特許第6236558号(P6236558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6236558
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】補聴器及び電池ホルダ
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20171113BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H04R25/00 Z
   H01M2/10
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-68866(P2017-68866)
(22)【出願日】2017年3月30日
【審査請求日】2017年7月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110881
【弁理士】
【氏名又は名称】首藤 宏平
(72)【発明者】
【氏名】添田 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】亀口 央
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−227980(JP,A)
【文献】 特開平09−215098(JP,A)
【文献】 特開2002−260617(JP,A)
【文献】 特開2007−172839(JP,A)
【文献】 特開平09−320558(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/103789(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタン型電池を着脱自在に収納可能な電池ホルダと、前記電池ホルダを補聴器本体に組み付ける棒状の保持部材とを具備し、前記電池ホルダが前記保持部材を支点に回動して開閉する補聴器であって、
前記電池ホルダには、前記ボタン型電池の外周面を取り囲む内周面と、前記ボタン型電池の1対の電極を部分的に覆う1対の電極カバー部とにより、前記ボタン型電池の収納空間及び開口部分が構成され、
前記電池ホルダのうち前記内周面の一端の近傍には、前記内周面から前記開口部分に突出する突出部を有するストッパ部材が設けられ、
前記突出部から前記内周面の他端に至る前記開口部分の長さは、前記ボタン型電池の直径よりも短く、かつ、前記電池ホルダと前記ストッパ部材の一方又は両方の変形により前記開口部分を介して前記ボタン型電池を前記収納空間に挿入可能に設定され、
前記ストッパ部材は、前記保持部材を介して、前記電池ホルダの取付部に着脱自在に取り付けられることを特徴とする補聴器。
【請求項2】
前記ストッパ部材は、前記保持部材を支点に前記補聴器本体に対し前記電池ホルダと一体的に回動されることを特徴とする請求項1に記載の補聴器。
【請求項3】
前記ボタン型電池は所定の直径Dの円筒形状を有し、前記ストッパ部材が前記開口部分に配設されない場合の前記開口部分の長さL1と、前記ストッパ部材が前記開口部分に配設される場合の前記開口部分の長さL2とに対し、
L1>D>L2
の関係が成り立つことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の補聴器。
【請求項4】
前記電池ホルダには、前記内周面の所定箇所に外部と前記収納空間とを連通する穴部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の補聴器。
【請求項5】
前記ストッパ部材は、前記保持部材の軸方向に所定の範囲で移動可能であり、
前記ストッパ部材が前記所定の範囲の一端に位置する場合、前記開口部分の長さは前記電池の直径より長く、
前記ストッパ部材が前記所定の範囲の他端に位置する場合、前記開口部分の長さは前記電池の直径より短い、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の補聴器。
【請求項6】
着脱自在に取り付けられて開状態と閉状態とを移行可能であり、内部の収納空間にボタン型電池を着脱自在に収納可能な電池ホルダであって、
前記ボタン型電池の外周面を取り囲む内周面と、前記ボタン型電池の1対の電極を部分的に覆う1対の電極カバー部とにより前記収納空間及び開口部分が構成され、
前記電池ホルダのうち前記内周面の一端の近傍には、前記内周面から前記開口部分に突出する突出部を有するストッパ部材が設けられ、
前記突出部から前記内周面の他端に至る前記開口部分の長さは、前記ボタン型電池の直径よりも短く、かつ、前記電池ホルダと前記ストッパ部材の一方又は両方の変形により前記開口部分を介して前記ボタン型電池を前記収納空間に挿入可能に設定され、
前記ストッパ部材は、棒状の保持部材を介して、前記電池ホルダの取付部に着脱自在に取り付けられることを特徴とする電池ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタン型電池を着脱自在に収納可能な電池ホルダを具備する補聴器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボタン型電池により駆動される補聴器は、電池を交換する必要があるため、補聴器に設けた電池ホルダに電池を着脱自在に収納し得る構造が採用される。しかし、このような収納構造を採用した補聴器によれば、例えば、幼児が補聴器から電池を取り出して、飲み込んでしまう危険性も想定される。このように幼児が補聴器を扱う際の危険性に関しては、特別な規格が定められている(例えば、JIST0601-2-66)。例えば、この規格には、年齢が36ケ月未満の乳幼児に対して補聴器を適用する場合、工具を使用して電池を取り外す構造や、取り外しに10N以上の力を要する構造などに関する規格が含まれる。
【0003】
また、補聴器の電池ホルダの構造の工夫により、前述の幼児への危険性を除去する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、補聴器から取り外し可能な電池ホルダに関し、電池を収容する第1のパーツと、電池ホルダの位置を補聴器のハウジングに固定する第2のパーツとにより構成し、第1及び第2のパーツの相互係合のための解除可能な係合手段を設けることで、幼児のいたずら防止を実現する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4223006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された構造を採用することは、幼児のいたずら対策には有効ではあるが、2つのパーツを組み合わせた電池ホルダの構造が複雑化するので、小型化やコスト低減に支障を来すことが問題となる。従って、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、電池ホルダの構造を複雑化することなく、幼児等が補聴器を取扱うことに伴う危険性を有効に防止し、小型化及び低コスト化に適した補聴器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の補聴器の一態様は、ボタン型電池を着脱自在に収納可能な電池ホルダと、前記電池ホルダを補聴器本体に組み付ける棒状の保持部材とを具備し、前記電池ホルダが前記保持部材を支点に回動して開閉する補聴器であって、前記電池ホルダには、前記ボタン型電池の外周面を取り囲む内周面と、前記ボタン型電池の1対の電極を部分的に覆う1対の電極カバー部とにより、前記ボタン型電池の収納空間及び開口部分が構成され、前記電池ホルダのうち前記内周面の一端の近傍には、前記内周面から前記開口部分に突出する突出部を有するストッパ部材が設けられ、前記突出部から前記内周面の他端に至る前記開口部分の長さは、前記ボタン型電池の直径よりも短く、かつ、前記電池ホルダと前記ストッパ部材の一方又は両方の変形(弾性による伸縮や撓み等)により前記開口部分を介して前記ボタン型電池を前記収納空間に挿入可能に設定され、前記ストッパ部材は、前記保持部材を介して、前記電池ホルダの取付部に着脱自在に取り付けられることを特徴としている。
【0007】
本発明の補聴器によれば、補聴器の電池ホルダにボタン型電池を収納する際は、電池ホルダの開口部分にボタン型電池が押し込まれて、電池ホルダとストッパ部材の一方又は両方が変形することで、ボタン型電池を収納空間に収納させることができるとともに、変形が元に戻った状態でボタン型電池を取り出すには、ストッパ部材の存在によって相当の力を要する。この場合、ボタン型電池の1対の電極を部分的に覆う1対の電極カバー部が邪魔になるため、幼児等が指でボタン型電池を外部に摘まみ出すことを確実に防止することができる。
【0008】
本発明のストッパ部材は、保持部材を支点に補聴器本体に対し電池ホルダと一体的に回動可能な構造を採用することができる。また、ストッパ部材を、保持部材を介して電池ホルダの取付部に着脱自在に取り付けてもよい。
【0009】
本発明における寸法関係の例としては、ボタン型電池が平面視で所定の直径Dの円筒形状を有し、ストッパ部材が開口部分に配設されない場合の前記開口部分の長さL1と、前記ストッパ部材が開口部分に配設される場合の前記開口部分の長さL2とに対し、L1>D>L2の関係が成り立つようにする。これにより、電池ホルダと前記ストッパ部材の一方又は両方の変形(撓み)を前提とすれば、一時的に開口部分を押し広げてボタン型電池を挿入した後、開口部分の長さがL2に安定するので、それより大きい直径Dのボタン型電池を安定に収納することができる。
【0010】
本発明の電池ホルダには、内周面の所定箇所に外部と前記収納空間とを連通する穴部を形成することが望ましい。これにより、前述の構造によって幼児が指でボタン型電池を摘まみ出すことを防止しつつ、必要に応じて、硬質で細長い部材(ボールペンや爪楊枝など)を用いて、穴部を介してボタン型電池を電池ホルダの外部に押し出すことが可能となる。
【0011】
本発明のストッパ部材は、保持部材の軸方向に所定の範囲で移動可能とし、ストッパ部材が所定の範囲の一端に位置する場合には開口部分の長さが電池の直径より長くなり、かつ、ストッパ部材が所定の範囲の他端に位置する場合には開口部分の長さが電池の直径より短くなる構造を採用することができる。
【0012】
上記構造を採用することにより、既に述べた作用効果に加えて、電池ホルダからストッパ部材を取り外すことなく、ストッパ部材の位置を移動させることにより、電池ホルダに収納されたボタン型電池の取り出しを防止する機能の有効と無効を容易に切り替えることができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の電池ホルダは、着脱自在に取り付けられて開状態と閉状態とを移行可能であり、内部の収納空間にボタン型電池を着脱自在に収納可能な電池ホルダであって、前記ボタン型電池の外周面を取り囲む内周面と、前記ボタン型電池の1対の電極を部分的に覆う1対の電極カバー部とにより前記収納空間及び開口部分が構成され、前記電池ホルダのうち前記内周面の一端の近傍には、前記内周面から前記開口部分に突出する突出部を有するストッパ部材が設けられ、前記突出部から前記内周面の他端に至る前記開口部分の長さは、前記ボタン型電池の直径よりも短く、かつ、前記電池ホルダと前記ストッパ部材の一方又は両方の変形により前記開口部分を介して前記ボタン型電池を前記収納空間に挿入可能に設定され、前記ストッパ部材は、棒状の保持部材を介して、前記電池ホルダの取付部に着脱自在に取り付けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、補聴器の電池ホルダとして、ストッパ部材と1対の電極カバー部の作用により、収納空間内のボタン型電池を幼児等が摘まみ出すことを確実に防止し得る収納構造を実現し、これにより危険性に関する規格を満たすとともに、簡素な構造により補聴器の小型化及び低コスト化にも貢献することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の補聴器の一例を示す外観図である。
図2図1の補聴器に関し、電池ホルダの開状態を示す図である。
図3】第1実施形態の補聴器の電池ホルダ及びボタン型電池の斜視図である。
図4図3の電池ホルダ及びボタン型電池を、矢印A方向から見た中央断面図である。
図5】電池ホルダにボタン型電池が収納された状態に関し、図3に対応する斜視図である。
図6】電池ホルダにボタン型電池が収納された状態に関し、図4に対応する中央断面図である。
図7】第1実施形態のストッパ部材の構造例を示す斜視図である。
図8】第2実施形態の補聴器において電池ホルダにボタン型電池が収納された状態に関し、ストッパ部材が突当部に突き当たる位置にある場合の斜視図である。
図9】第2実施形態の補聴器において電池ホルダにボタン型電池が収納された状態に関し、ストッパ部材が収納空間に突出しない位置にある場合の斜視図である。
図10】第2実施形態のストッパ部材の構造例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下に述べる2つの実施形態は本発明の技術思想を適用した形態の例であって、本発明が本実施形態の内容により限定されることはない。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の補聴器の一例を示す外観図である。図1に示すように、第1実施形態の補聴器1は、例えば耳かけ型補聴器であって、補聴器本体2と、補聴器本体2に取り付けられる電池ホルダ3と、補聴器本体2に接続される音導チューブ4と、音導チューブ4の先端に接続されるイヤチップ(不図示)とにより構成される。補聴器本体2は、一体的に組み立てられたケースの内部に各種構成部材が収納されている。また、補聴器本体2には電池ホルダ3が取り付けられるとともに、補聴器本体2の一端に音導チューブ4が接続されている。
【0018】
補聴器本体2に収納される構成部材には、音を収集するマイクロホン、補聴処理等を実行するDSP(Digital Signal Processor)、音を出力するイヤホンなどが含まれる。このうち、補聴器本体2のイヤホンから出力される音は、音導チューブ4を経由してイヤチップが挿入される外耳道まで導かれる。
【0019】
一方、電池ホルダ3は、補聴器本体2内の各部への電力源となるボタン型電池10(図3)を着脱自在に収納する役割を有する。電池ホルダ3は、棒状の保持ピン11(本発明の保持部材)を介して補聴器本体2に組み付けられて、保持ピン11を支点として補聴器本体2に対して回動可能である。図1は電池ホルダ3の閉状態を示しているのに対して、図2は、図1と同様の補聴器1に関し、電池ホルダ3の開状態を示している。すなわち、電池ホルダ3は、図1の閉状態から保持ピン11を支点に回動させることにより、図2の開状態に移行するので、ボタン型電池10の交換が可能となる。
【0020】
次に、図1の電池ホルダ3の具体的な構造について説明する。まず、電池ホルダ3にボタン型電池10が収納されていない状態に関し、図3は第1実施形態の補聴器1の電池ホルダ3及びボタン型電池10の斜視図を示しており、図4図3の電池ホルダ3及びボタン型電池10を、矢印A方向から見た中央断面図を示している。また、電池ホルダ3にボタン型電池10が収納された状態に関し、図5図3に対応する斜視図を示しており、図6図4に対応する中央断面図を示している。
【0021】
ボタン型電池10は、略円筒形状であり、対向する両平面である電極面12a、12b(以下、1対の電極面12と表記する場合がある)を備えている。電池ホルダ3は、ボタン型電池10を収納するための収納構造として、ボタン型電池10の外周面13を取り囲む湾曲形状を有する内周面20を備えるとともに、1対の電極面12を部分的に覆うように内周面20から延伸される1対の電極カバー部21(21a、21b)が形成され、主に内周面20及び1対の電極カバー部21がボタン型電池10の収納空間及び開口部分を構成している。また、電池ホルダ3には、内周面20の一方の端部近傍にて、軸穴に挿入される前述の保持ピン11を介して電池ホルダ3を補聴器本体2に取り付ける取付部22が形成されている。この取付部22には、保持ピン11を介して、内周面20の位置から開口部分に突出するストッパ部材23を取り付ける構造となっている。
【0022】
図3及び図4に示すように、内周面20は、ボタン型電池10の外周面13の略半分を取り囲む円弧形状を有し、内周面20を挟んで対向する1対の電極カバー部21の間隔が、ボタン型電池10の厚さより若干大きく設定されている。そして、内周面20の曲率半径が、ボタン型電池10の曲率半径より若干大きくなるように設定されている。実際のボタン型電池10のサイズは、ある程度のバラツキが想定されるため、内周面20における収納空間に余裕を持たせたものである。
【0023】
また、電極カバー部21は、電池ホルダ3に収納されているボタン型電池10を使用者が指で摘み出せないようにする役割を担い、ボタン型電池10の1対の電極面12を指で容易に触れられない程度にカバーする面積を有する。ここでは、一方の電極カバー部21bの面積は、ボタン型電池10の一方の電極面12bにいくらか触れられる程度で、他方の電極カバー部21aに比べて小さくなっているが、少なくともボタン型電池10の1対の電極面12を2本の指で挟むことは防止することができるようにしている。ただし、ボタン型電池10が電池ホルダ3に収納された状態で、1対の電極面12に形成されるそれぞれの電極を、補聴器本体2内の回路部と電気的に接続する端子部分(不図示)と接触させる必要があるため、電極カバー部21a、21bは、例えば、図3に示すように、一方の電極カバー部21aの略中央に開口が形成され、他方の電極カバー部21bの略中央は平面視でアールを有する凹状に形成されている。
【0024】
ストッパ部材23は、平面視で内周面20の両端を結んだ開口部分に向かって突出した形状を有する。具体的には、図4に示すように、ストッパ部材23が配設されない場合の開口部分の長さをL1とし、ストッパ部材23が配設される場合の開口部分の長さをL2としたとき、L1>L2の関係にある。また、平面視でボタン型電池10の直径をDとしたとき、L1>D>L2の関係にある。電池ホルダ3及びストッパ部材23は弾性を有する材料で形成されているので、ストッパ部材23を配設した状態の開口部分を経由してボタン型電池10を押し込む際、電池ホルダ3自体(主に内周面20)及びストッパ部材23が変形(弾性による伸縮や撓み等)することで開口部分が広がり、これによりボタン型電池10を電池ホルダ3に収納することができる。第1実施形態において適用可能な寸法例には自由度があるが、例えば、L1=8.4mm、D=8mm、L2=7.8mm程度に設定することができる。
【0025】
一方、ボタン型電池10が電池ホルダ3に収納された状態になると、内周面20及びストッパ部材23の変形が元に戻り、図6に示すように、前述の開口部分に突き出たストッパ部材23の存在によりボタン型電池10の取り出しが抑制される。前述の寸法関係D>L2を考慮すると、ボタン型電池10を外部に押し出すには、開口部分の長さL2を少なくともボタン型電池10の直径Dに広げるだけの力を加える必要があるが、前述したように、1対の電極カバー部21が存在するために、ボタン型電池10を指で摘まんで力を加えることは困難である。
【0026】
ここで、図4及び図6に示すように、電池ホルダ3には、内周面20の略中央に、ボタン型電池10の収納空間と外部を連通する穴部24が形成されている。この穴部24は、外部から取り出し部材を挿入し、電池ホルダ3に収納されているボタン型電池10を押し出して取り外す際に利用される。取り出し部材としては、一般家庭にあるボールペンや爪楊枝などを使用できるようにする。よって、穴部24の径はボールペンや爪楊枝などの挿入可能な程度に設定すればよい。なお、第1実施形態の補聴器1において、ボタン型電池10の取り出し部材として、穴部24に挿入可能な硬質の材料からなる専用の棒状部材を予め用意しておいてもよい。
【0027】
内周面20、電極カバー部21、取付部22を有する電池ホルダ3の材料としては、例えば、ポリカーボネート等の樹脂材料が用いられる。また、ストッパ部材23の材料としては、例えば、ABS樹脂等の樹脂材料が用いられる。実際の電池ホルダ3自体及びストッパ部材23は多様な材料選択が可能であり、ボタン型電池10の挿入時の変形量は、それぞれの材料の弾性等に依存する。なお、第1実施形態では、電池ホルダ3自体(主に内周面20)とストッパ部材23の両方が変形する場合を説明したが、ボタン型電池10を挿入する際に開口部分の広がりを確保できれば、電池ホルダ3自体とストッパ部材23の一方のみが変形する構造としてもよい。
【0028】
次に図7は、ストッパ部材23の構造例を示す斜視図である。図7に示すように、ストッパ部材23には、電池ホルダ3に収納されたボタン型電池10の取り出しを妨げる突出部23aと、保持ピン11が挿入される軸側凹部23bとが形成されている。よって、突出部23aは、軸側凹部23bが電池ホルダ3の取付部22の軸穴に連なる位置で保持ピン11に固定され、この状態で突出部23aが前述のL1−L2の長さだけ開口部分に突出することになる。ストッパ部材23には、突出部23a側から軸側凹部23b側の間に凹みとなる取付側凹部23cが両側に形成されており、取付部22の形状に合致する段差構造を有する(図3参照)。よって、ストッパ部材23は、電池ホルダ3の開閉の際に、電池ホルダ3と一体的に動くことになる。また、保持ピン11を抜いた状態では取付部22から容易に取り外すことが可能である。
【0029】
第1実施形態では、ストッパ部材23を電池ホルダ3に着脱自在な構造を示したが、上述の機能を果たすことを前提に、ストッパ部材23を電池ホルダ3に固定的に取り付ける構造としてもよい。ただし、ストッパ部材23を電池ホルダ3に着脱自在とすれば、幼児等への安全性への規格が要求されない補聴器1への適用時にはストッパ部材23を予め取り外して対応可能であり、電池ホルダ3からボタン型電池10を容易に取り外せる構造を実現することができる。
【0030】
また、ストッパ部材23は、所定の色で着色することができる。この場合、補聴器1は左右1対がセットとなるので、左右の1対のストッパ部材23を色違い(例えば、青と赤)としてもよい。また例えば、外観が同一であって型式が異なる補聴器1を判別するために、色違いのストッパ部材23を用意してもよい。
【0031】
以上説明したように、第1実施形態の電池ホルダ3の収納構造を採用することにより、ボタン型電池10を電池ホルダ3の収納空間に挿入することは可能であるが、その状態から、主にストッパ部材23及び電極カバー部21の機能により、ボタン型電池10を指で摘まんで外部に取り出すことが困難になる。いったん電池ホルダ3に収納されたボタン型電池10は、例えば、穴部24を介してピン等で押し出す等の手段でのみ取り出すことができる。よって、幼児等が補聴器1からボタン型電池10を取り出して、飲み込んでしまうなどの危険性を未然に防止することができ、幼児のいたずら等に伴う危険性に関する所定の規格(例えば、JIST0601-2-66)を満たすことができる。また、特許文献1に開示されたような複雑な構造は不要であり、簡素な構造で補聴器1の小型化及び低コスト化に適した電池ホルダ3を実現することができる。
【0032】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の補聴器について説明する。第2実施形態では、補聴器全体の構造及び機能の多くは第1実施形態と共通であるため説明を省略するものとし、主に電池ホルダ3の構造上の特徴について図8〜10を参照して説明する。第2実施形態において、第1実施形態との主な相違は、保持ピン11に沿ってスライド(移動)可能なストッパ部材25を採用した点である。図8及び図9は、第2実施形態の補聴器1のうち電池ホルダ3にボタン型電池10が収納された状態に関し、電池ホルダ3及びボタン型電池10の斜視図であって、ストッパ部材25が2つの異なる位置にある場合を対比している。また、図10は、ストッパ部材25の構造例を示す斜視図である。
【0033】
図8及び図9に示すように、電池ホルダ3の取付部22には、保持ピン11の軸穴に対してストッパ部材25をスライドさせる領域を切り欠いた部分を含む空間部26が形成されている。空間部26は、ストッパ部材25の断面形状に適合した形状を有し、前述の収納空間と部分的に連通している。また、空間部26の所定位置(空間部26を切り欠いた部分の端部)に突当部26a(図9参照)が設けられ、突当部26aから奥にはストッパ部材25がスライドしない構造となっている。すなわち、空間部26の一端から挿入したストッパ部材25は、空間部26の一端から突当部26aの範囲内を自在に移動させることができる。図8では、ストッパ部材25が突当部26aに突き当たる状態で位置決めされ、ストッパ部材25が収納空間の開口部分に突出している(本発明の第1の状態)。また、図9では、ストッパ部材25が電極カバー部21b側の位置にあり、ストッパ部材25は収納空間の開口部分に突出していない(本発明の第2の状態)。
【0034】
図10に示すように、ストッパ部材25には、電池ホルダ3に収納されたボタン型電池10の取り出しを妨げる突出部25aと、保持ピン11が挿入される空芯25cを有する円筒部25bと、突出部25a及び円筒部25bの間の凹み部25dとが形成されている。前述したように、円筒部25b及び凹み部25dの外周形状が空間部26の断面形状に適合するので、凹み部25dの両側に取付部22が部分的に係合することにより、ストッパ部材25をスライドさせることができる。ストッパ部材25は、円筒部25bの空芯25cが空間部26のうちの軸穴と連なる位置で保持ピン11に固定される。図10の構造により、ストッパ部材25は保持ピン11の軸方向にスライドさせることができるが、凹み部25dと取付部22の係合構造により、保持ピン11の径方向には動かすことができない。
【0035】
第2実施形態において、例えば、図4の中央断面図の関係と同様、ストッパ部材25を突当部26aに突き当たる位置(図8の位置)までスライドさせると、突出部25aにより開口部分の長さが短くなり、収納空間のボタン型電池10の取り出しを抑制することができる。これに対し、ストッパ部材25が電極カバー部21b側の位置(図9の位置)にある場合は、開口部分から外れた状態になり、電池ホルダ3に収納されたボタン型電池10を容易に取り出すことができる。このように、第2実施形態ではボタン型電池10を取り出す際には単にストッパ部材25を移動させればよいので、電池ホルダ3には第1実施形態の穴部24を設ける必要はない。
【0036】
第2実施形態において、ストッパ部材25の移動を容易にするため、専用の移動用部材を予め用意してもよい。例えば、先端がストッパ部材25の突出部25aを挟むことが可能な形状を有する移動用部材を用いることができる。このような移動用部材を用いることにより、ストッパ部材25の突出部25aを指で挟んで移動させるのに比べて作業性の向上が可能となる。
【0037】
第2実施形態の補聴器1は、第1実施形態の補聴器1と同様の効果に加えて、電池ホルダ3からストッパ部材25を取り外すことなく、ボタン型電池10の取り出しを防止する機能(以下、「取出し防止機能」と呼ぶ)の有効/無効を選択的に切り替えることができるという効果を有する。具体的には、ボタン型電池10の取出し防止機能を有効にする場合には、ストッパ部材25を突当部26aに突き当たる位置(図8の位置)に設定することで、電池ホルダ3からのボタン型電池10の取り出しが防止可能なる。一方、ボタン型電池10の取出し防止機能を無効にする場合には、ストッパ部材25を電極カバー部21b側の位置(図9の位置)に設定することで、電池ホルダ3からボタン型電池10を容易に取り出すことが可能となる。前述の第1実施形態では、ストッパ部材23を取り外さない限り取出し防止機能を無効にできないのに対し、第2実施形態では、ストッパ部材25をスライドさせるだけで取出し防止機能の有効と無効を切り替えることができる。
【0038】
以上、第1及び第2実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で多様な変更を施すことができる。例えば、本実施形態の補聴器1としては、耳かけ型補聴器や耳あな型補聴器などを含む多様な種別の補聴器に対して本発明を適用することができる。また、その他の点についても、本発明の作用効果を得られる限り、上記各実施形態に開示した内容には限定されることなく、適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…補聴器
2…補聴器本体
3…電池ホルダ
4…音導チューブ
10…ボタン型電池
11…保持ピン
12(12a、12b)…電極面
13…(ボタン型電池の)外周面
20…内周面
21(21a、21b)…電極カバー部
22…取付部
23、25…ストッパ部材
24…穴部
26…空間部
26a…突当部
【要約】
【課題】構造を複雑化することなく幼児等の取扱いの危険性を防止可能な電池ホルダを具備する補聴器を提供する。
【解決手段】補聴器の電池ホルダ3は、ボタン型電池10を着脱自在に収納可能であって、棒状の保持ピン11を支点に回動して開閉し、ボタン型電池10の外周面13を取り囲む内周面20と、ボタン型電池10の1対の電極面12を部分的に覆う1対の電極カバー部21とがボタン型電池10の収納空間及び開口部分を構成する。電池ホルダ3の内周面20の一端の近傍には開口部分に突出する突出部を有するストッパ部材23が設けられ、ストッパ部材23から内周面20の他端に至る開口部分の長さL2がボタン型電池10の直径Dよりも大きく、かつ、電池ホルダ3とストッパ部材23の変形により開口部分を介してボタン型電池10を収納空間に挿入可能となっている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10