養室)は、本体部分3に形成され、かつ本体部分3の蓋部分5との接触面に開口を有している。これにより、本体部分3と蓋部分5を分離させた状態で、例えば細胞や足場材、培地などの物質を肝組織培養室29に培地供給路33(第1の導入流路)及び培地排出路35(第1の排出流路)を介さずに配置することができる。ただし、本発明の細胞培養用デバイスは、着脱可能な本体部分と蓋部分を備えていない構造であってもよい。
【0131】
さらに、上記実施例の細胞培養用デバイス1,71において、本体部分3及び蓋部分5の接触面の材料はPDMS又はシリコーンゴムで形成されている。これにより、例えばネジや粘着剤などの特別な固定手段を用いることなく、自己吸着性によって蓋部分5を本体部分3に安定して固定することができる。さらに、必要に応じて容易に本体部分3と蓋部分5を着脱することができる。ただし、本体部分3及び蓋部分5の接触面の材料はPDMS及びシリコーン系ゴムに限定されず、他の材料であってもよい。
【0132】
また、上記実施例の細胞培養用デバイス1,71は、本体部分3の蓋部分5との接触面が凸形状に形成された凸部11cを備えている。これにより、本体部分3と蓋部分5の接触面の平面サイズは細胞培養用デバイス1,71の平面サイズよりも小さくなっている。本体部分3と蓋部分5の接触面を小さくすることにより、不要な部分への力の分散が抑制される。これにより、本体部分3と蓋部分5の密着性が向上される。なお、蓋部分5の本体部分3との接触面のみに凸形状が形成されていてもよいし、本体部分3の蓋部分5の両方の接触面に凸形状が形成されていてもよい。また、本発明の細胞培養用デバイスにおいて、本体部分3及び蓋部分5の接触面はともに平坦面であってもよい。
【0133】
また、上記実施例の細胞培養用デバイス1,71において、腸管上皮細胞培養室31(第2の培養室)は蓋部分5に形成されている。これにより、第1の培養室が形成された本体部分と、第2の培養室が形成された蓋部分とを分離して、第1の培養室内と第2の培養室内で互いに異なる条件及び環境でそれぞれ細胞を培養できる。ただし、本発明の細胞培養用デバイスにおいて、腸管上皮細胞培養室31(第2の培養室)は、本体部分3に形成されていてもよいし、本体部分3と蓋部分5にまたがって形成されていてもよい。