特許第6236581号(P6236581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JPS株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6236581-巻爪矯正器 図000002
  • 特許6236581-巻爪矯正器 図000003
  • 特許6236581-巻爪矯正器 図000004
  • 特許6236581-巻爪矯正器 図000005
  • 特許6236581-巻爪矯正器 図000006
  • 特許6236581-巻爪矯正器 図000007
  • 特許6236581-巻爪矯正器 図000008
  • 特許6236581-巻爪矯正器 図000009
  • 特許6236581-巻爪矯正器 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6236581
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】巻爪矯正器
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/11 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   A61F5/11
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-545973(P2017-545973)
(86)(22)【出願日】2017年6月16日
(86)【国際出願番号】JP2017022255
【審査請求日】2017年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2017-13250(P2017-13250)
(32)【優先日】2017年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592174235
【氏名又は名称】JPS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知之
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−165436(JP,A)
【文献】 特開2016−041234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪の自由縁に装着して巻爪を矯正する巻爪矯正器であって、矯正体と、支持筒と、挟持部とを具備し、前記矯正体は、撓らせる方向の力に対して反発力が生じる弾性を有する素材を用いて、長手方向の長さを前記自由縁の爪幅以上として形成され、前記支持筒は、前記矯正体の長手方向と平行な軸を有し、前記矯正体が、該矯正体の長手方向を前記支持筒の軸と平行としてスライド自在に挿入され、前記挟持部は、幅方向を前記支持筒の軸と平行として、一端を該支持筒に固定して突設された固定板と、幅方向を前記支持筒の軸と平行とし、前記固定板に対して該固定板の厚み方向で離間させて対面するように配置された支持板と、前記固定板と前記支持板の前記支持筒側の端部の間に確保された挿入口と、前記固定板と前記支持板とを該固定板の突出側端部で連結すると共に、前記挿入口の拡開に伴う前記支持板が前記固定板から離間する方向の力に対して反発力が生じる弾性を有する連結部とを備えていることを特徴とする巻爪矯正器。
【請求項2】
前記支持板又は前記固定板に一体、且つ前記支持板と前記固定板との間に位置するように形成された接触突起を有していることを特徴とする請求項1に記載の巻爪矯正器。
【請求項3】
前記支持板又は前記固定板に一体、且つ前記支持板と前記固定板との間に位置するように形成された接触突起を有し、前記接触突起は、幅方向の両縁部から突出側の端部へ向かって先細り形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の巻爪矯正器。
【請求項4】
前記支持板又は前記固定板に一体、且つ前記支持板と前記固定板との間に位置するように形成された接触突起を有し、前記接触突起は、前記固定板又は前記支持板の前記挿入口側から前記連結部側に向かって、前記固定板と前記支持板との間を狭める方向に傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする請求項1に記載の巻爪矯正器。
【請求項5】
前記支持板又は前記固定板に一体、且つ前記支持板と前記固定板との間に位置するように形成された接触突起を有し、前記接触突起は、幅方向の両縁部から突出側の端部へ向かって先細り形状に形成されていると共に、前記固定板又は前記支持板の前記挿入口側から前記連結部側に向かって、前記固定板と前記支持板との間を狭める方向に傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする請求項1に記載の巻爪矯正器。
【請求項6】
前記矯正体は、樹脂膜で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の巻爪矯正器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、趾の巻爪を矯正する巻爪矯正器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の趾の巻爪矯正の方法として、ワイヤ法と呼ばれるものがあり、巻爪矯正において最も多く用いられている方法として知られている。
【0003】
ワイヤ法は、2mm〜3mm程度に伸ばした爪の自由縁(趾肉から離れた爪の先端側の縁)の左右両端側に孔を開け、この孔に対して、軸の湾曲状態から軸が直線状となる状態に戻る弾性を有するワイヤを曲げながら、このワイヤの両端部を夫々孔に挿入する。
【0004】
この巻爪矯正法では、ワイヤが曲げられて挿入された状態で、このワイヤにワイヤ軸を直線状に戻す力が作用しており、この直線状に戻す力を利用して、爪の両端側を左右に拡開することで巻爪を矯正するようになっている。
【0005】
しかしながら、巻爪は、もろくなっている場合が多く、孔に挿入されたワイヤが直線状に戻ることによる、爪の左右両端側を左右に拡開する力が孔に作用したときに、孔周りの爪が割れてしまうという問題、孔を開けるときに爪が割れてしまうという問題があった。
【0006】
これらの問題点を回避するために、下記、特許文献1に記載されているように、爪に孔を開けずに巻爪を矯正する巻爪矯正器が提案されている(〔図2〕、〔図3〕、〔図4〕参照)。
【0007】
図2〕、〔図3〕に示す巻爪矯正器は、矯正板の一側端に、矯正板と上下方向で対面するカギツメが突設されたものであり、〔図2〕は、矯正板を自由縁の裏側とし、カギツメを自由縁の表側として、自由縁に対して挟持状に嵌合することで装着し、〔図3〕は、矯正板を表側とし、カギツメを裏側として、自由縁に対して挟持状に嵌合することで装着するようにされている。
【0008】
また、〔図4〕に示す巻爪矯正器は、矯正板が中央部で折り曲げられていると共に、矯正板の両端に、自由縁の端縁に嵌合するフックを備えており、フックを自由縁の端縁に嵌合することで装着するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−244852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図2〕、〔図3〕に示す従来技術の巻爪矯正器によると、矯正板とカギツメとで自由縁を挟持することで、爪に孔を開けることなく装着でき、装着時において矯正板の弾性によって自由縁を持ち上げながら巻爪を矯正することができる。
【0011】
また、〔図4〕に示す従来技術の巻爪矯正器によると、フックを自由縁の両端縁に嵌合し、自由縁を挟持することによって、爪に孔を開けることなく装着でき、装着時において矯正板が自由縁を拡げた状態を保持することで巻爪を矯正することができる。
【0012】
また、特許文献1の巻爪矯正器は、〔図2〕、〔図3〕、〔図4〕に示されているように、カギツメ部分、フック部分を二重に折り返すことで、カギツメ、フックをばね状に形成し、自由縁に装着した状態において、挟持方向にばね力を作用させることで、装着状態を保持するようにされている。
【0013】
しかしながら、前述した従来技術の巻爪矯正器は、〔0028〕、〔図2〕、〔図3〕、〔図4〕に記載されているように、所定の形状、且つ爪の幅方向(左右方向)長さに対応する長さを有して形成された成型品であるため、個人毎で異なる爪幅に対応することが難しいという問題がある。
【0014】
巻爪矯正器を個々に異なる爪幅に対応させるには、爪幅方向に沿う長さがmm単位で異なる複数のサイズの巻爪矯正器を用意する方法が挙げられる。しかしながら、既製品としてあらゆる爪幅に対応させることは、製造コストが高くなるという点で無理であるため、ある程度の限られた大きさのサイズに絞られるが、前述のように爪幅は個人毎で異なるため、装着時にサイズが合わないことが生じるという問題がある。
【0015】
この従来技術の巻爪矯正器は、自由縁をカギツメ、フックのばね力によって挟持することで、装着状態を保持しているが、使用者の歩行中や靴下の着脱等によって、自由縁に対する巻爪矯正器のずれや脱落が生じるという問題がある。
【0016】
図4〕に示す従来技術の巻爪矯正器は、装着状態において爪の表面から突出する折れ曲がり部分が引っ掛かるため、使用者の歩行中や靴下の着脱等によって外れ易い上に、この曲がり部分の角が靴下や靴の内側に引っ掛かって、靴下や靴が破損してしまうこともある。
【0017】
図4〕に示す従来技術の巻爪矯正器に対して、〔図2〕、〔図3〕に示す従来技術の巻爪矯正器は、自由縁の装着時当初では、矯正板及びカギツメが自由縁の裏面と表面とに沿っているので、〔図4〕に示す従来技術の巻爪矯正器に比べると外れ難いものであると共に、靴下や靴の内側を破損させてしまうことはないと思われるが、自由縁に対してばね力で挟持しているため、結局滑って外れてしまう。
【0018】
図2〕、〔図3〕に示す従来技術の巻爪矯正器のずれや脱落を防止するには、接着剤等を使用して巻爪矯正器を自由縁に固定することが考えられるが、巻爪矯正器を自由縁に固定すると、巻爪の矯正ができないという問題が生じる。
【0019】
以下、図9(a)、(b)に基づいて、巻爪の矯正状態を説明すると共に、巻爪矯正器100を自由縁200に固定した際の問題点を説明する。図9(a)は、巻爪の矯正当初の状態を示し、図9(b)は、巻爪の矯正後半の状態を示している。
【0020】
巻爪の矯正を行う際には、巻爪矯正器100を装着したままとし、巻爪となった自由縁200の曲がりが矯正板101の反発力によって徐々に平らとなって矯正される。
【0021】
このような矯正状態においては、巻爪矯正器100の矯正当初では、矯正板101が自由縁200の曲がりに沿うように撓っていると共に、自由縁200の表面201のカギツメ102の位置が矯正板101の撓りに対応した位置にある。
【0022】
この矯正当初の状態から矯正終了まで、矯正板101が自身の反発力によって徐々に平らとなる動作では、自由縁200を挟持する矯正板101とカギツメ102が、自由縁200に対して爪幅方向に沿って滑りながら平らの状態へと移行し、この平らの状態への移行時に、自由縁200の巻爪による曲がりを押し拡げるようになっている。
【0023】
すなわち、巻爪矯正器100は、自由縁200に対して矯正板101とカギツメ102が滑ることによって、矯正板101が装着状態において平らとなる動作を行い、この動作によって、巻爪の矯正を行うことができる。
【0024】
一方、巻爪矯正器100の外れを防止するために、矯正板101やカギツメ102を自由縁200に固定した場合には、自由縁200に対して矯正板101とカギツメ102の滑りが阻止されるため、矯正板101が撓った状態から平らとなることができなくなる。
【0025】
したがって、巻爪矯正器100は、外れを防止するために、矯正板101やカギツメ102を自由縁200に固定すると、巻爪の矯正ができなくなるという構造上の問題がある。
【0026】
しかも、自由縁200への挟持力についても、ある程度緩めにしておかないと、矯正板101やカギツメ102の滑りが阻害されてしまい、巻爪の矯正が正常にできなくなるため、挟持力を強くすることができないという問題もある。
【0027】
このため、装着時における爪の割れの防止、個人毎で異なる爪幅への幅広い対応、製造コストの削減、自由縁に対する装着状態の保持、装着状態を保持した上で正常な巻爪の矯正等、前述の各問題点を解消した巻爪矯正器が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前述の課題を解決するため、本発明では、以下の手段を採用した。
【0029】
爪の自由縁に装着して巻爪を矯正する巻爪矯正器であって、矯正体と、支持筒と、挟持部とを具備し、前記矯正体は、撓らせる方向の力に対して反発力が生じる弾性を有する素材を用いて、長手方向の長さを前記自由縁の爪幅以上として形成され、前記支持筒は、前記矯正体の長手方向と平行な軸を有し、前記矯正体が、該矯正体の長手方向を前記支持筒の軸と平行としてスライド自在に挿入され、前記挟持部は、幅方向を前記支持筒の軸と平行として、一端を該支持筒に固定して突設された固定板と、幅方向を前記支持筒の軸と平行とし、前記固定板に対して該固定板の厚み方向で離間させて対面するように配置された支持板と、前記支持板又は前記固定板に一体、且つ前記支持板と前記固定板との間に位置するように形成された接触突起と、前記固定板と前記支持板の前記支持筒側の端部の間に確保された挿入口と、前記固定板と前記支持板とを突出方向側の端部で連結すると共に、前記挿入口の拡開に伴う前記支持板が前記固定板から離間する方向の力に対して反発力が生じる弾性を有する連結部とを備えていることを特徴とする巻爪矯正器にしたことである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る第1実施形態の巻爪矯正器の平面図である。
図2図1の背面図であり、自由縁のみを断面して示す。
図3図1の(3)-(3)線断面図である。
図4図3において掛止溝を設けずに自由縁に装着した状態を示す。
図5】本発明に係る第2実施形態の巻爪矯正器の平面図である。
図6】本発明に係る第3実施形態の巻爪矯正器の平面図である。
図7】曲げ加工前の状態を示す平面図である。
図8】本発明に係る第4実施形態の巻爪矯正器の平面図である。
図9】従来の巻爪矯正器の矯正動作を説明する図であり、(a)は、巻爪の矯正当初の状態を示し、(b)は、巻爪の矯正後半の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る第1実施形態の巻爪矯正器Aを図1図4に基づいて説明する。尚、以下で説明する各実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0032】
巻爪矯正器Aは、2本の矯正体1と、矯正体1を軸方向にスライド自在に支持する支持筒2と、支持筒2に一体に設けられ、爪Bの自由縁B1に装着するための挟持部3とを具備している。
【0033】
巻爪矯正器Aは、矯正体1を爪Bの自由縁B1の趾肉C側の面(以下、「裏面」という)B10に、軸を爪Bの幅に沿って配置した状態で、自由縁B1に対して自由縁B1の先端B11側から挟持部3を嵌合することで、爪Bに装着されると共に、装着状態において巻爪B’(図2参照)の矯正が開始されるようになっている。
【0034】
矯正体1は、金属材又は形状記憶合金材等の弾性を有する素材からなる線状体であり、この弾性によって矯正体1の軸の撓りに対して反発力が生じるようになっている。そしてこの反発力を利用して、矯正体1が爪Bの裏面B10から自由縁B1を持ち上げるように支持することで、巻爪の矯正状態を保持できるようになっている。
【0035】
矯正体1は、2本まとめて樹脂膜10で被覆されてなるものであり、巻爪B’の矯正中に矯正体1が自由縁B1に接触したときに、接触圧を樹脂膜10によって緩和することで、接触圧による自由縁B1の割れやひび等の発生を抑制できるようになっている。
【0036】
矯正体1は、軸方向の長さ(自由縁B1の幅方向に沿う長さ)が、自由縁B1の左右幅よりも長く設定されており、自由縁B1に装着した状態で自由縁B1の左右縁B12、B12からはみ出すが、はみ出した部分を切断することで、矯正体1の軸方向の長さを自由縁B1の幅方向の左右縁B12、B12からはみ出さない長さに調節するようにされている(図2参照)。
【0037】
尚、矯正体1の本数は、例示した2本に限らず、1本乃至3本以上でもよく、自由縁B1の裏面B10に配置できる本数であると共に、巻爪B’の矯正状態を保持できる反発力が生じる本数であればよい。
【0038】
また、矯正体1は、線状体に限らず、板状のものであってもよく、例えば、弾性を有する金属材又は形状記憶合金材を板状に形成したものが挙げられる。
【0039】
支持筒2と挟持部3とは、弾性を有する一枚の薄い金属板を切断・曲げ・折り等の各種加工を施して一体としたクリップDに形成されている。
【0040】
具体的には、クリップDは、支持筒2と挟持部3とを自由縁B1の長さ方向(自由縁B1の伸び方向)に沿って連続するように形成された2個のクリップ部D1を備え、このクリップ部D1が、自由縁B1の幅方向に並列するように一対として配されていると共に、並列するクリップ部D1、D1同志が連結板23を介して一体化されている。
【0041】
尚、本発明では、支持筒2と挟持部3とが一体に形成されたものに限らず、支持筒2と挟持部3とを別々に形成して、連結板23を介して両者を固着して一体化したものとしてもよい。また、支持筒2と挟持部3とを分割した形態に限らない。
【0042】
支持筒2は、矯正体1の軸と平行な軸を有して軸方向に矯正体1をスライド自在、且つ抜き挿し自在に挿入されていると共に、2本の矯正体1を径方向に沿って前後方向に並べることができるように、前後方向に長い断面長円状に形成されている(図3参照)。
【0043】
尚、支持筒2の断面形状は、矯正体1が板状のものである場合には、矯正体1の断面形状に対応する形状とし、矯正体1の本数が1本の場合では、断面円形として支持された矯正体1が前後にずれないようにする。
【0044】
また、矯正体1の形態として、例示したように2本の線状体を径方向に並べて樹脂膜10で被覆した形態、或いは板状に形成した形態であることが好適であり、支持筒2の断面形状を、これらの矯正体1の断面形状に適合する形状にすることによって、支持筒2内での矯正体1の回転を防止することができるので、装着作業が極めてスムーズに行える。
【0045】
挟持部3は、幅方向の長さを支持筒2の軸長と同じ長さとして、断面長円状に曲げ加工された支持筒2の周端から前方へ突出する方向に連設されたU字ばね形状に形成されている。
【0046】
挟持部3は、支持筒2と対面する端部を挿入口30とし、支持筒2の周端から連設された固定板31と、固定板31に対して固定板31の厚み方向で対面するように配された支持板32と、固定板31と支持板32とを突出側で連結する断面U字状の連結部33と、支持板32の挿入口30側の端部に固定板31に向かって突設され接触突起34とを備えている。
【0047】
挿入口30は、固定板31の厚み方向に沿う幅(高さ方向の幅)が自由縁B1の厚みよりも大きい幅に設定されている。
【0048】
連結部33は、固定板31の厚み方向への挿入口30の開動作による固定板31から支持板32が離間する方向(挿入口30を拡開する方向)への力に対して、挿入口30を閉動作させる方向の反発力が生じるばね力を有している。
【0049】
尚、連結部33は、断面U字状に形成されたものに限らず、挿入口30の開動作に対して挿入口30を閉動作させる方向の反発力が生じるばね力を有する形態であればよい。
【0050】
接触突起34は、支持板32の挿入口30側の端部から連結部33側へ向かうにしたがって、徐々に固定板31側に近づき、固定板31と支持板32との間を狭めるように傾斜する傾斜面34aとして形成されている。
【0051】
また、接触突起34は、幅方向の両縁部から突出側の端部に至り先細り状として、突出側の端部の先端34bを尖らせた先細り形状に形成されており、装着時において先端34bが自由縁B1の表面に設けられた掛止溝B1aに引っ掛かるようにされている(図1図2参照)。
【0052】
巻爪矯正器Aの自由縁B1への装着は、矯正体1を自由縁B1の裏面B10に配置した状態で、挟持部3を自由縁B1に嵌合することで装着される。
【0053】
挟持部3は、自由縁B1の裏面B10側に固定板31を位置させると共に、自由縁B1の表面B13側に支持板32を位置させ、且つ挿入口30を自由縁B1の先端B11に正対させた状態として、挿入口30を先端B11から自由縁B1に押し込むことで挟持部3を自由縁B1に嵌合することができる。
【0054】
挟持部3の嵌合動作では、傾斜面34aが自由縁B1に接触すると共に、傾斜面34aが自由縁B1の後方(趾肉C側)へ移動することによって、支持板32が連結部33の反発力に抗して自由縁B1の厚みに沿う高さ方向に移動し、且つ接触突起34を自由縁B1の表面B13に至らせるようになっている。
【0055】
挟持部3の嵌合では、矯正体1を撓ませながら自由縁B1の裏面B10に位置させると共に、自由縁B1の巻爪となっている幅方向の両端部を拡げて、矯正体1を自由縁B1の裏面B10に沿わせながら行う。
【0056】
挟持部3の嵌合終了時には、拡げた自由縁B1の左右端部B12、B12が再び巻爪B’にならないように、矯正体1の撓みに対する反発力を自由縁B1の裏面B10に作用させることができる。
【0057】
また、矯正体1の周面の軸方向に沿うある程度の範囲が、自由縁B1の裏面B10に対して接触した状態で自由縁B1を支えるので、矯正体1の反発力を自由縁B1の一点に集中させることなく、自由縁B1の裏面B10の幅方向全域に矯正体1の全域が接触した状態で自由縁B1の左右端部B12、B12を持ち上げるように支えることができる。
【0058】
挟持部3を嵌合させて矯正体1を自由縁B1の裏面B10に位置させた状態では、矯正体1の両端部が自由縁B1の左右端部B12、B12から外側へはみ出すが、このはみ出した矯正体1の部分(図1において仮想線で示す)を、自由縁B1の左右端部B12、B12と面一となる部分で切断することで、矯正体1を自由縁B1の左右端部B12、B12からはみ出させずに配置することができ、これにより、靴下や靴を通常通りに履くことができる。
【0059】
挟持部3の嵌合前には、自由縁B1の表面を削って接触突起34の先端34bが掛止される掛止溝B1aを作っておき、挟持部3を自由縁B1に嵌合した状態で、先端34bが掛止溝B1aに掛合するようにしている。
【0060】
掛止溝B1aの深さは、先端34bが引っ掛かって挟持部3が自由縁B1から抜け難くできる程度のわずかな深さでよく、この程度の深さであれば、挟持部3の取り外しも容易にできる上に、自由縁B1の割れやひび等を発生させずに簡単に削ることができる。
【0061】
以上の構成とする巻爪矯正器Aによると、矯正体1の周面の軸方向に沿うある程度の範囲が、自由縁B1の裏面B10に対して接触した状態で自由縁B1を支えるようにしているので、自由縁B1に孔を開けることなく矯正体1を配置できると共に、自由縁B1に対して矯正体1が点接触することによる自由縁B1の割れやひび等の発生を防ぐことができる。
【0062】
また、矯正体1を自由縁B1の幅に対応して切断することによって、1種類の巻爪矯正器Aで個人毎に異なる爪幅に対応することができる。
【0063】
また、矯正体1が支持筒2に対して軸方向にスライド自在に挿入されているため、挟持部3を自由縁B1に嵌合した状態で、矯正体1のみが撓ると共に、撓りから真っ直ぐな状態に戻るときの反発力が生じることにより、挟持部3が固定状態であっても、巻爪の矯正を行うことができる。
【0064】
挟持部3を自由縁B1に嵌合したときに、自由縁B1を挟持する固定板31と支持板32とに連結部33の反発力が作用すると共に、接触突起34が自由縁B1に形成された掛止溝B1aに掛止されるため、巻爪矯正器Aの装着状態の確実性を高めることができる。
【0065】
また、接触突起34の先端34bを尖らせていることから、掛止溝B1aの深さや幅がわずかであっても、接触突起34の先端34bが掛止溝B1aに引っ掛かるため、自由縁B1からの挟持部3のずれや脱落による巻爪矯正器Aの外れを防ぐことができ、その上、掛止溝B1aを形成しなくても、自由縁B1の表面B13に接触突起34の先端34bを食い込ませることで、自由縁B1からの挟持部3のずれや脱落による巻爪矯正器Aの外れを防ぐことができる。
【0066】
また、接触突起34が、前述のような構成により傾斜面34aとして形成されているため、挟持部3の自由縁B1に嵌合する方向へのスライドは、連結部33の反発力によって、自由縁B1に対して固定板31と接触突起34の先端34bとが接触する接触摩擦に抗して行うことができる。
【0067】
また、挟持部3の嵌合状態では、接触突起34の先端34bが掛止溝B1aに掛止されているので、挟持部3を自由縁B1から抜き取る方向のスライドが防止され、これによって、巻爪矯正器Aの装着状態を保持することができる。
【0068】
さらに、掛止溝B1aを形成せずに、挟持部3を嵌合させた場合でも、挟持部3を自由縁B1から抜き取る方向にスライドに対して、接触突起34の先端34bが自由縁B1に食い込むため、挟持部3の自由縁B1から抜き取る方向へのスライドが防止され、これによって、巻爪矯正器Aの装着状態を保持することができる。
【0069】
また、接触突起34は、先端34bに至る形状が先細り形状であり、幅方向(左右方向)の両縁が傾斜した傾斜縁部34cとなっている。そのため巻爪矯正器Aを自由縁B1から取り外す際には、挟持部3を自由縁B1の幅方向にスライドさせることで、接触突起34の傾斜縁部34cが、掛止溝B1aの端部B1bに接触しながらこの端部B1bに沿って摺動すると共に、この摺動に伴って、接触突起34の先端34bが自由縁B1の表面に至り、このまま、スライドさせることで取り外すことができる。
【0070】
すなわち、巻爪矯正器Aは、自由縁B1に対して先端B11から挟持部3を嵌合させることで装着でき、挟持部3を自由縁B1の幅方向に沿ってスライドさせれば取り外すことができるので、自由縁B1に対する巻爪矯正器Aの着脱が簡単にできると共に、自由縁B1に対して挟持部3を固定状態にすることなく装着状態を保持することができる。
【0071】
また、巻爪矯正器Aの取り外しの際に行う挟持部3のスライドでは、挟持部3を変形させたり切断したりすることなく行うことができるため、巻爪矯正器Aの再使用ができ、幅が広い爪Bに再使用する場合には、使用していた矯正体1を支持筒2から抜き取って、新たな矯正体1を支持筒2に挿入すればよく、狭い幅の爪Bに再使用する場合には、使用していた矯正体1をそのまま用いて、自由縁B1の左右縁B12、B12からはみ出した部分を切断すればよい。
【0072】
したがって、本実施形態の巻爪矯正器Aは、装着時における爪Bの割れの防止、個人毎で異なる爪Bの幅への幅広い対応、製造コストの削減、自由縁B1に対する装着状態の保持等の各問題点を解消し、その上で、自由縁B1に対する着脱容易性の向上が図れると共に、巻爪矯正器Aの再使用を可能とすることができる。
【0073】
次に、本発明に係る第2実施形態の巻爪矯正器A’を図5に基づいて説明する。尚、第1実施形態の巻爪矯正器Aと重複する内容についての説明は、図面に同符号を付すことにより省略する。
【0074】
巻爪矯正器A’は、2個のクリップDを備えたものであり、2個のクリップDを、クリップD同志に適当な間隔を開けて自由縁B1に嵌合することで装着するようにされている。
【0075】
この巻爪矯正器A’によると、2個のクリップDで自由縁B1を挟持しているため、より確実に、自由縁B1に対する装着状態を保持することができ、しかも、比較的、爪幅の広い自由縁B1に装着するのに好適である。
【0076】
巻爪矯正器Aと巻爪矯正器A’の使い分けは、爪幅の狭い自由縁B1には巻爪矯正器Aを用い、爪幅の広い自由縁B1には、前述のように巻爪矯正器A’を、自由縁B1への装着を迅速にするには、巻爪矯正器Aを、自由縁B1への装着をより確実にするには巻爪矯正器A’を、夫々用いる等、様々な使い分けができる。
【0077】
また、巻爪矯正器A’は、2個のクリップDを備えた形態として例示しているが、クリップDの個数は、3個以上としてもよく、爪幅に対応して増減できる。
【0078】
次に、本発明に係る第3実施形態の巻爪矯正器A’’を図6図7に基づいて説明する。尚、第1実施形態の巻爪矯正器A及び第2実施形態の巻爪矯正器A’と重複する内容についての説明は、図面に同符号を付すことにより省略する。
【0079】
前述のように、巻爪矯正器A及び巻爪矯正器A’は、一対のクリップ部D1を備えたクリップDとしたものであるが、巻爪矯正器A’’は、1個のクリップ部D1からなるクリップD’としたものである。
【0080】
クリップD'は、図6図7に示すように、挟持部3における支持板32の全域が、連結部32側の端部から接触突起34側の端部まで平面視先細り形状として形成され、接触突起34が支持板32の先細り形状に連続して形成されており、クリップDにおける接触突起34よりも鋭角な接触突起34にされている。
【0081】
このような、巻爪矯正器A’’は、クリップ部D1が1個であるため、自由縁B1への装着を迅速に行うことができると共に、装着状態において、自由縁B1からの巻爪矯正器A’’の突出部分を少なくすることができる。
【0082】
また、支持板32が平面視先細り形状であるため、支持板32が固定板31から離れる方向(挿入口30を拡開する方向)へ撓み変形し易い状態になり、特に、接触突起34側が撓み変形し易くなっている。
【0083】
すなわち、巻爪矯正器A’’の自由縁B1への装着時において、支持板32が撓み変形することで挿入口30が拡開されるため、拡開に要する力が小さくなり、拡開から戻る反発力も小さくなって、挿入中の自由縁B1への接触突起34の接触圧も低くなるため、挿入口30への自由縁B1の挿入をスムーズに行うことができる。
【0084】
また、接触突起34の先端が鋭角であるため、掛止溝B1aの幅を狭くすることができると共に、掛止溝B1aの深さを浅くしても、掛止溝B1aに対する接触突起34の掛止状態の確実性を保持することができ、しかも、自由縁B1の健康状態が悪くても、掛止溝B1aを形成する際の自由縁B1の破損を抑制することができる。
【0085】
次に、本発明に係る第4実施形態の巻爪矯正器A’’’を図8に基づいて説明する。尚、本形態の巻爪矯正器A’’’は、第3実施形態におけるクリップD’を3個備えたものである。第3実施形態と重複する部位についての説明は、図面に同符号を付すことにより省略する。
【0086】
第4実施形態の巻爪矯正器A’’’は、第3実施形態の巻爪矯正器A’’と同じ効果を奏し、その上で、クリップD’を3個備えていることによって、自由縁B1への装着状態の保持をより確実に行うことができる。
【0087】
尚、クリップD’の個数は、自由縁B1の幅に応じて増減することができる。また、自由縁B1への装着状態の保持という点から、少なくとも、2個のクリップD’を備えたものとすることが好ましい。
【0088】
本発明においては、接触突起34がない巻爪矯正器Aとしてもよく、この場合、自由縁B1への装着状態をより確実に保持するために、連結部33の反発力を強くして、挟持部3の挟持力を増すようにしてもよいし、挟持部3を自由縁B1に接着剤や接着テープで固定してもよい。
【0089】
本発明は、例示した実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0090】
A:巻爪矯正器
A’: 巻爪矯正器
A’’: 巻爪矯正器
A’’’: 巻爪矯正器
B:爪
B1:自由縁
1:矯正体
2:支持筒
3:挟持部
B2:端縁
B3:端縁
30:挿入口
31:固定板
32:支持板
33:連結部
34:接触突起
34a:傾斜面
34b:先端
B1a:掛止溝
【要約】
装着時における爪の割れの防止、個人毎で異なる爪幅への幅広い対応、製造コストの削減、自由縁に対する装着状態の保持等の実現。矯正体と、支持筒と、挟持部とを具備し、爪の自由縁に装着して巻爪を矯正する巻爪矯正器である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9