【実施例】
【0086】
実施例1−CRD−原理の証明
区画化リボソームディスプレイ選択系の原理を証明するために、試験選択を実施した。典型的な原理の証明実験では、活性酵素(本発明の場合オリジナルMLV逆転写酵素のRT−PCR断片)で陽性シグナルが得られ、不活性酵素(不活化MLV逆転写酵素のRT−PCR断片は存在しない)ではシグナルが生じないはずである。より洗練された実験は、活性酵素をコードする遺伝子と不活性酵素をコードする遺伝子を定義された比で混合した混合物を使用することである。実験成功の結果として、活性酵素をコードする遺伝子が不活性酵素をコードする遺伝子に対して富化されるはずである。
【0087】
実験の一般的スキームを
図1に示す。2つのプラスミドpET_his_MLV_pD(プロテインDのスペーサに融合しているモロニーマウス白血病ウイルス(M−MLV)逆転写酵素をコードする)及びpET_his_del_pD(プロテインDのスペーサに融合している不活化(polドメインの57個のアミノ酸が欠失)モロニーマウス白血病ウイルス(M−MLV)逆転写酵素をコードする)を用いてPCR断片を合成した。更に3’末端の終止コドンを欠くmRNAを合成するための転写反応で該PCR断片を用いた。上記2つのPCR断片から得られる精製mRNAを1:50=MLV(活性RT):del(不活性RT)の比で混合し、インビトロ翻訳反応に用いた。翻訳反応中リボソーム複合体はタンパク質を合成し、終止コドンを欠くmRNAの末端で停止する。50mMのMg
2+を含有している氷冷バッファで希釈することにより翻訳反応を停止させた。低温、高濃度Mg
2+イオン、及びmRNAの末端に終止コドンが存在しないことにより、mRNA−リボソーム−タンパク質(tRNA)の三元複合体(TC)が安定化される。三元複合体(TC)の混合物をショ糖クッション溶液上で超遠心することにより精製した。TC(〜3.5MDa)が超遠心管の底部に沈殿し、一方低分子量分子、タンパク質、及び大部分の遊離mRNA(〜0.9MDa)は上清中に残るように超遠心を最適化させた。沈殿したTCを氷冷バッファ(50mM Mg
2+)に溶解させた。インビトロ翻訳MLV逆転写酵素に連結しているmRNAを既に含有している精製三元複合体(3×10
9個未満の分子が回収された)を用いて、RT反応用外因性dNTPセット及びプライマーを添加した逆転写反応混合物を調製した。氷冷RT反応混合物を乳化させ、〜2μmの大きさの〜1×10
10個の油中水型区画を得た。RT反応を実施するために、乳化されたRT反応混合物(1区画当たりTC(mRNA+MLV RT)1個未満)を42℃で1時間インキュベートした。区画化RT反応混合物の温度を上昇させると、大部分のTCは解離し、mRNA及び逆転写酵素を放出する。活性MLV逆転写酵素(MLV_pD)を含有している区画においてのみRT反応が成功し、不活性逆転写酵素(del_pD)を含む区画ではcDNAは合成されない。次いでPCRにより合成されたcDNAを確実に増幅させると、不活性逆転写酵素(del_pD)遺伝子に比べて活性逆転写酵素(MLV_pD)遺伝子が富化されていることが観察される。
【0088】
方法及び材料
T7ポリメラーゼプロモータ、及びShine−Dalgarno配列領域においてpET型プラスミドを改変し、N末端にHisタグ(配列番号1の258〜305)を有し、C末端がグリシン−セリン(gs)リンカー(配列番号1の2,364〜2,393)と、ファージラムダ由来のプロテインD(pD)の一部(配列番号1の2,394〜2,669)と、第2のグリシン−セリン(gs)リンカー(配列番号1の2,670〜2,759)と融合しているMLV H+逆転写酵素コード配列(配列番号1の306〜2,363)を挿入することにより、初期プラスミドpET_his_MLV_pD(配列番号1及び
図2)を構築した。N末端のHisタグは、タンパク質発現精製に用いられる。C末端の融合は、タンパク質のインビトロ翻訳中及びmRNA−リボソーム−MLV(tRNA)三元複合体の形成中、リボソームトンネル内に留まらなければならない。
【0089】
M−MuLV逆転写酵素は、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性及びRNaseH活性という2つの主な酵素活性を有する。逆転写酵素のRNaseH活性は、点変異D583N(プラスミドpET_his_MLV_pD、配列番号1の2,055の位置で1つのヌクレオチドGがAに置換)を導入することにより失われる。アスパラギン酸583は、RNaseH活性部位に位置し、Mgイオン結合に関与し、RNaseH活性にとって極めて重要である。新規プラスミドは、pET_his_MLV_D583N_pDと識別され、不活化逆転写酵素をコードする次のプラスミドpET_his_del_pD(配列番号2)の構築に更に用いられた。プラスミドpET_his_MLV_D583N_pDは、制限エンドヌクレアーゼXmaJI(認識配列C↓CTAGG(配列番号1の位置1,047〜1,218))で切断された。171bpの長さの遺伝子断片が除去され、切断されたプラスミドはセルフライゲーションし、タンパク質翻訳フレームがシフトすることなしに171ヌクレオチド即ち57アミノ酸短い逆転写酵素遺伝子をコードするプラスミドpET_his_del_pD(配列番号2)が得られた。
【0090】
該逆転写酵素遺伝子は、以下の性質を有することが重要であった:1)長さが短い(PCR検出が容易);2)不活性である(ポリメラーゼドメインにおける57アミノ酸の欠失によりポリメラーゼ活性が完全に不活化され、突然変異D583NによりRNaseH活性が不活化されることが実験的に確認された);及び3)フレームシフトがない(如何なるフレームシフトでも終止コドンが出現するため、リボソームディスプレイフォーマットには不適合である)。
【0091】
インビトロ翻訳用PCR断片の調製。以下のPCR混合物を氷上で調製した:KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(20μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(20μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(12μL);DMSO(D8418−Sigma)(16μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(4μL);100μMのpro−pIVEXプライマー(配列番号3)(1μL);100μMのpD−terプライマー(配列番号4)(1μL);水(122μL)。2本の試験管に2×98μLずつ混合物を分注した。2μLのpET_his_MLV_pD(〜1ng/μLに希釈)又は2μLのpET_his_del_pD(〜1ng/μLに希釈)を98μLのPCRマスター混合物2つに添加した。サイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、30サイクル(94℃で45秒間、53℃で45秒間、及び72℃で2分間)、及び最後の伸長工程72℃で5分間。2ngのプラスミド(7,873bp)標的が〜5μg(50ng/μL)の増幅産物に、〜7,000倍に増幅された(pET_his_MLV_pD のPCR断片は2,702bp;pET_his_del _pDのPCR断片は2,531bp)。
【0092】
以下の転写混合物を調製した:5×T7転写バッファ(1MのHEPES−KOH(pH7.6)(40μL);150mMの酢酸マグネシウム;10mMのスペルミジン;0.2MのDTT);25mMの各NTP(Fermentas)(56μL);20u/μLのT7RNAポリメラーゼ(Fermentas)(8μL);40u/μLのRiboLock RNase阻害剤(Fermentas)(4μL);ヌクレアーゼ不含水(52μL)。2本の試験管に2×80μLずつ混合物を分注し、50ng/μLのMLV_pD(pro−pIVEX//pD−ter)PCR混合物(20μL)又は50ng/μLのdel_pD(pro−pIVEX//pD−ter)PCR混合物(20μL)を添加した。37℃で3時間転写を実施した。
【0093】
両方の転写混合物を、200μLの氷冷ヌクレアーゼ不含水で希釈し、200μLの6M LiCl溶液を添加した。+4℃で30分間混合物をインキュベートし、最高速度(25,000g)で冷却遠心機を用いて+4℃にて30分間遠心分離した。上清を廃棄し、500μLの氷冷75%エタノールでRNAペレットを洗浄した。最高速度で冷却遠心機を用いて+4℃にて5分間再度遠心管を遠心分離に供し、上清を廃棄した。室温で12分間RNAペレットを乾燥させ、次いで1,400rpmで+4℃にて15分間振盪することにより、200μLのヌクレアーゼ不含氷冷水に再懸濁させた。溶解していないRNAを分離するために、最高速度で冷却遠心機を用いて+4℃にて5分間遠心管を再度遠心分離に供した。10×DNaseIバッファ(Mg
2+)(Fermentas)(20μL)及び1u/μLのDNaseI(RNase不含)(Fermentas)(1μL)を含む新たな試験管に約180μLの上清を移し、DNAを分解するために+37℃で20分間インキュベートした。20μLの3M酢酸ナトリウム溶液(pH5.0)及び500μLの氷冷96%エタノールを試験管に添加した。最後に、−20℃で30分間インキュベートし、最高速度(25,000g)で冷却遠心機を用いて+4℃にて30分間遠心分離することによりRNAを沈殿させた。上清を廃棄し、500μLの氷冷75%エタノールでRNAペレットを洗浄した。最高速度で冷却遠心機を用いて+4℃にて5分間遠心管を再度遠心分離に供し、上清を廃棄した。室温で12分間RNAペレットを乾燥させ、次いで4℃及び1,400rpmで15分間振盪することにより、43μLのヌクレアーゼ不含氷冷水に再懸濁させた。4×10μLにRNA溶液を分注し、液体窒素で凍結させた。mRNAの濃度を分光光度計で測定し、RiboRuler
TMRNA Ladder,High Range(Fermentas)を用いてアガロースゲルでダブルチェックした。MLV_pD mRNAは〜1.2μg/μL、del_pD mRNAは〜1.2μg/μLであった。
【0094】
精製されたmRNAを、1:50=MLV(活性RT):del(不活化RT)の比で混合する。MLV_pD mRNAを〜48ng/μLに25倍希釈し、1μL(〜48ng)を〜1.2μg/μLのdel_pD mRNA2μL(2.4μg)と混合し、混合比1:50のmRNA混合物〜0.8μg/μLを得た。2種の翻訳系RTS 100 E.coli HY Kit(03 186 148 001−Roche)及び合成WakoPURE(295−59503−Wako)を用いてインビトロ翻訳を実施した。MLV_pDのタンパク質翻訳配列を配列番号6に、del_pDのタンパク質配列を配列番号7に示す。
【0095】
RTS HY系の翻訳混合物(25μL)は以下の通りである:E.coli溶菌液(Roche)(6μL);反応混合物(Roche)(5μL);アミノ酸(Roche)(6μL);100mMのMet(Roche)(0.5μL);40u/μLのRiboLock RNase阻害剤(Fermentas)(0.5μL);200μMのassrAオリゴヌクレオチド(配列番号5)(0.4μL);1MのDTT(0.25μL);再構築バッファ(Roche)(2.5μL);ヌクレアーゼ不含水(2.5μL)、及び0.8μg/μLのmRNA混合物(1:50=MLV_pD:del_pD)(〜1,200ng)(1.5μL)。30℃で20分間インビトロ翻訳を実施した。
【0096】
WakoPURE系の翻訳混合物(25μL)は以下の通りである:A溶液(Wako)(12.5μL);B溶液(Wako)(5μL);40u/μLのRiboLock RNase阻害剤(Fermentas)(0.5μL);200μMのαssrAオリゴヌクレオチド(配列番号6)(0.4μL);1MのDTT(0.25μL);ヌクレアーゼ不含水(5μL)、及び0.8μg/μLのmRNA混合物(1:50=MLV_pD:del_pD)(〜1,200ng)(1.5μL)。37℃で30分間インビトロ翻訳を実施した。
【0097】
155μLの氷冷停止バッファWBK
500+DTT+triton(50mMのトリス酢酸(25℃でpH7.5);50mMのNaCl;50mMの酢酸マグネシウム;500mMのKCl;10mMのDTT;0.1%(v/v)のtriton x−100(T8787−Sigma))を添加することにより、両方の翻訳(〜25μL)を停止させ、4℃、25,000gで5分間遠心分離した。840μLの35%(w/v)ショ糖−WBK
500+DTT+triton(50mMのトリス酢酸(25℃でpH7.5);50mMのNaCl;50mMの酢酸マグネシウム;500mMのKCl;10mMのDTT;0.1%(v/v)のtriton x−100(T8787−Sigma);35%(w/v)−ショ糖(84097−Fluka))溶液上に非常に慎重に遠心分離した翻訳混合物160μLをピペットで入れた。mRNA−リボソーム−タンパク質(tRNA)の三元複合体(TC)を精製するために、TL−100 Beckman超遠心機;TLA100.2固定角ロータ(Beckman);透明な1mL超遠心管(343778−Beckman)を用いて+4℃、100,000rpmで9分間超遠心した。超遠心管の底部に存在するTCの小さく透明なペレットを保持するために、管全体を注意深く取り扱った。最初に750μLの溶液を遠心管の最上部から除去した。次いで750μLのWBK
500(50mMのトリス酢酸(25℃でpH7.5);50mMのNaCl;50mMの酢酸マグネシウム;500mMのKCl)で(非常に慎重に)管壁を洗浄した。最後に、遠心管の最上部から始めて全ての溶液を除去し、30μLの氷冷停止バッファWBK
500+DTT+triton(50mMのトリス酢酸(25℃でpH7.5);50mMのNaCl;50mMの酢酸マグネシウム;500mMのKCl;10mMのDTT;0.1%(v/v)のtriton x−100(T8787−Sigma))にペレットを溶解させた。
【0098】
放射活性標識mRNAを用いて決定されたように、超遠心後インプットmRNAの5%〜30%は、三元複合体ペレット中に存在する。したがって、30μLのバッファ(〜12ng/μL又は9×10
9分子/μLの三元複合体)中に360ng(翻訳反応で用いられた1,200ngのmRNAの30%)未満のmRNAが存在すると予想された。
【0099】
以下の選択用逆転写反応混合物を氷上で調製した:5×逆転写酵素(Fermentas)反応バッファ(60μL);40u/μLのRiboLock RNase阻害剤(Fermentas)(7.5μL);20μMのpD_42オリゴヌクレオチド(配列番号8)(15μL);ヌクレアーゼ不含水(188μL)。混合物を2本の試験管に2×135μLずつ分注し、0.9μLの精製(8×10
9分子未満)TC(Roche−RTS HYキットで翻訳)又は0.9μLの精製(8×10
9分子未満)TC(Wako−WakoPUREで翻訳)を添加した。各反応混合物(〜135μL)を2本の試験管に45μLと90μLに再度分注した。第1部(45μLのRT混合物)に5μLのヌクレアーゼ不含水を添加した。このサンプルは、陰性選択対照(dNTP無)であるとみなされ、反応混合物中にDNAが夾雑しておらず、cDNA合成が三元複合体におけるMLV RTから生じる逆転写酵素の機能活性と密接に関連していることを証明しなければならない。第2部(90μLのRT混合物)に10mMの各dNTP Mix(Fermentas)10μLを添加し、反応混合物を2本の試験管に再度分注した。1本は選択対照用の50μLであり、もう1本は200u/μLのRevertAid H−M−MuLV逆転写酵素(Fermentas)1μLを添加した陽性選択対照用の50μLであった。プロトコルによれば、各逆転写反応混合物は、50μLの体積中に2.7×10
9分子未満の三元複合体を含有する。
【0100】
最終濃度が4%(v/v)になるようにABIL EM90(Goldschmidt)を鉱物油に(M5904−Sigma)混合することにより、乳化のための油−界面活性剤混合物を調製した(Ghadessy and Holliger,2004;米国特許出願公開第2005064460号明細書)。950μLの油−界面活性剤混合物を50μLのRT混合物と混合することにより、5mLの低温貯蔵バイアル(430492−Corning)内で+4℃にてエマルションを調製した。MS−3000調速磁気攪拌機(Biosan)及びRotilabo(登録商標)(3×8mm)中央リング付磁気撹拌子(1489.2−Roth)を用いて〜2,100rpmで混合を行い、30秒間に1回10μLのアリコートを水相に添加し、更に2分間混合を続けた(合計混合時間4分間)。光学顕微鏡データによれば、本発明のエマルション中の区画の大きさは0.5μm〜10μmであり、平均直径は〜2μmである。したがって、2.7×10
9分子未満の三元複合体を含有する逆転写反応混合物50μLの乳化後、〜1×10
10個の油中水型区画が存在すると予測された(3〜4区画当たりmRNA及び逆転写酵素が約1分子)。
【0101】
Roche−RTS HY kitで翻訳されたTC(陰性選択対照、選択対照、及び陽性選択対照)、及びWako−WakoPUREで翻訳されたTC(陰性選択対照、選択対照、及び陽性選択対照)のRT反応を表す6種のエマルション全てを+42℃で1時間インキュベートした。
【0102】
反応混合物を回収するために、エマルションを1.5mLの試験管に移し、室温、25,000gで1分間再び遠心分離した。油相を除去して、試験管の底部に濃縮(しかし依然としてインタクトである)エマルションを残し、250μLのPBバッファ(Qiagen PCR purification kit)を添加した。最後に、0.9mLの水−飽和エーテル、0.9mLの水−飽和酢酸エチル(ABIL EM90洗剤を除去するため)、及び再度0.9mLの水−飽和エーテルで抽出することにより、エマルションを破壊した。真空下において室温で5分間水相を乾燥させた。合成されたcDNAをQiagen PCR purification kitで精製し、30μLのEBバッファ(Qiagen PCR purification kit)で溶出した。
【0103】
ネステッドPCRによりcDNAの増幅を実施した。以下の初期PCR混合物を氷上で調製した:KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(16μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(16μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(9.6μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(3.2μL);100μMのRD_Ndeプライマー(配列番号9)(0.8μL);100μMのpD_55プライマー(配列番号10)(0.8μL);74μLの水。混合物を6サンプル×15μL(6×15μL)と30μLに分注した。15μLのPCRマスター混合物6つに5μLのcDNA(1〜6のRTサンプル)を添加した。30μLのPCRマスター混合物に9μLの水を添加し、混合物を2本の試験管に2×19.5μLずつ再度分注した。1本はPCR陰性対照用(0.5μLの水を添加)であり、もう1本はPCR陽性対照用(pET_his_MLV_pDプラスミドとpET_his_del_pDプラスミドとの1:1混合物(〜1ng)(0.5μL)を添加)である。サイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、25サイクル(94℃で45秒間、58℃で45秒間、及び72℃で2分間)、及び最後の伸長工程72℃で5分間。PCR断片の予想される長さは、MLV_pDが2,185bp、del_pDが2,014bpであった。1ウェル当たり10μLのPCR混合物をロードした1%アガロースゲルで増幅を解析した(
図3)。
【0104】
2種の異なるプライマーセットを用いてネステッドPCRを実施した。一方のプライマーセットからは遺伝子の一部が増幅され(RTサンプル中のMLV:del cDNA比の解像度を上げるため)、もう一方からは遺伝子全体が増幅される(遺伝子全体を回収できることを証明するため)。
【0105】
遺伝子の一部を増幅させるためのネステッドPCR混合物を氷上で調製した:KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(28μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(28μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(16.8μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(5.6μL);100μMのM_Fプライマー(配列番号11)(1.4μL);100μMのM_2Rプライマー(配列番号12)(1.4μL);水(185μL)。混合物を2×19μL及び6×38μLに分注した。19μLのPCRマスター混合物2つに、第1のPCR(プライマーセット RD_Nde//pD_55)−30PCRサイクル増幅の陽性対照又は陰性対照を1μLずつ添加した。38μLのPCRマスター混合物6つに、第1のPCR(プライマーセット RD_Nde//pD_55)(1〜6のサンプル)を2μLずつ添加し、各サンプルを23PCRサイクル増幅又は30PCRサイクル増幅用に2×20μLずつ2つに再度分注した。サイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、23サイクル又は30サイクル(94℃で45秒間、57℃で45秒間、及び72℃で1分間)、及び最後の伸長工程72℃で5分間。PCR断片の予想される長さは、MLV_pDが907bp、del_pDが736bpであった。1ウェル当たり10μLのPCR混合物をロードした1%アガロースゲルで増幅を解析した(
図4)。
【0106】
遺伝子全体を増幅させるためのネステッドPCR混合物を氷上で調製した:KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(28μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(28μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(16.8μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(5.6μL);100μMのM_Espプライマー(配列番号13)(1.4μL);100μMのM_Eriプライマー(配列番号14)(1.4μL);水(185μL)。混合物を2×19μL及び6×38μLに分注した。19μLのPCRマスター混合物2つに第1のPCR(プライマーセット RD_Nde//pD_55)−30PCRサイクル増幅の陽性対照又は陰性対照を1μLずつ添加した。38μLのPCRマスター混合物6つに第1のPCR(プライマーセット RD_Nde//pD_55)(1〜6のサンプル)を2μLずつ添加し、各サンプルを23PCRサイクル増幅用又は30PCRサイクル増幅用に2×20μLずつ2つに再度分注した。サイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、23サイクル又は30サイクル(94℃で45秒間、55℃で45秒間、及び72℃で2分間)及び最後の伸長工程72℃で5分間。PCR断片の予想される長さは、MLV_pDが2,077bp、del_pDが1,906bpであった。1ウェル当たり10μLのPCR混合物をロードした1%アガロースゲル上で増幅を解析した(
図5)。
【0107】
結果
区画化リボソームディスプレイ(CRD)法の原理の証明を行うために、プロテインDのスペーサに融合している活性(MLV)逆転写酵素及び不活性(del)逆転写酵素をコードする2種のmRNAの1:50=MLV:del混合物から始めて選択を実施した(
図1)。どちらの翻訳系が本発明の実験構成に適しているかを調べるために、2種の異なる翻訳系Roche−RTS 100 E.coli HY又はWako−WakoPUREを用いてインビトロ翻訳を実施した。各翻訳系につき、3つの区画化RT反応を実施した。1つ目はdNTPを含まない陰性選択対照であり、これは反応混合物中にDNAが夾雑していないことを証明しなければならない。2つ目は選択対照であり、これはcDNAを合成できるのが活性酵素のみであるため、不活化酵素(del)をコードする遺伝子よりも活性(MLV)逆転写酵素をコードする遺伝子が富化されることを示さなければならない。3つ目は外因性RevertAid H(市販の逆転写酵素)を添加した陽性選択対照であり、これは全ての区画でMLV_pD mRNA及びdel_pD mRNAの両方からcDNAを合成する陽性RT対照として機能しなければならず、選択圧をかけない場合の反応混合物中における遺伝子の実際の比を示す。
【0108】
合成されたcDNAをネステッドPCRにより増幅させた。初期PCR(25サイクル)のアガロースゲル電気泳動写真(
図3)は、両方の陽性選択対照(翻訳系−Roche及びWako)においてのみPCR断片の弱いバンドを示す。これらサンプルは、インビトロで合成された逆転写酵素分子を1区画当たり1分子しか含まない反応と比べて遥かに効率よくcDNAを合成する外因性RT酵素を含むため、これは正常な結果である。
【0109】
ネステッドPCR(遺伝子の一部を増幅)のアガロースゲル電気泳動写真を
図4に示す。23PCRサイクル後の増幅結果と30PCRサイクル後の増幅結果は一貫している:
1)陰性選択対照(dNTP無)では増幅が起こらない(DNAの夾雑無);
2)陽性選択対照(外因性RT酵素)ではdel_pD cDNA(736bpのDNA断片)が非常に効率的に増幅され、MLV_pD cDNAの増幅は視認できない、これはMLV_pD mRNAとdel_pD mRNAとの初期比が1:50であったためである;
3)選択対照では、cDNA MLV_pD(907bpのDNA断片)及びdel_pD(736bpのDNA断片)の両方が増幅される;
4)Rocheのインビトロ翻訳系により合成された逆転写酵素の場合MLV_pD:del_pDの比は〜1:1であり、これは1:50の初期比から始めてdel_pD遺伝子に対してMLV_pD遺伝子が〜50倍富化されたことを意味する;
5)Wakoのインビトロ翻訳系により合成された逆転写酵素の場合MLV_pD:del_pDの比は〜1:3であり、これは1:50の初期比から始めてdel_pD遺伝子に対してMLV_pD遺伝子が〜16倍富化されたことを意味する。
【0110】
ネステッドPCR(遺伝子全体を増幅)のアガロースゲル電気泳動写真を
図5に示す。23PCRサイクル後の増幅結果と30PCRサイクル後の増幅結果は一貫しており、遺伝子の一部を増幅するために用いたネステッドPCRの結果と比較しても一貫している(
図5):
1)陰性選択対照(dNTP無)では増幅が起こらない(DNAの夾雑無);
2)陽性選択対照(外因性RT酵素)ではdel_pD cDNA(1,906bpのDNA断片)が非常に効率的に増幅され、MLV_pD cDNAの増幅は視認できない、これはMLV_pD mRNAとdel_pD mRNAとの初期比が1:50であったためである;
3)選択対照では、cDNA MLV_pD(2,077bpのDNA断片)及びdel_pD(1,906bpのDNA断片)の両方が増幅される;
4)遺伝子全体を増幅させた場合MLV_pD:del_pDの比を決定することは困難である、これは2,077bp(MLV_pD)DNA断片と1,906bp(del_pD)DNA断片との相対的な長さの差がそれ程大きくないためであるが、一般的に比は遺伝子の一部を増幅するために用いたネステッドPCRの結果と類似している。
【0111】
この実施例の結果として、CRDフォーマットで実施した逆転写反応中、活性MLV逆転写酵素をコードする遺伝子が、インビトロで酵素を合成するためにRocheの翻訳系を用いた場合は50倍、Wakoの翻訳系を用いた場合は16倍、不活性酵素をコードする遺伝子に対して富化されたと結論付けることができる。
【0112】
実施例2−高温において高い性能を示す逆転写酵素のCRD選択
区画化リボソームディスプレイ(CRD)選択がどの程度有効に機能するかを調べるために、モロニーマウス白血病ウイルスの逆転写酵素(M−MuLVRT)の進化実験を実施した。実験の一般的スキームを
図6に示す。ヌクレオチド類似体dPTP及び8−oxo−dGTPを用いたエラープローンPCRにより逆転写酵素の初期突然変異体ライブラリを構築した。遺伝子全体(〜2kb)に対して突然変異を誘発し、1遺伝子当たり2ヌクレオチド〜3ヌクレオチド、即ち1アミノ酸〜2アミノ酸に突然変異を導入した。逆転写酵素(プロテインDと融合している)MLV_pDの突然変異体ライブラリをコードするPCR断片を用いてmRNAを合成した。インビトロ翻訳反応には精製mRNAを用いた。翻訳混合物中でmRNA−リボソーム−MLV_pD(tRNA)の三元複合体(TC)が形成され、低温及び高濃度Mg
2+イオンにより安定化された。ショ糖クッション溶液上で超遠心することによりTCの混合物を精製した。沈殿したTCを氷冷バッファ(50mM Mg
2+)に溶解させ、RT反応用外因性dNTPセット及びプライマーを添加した逆転写反応混合物を調製するために用いた。氷冷RT反応混合物を乳化させ、〜2μmの大きさの〜1×10
10個の油中水型区画を得た。MLV RTの最適反応温度は〜42℃である。高温でより良好に機能する逆転写酵素変異体を選択するために、乳化したRT反応混合物(1区画当たりTC(mRNA+MLV RT)1個未満)を50℃で1時間インキュベートした。この温度において、より活性の高い又はより熱安定性の高いMLV逆転写酵素変異体を含む区画では完全長cDNAの合成が成功裏に実施された。次いでPCRを用いて完全長cDNAを増幅させ、より活性が高く且つより熱安定性の高い逆転写酵素遺伝子を富化させた。ライゲーションPCRによりインタクトな5’配列(START断片−T7ポリメラーゼプロモータ、SD、及びhisタグコーディング配列)及び3’配列(END断片−gsリンカー、プロテインD、及び第2のgsリンカー)を修復して、PCRにより増幅された遺伝子をCRDフォーマットに戻した。
【0113】
逆転写酵素遺伝子の富化ライブラリを含有している再構築PCR断片を、後のmRNA転写及び次のCRD選択ラウンドで用いた。漸増RT反応温度下:50℃(第1ラウンド)、52.5℃(第2ラウンド)、55℃(第3ラウンド)、57.5℃(第4ラウンド)、及び60℃(第5ラウンド)で各選択ラウンドを実施した。
【0114】
第5選択ラウンド後の逆転写酵素遺伝子(C末端にpDリンカーを有しない)の増幅ライブラリをプラスミドベクターにクローニングした。個々のクローンの配列を決定し分析した。親和性クロマトグラフィーを用いhisタグを介して進化したタンパク質及び個々の突然変異体のプールを精製した。37℃、50℃におけるMLV逆転写酵素の比活性、及び50℃で5分間酵素をインキュベートした後の37℃における残存活性を測定した。
【0115】
方法及び材料
初期プラスミドpET_his_MLV_pD(配列番号1及び
図2)をエラープローンPCRの出発物質として用いた。ヌクレオチド類似体dPTP及び8−oxo−dGTPを用いて突然変異を導入した。エラープローンPCR用PCR混合物を氷上で調製した:KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(10μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(10μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(6μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(2μL);100μMのM_Espプライマー(配列番号13)(0.5μL);100μMのM_Eriプライマー(配列番号14)(0.5μL);10μMのdPTP(TriLink BioTechnolgies)(1μL);100μMの8−oxo−dGTP(TriLink BioTechnolgies)(5μL);40ng/μL(全体で150ng)のpET_his_MLV_pDプラスミド(3.75μL);水(61.25μL)。サイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、30サイクル(94℃で30秒間、55℃で30秒間、及び72℃で2分間)及び最後の伸長工程72℃で5分間。150ngのプラスミド(7,873bp)標的から約6〜12μgの増幅産物(pET_his_MLV_pDでは2,077bpのPCR断片)に150〜300倍に増幅された。PCR断片をQiagen PCR purification kitを用いて精製し、Esp3I(認識配列CGTCTC(1/5))及びEcoRI(認識配列G↓AATTC)で切断し、最後にQiagen Gel extraction kitを用いてアガロースゲルから精製し、〜50ng/μLのDNA濃度を得た。
【0116】
サブクローニングしてNcoI及びEcoRIで切断されたオリジナルのpET_his_MLV_pDプラスミドに戻した個々のクローンの配列を決定することにより突然変異誘発の効率及びライブラリの品質を調べた。予想通り突然変異はMLV RT遺伝子の増幅された配列全体に亘ってランダムに分布していた(表1)。10個の配列決定された遺伝子中で23箇所のヌクレオチド突然変異(1箇所の塩基転換、20箇所の変化、2箇所の欠失−表1では赤で標識されている)が見られ、これによりアミノ酸置換が15箇所、サイレント突然変異が6箇所、終止コドンが1箇所、及びコードフレームのフレームシフトが2箇所生じた。これは1遺伝子当たり平均して1〜2個のアミノ酸置換にあたる。
【0117】
CRD選択に好適なPCR断片を得るために、突然変異体ライブラリをSTART断片(244bp)及びEND断片(398bp)とライゲーションさせた(
図7)。最初に983bpのSTART断片をPCRで増幅させ(標的−プラスミドpET_his_del_pD(配列番号2)、プライマー−pro−pIVEX(配列番号3)及びM_1R(配列番号15))、次いでNcoI(認識配列C↓CATGG)で切断して244bpのDNA断片を得ることにより、START断片(T7ポリメラーゼプロモータ、SD、及びhisタグコード配列を含む)を構築した。最初に1,039bpのEND断片をPCRで増幅させ(標的−プラスミドpET_his_del_pD(配列番号2)、プライマー−M_3F(配列番号16)及びpD−ter(配列番号4))、次いでEcoRI(認識配列G↓AATTC)で切断し、398bpのDNA断片を得ることにより、END断片(gsリンカー、プロテインD、及び第2のgsリンカー配列を含む)を構築した。
【0118】
ライゲーション反応物(150μL)を室温で調製した:T4 DNAリガーゼ用10×ライゲーションバッファ(Fermentas)(15μL);1u/μLのT4 DNAリガーゼ(Fermentas)(15μL);Esp3I(NcoI適合末端)及びEcoRI(〜1,300ng又は〜5.9×10
11分子)で切断された突然変異MLV RTライブラリ50ng/μL(26μL);NcoI(〜329ng又は〜1.2×10
12分子)で切断された開始断片35ng/μL(9.4μL);EcoRI(〜548ng又は〜1.2×10
12分子)で切断されたEND断片35ng/μL(15.7μL);水(68.9μL)。+4℃で一晩ライゲーションを実施した。反応混合物をフェノールで1回、クロロホルムで2回処理し、沈殿させ、53μLの水に溶解させた。ライゲーション混合物と既知の量のプラスミドpET_his_MLV_pDの増幅効率を比較することにより、ライゲーション効率は〜20%であると決定された。ライゲーション効率が20%であることを鑑みて、MLV突然変異体ライブラリの多様性は〜1.2×10
11分子(50μL)であると定義された。
【0119】
ライゲーションされたMLV RTライブラリをPCRにより増幅させた(1mL−氷上で調製):KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(100μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(100μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(60μL);DMSO(D8418−Sigma)(80μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(20μL);100μMのpro−pIVEXプライマー(配列番号3)(5μL);100μMのpD−ter−プライマー(配列番号17)(5μL);ライゲーションされたMLV RTライブラリ(〜5×10
10分子)(20μL);水(610μL)。サイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、15サイクル(94℃で30秒間、53℃で30秒間、及び72℃で3分間)及び最後の伸長工程72℃で5分間。長さ2,702bpの最終ライゲーション断片である標的〜5×10
10分子(〜150ngに相当)から増幅産物(2,702bpPCR断片)〜30μg(30ng/μL)に〜200倍に増幅された。
【0120】
第1選択ラウンド
転写混合物(100μL)を調製した:5×T7転写バッファ(1MのHEPES−KOH(pH7.6)(20μL);150mMの酢酸マグネシウム;10mMのスペルミジン;0.2MのDTT);25mMの各NTP(Fermentas)(28μL);20u/μLのT7 RNAポリメラーゼ(Fermentas)(4μL);40u/μLのRiboLock RNase阻害剤(Fermentas)(2μL);30ng/μLの突然変異体ライブラリ(pro−pIVEX//pD−ter−)PCR混合物(〜900ng又は〜3×10
11分子)(30μL);ヌクレアーゼ不含水(16μL)。37℃で3時間転写を実施した(ライブラリの多様性〜5×10
10分子)。
【0121】
転写混合物を、200μLの氷冷ヌクレアーゼ不含水で希釈し、200μLの6M LiCl溶液を添加した。+4℃で30分間混合物をインキュベートし、最高速度(25,000g)で冷却遠心機を用いて+4℃にて30分間遠心分離した。上清を廃棄し、500μLの氷冷75%エタノールでRNAペレットを洗浄した。最高速度で冷却遠心機を用いて+4℃にて5分間再度遠心管を遠心分離に供し、上清を廃棄した。RNAペレットを室温で12分間乾燥させ、次いで1,400rpmで+4℃にて15分間振盪することにより、200μLのヌクレアーゼ不含氷冷水に再懸濁させた。溶解していないRNAを分離するために、最高速度で冷却遠心機を用いて+4℃にて5分間遠心管を再び遠心分離に供した。10×DNaseIバッファ(Mg
2+)(Fermentas)(20μL);1u/μLのDNaseI(RNase不含)(Fermentas)(1μL)を含む新たな試験管に約180μLの上清を移し、DNAを分解するために+37℃で30分間インキュベートした。20μLの3M酢酸ナトリウム溶液(pH5.0)及び500μLの氷冷96%エタノールを反応混合物に添加した。最後に、−20℃で30分間インキュベートし、最高速度(25,000g)の冷却遠心機を用いて+4℃で30分間遠心分離することによりRNAを沈殿させた。上清を廃棄し、500μLの氷冷75%エタノールでRNAペレットを洗浄した。最高速度で冷却遠心機を用いて+4℃にて5分間遠心管を再度遠心分離に供し、上清を廃棄した。室温で12分間RNAペレットを乾燥させ、次いで+4℃、1,400rpmで10分間振盪することにより、33μLのヌクレアーゼ不含氷冷水に再懸濁させた。RNA溶液を3×10μLに分注し、液体窒素で凍結させた。mRNAの濃度を分光光度計で測定し、RiboRuler
TMRNA Ladder,High Range(Fermentas)を用いてアガロースゲルでダブルチェックした。MLV RTライブラリのmRNAは〜2.1μg/μLであった。
【0122】
RTS100 E.coli HY(03 186 148 001−Roche)翻訳系(25μL)を用いてインビトロ翻訳を実施した:E.coli溶菌液(Roche)(6μL);反応混合物(Roche)(5μL);アミノ酸(Roche)(6μL);100mM Met(Roche)(0.5μL);40u/μLのRiboLock RNase阻害剤(Fermentas)(0.5μL);200μMのassrAオリゴヌクレオチド(配列番号5)(0.4μL);1MのDTT;再構築バッファ(Roche)(0.25μL)(3μL);ヌクレアーゼ不含水(2.5μL)、及び2.1μg/μLのmRNA(〜1,200ng)(0.6μL)。30℃で20分間反応混合物をインキュベートした。155μLの氷冷停止バッファWBK
500+DTT+triton(50mMのトリス酢酸(25℃でpH7.5);50mMのNaCl;50mMの酢酸マグネシウム;500mMのKCl;10mMのDTT;0.1%(v/v)のtriton x−100(T8787−Sigma))を添加することにより翻訳を停止させ、+4℃、25,000gで5分間遠心分離した。840μLの35%(w/v)ショ糖−WBK
500+DTT+triton(50mMのトリス酢酸(25℃でpH7.5);50mMのNaCl;50mMの酢酸マグネシウム;500mMのKCl;10mMのDTT;0.1%(v/v)のtriton x−100(T8787−Sigma);35%(w/v)−ショ糖(84097−Fluka))溶液上に160μLの遠心分離した翻訳混合物を非常に慎重にピペットで入れた。mRNA−リボソーム−MLV(tRNA)の三元複合体(TC)を精製するために、TL−100 Beckman超遠心機;TLA100.2固定角ロータ(Beckman);透明な1mL超遠心管(343778−Beckman)を用いて+4℃、100,000rpmで9分間超遠心した。超遠心管の底部に存在するTCの小さく透明なペレットを保持するために、管全体を注意深く取り扱った。最初に750μLの溶液を遠心管の最上部から除去した。次いで(非常に慎重に)管壁を750μLのWBK
500(50mMのトリス酢酸(25℃でpH7.5);50mMのNaCl;50mMの酢酸マグネシウム;500mMのKCl)で洗浄した。最後に、遠心管の最上部から始めて全ての溶液を除去し、ペレットを30μLの氷冷停止バッファWBK
500+DTT+triton(50mMのトリス酢酸(25℃でpH7.5);50mMのNaCl;50mMの酢酸マグネシウム;500mMのKCl;10mMのDTT;0.1%(v/v)のtriton x−100(T8787−Sigma))に溶解させた。
【0123】
放射活性標識mRNAを用いて実験的に決定されたように、超遠心後インプットmRNAの5%〜30%は、三元複合体ペレット中に存在する。したがって、30μLのバッファ(〜12ng/μL又は9×10
9分子/μLの三元複合体)中に360ng(翻訳反応で用いられた1,200ngのmRNAの30%)未満のmRNAが存在すると予想された。
【0124】
選択用逆転写反応混合物を氷上で調製した:逆転写酵素用5×反応バッファ(Fermentas)(60μL);40u/μLのRiboLock RNase阻害剤(Fermentas)(7.5μL);20μMのpD_42オリゴヌクレオチド(配列番号8)(15μL);ヌクレアーゼ不含水(186μL)、及び精製(1.8×10
10分子未満)TC(Roche−RTS HY kitで翻訳)(1.8μL)。反応混合物を2本の試験管に45μLと225μLに再度分注した。第1部(45μLのRT混合物)に5μLのヌクレアーゼ不含水を添加した。このサンプルは、陰性選択対照(dNTP無)であるとみなされ、反応混合物中にDNAが夾雑しておらず、cDNA合成が三元複合体におけるMLV RTから生じる逆転写酵素の機能活性と密接に関連していることを証明しなければならない。第2部(225μLのRT混合物)に10mMの各dNTP Mix(Fermentas)25μLを添加し、2本の試験管に反応混合物を再度分注した。1本は選択対照用の200μL(4×50μL)(全体で1.2×10
10分子未満のTC)であり、もう1本は200u/μLのRevertAid H−M−MuLV逆転写酵素(Fermentas)1μLを添加した陽性選択対照用の50μLであった。プロトコルによれば、各逆転写反応混合物は、50μLの体積中に3×10
9分子未満の三元複合体を含有する。
【0125】
最終濃度が4%(v/v)になるようにABIL EM90(Goldschmidt)を鉱物油(M5904−Sigma)に混合することにより乳化のための油−界面活性剤混合物を調製した(Ghadessy and Holliger,2004;米国特許出願公開第2005064460号明細書)。950μLの油−界面活性剤混合物を50μLのRT混合物と混合することにより、5mLの低温貯蔵バイアル(430492−Corning)内で+4℃にてエマルションを調製した。〜2,100rpmのMS−3000調速磁気攪拌機(Biosan)及びRotilabo(登録商標)(3×8mm)中央リング付磁気撹拌子(1489.2−Roth)を用いて混合を行い、30秒間に1回10μLのアリコートを水相に添加し、更に2分間混合を続けた(合計混合時間4分間)。光学顕微鏡データによれば、本発明のエマルション中の区画の大きさは0.5μm〜10μmであり、平均直径は〜2μmである。したがって、3×10
9分子未満の三元複合体を含有する逆転写反応混合物50μLの乳化後、〜1×10
10個の油中水型区画が存在すると予測された(mRNA及び逆転写酵素は3〜4区画当たり約1分子)。
【0126】
高温で良好に機能する逆転写酵素の変異体を選択するために、エマルション全てを+50℃で1時間インキュベートした。反応混合物を回収するために、エマルションを1.5mLの試験管に移し、室温、25,000gで10分間再び遠心分離した。油相を除去して、試験管の底部に濃縮(しかし依然としてインタクトである)エマルションを残した。0.9mLの水−飽和エーテル、0.9mLの水−飽和酢酸エチル(ABIL EM90洗剤を除去するため)、及び再度0.9mLの水−飽和エーテルで抽出することにより、エマルションを破壊した。真空下において室温で5分間水相を乾燥させ。250μLのPBバッファ(Qiagen PCR purification kit)を添加した。4つの選択サンプルを2本の試験管にまとめた。合成されたcDNAをQiagen PCR purification kitで更に精製し、陰性選択対照及び陽性選択対照の場合30μL、選択対照の場合2×30μLのEBバッファ(Qiagen PCR purification kit)で溶出した。
【0127】
ネステッドPCRによりcDNAの増幅を実施した。最初に、陰性選択対照及び陽性選択対照を確認し、選択サンプル中のcDNAの効率的増幅に必要なPCRサイクルの最小数を決定するために小規模PCR増幅を実施した。PCR混合物(200μL)を氷上で調製した:KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(20μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(20μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(12μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(2.5μL);2.5u/μLのPfu DNAポリメラーゼ(Fermentas)(1μL);100μMのRD_Ndeプライマー(配列番号9)(1μL);100μMのpD_55プライマー(配列番号10)(1μL);選択対照の精製cDNA(50μL);水(92μL)。2,185bpのPCR断片のためのサイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、25サイクル(94℃で45秒間、58℃で45秒間、及び72℃で2分間)及び最後の伸長工程72℃で5分間。
【0128】
遺伝子全体を増幅させるためのネステッドPCR混合物(500μL)を氷上で調製した:KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(50μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(50μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(30μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(6.25μL);2.5u/μLのPfu DNAポリメラーゼ(Fermentas)(2.5μL);100μMのM_Espプライマー(配列番号13)(2.5μL);100μMのM_Eriプライマー(配列番号14)(2.5μL);50μLの第1PCR産物(プライマーセット RD_Nde//pD_55);水(306μL)。2,077bpのPCR断片のためのサイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、22サイクル(94℃で45秒間、55℃で45秒間,及び72℃で2分間)及び最後の伸長工程72℃で5分間。
【0129】
選択サンプルの最後のPCR断片をQiagen gel extraction kitを用いてアガロースゲル精製した(60μLで溶出(〜50ng/μL))。37℃で1時間EcoRI及びEsp3Iで精製PCR断片を切断し、再度アガロースゲル精製した(30μLで溶出(〜50ng/μL))。
【0130】
CRD選択(
図6)の第2ラウンドに好適なPCR断片(
図7)を得るために、第1選択ラウンド後に回収されたMLV逆転写酵素ライブラリをSTART断片及びEND断片とライゲーションさせた(この実施例で既に記載されているコンストラクション)。ライゲーション反応物(40μL)を室温で調製した:T4 DNAリガーゼ用10×ライゲーションバッファ(Fermentas)(4μL);1u/μLのT4 DNAリガーゼ(Fermentas)(2μL);Esp3I及びEcoRIで切断された選択ライブラリ(〜200ng又は〜0.9×10
11分子)50ng/μL(4μL);NcoIで切断されたSTART断片(〜35ng又は〜1.5×10
11分子)35ng/μL(1.1μL);EcoRIで切断されたEND断片(〜61ng又は〜1.5×10
11分子)35ng/μL(1.76μL);水(27.2μL)。室温で1時間ライゲーションを実施した。
【0131】
ライゲーションさせたMLV RTライブラリをPCRにより増幅させた(300μL−氷上で調製):KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(30μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(30μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(18μL);DMSO(D8418−Sigma)(24μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(3.7μL);2.5u/μLのPfu DNAポリメラーゼ(Fermentas)(1.5μL);100μMのpro−pIVEXプライマー(配列番号3)(1.5μL);100μMのpD−ter−プライマー(配列番号17)(1.5μL);ライゲーションしたMLV RTライブラリ(0.6×10
10分子未満)(25.5μL);水(164.3μL)。2,702bpのPCR断片のためのサイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、15サイクル(94℃で45秒間、53℃で45秒間,及び72℃で3分間)及び最後の伸長工程72℃で5分間。PCR断片をQiagen gel exraction kitを用いてアガロースゲル精製した(30μLで溶出(〜100ng/μL))。
【0132】
第2選択ラウンド
PCRサイクル、乳化RT反応温度、及び更に幾つかの詳細について軽微な変更を行ったことを除いて、第1選択ラウンドの実験スキームの一般的な設定に従って第2選択ラウンドを実施した。
【0133】
全ての変更点を以下に記載する:
・転写 100ng/μL(〜1,000ng)のアガロースゲル精製PCR断片(10μL)を用いた;第2選択ラウンドで用いられたmRNAの最終濃度は、1.5μg/μLであった;
・翻訳 1.5μg/μL(〜1.2μg)のmRNA(0.8μL)を用いた;
・乳化RT反応 52.5℃で1時間行った;
・第1PCR(RD_Nde//pD_55) 24サイクル実施した;
・第2(ネステッド)PCR(M_Esp//M_Eri) 23サイクル実施した;
・切断されたPCR断片の最終濃度 80ng/μL;
・ライゲーション 200ng(〜0.9×10
11分子)のMLV RTライブラリを用いた;
・PCR(ライゲーション混合物に対する) 0.6×10
10分子未満の選択されたライブラリを用い、PCRを15サイクル実施した;アガロースゲル精製PCR断片の最終濃度は、200ng/μLであった。
【0134】
第3選択ラウンド
PCRサイクル、乳化RT反応温度、及び更に幾つかの詳細について軽微な変更を行ったことを除いて、第1選択ラウンドの実験スキームの一般的な設定に従って、第3選択ラウンドを実施した。
【0135】
全ての変更点を以下に記載する:
・転写 200ng/μL(〜1,000ng)のアガロースゲル精製PCR断片(5μL)を用いた;第3選択ラウンドで用いられたmRNAの最終濃度は、1.5μg/μLであった;
・翻訳 1.5μg/μL(〜1.2μg)のmRNA(0.8μL)を用いた;
・乳化RT反応 55℃で1時間行った;
・第1PCR(RD_Nde//pD_55) 25サイクル実施した;
・第2(ネステッド)PCR(M_Esp//M_Eri) 22サイクル実施した;
・切断されたPCR断片の最終濃度 70ng/μL;
・ライゲーション 200ng(〜0.9×10
11分子)のMLV RTライブラリを用いた;
・PCR(ライゲーション混合物に対する) 0.6×10
10分子未満の選択されたライブラリを用い、PCRを15サイクル実施した;アガロースゲル精製PCR断片の最終濃度は、100ng/μLであった。
【0136】
第4選択ラウンド
PCRサイクル、乳化RT反応温度、及び更に幾つかの詳細について軽微な変更を行ったことを除いて、第1選択ラウンドの実験スキームの一般的な設定に従って、第4選択ラウンドを実施した。
【0137】
全ての変更点を以下に記載する:
・転写 100ng/μL(〜1,000ng)のアガロースゲル精製PCR断片(10μL)を用いた;第4選択ラウンドで用いられたmRNAの最終濃度は、1.8μg/μLであった;
・翻訳 1.8μg/μL(〜1.2μg)のmRNA(0.67μL)を用いた;
・乳化RT反応 57.5℃で1時間行った;
・第1PCR(RD_Nde//pD_55) 25サイクル実施した;
・第2(ネステッド)PCR(M_Esp//M_Eri) 24サイクル実施した;
・切断されたPCR断片の最終濃度 50ng/μL;
・ライゲーション 200ng(〜0.9×10
11分子)のMLV RTライブラリを用いた;
・PCR(ライゲーション混合物に対する) 0.6×10
10分子未満の選択されたライブラリを用い、PCRを15サイクル実施した;アガロースゲル精製PCR断片の最終濃度は、100ng/μLであった。
【0138】
第5選択ラウンド
PCRサイクル、乳化RT反応温度、及び更に幾つかの詳細について軽微な変更を行ったことを除いて、第1選択ラウンドの実験スキームの一般的な設定に従って、第5選択ラウンドを実施した。
【0139】
全ての変更点を以下に記載する:
・転写 100ng/μL(〜1,000ng)のアガロースゲル精製PCR断片(10μL)を用いた;第5選択ラウンドで用いられたmRNAの最終濃度は、1.1μg/μLであった;
・翻訳 1.1μg/μL(〜1.2μg)のmRNA(1.1μL)を用いた;
・乳化RT反応 60℃で1時間行った;
・第1PCR(RD_Nde//pD_55) 25サイクル実施した;
・第2(ネステッド)PCR(M_Esp//M_Eri) 33サイクル実施した;
【0140】
遺伝子全体を増幅するためのネステッドPCR混合物(500μL)を氷上で調製した:KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(50μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(50μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(30μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(6.25μL);2.5u/μLのPfu DNAポリメラーゼ(Fermentas)(2.5μL);100μM M_Espプライマー(配列番号13)(2.5μL);100μM M_Hind3+プライマー(配列番号18)(2.5μL);第1PCR産物(プライマーセット RD_Nde//pD_55)(50μL);水(306μL)。2,077bpのサイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、22サイクル(94℃で45秒間、55℃で45秒間、及び72℃で3分間)及び最後の伸長工程72℃で5分間。
【0141】
Qiagenゲル抽出キット(60μLで溶出(〜60ng/μL))を用いて選択サンプルの最終的なPCR断片をアガロースゲル精製した。精製PCR断片を37℃で1時間HindIII及びEsp3Iで切断し、再度アガロースゲル精製した(40μLで溶出(〜50ng/μL))。
【0142】
第5選択ラウンド後に回収したMLV逆転写酵素ライブラリを、NcoI及びHindIIIで切断したpET_his_MLV_pD(配列番号1及び
図2)から調製したプラスミドベクターにライゲーションし、親和性クロマトグラフィーを用いて迅速にタンパク質を精製するためにN末端にhisタグを備え、C末端でpDに融合していない、MLV RTをコードする新規7,474bp プラスミドpET_his_MLV(配列番号19)を得た。
【0143】
第5選択ラウンド後にライゲーションしたMLV RTライブラリをT7発現株ER2566に電気穿孔した。個々のクローンの配列を決定し分析した。進化したタンパク質、同コンストラクション中の個々の突然変異体及び一次野生型M−MuLV逆転写酵素のプールを、200mLのLB中でA590が〜0.7になるまで増殖させ、2mLのQiagen−Ni−NTA Superflow樹脂を用いてhisタグを介して親和性クロマトグラフィーにより精製した(全ての精製は供給業者の推奨に従って自然条件下で実施された)。溶出は、1mLのEB(50mMのNaH
2PO
4、300mMのNaCl、250mMのイミダゾール(pH8.0)、10mMのβ−メルカプトエタノール、及び0.1%のtritonX−100)中で実施された。全てのタンパク質を50倍過剰の保存バッファ(50mMのTris−HCl(25℃においてpH8.3)、0.1MのNaCl、1mMのEDTA、5mMのDTT、0.1%(v/v)Triton X−100、及び50%(v/v)グリセロール)で透析した。タンパク質の純度をSDS−PAGEで確認した(通常標的タンパク質は〜40〜80%)。Bio−Radタンパク質アッセイ(500−0006)に基づくBredford法を用いてタンパク質濃度を測定した。
【0144】
MLV逆転写酵素の比活性を37℃、50℃で測定し(酵素は特別な希釈バッファ:30mMのTris−HCl(25℃でpH8.3)、10mMのDTT、0.5mg/mLのBSAで希釈した)、50℃で5分間酵素をインキュベートした後37℃にて残存活性を測定した(酵素を希釈し、1×RT反応バッファ:50mMのTris−HCl(25℃でpH8.3)、4mMのMgCl
2、10mMのDTT、50mMのKCl中で該酵素の安定性を測定した)。全ての場合の酵素活性を、以下の最終混合物中でアッセイした:50mMのTris−HCl(25℃でpH8.3)、6mMのMgCl
2、10mMのDTT、40mMのKCl、0.5mMのdTTP、0.4MBq/mLの[3H]−dTTP、0.4mMのpolyA・oligo(dT)
12−18特定の反応温度において10分間でポリヌクレオチド画分(DE−81に吸着)に取り込まれるdTMPを測定し、既知の量の市販酵素と比較して活性単位を決定した。
【0145】
結果
選択データの分析中、完全長M−MuLV逆転写酵素を発現する104個の配列を収集した。文献中で通常用いられているのと同じアミノ酸の数表現を用いるために、全てのタンパク質の全体CLUSTALWアラインメント(表2A〜表2N)は、N末端のHisタグを含まないよう編集する。MLVと表記される野生型配列は、常に最初の配列として示される。突然変異体を黒色背景中に白色フォントで示す(表2A〜表2N)。その突然変異がM−MuLV逆転写酵素の性質をいくらか改善するアミノ酸位置及び異なる特許出願に記載されているアミノ酸位置を、灰色で強調されたアミノ酸(白色フォント)の列としてアラインメント中に示す。本発明の選択から得られた突然変異であって、灰色の列に位置する突然変異は、本発明の選択手順が有益なホットスポットを正確に標的としていること、又は他の文献に記載されている正確なアミノ酸突然変異さえも標的としていることを示す証拠として機能する。104個の配列決定されたクローンのうち、98個が独自の配列を有し、1個が野生型(L5_87)配列であることが見出された。5個の配列は2回出現している(L5_21及びL5_111;L5_43及びL5_112;L5_49及びL5_63;L5_64及びL5_93;L5_85及びL5_96)。合計でランダムに発現する55個のタンパク質が得られた。55個の発現タンパク質のうち、40個の酵素活性を有する突然変異体M−MuLV逆転写酵素(対照野生型を含む)を、SDS−PAGEにより40%〜80%の純度まで精製することに成功した。精製RTサンプル中の総タンパク質濃度は、0.6mg/mL〜5.5mg/mLであった。突然変異体RTを、逆転写酵素の37℃における活性、50℃における活性、及び50℃で5分間インキュベートした後の37℃における残存活性について試験した(
図8)。37℃における逆転写酵素活性を100%に正規化し、
図8では省略した。従って2種の列(50℃におけるRT活性の割合、及び50℃で5分間インキュベートした後の37℃における残存活性の割合)のみを示す。突然変異体ライブラリの構築に用いた野生型M−MuLV逆転写酵素を対照として示す。この一次酵素は、RTの突然変異体と同種のベクター内で発現し、同様の方法で精製された。50℃における野生型酵素のRT活性の平均値は、37℃における活性と比べて約45%である。稀に例外はあるが試験したタンパク質のほぼ全ては、50℃において45%より高い活性を有する。全ての試験した突然変異体の50℃におけるRT活性の平均値は約〜92%であり、野生型酵素(45%)に比べて2倍以上高い。幾つかの突然変異体は、50℃においても37℃における活性の100%又は更に高い活性を有する:20、23、L5_16、L5_24、L5_30、L5_35、L5_37、L5_43、L5_46、L5_47、L5_49、L5_52、L5_55、L5_64、L5_65、L5_68、L5_72。50℃において最も高いRT活性を有する突然変異体は約140%以上(野生型の45%よりも3倍高い)の活性を有することが見出された:20(165%)、L5_37(162%)、L5_43(156%)、L5_46(135%)、L5_47(179%)、L5_52(137%)、L5_64(142%)、及びL5_68(153%)。
【0146】
殆どの突然変異体は50℃において非常に高いRT活性を有するにもかかわらず、熱安定性は高くない。野生型対照を50℃で5分間インキュベートした後の37℃における残存RT活性は〜11%である。選択された酵素の同条件下における平均残存活性も〜12%である。しかし幾つかの試験されたRT変異体は実質的に熱安定性が高く、野生型酵素(11%)よりも2倍〜3倍高い残存活性を有する:L5_8(25%)、L5_43(32%)、L5_46(27%)、L5_64(28%)、L5_65(25%)、L5_68(31%)。
【0147】
部分的に精製された野生型酵素の比活性(u/mgタンパク質)は、200,000u/mgである(
図9)。選択されたRT変異体を発現させ、非常に多様な方法で精製したところ、平均比活性(〜155,000u/mg)は野生型対照より僅かに低い(
図9)。比活性が低下する場合もあり、増加する場合もある(20−〜274,000u/mg;L5_11−〜273,000u/mg;L5_28−〜230,000u/mg;L5_30−〜224,000u/mg;L5_35−〜316,000u/mg;L5_43−〜328,000u/mg;L5_46−〜304,000u/mg;L5_52−〜310,000u/mg;L5_64−〜256,000u/mg;L5_65−〜247,000u/mg)。
【0148】
本発明の選択系が有効に機能していることは明らかである。選択圧因子としてRT反応の温度を上昇させることにより、より反応が早く(50℃におけるRT比活性が高い)、より熱安定性である(50℃において5分間プレインキュベートした後の37℃におけるRTの残存活性)逆転写酵素の進化がなし遂げられた。
【0149】
有益な情報源は、選択されたタンパク質配列のアラインメントである(表2A〜表2N)。50℃における活性が一次野生型M−MuLVに比べて実質的に優れている(野生型の酵素活性45%に対して70%以上)分析されたタンパク質の配列を灰色で強調する(表2A〜表2N)。突然変異アミノ酸数は0(野生型又はL5_87)〜12(L5_9)の範囲で変動する。全ての選択されたRT変異体で見出された突然変異体の一覧を表3A〜表3Dに示す。タンパク質は突然変異体の数で降順に並び替えられている。殆どの突然変異体(104個のうち53個)は、1配列当たり4個〜6個の突然変異を有していた。逆転写酵素配列が幾つかのホットスポットを有し、該ホットスポットが全体的にRT反応にとって、及び酵素の熱安定性にとって非常に重要且つ有益であることは明らかである。これらホットスポットは、特定の位置における突然変異の集合として複数の配列アラインメント(表2A〜表2N)において容易に同定することができる。優れた性質を有するM−MuLV逆転写酵素の変異体に見られる突然変異が特に重要である(灰色で強調された配列−表2A〜表2N)。最も頻繁に出現する突然変異についての情報を要約したもの(降順)を表4A〜表4Nに示す。これまでの図のように、50℃において実質的に高い活性を有する突然変異タンパク質を灰色で強調する。同一箇所における突然変異が多数回出現しており、且つこの突然変異を有する逆転写酵素を試験したところ50℃においてより優れた性質を有している場合、この突然変異は逆転写反応にとっていくらか有益であることを意味する。
【0150】
突然変異が見られる頻度によって、突然変異を5つのクラスに分類することができる:21回〜31回出現;14回〜18回出現;4回〜7回出現;2回〜3回出現、及び1回出現。最も頻繁に突然変異が起こる最初の群は、アミノ酸D524(31回出現);D200(30回出現);D653(23回出現)及びD583(21回出現)を含む。2つのアミノ酸(D524及びD583)は、リボヌクレアーゼHドメインの活性中心においてマグネシウムイオンと錯体化することが知られている。突然変異D524G、D583N及びE562Qは、M−MuLV逆転写酵素のRNaseH活性を失わせるために用いられ(Gerard et al.,2002)、これによりcDNAの合成が改善される。本発明の選択の結果は著しく類似している。アスパラギン酸524の突然変異は、98個中31個の配列で見られる。更にD524N置換が1回見られ、D524Aは10回、最後にD524Gは20回見られる。したがって本発明の選択は、重要なアミノ酸を正確に標的とするだけではなく、最良であることが知られているアミノ酸置換と同じアミノ酸置換も正確に標的とする。正確に同じ状況は、104個のうち21個の選択されたタンパク質で出現するアスパラギン酸583の突然変異でも見られる。置換D583Eは1回、D583Aは3回、D583Gは7回、最後にD583Nは10回見られる。この場合も、最良であることが知られているのと同じアミノ酸且つ同じ置換(D583N)が最も頻繁に選択されている。Invitrogen製市販酵素SUPERSCRIPT IIは、3つの突然変異D524G、D583N及びE562Qを有する(国際公開第2004024749号パンフレット)。本発明の選択において3番目のアミノ酸置換E562の突然変異が1回しか見られない(L5_71におけるE562K)ことは興味深い。この結果は、殆どのグルタミン酸562がアスパラギン酸524及び583ほど重要ではない、又は何らかの理由で個のアミノ酸の交換により幾つかの副作用が引き起こされる恐れがあるため、高温(50℃超)で実施されるRT反応にとって有益ではないことを示唆する。
【0151】
選択されたタンパク質配列を更に解析することにより、多くのより突然変異を起こしやすいアミノ酸位置を同定することができ、この突然変異はM−MuLV逆転写酵素を改善するための他の特許出願に記載されている:H204R−7回出現(米国特許第7078208号明細書);H638R−4回出現(米国特許出願公開第20050232934A1号明細書);T197A−2回出現(米国特許第7056716号明細書);M289V(L)、T306A(M)−2回出現(米国特許第7078208号明細書);E302K、N454K−2回出現(国際公開第07022045A2号パンフレット);E69G、L435P−1回出現(国際公開第07022045A2号パンフレット);Y64C、Q190R、V223M、F309S−1回出現(米国特許第7056716号明細書);E562K−1回出現(米国特許第7078208号明細書)。文献に記載されている3つのアミノ酸置換の組み合わせを有する逆転写酵素の2つの配列も選択された(30−D200N、
T306M、D524N、D583G;L5_28−
T306A、F309S、D524A、H594R、F625S)。
【0152】
既知の突然変異に加えて、本発明では頻繁に突然変異が起きている多くのアミノ酸位置を同定した:D200N(A、G)−30回出現;D653N(G、A、H、V)−23回出現;L603W(M)−18回出現;T330P−15回出現;L139P−14回出現;Q221R−6回出現;T287A−6回出現;I49V(T)−5回出現;N479D−5回出現;H594R(Q)−5回出現;F625S(L)−5回出現;P65S−4回出現;H126S(R)−4回出現;L333Q(P)−4回出現;A502V−4回出現;E607K(G、A)−4回出現;K658R(Q)−4回出現;H8P(R)−3回出現;P130S−3回出現;E233K−3回出現;Q237R−3回出現;N249D−3回出現;A283D(T)−3回出現;A307V−3回出現;Y344H−3回出現;P407S(L)−3回出現;M428L−3回出現;Q430R−3回出現;D449G(A)−3回出現;A644V(T)−3回出現;N649S−3回出現;L671P−3回出現;E673G(K)−3回出現;N678I−3回出現(表4A〜表4N)。
【0153】
通常最も優れた性質を有するRTの変異体は、最も頻繁に改変されるアミノ酸の突然変異を有する:20(50℃−123%)−
D200N(30回出現)、
L603W(18回出現)及びC末端が僅かに改変されている−N678I、S679P、R680A;
L5_35(50℃−125%)−
D200N(30回出現)、
T330P(15回出現)、
N479D(5回出現);
L5_37(50℃−162%)−
H123S(4回出現)、L149F(1回出現)、
D200N(30回出現)、N454K(2回出現)、
D583N(21回出現);
L5_43(50℃−160%)−
D200N(30回出現)、Q237R(3回出現)、
T330P(15回出現)、
D524G(31回出現)、
F625S(5回出現)、
D653N(23回出現);
L5_46(50℃−135%)−
D200N(30回出現)、
T330P(15回出現)、
D583N(21回出現)、
T644T(3回出現);
L5_47(50℃−179%)−N107S(1回出現)、
H126R(4回出現)、T128A(1回出現)、I179V(2回出現)、
D200N(30回出現)、H642Y(2回出現)、
D653N(23回出現);
L5_52(50℃−137%)−
D200N(30回出現)、
T330P(15回出現)、Q374R(2回出現)、(
D583N(21回出現);
L5_64(50℃−142%)−
D200N(30回出現)、D216G(2回出現)、
D524G(31回出現)、E545G(2回出現);
L5_65(50℃−127%)−
D200N(30回出現)、Q238H(1回出現)、L570I(1回出現)、
L603W(18回出現);
L5_68(50℃−153%)−M39V(2回出現)、I49V(2回出現)、Q91R(2回出現)、
H204R(7回出現)、
T287A(6回出現)、N454K(2回出現)、
F625L(5回出現)、
D653H(23回出現)。
【0154】
測定したRT活性と突然変異タンパク質の配列アラインメント解析とを組み合わせたデータセットにより、M−MuLV逆転写酵素配列中の多くの有益な突然変異(及びその組み合わせ)を決定することができた。
【0155】
実施例3−モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素突然変異体の解析
実施例2に記載されたインビトロ進化実験は、非常に効率的であった。漸増温度における逆転写反応を選択圧として用い、M−MuLV RTの多くの様々な突然変異体を生成した。その殆どは、一次酵素に比べて高温でより良好に機能することができた。進化した逆転写酵素の配列解析は、酵素の性質の複雑な改善に関与しているホットスポット及び最も重要なアミノ酸位置(置換)を示す。異なる突然変異の個別の効果を解明するために、M−MuLV RTの単一箇所突然変異体及び複数箇所突然変異体を構築し、部分的に精製し、解析した。突然変異体構築の出発点は、M−MuLV RTをコードする7,474bpのプラスミドpET_his_MLV(配列番号19)であって、親和性クロマトグラフィーを用いて迅速にタンパク質を精製するためにN末端にhisタグを備えるプラスミドであった。37℃におけるM−MuLV逆転写酵素の比活性、50℃における相対活性、及び50℃で5分間酵素をインキュベートした後の37℃における相対残存活性を測定した。場合によってはRNaseH活性を確認し、1kb又は4.5kbのRNAに対して異なる温度でcDNA合成反応を実施した。
【0156】
方法及び材料
初期プラスミドpET_his_MLV(配列番号19)を突然変異誘発PCRの出発物質として用いた。突然変異誘発プライマーを用いて突然変異を導入した。個々のクローンの配列を決定し解析した。M−MuLV RT突然変異体を、T7発現株ER2566で発現させた。同コンストラクト中の個々のタンパク質及び一次野生型M−MuLV逆転写酵素を、200mLのLB中でA590が〜0.7になるまで増殖させ、2mLのQiagen−Ni−NTA Superflow樹脂を用いてhisタグを介して親和性クロマトグラフィーにより精製した(全ての精製は供給業者の推奨に従って自然条件下で実施された)。溶出は、1mLのEB(50mMのNaH
2PO
4、300mMのNaCl、250mMのイミダゾール(pH8.0〜、10mMのβ−メルカプトエタノール、及び0.1%のtritonX−100)中で実施された。50倍過剰の保存バッファ(50mMのTris−HCl(25℃においてpH8.3)、0.1MのNaCl、1mMのEDTA、5mMのDTT、0.1%(v/v)のTriton X−100、及び50%(v/v)のグリセロール)で全てのタンパク質を透析した。タンパク質の純度をSDS−PAGEで確認した(通常標的タンパク質は〜40〜80%)。Bredford試薬(Fermentas #R1271)を用いてタンパク質濃度を測定した。
【0157】
MLV逆転写酵素の活性を37℃、50℃で測定し(酵素は特別な希釈バッファ:30mMのTris−HCl(25℃でpH8.3)、10mMのDTT、0.5mg/mLのBSAで希釈した)、50℃で5分間酵素をインキュベートした後37℃にて残存活性を測定した(酵素を希釈し、1×RT反応バッファ:50mMのTris−HCl(25℃でpH8.3)、4mMのMgCl
2、10mMのDTT、50mMのKCl中で該酵素の安定性を測定した)。以下の最終混合物中で全ての場合の酵素活性をアッセイした:50mMのTris−HCl(25℃でpH8.3)、6mMのMgCl
2、10mMのDTT、40mMのKCl、0.5mMのdTTP、0.4MBq/mLの[3H]−dTTP、0.4mMのpolyA・oligo(dT)
12−18特定の反応温度において10分間でポリヌクレオチド画分(DE−81に吸着)に取り込まれるdTMPを測定し、既知の量の市販酵素と比較して活性単位を決定した。
【0158】
M−MuLV逆転写酵素変異体のRNaseH活性を、米国特許第5405776号明細書に従って測定した。50mMのTris−HCl(pH8.3)、2mMのMnCl
2、1mMのDTT、及び[3H](A)n×(dT)n(5μMの[3H](A)n、35cpm/pmol;20μM(dT)n)を含有する反応混合物(50μL)中で精製酵素のRNaseH活性をアッセイした。反応物を37℃で10分間インキュベートし、10μLのtRNA(1mg/mL)及び20μLの冷50%TCAを添加することにより停止させた。氷上で10分間放置した後、Eppendorf遠心機(25,000g)で10分間遠心分離した。40μLの上清をLSCユニバーサルカクテル(Roth−Rotiszint eco plus)中で計測した。1単位のRNaseH活性は、37℃で10分間に1モルの[3H](A)nを[3H](A)n×(dT)nに可溶化するのに必要な酵素の量である。
【0159】
「RevertAid
TM First Strand cDNA Synthesis Kit」(#K1622−Fermentas)、及びその対照である、オリゴ(dT)
18プライマーと組み合わせられた3’−ポリ(A)テールを備える1.1kbのRNAを用いて、異なる温度でcDNAを合成する精製逆転写酵素の能力について調べた。或いは4.5kbのRNA(Eco31Iで線状化されたpTZ19Rプラスミドから合成、ファージラムダDNAの5,505bp〜8,469bpの部分を更に含む)を用いて逆転写反応について試験した。提供されたプロトコルに軽微な変更を幾つか加えた(37℃で5分間プレインキュベートしない)プロトコルに従って、キットの構成要素である1μgの合成RNAを用いて20μLの反応体積中でcDNAを1時間合成した。対応する温度勾配を適用するEppendorf Mastercycler勾配PCR機を用いて96ウェルPCRプレートにおいて逆転写反応を実施した。アルカリアガロースゲル電気泳動(エチジウムブロマイドで染色)により合成したcDNAを分析した。アルカリアガロースゲル上でcDNA合成を分析したサンプルを
図16に示す。
【0160】
結果
M−MuLV逆転写酵素の進化中にどの突然変異が見られたかという頻度によって、突然変異を5つのクラスに分類することができる:21回〜31回出現;14回〜18回出現;4回〜7回出現;2回〜3回出現、及び1回出現。一般的に個々の逆転写酵素突然変異体の構築は、この情報に従って実施された。先ず最も頻繁に見られる突然変異体を試験した。37℃における逆転写酵素の比活性、50℃における相対活性、及び50℃で5分間酵素をインキュベートした後の37℃における相対残存活性を測定した。場合によってはRNaseH活性を調べ、1kb又は4.5kbのRNAに対して異なる温度でcDNA合成反応を実施した。個々の突然変異体についての全ての実験データを表5A〜表5Cに示す。2番目の列(「選択頻度」)は、正確な突然変異を有する配列決定された突然変異体の数を示し、括弧内の数字は選択で見出された特定のアミノ酸突然変異の総数を示す。例えばD200N−25(30)は、アスパラギン酸200のアスパラギンへの置換が合計30個のD200突然変異体のうちの25個で見られたことを意味する。37℃で測定された逆転写酵素の比活性は、タンパク質1mg当たりのユニットで表される。50℃における相対酵素活性及び50℃で5分間インキュベートした後の37℃における相対残存RT活性は、37℃で測定された同酵素の比活性(100%)に対して正規化された百分率で表される。対照(1行目)として突然変異体ライブラリ構築に用いられた野生型M−MuLV逆転写酵素を示す。この一次酵素はRTの突然変異体と同種のベクター内で発現し、同様の方法で精製された。野生型酵素の比活性は、37℃で200,000u/mgであり、50℃における相対活性は(37℃における活性と比べて)45%〜50%(90,000u/mg〜100,000u/mg)であり、50℃で5分間インキュベートした後の37℃における相対残存RT活性は(37℃における活性と比べて)約11%(〜22,000u/mg)である。野生型酵素は、約160u/mol〜200u/molのRNaseH活性を有し、48℃で完全長1kbのcDNAを合成することができる。M−MuLV逆転写酵素は、テンプレート−プライマー基質に結合することにより熱失活から保護されており、対照的に酵素は、溶液のみの中では熱安定性が低いことが知られている(Gerard et al.,2002)。50℃で5分間インキュベートした後37℃における相対残存RT活性は、基質を含まない溶液中における酵素の熱安定性を直接示す。一方50℃における相対活性は、RNA/DNA基質との複合体の状態での酵素の熱安定性及びcDNA合成速度を示す。逆転写酵素の反応速度の速い突然変異体は、熱安定性が野生型酵素と同じである場合でさえも50℃におけるポリメラーゼユニットの数が増加する。cDNA合成(本発明では1kb又は4.5kb)の最高温度は、最も包括的なパラメータであり、これは一般的に高温でcDNAを合成する酵素の能力を表す。37℃における比活性(野生型200,000u/mgに対して220,000u/mg以上)、37℃における突然変異体の活性と比較した50℃における相対活性(野生型45%〜50%に対して54%以上)、又は37℃における突然変異体の活性と比較した50℃で5分間インキュベートした後の37℃における相対残存活性(野生型11%に対して13%以上)が少なくとも10%増加した逆転写酵素の突然変異体を灰色の陰付きで示し、著しく改善された酵素と見なす。48℃超の温度で完全長1kbのcDNAを合成することができる突然変異体も灰色の陰付きで示す。
【0161】
37℃において高い比活性(220,000u/mg以上)を有する逆転写酵素を以下に示す(表5A〜表5C):
D200(D200N−254,000u/mg;D200G−276,000u/mg;D200H−234,000u/mg)、
T330(T330N−223,000u/mg;T330D−240,000u/mg)、
Q221(Q221R−268,000u/mg)、
H594(H594K−270,000u/mg;H594Q−231,000u/mg)、
D449(D449E−224,000u/mg;D449N−221,000u/mg)、
M39(M39N−349,000u/mg)、
M66(M66L−237,000u/mg;M66V−227,000u/mg;M66I−240,000u/mg)、
H126(H126R−227,000u/mg)、
W388(W388R−266,000u/mg)、
I179(I179V−251,000u/mg)。
【0162】
37℃における活性と比較して50℃において高い相対活性(54%以上)を有する逆転写酵素を以下に示す(表5A〜表5C):
D200(D200N−84%;D200A−87%;D200Q−103%;D200E−79%;D200V−131%;D200W−103%;D200G−88%;D200K−102%;D200R−68%;D200H−54%)、
L603(L603W−105%;L603F−104%;L603Y−95%;L603M−77%)、
D653(D653N−93%;D653K−106%;D653A−99%;D653V−98%;D653Q−93%;D653L−83%;D653H−116%;D653G−90%;D653W−93%;D653E−80%)、
T330(T330P−80%;T330N−69%;T330D−55%;T330V−65%;T330S−67%)、
Q221(Q221R−94%;Q221K−77%;Q221E−64%;Q221M−58%;Q221Y−77%)、
E607(E607K−84%;E607A−98%;E607G−72%;E607D−69%)、
L139(L139P−59%)、
T287(T287S−68%)、
N479(N479D−81%)、
H594(H594R−69%;H594K−80%;H594Q−75%;H594N−61%)、
D449(D449G−79%;D449E−77%;D449N−75%;D449A−99%;D449V−83%)、
M39(M39V−54%;M39N−71%)、
M66(M66L−79%;M66V−73%;M66I−80%)、
L333(L333Q−54%)、
H126(H126R−58%)、
P130(P130S−70%)、
Q91(Q91R−56%)、
W388(W388R−72%)、
R390(R390W−64%)、
Q374(Q374R−56%)、
E5(E5K−67%)。
【0163】
37℃における活性と比較して50℃で5分間インキュベートした後37℃において高い相対残存活性(13%以上)を有する逆転写酵素を以下に示す(表5A〜表5C):
D200(D200N−15%;D200A−18%;D200Q−23%;D200R−27%;D200H−27%)、
L603(L603W−23%;L603Y−13%;L603P−15%)、
D653(D653N−21%;D653K−15%;D653A−18%;D653V−16%;D653Q−18%;D653H−13%;D653G−13%;D653W−13%;D653E−19%)、
T330(T330P−21%;T330N−13%;T330D−16%;T330S−15%)、
T287(T287A−13%;T287F−13%)、
H594(H594R−14%;H594Q−13%)、
D449(D449G−13%)、
M39(M39V−13%)、
M66(M66L−13%)、
Y344(Y344H−13%)、
Q91(Q91R−13%)、
N649(N649S−16%)、
W388(W388R−14%)。
【0164】
48℃超の温度で完全長1kbのcDNAを合成することができる突然変異体を以下に示す(表5A〜表5C):
D200(D200N−50.4℃;D200H−50.4℃)、
L603(L603W−53.1℃;L603F−50.4℃;L603Y−47.8℃〜50.4℃)、
D653(D653N−50.4℃〜53.1℃;D653K−50.4℃〜53.1℃;D653A−50.4℃;D653V−50.4℃;D653Q−50.4℃;D653L−50.4℃;D653H−50.4℃〜53.1℃;D653G−50.4℃;D653W−50.4℃)、
Q221(Q221R−50.4℃)、
E607(E607K−47.8℃〜50.4℃)、
H594(H594K−47.8℃〜50.4℃;H594Q−47.8℃〜50.4℃)。
【0165】
アルカリアガロースゲル上で1kbのcDNA合成を分析したサンプルを
図16A〜
図16Dに示す。
【0166】
収集した生化学的データによれば、高温でcDNA合成に影響を及ぼすことができるM−MuLV逆転写酵素配列中の最も重要な位置は、D200、L603、D653、T330、Q221、E607、L139、T287、N479、H594、D449、M39、M66、L333、H126、Y344、P130、Q91、N649、W388、R390、I179、Q374、E5である。
【0167】
一般に対象突然変異体を組み合わせて、M−MuLV逆転写酵素の基質の存在下及び非存在下における熱安定性、速度、処理能力、及び高温でcDNAを合成するための全体的な能力を更に改善することができる。組み合わせアプローチによる酵素の改善を示す幾つかのデータを表6に示す。単一突然変異D200N 及びL603Wは、50℃でそれぞれ84%及び105%の相対活性を有する。1kbのcDNA合成の最高温度はそれぞれ50.4℃及び53.1℃である。二重突然変異体D200N;L603Wは、50℃で131%の相対活性を有し、56℃で1kbのcDNAを合成することができる。三重突然変異体D200N;L603W;T330P(50℃で80%の相対活性、47.8℃で1kbのcDNAを合成)は更に改善されており、50℃で175%の相対活性を有し、56℃〜58℃で1kbのcDNAを合成することができる。四重突然変異体D200N;L603W;T330P;E607K(50℃で84%の相対活性、47.8℃〜50.1℃で1kbのcDNA)は、50℃で174%の相対活性を有し、60℃〜62℃で1kbのcDNAを合成することができる。五重突然変異体D200N;L603W;T330P;E607K;L139P(50℃で59%の相対活性、47.8℃で1kbのcDNA)は、50℃で176%の相対活性を有し、62℃で1kbのcDNAを合成することができ、これは野生型M−MuLV逆転写酵素(47.8℃で1kbのcDNAを合成)に比べて約14℃高い温度である。また熱安定性の更なる特徴が以下の場合に見られる:
N479D、H594R突然変異体(D200N;L603W−50℃で131%の相対活性、56℃で1kbのcDNAを合成対D200N;L603W;N479D;H594R−50℃で182%の相対活性、56℃〜58℃で1kbのcDNAを合成、56℃〜58℃で4.5kbのcDNAを合成)、
T330P突然変異体(D200N;L603W;D653N;D524G−50℃で155%の相対活性、58℃〜60℃で1kbのcDNAを合成対D200N;L603W;D653N;D524G;T330P−50℃で180%の相対活性、60℃〜62℃で1kbのcDNAを合成)。
【0168】
アルカリアガロースゲル上で4.5kbのcDNA合成について分析したサンプルを
図16E〜
図16Gに示す。
【0169】
実施例4:CRDの変更 ビオチン−dUTPを用いるDNA依存性DNAポリメラーゼの選択(原理の証明)
この実施例は、修飾ヌクレオチドをDNA−DNA基質に取り込むことができるDNA依存性DNAポリメラーゼとしての逆転写酵素の活性に基づく選択ストラテジを示す。選択の基本スキームを
図12に概略的に示す。2つのプラスミドpET_his_MLV_D583N_pD(プロテインDのスペーサに融合しているRNaseHマイナスモロニーマウス白血病ウイルス(M−MLV)逆転写酵素をコードする)及びその誘導体pET_his_del_pD(不活化逆転写酵素をコードする、polドメインの57アミノ酸が欠失、RNaseHドメインにD583N突然変異、実施例1、配列番号2)をこの実施例の出発物質として用いた。プラスミドpET_his_MLV_D583N_pD及びpET_his_del_pDを標的として用いて2つの個別のポリメラーゼ連鎖反応により活性逆転写酵素及び不活性逆転写酵素をコードする初期DNA断片を合成した。3’末端の終止コドンを欠失くmRNAを合成するための転写反応において該合成PCR断片を用いた。精製mRNAを1:20=MLV(活性RT):del(不活性RT)の比で混合した。二本鎖DNAアダプタ(DNA依存性DNAポリメラーゼ活性の選択に必要)を、T4DNAリガーゼによって3’mRNAにライゲーションした。このmRNA−dsDNA複合体をインビトロ翻訳反応に用いた。mRNAに沿って移動するリボソームは、RNA−DNAハイブリダイゼーション部位で翻訳を停止する(Tabuchi et al.,2001)。50mMのMg
2+を含有する氷冷バッファで翻訳混合物を希釈することにより、リボソーム−mRNA/dsDNA−タンパク質複合体を安定化させた(従来のリボソームディスプレイと同様に)。三元複合体(TC)の混合物をショ糖クッション溶液上で超遠心することにより精製した。インビトロで翻訳されたM−MuLV(RNaseH−)に連結しているmRNA−dsDNAを含有する精製三元複合体(3×10
9個未満の分子が回収された)を用いて、ビオチン−dUTP及び反応バッファを追加的に添加した反応混合物を調製した。氷冷反応混合物を乳化させて、大きさ〜2μmの油中水型区画を〜1×10
10個得た。乳化されたRT反応混合物(1区画当たりTC(リボソーム−mRNA/dsDNA−タンパク質)1個未満)を37℃で30分間インキュベートした。区画化反応混合物の温度を上昇させた後、大部分のTCは解離し、mRNA/dsDNA及び逆転写酵素を放出する。活性M−MuLV(RNaseH−)逆転写酵素を含む区画においてのみ取り込み反応が成功し、mRNA/dsDNA複合体がビオチン化される。ビオチン化複合体は、ストレプトアビジンコーティングを施されている磁気ビーズ上に選択的に固定化され、RT−PCRにより特異的に増幅され得る。実験が成功した結果として、活性酵素をコードする遺伝子(本発明の場合ではMLV_D583N_pD逆転写酵素のRT−PCR断片)が、不活性酵素(del_pD)をコードする遺伝子よりも富化されるはずである。
【0170】
材料及び方法
mRNA/dsDNA複合体の生成
(1)ライゲーション効率の測定
スプリントとしてddC−Long2プライマー(配列番号22)を用いてMLV_pD mRNA(pET_his_MLV_pDプラスミドから合成、実施例1)とプライマーLong+Tb(配列番号23)とをライゲーションさせることによりライゲーション反応の効率を測定した。Long+Tbの5’末端は、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(Fermentas)を用いて既にリン酸化されていた。
【0171】
8.5pmol(〜10μg)の精製MLV_pD mRNAと4倍モル過剰のLong+Tb(配列番号23)及び4.2倍モル過剰のddC−Long2(配列番号22)のヌクレアーゼ不含水溶液とを混合することにより、36μLのアニーリング混合物を調製した。混合物を70℃で5分間インキュベートし、次いで20分間室温まで冷却した。混合物を2分間冷却スタンドに移動させた後、ライゲーション反応成分混合物を添加した。
【0172】
4.5μLの10×ライゲーションバッファ及び4.5μLのT4DNAリガーゼ(5v/μL)(Fermentas)を36μLのアニーリング混合物に添加した。37℃で30分間ライゲーション反応を実施し、続いて等体積のRoti(登録商標)フェノール/クロロホルム(ROTH)で1回、等体積のクロロホルムで2回抽出した。mRNA量はライゲーション反応のために回収された初期量とほぼ同じであると仮定して、〜5μgのライゲーション産物混合物をヌクレアーゼ不含水により43μLに希釈した。反応混合物の2μLのアリコートをアガロースゲルで分析するために残し、次いでDynabeads M−280ストレプトアビジンビーズ(Dynabeads(登録商標)kilobase BINDER
TM Kit(DYNAL Biotech))上に固定した。
【0173】
10μLの再懸濁させたDynabeadsを1.5mLの微量遠心管に移し、キットに含まれている結合溶液50μLで洗浄した。該微量遠心管にビーズが定着するまで該微量遠心管を1分間〜2分間磁石上に定置し、溶液を除去した。2μLの水性tRNA(酵母のtRNA(Roche))溶液(1μg/μL)を添加した38μLの結合溶液をピペッティングすることによりDynabeadsを穏やかに再懸濁させ、非特異的なmRNAの結合を最低限に抑えた。結合溶液中のDynabeads40μLを、ライゲーション産物混合物を含有する溶液(〜40μL)に添加した。サーモミキサー(Eppendorf)内で+22℃にて60分間振盪しながら該管をインキュベートした。ライゲーションされたmRNA/dsDNAの結合後、上清を除去し、50μLの洗浄溶液(キットに含まれている)で3回ビーズを洗浄した。ライゲーションされたmRNA/dsDNA複合体が固定化されている回収されたDynabeadsを26μLのヌクレアーゼ不含水に再懸濁させ、次いで40μLのRoti(登録商標)フェノール/クロロホルム(ROTH)で1回、40μLのクロロホルムで2回抽出し、磁気ビーズからmRNA/dsDNA複合体を放出させた。1μL、2μL、及び5μLの最終混合物を、固定化前に残しておいたサンプル(2μL)及びMass Ruler
TM High Range DNA ladderと共にアガロースゲル上で分析した。固定化前及び固定化後のmRNA量と比較してストレプトアビジンビーズで精製されたmRNA/DNA複合体中のmRNAの量を決定した。回収されたmRNAの収率は〜60%であり、これは少なくとも60%のmRNAがDNA二本鎖と成功裏にライゲーションされ、mRNA/dsDNA複合体が生じたことを意味する。
【0174】
(2)mRNA/dsDNA複合体及び自己プライマー化(self primed)mRNAへのビオチン−dUTPの取り込み効率の測定
先のRNAのdsDNAへのライゲーション実験で示されたように、ライゲーション反応効率は〜60%以上である。ライゲーション混合物中に残った遊離mRNAは自己をプライマー化し、M−MuLV逆転写酵素及びビオチン−dUTPを用いた伸長反応中に沈殿することがある。mRNA/dsDNA複合体(ライゲーション産物)が遊離自己プライマー化mRNAよりも優れた基質であることを示すためにこの実験を実施した。
【0175】
上記手順に従ってMLV_D583N_pD mRNAをlong+オリゴヌクレオチド(配列番号21)とライゲーションさせた(初期プラスミドpET_his_MLV_D583N_pD及びpET_his_del_pDの構築の詳細は実施例1に記載されている)。調製した(MLV_D583N_pD mRNA/long+)基質〜12.5ngを、70℃で5分間既にインキュベートされているdel_pD mRNA〜12.5ngと組み合わせ、次いでヌクレアーゼ不含水中で20分間室温まで冷却した。合計体積は12.5μLであった。逆転写酵素によりdTTP又はビオチン−dUTPを取り込むための第2の混合物を調製した:8μLの5×逆転写酵素用反応バッファ;40u/μLのRiboLock
TM RNase阻害剤(Fermentas)(1μL);ヌクレアーゼ不含水(18.6μL);200u/μLのRevertAid
TM Minus M−MuLV逆転写酵素(Fermentas)(0.4μL)。調製した混合物を2本の試験管に2×15μLずつ分注し、1mMのdTTP(Fermentas)(1μL)又は1mMのビオチン−dUTP(Fermentas)(1μL)を添加した。次いで5μLの基質(第1の混合物から)をdTTP及びビオチン−dUTPを含有する混合物に添加した。37℃で60分間反応を実行した。その後0.5MのEDTA(pH8.0)(1μL)を両方のサンプルに添加し、等体積のRoti(登録商標)フェノール/クロロホルム(ROTH)で1回、等体積のクロロホルムで1回反応混合物を抽出し、次いで反応混合物をG−50 MicroColumns(GE Healthcare)で精製した。得られた反応生成物2μLを(ストレプトアビジンビーズ精製せずに)直接RT反応するために残し、ビオチン化mRNA−dsDNA複合体をDynabeads M−280ストレプトアビジンビーズ(Dynabeads(登録商標)kilobase BINDER
TM Kit(DYNAL Biotech))上に固定化するために溶液の残りの部分を用いた。10μLの再懸濁させたDynabeadsを1.5mLの微量遠心管に移し、キットに含まれている結合溶液25μLで洗浄した。該微量遠心管の底部にビーズが定着するまで該微量遠心管を1分間〜2分間磁石上に定置し、溶液を除去した。90μLの結合溶液をピペッティングすることによりDynabeadsを穏やかに再懸濁させ、2μLの水性tRNA(酵母のtRNA(Roche))溶液(1μg/μL)を添加して非特異的なmRNAの結合を最低限に抑えた。結合溶液中のDynabeads40μLを、dTTP及びビオチン−dUTPにより伸長されたRNA−DNA断片を含有する溶液(〜40μL)に添加した。サーモミキサー(Eppendorf)内で+22℃にて40分間振盪させながら(1,400rpm)該管をインキュベートした。結合工程後、上清を除去し、+22℃で5分間振盪させながら(1,400rpm)50μLの洗浄溶液(キットに含まれている)で3回ビーズを洗浄した。伸長されたmRNA−dsDNA複合体が固定化されている回収されたDynabeadsを逆転写反応混合物に再懸濁させた。逆転写反応混合物を氷上で調製した:5×逆転写酵素用反応バッファ(Fermentas)(20μL);10mMのdNTP(Fermentas)(10μL);40u/μLのRiboLock RNase阻害剤(Fermentas)(2.5μL);20μMのpD_42オリゴヌクレオチド(配列番号8)(5μL);RevertAid
TM Minus M−MuLV逆転写酵素(200u/μL)(Fermentas)(2.5μL);ヌクレアーゼ不含水(55μL)。調製した混合物を19μLずつ5つのアリコートに分注した(5×19μL):伸長されたmRNA/dsDNA複合体又はmRNAが固定化されているDynabeadsを再懸濁させるために2つを用い、ストレプトアビジンビーズ精製せずに残したサンプルを含む試験管に残りのうち2つを移し、残り1つの19μLのアリコートに1μLのヌクレアーゼ不含水を添加した。これは反応混合物にDNAが夾雑していないことを証明するための陰性反応対照である。全ての反応混合物を、cDNA合成反応が終了するまで1時間、+42℃でサーモミキサー(Eppendorf)内にて振盪させながら(1,000rpm)インキュベートした。
【0176】
ネステッドPCRによりcDNAの増幅を実施した。初期PCR混合物を氷上で調製した:KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(14μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(14μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(8.4μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(2.8μL);100μMのM_Fプライマー(配列番号11)(0.7μL);100μMのM_2Rプライマー(配列番号12)(0.7μL);水(92.4μL)。混合物を19μLずつ7つのサンプルに分注した(7×19μL)。19μLのPCRマスター混合物5つに、1μLのcDNA(1〜5のRTサンプル)を添加し;PCRマスター混合物の6番目の試験管に1μLの水を添加し(陰性PCR対照);7番目の試験管(陽性PCR対照)に1μLのpET_his_MLV_D583N_pDプラスミド(〜1ng)を添加した。サイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、25サイクル(94℃で45秒間、57℃で45秒間、及び72℃で1分間)及び最後の伸長工程72℃で3分間。
【0177】
予想されるアンプリコンの長さは、MLV_D583N_pDが907bp、del_pD cDNAが736bpであった。PCR産物を1ウェル当たり10μLのPCR混合物をロードした1%アガロースゲルで解析した(
図13)。
【0178】
予想通り、ビオチン−dUTPを用いる伸長反応においてのみ有効なcDNA増幅が見られた。dTTPを用いた伸長反応では増幅されたcDNAの非常に弱いバンドを検出することができ、これはmRNAのストレプトアビジンビーズへの弱い非特異的結合によって説明することができる。ストレプトアビジンビーズで精製した後、MLV_D583N_pD遺伝子(907bp)をコードするDNAはdel_pDのDNA(736bp)よりも富化される。これはmRNA/dsDNA複合体が、自己プライマー化del_pD mRNAよりも遥かに効率よくビオチン−dUTPにより伸長されることを意味する。
【0179】
(3)mRNA混合物(MLV_D583N_pD:del_pD=1:20)及びRNA/dsDNAの調製
インビトロ翻訳のためのPCR断片の調製。PCR混合物を氷上で調製した:KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(20μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(20μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(12μL);DMSO(D8418−Sigma)(16μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(4μL);100μMのpro−pIVEXプライマー(配列番号3)(1μL);100μMのpD−ter−プライマー(配列番号20)(1μL);水(122μL)。混合物を2本の試験管に2×98μLずつ分注した。98μLのPCRマスター混合物2つに、2μLのpET_his_MLV_D583N_pD(〜1ng/μLに希釈)又は2μLのpET_his_del_pD(〜1ng/μLに希釈)のいずれかを添加した(初期プラスミドpET_his_MLV_D583N_pD及びpET_his_del_pDの構築の詳細は実施例1に記載されている)。サイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、30サイクル(94℃で45秒間、53℃で45秒間、及び72℃で2分間)、及び最後の伸長工程72℃で5分間。増幅効率は〜7,000倍であり、2ngのプラスミド(7,873bp)標的が〜5μg(50ng/μL)の増幅産物(pET_his_MLV_D583N_pDからは2,702bpのPCR断片MLV_D583N_pD;pET_his_del_pDからは2,531bpのPCR断片del_pD)に増幅された。
【0180】
転写混合物を調製した:5×T7転写バッファ(1MのHEPES−KOH(pH7.6)(80μL);150mMの酢酸マグネシウム;10mMのスペルミジン;0.2MのDTT);112mMの各NTP(Fermentas)(56μL);20u/μLのT7RNAポリメラーゼ(Fermentas)(16μL);40u/μLのRiboLock RNase阻害剤(Fermentas)(8μL);ヌクレアーゼ不含水(114μL)。混合物を2本の試験管に2×165μLずつ分注し、20ng/μLのPCR断片MLV_D583N_pD(非精製PCR混合物)(35μL)又は20ng/μLのPCR断片del_pD PCR(非精製PCR混合物)(35μL)を添加した。37℃で2時間転写を行った。
【0181】
両方の転写混合物を氷冷ヌクレアーゼ不含水で200μLに希釈し、6MのLiCl溶液(200μL)を添加した。混合物を+4℃で25分間インキュベートし、最高速度(25,000g)で冷却遠心機を用いて+4℃にて25分間遠心分離した。上清を廃棄し、RNAペレットを500μLの氷冷75%エタノールで洗浄した。最高速度で4℃にて5分間再度遠心管を遠心分離に供し、上清を廃棄した。RNAペレットを室温で5分間乾燥させ、次いで1,400rpmで+4℃にて15分間振盪することにより、400μLのヌクレアーゼ不含氷冷水に再懸濁させた。溶解していないRNAを分離するために、最高速度で+4℃にて5分間再度遠心管を遠心分離に供した。約380μLの上清を、10×DNaseIバッファ(Mg
2+)(Fermentas)(42μL);1u/μLのDNaseI(RNase不含)(Fermentas)(3μL)を含む新たな試験管に移し、+37℃で20分間インキュベートしてDNAを分解した。反応混合物を等体積のRoti(登録商標)フェノール/クロロホルム(ROTH)で1回、等体積のクロロホルムで2回抽出し、DNaseIを除去した。43μLの3M酢酸ナトリウム溶液(pH5.0)及び1,075μLの氷冷96%エタノールを各試験管に添加した。最後に、−20℃で30分間インキュベートし、最高速度(25,000g)、+4℃で25分間遠心分離することによりRNAを沈殿させた。上清を廃棄し、RNAペレットを500μLの氷冷75%エタノールで洗浄した。最高速度、+4℃で4分間再度遠心管を遠心分離に供し、上清を廃棄した。RNAペレットを室温で5分間乾燥させ、次いで4℃で15分間振盪させる(1,400rpm)ことにより、150μLのヌクレアーゼ不含氷冷水に再懸濁させた。RNA溶液を10μLずつ分注し、液体窒素で凍結させた。mRNAの濃度を分光光度計で測定し、RiboRuler
TM RNA Ladder、High Range(Fermentas)と共にアガロースゲル上でダブルチェックした。
【0182】
スプリントとしてddC−Long2オリゴデオキシヌクレオチドを用いてlong+オリゴデオキシヌクレオチドとmRNAとをライゲーションさせることによりmRNA/dsDNA複合体を生成した。Long+の5’末端は、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(Fermentas)を用いて既にリン酸化されていた。天然に存在するRNA−DNA基質に対して逆転写酵素が3’末端を伸長させる可能性を防ぐために、オリゴデオキシヌクレオチドddC−Long2は3’末端修飾(ddC)を有する。1:20=MLV_D583N_pD(活性RT):del_pD(不活性RT)の比で混合された17pmolの精製mRNA混合物と、4.3倍モル過剰のLong+及び4.1倍モル過剰のddC−Long2とをヌクレアーゼ不含水に混合することにより、50μLのアニーリング混合物を調製した。混合物を70℃で5分間インキュベートし、次いで20分間室温まで冷却した。混合物を2分間冷却スタンドに移動させた後、ライゲーション反応成分を添加した。
【0183】
5μLの10×ライゲーションバッファ及び5μLのT4DNAリガーゼ(5v/μL)(Fermentas)を40μLのアニーリング混合物に添加した。T4DNAリガーゼを含まない1×ライゲーションバッファ中で同アニーリング混合物を用いて陰性ライゲーション反応を実施した。調製したライゲーション反応混合物を37℃で30分間インキュベートした。ライゲーションを停止させるために、1μLの0.5M EDTA(pH8.0)を両方の試験管に添加し、反応混合物を等体積のRoti(登録商標)フェノール/クロロホルム(ROTH)で1回、等体積のクロロホルムで2回抽出し、次いで真空濃縮機5301(Eppendorf)内で10分間30℃にて反応生成物を濃縮した。illiustra ProbeQuant G−50 MicroColumns(GE Healthcare)を用いて脱塩を実施した。RiboRuler
TM RNA Ladder、High Range(Fermentas)と共にアガロースゲル上でライゲーション産物の濃度を測定した。long+/ddC−Long2 オリゴデオキシヌクレオチド〜0.24μg/μLにライゲーションしているmRNA混合物(MLV_D583N_pD:del_pD=1:20)(T4DNAリガーゼを含むサンプル)及びlong+/ddC−Long2オリゴデオキシヌクレオチド〜0.06μg/μLとmRNAとの単なる混合物(T4DNAリガーゼを含まないサンプル)。
【0184】
(4)[α−P
33]dATPの取り込みによるmRNA/dsDNA複合体の全般的制御
逆転写酵素によるdTTP(又はビオチン−dUTP)の取り込み、及びその後の[α−P
33]dATPの取り込みについて調製したmRNA/dsDNA複合体(基質)を試験した。反応混合物:逆転写酵素用5×反応バッファ(16μL);40u/μLのRiboLock
TM RNase阻害剤(Fermentas)(4μL);[α−P
33]dATP(10mCi)/ml、SRF−203(Hartmann Analytic))(2μL);ヌクレアーゼ不含水(35μL);200u/μLのRevertAid
TM Minus M−MuLV逆転写酵素(Fermentas)(1μL)。調製した混合物を2本の試験管に2×28μLずつ分注し、1mMのdTTP(Fermentas)(2μL)又は1mMのビオチン−dUTP(Fermentas)(2μL)を添加した。得られた混合物を2本の試験管に15μLずつ分注した。第1の試験管に1.25μL(〜0.3μg)のライゲーション産物+3.75μLのヌクレアーゼ不含水を添加した。第2の試験管には5μL(〜0.3μg)の陰性ライゲーション反応産物を添加した。反応混合物を37℃で30分間インキュベートした。次いで0.5MのEDTA(pH8.0)(1μL)を全ての試験管に添加し、等体積のRoti(登録商標)フェノール/クロロホルム(ROTH)で1回、等体積のクロロホルムで2回反応混合物を抽出し、次いでilliustra ProbeQuant G−50 MicroColumns(GE Healthcare)を用いて精製した。RiboRuler
TM RNA Ladder、High Range(Fermentas)と共にアガロースゲル上で反応生成物を分析した(
図14A)。全てのサンプルにおいて(リガーゼ有及び無)、del_pD mRNAの目立たないバンド(〜2,500b)が見られた(MLV_D583N_pD mRNA 〜2,700bの20倍少ない量、mRNA混合物中における存在は識別できなかった)。次いでアガロースゲルを濾紙上で乾燥させたところ、放射標識mRNA/dsDNA複合体(mRNAと同位置)は、陽性ライゲーションサンプル(リガーゼ有)でのみ検出され、陰性ライゲーションサンプル(リガーゼ無)では検出されなかった(
図14B)。
【0185】
(5)ビオチン−dUTPを用いたDNA依存性DNAポリメラーゼの選択
合成WakoPURE system(295−59503−Wako)を用いるインビトロ翻訳に、既に調製されているmRNA/dsDNA複合体(mRNA混合物MLV_D583N_pD(活性RT):del_pD(不活性RT)=1:20)を用いた。WakoPURE system(25μL)用転写混合物:A溶液(Wako)(12.5μL);B溶液(Wako)(5μL);40u/μLのRiboLock RNase阻害剤(Fermentas)(0.5μL);1MのDTT(0.25μL);ヌクレアーゼ不含水(1.75μL)、及び0.24μg/μLのmRNA/dsDNA基質(〜1,200ng)(5μL)。37℃で120分間インビトロ翻訳を行った。
【0186】
155μLの氷冷停止バッファWBK
500+DTT+triton(50mMトリス酢酸(25℃でpH7.5);50mMのNaCl;50mMの酢酸マグネシウム;500mMのKCl;10mMのDTT;0.1%(v/v)のTriton x−100(T8787−Sigma))を添加することにより翻訳(〜25μL)を停止させ、+4℃、25,000gで5分間遠心分離した。透明な1mLの超遠心管(343778−Beckman)中の840μLの35%(w/v)ショ糖−WBK
500+DTT+Triton x−100(50mMのトリス酢酸(25℃でpH7.5);50mMのNaCl;50mMの酢酸マグネシウム;500mMのKCl;10mMのDTT;0.1%(v/v)のTriton x−100(T8787−Sigma);35%(w/v)−ショ糖(84097−Fluka))溶液上に160μLの遠心分離した翻訳混合物を非常に慎重に移した。mRNA/dsDNA−リボソーム−タンパク質(tRNA)からなる三元複合体(TC)を、TL−100 Beckman超遠心機;TLA100.2固定角ロータ(Beckman)を用いて+4℃、100,000rpmで9分間超遠心することにより精製した。最初に750μLの溶液を遠心管の最上部から除去した。次いで(超遠心管の底部に存在するTCの小さく透明なペレットをインタクトなまま保持するために非常に慎重に)管壁を750μLのWBK
500(50mMのトリス酢酸(25℃でpH7.5);50mMのNaCl;50mMの酢酸マグネシウム;500mMのKCl)で洗浄した。最後に、遠心管の最上部から始めて全ての溶液を除去し、ペレットを30μLの氷冷停止バッファWBK
500+DTT+triton(50mMのトリス酢酸(25℃でpH7.5);50mMのNaCl;50mMの酢酸マグネシウム;500mMのKCl;10mMのDTT;0.1%(v/v)のTriton X−100(T8787−Sigma)に溶解させた。
【0187】
放射活性標識mRNAを用いて決定されたように、超遠心後5%〜30%のインプットmRNAは、三元複合体ペレット中に存在する。したがって、30μLのバッファ(〜12ng/μL又は9×10
9分子/μLの三元複合体)中に360ng(翻訳反応で用いられた1,200ngのmRNAの30%)未満が存在すると予想された。
【0188】
5×反応逆転写酵素用バッファ(Fermentas)(5μL);40u/μLのRiboLock RNase阻害剤(Fermentas)(1.25μL);1mMのビオチン−dUTP(Fermentas)(2.5μL);ヌクレアーゼ不含水(40.95μL)、及び精製(2.7×10
9分子未満)TC(0.3μL)を混合することにより、修飾ヌクレオチド取り込み反応混合物を氷上で調製した。プロトコルによれば、50μLのヌクレオチド取り込み反応混合物は、2.7×10
9分子未満の三元複合体を含有する。
【0189】
最終濃度が4%(v/v)になるようにABIL EM90(Goldschmidt)を鉱物油(M5904−Sigma)に混合することにより油−界面活性剤混合物を調製した(Ghadessy and Holliger,2004;米国特許出願公開第2005064460号明細書)。950μLの油−界面活性剤混合物を50μLのRT混合物と混合することにより、5mLの低温貯蔵バイアル(430492−Corning)内で+4℃にてエマルションを調製した。MS−3000調速磁気攪拌機(Biosan)及びRotilabo(登録商標)(3×8mm)中央リング付磁気撹拌子(1489.2−Roth)を用いて〜2,100rpmで混合を行い、30秒間に1回10μLのアリコートを水相に添加し、更に2分間混合を続けた(合計混合時間4分間)。光学顕微鏡データによれば、本発明のエマルション中の区画の大きさは0.5μm〜10μmであり、平均直径は〜2μmである。したがって、2.7×10
9分子未満の三元複合体を含有する逆転写反応混合物50μLの乳化後、〜1×10
10個の油中水型区画が存在すると予測された(3〜4区画当たりmRNA/dsDNA複合体及び逆転写酵素が約1分子)。
【0190】
調製されたエマルションを+37℃で30分間インキュベートした。
【0191】
エマルションから反応混合物を回収するために、0.1MのEDTA(20μL)をエマルションに添加し、10秒間撹拌し、次いで50μLのフェノール/クロロホルム混合物を添加し、更に10秒間撹拌した。次いでエマルションを1.5mLの微量遠心管に移し、0.5mLの水−飽和エーテルを添加し、ボルテックスにより混合し、16,000g、室温にて10分間遠心分離した。油相を除去してたところ、試験管の底部に濃縮(しかし依然としてインタクトである)エマルションが残っていた。最後に、0.9mLの水−飽和エーテルで1回、0.9mLの水−飽和酢酸エチルで1回(ABIL EM90洗剤を除去するため)、及び0.9mLの水−飽和エーテルで2回抽出することにより、エマルションを破壊した。真空下室温で12分間水相を乾燥させ、次いでilliustra ProbeQuant G−50 MicroColumns(GE Healthcare)を用いて取り込まれたヌクレオチドを除去した。得られた混合物の2μLのアリコートを(ストレプトアビジンビーズ精製せずに)直接RT反応させるために残し、ビオチン化mRNA/dsDNA複合体をDynabeads M−280ストレプトアビジンビーズ(DYNAL Biotech)上に固定化するために溶液の残りの部分を用いた。
【0192】
添付の製品説明書に従ってビオチン化mRNA−dsDNA複合体を単離するためにDynabeads(登録商標)kilobase BINDER
TM Kit(DYNAL Biotech)を用いた。5μLの再懸濁させたDynabeadsを1.5mLの微量遠心管に移し、キットに含まれている結合溶液20μLで洗浄した。該微量遠心管にビーズが定着するまで該微量遠心管を1分間〜2分間磁石上に定置し、溶液を除去した。50μLの結合溶液をピペッティングすることによりDynabeadsを穏やかに再懸濁させ、1μLの水性tRNA(酵母のtRNA(Roche))溶液(1μg/μL)を添加して非特異的なmRNAの結合を最低限に抑えた。結合溶液中のDynabeads50μLを、ビオチン化RNA−DNA断片を含有する溶液(〜50μL)に添加した。サーモミキサー(Eppendorf)内で+22℃にて1時間振盪させながら(1,400rpm)該管をインキュベートした。mRNA/dsDNA結合後、上清をビーズから除去し、+22℃で5分間振盪させながら(1,400rpm)50μLの洗浄溶液(キットに含まれている)で2回、+22℃で12分間振盪させながら(1,400rpm)50μLの洗浄溶液で1回ビーズを洗浄した。ビオチン化mRNA/dsDNA複合体が固定化されている回収されたDynabeadsを逆転写反応混合物に再懸濁させた。
【0193】
選択されたmRNA/dsDNA複合体用の逆転写反応混合物を氷上で調製した:5×逆転写酵素用反応バッファ(Fermentas)(12μL);10mMのdNTP(Fermentas)(6μL);40u/μLのRiboLock RNase阻害剤(Fermentas)(1.5μL);20μMのpD_42オリゴヌクレオチド(配列番号8)(0.3μL);RevertAid
TM Minus M−MuLV 逆転写酵素(200u/μL)(Fermentas)(1.5μL);ヌクレアーゼ不含水(35.7μL)。調製された混合物を19μLずつ3つのアリコートに分注した:1つはビオチン化mRNA/dsDNAの固定化されているDynabeadsを再懸濁させるために用い、残りのアリコートのうち1つはストレプトアビジンビーズ精製せずに残しておいた伸長したmRNA/dsDNA複合体のサンプル含む試験管に移し、残り1つのアリコートには1μLのヌクレアーゼ不含水を添加した(反応混合物にDNAが夾雑していないことを証明するための陰性反応対照)。全ての反応混合物を、1時間、+42℃でサーモミキサー(Eppendorf)内にて振盪させながら(1,000rpm)インキュベートした。
【0194】
ネステッドPCRによりcDNAの増幅を行った。初期PCR混合物を氷上で調製した:KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(10μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(10μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(6μL);1u/μLのLC(組み換え)Taq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(2μL);2.5u/μLのPfu DNAポリメラーゼ(Fermentas)(1μL);100μMのRD_Ndeプライマー(配列番号9)(0.5μL);100μMのpD_55プライマー(配列番号10)(0.5μL);水(65μL)。混合物を19μLずつ5サンプル(5×19μL)に分注した。19μLのPCRマスター混合物3本に、1μLのcDNA(1〜3のRTサンプル)を添加し;19μLのPCRマスター混合物を含む試験管1本に、1μLの水を添加した(陰性PCR対照)。陽性PCR対照として、残りの1本に1μLのpET_his_MLV_pD プラスミド(〜1ng)を添加した。サイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、30サイクル(94℃で45秒間、58℃で45秒間、及び72℃で3分間)及び最後の伸長工程72℃で5分間。
【0195】
遺伝子の一部を増幅するためのネステッドPCR混合物(RTサンプル中のMLV_D583N_pD:del_pD cDNA比の解像度を上げるため)を氷上で調製した:KClを含む10×Taqバッファ(Fermentas)(20μL);2mMの各dNTP(Fermentas)(20μL);25mMのMgCl
2(Fermentas)(12μL);5u/μLのTaq DNAポリメラーゼ(Fermentas)(0.9μL);100μMのM_Fプライマー(配列番号11)(1.0μL);100μMのM_2Rプライマー(配列番号12)(1.0μL);水(135.1μL)。混合物を5×38μLに分注した。2μLの第1のPCR(プライマーセット RD_Nde//pD_55)産物を添加して、ネステッドPCR混合物を調製した。マスター混合物を再度混合し、30PCRサイクル増幅用又は35PCRサイクル増幅用に2本の試験管に分注した(2×20μL)。サイクルプロトコルは以下の通りである:最初の変性工程94℃で3分間、30サイクル又は35サイクル(94℃で45秒間、57℃で45秒間、及び72℃で1分間)及び最後の伸長工程72℃で3分間。PCR断片の予想される長さは、MLV_D583N_pDが907bp及びdel_pDが736bpであった。1ウェル当たり10μLのPCR混合物をロードした1%アガロースゲル上で増幅を解析した(
図15)。
【0196】
結果
1.二本鎖(dsDNA)アダプタは、T4DNAリガーゼを用いてmRNAに成功裏にライゲーションされた。dsDNA−ビオチンアダプタのライゲーションにより決定されたように、ライゲーション効率は約60%である。ビオチン標識基質と非標識基質とを識別できる限り、mRNA/dsDNA複合体はストレプトアビジンビーズで特異的に精製され得る。遊離mRNAは、mRNA/dsDNAと比べてDNA依存性DNAポリメラーゼの基質としては遥かに劣る。結果として、60%というdsDNAとmRNAとのライゲーション効率は十分優れており、かかる基質を進化スキームにおいて成功裏に用いることができる。
【0197】
2.mRNA/dsDNA複合体(mRNA混合物 MLV_D583N_pD:del_pD=1:20)を用いる一般的な選択実験を実施した。WakoPUREタンパク質翻訳系を用いてインビトロ翻訳を実施し、dsDNAへの区画化ビオチン−dUTP取り込み反応を実施して、活性(MLV_D583N_pD)逆転写酵素をコードする遺伝子が不活化酵素(del_pD)をコードする遺伝子よりが富化されることを示した。選択スキーム(
図12)によれば、ビオチン−dUTPの取り込み反応は、活性(MLV_D583N_pD)逆転写酵素を含む水性区画においてのみ行われ、mRNA/dsDNA複合体のビオチン化が生じるはずである。DNA依存性DNAポリメラーゼは、磁気ビーズ上に固定化されているストレプトアビジンに対するビオチン化複合体の結合により選択され、次いで選択された遺伝子はRT−PCRにより増幅される。活性酵素(本発明ではMLV_D583N_pD逆転写酵素のRT−PCR断片)をコードする遺伝子は、不活性酵素をコードする遺伝子よりが富化された(
図15)。遺伝子MLV_D583N_pD:del_pDの初期比は1:20であり、最終比(富化後)は〜1:1であった。この特定の実験における富化係数は〜20倍であった。異なる実験から算出された富化係数は、5〜200で変動した。またDNA依存性DNAポリメラーゼは、修飾ヌクレオチド取り込みを適用する区画化リボソームディスプレイ(CRD)法で選択できることが確認された。従来のDNA依存性DNAポリメラーゼの選択は、直ちに実施することができる。ビオチン−dUTPを、3’修飾を有するヌクレオチド類似体を含む異なる対象ヌクレオチド類似体に交換してもよい。かかるヌクレオチド類似体がDNA鎖に取り込まれた後3’末端がブロックされ、伸長することができず、伸長反応は終結する。このアプローチは合成による配列決定(sequencing by synthesis)(SBS)スキームで用いられ、SBSに好適なDNAポリメラーゼは区画化リボソームディスプレイ(CRD)技術を用いて容易に進化させることができる。
【0198】
【表1】
【表2A】
【表2B】
【表2C】
【表2D】
【表2E】
【表2F】
【表2G】
【表2H】
【表2I】
【表2J】
【表2K】
【表2L】
【表2M】
【表2N】
【表3A】
【表3B】
【表3C】
【表3D】
【表4A】
【表4B】
【表4C】
【表4D】
【表4E】
【表4F】
【表4G】
【表4H】
【表4I】
【表4J】
【表4K】
【表4L】
【表4M】
【表4N】
【表5A】
【表5B】
【表5C】
【表6】
【表7A】
【表7B】
【表7C】
【表7D】
【表7E】
【表7F】
【表7G】
【表7H】
【表7I】
【表7J】
【表7K】
【表7L】
【表7M】
【0199】
参考文献
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