(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るインダクタについて、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るインダクタの一例を示すXY平面断面図である。
図2は、
図1のA−A線断面図(YZ平面断面図)である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るインダクタは、複数の磁性体コア1と、ケース2と、巻線3と、筐体4と、緩衝材5と、補強部6と、を備える。
【0010】
磁性体コア1は、フェライトや電磁鋼板などの磁性体により形成される。以下では、巻線3に電流を流した際に磁性体コア1の内部に生じる磁束が最大となる方向を長さ方向(
図1の矢印Xの方向)、長さ方向と垂直な方向を幅方向及び高さ方向という。幅方向は、
図1及び
図2の矢印Yの方向であり、高さ方向は、
図2の矢印Zの方向であるものとする。また、磁性体コア1の長さ方向の寸法はl、幅方向の寸法はw、高さ方向の寸法はhであるものとする。
【0011】
磁性体コア1は、巻線3の近傍部分が、他の部分より、長さ方向からみた断面積(YZ平面の断面積)が大きくなるように形成されている。巻線3の近傍部分とは、磁性体コア1のうち、巻線3に囲まれた部分のことである。巻線3の近傍部分は、磁性体コア1において、磁束密度が最大となる部分である。この部分の断面積を大きくすると、磁性体コア1の磁束密度を低下させることができる。
【0012】
一般に、磁性体コア1を有するインダクタではコアロスが発生する。コアロスとは、磁性体コア1において生じるエネルギー損失のことである。コアロスには、ヒステリシス損失や渦電流損失が含まれる。このコアロスは、磁性体コア1における磁束密度が大きくなるほど大きくなる。したがって、磁性体コア1の一部を太くし、磁性体コア1の磁束密度を低下させることにより、コアロスを低下させることができる。
【0013】
また、インダクタのコアロスは、巻線3の近傍部分の磁性体コア1の断面積の合計を、他の部分の磁性体コア1の断面積の合計より大きくすることにより、低下させることができる。したがって、
図3に示すように、インダクタは、長さ方向からみた断面積が一定の複数の磁性体コア1を備えてもよい。
図3のインダクタの中央の磁性体コア1′は、巻線3の近傍部分にしか配置されていないため、巻線3の近傍部分の断面積の合計は、他の部分の断面積の合計より大きくなっている。この場合も、インダクタのコアロスを低減することができる。
【0014】
なお、インダクタは、4つ以上の磁性体コア4を備えてもよい。また、
図1では、巻線3の近傍部分の幅方向の寸法を大きくすることにより磁性体コア1の断面積を大きくしているが、高さ方向の寸法を大きくすることにより磁性体コア1の断面積を大きくしてもよい。
【0015】
ケース2は、内側に1つ又は複数の磁性体コア1を収納する。筐体4は、ケース2の外側に形成されるため、筐体4と磁性体コア1とは接触せず、筐体4の硬化収縮による応力や熱応力が磁性体コア1に直接的に加わらない。したがって、ケース2を設けることにより、磁性体コア1に加わる応力を抑制することができる。
【0016】
ケース2は、絶縁性の材料により形成される。ケース2の材料として、例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、及びガラスなどが用いられる。以下では、ケース2の長さ方向の内寸はL、幅方向の内寸はW、高さ方向の内寸はHであるものとする。ケース2の内寸とは、各方向におけるケース2の内壁間の寸法のことである。なお、上記のL,W,Hは、巻線3に電流が流れていないときのケース2の内寸である。ケース2の内寸と磁性体コア1の寸法との関係については後述する。
【0017】
図1において、インダクタは、2つのケース2を備え、各ケース2が磁性体コア1を1つずつ収納している。しかしながら、ケース2は、複数の磁性体コア1を収納してもよい。例えば、
図1のように、インダクタが磁性体コア1を2つ備える場合、インダクタは、ケース2を1つ備え、当該ケース2に2つの磁性体コア1が収納されてもよい。
【0018】
巻線3は、ケース2の周囲に巻付けられている。より詳細には、巻線3は、各ケース2に対してではなく、複数のケース2の全体に対して巻付けられる。巻線3として、例えば、銅線、アルミ線、及びリッツ線などが用いられる。この巻線3に電流が流れることにより、インダクタは磁界を発生させる。
【0019】
筐体4は、ケース2及び巻線3を覆うように、絶縁性の第1の樹脂により形成される。筐体4は、ケース2の内側に磁性体コア1を収納し、ケース2の周囲に巻線3を巻付けた後に形成される。筐体4の形成方法として、例えば、注型や射出成形が用いられる。また、3Dプリンタを用いた積層造形法が用いられてもよい。第1の樹脂は、これらの製造方法に応じて選択される。第1の樹脂として、例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、及びガラスなどが用いられる。
【0020】
上述のケース2は、第1の樹脂により形成されてもよい。これにより、筐体4とケース2との接着強度を向上させ、インダクタに振動や衝撃が加わった際の、筐体4とケース2との間の界面剥離を抑制することができる。
【0021】
また、ケース2は、第1の樹脂と異なる第2の樹脂により形成されてもよい。例えば、ケース2を強度が高い第2の樹脂により形成し、筐体4を熱伝導率が高い第1の樹脂で形成することが考えられる。これにより、インダクタの強度及び放熱性を向上させることができる。また、筐体4を粘度の低い第1の樹脂で形成することにより、インダクタの生産性を向上させることができる。
【0022】
なお、筐体4を形成する際に、第1の樹脂がケース2に浸入すると、磁性体コア1に熱応力が加わる恐れがある。このため、ケース2は、第1の樹脂がケース2に浸入しないように、筐体4の形成の前に密封されるのが好ましい。
【0023】
また、筐体4の一部に、共振用のキャパシタンスが内蔵されてもよい。キャパシタンスは、例えば、2つの磁性体コア1の断面積が小さい部分に生じたスペース41に内蔵される。筐体4は、キャパシタンスを内蔵するための収納部を備え、筐体4の形成後に、キャパシタンスを搭載されてもよい。また、筐体4は、キャパシタンスを所定の位置(例えば、スペース41)に配置された状態で、注型などにより形成されてもよい。この場合、筐体4の形成と同時に、キャパシタンスが内蔵される。
【0024】
緩衝材5は、ケース2と磁性体コア1との間に、磁性体コア1の少なくとも一部を覆うように設けられる。緩衝材5は、磁性体コア1をケース2の内側で固定するとともに、磁性体コア1に外部から加わる応力を抑制する。
【0025】
緩衝材5は、絶縁性又は半導電性の材料により形成される。ここでいう半導電性の材料とは、絶縁体よりも電気伝導率が高く、導体よりも電気伝導率が低い材料のことをいう。したがって、半導電性の材料は、ケース2や筐体4の材料よりも導電率が高い。具体的には、半導電性の材料は、電気伝導率が10
−6S/m以上10
6S/m以下の材料である。半導電性の材料は、例えば、絶縁体とカーボンなどの導電体との混合物である。
【0026】
緩衝材5の材料として、例えば、発泡系樹脂、ゴム系樹脂、ゲル系樹脂、不織布などが用いられる。また、アクリルゴムやシリコンゴムなどの合成ゴムが用いられてもよい。緩衝材5を半導電性の材料により形成した場合、電界の集中を緩和することができるため、磁性体コア1と巻線3との間の部分放電を抑制することができる。
【0027】
なお、緩衝材5は、筐体4の硬化収縮による応力を緩衝するため、第1の樹脂よりも弾性率が低い材料により形成されるのが好ましい。また、ケース2の熱収縮による応力を緩衝するため、ケース2の材料よりも弾性率が低い材料により形成されるのが好ましい。さらに、緩衝材5は、磁性体コア1からの放熱性を向上させるため、
図1及び
図2に示すように、磁性体コア1の全体を覆うように設けられるのが好ましい。
【0028】
補強部6は、磁性体コア1同士の間に形成され、インダクタの強度を補強し、主として高さ方向の荷重を支持する。ケース2の内寸が、磁性体コア1の外寸よりも大きいため、補強部6が無いと、インダクタに荷重がかかった時に、磁性体コア1で荷重を支えられない。そこで、磁性体コア1を分割し、分割した磁性体コア1の間の部分で荷重を支えるために、補強部6を備える。
図1において、補強部6は、2つの磁性体コア1の間に位置するケース2の側面と、2つのケース2の間の筐体4と、により形成されている。
【0029】
上述の通り、磁性体コア1は、緩衝材5によって少なくとも一部を覆われる。このような応力緩衝構造により、磁性体コア1に加わる応力は抑制されるものの、磁性体コア1が配置された部分の耐荷重性は低下する。そこで、本実施形態では、磁性体コア1を複数設け、磁性体コア1同士の間に補強部6を形成し、インダクタの耐荷重性を向上させる。
【0030】
このような構成により、本実施形態に係るインダクタは、高い耐荷重性を要求される用途に利用することができる。このような用途には、例えば、車両に踏まれることが想定される、電気自動車向けの送電用のインダクタが含まれる。
【0031】
なお、インダクタの耐荷重性を高めるために、補強部6は、第1の樹脂より圧縮強度が高い樹脂により形成されてもよいし、ガラスクロスなどの繊維を用いた繊維強化プラスチック(FRP)により形成されてもよい。また、ケース2が複数の磁性体コア1を収納する場合には、ケース2内の各磁性体コア1の間に、補強部6が形成されてもよい。
【0032】
ここで、ケース2の内寸と磁性体コア1の寸法との関係について説明する。磁性体コア1及びケース2は、同一方向におけるケース2の内寸Pと磁性体コア1の寸法pとの差の最小値が、当該方向におけるケース2の内寸の変化量ΔPよりも大きくなるように設計される(min(P−p)>ΔP)。例えば、長さ方向に着目すると、磁性体コア1及びケース2は、ケース2の長さ方向の内寸Lと磁性体コア1の長さ方向の寸法lとの差の最小値が、長さ方向におけるケース2の内寸の変化量ΔLよりも大きくなるように設計される。
【0033】
ケース2の内寸の変化量ΔPとは、インダクタ製造時(筐体4の形成時)の熱収縮により収縮するケース2の寸法の最大値ことである。インダクタ製造時の熱収縮は、例えば、熱硬化性樹脂を熱硬化させるときの硬化温度(85度〜150度)や、熱可塑性樹脂を射出成型するときの温度(180度〜)から、常温に戻る際の熱収縮などがある。収縮するケース2の内寸の最小値をP
MINとすると、ΔP=P−P
MINとなる。
【0034】
変化量ΔPは、ケース2の線膨張係数α(%/℃)と、ケース2の内寸Pと、温度の変化量ΔT(℃)との積となる(ΔP=αPΔT)。温度の変化量ΔTは、インダクタ製造時に上昇するケース2の温度の変化量の最大値である。インダクタを動作させる最低温度(インダクタの動作温度)におけるケース2の温度をT、インダクタを製造する際に上昇するケース2の温度の最大値をT
MAXとすると、ΔT=T
MAX−Tとなる。ケース2の温度Tは、インダクタの設置環境に応じて任意に設定可能である。例えば、EVの動作温度が−10度から40度の場合は、Tは−10度となる。
【0035】
以上より、磁性体コア1及びケース2は、min(P−p)>αPΔTが各方向で成り立つように設計される。すなわち、長さ方向、幅方向、高さ方向の任意の箇所で、それぞれ以下の式が成り立つ。
磁束方向:L−l>αLΔT
幅方向 :W−w>αWΔT
高さ方向:H−h>αHΔT
例えば、α=0.01%/℃、L=100mm、ΔT=100℃の場合、l<99mmとなる。
【0036】
磁性体コア1及びケース2をこのように設計することによって、ケース2に熱収縮が生じた場合であっても、ケース2の熱収縮による応力が磁性体コア1に直接的に加わらないようにすることができる。
【0037】
なお、緩衝材5は、磁性体コア1とケース2との間に設けられるため、各方向における厚さの合計値Qは、ケース2の内寸Pと磁性体コア1の寸法pとの差となる(Q=P−p)。厚さの合計値Qとは、磁性体コア1の一方側に設けられた緩衝材5の厚さと、磁性体コア1の他方側に設けられた緩衝材5の厚さと、の合計値のことである。例えば、
図2に示すように、磁性体コア1の上側に設けられた緩衝材5の厚さがq
1、磁性体コア1の下側に設けられた緩衝材5の厚さがq
2の場合、高さ方向における緩衝材5の厚さの合計値Qは、Q=q
1+q
2となる。
【0038】
以上説明した通り、本実施形態によれば、筐体4によりインダクタの強度や放熱性を向上させることができる。また、ケース2や緩衝材5により、筐体4の硬化収縮によって磁性体コア1に加わる応力を抑制することができる。さらに、緩衝材5により、ケース2の熱収縮によって磁性体コア1に加わる応力を抑制することができる。したがって、インダクタのL値の低下やコアロスの増大を抑制することができる。また、補強部6により、インダクタの強度を補強し、耐荷重性を向上させることができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るインダクタについて、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係るインダクタの一例を示すXY平面断面図である。
図5は、
図4のA−A線断面図(YZ平面断面図)である。
図4及び
図5に示すように、本実施形態に係るインダクタは、ボビン7をさらに備える。
【0040】
ボビン7は、表面に巻線3を巻付けるための筒状部材であり、絶縁性の材料により形成される。インダクタは、巻線3を巻付けられたボビン7と、磁性体コア1を収納したケース2とをそれぞれ製造した後、ボビン7の空洞部分にケース2を差し込むことにより形成してもよい。また、ケース2とボビン7とが一体に形成されてもよい。
【0041】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るインダクタについて、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係るインダクタの一例を示すXY平面断面図である。
図7は、
図6のA−A線断面図(YZ平面断面図)である。
図6及び
図7に示すように、本実施形態に係るインダクタは、導体板8をさらに備える。
【0042】
導体板8は、筐体4の表面の少なくとも一部を覆うように設けられる。導体板8を設けることにより、導体板8が設けられた方向への電磁界をシールドすることができる。このインダクタを無線電力伝送用のインダクタとして用いる場合には、導体板8は、電力伝送方向に面した筐体4の表面には設けられず、他の表面に設けられる。例えば、電力伝送方向が
図7の上方向の場合、
図7に示すように、導体板8は、筐体4の側面及び底面を覆うように設けるのが好ましい。
【0043】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係るインダクタについて、
図8を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係るインダクタの一例を示すYZ平面断面図である。
図8に示すように、本実施形態に係るインダクタは、繊維層9を更に備える。
【0044】
繊維層9は、少なくとも1種類の繊維を含む繊維強化プラスチック構造(FRP構造)により形成される。繊維層9は、筐体4中又は筐体4上の任意の箇所に形成可能である。繊維層9を形成することにより、インダクタの強度や耐荷重性を向上させることができる。
図8に示すように、繊維層9は、ケース2の上方に繊維層9を形成すると、インダクタの高さ方向の耐荷重性が向上する。
【0045】
繊維層9は、例えば、所定の位置に繊維を配置した後、第1の樹脂を注型することにより形成される。これにより、第1の樹脂と繊維とからなるFRP、筐体4中に形成される。
【0046】
また、繊維層9は、筐体4を形成した後、筐体4上に繊維を配置し、第1の樹脂とは異なる第3の樹脂を注型することにより形成されてもよい。これにより、第3の樹脂と繊維とからなるFRPが、筐体4上に形成される。
【0047】
繊維層9を形成する繊維として、例えば、ガラス繊維、樹脂繊維、カーボン繊維及びアルミや銅などの導体線が用いられる。また、第3の樹脂として、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、及びガラスなどを用いることができる。
【0048】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係るインダクタについて、
図9及び
図10を参照して説明する。本実施形態に係るインダクタは、繊維層9を備える。
図9及び
図10は、本実施形態に係る繊維層9の一例を示す模式図である。
図9及び
図10に示すように、本実施形態に係る繊維層9は、導電性繊維91と、絶縁性繊維92と、を含む。
【0049】
導電性繊維91は、隣接する繊維同士が接触しないように配置される。導電性繊維91は、例えば、カーボン繊維、アルミや銅などの導体線である。導電性繊維91を用いて繊維層9を形成することにより、繊維層9の強度を向上させることができる。また、
図9に示すように、導電性繊維91を所定の方向に配列すると、導電性繊維91が偏光板のように作用し、インダクタに入射する特定の偏波が反射される。これにより、高調波の漏洩電磁界強度を低減することができる。
【0050】
絶縁性繊維92は、例えば、ガラス繊維や樹脂繊維である。上述の導電性繊維91同士が接触し、導電性繊維91によるループが形成されると、ループに渦電流が流れ、インダクタの損失が増加したり、ループ電流が磁束をシールドし、電気特性が劣化したりする。そこで、絶縁性繊維92は、隣接する導電性繊維91同士が接触しないように配置される。これにより、インダクタの電気特性の劣化を抑制することができる。
【0051】
本実施形態に係る繊維層9は、例えば、導電性繊維91を縦糸及び絶縁性繊維92を横糸とした織布と、樹脂と、により形成される。また、繊維層9は、それぞれ所定の方向に配列された導電性繊維91の層を、複数備えてもよい。これにより、高調波の漏洩電磁界強度をさらに低減することができる。
【0052】
図10は、所定の方向に配列された導体性繊維91の層を2つ有する繊維層9を示している。導体性繊維91の各層は、配列方向が直交するように積層されている。また、各層の導体性繊維91は、隣接した繊維同士が接触しないように、絶縁性繊維92により絶縁されている。繊維層9をこのような積層構造とする場合、導電性繊維91の各層を絶縁するために、導電性繊維91の各層の間に、絶縁体の層(図示省略)を設けるのが好ましい。絶縁体の層は、絶縁性繊維92、第1の樹脂、及び第3の樹脂などにより形成できる。
【0053】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係るインダクタについて、
図11及び
図12を参照して説明する。
図11及び
図12は、本実施形態に係るインダクタの一例を示すYZ平面断面図である。
図11及び
図12に示すように、本実施形態に係るインダクタは、保護層10をさらに備える。
【0054】
保護層10は、砂及び砂利の少なくとも一方を含み、筐体4中又は筐体4上に設けられる。保護層10を設けることにより、インダクタの強度や耐摩耗性を向上させることができる。
【0055】
保護層10は、例えば、所定の位置に砂や砂利を配置した後、第1の樹脂を注型することにより形成される。これにより、
図11に示すように、筐体4中に保護層10が形成される。また、保護層10は、筐体4を形成した後、筐体4上に砂や砂利を配置し、第1の樹脂とは異なる第4の樹脂を注型することにより形成されてもよい。これにより、筐体4上に保護層10が形成される。
【0056】
さらに、保護層10は、所定の位置に砂や砂利と、繊維と、を配置した後、第1の樹脂、第3の樹脂、第4の樹脂などを注型することにより形成されてもよい。これにより、
図12に示すように、繊維層9と保護層10とを一体に形成することができる。
【0057】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態に係るインダクタについて、
図13を参照して説明する。
図13は、本実施形態に係るインダクタの一例を示すYZ平面断面図である。
図13に示すように、本実施形態に係るインダクタは、凹凸パターン11をさらに備える。
【0058】
凹凸パターン11は、筐体4の表面の少なくとも一部を覆うように設けられる。凹凸パターン11を設けることにより、インダクタの表面の耐スリップ性を向上させることができる。
図13のインダクタは、筐体4の表面にのみ凹凸パターン11を備えるが、導体板8の表面に凹凸パターン11が設けられてもよい。また、筐体4上に繊維層9や保護層10などが形成される場合、繊維層9や保護層10の表面に凹凸パターンが形成されてもよい。
【0059】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態に係るインダクタについて、
図14を参照して説明する。
図14は、本実施形態に係るインダクタの一例を示すYZ平面断面図である。
図14に示すように、本実施形態に係るインダクタは、塗装部12をさらに備える。
【0060】
塗装部12は、筐体4の表面の少なくとも一部を覆うように設けられる。塗装部12は、筐体4の表面を塗装することにより形成されてもよいし、塗装されたシートなどを筐体4の表面に貼付することにより形成されてもよい。
【0061】
塗装部12を設けることにより、インダクタの表面の耐スリップ性を向上させたり、インダクタの耐候性や耐水性を向上させたりすることができる。
図14のインダクタは、筐体4の表面にのみ塗装部12を備えるが、導体板8の表面に塗装部12が設けられてもよい。また、筐体4上に繊維層9や保護層10などが形成される場合、繊維層9や保護層10の表面に塗装部12が設けられてもよい。
【0062】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態に係るインダクタについて、
図15を参照して説明する。
図15は、本実施形態に係るインダクタの一例を示すYZ平面断面図である。
図15に示すように、本実施形態に係るインダクタは、カバー13を更に備える。
【0063】
カバー13は、インダクタの電力伝送方向に面した筐体4の表面の、少なくとも一部を覆うように設けられる。カバー13を設けることにより、インダクタの強度や耐候性を向上させることができる。カバー13は、目的に応じて、強度、対候性、耐熱性、耐水性、及び耐摩耗性などが高い絶縁性の任意の材料により形成される。カバー13は、筐体4上に形成された繊維層9や保護層10であってもよいし、表面に凹凸パターン12や塗装部13を備えてもよい。
【0064】
(第10実施形態)
次に、第10実施形態に係るインダクタについて、
図16及び
図17を参照して説明する。
図16及び
図17は、本実施形態に係るインダクタの一例を示すYZ平面断面図である。
図16及び
図17に示すように、本実施形態に係るインダクタは、半導電部14を備える。
【0065】
半導電部14は、上述の半導電性の材料からなる塗料やシートにより形成される。半導電部14は、ケース2の内面の少なくとも一部、及び筐体4の表面の一部、の少なくとも一方に設けられる。
【0066】
図16に示すインダクタは、ケース2の内面全体、すなわち、ケース2と磁性体コア1との間に半導電部14を備える。このような構成により、電界の集中を緩和することができるため、磁性体コア1と巻線3との間の部分放電を抑制することができる。
【0067】
図17に示すインダクタは、筐体4の表面の一部、すなわち、筐体4と導体板8との間に半導電部14を備える。このような構成により、電界の集中を緩和することができるため、導体板8と巻線3との間の部分放電を抑制することができる。
【0068】
なお、半導電部14を、ケース2の内面に設ける場合、緩衝材5と半導電部14とそれぞれ設けてもよいし、緩衝材5を半導電性の材料によって形成してもよい。この場合、緩衝材5が半導電部14の役割を果たす。
【0069】
(第11実施形態)
次に、第11実施形態に係るインダクタについて、
図18及び
図19を参照して説明する。本実施形態に係るインダクタは、複数の磁性体片15を平面状に配置して、互いに結合することにより形成された磁性体コア1を備える。各磁性体片15は、概ね扁平な板状であり、磁性体コア1は全体として大きな板状になっている。
図18は、本実施形態に係る磁性体コア1の一例を示すXY平面断面図である。
図19は、本実施形態に係る磁性体コア1の一例を示すYZ平面断面図である。
【0070】
各磁性体片15は、フェライト、圧粉磁心、電磁鋼板などにより構成される。複数の磁性体片15から磁性体コア1を形成している理由は、以下の通りである。
【0071】
インダクタを無線電力伝送に用いる場合、伝送する電力や距離に応じて、インダクタのサイズが決まる。例えば、10cm程度離れた位置に電力を伝送する場合には、一辺が数10cmほどの大型インダクタが用いられる。磁性体コア1をフェライトや圧粉磁心などで形成する場合、成形工程や焼成工程の関係で、大型コアの製造が困難である。そこで、本実施形態のように、小型の磁性体片15を複数結合させて、大型インダクタとコアとして使用する。
【0072】
磁性体コア1を形成する複数の磁性体片15の間は、磁性体材料を充填した流動性材料を介して結合されている。充填する磁性体材料として、例えば、粉状又は粒状の材料を用いることができる。また、流動性材料として、例えば、エポキシ樹脂またはシリコンなどの樹脂材料で構成される接着剤を用いることができる。
図15において、各磁性体片15は、磁性体粉末としてフェライト粉末を充填した接着剤16により結合されている。
【0073】
磁性体片15間の接着は、例えば、各磁性体片15の側面に接着剤16を塗布し、各磁性体片15を互いに一定時間以上押し付けることで行う。これにより、磁性体片15間に、空気の隙間等による比透磁率の低い領域の発生を抑制した磁性体コア1を形成できる。したがって、磁性体コア1における局所的な磁束の集中が抑制され、コアロスを低減することができる。
【0074】
本実施形態において、接着力がない又は弱い樹脂系材料等の流動性材料に磁性体粉末を充填したものを用いて、磁性体片15同士を結合してもよい。また、フェライト粉末のみからなる材料を用いて、各磁性体片15を結合する構成も可能である。この場合は、磁性体片15同士の結合を維持するために、
図19に示すように、磁性体コア1の両面または片面に、シート17を接着剤で貼り付けることで、各磁性体片15を固定してもよい。
【0075】
シート17として、ポリイミドフィルム、シリコン系、アクリル系などによるシートを用いることができる。また、シート17として、上述のシートの代わりにガラスクロスを用いてもよい。シート17を接着する接着剤は、例えば、不飽和ポリエステルなどの樹脂材料であってもよい。
【0076】
(第12実施形態)
次に、第12実施形態に係る無線電力伝送装置について、
図20及び
図21を参照して説明する。本実施形態に係る無線電力伝送装置は、上述の各実施形態に係るインダクタを備える。ここでいう無線電力伝送装置には、無線電力伝送のための受電装置及び送電装置が含まれる。以下では、受電装置と送電装置とに分けて説明する。
【0077】
図20は、本実施形態に係る受電装置100の概略構成を示すブロック図である。受電装置100は、
図20に示すように、インダクタユニット101と、整流器102と、DC/DCコンバータ103と、蓄電池104と、を備える。
【0078】
インダクタユニット101は、上述の各実施形態に係るインダクタを1つ又は複数備える。受電装置100において、インダクタは、送電側のインダクタと共振して電力を受電する。受電された電力は、整流器102に入力される。なお、インダクタユニット101には、インダクタとともに共振回路ないしは力率を改善するための回路を構成するキャパシタを備えてもよい。
【0079】
整流器102は、インダクタユニット101から入力された交流電力を直流電力に整流する。整流器102は、例えば、ダイオードを使ったブリッジ回路により構成される。整流器102により整流された電力は、DC/DCコンバータ103に入力される。
【0080】
DC/DCコンバータ103は、蓄電池104へ適切な電圧がかかるように、電圧を調整する。DC/DCコンバータ103により調整された電圧は、蓄電池104に入力される。なお、受電装置100は、DC/DCコンバータ103を備えない構成も可能である。
【0081】
蓄電池104は、DC/DCコンバータ103又は整流器102から入力された電力を蓄積する。蓄電池104として、鉛蓄電池やリチウムイオン電池など、任意の蓄電池を用いることができる。なお、受電装置100は、蓄電池104を備えない構成も可能である。
【0082】
図21は、本実施形態に係る送電装置110の概略構成を示すブロック図である。送電装置110は、
図21に示すようにインダクタユニット101と、交流電源105と、を備える。
【0083】
交流電源105は、交流電力をインダクタユニット101に入力する。例えば、交流電源105は、商用電源から電力を入力され、入力された電力を整流し、インバータ回路を用いて交流電力に変換し、インダクタユニット101に入力する。また、交流電源105は、商用電力、直流電力、及び交流電力の電圧を調整する回路や、PFC回路と呼ばれる力率改善回路を備える構成も可能である。
【0084】
インダクタユニット101のインダクタは、交流電源105から入力された電力によって交流磁界を発生させ、受電側のインダクタに送電する。
【0085】
以上説明した受電装置100及び送電装置110は、上述の各実施形態に係るインダクタを介して電力を伝送するため、製造方法によるインダクタの損失増加が少ない。したがって、受電装置100及び送電装置110は、高い伝送効率で電力を伝送することができる。
【0086】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。