特許第6236585号(P6236585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236585個々の顧客からシステムレベルへの負荷予測
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236585
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】個々の顧客からシステムレベルへの負荷予測
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20171120BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20171120BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20171120BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G06Q50/06
   H02J3/14
   H02J3/00
   H02J13/00 301A
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-530652(P2014-530652)
(86)(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公表番号】特表2014-527246(P2014-527246A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】US2012000398
(87)【国際公開番号】WO2013039553
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年9月10日
(31)【優先権主張番号】61/535,949
(32)【優先日】2011年9月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/535,946
(32)【優先日】2011年9月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517177741
【氏名又は名称】オートグリッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤン、アミット
(72)【発明者】
【氏名】ロックリン、スコット、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】バート、ビジェィ、スリクリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ、ヘンリー
【審査官】 山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−129085(JP,A)
【文献】 特開2007−199862(JP,A)
【文献】 特開2009−237832(JP,A)
【文献】 特開2010−128810(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0295594(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
H02J 3/00
H02J 3/14
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デマンドレスポンスシステムにおいて動的価格信号の存在時に、顧客の個々のレベルにおける負荷を予測する方法であって、
(a)高度検針インフラストラクチャーおよびセンサーを用いて個々の顧客レベルにおける電気使用量データを収集し、対応するデマンドレスポンスイベントにおける前記顧客ごとの前記負荷制限を決定することと、
(b)リソースモデラーを介して、用可能な需要側リソースの記録と、種々のイベントへの顧客参加履歴とを収集することであって、前記顧客参加履歴は個々の顧客の場所において収集されることと、
(c)利用可能な需要側リソースの統一見解を作成することと、
(d)デマンドレスポンス固有データを複数の関連する時系列データにセグメント化し、前記デマンドレスポンスシステム内の第1のモジュールが、前記顧客参加履歴と前記時系列データとを解析して、歴時系列データを用いて顧客ごとに自己較正モデルを構築することと、
を含み、
前記デマンドレスポンスシステム内の第2のモジュールは、顧客ごとおよびデマンドレスポンスイベントごとの前記自己較正モデルと、前記個々の顧客レベルにおける前記電気使用量データとを解析して、対応する前記デマンドレスポンスイベントに関する個々の顧客負荷使用量データを予測し、
前記第2のモジュールは、前記第1のモジュールからの負荷時系列データからのフィードバックを絶えず取り込み、顧客負荷使用量の前記予測値を更新するように顧客負荷プロファイルの変化を予測して、前記第2のモジュール上で機械学習アルゴリズムを実施する、方法。
【請求項2】
前記動的価格信号は、現在の条件に関して可変であり、高度な通知要件がデマンドレスポンスイベントに関連付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デマンドレスポンス有データをセグメント化するために用いられる前記セグメント化技法は、K平均法およびファジーk平均法アルゴリズムを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記負荷の予測は、時刻、気象および価格信号の関数として実行される、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記機械学習アルゴリズムは、Arimax、KNN、SVM若しくは人工ニューラルネットワークまたはその組み合わせを含む、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
動的価格信号において顧客負荷を予測する方法であって、
個々の顧客レベルにおいて、ならびに、変圧器、給電線および変電所レベルにおいて負荷を予測し、
前記方法は、
(a)高度検針データおよび配電網上のセンサーを用いて、個々の顧客レベルにおいて定期的に電気使用量データを測定して、測定済み顧客レベルデータを提供すること、ならびに、前記測定済み顧客レベルデータを集計することと、
(b)前記測定済み顧客レベルデータから、変圧器、給電線および変電所レベルにおける電気使用量データを計算することと、
(c)前記顧客ごとに、定期的な電気使用量データ、デマンドレスポンスイベントへの参加の履歴、負荷制限データ、電気使用量パターンのうちの1以上を含む顧客データを記憶するユーザープロファイルを作成することと、
(d)機械学習技法を用いて価格信号関数に対する顧客挙動に基づいて個々の顧客に関する電気負荷のプロファイルを作成することと、
(e)客電気使用量データおよびユーザープロファイルデータを時系列にセグメント化すること、ならびにk平均法およびファジーK平均法アルゴリズムを用いてデータセグメントを複数の時系列に関連付けられる時系列にクラスタリングすることと、
(f)予測エンジンを使用して、前記顧客電気使用量データ、前記ユーザープロファイルに記憶されるデータを考慮することにより個々の顧客負荷に対する短期予測を生成することと、
(g)個々の顧客レベルにおける前記予測を集計して、変圧器、給電線および変電所レベルにおける電気負荷使用量に関する前記予測を生成することと、
(h)前記予測データの偏差および実際の電気使用量を用いて次のデマンドレスポンスイベントについて予測の変化を予想することができるように、個々の顧客に関する前記予測の値を前記ユーザープロファイルに記憶することと、
を含み、
前記ユーザープロファイルは、前記定期的な電気使用量データからのフィードバックを取り込むことによって絶えず更新され、
前記予測エンジンは、絶えず進展するユーザープロファイルデータからのフィードバックを取り込み、前記予測エンジンにおいて機械学習アルゴリズムを実施する、方法。
【請求項7】
前記動的価格信号は、負荷予測のための価格に基づくデマンドレスポンスを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記動的価格信号はコスト、信頼性、負荷順序、優先順位、GHG等を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記個々の顧客に関する前記プロファイルは、最終レベルにおける電気使用量に基づいて生成される、請求項6から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記機械学習アルゴリズムは、Arimax、KNN、SVMまたは人工ニューラルネットワークまたはこれらの組み合わせを含む、請求項6から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
クラスタリング技法を用いて、前記使用量データを、類似の時系列にセグメント化する、請求項6から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
集計された前記電気負荷は、個々の顧客の予測の和として計算される、請求項6から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
デマンドレスポンス固有データの前記セグメント化は、季節性、発生時刻、価格指数、温度および他の回帰パラメーターに基づいて実行される、請求項6から12の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的に負荷予測に関し、より詳細には、価格に基づく個々の顧客からシステムレベルへのボトムアップ負荷予測に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2011年9月17日に出願の「Bottom-up Load Forecasting from Individual Customer to System-Level Based on Price」と題する米国仮特許出願第61/535,949号に対する優先権の恩典を主張し、2011年9月17日に出願の「Machine Learning Applied to Smart Meter Data to Generate User Profiles-Specific Algorithms」と題する米国仮特許出願第61/535,946号に対する優先権の恩典を主張し、それぞれの内容はその全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
公益事業会社の運用及び計画にとって、電力負荷を予測する正確なモデルは不可欠である。負荷予測は、電気公益事業会社が、電力の購入及び発電、負荷切替、及びインフラストラクチャー開発に関する決定を含む、重要な決定を行うのを助ける。負荷予測は、エネルギー供給業者、ISO、金融機関、並びに発電、送電、配電及び市場の他の関係者にとって極めて重要である。負荷予測は3つのカテゴリ:通常、1時間〜1週間の短期予測と、通常、1週間〜1年間の中期予測と、1年より長い長期予測とに分けることができる。
【0004】
最終使用又はボトムアップ手法は、中期予測を生成するために用いられる。ボトムアップ手法は、電化製品、顧客使用量、顧客年齢、家の大きさ等の最終使用及びエンドユーザーに関する包括的な情報を用いることによって、エネルギー消費量を直接推定する。これらのモデルは、住宅部門、商業部門及び工業部門における電気の種々の使用量に焦点を合わせる。これらのモデルは、電気需要が照明、冷房、暖房、冷蔵等への顧客の需要から導出されるという原理に基づく。したがって、最終使用又はボトムアップモデルは、電化製品の数と、各電化製品若しくはシステムから要求されるエネルギーサービスのレベル又は作業需要との関数としてエネルギー需要を説明する。
【0005】
負荷を予測するために、時間的要因、気象データ、考えられる顧客の階層、価格信号、履歴的な負荷及び気象データ、異なるカテゴリの顧客数、その地域内の電化製品と年代を含むその特徴、経済及び人口統計データとその予測、電化製品販売データ、並びに他の要因等の幾つかの要因が考慮されるべきである。
【0006】
最近になって、負荷を予測するために価格信号が考慮されつつある。価格信号は、商品の代金として請求される価格の形で消費者及び生産者に送信されるメッセージである。これは、生産者が供給を増やし、及び/又は消費者が需要を減らすための信号を示していると見なされる。しかしながら、既存の負荷予測システムは、最終顧客レベルにおける使用量情報の欠如に起因して、動的な価格信号の存在時に顧客負荷に対する正確な個別の予測を行うことができなかった。
【0007】
上記の検討を踏まえて、負荷予測中に個々の顧客価格弾力性を考慮に入れることができる予測アルゴリズムが必要とされていた。
【0008】
[略語及び定義]
DROMS−RT:リアルタイムのデマンドレスポンス最適化及び管理システム
【0009】
DR:デマンドレスポンス
【0010】
FE:予測エンジン
【0011】
ML:機械学習
【0012】
BE:ベースライン計算及び確定エンジン
【0013】
KNN:K近傍法
【0014】
SVM:サポートベクトルマシン
【0015】
DROMS−RT:DROMS−RTは、分散発電の配電網への大規模統合をサポートするためにリアルタイムに電力潮流を制御する高度分散デマンドレスポンス最適化及び管理システムである。
【0016】
デマンドレスポンス(DR):デマンドレスポンス(DR)は、供給条件に応答して顧客の電気消費量を管理する仕組みである。DRは一般的に、顧客が需要を削減するのを助長し、それにより、電気のピーク需要を削減するために用いられる。
【0017】
予測エンジン(FE):予測エンジン(FE)はリソースモデラーから利用可能なリソースのリストを入手する。その主眼は、DROMS−RTに接続される個々の負荷について総負荷及び利用可能な負荷制限の短期予測を実行することである。
【0018】
機械学習(ML):機械学習(ML)は人工知能の一部であり、センサー及びデータベースから受信されたデータに基づいてコンピューターが挙動を発展させることができるようにするアルゴリズムの設計及び開発に関係している。機械学習技法は、一例ずつ学習するオンライン学習を伴う。
【0019】
ベースライン計算及び確定エンジン(BE):ベースライン計算及び確定エンジン(BE)は信号処理技法を用いて、非常に大きな基礎信号の背景の中の小さな系統的負荷制限であっても識別する。
【0020】
K近傍法(KNN):メモリを基にする技法であり、観測された負荷において履歴データ内の類似の事例を探索することによって予測が生成される。
【0021】
サポートベクトルマシン(SVM):比較的雑音の影響を受けない曲線当てはめ技法であり、生データをより高い次元に変換することによって、データ内の非線形関係をロバストにモデル化することができる。
【発明の概要】
【0022】
したがって、本発明の一態様では、動的価格信号の存在時に顧客負荷を個別に予測し、デマンドレスポンス管理システム内の異種の負荷の大きなポートフォリオにわたってDRリソースを最適に給電する方法が提供される。その方法は、全ての利用可能なDRプログラムのもとで、利用可能な需要重視のリソースという統一見解を保つことと、個々の顧客場所における異なるDRイベントへの参加の履歴を記憶データベースに記録することと、デマンドレスポンス固有データを互いに関連付けられる複数の時系列にセグメント化することと、履歴時系列データを用いて顧客ごとに自己較正モデルを構築することと、個々の顧客場所において定期的な電気使用量データを収集することと、個々の顧客の負荷時系列からフィードバックを取り込むことによって顧客負荷プロファイルの変化を予測することと;機械学習及びデータマイニング技法を用いて、個々の顧客負荷使用量及び負荷制限と、予測に関連付けられる誤差分布とを予測することと;クライアントデバイスから連続的なフィードバックを取り込み、予測能力を高めることと;コスト関数に依存する予測に基づいて、顧客のポートフォリオにわたってDR信号を発送することとを含む。
【0023】
本発明の別の態様では、動的価格信号の存在時に顧客予測を個別に予測する方法が提供される。その方法は、配電網上の高度検針データ及びセンサーを用いて個々の顧客レベルにおいて定期的な電気使用量データを収集するための記憶データベースと、変圧器、給電線及び変電所レベルにおいて顧客レベルデータを集計することと、複数の機械学習技法を用いて推定された顧客価格弾力性に基づいて個々の顧客のための電気的負荷のプロファイルを作成することと、複数の機械学習モデルをサポートするオープンソースソフトウェアフレームワークと、機械学習モデルを用いて、時系列の個々の顧客負荷及び使用量データをセグメント化することと、個々の顧客負荷及び集計された電力負荷と、予測に関連付けられる誤差分布との短期予測を生成することとを含む。
【0024】
これ以降、本発明の範囲を制限することなく本発明を例示するために与えられる添付の図面とともに、本発明の好ましい実施形態が説明されることになる。図面では、類似の符号は類似の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による、リアルタイムのデマンドレスポンス最適化及び管理システム(DROMS−RT)の動作を示すブロック図である。
【0026】
図2】本発明の一実施形態による、全ての利用可能なDRプログラムのもとでの利用可能な需要重視のリソースを示すユーザーインターフェースの図である。
【0027】
図3】本発明の一実施形態による、全ての利用可能なDRプログラムのもとでの利用可能な需要重視のリソース、及び個々の顧客場所における種々のDRイベントへの参加の履歴を示すユーザーインターフェースの図である。
【0028】
図4】本発明の一実施形態による、個々の顧客負荷及び集計された電力負荷に対する予測を示すユーザーインターフェースの図である。
【0029】
図5】本発明の一実施形態による、データのサイズに関する迅速な簡易計算の図である。
【0030】
図6】本発明の一実施形態による、動的デマンドレスポンス(DR)リソースモデル入力と、動的デマンドレスポンス(DR)リソースのポートフォリオとの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態の以下の詳細な説明において、本開示の細部までの理解を提供するために、数多くの具体的な細部が示される。しかしながら、これらの具体的な細部を用いることなく、本発明の実施形態を実施できることは当業者には明らかであろう。事例によっては、本発明の実施形態の態様を不必要にわかりにくくしないように、既知の方法、手順及び構成要素が詳細には説明されていない場合もある。
【0032】
さらに、本発明がこれらの実施形態だけに限定されないことは明らかであろう。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、数多くの変更形態、改変形態、変形形態、代替形態及び等価形態が当業者には明らかであろう。
【0033】
DROMS−RTは、配電網への分散発電の大規模統合をサポートするためにリアルタイムに電力潮流を制御する、高度に分散されたデマンドレスポンス最適化及び管理システムである。
【0034】
価格に基づくボトムアップ負荷予測は、DROMS−RTシステムを用いて、顧客固有の挙動を考慮に入れるモデルを予測する技法であり、その技法は、負荷を高価格の時間から低価格の時間にシフトするために顧客が用いる場合がある特定の方策を使用することに起因して、負荷プロファイルの変化を予測することができる。DROMS−RTは、配電網の要求を満たすのに最も適しているDRリソースの組み合わせを自動的に選択する。
【0035】
価格に基づくボトムアップ負荷予測は、動的価格信号の存在時に顧客負荷に対する正確な個別の予測を得るためにDROMS−RTアルゴリズムを用いる。動的価格信号は、ピーク負荷をシフトし、subLAP(負荷集積点)内の負荷を対象にし、全ピーク需要を高めることによって、subLAP(負荷集積点)の細分性を用いて過負荷制約付きの配電網を有益に管理できるようにするために、負荷を予測するための価格に基づくDRを含む。
【0036】
負荷予測の目的を果たすために、DROMS−RTは、顧客エンドポイントに概ねリアルタイムのDRイベントと価格信号とを与え、利用可能なDRリソースを最適に管理する。DROMS−RTは、DRのために、在庫情報と、通信技術及び制御装置とを用いる。配電網運用の効率及び信頼性を高めるために、DROMS−RTは、リアルタイム及び「個別の」DRを与える給電のために先進機械学習及びロバスト最適化技法を用いる。
【0037】
ボトムアップ負荷予測において、DROMS−RTは、全ての利用可能なDRプログラムと、個々の顧客場所における異なるDRイベントへの参加の履歴とのもとで、利用可能な需要重視のリソースという統一見解を保つ。DRリソースモデルは動的であり、それは、それらのモデルが現在の条件及び種々の高度な通知要件に基づいて変化することを意味する。DRリソースモデルは、過去の参加からの履歴時系列データを用いて顧客ごとの自己較正モデルを構築し、自己較正モデルは、時刻、気象及び価格信号を前提として、その顧客に関する制限容量、ランプ時間及びリバウンド効果を予測することができる。
【0038】
本発明は、負荷予測中に個々の顧客価格弾力性を考慮に入れることができるDROMS−RTの予測アルゴリズムを利用することによって、価格に基づいて、個々の顧客からシステムレベルまでボトムアップ方式で負荷を予測するシステム及び方法に関する。DROMS−RT負荷予測モデルは、顧客固有の挙動を考慮に入れ、負荷を高価格の時間から低価格の時間にシフトするために顧客が用いる場合がある特定の方策を使用することに起因して、負荷プロファイルの変化を予測することができる。そのような方策は、より高い価格のイベント中に使用量を削減するために、高価格の予想時に建物を予冷することを含むことができる。そのような方策は、機械学習アルゴリズムを用いて、個々の顧客の負荷時系列から暗に「学習される」。
【0039】
DROMS−RT負荷予測アルゴリズムは、顧客負荷データを監視することによって、高価格イベントが相次いで繰返し発生するときに、又は高価格イベントが長すぎる場合に、顧客疲労の影響を予測することができる。また、個々の負荷予測を利用できることは、数多くの異なるボトムアップデータ源を組み合わせることによって、システムレベルの負荷予測の全体精度を改善する。
【0040】
個々の顧客レベルにおいて定期的な電気使用量データを収集するために、高度検針インフラストラクチャー(AMI)及び配電網上の他のタイプのセンサーが用いられ、収集されたデータは変圧器、給電線及び変電所レベルにおいて集計される。DROMS−RTシステムは、このAMIメーターデータと、変圧器及び電化製品レベルにおいて収集される他のデータとを利用して、機械学習技法及び時系列データマイニング技法を用いて個々の顧客使用量を予測することを提案する。
【0041】
本発明の一実施形態では、そのシステムは、動的価格信号の存在時に顧客負荷を正確に個別に予測できるように設計された最新のオンライン機械学習アルゴリズムに基づく新規の予測エンジンから構成され、リアルタイム決定エンジンは、様々な時間スケールにおいて反応する異種の負荷からなる大きなポートフォリオにわたってDRリソースを絶えず最適化し、最適に給電できるようにする。
【0042】
顧客負荷及び使用量データの個々の時系列を用いて、個々の顧客負荷と、個々の顧客の予測の和に基づく集計された電力負荷との短期予測を生成する。さらに、個々の顧客の予測を生成することによって、公益事業会社は負荷不均衡を予想し、地理的に特定しやすくなり、より高い精度及び効率でそのような不均衡を軽減する措置を講じることができる。
【0043】
クラスタリング技法を用いて、データを互いに関連付けられる時系列にセグメント化する。デマンドレスポンス固有データのセグメント化は、季節性、発生時刻、価格指数、温度及び他の回帰パラメーターに基づいて実行され、デマンドレスポンスイベント固有データをセグメント化するために用いられるセグメント化技法又はクラスタリング技法は、K平均法及びファジーK平均法アルゴリズムを含む。時系列のセグメント化は、所与の時系列内で行うこともできる。
【0044】
デマンドレスポンスイベントの存在時にベースライン負荷及び負荷制限の正確な予測を生成し、誤差分布を推定し、大量のデータを分配し、自己学習し、予測精度を改善するために機械学習技法が用いられる。リアルタイムのデマンドレスポンス最適化及び管理システム(DROMS−RT)は、個々のユーザー場所において利用可能な需要重視のリソースと、種々のデマンドレスポンス(DR)イベントへの参加の履歴とをMonetDB、KDB又はXenomorphのような記憶データベースに記憶する。この情報を用いることによって、ユーザーごとの仮想プロファイルを構築することができ、そのプロファイルは、時刻、気象及び価格信号が既知であるという条件で、負荷制限と、制限持続時間と、ユーザーにとっての逆効果とを予測することができる。このプロファイルは実際にはランダムであり、個々のユーザー分散を記録する。
【0045】
機械学習モデルはARIMAXモデル、K近傍法のようなメモリに基づく機械学習モデル、サポートベクトルマシン又は人工ニューラルネットワークのような当てはめ機械/コネクショニスト学習モデルを含み、記憶データベースは、MonetDB、KDB又はXenomorphを含む。ARIMAXモデルは、クラスタリングされた負荷データ時系列を用いて、配電網によるデマンドレスポンス信号への顧客応答を予測し、特徴付けるために構築することができる。SVM又は人工ニューラルネットワーク技法は、大量のデータが存在する場合、すなわち、DROMS−RT問題によく適合する状況において、正確な結果を生成するために構築される。
【0046】
数テラバイトのデータ及び無数のデータストリームを同時に取り扱うために、ハドゥープ/マップリデュースを伴う大規模並列処理の実施態様が展開される。時系列データベース及び機械学習アルゴリズムは、次元削減を用いて大きなデータを取り扱うために大規模並列処理及び分散計算パラダイムを用いる。
【0047】
時系列は、時刻、曜日及び通日季節性を含む少なくとも3つのレベルにおいて、かつ予定されたデマンドレスポンス(DR)イベントに対する顧客価格感度に関して多季節性である。DROMS−RTは、全てのプログラムにわたる全てのDRリソースの統一見解を提供し、これらのリソースを最適に給電することによって、システムを大幅に効率的にする。この効率利得は顧客に対する電気料金を下げ、その技術の採用を更に促進することになり、強力な正のフィードバックループをもたらす。
【0048】
図1は、本発明の一実施形態による、リアルタイムのデマンドレスポンス最適化及び管理システムの動作を示す概略図である。図1を参照すると、リアルタイムのデマンドレスポンス最適化及び管理システム(DROMS−RT)100が提供される。システム100は、予測エンジン104と、ベースラインエンジン106と、リソースモデラー108と、オプティマイザー110と、給電エンジン112とを備える。システム100は、一方では公益事業者のバックエンドデータシステム102に、他方では顧客エンドポイント114に結合される。
【0049】
そのシステムは、顧客エンドポイントに概ねリアルタイムのDRイベント及び価格信号を与え、利用可能なDRリソースを最適に管理する。システム100内のDRリソースモデラー(DRM)108は、利用可能なDRリソース、そのタイプ、その場所、及び応答時間、ランプ時間等の他の関連する特性を全て追跡する。予測エンジン(FE)104は、DRリソースモデラー108から利用可能なリソースのリストを入手する。予測エンジン104の主眼は、システム100に接続される個々の負荷に関する総負荷及び利用可能な負荷制限の短期予測を実行することにある。オプティマイザー110は、利用可能なリソースと、DRリソースモデラー108からの全ての制約と、予測エンジン104からの個々の負荷及び負荷制限の予測並びに誤差分布とを取り込み、所与のコスト関数のもとでのデマンドレスポンスの最適な給電を決定する。ベースラインエンジン106は信号処理技法を用いて、非常に大きな基礎信号の背景の中で小さな系統的負荷制限であっても識別する。システム100は、顧客エンドデバイスからライブデータフィードを受信するために一方の側において顧客データフィード114に結合される。そのシステムは別の側において公益事業者データフィード102に結合され、公益事業者データフィード102からのデータは、予測モデル及び最適化モデルを較正し、デマンドレスポンスイベントを実行するために与えられる。システム100は給電エンジン112を有し、給電エンジンは、決定を下すのを助け、これらのリソース固有の確率論的モデルを用いて、デマンドレスポンスからISO入札を生成するために顧客のポートフォリオにわたってデマンドレスポンス信号を発送するか、又は通過した入札若しくは配電網の他の制約に基づいて、顧客にデマンドレスポンス信号を最適に発送する。そのシステムは、ベースラインエンジン106に接続される顧客/公益事業者インターフェース116を使用し、そのインターフェースは、システムと顧客又は公益事業者との間のインターフェースを提供する。
【0050】
図2は、本発明の一実施形態による、全ての利用可能なDRプログラムのもとでの利用可能な需要重視のリソースを示すユーザーインターフェースである。実際には、当然、フィードのうちの幾つかはいつでも、又はリアルタイムに利用可能でない場合がある。これらの場合に、予測エンジン104は、「オフラインで」、又は部分的なデータフィードを用いて動作することもできる。システム100の目標は、顧客エンドポイントに概ねリアルタイムにDRイベントと価格信号とを与え、利用可能なデマンドレスポンスリソースを最適に管理することである。
【0051】
図3は、本発明の一実施形態による、全ての利用可能なDRプログラムのもとでの利用可能な需要重視のリソースと、個々の顧客場所における種々のDRイベントへの参加の履歴とを示すユーザーインターフェースである。
【0052】
DRリソースモデラー108は、イベントへの参加又はイベントの完了によって影響を受けるリソースの利用可能性を絶えず更新する。また、DRリソースモデラー108は、通知時間要件、特定の期間内のイベント数、及び連続的なイベント数のような各リソースに関連付けられる制約も監視する。また、DRリソースモデラー108は、顧客の視点からデマンドレスポンスイベントに参加するのにどのリソースがより望ましいかに関する「負荷順序」を決定するユーザー優先順位と、リソースがイベントへの参加を受け入れる契約期間及び価格とを監視することもできる。また、デマンドレスポンスリソースモデラー108は、クライアントが「オンライン」である(すなわち、リソースとして利用可能である)か、又はそのイベントを断ったかを判断するために、クライアントからデータフィードを入手する。
【0053】
図4は、本発明の一実施形態による、個々の顧客負荷及び集計された電力負荷に対する予測を示すユーザーインターフェースである。予測エンジン104は複数の明示的及び暗黙的パラメーターを考慮に入れて、機械学習(ML)技法を適用して、短期負荷及び制限予測と、これらの予測に関連付けられる誤差分布とを導出する。予測エンジン104は、ベースラインエンジン106にベースラインサンプル及び誤差分布を与える。さらに、ベースラインエンジン106は、実際の電力消費量データである、メーターからのデータフィードを入手する。
【0054】
予測エンジン104は、BEエンジン106にベースラインサンプル及び誤差分布を与える。BEエンジン106は、信号処理技法を用いて、非常に大きな基礎信号の背景の中で小さな系統的負荷制限であっても識別し、1組の顧客が全て負荷制限に関する契約上の義務を満たしているか否かを検証する。BE106は、「イベント検出」アルゴリズムを用いて、その負荷が実際にDRイベントに関与したか否かを判断し、関与している場合には、このイベントに起因する需要削減が何であったかを判断する。BEエンジン106は、予測エンジン(FE)104にデータをフィードバックし、このデータを用いてベースライン予測を改善できるようにする。また、予測エンジン104は、DRイベント提案に対してクライアントデバイスが行いつつある決定のタイプを暗黙的に学習することによって、負荷優先順位についてデマンドリソースモデラー(DRM)108を更新することもできる。
【0055】
最適化エンジン(OE)110は、利用可能なリソースと、DRM(デマンドリソースモデラー)108からの全ての制約と、FE104からの個々の負荷及び負荷制限の予測並びに誤差分布とを取り込み、所与のコスト関数のもとでのDRの最適な給電112を決定する。OE110は、コスト、信頼性、負荷優先順位、GHG又はその加重和のような種々のコスト関数を組み込むことができ、1日前及び概ねリアルタイムの計画対象期間を同時に網羅することができる所与の計画対象期間にわたって最適な給電決定を行うことができる。システム100は、ピーク負荷管理、リアルタイムバランシング、規制及び他の付帯的サービスのような、配電網の要求を満たすのに最も適しているDRリソースの組み合わせを自動的に選択することができる。また、OE110を用いて、DRM108デマンドレスポンスリソースモジュールからの情報と、外部から供給することができる卸売市場価格予測とを前提として卸売市場に対する入札を生成することもできる。
【0056】
給電エンジン112は、送電網に付帯的サービスを提供するのに適した時間枠内で最適なデマンドレスポンス(DR)サービスを提供する。
【0057】
図5は、データのサイズに関する迅速な簡易計算である。図5を参照すると、DROMS−RT予測エンジン(FE)106は、個々の顧客負荷と、個々の顧客の予測の和に基づく集計された電力負荷との短期予測を生成する。個々の顧客データを利用できることは、より正確な結果を提供するはずではあるが、大量のデータは、注目すべき工学的課題を生み出す。データサイズに関する迅速な簡易計算は、数百万台のスマートメーターが15分間隔でデータを収集するだけで、データが数ペタバイトにまで増大する可能性があることを示す。
【0058】
図6は、本発明の一実施形態による、動的DRリソースモデル入力と、動的DRリソースのポートフォリオとを示す。その図は、動的デマンドレスポンスリソースモデル(負荷ごとに固有)604に入力される動的デマンドレスポンスリソースモデル602への種々の入力と、公益事業者/ISO信号ごとに擬似発電を生成するためにリアルタイムのデマンドレスポンス最適化及び管理システムによって制御される動的デマンドレスポンスリソースのポートフォリオ606とを示す。
【0059】
DRリソースモデル604は、現在の条件及び種々の高度な通知要件に基づいて変化する動的手段である。DROMS−RT内のDRリソースモデラー(DRM)108は、利用可能なDRリソース、そのタイプ、その場所、及び応答時間、ランプ時間等の他の関連する特性を全て追跡する。DRM108は、通知時間要件、特定の期間内のイベント数、連続的なイベント数のような各リソースに関連付けられる制約も監視する。また、DRM108は、顧客の視点からDRイベントに参加するのにどのリソースがより望ましいかに関する「負荷順序」を決定するユーザー優先順位と、リソースがイベントへの参加を受け入れる契約期間及び価格とを監視することもできる。また、DRM108は、クライアントが「オンライン」である(すなわち、リソースとして利用可能である)か否か、及びそのイベントを断ったか否かを判断するために、クライアントからデータフィードを入手する。
【0060】
リソースモデラー108からの出力は予測エンジン104に供給される。予測エンジン104は、利用可能なリソース及び関与する負荷のリストに基づいてDROMS−RTに接続される負荷ごとの総負荷及び利用可能な負荷制限の短期予測を実行する。DROMS−RT100は、全てのプログラムにわたる全てのDRリソースの統一見解を提供し、これらのリソースを最適に給電することによって、システムを大幅に効率的にする。この効率利得は顧客に対する電気料金を下げ、その技術の採用を更に促進することになり、強力な正のフィードバックループをもたらす。
【0061】
過去の参加からの履歴時系列データを用いて、時刻、天候及び価格信号を前提として、その顧客に対する制限容量、ランプ時間及びリバウンド効果を予測することができる、顧客ごとの自己較正モデルを構築する。
【0062】
動的リソースのポートフォリオは、公益事業者ISO信号ごとに擬似発電を生成するためにDROMS−RTによって制御される。DROMS−RT負荷予測モデルは、顧客固有の挙動を考慮に入れ、負荷を高価格の時間から低価格の時間にシフトするために顧客が用いることができる特定の方策を用いることに起因して、負荷プロファイルの変化を予測することができる。そのような方策は、より高い価格のイベント中に使用量を削減するために、高価格の予想時に建物を予冷することを含むことができる。そのような方策は、個々の顧客の負荷時系列から暗に「学習される」。また、DROMS−RT負荷予測アルゴリズムは、顧客負荷データを監視することによって、高価格イベントが相次いで繰返し発生するときに、又は高価格イベントが長すぎる場合に、顧客疲労の影響を予測することもできる。また、個々の負荷予測を利用できることは、数多くの異なるボトムアップデータ源を組み合わせることによって、システムレベルの負荷予測の全体精度も改善する。
【0063】
正確なリアルタイム予測のための本発明のシステム100は、コスト効率が良く、信頼性があり、安定しており、IPに基づく制御及び通信遠隔測定デバイスにおいて適用することができ、個人住宅、共同住宅、事務所、工業及び実世界の応用形態において用いることができる。さらに、本発明は、高耐久化デバイスの最近の進歩と組み合わせて、遠隔測定デバイスの価格を500ドル未満まで下げることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6