特許第6236592号(P6236592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236592コーティング液貯蔵体、コーティング液貯蔵体の製造方法、コーティング液貯蔵用基材およびコーティング皮膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6236592
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】コーティング液貯蔵体、コーティング液貯蔵体の製造方法、コーティング液貯蔵用基材およびコーティング皮膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20171120BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20171120BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20171120BHJP
   C09D 183/02 20060101ALI20171120BHJP
   B65D 75/04 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B05C1/02 101
   B05D1/28
   B05D7/24 302Y
   B05D7/24 303E
   C09D183/02
   B65D75/04
【請求項の数】21
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-24591(P2017-24591)
(22)【出願日】2017年2月14日
【審査請求日】2017年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-115813(P2016-115813)
(32)【優先日】2016年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595016440
【氏名又は名称】株式会社アイセル
(73)【特許権者】
【識別番号】513260959
【氏名又は名称】株式会社G−POWER
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【弁理士】
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】室川 敏治
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−308841(JP,A)
【文献】 特開2006−219538(JP,A)
【文献】 特開2003−170106(JP,A)
【文献】 特開2005−188732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00− 3/20
B32B 1/00− 43/00
C09D 1/00− 10/00,
101/00−201/10
C03C 15/00− 23/00
B05D 1/00− 7/26
B65D 75/04
D06M 13/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上50重量%以下のナイロンとからなるマイクロファイバー(ポリエステルとナイロンとの総和は100重量%)を少なくとも主成分として含むシート状の基材と、
上記基材に含浸された、30重量%以上70重量%以下のジブチルエーテルと30重量%以上70重量%以下のポリシリケートとを含み、ジブチルエーテルとポリシリケートとの総和が100重量%を超えないコーティング液と、
上記コーティング液が含浸された上記基材を密封するアルミニウムパックと、
を有するコーティング液貯蔵体。
【請求項2】
上記マイクロファイバーは60重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上40重量%以下のナイロンとからなる請求項1記載のコーティング液貯蔵体。
【請求項3】
上記マイクロファイバーは68重量%以上72重量%以下のポリエステルと28重量%以上32重量%以下のナイロンとからなる請求項1記載のコーティング液貯蔵体。
【請求項4】
上記コーティング液は、40重量%以上60重量%以下のジブチルエーテルと40重量%以上60重量%以下のポリシリケートとを含む請求項1〜3のいずれか一項記載のコーティング液貯蔵体。
【請求項5】
上記ポリシリケートはエチルポリシリケートである請求項1〜4のいずれか一項記載のコーティング液貯蔵体。
【請求項6】
50重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上50重量%以下のナイロンとからなるマイクロファイバー(ポリエステルとナイロンとの総和は100重量%)を少なくとも主成分として含むシート状の基材に、30重量%以上70重量%以下のジブチルエーテルと30重量%以上70重量%以下のポリシリケートとを含み、ジブチルエーテルとポリシリケートとの総和が100重量%を超えないコーティング液を含浸させる工程と、
上記コーティング液が含浸された上記基材をアルミニウムパックに密封する工程と、
を有するコーティング液貯蔵体の製造方法。
【請求項7】
上記マイクロファイバーは60重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上40重量%以下のナイロンとからなる請求項6記載のコーティング液貯蔵体の製造方法。
【請求項8】
上記マイクロファイバーは68重量%以上72重量%以下のポリエステルと28重量%以上32重量%以下のナイロンとからなる請求項6記載のコーティング液貯蔵体の製造方法。
【請求項9】
上記コーティング液は、40重量%以上60重量%以下のジブチルエーテルと40重量%以上60重量%以下のポリシリケートとを含む請求項6〜8のいずれか一項記載のコーティング液貯蔵体の製造方法。
【請求項10】
上記ポリシリケートはエチルポリシリケートである請求項6〜9のいずれか一項記載のコーティング液貯蔵体の製造方法。
【請求項11】
30重量%以上70重量%以下のジブチルエーテルと30重量%以上70重量%以下のポリシリケートとを含み、ジブチルエーテルとポリシリケートとの総和が100重量%を超えないコーティング液を含浸させて貯蔵するシート状のコーティング液貯蔵用基材であって、
50重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上50重量%以下のナイロンとからなるマイクロファイバー(ポリエステルとナイロンとの総和は100重量%)を少なくとも主成分として含むことを特徴とするコーティング液貯蔵用基材。
【請求項12】
上記マイクロファイバーは60重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上40重量%以下のナイロンとからなる請求項11記載のコーティング液貯蔵用基材。
【請求項13】
上記マイクロファイバーは68重量%以上72重量%以下のポリエステルと28重量%以上32重量%以下のナイロンとからなる請求項11記載のコーティング液貯蔵用基材。
【請求項14】
上記コーティング液は、40重量%以上60重量%以下のジブチルエーテルと40重量%以上60重量%以下のポリシリケートとを含む請求項11〜13のいずれか一項記載のコーティング液貯蔵用基材。
【請求項15】
50重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上50重量%以下のナイロンとからなるマイクロファイバー(ポリエステルとナイロンとの総和は100重量%)を少なくとも主成分として含むシート状の基材に、30重量%以上70重量%以下のジブチルエーテルと30重量%以上70重量%以下のポリシリケートとを含み、ジブチルエーテルとポリシリケートとの総和が100重量%を超えないコーティング液を含浸させたものを、被コーティング物のコーティング面に接触させて上記コーティング液を塗布する工程を有するコーティング皮膜の製造方法。
【請求項16】
上記マイクロファイバーは60重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上40重量%以下のナイロンとからなる請求項15記載のコーティング皮膜の製造方法。
【請求項17】
上記マイクロファイバーは68重量%以上72重量%以下のポリエステルと28重量%以上32重量%以下のナイロンとからなる請求項15記載のコーティング皮膜の製造方法。
【請求項18】
上記コーティング液は、40重量%以上60重量%以下のジブチルエーテルと40重量%以上60重量%以下のポリシリケートとを含む請求項15〜17のいずれか一項記載のコーティング皮膜の製造方法。
【請求項19】
上記被コーティング物の上記コーティング面に上記コーティング液を塗布した後、上記コーティング液に定着液を接触させることにより上記コーティング液に含まれるケイ素化合物をガラス化する工程をさらに有する請求項15〜18のいずれか一項記載のコーティング皮膜の製造方法。
【請求項20】
不織布を少なくとも主成分として含む基材に上記定着液を含浸させたものを、上記コーティング面に塗布された上記コーティング液に接触させることにより上記コーティング液に上記定着液を接触させる請求項19記載のコーティング皮膜の製造方法。
【請求項21】
上記ポリシリケートはエチルポリシリケートである請求項15〜20のいずれか一項記載のコーティング皮膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コーティング液貯蔵体、コーティング液貯蔵体の製造方法、コーティング液貯蔵用基材およびコーティング皮膜の製造方法に関し、例えば、スマートフォンのディスプレイの表面に保護用のコーティングを行うのに用いて好適なコーティング液貯蔵体、その製造方法、そのコーティング液の貯蔵に用いて好適なコーティング液貯蔵用基材およびこのコーティング液貯蔵体を用いたコーティング皮膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンなどの携帯電話機においては、ディスプレイの表面に保護用のコーティングを行った上で使用されることが多い(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−196748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、何らかの原因によりディスプレイの表面の保護用コーティング皮膜に傷が付いたり剥がれたりした時には、ユーザーが保護用コーティング皮膜の修復を行うことは困難であり、そのまま使用するか、携帯電話機を買い換えるしかなかった。
【0005】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、ユーザーなどが、携帯電話機のディスプレイなどの、保護用コーティングを行う各種の物品の表面に容易にシリカガラスコーティングを行うことができ、しかも適度な柔軟性も有していて塗布時の効率が高く、十分な量のコーティング液を貯蔵することができるコーティング液貯蔵体、このコーティング液貯蔵体の製造方法、このコーティング液貯蔵体に用いられるコーティング液貯蔵用基材およびこのコーティング液貯蔵体を用いたコーティング皮膜の製造方法を提供することである。
【0006】
この発明が解決しようとする他の課題は、常温で保存可能なコーティング液貯蔵体、このコーティング液貯蔵体の製造方法、このコーティング液貯蔵体に用いられるコーティング液貯蔵用基材およびこのコーティング液貯蔵体を用いたコーティング皮膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は、
マイクロファイバーを少なくとも主成分として含む基材と、
上記基材に含浸された、ジブチルエーテルとケイ素化合物とを含むコーティング液と、
を有するコーティング液貯蔵体である。
【0008】
マイクロファイバーは、好適には、ポリエステルとポリアミドとからなり、あるいは、100重量%のポリエステルからなる。ポリアミドには、大別して脂肪族ポリアミドと全芳香族ポリアミド(アラミド)とがあるが、柔軟性を重視する場合は好適には脂肪族ポリアミドが用いられる。脂肪族ポリアミドはナイロンと総称されるものが代表的である。ナイロンは、基本的にはどのようなものであってもよいが、具体的には、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などが挙げられる。ジブチルエーテルは常温で揮発性が高いが、マイクロファイバーの組成の選択により、コーティング液貯蔵体の常温保存も可能である。また、コーティング液が含浸された基材をコーティング面に接触させることで基材からコーティング液を染み出させて塗布するような使用方法では、基材の柔軟性が高いことが望まれる。このように、コーティング液貯蔵体の常温保存を可能とし、高い柔軟性も確保する観点からは、マイクロファイバーは、好適には、50重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上50重量%以下のポリアミドとからなり、より好適には、60重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上40重量%以下のポリアミドとからなり、さらに好適には、68重量%以上72重量%以下のポリエステルと28重量%以上32重量%以下のポリアミドとからなり、例えば70重量%のポリエステルと30重量%のポリアミドとからなる。100重量%のポリエステルからなるマイクロファイバーでも、同様な効果を得ることができる。基材の形状および大きさは、特に限定されず、含浸させるコーティング液の量、基材を容器に密封する場合は使用する容器の形状および大きさなどに応じて適宜選ばれるが、薄型容器を使用する場合には、シート状でその薄型容器中に収まる大きさに選ばれる。
【0009】
ジブチルエーテルとケイ素化合物とを含むコーティング液は、好適には、30重量%以上70重量%以下のジブチルエーテルと30重量%以上70重量%以下のケイ素化合物とを含み、より好適には、40重量%以上60重量%以下のジブチルエーテルと40重量%以上60重量%以下のケイ素化合物とを含み、例えば、50重量%以上53重量%以下のジブチルエーテルと47重量%以上50重量%以下のケイ素化合物とを含み、いずれの場合も、ジブチルエーテルとケイ素化合物との総和は100重量%を超えない。ケイ素化合物は、コーティングに要求される機能に応じて適宜選択されるが、一般的にはポリシリケートが用いられ、好適には、エチルポリシリケートが用いられる。このコーティング液を用いることでシリカガラスのコーティングを行うことができる。
【0010】
コーティング液は、必要に応じて、ジブチルエーテルおよびケイ素化合物以外の物質を含むこともあり、例えば、コーティング皮膜に抗菌性を持たせる場合には抗菌剤を含む。抗菌剤は特に限定されず、コーティング皮膜に要求される性能に応じて従来公知のものの中から適宜選択される。例えば、コーティング皮膜に高い透明性が要求される場合には、透明性を阻害しない抗菌剤を用いる。抗菌剤は、天然抗菌剤であっても合成抗菌剤であってもよい。
【0011】
典型的には、コーティング液貯蔵体は、コーティング液が含浸された基材を密封する容器をさらに有する。すなわち、コーティング液が含浸された基材は容器に密封される。この容器は、コーティング液に含まれるジブチルエーテルを空気や光などから保護し、内面がジブチルエーテルと反応しない材質で形成されているものであれば、特に限定されず、コーティング液貯蔵体の用途などに応じて形状、材質、大きさなどが適宜選択される。取り扱い、運搬の容易さ、保管のしやすさなどの観点から、容器は、好適には、薄型容器、例えばアルミニウムパックである。
【0012】
また、この発明は、
マイクロファイバーを少なくとも主成分として含む基材に、ジブチルエーテルとケイ素化合物とを含むコーティング液を含浸させる工程と、
を有するコーティング液貯蔵体の製造方法である。
【0013】
このコーティング液貯蔵体の製造方法は、典型的には、コーティング液が含浸された基材を容器に密封する工程をさらに有する。
【0014】
また、この発明は、
ジブチルエーテルとケイ素化合物とを含むコーティング液を含浸させて貯蔵するコーティング液貯蔵用基材であって、
マイクロファイバーを少なくとも主成分として含むことを特徴とするコーティング液貯蔵用基材である。
【0015】
また、この発明は、
マイクロファイバーを少なくとも主成分として含む基材に、ジブチルエーテルとケイ素化合物とを含むコーティング液を含浸させたものを、被コーティング物のコーティング面に接触させて上記コーティング液を塗布する工程、
を有するコーティング皮膜の製造方法である。
【0016】
このコーティング皮膜の製造方法は、被コーティング物のコーティング面にコーティング液を塗布した後、コーティング液に定着液を接触させることによりコーティング液に含まれるケイ素化合物をガラス化する工程をさらに有する。ここで、定着液は、ケイ素化合物との反応によりガラス化を進行させるためのものであり、使用するケイ素化合物に応じて適宜選択されるが、例えば、水を主成分とするもの、例えば水(例えば、水道水や精製水など)が用いられる。コーティング皮膜に抗菌性を持たせる場合には、コーティング液に抗菌剤を含ませてもよいが、この定着液に抗菌剤を含ませてもよい。コーティング液に定着液を接触させる方法は、基本的にはどのようなものであってもよく、必要に応じて選ばれるが、好適には、不織布を主成分として含む基材に定着液を含浸させたものを、コーティング面に塗布されたコーティング液に接触させることによりコーティング液に定着液を接触させる。この不織布を主成分として含む基材の形状は、特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、例えばシート状に選ばれる。不織布の原材料としては、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維などが挙げられ、具体例を挙げると、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン、アクリル、ビニロンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。被コーティング物は、特に限定されず、基本的にはどのようなものであってもよいが、例えば、ディスプレイを有する各種の電子機器、例えば、スマートフォンやタブレット端末などのディスプレイ、さらには美術工芸品などであってもよい。
【0017】
上記のコーティング液貯蔵体の製造方法、コーティング液貯蔵用基材およびコーティング皮膜の製造方法の発明においては、その性質に反しない限り、上記のコーティング液貯蔵体に関連して説明したことが成立する。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ユーザーなどが、携帯電話機のディスプレイなどの、保護用コーティングを行う各種の物品の表面に容易にシリカガラスコーティングを行うことができ、しかも適度な柔軟性も有していて塗布時の効率が高く、十分な量のコーティング液が貯蔵されたコーティング液貯蔵体を実現することができる。また、マイクロファイバーの組成の選択により、常温保存が可能なコーティング液貯蔵体を実現することもできる。そして、このコーティング液貯蔵体を用いて被コーティング物のコーティング面に容易にシリカガラスコーティングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施の形態によるアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体を示す正面図および断面図である。
図2】第2の実施の形態によるコーティング皮膜の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。
【0021】
〈第1の実施の形態〉
[コーティング液貯蔵体]
図1AおよびBはアルミニウムパック型のコーティング液貯蔵体10を示し、図1Aは正面図、図1B図1AのB−B線に沿っての断面図である。図1AおよびBに示すように、このコーティング液貯蔵体10は、長方形または正方形の薄型のアルミニウムパック11の内部に、コーティング液が含浸された長方形または正方形のシート状の基材12が密封されている。アルミニウムパック10の外周部11aは両面シールされていて密封されている。
【0022】
基材12は、マイクロファイバーを少なくとも主成分として含み、例えばこのマイクロファイバーのみからなる。マイクロファイバーは、例えば、ポリエステルとポリアミドとからなり、あるいは、100重量%のポリエステルからなる。マイクロファイバーは、常温保存を可能とし、優れた柔軟性も得るためには、好適には、50重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上50重量%以下のポリアミドとからなり、より好適には、60重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上40重量%以下のポリアミド、さらに好適には、65重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上35重量%以下のポリアミド、最も好適には、68重量%以上72重量%以下のポリエステルと28重量%以上32重量%以下のポリアミドとからなる(ポリエステルとポリアミドとの総和で100重量%)。
【0023】
基材12に含浸されたコーティング液は、ジブチルエーテルとケイ素化合物とを含み、好適には、30重量%以上70重量%以下のジブチルエーテルと30重量%以上70重量%以下のケイ素化合物とを含み、より好適には、40重量%以上60重量%以下のジブチルエーテルと40重量%以上60重量%以下のケイ素化合物とを含み、例えば、50重量%以上53重量%以下のジブチルエーテルと47重量%以上50重量%以下のケイ素化合物とを含む(ジブチルエーテルとケイ素化合物との総和は100重量%を超えない)。コーティング液には、必要に応じて、例えば抗菌剤を含ませる。抗菌剤は、天然抗菌剤としては、例えば、β−ラクタム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、リンコマイシン系、クロラムフェニコール系、マクロライド系、ケトライド系、ポリペプチド系、グリコペプチド系のものが挙げられ、合成抗菌剤としては、例えば、ピリドンカルボン酸(キノロン)系、ニューキノロン系、オキサゾリジノン系、サルファ剤系のものが挙げられる。β−ラクタム系抗菌剤としては、ペニシリンGなどのペニシリン系、アンピシリン・クロキサシリンなどの複合ペニシリン系、アンピシリン・スルバクタムなどのβラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系、セファゾリンなどのセフェム系、セフォペラゾン・スルバクタムなどのβラクタマーゼ阻害剤配合セフェム系、イミペネム・シラスタチンなどのカルバペネム系、アズトレオナムなどのモノバクタム系、ファロペネムなどのペネム系などが挙げられる。アミノグリコシド系抗菌剤としては、カナマイシン、ストレプトマイシンなどが挙げられる。リンコマイシン系抗菌剤としては、リンコマイシン、クリンダマイシンなどが挙げられる。ホスホマイシン系抗菌剤としては、ホスホマイシンが挙げられる。テトラサイクリン系抗菌剤としては、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリンなどが挙げられる。クロラムフェニコール系抗菌剤としては、クロラムフェニコールなどが挙げられる。マクロライド系抗菌剤としては、エリスロマイシンなどの14員環マクロライド、アジスロマイシンなどの含窒素15員環マクロライド、ジョサマイシンなどの16員環マクロライドなどが挙げられる。ケトライド系抗菌剤としては、テリスロマイシンなどが挙げられる。ポリペプチド系抗菌剤としては、コリスチンなどが挙げられる。グリコペプチド系抗菌剤としては、バンコマイシンなどが挙げられる。ストレプトグラミン系抗菌剤としては、キヌプリスチン・ダルホプリスチンなどが挙げられる。キノロン系抗菌剤としては、ナリジクス酸などのピリドンカルボン酸系などが挙げられる。ニューキノロン系抗菌剤としては、ノルフロキサシンなどの第3世代キノロン フルオロキノロンなど、スパルフロキサシンなどの第4世代キノロン エイトメトキシキノロンなどが挙げられる。サルファ剤系抗菌剤としては、ジアフェニルスルホンなどが挙げられる。オキサゾリジノン系抗菌剤としては、リネゾリドなどが挙げられる。抗菌剤としては、上記のほかに、ポリアミノプロビルビグアナイドを用いることもできる。
【0024】
アルミニウムパック11としては、従来公知のものを用いることができる。
【0025】
[コーティング液貯蔵体の製造方法]
まず、必要な大きさのシート状の基材12を用意する。
【0026】
次に、基材12の片面にコーティング液を塗布したり、容器に入れられたコーティング液に基材12を浸漬したり、容器に基材12を入れ、コーティング液を注入して基材12に接触させたりすることにより、基材12にコーティング液を含浸させる。
【0027】
基材12にコーティング液を含浸させた後、アルミニウムパック11に使用するアルミニウムシート上にこの基材12を載せ、その上からこのアルミニウムシートと同じ形状の別のアルミニウムシートを載せ、これらのアルミニウムシートの外周部を両面シールで密封する。あるいは、別の方法として、三方が密封されたアルミニウムパック用の袋の中に基材12を入れ、スポイトなどによりコーティング液をこの袋の中に注入し、この袋の口から内部の空気を押し出した後、その口をシーラーで密封する。コーティング液は袋の中で基材12の内部に吸い込まれて含浸される。
【0028】
以上により、アルミニウムパック型の薄型のコーティング液貯蔵体10が製造される。
【0029】
[実施例1]
基材12として、70重量%のポリエステルと30重量%のナイロンとからなる市販のマイクロファイバークロスを用いた。マイクロファイバークロスの大きさは4cm×3cm、厚さは0.6mmである。
【0030】
コーティング液として、50重量%のジブチルエーテルと50重量%のエチルポリシリケートとからなるものを用いた。
【0031】
三方が密封された市販のアルミニウムパック用の袋の中にマイクロファイバークロスを入れた後、スポイトにより1mlのコーティング液をこの袋の中に注入した。
【0032】
次に、この袋の口から内部の空気を押し出した後、その口をシーラーで密封した。
【0033】
以上により、アルミニウムパック型コーティング液貯蔵体を製造した。
【0034】
このアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体を常温で半年間保存したところ、特に異常は見られず、開封して中身を確認しても、ジブチルエーテルのガス化などは観察されなかった。すなわち、ジブチルエーテルは揮発性が高く、常温では直ぐに揮発してしまうにもかかわらず、このアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体に含まれるコーティング液含浸マイクロファイバークロスは、ジブチルエーテルがガス化することなく、少なくとも半年間は常温保存が可能であることが分かった。また、このコーティング液含浸マイクロファイバークロスは優れた柔軟性を有している。さらに、このコーティング液含浸マイクロファイバークロスは4cm×3cm、厚さは0.6mmで体積が小さいにもかかわらず、1mlあるいはそれ以上のコーティング液を貯蔵することができる。1mlのコーティング液により、例えば、通常のスマートフォンのディスプレイの表面を8回コーティング可能である。
【0035】
[実施例2]
基材12として、布製眼鏡拭きとして用いられる市販の85重量%のポリエステルと15重量%のナイロンとからなるマイクロファイバークロスを用い、このマイクロファイバークロスに実施例1と同様にしてコーティング液を含浸させ、アルミニウムパックシールを行った。
【0036】
このアルミニウムパックでは、コーティング液含浸マイクロファイバークロスの柔軟性およびコーティング液の含浸量は十分であるが、常温保存した場合にはコーティング液に含まれているジブチルエーテルのガス化が観察された。
【0037】
[実施例3]
基材12として、布製眼鏡拭きとして用いられる市販の90重量%のポリエステルと10重量%のナイロンとからなるマイクロファイバークロスを用い、このマイクロファイバークロスに実施例1と同様にしてコーティング液を含浸させ、アルミニウムパックシールを行った。
【0038】
このアルミニウムパックでは、コーティング液含浸マイクロファイバークロスの柔軟性およびコーティング液の含浸量は十分であるが、常温保存した場合にはコーティング液に含まれているジブチルエーテルのガス化が観察された。
【0039】
[実施例4]
基材12として、市販の100重量%ポリエステルからなるマイクロファイバークロスを用い、このマイクロファイバークロスに実施例1と同様にしてコーティング液を含浸させ、アルミニウムパックシールを行った。
【0040】
このアルミニウムパックでは、コーティング液含浸マイクロファイバークロスの柔軟性およびコーティング液の含浸量は十分であり、常温に一昼夜保存しても、特に異常は見られず、開封して中身を確認しても、ジブチルエーテルのガス化などは観察されなかった。
【0041】
[比較例1]
基材として、眼鏡拭きとして用いられる市販のマイクロタイプの紙製シートを用い、この紙製シートに実施例1と同様にしてコーティング液を含浸させ、アルミニウムパックシールを行った。
【0042】
しかし、このアルミニウムパックでは、紙製シートに含浸させることができるコーティング液の量が少なく、常温保存した場合には短時間で乾燥状態になってしまうことと、紙製シートが硬すぎて塗布時にコーティング面に傷を付ける危険性があることが分かった。
【0043】
[比較例2]
基材としてナイロン100%の布を用い、この布に実施例1と同様にしてコーティング液を含浸させ、アルミニウムパックシールを行った。
【0044】
しかし、このアルミニウムパックでは、ナイロン100%の布の柔軟性が乏しいだけでなく、常温保存した場合にはコーティング液に含まれているジブチルエーテルのガス化が観察された。
【0045】
以上のように、この第1の実施の形態によれば、マイクロファイバーを主成分とする基材12、例えば、ポリエステルとポリアミドとからなるマイクロファイバーあるいは100重量%のポリエステルからなるマイクロファイバーを主成分として含む基材12を用い、この基材12にジブチルエーテルとケイ素化合物とを含むコーティング液、例えば、50重量%以上53重量%以下のジブチルエーテルと47重量%以上50重量%以下のケイ素化合物とを含むコーティング液を含浸させ、このコーティング液が含浸された基材12をアルミニウムパック11に密封していることにより、アルミニウムパック型コーティング液貯蔵体10を実現することができる。また、基材12は適度な柔軟性を有するため、コーティング液が含浸された基材12をコーティング面に接触させることによりコーティング液を染み出させて塗布する使用方法では、塗布の効率の向上を図ることができる。また、特に、マイクロファイバーとして、50重量%以上75重量%以下のポリエステルと25重量%以上50重量%以下のポリアミドとからなるもの、あるいは、100重量%のポリエステルからなるものを用いることにより、常温で長期間保存可能なアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体10を実現することができる。さらに、このアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体10によれば、基材12の単位体積当たり十分な量のコーティング液を貯蔵することができる。また、コーティング液に抗菌剤を含ませることにより、抗菌機能を有するコーティング皮膜を製造することができる。
【0046】
〈第2の実施の形態〉
[コーティング皮膜の製造方法]
第2の実施の形態においては、第1の実施の形態によるアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体10を用いてコーティング皮膜を製造する方法について説明する。
【0047】
図2Aに示すように、まず、被コーティング物100のコーティング面101の汚れ(砂粒、油、水分など)を市販のクリーニングペーパーで拭くことにより除去する。被コーティング物100はどのようなものであってもよいが、例えば、スマートフォンのディスプレイである。
【0048】
次に、アルミニウムパック型コーティング液貯蔵体10を開封し、中身の、コーティング液が含浸された基材12を取り出す。次に、図2Bに示すように、このコーティング液が含浸された基材12をコーティング面101に接触させてコーティング面101の全面を軽く拭く。このとき、軽く拭いた際に基材12が少し圧縮されて基材12に含浸されたコーティング液が染み出ることにより、図2Cに示すように、コーティング面101にコーティング液102を塗布することができる。必要に応じて、その後、例えば、ポリエステルとポリアミド(例えばナイロン)とからなるマイクロファイバーシート、例えば基材12と同一組成のマイクロファイバーシートを軸に巻き付けた丸い棒タオルでコーティング液102を縦横に軽くなぞってムラや塗り残しがないように均一に広げる。なお、コーティング面101の一部だけコーティングを行う場合はその部分だけにコーティング液102を塗布する。
【0049】
次に、図2Dに示すように、コーティング液102上に定着液103を塗布する。必要に応じて、その後、余分な定着液103を拭き取る。定着液103を塗布する方法は特に問わないが、例えば、次のようにすることにより簡単に塗布することができる。すなわち、所定の大きさの不織布シート、例えばアクリル系不織布シートに定着液を含浸させたものをアルミニウムパックに密封したアルミニウムパック型定着液貯蔵体を用意しておく。そして、このアルミニウムパック型定着液貯蔵体を開封し、中身の、定着液が含浸されたアクリル系不織布シートを取り出す。次に、この定着液103が含浸されたアクリル系不織布シートによりコーティング液102を軽くパッティングすることによりコーティング液102上に定着液103を塗布する。一定時間経過後(例えば、数分後)に定着液103によるコーティング液102の定着が終了し、コーティング液102に含まれていたケイ素化合物がガラス化し、シリカガラスが形成される。
【0050】
以上により、図2Eに示すように、被コーティング物100のコーティング面101にシリカガラスからなるコーティング皮膜104が形成される。コーティング液102または定着液103に予め抗菌剤を含ませることにより、抗菌機能を有するコーティング皮膜104を形成することができる。あるいは、コーティング液102の定着後に、抗菌剤を含む抗菌液塗布シートを用いて抗菌液を塗布することにより、コーティング皮膜104に抗菌機能を持たせてもよい。
【0051】
必要に応じて、所望の厚さのコーティング皮膜104が形成されるまで、コーティング液102の塗布、定着液103の塗布および定着の工程を繰り返し行う。
【0052】
[実施例5]
以下の手順でスマートフォンのディスプレイの表面にシリカガラスコーティングを行った。
【0053】
スマートフォンのディスプレイの表面をクリーニングペーパーでクリーニングした。その後、実施例1のアルミニウムパック型コーティング液貯蔵体10を開封し、中身の、コーティング液が含浸された基材12を取り出し、この基材12を用いてディスプレイの表面にコーティング液102を塗布した。その後、コーティング液102を棒タオルで均一に伸ばして広げた。
【0054】
次に、定着液として水を含浸させたアクリル系不織布シートによりコーティング液102の表面を軽くパッティングして定着液103として水を塗布した。定着後3分程度経過すると、シリカガラスコーティング皮膜が形成された。その後、残っている水を拭き取り用マイクロクロスで拭き取った。最後に、乾いた眼鏡拭きでコーティング皮膜の表面を磨いた。
【0055】
以上により、ディスプレイの表面にシリカガラスコーティング皮膜が形成された。
【0056】
こうして形成されたシリカガラスコーティング皮膜の硬度試験を行ったところ、衝撃や傷に強い鉛筆硬度9Hが得られた。また、ディスプレイの表面のガラスに付いた微小な傷も修復された。さらに、このシリカガラスコーティング皮膜の性能は少なくとも1年以上持続した。
【0057】
以上のように、この第2の実施の形態によれば、コーティング液が含浸された基材12を用いることにより、被コーティング物100のコーティング面101に容易にシリカガラスからなるコーティング皮膜104を製造することができる。
【0058】
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0059】
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構成、形状、材料、方法などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、形状、材料、方法などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…コーティング液貯蔵体、11…アルミニウムパック、12…基材、100…被コーティング物、101…コーティング面、102…コーティング液、103…定着液、104…コーティング皮膜
【要約】      (修正有)
【課題】ユーザーなどが、携帯電話機のディスプレイなどの、保護用コーティングを行う各種の物品の表面に容易にシリカガラスコーティングを行うことができ、しかも適度な柔軟性も有していて塗布時の効率が高く、十分な量のコーティング液を貯蔵することができるコーティング液貯蔵体を提供する。
【解決手段】マイクロファイバーを少なくとも主成分として含む基材12と、この基材に含浸された、ジブチルエーテルとケイ素化合物とを含むコーティング液とを有する、コーティング液貯蔵体10。マイクロファイバーは、ポリエステルとポリアミドとからなり、あるいは100重量%のポリエステルからなり、例えば、50〜75重量%のポリエステルと25〜50重量%のポリアミドとからなる、コーティング液貯蔵体10。
【選択図】図1
図1
図2