(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の給紙装置においては、サバキ板の移動制御量を固定されたホームポジションからのモータの回転量として算出するため、給紙ローラやサバキ板の経時変化の影響が考慮されていない。すなわち、給紙ローラやサバキ板が経時変化により磨耗していくと、同じ回転量に対して得られるサバキ圧が徐々に小さくなるため、給紙エラーの頻発を招く虞がある。
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、給紙ローラやサバキ部材の摩耗に関係なくサバキ圧を適正に調整可能な給紙装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の給紙装置は、用紙が積載される給紙板と、用紙束の最上面に圧接して回転し、最上位の用紙を送り出す給紙ローラと、給紙ローラに対向配置され、最上位から2枚目以降の用紙が同時に送り出されたときは1枚ずつに分離するサバキ機構を構成するサバキ部材と、サバキ部材と給紙ローラとの間に生じる圧力をサバキ圧として調整するサバキ圧調整機構と、サバキ圧調整機構の作動によってサバキ圧が
一定のリミット値に達したことを検知するリミット検知機構と、送り出される用紙の厚さに関する情報を含む用紙情報を取得し、リミット検知機構によりサバキ圧がリミット値に達したことが検知されると、
リミット値を起点として用紙情報に応じた分量だけサバキ圧を適正に調整するための調整処理を実行する制御部と、を備える。
【0008】
ここでいう「用紙情報」は、用紙の厚さを示す寸法(数値)であってもよいし、用紙の厚さを算出する情報として折り形(2つ折りや4つ折り等)であってもよい。また、サバキ圧に影響を与える他の情報を含めてもよい。例えば、摩擦係数等を推し量る指標となる用紙の紙質であってもよい。「調整処理」は、サバキ圧そのものを自動的に調整する処理であってもよいし、ユーザにサバキ圧を手動で調整させるための表示処理等、情報の提示処理であってもよい。
【0009】
この態様によると、サバキ圧の調整に際して予めリミット値が設定され、サバキ圧をそのリミット値に一旦到達させた後、そのリミット値を基準に用紙情報に応じた分量だけサバキ圧を適正に調整するための処理が行われる。すなわち、実際に一定のサバキ圧になった状態を基準に調整がなされるようになるため、仮に給紙ローラやサバキ部材が摩耗していたとしても、その現在の状態に応じた適正な調整をすることができる。
【0010】
具体的には、サバキ圧調整機構を駆動するアクチュエータを備えてもよい。制御部は、一連の給紙処理開始ごとの初期調整処理として、サバキ圧調整機構を加圧側に駆動し、それによってリミット検知機構によりサバキ圧がリミット値に達したことが検知されると、サバキ圧調整機構の加圧側への駆動を停止させるとともに、
リミット値を起点としてサバキ圧調整機構を用紙情報に応じた分量だけ減圧側へ駆動するようにアクチュエータを制御してもよい。
【0011】
この態様によれば、サバキ圧の調整が自動的に行われるようになり、ユーザに煩雑な作業を強いる必要がなくなる。また、サバキ圧が過大とならない範囲でリミット値を設定することで、そのアクチュエータの負荷を抑えることができる。その結果、アクチュエータによる消費電力を抑えることができる。またサバキ部材等のサバキ機構を構成する部材の耐久性低下を防止又は抑制することができる。
【0012】
サバキ圧調整機構は、サバキ部材による給紙ローラに対する押圧力を作用させる加圧機構と、アクチュエータの駆動力を加圧機構に伝達するための伝達部材と、伝達部材の変位に応じてサバキ圧が変化するように伝達部材と加圧機構とを作動連携させる連携機構と、を含んでもよい。そして、制御部は、初期調整処理において伝達部材を加圧側に向かって移動させ、リミット検知機構によってサバキ圧がリミット値に達したことが検知されたときに伝達部材の移動を停止させ、その停止位置を起点として伝達部材を用紙情報に応じた分量だけ減圧側へ移動させるようにアクチュエータを制御してもよい。
【0013】
より具体的には、伝達部材は、アクチュエータにより所定の軌道に沿って駆動される第1リンク部材と、第1リンク部材と同方向に移動可能な第2リンク部材とを含んでもよい。加圧機構は、第2リンク部材が加圧側へ移動することにより、サバキ部材を給紙ローラに近づく方向に移動させる昇降機構を含んでもよい。連携機構は、サバキ圧がリミット値以下の状態で第1リンク部材が加圧側へ移動されると、第2リンク部材を第1リンク部材とともに同方向に移動させることにより昇降機構を作動させてもよい。一方、連携機構は、サバキ圧がリミット値に達すると、第1リンク部材がさらに加圧側へ移動される一方で、第2リンク部材の移動を規制することにより昇降機構を非作動としてもよい。リミット検知機構は、第1リンク部材と第2リンク部材との相対変位に基づいてサバキ圧がリミット値に達したことを検知するリミット検知センサであってもよい。
【0014】
この態様によれば、リンク機構を用いた極めて簡単な構成にてサバキ圧調整機構を実現することができる。また、サバキ部材が給紙ローラに接触し、わずかに押し付けられる状態となるところを狙ってリミット値を設定することができる。圧力センサ等を用いる必要がないため、低コストにて安定したリミット検知を行うことが可能となる。
【0015】
なお、リミット検知機構を圧力センサを含める形で構成することもできる。その圧力センサにより検出されたサバキ圧が一定値以上となったときにリミット値に到達したと判定してもよい。あるいは、アクチュエータとしてサバキ圧調整用のモータを設け、そのモータに過負荷がかかって過電流が生じたときにリミット値に到達したと判定してもよい。
【0016】
給紙ローラとサバキ部材との対向部よりも用紙搬送方向下流側に設けられ、用紙の通過を検出する用紙センサを備えてもよい。制御部は、1回の給紙動作につき、その給紙開始以後の所定タイミングから用紙センサが検出状態から非検出状態となるタイミングまでの許容期間として予め設定された判定基準期間を保持し、初期調整処理終了後に連続的な給紙がなされている状態において、その給紙ごとに用紙センサによる検出情報を取得し、判定基準期間を超えてもなお用紙センサが検出状態にある場合にサバキ圧を増加させるようにアクチュエータを駆動する追加調整処理を実行してもよい。
【0017】
ここでいう「給紙開始以後の所定タイミング」は、給紙開始タイミングであってもよいし、給紙開始後の特定のタイミングであってもよい。例えば、用紙センサによる検出開始タイミングとしてもよい。「判定基準期間」は、時間値として設定する判定基準時間としてもよいし、特定の状態変化が発生するまでの期間としてもよい。前者の場合、判定基準時間として、用紙がその搬送方向の長さ分の通過に要する時間を設定してもよい。そして、初期調整処理終了後に連続的な給紙がなされている状態において、用紙センサにより検出が開始されてからその判定基準時間を経過してもなおその用紙センサが検出状態にある場合に追加調整処理を実行してもよい。
【0018】
また後者の場合、用紙センサとして用紙搬送方向下流側に向けて第1用紙センサと第2用紙センサを順次設け、初期調整処理終了後に連続的な給紙がなされている状態において、その給紙ごとに両用紙センサによる検出情報を取得してもよい。そして、給紙を開始してからその用紙の後端が第2用紙センサを通過したことが検知された時点で第1用紙センサが用紙を検知していた場合に追加調整処理を実行してもよい。
【0019】
このように、初期調整処理終了後の次位の用紙の挙動に基づいてサバキ圧を微調整することにより、給紙エラーを未然に防止することが可能となる。
【0020】
給紙ローラとサバキ部材との対向部よりも用紙搬送方向下流側に設けられた軸位置固定の基準ローラと、基準ローラに対向配置されて上流側から搬送されてきた用紙を基準ローラとの間に挟持しつつ下流側へ送り出す一方、軸位置可変に設けられ、基準ローラとの間を用紙が通過した時にその軸位置が用紙の厚さ分だけ変位する測定ローラと、測定ローラの変位を検出する変位センサと、を備えてもよい。制御部は、変位センサの検出結果に基づいて用紙情報を取得してもよい。この態様によれば、変位センサによる実測値に基づいてサバキ圧の調整がなされるため、高精度な調整を実現することが可能となる。
【0021】
さらに、ユーザの操作入力を受け付ける入力装置を備えてもよい。制御部は、ユーザにより入力される用紙の形態情報に基づいて用紙情報を取得してもよい。例えば、ユーザが用紙の折り形(2つ折り、4つ折り、折りなしなど)等を用紙情報として入力し、その折り形等に基づいて推測される用紙の厚さ情報を得るようにしてもよい。
【0022】
本発明の別の態様もまた、給紙装置である。この装置は、用紙が積載される給紙板と、用紙束の最上面に圧接して回転し、最上位の用紙を送り出す給紙ローラと、給紙ローラに対向配置され、最上位から2枚目以降の用紙が同時に送り出されたときは1枚ずつに分離するサバキ機構を構成するサバキ部材と、サバキ部材と給紙ローラとの間に生じる圧力をサバキ圧として調整するサバキ圧調整機構と、ユーザによる調整操作を受け付ける操作部材と、操作部材の操作をサバキ圧調整機構の動作に変換する変換機構と、操作部材がサバキ圧を増加させる方向に操作されることにより、サバキ圧が所定のリミット値に達すると、サバキ圧がさらに上昇することのないように制限をかけるリミッタ機構と、ユーザに伝達すべき情報を表示する表示装置と、送り出される用紙の厚さに関する情報を含む用紙情報を取得し、取得した用紙情報に基づいて操作部材により調整すべき調整量を表示装置に表示させる制御部と、を備える。
【0023】
ここでいう「用紙情報」は、用紙の厚さを示す寸法(数値)であってもよいし、用紙の厚さを算出する情報として折り形(2つ折りや4つ折り等)であってもよい。また、サバキ圧に影響を与える他の情報を含めてもよい。例えば、摩擦係数等を推し量る指標となる用紙の紙質であってもよい。
【0024】
この態様によると、サバキ圧の調整のためにその圧力上昇方向に操作部材を操作すると、サバキ圧がリミット値に達したときにその操作が規制される一方、その状態からの調整量が表示される。このため、ユーザは、その調整量の表示にしたがって操作部材を再度操作することにより、サバキ圧を適正値に調整することができる。すなわち、この態様によれば、サバキ圧をそのリミット値に一旦到達させた後、そのリミット値を基準に用紙情報に応じた分量だけサバキ圧を適正に調整することができる。実際に一定のサバキ圧になった状態を基準に調整がなされるため、仮に給紙ローラやサバキ部材が摩耗していたとしても、その現在の状態に応じた適正な調整をすることが可能となる。
【0025】
給紙ローラとサバキ部材との対向部よりも用紙搬送方向下流側に設けられ、用紙の通過を検出する用紙センサを備えてもよい。制御部は、1回の給紙動作につき、その給紙開始以後の所定タイミングから用紙センサが検出状態から非検出状態となるタイミングまでの許容期間として予め設定された判定基準期間を保持し、連続的な給紙がなされている状態において、その給紙ごとに用紙センサによる検出情報を取得し、判定基準期間を超えてもなお用紙センサが検出状態にある場合にサバキ圧を増加させるようユーザを促す誘導表示を行うようにしてもよい。
【0026】
ここでいう「給紙開始以後の所定タイミング」は、給紙開始タイミングであってもよいし、給紙開始後の特定のタイミングであってもよい。例えば、用紙センサによる検出開始タイミングとしてもよい。「判定基準期間」は、時間値として設定する判定基準時間としてもよいし、特定の状態変化が発生するまでの期間としてもよい。前者の場合、判定基準時間として、用紙がその搬送方向の長さ分の通過に要する時間を設定してもよい。そして、サバキ圧の初期調整終了後に連続的な給紙がなされている状態において、用紙センサにより検出が開始されてからその判定基準時間を経過してもなおその用紙センサが検出状態にある場合に誘導表示を行うようにしてもよい。
【0027】
また後者の場合、用紙センサとして用紙搬送方向下流側に向けて第1用紙センサと第2用紙センサを順次設け、初期調整終了後に連続的な給紙がなされている状態において、その給紙ごとに両用紙センサによる検出情報を取得してもよい。そして、給紙を開始してからその用紙の後端が第2用紙センサを通過したことが検知された時点で第1用紙センサが用紙を検知していた場合に誘導表示を行うようにしてもよい。
【0028】
このように、初期調整終了後の次位の用紙の挙動に基づいてユーザにサバキ圧の微調整を促すことにより、給紙エラーを未然に防止することが可能となる。
【0029】
ユーザによる第1の操作を受け付ける第1給紙スイッチと、ユーザによる第2の操作を受け付ける第2給紙スイッチと、を備えてもよい。制御部は、第1給紙スイッチに対して第1の操作がなされたことを契機に連続的な給紙を開始する一方、第2給紙スイッチに対して第2の操作が連続してなされている間にのみ連続的な給紙を実行してもよい。そして、第1の操作ではなく、第2の操作による給紙がなされているときに判定基準期間を超えた検出状態となった場合に誘導表示を行うようにしてもよい。
【0030】
この態様によれば、サバキ圧の初期調整の終了後に第2給紙スイッチの操作を継続しながら誘導表示がなくなるまでサバキ圧を増加させる、という簡単かつ視覚的に分かり易い作業により、手動による微調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、給紙ローラやサバキ部材の摩耗に関係なくサバキ圧を適正に調整可能な給紙装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る丁合装置10の外観を表す斜視図である。丁合装置10は、筐体12の左右に10段ずつの棚が設けられ、左側の棚には給紙トレイ14A〜14Jが設置され、右側の棚には給紙トレイ14K〜14Uが設置されている。左側の最下段の給紙トレイ14Aの下方には、折り用給紙トレイ14Xが設置されている。給紙トレイ14A〜14Xは、筐体12への取付位置や取付方向が異なるが、同一構造を有する。以下の説明においてこれらを特に区別しない場合には「給紙トレイ14」と総称する。
【0034】
筐体12の前面側にはメイン操作パネル16が設けられている。メイン操作パネル16はタッチパネル式の液晶ディスプレイを有し、ユーザが丁合処理のための所定の操作入力を行うことができる。一方、各棚の給紙機構18に対応するようにサブ操作パネル20が設けられている。サブ操作パネル20には、ユーザが給紙処理のための所定の操作入力を行うための複数の操作ボタンが設けられている。その詳細については後述する。
【0035】
図2は、丁合装置10の内部構造を正面側からみた模式図である。丁合装置10は、サブ搬送機構22およびメイン搬送機構24をさらに備える。サブ搬送機構22は各棚の給紙機構18に対応して設けられる。給紙機構18は、給紙トレイ14に積載された用紙束の最上位の用紙を一枚ずつサブ搬送機構22の搬送路に送り出す。
【0036】
サブ搬送機構22は、給紙機構18から送り出された用紙をメイン搬送機構24に送り込む。メイン搬送機構24は、筐体12内に上下方向に延在するように設けられる。メイン搬送機構24は、各サブ搬送機構22から送り込まれた用紙を、単独で、または重ね合わせながら下方へ搬送する。
【0037】
給紙トレイ14および給紙機構18は、筐体12に取り外し可能に装着されている。具体的には、給紙トレイ14は、ユーザによって図示しないロック機構が解除されると、筐体12との係合が解除され、筐体12から取り外すことができるよう構成されている。このような係合方法は公知であるため説明は省略する。
【0038】
丁合装置10は、用紙搬送プレート26、用紙載置プレート28、ストッパ30、折りナイフ32、および一対のローラ34をさらに有する。折り用給紙トレイ14Xには、メイン搬送機構24により搬送される用紙束を内側に挟むように二つ折りされる用紙が積載される。折り用給紙トレイ14Xにも給紙機構18が設けられている。給紙機構18は、折り用給紙トレイ14Xに積載された用紙束の最上位の用紙を一枚ずつ用紙搬送プレート26に送り出す。
【0039】
用紙搬送プレート26は、用紙搬送方向下流側(以下、単に「下流側」という)の端部がメイン搬送機構24の下端よりわずかに左に位置するよう配置される。用紙載置プレート28は、2枚のプレートが間隔を開けて重ね合わさるように設けられている。用紙載置プレート28は、用紙搬送方向上流側(以下、単に「上流側」という)の端部が、メイン搬送機構24の下端よりわずかに右に位置するよう配置される。ストッパ30は、用紙載置プレート28内に導かれた用紙の先端が当接するように配置される。ストッパ30は、モータなどのアクチュエータを作動させることにより、用紙載置プレート28に沿って上流側および下流側に移動可能に構成されている。
【0040】
丁合装置10には、制御部50が設けられている。制御部50は、各種の演算を実行するCPU、各種の制御プログラムを格納するROM、およびデータ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMを有し、丁合装置10の内部に設けられたアクチュエータの作動などを制御する。ユーザは、メイン操作パネル16又はサブ操作パネル20にて各種の設定入力を行うことが可能となっている。制御部50は、こうしてユーザに入力された情報を取得し、取得した情報に応じて丁合装置10の作動を制御する。
【0041】
丁合装置10は、さらにベルト搬送機構36、排出ローラ38、およびスタッカトレイ40を有する。折り用給紙トレイ14Xに積載された用紙に用紙束を挟むようにして丁合する場合、まず折り用給紙トレイ14Xから用紙載置プレート28に向けて用紙が搬送される。メイン搬送機構24によって下方に搬送されながら形成された用紙束は、用紙載置プレート28に搬送された用紙に先端が突き当たる。制御部50は、このタイミングで折りナイフ32を回動させて、その先端を用紙載置プレート28に載置された用紙に突き当て、一対のローラ34に向けて押し付ける。こうして用紙束は、用紙載置プレート28に配置されていた用紙とともにローラ34によって挟持され、用紙載置プレート28に配置されていた用紙が用紙束を挟むように折りたたまれ、ベルト搬送機構36に搬送される。
【0042】
ベルト搬送機構36は、さらに下流に用紙束を搬送する。排出ローラ38は、搬送された用紙束をスタッカトレイ40に排出する。スタッカトレイ40は、筐体12に対して着脱可能に取り付けられており、作成された用紙束が積載され蓄積される。なお、上述のように折紙に用紙束を挟まない場合には、折り用給紙トレイ14Xから用紙は供給されず、メイン搬送機構24によって下方に搬送されながら形成された用紙束は、そのまま一対のローラ34によって挟持されてベルト搬送機構36に搬送される。
【0043】
制御部50は、ユーザがメイン操作パネル16を介して指定した部数(以下、「丁合設定部数」ともいう)にしたがって用紙の丁合処理を実行する。また、制御部50は、丁合処理に先立って給紙機構18によるサバキ圧を適正に調整するための初期調整処理を実行し、丁合処理中においてはサバキ圧を適宜再調整する追加調整処理を実行する。このサバキ圧を調整するための具体的構成および処理の詳細については後述する。
【0044】
次に、サバキ圧調整機構を含む給紙機構18の構成および動作について説明する。
図3〜
図6は、給紙機構およびその周辺の構成を示す図である。
図3は正面図であり、
図4は背面図である。
図5は平面図であり、
図6は右側面図である。ただし、各図においては説明の便宜上、一部の構造の図示を適宜省略している。
【0045】
給紙トレイ14は「給紙板」として機能し、ユーザによりセットされる用紙が積載される。給紙トレイ14が斜めに傾斜するように設置されるため、給紙トレイ14上の用紙は、上位の用紙ほど前方(給紙方向下流側)にずれて位置するよう斜めに捌いた状態で積載される。なお、
図3においては便宜上、用紙がセットされる前の状態が示されている。
【0046】
給紙トレイ14の前方にガイド板41および給紙機構18が設けられている。ガイド板41は、サブ搬送機構22が設けられる横搬送路を構成し、給紙機構18によって送り出される用紙を下方から支持し、メイン搬送機構24に向けてガイドする。ガイド板41は、その両サイドに設けられた一対のフレーム(図示せず)によって支持されている。
【0047】
給紙機構18は、給紙ローラ42、補助給紙ローラ44、サバキ板46等を含む。給紙ローラ42および補助給紙ローラ44は、各々の軸がブラケット48により支持されている。給紙ローラ42は、図示しないモータ(後述の給紙モータ77)により回転駆動される駆動ローラであり、用紙束の最上面に圧接して回転し、最上位の用紙を送り出す。補助給紙ローラ44は、給紙ローラ42とタイミングベルト52を介して接続される従動ローラであり、用紙束の最上面に当接して回転する。ブラケット48が給紙ローラ42と同軸状の支点軸(図示せず)に回動可能に支持されているため、補助給紙ローラ44の高さ位置が用紙束の枚数に応じた位置に適宜調整される。
【0048】
サバキ板46は、「サバキ部材」として機能し、用紙束の最上位から2枚目以降の用紙が同時に送り出されたときは1枚ずつに分離するサバキ機構を構成する。サバキ板46は、給紙ローラ42の下方に対向配置される。サバキ板46は、例えばウレタンゴムにて形成された板状の部材である。サバキ板46の下方には、サバキ板46と給紙ローラ42との間に生じる圧力をサバキ圧として調整するサバキ圧調整機構54が設けられている。サバキ圧調整機構54は、上述した一対のフレームに固定された収容部材55に収容されている。
【0049】
このような構成により、補助給紙ローラ44によって最上位の用紙が給紙ローラ42とサバキ板46との間に送り込まれると、給紙ローラ42がその用紙をさらに下流側に送り出す。この用紙は、給紙ローラ42とサバキ板46との間に適度な圧力にて挟持されつつ送り出される。このとき、給紙ローラ42と用紙との摩擦力とサバキ板46と用紙との摩擦力との差異により、次位以下の用紙の送り出しが防止される。それにより、最上位の1枚の用紙のみが給紙ローラ42とサバキ板46との間を抜けて送り出されるようになる。
【0050】
収容部材55におけるサバキ板46のやや下流側には、タイミングセンサ56が設けられている。タイミングセンサ56は反射型の光センサであり、サバキ圧の低下により次位以下の用紙が給紙機構18の下流側近傍に滞留した場合にこれを検知するためのものである。
【0051】
給紙機構18の下流側に隣接するように重送検知機構60が設けられている。重送検知機構60は、基準ローラ62および変位ローラ64を有する。変位ローラ64は、「測定ローラ」として機能し、基準ローラ62に対して上方から当接する。基準ローラ62の軸は、その両端が上述した一対のフレームに固定されている。一方、変位ローラ64の軸は、レバー部材65の一端側に固定されている。レバー部材65の他端側がフレームに設けられた図示しない支点軸に回動可能に支持されているため、変位ローラ64は、基準ローラ62に対して相対変位可能となっている。レバー部材65の一端部には検知面67が設けられており、フレームにはその検知面67の変位を検出する変位センサ69が設けられている。
【0052】
基準ローラ62の下方には転動ローラ66が設けられている。重送検知機構60の下流側には、サブ搬送機構22を構成する一対の搬送ローラが設けられている。すなわち、搬送上ローラ68および搬送下ローラ70が上下に設けられている。搬送上ローラ68と搬送下ローラ70とは互いに当接可能であり、転動ローラ66は搬送下ローラ70および基準ローラ62のそれぞれに当接する。搬送上ローラ68および搬送下ローラ70は、図示しないモータ(後述する搬送モータ)により駆動される。搬送下ローラ70の駆動力は、転動ローラ66を介して基準ローラ62に伝達される。
【0053】
このような構成により、用紙が基準ローラ62と変位ローラ64との間を通過すると、その用紙の厚み分だけ変位ローラ64の軸位置が上昇する。変位センサ69は、このときの検知面67の上昇量を検出する。なお、レバー部材65が図示しない引きばねにより付勢されているため、用紙が通過していない間はその引きばねの付勢力により、変位ローラ64が基準ローラ62に圧接している。この変位センサ69の検出情報に基づき、用紙の重送が発生したか否かを判定することができる。
【0054】
図3および
図4に示すように、サバキ圧調整機構54は、サバキ板46を支持するサバキベース72と、サバキベース72の下方に設けられた傾斜部材74と、傾斜部材74を給紙ローラ42の回転軸に平行な方向に変位させるリンク機構76と、リンク機構76を駆動するアクチュエータとしての調整モータ78とを含む。本実施形態では、調整モータ78としてDCブラシレスモータを採用するが、変形例においてはステッピングモータ等他のモータであってもよい。サバキベース72は、給紙ローラ42の径方向に平行に延在する本体を有し、その本体の一端部が回動軸80に回動可能に支持されている。回動軸80は、給紙ローラ42の回転軸と平行に設けられ、収容部材55に固定されている。サバキベース72の他端側半部の上面にサバキ板46が嵌着されている。
【0055】
サバキベース72の下面には、球82がその下半部を露出させる態様で埋め込まれて固定されている。そして、球82の下方に傾斜部材74が設けられている。傾斜部材74は、回動軸80と平行な方向に傾斜する傾斜面84を有し(
図6参照)、その傾斜面84に沿って球82を滑動させることができる。球82とサバキベース72との位置関係は変化しないため、球82が傾斜面84を滑動することにより、サバキベース72が回動軸80を中心に回動する。それにより、サバキ板46の高さ位置を変化させることができる。すなわち、サバキベース72、球82および傾斜部材74が、サバキ板46の高さ位置を変化させる「昇降機構」を構成し、また、サバキ板46による給紙ローラ42に対する押圧力を作用させる「加圧機構」を構成する。また、リンク機構76と傾斜部材74との連結構造が、リンク機構76の変位に応じてリンク機構76とその加圧機構とを作動連携させる「連携機構」を構成する。
【0056】
また、
図4に示すように、搬送下ローラ70と横並びにジャムセンサ58が設けられている。ジャムセンサ58は反射型の光センサであり、給紙処理において紙詰まりが発生した場合にこれを検出するものであるが、サバキ圧の低下を判定する際にタイミングセンサ56とともに用いられる「用紙センサ」としても機能する。
【0057】
図5および
図6に示すように、収容部材55の一方(正面側)の側部にはハウジング86が設けられ、調整モータ78が収容されている。収容部材55の他方(背面側)の側部にはハウジング88が設けられ、サブ操作パネル20の入出力を制御する制御基板(図示せず)が収容されている。
【0058】
サブ操作パネル20には、対応する棚の番号等を表示させる表示装置162のほか、対応する棚を使用するときに押下される使用ボタン164、対応する棚を使用しないときに押下される不使用ボタン166、後述するサバキ圧の初期調整処理を実行する際に押下される初期調整ボタン168、紙詰まり等のときに給紙モータを逆転させる逆転ボタン170、テスト給紙を行うときに押下されるテスト給紙ボタン172、用紙情報としての折り形を設定するときに押下されるボタン174〜178等が設けられる。ボタン174は折りなしを設定する際に押下され、ボタン176は2つ折りを設定する際に押下され、ボタン178は4つ折りを設定する際に押下される。
【0059】
次に、サバキ圧調整機構54の構成および動作の詳細について説明する。
図7〜
図10は、サバキ圧調整機構54の構成および動作を示す説明図である。各図の(a)は
図5の部分拡大図に対応し、(b)は
図6の部分拡大図に対応する。
図11は、サバキ板46の動作を示す説明図である。
【0060】
図7(a)および(b)に示すように、リンク機構76は、第1リンク90、第2リンク92および第3リンク94を「伝達部材」として長手方向に順次連結して構成される。本実施形態では、第2リンク92および第3リンク94が「第1リンク部材」を構成し、第1リンク90が「第2リンク部材」を構成する。第1リンク90は長尺状をなし、その一端が傾斜部材74の一端部に固定されている。第1リンク90の中間部には長手方向に延びる長孔96が設けられ、収容部材55の底部に立設された支柱98が挿通されている。これにより、第1リンク90は、支柱98にガイドされつつ長手方向に変位することができる。第1リンク90の他端近傍には支柱104が立設されている。
【0061】
第1リンク90の他端からその幅方向片側に支持部100が突出し、その先端にリミットセンサS1が取り付けられている。そして、リミットセンサS1に対して一列に並ぶように、ホームセンサS2、上限センサS3が配置されている。ホームセンサS2および上限センサS3は、収容部材55の底部に取り付けられている。上限センサS3は、ホームセンサS2に対してリミットセンサS1とは反対側に位置する。
【0062】
リミットセンサS1は、サバキ圧調整機構54の作動によってサバキ圧が所定のリミット値に達したことを検知するセンサである。ホームセンサS2は、サバキ圧の調整が可能な状態にあるか否かを検知するセンサである。上限センサS3は、サバキ板46が予め定める上限位置に到達したことを検知するセンサである。これらのセンサS1〜S3は、いずれも透過型の光センサであり、発光素子と受光素子とを対向配置させて構成される。
【0063】
第2リンク92は長尺状をなし、その一端部に長手方向に延びる長孔106が設けられ、支柱104が挿通されている。これにより、第2リンク92は、支柱104にガイドされつつ長手方向に変位することができる。第2リンク92の他端には、第3リンク94の一端が回動自在に連結されている。第3リンク94の他端は、減速機120を介して調整モータ78と接続されている。減速機120は、収容部材55に回転可能に支持されたギヤ122と、調整モータ78の回転軸に取り付けられた出力ギヤ124とを含む。第3リンク94の他端は、ギヤ122の周縁部に回動自在に連結されている。また、第2リンク92の他端部と支柱104とを接続するように引きばね105が設けられている。
【0064】
このような構成により、調整モータ78を正転させると(
図7(b)において反時計回りに回転させると)、リンク機構76が図の左方に駆動される。その結果、傾斜部材74が左方に変位して球82が傾斜面84に沿って上昇する。その結果、
図11(a)にも示すように、サバキベース72が一方向に回動してサバキ板46が上昇し、サバキ圧を大きくすることができる。逆に、調整モータ78を逆転させると(
図7(b)において時計回りに回転させると)、リンク機構76が図の右方に駆動される。その結果、傾斜部材74が右方に変位して球82が傾斜面84に沿って下降する。その結果、
図11(b)にも示すように、サバキベース72が他方向に回動してサバキ板46が下降する。その結果、給紙ローラ42とサバキ板46との間に用紙が介在していれば、サバキ圧を小さくすることができる。このような調整モータ78の駆動によりサバキ圧を調整することができる。
【0065】
第2リンク92には、その一端側と他端側に幅方向片側に突出する一対の突出部108,110が設けられている。突出部108の先端には検出部112が立設され、突出部110の先端には検出部114が立設されている。検出部112は、第2リンク92の第1リンク90に対する相対変位に応じてリミットセンサS1に対して進退する。リミットセンサS1は、サバキ圧の増加により第2リンク92が引きばね105の力に抗して第1リンク90に対して変位し、検出部112が光軸から外れたときに、サバキ圧が予め定めるリミット値に達したことを検知する。すなわち、リミットセンサS1、第1リンク90、第2リンク92および引きばね105によりリミット検知機構が構成される。このリミット値は、サバキ圧を調整する際の基準圧力となる。
【0066】
一方、検出部114は、第2リンク92の変位に応じてホームセンサS2又は上限センサS3に対して進退する。ホームセンサS2は、検出部114が光軸を遮蔽しているときに、サバキ圧が適正圧よりも小さくそのサバキ圧の調整が可能な状態であることを検知する。上限センサS3は、検出部114が光軸を遮蔽したときにサバキ圧が過大であることを検知する。
【0067】
次に、本実施形態におけるサバキ圧調整方法について説明する。
サバキ圧の調整工程においてはまず、サバキ圧調整機構54をサバキ圧を減少させる減圧側に駆動する。すなわち、
図7に矢印にて示すように、調整モータ78を逆転させる。これにより図示のように、リンク機構76が傾斜部材74を図中右方へ変位させる。その結果、球82が当接する傾斜面84の高さが低くなるため、サバキ板46が下降する。これによりホームセンサS2が図示のように検知状態となると、調整モータ78の駆動を停止させる。なお、当初からホームセンサS2が検知状態であれば、このような調整モータ78の逆転駆動は行わない。
【0068】
続いて、サバキ圧調整機構54をサバキ圧を増大させる増圧側に駆動する。すなわち、
図8に示すように、調整モータ78を正転させる。これにより図示のように、リンク機構76が傾斜部材74を図中左方へ変位させる。その結果、球82が当接する傾斜面84の高さが高くなるため、サバキ板46が上昇する。これにより、サバキ板46が給紙ローラ42に当接すると、傾斜部材74の変位が規制される。
【0069】
この状態からサバキ圧調整機構54をさらに増圧側に駆動する。すなわち、調整モータ78をさらに正転させる。それにより、
図9に示すように引きばね105が伸び、第1リンク90を停止させたまま第2リンク92を図中左方に変位させる。それにより、リミットセンサS1が図示のように非検知状態となると、調整モータ78の駆動を停止させる。この引きばね105が伸び始めるときのサバキ圧をリミット値とし、サバキ圧調整の基準とする。そして、この状態からサバキ圧調整機構54を所定量だけ減圧側に駆動する。すなわち、調整モータ78を所定回転量だけ逆転させ、
図10に示すように、傾斜部材74の位置を所定の戻し量Kだけ図中右方に戻す。
【0070】
このように、サバキ圧がリミット値以下の状態では、第2リンク92を加圧側へ移動させると、第1リンク90を第2リンク92と一体に同方向に移動させることができ、それによりサバキ板46を上昇させることができる。一方、サバキ圧がリミット値に達すると、第2リンク92をさらに加圧側へ移動させても第1リンク90の移動は規制される。
【0071】
なお、上記戻し量Kを得るための調整モータ78の回転量については、用紙の厚さに関するデータに基づいて定められる。すなわち、戻し量Kは、用紙情報に応じた分量として決定される。例えば、用紙が厚くなるほど戻し量Kが大きくなるように回転量が設定される。この用紙の厚さと回転量との関係は、予め試験等を行うことにより最適値が求められてデータベース化される。制御部50は、そのデータベース化されたテーブルを保持し、サバキ調整工程においてそれらを参照する。また、厚さ情報が用紙の折り形により指定される場合には、例えば折りなし、2つ折り、4つ折り等の折り形に対する最適な回転量を予め求めて記憶しておき、ユーザが入力した折り形に対応した回転量を決定する。
【0072】
図12は、丁合装置10の制御部50を中心とする電気的構成を示す概略図である。制御部50には、メイン操作パネル16に設けられたメイン入力装置150や、サブ操作パネル20に設けられたサブ入力装置160からの信号が入力される。メイン入力装置150には、丁合処理を開始させるためのスタートスイッチ152、丁合処理を停止させるためのストップスイッチ154等、種々のスイッチが含まれる。一方、サブ入力装置160には、
図6に示した各ボタンに対応する種々のスイッチが含まれる。また、制御部50には、既に説明したリミットセンサS1、ホームセンサS2、上限センサS3、タイミングセンサ56、ジャムセンサ58、変位センサ69や、スタッカトレイ40への用紙の排出を検出する排紙センサ180等からの検出信号が入力される。
【0073】
制御部50は、それらのスイッチ・センサ入力に基づいて給紙制御、搬送制御、折り制御等のための所定の演算処理を実行し、給紙モータ77、調整モータ78、メインモータ182等に制御指令信号を出力する。メインモータ182は、サブ搬送機構22やメイン搬送機構24を構成する各搬送ローラ等に共用のモータである。また、制御部50は、丁合処理の設定画面、エラー報知等をメイン表示装置190に表示させる。メイン表示装置190は、メイン操作パネル16に液晶ディスプレイとして設けられる。
【0074】
次に、本実施形態において実行される具体的処理の流れについて説明する。
図13は、丁合装置10による丁合処理を示すフローチャートである。丁合装置10に電源が投入されると、制御部50は、まずサバキ圧を調整するための初期調整処理を実行し(S10)、続いて丁合処理を実行する(S12)。後者の丁合処理には、サバキ圧を微調整するための追加調整処理が含まれる。
【0075】
図14は、
図13におけるS10の初期調整処理を詳細に示すフローチャートである。初期調整処理において、ユーザによる折り形態情報が入力されると(S20のY)、制御部50は、その折り形態情報を記憶する(S22)。すなわち、ユーザがメイン操作パネル16やサブ操作パネル20を介して各棚の折り形(折りなし、2つ折り、4つ折り等)を入力すると、これを折り形態情報として記憶する。
【0076】
初期調整ボタン168の押下により初期調整スイッチがオンにされると(S24のY)、ホームセンサS2の出力に基づいてサバキ圧の調整可能状態であるか否かを判定する。すなわち、ホームセンサS2が検知状態にあれば(つまり検出部114がホームセンサS2の光軸を遮蔽していれば)、調整可能状態であると判定される。このとき、調整可能状態でなければ(S26のN)、調整モータ78を逆転させ、サバキ板46を下降させる(S28)。それにより調整可能状態になると(S30のY)、調整モータ78を停止させる(S32)。一方、既に調整可能状態であれば(S26のY)、S28からS32の処理をスキップする。
【0077】
続いて、調整モータ78を正転させ、サバキ板46を上昇させる(S34)。それによりサバキ圧がリミット値に到達したか否かを判定する。すなわち、リミットセンサS1が非検知状態になれば(つまり検出部112がリミットセンサS1の光軸から外れれば)、リミット値に到達したと判定される。このとき、リミット値に到達すれば(S36のY)、調整モータ78を停止させる(S38)。
【0078】
そして、制御部50は、上記折り形態情報に基づいて適正な戻し量Kに対応する調整モータ78の回転量(ステップ数)を算出し(S40)、その回転量にしたがって調整モータ78を逆転させ、サバキ板46を下降させる(S42)。その戻し量Kに対応する駆動が完了すると(S44のY)、調整モータ78を停止させる。以上のような初期調整処理により、サバキ圧が適正に調整される。
【0079】
図15は、
図13におけるS12の丁合処理(特に追加調整処理)を詳細に示すフローチャートである。丁合処理において、ユーザにより丁合設定部数Nが入力されると(S50のY)、制御部50は、これを丁合残数N(丁合すべき残数)として記憶する(S52)。
【0080】
メイン操作パネル16を介して給紙スタートスイッチが入力されると(S54のY)、丁合装置10の各搬送機構を作動させるためのメインモータ182を駆動する(S56)。そして、演算値としてのベース部数N1および調整判定部数N2をゼロクリアする(S58)。ここで、「ベース部数N1」は、追加調整処理の実行有無を判定する際の判定周期となる丁合処理部数である。すなわち、その判定周期となる処理部数(本実施形態では6)ごとに判定をリセットする。「調整判定部数N2」は、その判定周期においてサバキ圧の不足を判定するための指標となる丁合処理部数である。すなわち、その判定周期の丁合処理を繰り返す過程において、調整判定部数N2が基準値(本実施形態では3)に達すると、追加調整処理が実行される。
【0081】
給紙ストップスイッチの入力がなく(S60のN)、また丁合残数Nがゼロになっていなければ(S62のN)、給紙モータ77を駆動して1回の給紙を開始する(S64)。これによりジャムセンサ58によって用紙が検知されると(S66のY)、そのタイミングで給紙モータ77を一時停止させる(S68)。なお、紙詰まりが発生していない限り、このとき検知された用紙は、そのまま下流側へ搬送される。本実施形態では、給紙ローラ42とその回転軸との間にワンウェイクラッチが設けられているため、給紙モータ77が停止しても給紙ローラ42は外力の負荷により回転継続可能であり、搬送上ローラ68と搬送下ローラ70とによる搬送力が作用する限り、用紙の搬送が規制されないからである。
【0082】
そして、予め定める判定基準期間が経過すると(S70のY)、丁合残数Nを1デクリメントする(S72)。本実施形態では、「判定基準期間」として給紙モータ77の回転開始から1回の給紙が確実に完了する所定時間として設定している。このとき、タイミングセンサ56により依然として用紙が検知されていれば(S74のY)、調整判定部数N2を1インクリメントする(S76)。当該1回の給紙処理においてサバキ圧が不足していたために次位以下の用紙がずれて検出されたと判定するものである。このとき、調整判定部数N2が3に到達していなければ(S78のN)、ベース部数N1を1インクリメントする(S76)。このとき、ベース部数N1が6に到達していなければ(S82のN)、S60の処理に戻り、ベース部数N1が6に到達していれば(S82のY)、S58の処理に戻る。
【0083】
一方、調整判定部数N2が3に到達していれば(S78のY)、サバキ圧の追加調整を実行する。すなわち、調整モータ78を正転させ、サバキ板46を所定高さ上昇させる(S84)。このときの調整モータ78の回転量については、予め試験等に基づいて適正な値が設定される。そして、S58の処理に戻る。給紙ストップスイッチが入力された場合(S60のY)、あるいは丁合残数Nがゼロとなった場合には(S62のY)、メインモータ182を停止して本処理を終了する(S90)。
【0084】
以上に説明したように、本実施形態によれば、サバキ圧の調整に際して予めリミット値が設定され、サバキ圧をそのリミット値に一旦到達させた後、そのリミット値を基準に用紙情報に応じた分量だけサバキ圧を適正に調整するための処理が自動的に行われる。すなわち、実際に一定のサバキ圧になった状態を基準に調整がなされるようになるため、仮に給紙ローラ42やサバキ板46が摩耗していたとしても、その現在の状態に応じた適正な調整をすることができる。
【0085】
[第2実施形態]
本実施形態では、サバキ圧調整処理において戻し量Kを特定するための用紙情報として、重送検知機構60にて検出された用紙の厚さ情報を用いる。すなわち、初期調整処理においてテスト給紙を行い、
図3に示した変位センサ69の検出値に基づいて用紙の厚さを算出する。そして、その厚さ情報に対応した戻し量Kを算出し、サバキ板46の高さを適正に調整する。制御部50は、変位センサ69により検出される用紙の厚さと、調整モータ78の回転量との関係を対応づけたテーブルを保持し、サバキ調整工程においてそれらを参照する。
【0086】
図16は、第2実施形態に係る初期調整処理を詳細に示すフローチャートである。なお、この初期調整処理は、
図14に示した第1実施形態の初期調整処理と共通する部分が多いため、共通の処理部分については同一の符号を付してその説明を省略又は簡略化する。なお、本実施形態の初期調整処理に際しては、ユーザが各棚ごとにその給紙トレイ14に積載予定の用紙を1枚だけセットし、初期調整ボタン168を押下する。
【0087】
これにより初期調整スイッチが入力されると(S220のY)、メインモータ182を駆動し(S222)、給紙モータ77を駆動する(S224)。それにより、変位センサ69による検出がなされると(S226)、給紙モータ77を停止させる(S228)。そして、その用紙が排紙センサ180により検知されると(S230のY)、メインモータ182を停止し(S232)、変位センサ69が検出した変位を用紙の厚さ情報として記憶する。
【0088】
この厚さ情報が、S240の処理において用いられる。すなわち、制御部50は、S234にて記憶した厚さ情報に基づいてテーブルを参照し、適正な戻し量Kに対応する調整モータ78の回転量を算出し、サバキ板46の高さを調整する。なお、S26以降の処理については、S240を除いて
図14に示した第1実施形態と同様であるため、その説明については省略する。
【0089】
本実施形態によれば、重送検知機構60にて実際に検出された用紙の厚さ情報が用いられるため、第1実施形態よりも初期調整処理の精度が向上する。また、別途外部から厚さ情報を入力する必要がなくなり、ユーザの作業性が向上する。
【0090】
[第3実施形態]
本実施形態は、サバキ圧調整機構の調整機構を手動で作動させる点、およびリミットセンサを有しない点で第1実施形態とは異なる。以下、第1実施形態との相異点を中心に説明する。
図17は、サバキ圧を調整するための手動操作部近傍を表す拡大図である。
【0091】
本実施形態では、
図6に示した調整モータ78に置き換えて「操作部材」としての調整ツマミ378が設けられる。調整ツマミ378の軸の先端には出力ギヤが設けられ、第1実施形態と同様にギヤ122に連結されている。この出力ギヤとギヤ122が、調整ツマミ378の操作をサバキ圧調整機構54の動作に変換する「変換機構」として機能する。ユーザは、調整ツマミ378を図の時計回り又は反時計回りに操作することによりサバキ圧を調整することができる。ハウジング86における調整ツマミ378の周囲にはメモリが付され、図の半時計回りに回転させるとサバキ圧を大きくでき、時計回りに回転させるとサバキ圧を小さくできるようになっている。
【0092】
本実施形態においても、サバキ圧がリミット値以下の状態では、第2リンク92を加圧側へ移動させると、第1リンク90を第2リンク92と一体に同方向に移動させることができ、それによりサバキ板46を上昇させることができる。一方、サバキ圧がリミット値に達すると、第2リンク92を引きばね105の付勢力に抗してさらに加圧側へ移動させても第1リンク90の移動は規制される。すなわち、このように第1リンク90と第2リンク92とを相対変位させる機構が「リミッタ機構」として機能する。
【0093】
調整ツマミ378の上方には、推奨されるサバキ圧の調整量を表示させる表示部380と、サバキ圧の調整が必要な場合に点灯される要調整ランプ382が設けられている。さらに、ユーザの手動による調整をロック又はロック解除するためのロック機構384が設けられている。制御部50は、サバキ圧を適正に調整できるようユーザを促すための処理を実行する。
【0094】
図18は、第3実施形態に係る初期調整処理を詳細に示すフローチャートである。丁合装置10に電源が投入されると、制御部50は、まずサバキ圧を調整するための初期調整処理を実行し、その後、丁合処理を実行する。なお、本実施形態の丁合処理には、サバキ圧を微調整するための追加調整処理は含まれない。
【0095】
初期調整処理において、ユーザによる折り形態情報が入力されると(S320のY)、制御部50は、その折り形態情報を記憶する(S322)。そして、各棚ごとにその折り形態情報に基づく戻し量Kを算出し(S324)、その戻し量Kに対応した調整ツマミ378の操作量を表示部380に表示させておく(S326)。
【0096】
このとき、ユーザは、サバキ圧を大きくする方向に調整ツマミ378を操作する。それによりリミットがかかったところで手を離す。なお、この「リミット」については、
図7に示した引きばね105が伸びることにより、同方向への操作に抵抗がかかったことをユーザが感知することをもって判断される。このようにしてユーザが調整ツマミ378から手を離すと、引きばね105の付勢力によって調整ツマミ378がリミット位置に落ち着く。ユーザは、そのリミット位置から上記表示部380に表示された操作量だけ調整ツマミ378を反対方向に戻すことにより、サバキ板46が適正な高さに調整される。
【0097】
続いて、テスト給紙ボタン172(
図6参照)が押下されると(S328のY)、メインモータ182を駆動する(S330)。そして、要調整ランプ382を消灯し(S332)、給紙モータ77を駆動して1回の給紙を開始する(S334)。これによりジャムセンサ58によって用紙が検知されると(S336のY)、そのタイミングで給紙モータ77を一時停止させる(S338)。なお、紙詰まりが発生していない限り、このとき検知された用紙は、そのまま下流側へ搬送される。本実施形態においても、給紙ローラ42とその回転軸との間にワンウェイクラッチが設けられているためである。
【0098】
そして、予め定める判定基準期間が経過したときに(S340のY)、タイミングセンサ56により用紙が検知されていれば(S342のY)、要調整ランプ382を点灯させる(S344)。当該1回の給紙処理においてサバキ圧が不足していたために次位以下の用紙がずれて検出されたと判定し、サバキ圧の再調整を促すものである。タイミングセンサ56により用紙が検知されていなければ(S342のN)、要調整ランプ382を消灯させる(S346)。なお、「判定基準期間」としては、給紙モータ77の回転開始から1回の給紙が確実に完了する所定時間が設定される。
【0099】
このようにして要調整ランプ382が点灯した場合、ユーザは、調整ツマミ378をサバキ圧が大きくなる方向に所定量操作することができる。すなわち、要調整ランプ382の点灯は、サバキ圧を増加させるようユーザを促す誘導表示となる。その後、再度テスト給紙を実行することにより要調整ランプ382が消灯すれば、サバキ圧が適正に調整されたと認識することができる。
【0100】
このテスト給紙処理は、ユーザがテスト給紙ボタン172を押し続ける間にのみ行われる。すなわち、テスト給紙ボタン172の押下が解除されなければ(S348のN)、S334に戻り、次のテスト給紙が実行される。テスト給紙ボタン172の押下が解除されると(S348のY)、メインモータ182を停止させる(S350)。S328においてテスト給紙ボタン172が押下されなければ(S328のN)、S330からS350の処理をスキップする。なお、本実施形態によれば、テスト給紙ボタン172を押したまま、要調整ランプ382が消灯するまで給紙を繰り返しながら、調整ツマミ378を回してサバキ圧を調整することもできる。
【0101】
なお、本実施形態においては、メイン入力装置150(
図12参照)のスタートスイッチ152が「第1給紙スイッチ」に対応し、テスト給紙ボタン172が「第2給紙スイッチ」に対応する。なお、第1給紙スイッチは、丁合スタートスイッチとなるため、全段の棚の給紙が一斉に連続動作する。また、第2給紙スイッチ(テスト給紙スイッチ)は、給紙部(給紙機構18)ごとに設けられ、対応する給紙部の給紙だけが連続動作する。
【0102】
本実施形態によれば、サバキ圧の調整を手動で行うものの、第1実施形態と同様に実際に一定のサバキ圧になった状態を基準に調整がなされるため、仮に給紙ローラやサバキ部材が摩耗していたとしても、現在の状態に応じた適正な調整をすることが可能となる。
【0103】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
【0104】
(変形例1)
上記第1,第3実施形態では、ユーザが入力する用紙情報として折り形態(折り形)を設定する構成を示したが、変形例においては、用紙の厚さ(数値)を入力する構成としてもよい。例えば、ユーザが用紙の厚さをマイクロメータにて測定し、その測定値を入力するようにしてもよい。あるいは、制御部50に対して測定値を出力可能なマイクロメータを使用してもよい。あるいは、数値ではなく、「厚紙、普通紙、薄紙」などの紙厚情報を入力するようにしてもよい。
【0105】
また、サバキ圧に影響を与える要素として紙質を入力するようにしてもよい。例えば「コート紙、アート紙、マット紙、上質紙、中質紙」などの紙質情報を入力することができる。このほかにも、ユーザは、用紙サイズであるサイズ情報や連量などの密度情報を入力することもできる。ただし、制御部50は、このような用紙情報と戻し量K(調整モータ78の回転量など)との対応関係を設定したテーブルを保持し、入力された用紙情報に基づいてサバキ圧の調整処理を適正に行えるようにしておくものとする。また、上記実施形態では、サブ操作パネル20を介して用紙情報を入力する例を示したが、メイン操作パネル16を介してそれらを入力してもよい。
【0106】
(変形例2)
上記実施形態では、
図15のS70や
図18のS340において、「判定基準期間」を給紙モータ77の回転開始から1回の給紙が確実に完了する所定時間として設定する例を示した。変形例においては、例えば給紙モータ77の回転開始から用紙の後端がジャムセンサ58により検出されるまでを「判定基準期間」としてもよい。
【0107】
(変形例3)
上記第3実施形態ではリミット検知機構を設けない構成を示したが、第1,第2実施形態と同様にリミットセンサS1によるリミット値の検知を行う構成としてもよい。その場合、ユーザが調整ツマミ378を加圧側に操作する過程でサバキ圧がリミット値に到達すると、その時点で戻し量Kに対応した操作量を表示部380に表示させてもよい。
【0108】
(変形例4)
上記実施形態では述べなかったが、丁合処理中に空送り等が発生した場合、サバキ圧を減圧側に変化させるよう調整処理を実行してもよい。また、丁合処理中に重送や連鎖が発生した場合、サバキ圧を加圧側に変化させるよう調整処理を実行してもよい。
【0109】
(変形例5)
上記第2実施形態では、レバー部材65の回動量をエンコーダを用いて測定する変位センサ69の検出値に基づいて用紙の厚さに関する情報を得る例を示した。変形例においては、超音波センサにより用紙の厚さに関する情報を得るようにしてもよい。すなわち、横搬送路を挟んで上下に各々超音波を発信する発信センサ、受信する受信センサを設けてもよい。例えば、超音波センサを通過した用紙が折りなしの場合よりも2つ折りの場合のほうが超音波の振幅が小さくなることを利用し、用紙の折り形を得るようにしてもよい。あるいは、光学式センサにより用紙の厚さに関する情報を得るようにしてもよい。すなわち、横搬送路を挟んで上下に各々発光センサと受光センサを配置し、用紙が通過した時の光の透過量に基づいて用紙の折り形や厚さ情報を得るようにしてもよい。