(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の蓄電装置の一実施の形態を図面と共に説明する。
本実施の形態に係る蓄電装置は、電動車両、例えば電気自動車の電動機駆動システムにおける車載電源装置に適用されるものである。この電気自動車の概念には、内燃機関であるエンジンと電動機とを車両の駆動源として備えたハイブリッド電気自動車、および電動機を車両の唯一の駆動源とする純正電気自動車等が含まれる。
【0010】
[蓄電装置全体構成]
図1は、本発明に係る蓄電装置の一実施の形態の外観斜視図であり、
図2は、
図1に図示された蓄電装置の分解斜視図である。蓄電装置1は、たとえば、リチウムイオンバッテリ装置であり、蓄電装置1の筐体である蓄電ケース2内に、リチウムイオン等の複数の二次電池セル(蓄電セル)101(
図5参照)を備えた複数の蓄電モジュール40A〜40Cが複数収容されている。蓄電ケース2は、大きな直方体の前側に小さな直方体が連結された形状を有している。なお、以下の説明において、前後方向、左右方向、上下方向を
図1、
図2に図示する方向として説明する。
図1、
図2に図示する各方向は、蓄電装置1を搭載した車両における前後方向、左右方向、上下方向とそれぞれ一致している。
【0011】
蓄電ケース2は、メインケース11、サイドカバー12、アンダーカバー13、トップカバー14により構成されている。メインケース11は、上部、下部および左部が開口された枠形状を呈する部材である。メインケース11、サイドカバー12、アンダーカバー13、トップカバー14は、たとえば、それぞれ、金属製の薄板をプレス加工することによって形成される。
サイドカバー12は、メインケース11の右部壁11aに対向して配置される部材であり、左部壁を構成し、メインケース11の左部の開口を閉じる。サイドカバー12には、通しボルトである、後述するボルト81が挿通される貫通孔12aが設けられている。アンダーカバー13は、メインケース11の下部開口を閉じる部材であり、トップカバー14は、メインケース11の上部開口を閉じる部材である。サイドカバー12、アンダーカバー13、トップカバー14のそれぞれは、メインケース11にボルト等の締結部材により固定され、内部に電子部品を収容するための空間を形成する。
【0012】
蓄電ケース2内には、蓄電モジュール40A〜40Cが収容される蓄電モジュール収容エリア2A、およびジャンクションボックス3が収容される制御ユニット収容エリア2Bが形成されている。ジャンクションボックス3は、充放電電流の測定、信号出力や、車両起動時に、インバータ内コンデンサへの突入電流を抑制するプリチャージ機能を有する制御回路である。
蓄電モジュール収容エリア2Aには、複数個(本実施形態では3個)の蓄電モジュール40A〜40Cが配置される。各蓄電モジュール40A〜40Cは、直方体のブロック形状を有している。本実施の形態では、各蓄電モジュール40A〜40Cは、それぞれ、メインケース11内でその長手方向を上下方向に延在し、互いに前後方向に隣接して並列に配置されて収容されている。各蓄電モジュール40A〜40Cは、制御ユニット収容エリア2Bから離反する方向、すなわち後方向に向かって蓄電モジュール40A、40B、40Cの順番に、所定間隔で直線状に配列されている。なお、以下において、適宜、蓄電モジュール40A、40B、40Cを代表して蓄電モジュール40として説明する。後述するように、蓄電モジュール40は、サイドカバー12とともにボルト81によってメインケース11に固定される。なお、メインケース11の右部壁11aの右側面には、ボルト81と締結される裏ナット82(
図10(b)参照)が溶接されて固定されている。
【0013】
制御ユニット収容エリア2Bの上方には、リチウムイオンバッテリコントローラ(以下、LBC)4が配設されている。LBC4は、蓄電モジュール40および各セルに関し、電圧・電流・温度・充放電などを測定、監視、制御するための制御回路であり、LBCカバー15で覆われている。
【0014】
蓄電ケース2の蓄電モジュール収容エリア2Aと制御ユニット収容エリア2Bとは仕切り部材80により仕切られている。また、
図1に図示されるように、蓄電ケース2のトップカバー14から、トップカバー14の開口部を挿通してSD(サービスディスコネクト)スイッチ53が外部に突出している。
【0015】
[蓄電モジュールの構造]
図3は、
図2に図示された蓄電モジュールの斜視図であり、
図4は、
図3に図示された蓄電モジュールの模式的外観斜視図である。また、
図5(a)は、
図3に図示された蓄電モジュールの構造を説明するための分解斜視図であり、
図5(b)は、蓄電モジュールの模式的外観斜視図である。各蓄電モジュール40A〜40Cの左部には、冷媒導入口116が設けられている。また、各蓄電モジュール40A〜40Cの右部には、冷媒導出口118が設けられている。各蓄電モジュール40A〜40Cには、長手(上下)方向両側に分かれた部位に、
図4の模式図に示すように、正極端子(外部端子)41A〜41Cと負極端子(外部端子)42A〜42Cが設けられている。各蓄電モジュール40A〜40Cは、直方体形状の保持ケース111を有し、保持ケース111の4つのコーナー部には、左右方向に延在される円筒型の筒状部111a(筒状突出部)が一体形成されている。各筒状部111aには、各筒状部111aを軸方向に貫通するモジュール固定用貫通孔(挿通部)43がそれぞれ設けられている。上述したボルト81は、サイドカバー12の貫通孔12aおよび蓄電モジュール40の筒状部111aのモジュール固定用貫通孔43を挿通されて、メインケース11の裏面に溶接された裏ナット82に螺合される。
【0016】
[蓄電モジュールの電気的接続]
図6(a)は各蓄電モジュールの電気的接続状態を説明するための斜視図であり、
図6(b)は、
図6(a)の下面図である。また、
図7は、各蓄電モジュール40A〜40Cへの強電ハーネス61〜65の接続状態を説明するための模式的側面図である。
蓄電モジュール40Aの正極端子41Aから蓄電モジュール40Cの負極端子42Cの6つの外部端子には、強電ハーネス(ワイヤハーネス)61〜65が接続されており、これによって蓄電モジュール40A〜40Cは直列に接続されている。すなわち、ジャンクションボックス3のプラス端子3aと蓄電モジュール40Aの正極端子41Aとは、強電ハーネス61で接続されており、蓄電モジュール40Aの負極端子42Aと蓄電モジュール40Bの正極端子41Bとは、強電ハーネス62で接続されている。
【0017】
蓄電モジュール40Bの負極端子42Bと蓄電モジュール40Cの正極端子41Cとは、強電ハーネス63、SDスイッチ53、および強電ハーネス64を介して接続されている。蓄電モジュール40Cの負極端子42Cとジャンクションボックス3のマイナス端子3bとは、強電ハーネス65で接続されている。
【0018】
SDスイッチ53は、蓄電装置1の保守、点検の時の安全性を確保するために設けられた安全装置であり、スイッチとヒューズとを電気的に直列に接続した電気回路から構成され、サービスマンによって保守、点検時に操作される。本実施の形態では、SDスイッチ53は、上述したように、蓄電モジュール40Bの負極端子42Bと蓄電モジュール40Cの正極端子41Cとの間に設けられていて、蓄電モジュール40Bと蓄電モジュール40Cとの間を電気的に接続または遮断する。上述した強電ハーネス61〜65と蓄電モジュール40A〜40Cの接続は、半田付け等の接合が望ましく、強電ハーネス61〜65とジャンクションボックス3またはSDスイッチ53との接続は、コネクタによる接続が好ましい。しかし、どちらも半田付け等の接合にしたり、コネクタによる接続としたりしてもよい。
【0019】
蓄電モジュール40Cは、内部に収容する二次電池セル101の数が、蓄電モジュール40A、40Bよりも少なく、上下方向の高さが蓄電モジュール40A、40Bよりも小さく形成されている。配列方向の中央に配置された蓄電モジュール40Bは、蓄電モジュール40Aおよび40Cに対して上下方向に反転して配置されている。このため、蓄電モジュール40Aの負極端子42Aと蓄電モジュール40Bの正極端子41Bとは、共に下方向に配置され、長さの短い強電ハーネス62により接続することが可能となっている。
【0020】
図8は、各蓄電モジュール40A〜40Cへの電圧検出線86の接続状態を説明するための模式図である。蓄電モジュール40A〜40Cは、その長手(上下)方向の側面に沿って配置された2枚の電圧検出基板201、202をそれぞれ有している。電圧検出線86は、LBC4と、各電圧検出基板201のコネクタ接続部201a、および各電圧検出基板202のコネクタ接続部202aとを接続している。
また、蓄電モジュール40A〜40Cは、蓄電モジュール40A〜40Cの温度を検出する不図示の温度検出センサを有している。LBC4と各温度検出センサとは、温度センサ線87によって接続されている。
【0021】
蓄電モジュール40A〜40Cは、同様な構造を有している。蓄電モジュール40は、
図5(a)に示すように、蓄電モジュールケース、すなわち、保持ケース111内に複数の二次電池セル101を保持した構成を有しており、本実施の形態では、後述するように、左右方向に3段に二次電池セル101が配列されている。保持ケース111は、
図5(b)に示すように、六面体形状を有している。保持ケース111は、上下方向に離間して対向する上面部112と下面部113、前後方向に離間して対向し上面部112と下面部113の各短部間に亘る一対の縦壁面部114を有する。また、保持ケース111は、たとえば、樹脂により形成されており、左右方向に離反して対向し上面部112、下面部113、一対の縦壁面部114の各長辺部間に亘る一対の左端面部115aと右端面部115bを有する。
【0022】
保持ケース111の左端面部115aには、上述した冷媒導入口116が形成されている。保持ケース111の右端面部115bには、上述した冷媒導出口118が形成されている。
図5(b)は、冷媒導入口116と冷媒導出口118との位置関係を示すための模式図である。空気等の冷媒が冷媒導入口116から保持ケース111内に流入し、保持ケース111内を左右方向に亘って流通し、右部側の冷媒導出口118から流出される。
【0023】
蓄電モジュール40は、蓄電ケース2内に収容された状態で、サイドカバー12に保持ケース111の左端面部115aが対向して配置され(
図2も参照)、左端面部115aの冷媒導入口116がサイドカバー12の不図示の吸気口と対向する。また、蓄電モジュール40の保持ケース111の右端面部115bがメインケース11の右部壁11aと対向して配置され、右端面部115bの冷媒導出口118が右部壁11aの排気口11b(
図2参照)と対向する。
【0024】
上述したように、強電ハーネス61は、蓄電モジュール40Aの上部側の正極端子41Aをジャンクションボックス3に接続する。強電ハーネス63、64は、蓄電モジュール40Bの上部側の負極端子42Bおよび蓄電モジュール40Cの上部側の正極端子41Cを、それぞれ、蓄電モジュール40の上方に配置されたSDスイッチ53に接続する。
一方、
図6(a)に図示されるように、強電ハーネス62、65は、蓄電モジュール40A〜40Cの下面側に配設される。強電ハーネス62は、蓄電モジュール40A〜40Cの配列方向(前後方向)に延在され、隣接する蓄電モジュール40Aの負極端子42Aと蓄電モジュール40Bの正極端子41Bとを接続する。強電ハーネス65は、蓄電モジュール40A〜40Cのうち、ジャンクションボックス3から前後方向に最も離れて配置された蓄電モジュール40Cとジャンクションボックス3とを接続する。このため、強電ハーネス65は、負極側の外部端子である負極端子42Cから、蓄電モジュール40Aのジャンクションボックス3側の側面まで蓄電モジュール40A〜40Cの下方に載置され、蓄電モジュール40A〜40C配列方向(前後方向)に延在されている。
【0025】
強電ハーネス62、65は、接続を容易にするために、また、長さにばらつきもあるため、弛みをもって配設される。このため、蓄電装置1を充放電する際、強電ハーネス62、65が振動して蓄電ケース2のアンダーカバー13に接触し、振動音が発生する。
図2において、アンダーカバー13と蓄電モジュール40A〜40Cとの空間領域2C(
図11、12参照)には、ハーネスホルダ70A〜70Cおよび制振材83が配設されている。ハーネスホルダ70A〜70Cおよび制振材83は、強電ハーネス62、65による振動音の発生を抑制する充放電時のハーネス振動音防止構造を構成する。
以下、このことについて説明する。
【0026】
[充放電時のハーネス振動音防止構造]
図9は、ハーネスホルダによるハーネスの保持構造を示す拡大斜視図である。
図10(a)は、各蓄電モジュールと、蓄電ケースのアンダーカバーおよびトップカバーとの位置関係を示す側面図であり、
図10(b)は、
図10(a)の下面図である。また、
図11は、
図10(b)のXI−XI線断面図であり、
図12は、
図10(b)のXII−XII線断面図である。
【0027】
制振材83は、例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等の弾性材料により形成されている。制振材83は、その長さ(前後方向の長さ)が蓄電モジュール40A〜40C上に延在される強電ハーネス65のほぼ全長と同じで、その幅(左右方向の長さ)が、強電ハーネス65から強電ハーネス62までの領域を覆う、ほぼ、矩形形状を有する。制振材83は、アンダーカバー13に接着されており、メインケース11にアンダーカバー13を固定した状態で、強電ハーネス62、65を蓄電モジュール40A、40Bの保持ケース111の下面部113側に向けて付勢する。これにより、蓄電装置1に充放電する際、強電ハーネス62、65の振動が抑制される。
【0028】
ハーネスホルダ70A〜70Cは、樹脂等の絶縁性部材により形成されている。ハーネスホルダ70A、70Bは、同様な構造を有し、それぞれ、取付用側部71A、71Bと、取付用下部77A、77Bと、一対の支持部72A、72Bと、一対の支持部72A、72Bを連結する連結部(押圧部)73A、73Bと、ガイド部78A、78Bを有する。取付用側部71A、71Bには、それぞれ、複数(本実施形態では2個)の開口部(第1係合部)74A、74Bが設けられている。連結部73A、73Bと、一対の支持部72A、72Bとの境界には、それぞれ、段部76Aa、76Baが形成され、連結部73A、73Bは、それぞれ、段部76Aa、76Baの段差分だけ支持部72A、72Bおよびガイド部78A、78Bより下方に配置される。連結部73A、73Bと、ガイド部78A、78Bとの境界には、それぞれ、規制壁76Ab、76Bbが形成される。取付用下部77A、77Bには、上方向に突出する突出片(第2係合部)75A、75B(
図9、11参照)が設けられている。後述するように、規制壁76Ab、76Bbおよび突出片75A、75Bは、強電ハーネス65が延在方向と直交する方向に移動するのを規制する移動規制部としての機能を有する。
【0029】
ハーネスホルダ70A、70Bの、一対の支持部72A、72Bおよび連結部73A、73B、ガイド部78A、78Bは、取付用側部71A、71Bに対して、ほぼ直交する方向に延在して形成されている。一対の支持部72A、72Bは薄肉に形成されており、それぞれ、取付用側部71A、71Bに対して上下方向に変位可能となっている。一対の支持部72A、72Bおよび連結部73A、73B、ガイド部78A、78Bは、アンダーカバー13に接着された制振材83により上方に、換言すれば、蓄電モジュール40A、40B側に変位する。この状態で、連結部73A、73Bは、強電ハーネス65を左右方向に変位が可能なように蓄電モジュール40A、40Bに向けて付勢する。この詳細は、後述する。
【0030】
ハーネスホルダ70Cは、取付用側部71Cと、取付用下部77Cとを有している。取付用下部77Cの先端には、突出片75Cが設けられている。取付用下部77Cは、取付用側部71Cに対してほぼ直交する方向に延在される。
【0031】
蓄電モジュール40A〜40Cそれぞれの保持ケース111の筒状部111aの軸方向(左右方向)の端部は、左端面部115aの外面より少し突出され、環状の突出部(第1係止部)111b(
図6(a)、(b)参照)となっている。また、蓄電モジュール40A〜40Cそれぞれの保持ケース111の下面部113には、突起部(第2係止部)111c(
図6(b)、
図11参照)が設けられている。
【0032】
ハーネスホルダ70A、70Bは、それぞれ、取付用側部71A、71Bの開口部74A、74Bを蓄電モジュール40A、40Bの筒状部111aの突出部111bに嵌合する。この状態で、ハーネスホルダ70A、70Bは、それぞれ、取付用下部77A、77Bの突出片(第2係合部)75A、75Bを蓄電モジュール40A、40Bの突起部111cに係合する。この係合機構により、ハーネスホルダ70A、70Bは、それぞれ、締結部材を用いることなく、蓄電モジュール40A、40Bに取り付けられる。この状態において、ハーネスホルダ70A、70Bそれぞれの連結部73A、73Bは、蓄電モジュール40A、40Bの保持ケース111の筒状部111a間に配置され、強電ハーネス65を、蓄電モジュール40A、40Bの下面部113側に向けて付勢する。ハーネスホルダ70A、70Bにより蓄電モジュール40A、40B側に付勢された強電ハーネス65は、ハーネスホルダ70A、70Bの規制壁76Ab、76Bbと突出片75A、75Bとの間で、左右方向に、換言すれば、強電ハーネス65の延在方向と直交する方向に変位可能である。これにより、強電ハーネス65の長さが、その公差分ばらついた場合でも、ハーネスホルダ70A、70Bによる強電ハーネス65の蓄電モジュール40A、40Bへ付勢が確実になされるようになっている。このことについて説明する。
【0033】
強電ハーネス65は、低抵抗化のため大きい太さに形成され、剛性が大きくなっている。強電ハーネス65の配設や、外部端子との接合を容易にするため、強電ハーネス65は、接続する接続端子間の長さに対して、余裕のある長さに形成される。従って、強電ハーネス65は、蓄電モジュール40A、40B上に、左右方向に、換言すれば、強電ハーネス65の延在方向と直交する方向に湾曲するように配設される。ここで、強電ハーネス65の長さは、その公差分だけばらつく。強電ハーネス65の長さのばらつきは、蓄電モジュール40A、40B上に配設される強電ハーネス65を左右方向に変位して、湾曲の程度を変えることにより吸収することができる。本発明の一実施の形態では、ハーネスホルダ70A、70Bの規制壁76Ab、76Bbと突出片75A、75Bとの左右方向の間隔が、強電ハーネス65の太さよりも大きくなっており、強電ハーネス65を左右方向に変位することが可能となっている。このように、本発明の一実施の形態では、ハーネスホルダ70A、70Bは、強電ハーネス65の延在方向における長さにばらつきがあっても、強電ハーネス65を、確実に、蓄電モジュール40A、40B側に付勢することが可能な構造となっている。
【0034】
ハーネスホルダ70Cの取付けは、ハーネスホルダ70A、70Bを蓄電モジュール40A、40Bに取り付ける場合と同様であるが、支持部、連結部、ガイド部、段部、規制壁については備えていない。
【0035】
温度センサ線87は、ハーネスホルダ70A、70Bのガイド部78A、78B(
図9参照)内を挿通される。また、電圧検出線86は、ハーネスホルダ70A〜70Cのガイド部79(
図9参照)を挿通される。
【0036】
[ハーネス振動音防止構造の組付け方法]
ハーネス振動音防止構造の組付け方法の一例を説明する。
強電ハーネス61〜65は、所定の接続端子と電気的に接合された状態とされているものとする。
強電ハーネス65を、蓄電モジュール40A〜40Cの保持ケース111の下面部113上に配設する。ハーネスホルダ70A〜70Cを、上述した手順により、それぞれ、蓄電モジュール40A〜40Cに取り付ける。ハーネスホルダ70A、70Bを取り付ける際には、強電ハーネス65が、ハーネスホルダ70A、70Bの規制壁76Ab、76Bbと突出片75A、75Bとの間に配置されるように、必要に応じて、強電ハーネス65を変位させる。制振材83は、予め、アンダーカバー13の内面に接着しておき、アンダーカバー13をメインケース11にボルト等の締結部材により固定する。
【0037】
これにより、強電ハーネス62、65は、制振材83により、直接、または、ハーネスホルダ70A、70Bを介して蓄電モジュール40A、40Bの保持ケース111の下面部113側に付勢される。
【0038】
なお、本発明の背景について補足する。
車両における有効スペースを広げるために、蓄電モジュールの設置空間も、近年、一層の縮小化が進められている。これに伴い、強電ハーネスが配設される空間も縮小されこのため、蓄電装置から耳障りな振動音が発生することが認識されることがある。
本発明者らが原因究明を行ったところ、蓄電モジュールを充放電する際の充放電電流のより、強電ハーネスが振動し、蓄電ケースに接触することに因るものであることが確認された。本発明は、このように、蓄電装置からの振動音の発生が、充放電時における強電ハーネスの振動に起因する騒音低減という、新規な課題を解決するものである。
【0039】
上記本発明の蓄電装置1の一実施の形態によれば下記の効果を奏する。
(1)蓄電モジュール40A〜40Cと蓄電ケース2との間の空間領域2Cに配設される強電ハーネス62、65を、制振材83により蓄電モジュール40A〜40C側に向けて付勢する構成とした。このため、蓄電装置1を充放電する際に生じる強電ハーネス62、65の振動が軽減され、蓄電ケース2または蓄電モジュール40A〜40Cに接触することによる振動音の発生を抑制することができる。
【0040】
(2)強電ハーネス62、65を支持するハーネスホルダ70A、70Bは、その幅(左右方向の長さ)が線状の強電ハーネス62、65の太さよりも大きく形成されている。強電ハーネス62、65の振動エネルギは、長さ方向に沿った線状であるが、ハーネスホルダ70A、70Bを介することで面状となる。振動エネルギが線状から面状に変化することにより、単位面積当たりの振動エネルギが減少する。この減少した振動エネルギが制振材83に伝達されるので、振動吸収効率を増大することができる。
【0041】
(3)ハーネスホルダ70A、70Bの規制壁76Ab、76Bbと突出片75A、75Bとの左右方向の間隔を、強電ハーネス65の太さよりも大きくし、強電ハーネス65をその延在方向と直交する方向に変位することが可能とした。このため、強電ハーネス65の延在方向における長さにばらつきがあっても、ハーネスホルダ70A、70Bにより、強電ハーネス65を、確実に、蓄電モジュール40A、40B側に向けて付勢することが可能である。
【0042】
(4)ハーネスホルダ70A〜70Cの取付用側部71A〜71Cの開口部74A〜74Cおよび突出片75A〜75Cを、それぞれ、蓄電モジュール40A〜40Cの突出部111bおよび突起部111cに係合することで、ハーネスホルダ70A〜70Cを、締結部材などを用いることなく、係合のみにより蓄電モジュール40A〜40Cに取り付けるようにした。この係合機構による取り付け構造では、ハーネスホルダ70A〜70Cは、係合によるガタ分だけガタつくので、剛性の大きい強電ハーネスの配設の形状に伴って取付姿勢が変化し、強電ハーネスの取付けの自由度を大きくすることができる。
【0043】
(5)ハーネスホルダ70A、70Bは、取付用側部71A、71Bと連結部73A、73Bとを、前後方向に間隔をおいて設けられた一対の支持部72A、72Bにより接続する構造とした。一対の支持部72A、72Bは、間隔をおいて形成されているため剛性が小さく、上下方向への変位の追随性がよい。上述したごとく、ハーネスホルダ70A〜70Cは、係合のみにより蓄電モジュール40A、40Bに取り付けられていることと合わせてハーネスホルダ70A、70Bは、強電ハーネス65の振動に対する追随性が良好であり、強電ハーネス65の振動の軽減効率を向上することができる。
【0044】
なお、上記一実施の形態では、制振材83による振動音抑制構造を、強電ハーネス62、65に対して講じた構造として例示した。しかし、蓄電モジュール40A〜40C上に配設される強電ハーネス62、65のうち、延在される長さが最も長く、そのために、その公差が最も大きくされる強電ハーネス65のみに振動音抑制構造を適用してもよい。
【0045】
上記一実施の形態では、蓄電モジュール40A〜40Cに取り付けられるハーネスホルダ70A〜70Cにより強電ハーネス62、65の線状のエネルギを面状エネルギに変える構造として例示した。しかし、ハーネスホルダ70A〜70Cに替えて、強電ハーネス62、65の太さよりも幅広のシート状エネルギ拡散部材を、強電ハーネス62、65と制振材83との間に介装するようにしてもよい。シート状エネルギ拡散部材は、強電ハーネス62、65または制振材83の一方に接着するようにしてもよい。
【0046】
上記一実施の形態では、強電ハーネス65の長さのばらつきを、ハーネスホルダ70A、70Bの規制壁76Ab、76Bbと突出片75A、75Bとの間で、強電ハーネス65の延在方向に直交する方向に変位可能とすることで吸収する構造として例示した。しかし、蓄電モジュール収容エリア2A内の蓄電モジュール40Aの前方にクランプ部材を設け、このクランプ部材に強電ハーネス65を保持することにより強電ハーネス65のばらつきを吸収するようにしてもよい。このような構造の場合には、ハーネスホルダ70A、70Bの規制壁76Ab、76Bbと突出片75A、75Bとの距離を強電ハーネス65の太さとほぼ同一にして、強電ハーネス65を延在方向と直交する方向には、変位できないようにしてもよい。また、ハーネスホルダ70A、70Bに変えてクランパを用い、クランパにより強電ハーネス65を固定するようにしてもよい。
【0047】
上記一実施の形態では、ハーネスホルダ70A、70Bは、強電ハーネス65と直接、接触する構造で例示したが、ハーネスホルダ70A、70Bと強電ハーネス65との間に、別の制振材を介装するようにしてもよい。
【0048】
上記一実施の形態では、ハーネスホルダ70A〜70Cの取付用側部71A〜71Cの開口部74A〜74Cを、蓄電モジュール40A〜40Cの保持ケース111の筒状部111aの端部である円盤状の突出部111bに嵌合する構造として例示した。しかし、保持ケース111に別の円盤状の突出部を設けて、この突出部にハーネスホルダ70A〜70Cの取付用側部71A〜71Cの開口部74A〜74Cを嵌合するようにしてもよい。
【0049】
ハーネスホルダ70A〜70Cは、締結部材を用いて、蓄電モジュール40A〜40Cに取り付けるようにしてもよい。
蓄電ケース2の構造は、種々の形態を採用することができる。
【0050】
本発明は、リチウムイオン二次電池を備える蓄電装置に限られるものではなく、ニッケル水素電池またはニッケル・カドミウム電池、鉛蓄電池のように水溶性電解液を用いる二次電池を備える蓄電装置にも適用することが可能である。また、本発明は、リチウムイオンキャパシタや電解二重層コンデンサ等の蓄電素子を備える蓄電装置にも適用が可能である。
【0051】
その他、本発明の蓄電装置は、発明の趣旨の範囲で、種々、変形して適用することが可能であり、要は、蓄電モジュールケースおよび蓄電モジュールケース内に収容された複数の蓄電セルを備え、それぞれ、正・負極の外部端子を有する複数の蓄電モジュールと、複数の蓄電モジュールが直線状に配列されて収容される蓄電ケースと、蓄電モジュールの正・負極の外部端子に接続される複数のワイヤハーネスと、複数のワイヤハーネスのうち、少なくとも蓄電モジュールの配列方向に延在される長さの最も長いワイヤハーネスと蓄電ケースの一面との間の空間領域に設けられた制振材とを備え、蓄電モジュールの配列方向に延在される長さの最も長いワイヤハーネスの少なくとも一部が、蓄電ケースの一面により制振材を介在して蓄電モジュールケース側に付勢されているものであればよい。
【0052】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2014年第175588号(2014年8月29日出願)