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特許6236582適合するしきい値を有する太陽電池の電子的管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236582
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】適合するしきい値を有する太陽電池の電子的管理システム
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/67 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   G05F1/67 A
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-219970(P2015-219970)
(22)【出願日】2015年11月9日
(62)【分割の表示】特願2012-542678(P2012-542678)の分割
【原出願日】2010年12月10日
(65)【公開番号】特開2016-33828(P2016-33828A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2015年11月9日
(31)【優先権主張番号】0958899
(32)【優先日】2009年12月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503438322
【氏名又は名称】トタル マルケタン セルヴィス
(73)【特許権者】
【識別番号】508242056
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ ルシェルシュ サイエンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】コリンヌ アロンソ
(72)【発明者】
【氏名】アロナ ベラサーテヒ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック カバル
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ エスティバルス
(72)【発明者】
【氏名】ステファン プティボン
(72)【発明者】
【氏名】マルク ヴェルメールス
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−069321(JP,A)
【文献】 特開昭63−167916(JP,A)
【文献】 特開平09−201061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池発電装置の電子的管理システムであって、
前記発電装置の少なくとも1個の太陽電池(10)それぞれに電気的に選択的に接続され、
互いに並列接続された複数のn個の静電変換器(11、12、13)を備え、
前記太陽電池に接続される前記複数の変換器の数は、前記太陽電池により発生する可変電力と、電力しきい値P、P、・・・Pn−1を比較することにより決定され、
前記電力しきい値は、所定の相違する複数の変換器の複数の効率曲線における少なくとも2つの効率曲線の交点の電力値で定義され、
電力しきい値Pは、1個及び2個の変換器の効率曲線間の交点、電力しきい値Pn−1は、n−1個及びn個の変換器の効率曲線間の交点であり、
前記太陽電池に結合された前記複数の変換器の数を決定するために使用される電力しきい値P、P、・・・Pn−1のうちの特定の1つは、太陽電池発電装置の出力で発生する電力量に基づいて選択され、
前記電力しきい値は、前記静電変換器の温度に依存している太陽電池発電装置の電子的管理システム。
【請求項2】
前記しきい値は、前記少なくとも1個の太陽電池の最適電圧値Voptに依存する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記しきい値は、前記複数の変換器に供給される入力電圧に依存し、好ましくは前記入力電圧は、前記少なくとも1個の太陽電池の最適電圧値Voptである請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記しきい値は、1年の内の時期及び/又は日射量に応じて決定される請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記しきい値は、前記複数の変換器のデューテーサイクルにより決定される請求項1から4までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
決定された前記しきい値は、管理システムのメモリに記憶され、該しきい値は、太陽電池発電装置のパラメータの測定に応じて修正される請求項1から5までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
電力の関数として、前記効率曲線を決定するデバイスを備える請求項1から6までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数の変換器が順に接続されている請求項1から7までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数の変換器の交換を、使用している変換器の数を変化させる際に行うようにした請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数の変換器の交換を、該複数の変換器の素子の状態に応じて行うようにした請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1個の太陽電池、及び
請求項1から10までのいずれか1項に記載の管理システム
を含む太陽電池発電装置。
【請求項12】
−少なくとも1個の太陽電池、
−それぞれが、前記少なくとも1個の太陽電池(10)に電気的に接続された、並列接続された複数のn個の静電変換器(11、12、13)を含む太陽電池発電装置の制御方法であって、
−前記少なくとも1個の太陽電池により発生する可変電力を決定し、かつピーク電力と比較する工程と、
1又は2以上のしきい値P、P、Pn−1を少なくとも1個の太陽電池により発電された電力と比較する工程と、
−これらのしきい値P、P、Pn−1を、複数の効率曲線における少なくとも2つの効率曲線の交点の電力値で定義する工程と、
−測定した電力値がPi−1とPの間にある場合にi個の変換器を接続し、あるいは測定した電力値がPn−1より大きい場合に、全ての変換器を接続する工程とを含み、
前記複数の効率曲線の各々は、所定の数の変換器に対する効率曲線に対応し、
電力しきい値Pは、1個及び2個の変換器の効率曲線間の交点、電力しきい値Pn−1は、n−1個及びn個の変換器の効率曲線間の交点であり、
少なくとも1個の太陽電池に結合された前記複数の変換器の数を決定するために使用される電力しきい値P、P、・・・Pn−1のうちの特定の1つは、前記太陽電池発電装置の出力で発生する電力量に基づいて選択され、
前記しきい値は、静電変換器の温度に依存している太陽電池発電装置の制御方法。
【請求項13】
測定した電力値が前記しきい値Pi−1とPの間で変化する際に、並列接続された複数のn個の変換器の交換が実行される工程を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
並列接続された複数のn個の変換器の各々の使用期間及び/又は使用数の1又は2以上を決定する工程
時間の経過とともに、使用期間及び/又は使用数の1又は2以上が、並列接続された複数のn個の変換器間で、ほぼ等しくなるように並列接続された複数のn個の変換器の各々を接続する工程を含む請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池発電装置の分野、より詳細には、電子システムを一体化した太陽電池モジュールに関し、このタイプのモジュールは、太陽電池発電装置と、太陽電池の電子的管理システムを含んでいる。
【背景技術】
【0002】
公知のように、太陽電池発電装置(PVG)は、1個の、又は直列又は並列接続された2個以上の太陽電池(PV)を備えている。無機材料からなる太陽電池は、基本的に、半導体物質を主とする(pn又はpin接合)ダイオードを備えている。この物質は、光エネルギを吸収する性質を有し、前記光エネルギの大部分は電荷キャリア(電子及び孔)に変換される。通常ドーピングされていない領域(pin接合の「i」で特定される真性領域(intrinsic)として参照される)で隔てられた、N型及びP型の2種類の領域のドーピングにより構成される(pn又はpin接合)ダイオードは、電荷キャリアを分離して、太陽電池の電極を通して集める。太陽電池が供給できる、最大ポテンシャル差(開回路、VOC)と最大電流(短絡電流、ICC)は、前記電池を構成する全体としての材料と、この電池の周囲の条件(スペクトル強度による照度及び温度等)の両者によって決定される。有機物の場合、前記モデルはかなり異なってくる。エキシトンとして知られる電子−孔ペアが生成する、ドナー及びアクセプタの観念への言及が必要になる。その目的は同じで、電荷キャリアを分離しかつ集めて電流を作り出すことである。
【0003】
図1は、公知の太陽電池発電装置の概略図である。多くの太陽電池発電装置は、直列及び/又は並列に接続された太陽電池を備える少なくとも1枚のパネルを備えている。複数のグループの電池を直列接続して、前記パネルの全電圧を増加させることができ、複数のグループの電池を並列接続して、システムで提供する強度を増加させることができる。同様に、複数のパネルを直列又は並列に接続し、用途に応じて、前記発電装置の電圧及び/又は電流を増加させることができる。
【0004】
図1は、各ブランチが3群の電池2を含む2本の並列ブランチを備える太陽電池発電装置を示す。該太陽電池発電装置の電気的安全性を確保するために、ノンリターンダイオード3及びバイパスダイオード4を設置しても良い。前記ノンリターンダイオード3は、前記発電装置の各並列ブランチに直列接続されて、負荷や発電装置の他のブランチからの負電流が電池内を流れることを防止する。前記バイパスダイオード4は、前記電池群2に逆並列に接続されている。該バイパスダイオード4は、欠陥やシャドウイングを示す電池群2を分離して、ホットスポットの問題を解決できる。
【0005】
前記発電装置の最大電圧は、各電池の最大電圧の合計になり、前記発電装置が伝達できる最大電流は、各電池の最大電流の合計である。電池の最大電圧VOCは、電池に負荷が接続されていないとき、つまり電流が伝達されていないとき(開回路)に到達し、電池の最大電流ICCは、その端子が短絡されているとき、つまり電池の端子の電圧がゼロであるときに到達する。最大値VOC及びICCは、太陽電池を作動させるために使用する技術及び物質に依存する。電流の最大値ICCは、電池の日射量のレベルにも大きく依存する。このように、太陽電池は、非直線的電流/電圧特性、及び最適電圧値Vopt及び最適電流値Ioptに対応する最大出力点(MPP)を有する電力特性を示す。図2は、その最大出力点(図中、PPMで示す)とともに、太陽電池の電流/電圧(IPV、VPV)及び電力/電圧(PPV、VPV)特性を示す。同様に、太陽電池発電装置は、非直線状の電流/電圧特性及び最大出力点を有する出力特性を示す。電池の一部が遮蔽されると、あるいは一群の電池のうちの1又は2以上が不完全であると、この群の最大出力点MPPは変化する。
【0006】
最大電力点追従制御(MPPT)として知られる最大出力を求めるためのコマンドを使用して、太陽電池発電装置の動作を最適化することは公知である。このタイプのMPPTコマンドは、用途に応じて、直流/交流(DC/AC)変換器や直流/直流(DC/DC)変換器である、1又は2以上の静電変換器を使用して行われる。図1は、発電装置の出力に接続され、発電装置の全電池により生産され、かつ負荷へ伝達される電気エネルギを集めるDC/AC静電変換器を示している。負荷に応じて、前記変換器は、出力電圧を増加又は減少させ、及び/又は出力電圧を反転させる。図1は、変換器8を使用するMPPTコマンド6生成を示している。
【0007】
MPPTコマンド6は、前記変換器8を制御し、出力特性の最大点に対応する、太陽電池発電装置(PVG)の最適電圧値Voptに対応する入力電圧を得るように設計されている。最大出力点は、特に、日射の存在、電池の温度や劣化、動作状態にある電池の数などの複数のパラメータの経時変化に依存する。
【0008】
これにより、太陽電池発電装置の出力は、電池の誤作動やシャドウイングにより大きく悪影響を及ぼされることがなくなる。発電装置の電気的出力は、各太陽電池の状態に直接依存する。
【0009】
太陽電池発電装置で伝達される電力は、日射量に応じて変化する。1個ではなく、2個又はそれ以上の変換器を使用して電力を生じさせる。その際には、PVGで生成される電力の変化に応じて、所定数の変換器を適合させる。実際、単一の変換器を使用することは、出力変換を管理するために必ずしも有利ではなく、変換出力が逆影響を受けることがある。PV電力供給が最大であると、単一フェーズ(あるいは単一変換器)により構成される出力は減少し、他方3個の変換器を有する構造は、伝達されるPV電力にかかわらず、出力を実質的に一定に維持する傾向がある。これにより、バッテリにより大きなエネルギを伝達できることになる。
【0010】
図3は、PV電池の出力に、3個のCS(この場合、BOOST変換器)を有する配置を示している。これらの変換器は、デバイスのピーク電力(Ppeak)に関連する発電装置の電力に応じて作動させられる。公知の通り、1個のCSを使用すると、PVGにより伝達される電力は、Ppeakの1/3に等しいかそれ未満で、2個のCSを使用すると、PVGにより伝達される電力は、Ppeakの1/3と2/3の間であり、3個のCSを使用すると、伝達される電力は、Ppeakの2/3を超える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、PVGの変換出力を増加させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
太陽電池発電装置の電子的管理システムであって、
それぞれが、前記発電装置の少なくとも1個の太陽電池(10)に電気的に接続された、並列接続された複数のn個の静電変換器(11、12、13)を備え、
接続される変換器の数は、発生する電力と、しきい値P1、P2、・・・Pn−1を比較することにより決定され、これらのしきい値は、相違している複数の変換器の効率曲線の交点の電力値で定義される電子的管理システムを提供するものである。
【0013】
ある態様では、nは3に等しい。
【0014】
ある態様では、第1のしきい値は、1/3未満、好ましくは20から33%、更に好ましくは23から32%である。
【0015】
ある態様では、第2のしきい値は、2/3超、好ましくは35から55%、更に好ましくは40から50%である。
【0016】
ある態様では、しきい値は、少なくとも1個の太陽電池の最適電圧値Voptに依存する。
【0017】
ある態様では、しきい値は、変換器の入力電圧に依存し、好ましくは前記入力電圧は、前記少なくとも1個の太陽電池の最適電圧値Voptである。
【0018】
ある態様では、しきい値は、一年の内の時期及び/又は日射量に応じて決定される。
【0019】
ある態様では、しきい値は、変換器のデューテーサイクルにより決定される。
【0020】
ある態様では、しきい値は、変換器の温度により決定される。
【0021】
ある態様では、しきい値は、変換器の経時劣化により決定される。
【0022】
ある態様では、決定されたしきい値は、管理システムのメモリに記憶され、該しきい値は、太陽電池発電装置のパラメータの測定に応じて修正される。
【0023】
ある態様では、システムは、電力の関数として、効率曲線を決定するデバイスを備えている。
【0024】
システムのCSの交換に関するある態様では、変換器が順に接続されている。
【0025】
CSの交換に関するこの態様の変形例では、変換器の交換を、使用している変換器の数を変化させる際に行う。
【0026】
CSの交換に関するこの態様の変形例では、変換器の交換を、該変換器の素子の状態に応じて行う。
【0027】
本発明の対象は、更に
−少なくとも1個の太陽電池、及び
−本発明の管理システム
を含む太陽電池発電装置である。
【0028】
本発明の対象は、更に、
−少なくとも1個の太陽電池、
−それぞれが、前記少なくとも1個の太陽電池(10)に電気的に接続され、互いに並列接続された複数のn個の静電変換器(11、12、13)を含む太陽電池発電装置の制御方法であって、
−前記少なくとも1個の太陽電池により発生する電力を決定し、かつピーク電力と比較する工程と、
−しきい値P1、P2、Pn−1と比較する工程と、
−これらのしきい値P1、P2、Pn−1を、少なくとも1個の太陽電池の
相違している複数の変換器の効率曲線の交点の電力値で定義する工程と、
−測定した電力値がPi−1とPの間にある場合にi個の変換器を接続し、あるいは測定した電力値がPn−1より大きい場合に、全ての変換器を接続する工程
を備える太陽電池発電装置の制御方法である。
【0029】
CSの交換に関する本発明方法の態様では、全ての変換器が接続されてはいない場合に、他の変換器が接続される際に、i番目の変換器は、最早接続されない。
【0030】
CSの交換に関する本発明のある態様では、本発明方法は、
−少なくとも1個の第1の変換器を接続する工程、
−より多くの数の変換器を接続する工程を含み、
−より少ない数の変換器の接続の場合に、前記第1の変換器を接続しない。
【0031】
CSの交換に関する本発明のある態様では、測定した電力値がしきい値Pi−1とPの間で変化する際に、変換器の交換の工程が実行される。
【0032】
CSの交換に関するこの態様の変形例では、対象方法は、
各変換器の使用期間及び/又は使用数を決定する工程、
変換器を、使用期間及び/又は使用数が、一定期間、各変換器間で、ほぼ等しくなるよう接続する工程を含んでいる。
【0033】
本発明方法は、本発明の太陽電池発電装置に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】既述の通り、従来技術の太陽電池発電装置のダイアグラムを示す。
図2】既述の通り、太陽電池発電装置の理論的な電流/電圧曲線及び出力特性を示す。
図3】複数の変換器(ここではBOOSTタイプの3個の静電変換器)を含むPVGのダイアグラムを示す。
図4】3個の静電変換器の効率曲線を示す。
図5】本発明において、時刻の関数としての静電変換器の数を示す。
図6】実施例で使用されるスキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、太陽電池に接続された、通常3個の、DC/AC又はDC/DCである複数の(電池又はフェーズ)変換器を備える太陽電池発電装置の電子的管理システムを提案する。前記変換器は、少なくとも1個の太陽電池に電気的に接続され、この電池で生成されるエネルギを集めて負荷へ伝達する。「負荷」という用語は、太陽電池発電装置で生成するエネルギの使用が意図される電気的なアプリケーションを意味する。下記の記載は、3個の変換器について行うが、4以上の数の変換器についても同様に適用されると理解すべきである。下記するCS(convertisseurs statiques)は、変換器(この場合、静電変換器)を意味する頭字語である。
【0036】
公知のように、これらの変換器は、MPPTとして知られるコマンドにより制御される。例えば、この最大電力点追従制御コマンドMPPTは、発電装置により伝達される電力の出力変化の影響を特定しかつ電力を増加させる方向に電圧変化が生じるようなアルゴリズムを実行できる。従って、このタイプのアルゴリズムは、発電装置で伝達される第1の電圧の電力を測定し、一定時間経過後に、前記第1の電圧より高い第2の電圧を印加し、次いで対応する電力を測定するか、あるいは評価する。前記第2の電圧に対応する電力が、前記第1の電圧に対応する電力より高い場合は、前記アルゴリズムの次のステップでは、より高い第3の電圧を印加する。逆の場合、印加される第3の電圧は前記第1の電圧より低くする。従って、前記システムは、太陽電池発電装置の端子に電圧を与え続けて、最大出力点に可能な限り近似させる。MPPTコマンド用の他のアルゴリズムを実行しても良い。
【0037】
図3は、このタイプのシステムを示し、PVGは、CS11、12、13(BOOST1、2及び3)とMPPTコマンド14に接続された太陽電池ユニット10を含み、前記CSの出力はバッテリ15に接続されている。
【0038】
変換器の制御のためには、変換器の効率曲線を使用する。このような曲線を図4に示す。この図では、1フェーズ、2フェーズ及び3フェーズの効率を表している。一例として、Ppeakは85Wである。1フェーズの場合、効率はPpeakの約1/3の点まで増加することが注目される。2フェーズの場合、効率は約35Wから40Wの間の値の点まで増加する。3フェーズの場合、効率は、この点より更に大きくなる。
【0039】
従来技術は、一定数の変換器を使用して2種類の予め定めたしきい値変化に対応している。これに対し、前記管理システムは、MPPT管理システムにより測定される電力の関数として、つまり、Ppeakの1/3未満、Ppeakの1/3から2/3、Ppeakの2/3超に応じて、1、2又は3個の変換器を使用する。
【0040】
本発明では、変換器の個数に応じた、真の効率曲線を参照する。変換器の個数に応じて、効率を最適化し、変換器の電力曲線の交点を、変換器の数に応じて決定する。従って図4では、1個の変換器と2個の変換器の効率曲線の交点の第1の点は、第1のしきい値P1を与え、このしきい値は管理システムのメモリに記憶される。電池PVにより伝達される電力が、このしきい値未満であると、1個のCSを使用し、他方前記電力がこのしきい値P1より大きいときは、2個のCSを使用するようにする。図4は、2個のCSの曲線と3個のCSの曲線間の交点も示している。その効率がより高くなっている該しきい値は、2/3の点から大きくシフトしていることに注目できる。この第2の点は、しきい値P2であり、電池PVにより伝達される電力及びPpeakに対するそれらの比較の結果に応じて、前記しきい値P2未満であると2個のCSが使用され、それを超えると、3個のCSが使用される。
【0041】
公知技術は、効率は最適数の変換器のときに最適になるという仮定から始まって、3個の変換器の場合には、3分割することを基本にしている。3個の変換器の場合、最適数は、1、2又は3で、スパンは3個に分割される。本発明は、この仮定から離れて、変換された電力に実際に可能な限り近いしきい値を採用する。図4から、効率は本発明で最大であることが分かる。
【0042】
提示する例では、P1及びP2の値は、それぞれPpeakの28%及び45%である。一般に、しきい値P1は、Ppeakの1/3未満、主として20から33%、好ましくは23から32%である。一般に、しきい値P2は、Ppeakの2/3未満、主として35から55%、好ましくは40から50%である。勿論、使用するデバイスに応じて、他の値を決定し使用しても良い。
【0043】
従って、時刻に応じて、好適な数のCSを使用する。図5は、時刻に応じたCSの数を表す。日中は、3個のCSを使用する態様が優位であり、他方従来技術では、3番目のみである。
【0044】
2、3、4又はそれ以上の任意数の変換器に同じ原理が適用でき、接続される変換器の数(全n個以外)は、生成した電力を、しきい値P1、P2、・・・Pn−1と比較することにより決定される。これらのしきい値は、変換器の数が相違する複数の効率曲線の交点における電力値として定義され、しきい値P1は、1個及び2個の変換器の効率曲線間の交点であり、しきい値Pn−1は、n−1個及びn個の変換器の効率曲線間の交点である。
【0045】
しきい値P1及びP2は、GPVの製造に使用した装置に応じて変化する。CSの効率曲線を、フェーズ数に応じて、つまり図4の曲線のようにプロットし、これらの値を管理システムのメモリに記録することができる、次いで、これらの値は、修正せずにシステムで使用する。
【0046】
前記効率曲線に影響する因子を考慮することも可能である。
【0047】
特に、季節及び/又は電子デバイス自身の特性を考慮することが可能である。
【0048】
パネルPVの温度は、季節に応じて変化するため、季節は考慮できる因子である。前記パネルの特性も、季節に応じて、特に年間における時期に応じて変化する電圧Voptの最適値に応じて変化する。例えば、電圧Voptの最適値は表1のように変化する(パネルの温度が上昇すると、最適電圧値は減少する)。
【0049】
【表1】
【0050】
電圧Voptの最適値に応じて、しきい値も変化する。例えば、Ppeakの%値で表示したしきい値P1及びP2は表2のような値を取ることが可能である(例えば、前記値の28%及び45%は秋に得られたと考えられる)。
【0051】
【表2】
【0052】
管理システムのメモリに、しきい値P1及びP2の値の記憶させた後、季節に応じてこれらの値を使用する(及びカレンダーに応じて使用する)か、あるいはシステムで測定した最適電圧値Voptを使用して、組み合わせたしきい値P1及びP2を適用できる。システムのメモリは、種々の電圧値及びしきい値間の対応を有する。
【0053】
最適電圧Vopt値は、太陽光に応じて変化し、この値は、一般に、日射レベルが減少すると、減少する。
【0054】
更に変換器の効率は、該変換器の特性に応じて変化する。特に、変換器の効率は、素子のデューテーサイクル及び温度に応じて、更に経年劣化に応じて変化する。
【0055】
電力変換器の効率は、その入力ポートに存在する最大値をその出力ポートで復元できる能力として定義され、100%からの減少分はロスである。
【0056】
GPVで従来使用されているDC/DCブースト変換器の場合、ロスは、受動素子の及び接続設備のジュールロス、及び能動素子(電界効果トランジスタ及びダイオード)の導電及びスイッチングのロスである。
【0057】
これらのロスは、原理的には、3種類の主要なパラメータであるデューテーサイクル、温度及び経年劣化に応じて変化し、それらの相対的な重要性はこの順序の通りである。
【0058】
従って、変換器の効率は、一般に、デューテーサイクルに依存する。
【0059】
(ブースト変換器用の)デューテーサイクルは次のように定義される。
【0060】
α= 1−Vin/Vout
【0061】
従って、出力電圧Vout、つまりバッテリの電圧は、例えば過充電又は未充電の場合、又は異なった公称電圧のバッテリと交換する場合に、デューテーサイクルに影響を与える。
【0062】
電圧Vinも、デューテーサイクルの値に影響する。MPPT制御を行う太陽電池の用途の場合、この電圧は、パネルの最適電圧(Vopt)に対応し、GPVで生成する電力の電圧が最大になる。上述した通り、この電圧は、特に季節(パネルの温度)及び太陽光に応じて変化する。
【0063】
デューテーサイクルを考慮して、前記管理システムは、変換器の端子間電圧の測定を行う。更に、最適電圧(Vopt)の値が、既に測定されていると、この値の測定は、デューテーサイクルの決定に使用され、従って前記最適電圧値と同時に決定できる。
【0064】
一般に、変換器の効率は、素子の、特に電界効果トランジスタとダイオードの温度に依存する。トランジスタの場合、接合温度が上昇するにつれて、抵抗が増加し、これにより導電ロスも増加する。ダイオードの場合の効果は逆で、温度が上昇するにつれて、導電ロスは減少する。しかし、効果の予測は非常に困難で、特にこれはトランジスタやダイオードが、変換器中で統合使用されることから生じる。一般に、変換器の効率は、温度に依存し、この効率は温度変化とともに変化する。
【0065】
1又は2以上の温度プローブを使用して素子の温度を測定し、測定結果を前記管理システムに導入できる。
【0066】
更に、変換器の効率は、一般に経時劣化に依存する。トランジスタの抵抗は、ダイオードのしきい値電圧の値と同様に、経時劣化の間に増加する。経時劣化つまり長期運転は、能動素子の電気的挙動を修正することと、ロスを増加させる効果を有し、結果的に、変換器の効率を変化させる。
【0067】
経時劣化に関しては、カウンタを使用して、例えばダイオードのサイクル数を測定し、かつ電子システムの経時劣化を決定できる。
【0068】
測定器具を、GPV用の測定システムに組み入れることにより、効率曲線を「オンサイト」で決定することもできる。このような場合、前記システムは、予備設定された値のエネルギを供給した後、予備記録されたルーティンに従って、予備設定された時間(ある特定の日時)、予備設定されたインターバルで、あるいは他の無作為の条件下で、しきい値P1及びP2の測定を行う。その代わりに、GPVを実行する際に遭遇する各状況に対応する値P1及びP2を、前記管理システムのメモリに記憶することも可能である。ハイブリッド的に、つまり情報の一部を記憶し、前記情報の他の部分を測定するように、操作することも可能である。例えば、季節の値を記憶し、他方、素子の温度を測定することである。
【0069】
好適な態様では、単一のCS上に連続的な応力が加わることを避けるため、前記システムはCS交換ルーティンを設置する。実際に図3では、変換器CS11は、連続的に接続され、従って変換される電流を連続的に受け取る。他のCSは、PV電力の発生中に生じる変化に従って使用する。従って、CS11は連続的に応力を受け、更にPV電力が変化する場合は、修正される電力中で変化を受ける。前記システムの信頼性は、素子の一つが連続的に応力を受けると、低下する。使用するCSを交換することが有利である。
【0070】
前記交換は、パネルにより発生するPV電力に変化が生じる場合に制御でき、あるいは、変換器の状態に従って、又はその両者により制御できる。ランダム配分コマンドも使用できる。
【0071】
ある態様では、CSの変化は、使用するCSの数が増加する際に生じる。例えば、CS11が接続されていて、2個のCSを使用しなければならないというコマンドが出ると、CS12及び13が使用され、CS11は接続されない。CSの数が1ユニットに戻ると、動いていないCS11ではなく、CS12(又はCS13)が接続される。3個のCSを接続しなければならないときは、1又は2個のCSに復帰する間に、交換が起こる。この場合、出発点は、CS11が接続されている状況であり、次いで3個のCSが接続される。あるいは復元条件が2個のCSを要求すると、CS12及び13が接続され、あるいは復元条件が、1個のみのCSを要求すると、CS12又は13が接続される。
【0072】
異なる態様では、CSの変化はCSの使用の計算により生じる。この計算は、使用の長さに基づいて行われ、交換は、ある期間に亘って、全てのCSがほぼ等しい使用期間が確保されるように実行される。この期間は、1日でも、数日でも、1日の一部、例えば1又は2時間以上とすることができ、この期間は、1日の内の時間及び/又は季節に応じて決定できる。この態様では、使用しなければならないCSは、使用時間が少ないものである。前記計算は、使用期間とは別に、CSの使用期間や応力よりむしろ、使用回数をカウントすることにより行われる。この場合、使用されなければならないCSは、少数回、応力を受けたものである。2種類の変数が組み合わせられた態様を予測することも可能である。
【0073】
異なる態様では、交換をランダムに行い、ランダムな変換器を管理システムに導入することも可能である。CSの数を増減させる場合、その選択は、ランダムに、必要に応じて「シャフル」モードで行う(このモードは、使用しているCSをランダム選択から除外するモードである)。
【0074】
前記説明のように、使用しているCS数の変化があるときに、CS交換を行う。勿論、使用するCS数が一定である場合に、前記交換を行うことも可能である(最大数ではない限り)。気象上の条件から、単一個のみのCSを使用する場合、このCSを当初は作動していないCSと交換し、1個のCSを所定期間以上、連続使用しないようにする。
【0075】
使用する変換器の交換は、電力変化がある場合に能動素子が受ける熱的及び電気的応力を減少させる効果を有する。
【0076】
熱的変化は、製造時に使用される物質の膨張係数のレベルの差に大きく影響されて、半導体に機械的束縛を生じさせる。例えばシリコンは4ppm/℃であるのに対し、銅は16ppm/℃であり、アルミニウムは24ppm/℃である。多数の熱サイクル後の電気接点で保持される機械的束縛の結果は、接点に、あるいは損傷している接点に微小な亀裂が現れることである。CS交換の態様の目的は、熱的及び電気的応力を全ての変換器に分散させることである。
【0077】
本発明の電子的管理システムは、例えばPVGの素子の過熱を示すメッセージに続く、安全機能、変換器のシャットダウンの制御も含む。本発明の電子管理システムは、防犯機能も含む。本発明の管理システムは、電池群及び/又は変換器の操作条件に関する情報を、電子的ネットワークの制御センタに伝達する。これは、PVGのメンテナンスを容易にする。特に、メンテナンスの責任者は、太陽電池や変換器の群の故障に対して、より迅速に警告を発して、必要な対策を採ることができる。
【0078】
本発明の管理システムは、全体又は一部を、太陽電池発電装置に組み入れることができる。
【0079】
ある態様では、多接合太陽電池デバイスが使用できる。その場合、異なった接合の電気的カップリグの問題を解決することが必要になる。多接合太陽電池デバイス、例えばタンデム接合デバイスとは、該デバイスの太陽スペクトル吸収領域を増加させるように、単一接合を複数積層させた太陽電池デバイスを意味する。タンデム接合の太陽電池デバイスでは、良好な電気的変換出力が得られる。タンデム接合太陽電池デバイスの電気的カップリングの主要な不利益は、日射条件にかかわらず、タンデムを形成する太陽電池の性能の調和が必要なことである。前記タンデムの各電池の電流生成は、活性であるスペクトルの領域に従って自動的に異なるため、前記理想的なケースは、実現可能ではなく、日射条件に応じて変化する。これにより、タンデム接合太陽電池デバイスは、その最も弱い素子により、固有の限界が現れる。このタイプの電流限界は、タンデム接合太陽電池デバイスの理論的出力を大きく減少させる。1つの解決法は、タンデム接合太陽電池デバイスの接合を電気的にデカップリングさせることである。タンデムカップリング型の太陽電池は、依然として光学的にはカップリングするが、電気的にはデカップリングする。各接合は、2個の電極に接続されて、4電極−太陽電池デバイスが得られる(タンデムの場合)。前記変換器を、前記タンデムの各(少なくとも1個の)太陽電池に接続すると、前記システムにより、多接合太陽電池デバイスが得られ、このデバイスは、電気的にデカップリングされた太陽電池で動作し、各電池は、本発明の管理システムにより最適状態に管理されている。
【0080】
以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0081】
[実施例]
本実施例では、しきい値がPVpeakの1/3及び2/3に固定された従来技術で使用された、3CSを備えるシステムと、本発明で使用される3CSを備えるシステムを比較する。
【0082】
本発明の方法で得られるエネルギゲインを評価するために選択されたテストプレトコルは、同じ入力源(太陽シミュレータ)及び同じ多相電力カード(同じ電気素子の挙動)である。前記シミュレータは、同じ電力プロフィールの両ケースでの適用を可能にし(例えば、比較的晴れた日に、85Wの電力ピークのモジュールを生産)、一方MPPは、同じMPPTコマンドを使用して得られるか、あるいはP1及びP2の値のみが異なってくる。
【0083】
この試験の間、負荷を接続した24Vのバッテリを使用して、バッテリの公称電圧(24V)が連続して保証されるようにした。図6は、使用した測定システムを示している。
【0084】
測定器具により、変換器の入力及び出力に存在する電流及び電圧を同時に測定する。これらの値は、前記シミュレータが供給するPV電力(PPV)及びバッテリ(PBAT)に伝達される電力、従って変換器(PBAT/PPV)の出力を推測することを可能にする。時間変数(時で表した試験時間)を考慮して、生成され、かつバッテリ(EBAT)に伝達されたPVエネルギ(EPV)の量を計算する。
【0085】
本発明方法により決定されたしきい値P1及びP2を図4に示す。しきい値は、それぞれ28%及び45%である。
【0086】
表3の結果が得られ、比較は、従来技術のしきい値の1/3及び2/3に対応する。
【0087】
【表3】
【0088】
この試験の間、2つのシステムでは、それらの入力ポートに、同じ量、つまり387Whのエネルギが得られた。しきい値が本発明方法で決定されるシステムは、負荷に、2.4Wh以上を伝達することを可能にし、最終的に、この電力段での変換効率レベルにおけるゲインを0.7%にした。
【符号の説明】
【0089】
CS 変換器(静電変換器)
MPP 最大電力点
MPPT 最大電力点追従制御
PV 太陽電池
2 電池
3 ノンリターンダイオード
4 バイパスダイオード
6 MPPTコマンド
8 変換器
10 太陽電池ユニット
11、12、13 静電変換器
14 MPPTコマンド
15 バッテリ
P1、P2 しきい値
Vopt 最適電圧値
Vin 入力電圧
Vout 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6