特許第6236615号(P6236615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236615
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】緊急用防災非常用眼鏡セット
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/02 20060101AFI20171120BHJP
   G02C 7/08 20060101ALI20171120BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G02C7/02
   G02C7/08
   G02C13/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-74654(P2014-74654)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-197521(P2015-197521A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2016年1月26日
【審判番号】不服2016-17647(P2016-17647/J1)
【審判請求日】2016年11月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500516702
【氏名又は名称】三井 石根
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】三井 石根
【合議体】
【審判長】 樋口 信宏
【審判官】 中田 誠
【審判官】 河原 正
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−72504(JP,A)
【文献】 特開2013−101290(JP,A)
【文献】 特開平8−286157(JP,A)
【文献】 特開2005−148147(JP,A)
【文献】 特開平1−319018(JP,A)
【文献】 特開平7−261130(JP,A)
【文献】 特表2013−527496(JP,A)
【文献】 実開平6−55731(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3062534(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/08
G02C11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の眼鏡レンズを一体として構成される透明樹脂製の眼鏡レンズ部及びテンプル部を有してなるテンポラリー眼鏡と、前記テンポラリー眼鏡における前記眼鏡レンズに、1枚又は2枚重ねで貼着可能で、且つ、視力を矯正可能な度数を有するレンズ膜が透明の剥離紙に、透明の粘着層を介して貼り付けられているレンズ膜セットと、前記テンポラリー眼鏡と前記レンズ膜セットとを収納するパッケージと、を含んでなる緊急用防災非常用眼鏡セットであって
前記左右の眼鏡レンズは、低近視度又は高近視度の視力矯正用レンズからなり、
前記レンズ膜セットは、前記左右の眼鏡レンズのレンズ度数を−0.5D変化させる機能を備えた第1の近視用レンズ膜、レンズ度数を−1.0D変化させる機能を備えた第2の近視用レンズ膜、レンズ度数を−1.5D変化させる機能を備えた第3の近視用レンズ膜、を少なくとも含んでなり、
これらのレンズ膜は、レンズ内側の湾曲度合が前記眼鏡レンズの外側面の湾曲度合と一致するようにされた透明な光学樹脂フィルムからなり、各々、前記透明の剥離紙に、並べて貼着したままで、装着状態の前記眼鏡レンズに外側から、前記剥離紙とともに順次指で押し付けて、最適な矯正度数のレンズ膜を選択可能とされ、そのうちの1枚又は2枚の近視用レンズ膜を前記透明の剥離紙から剥離して、前記左右の眼鏡レンズの少なくとも一方に、レンズ外側から貼着可能とされたことを特徴とする緊急用防災非常用眼鏡セット。
【請求項2】
左右の眼鏡レンズを一体として構成される透明樹脂製の眼鏡レンズ部及びテンプル部を有してなるテンポラリー眼鏡と、前記テンポラリー眼鏡における前記眼鏡レンズに、1枚又は2枚重ねで貼着可能で、且つ、視力を矯正可能な度数を有するレンズ膜が透明の剥離紙に、透明の粘着層を介して貼り付けられているレンズ膜セットと、前記テンポラリー眼鏡と前記レンズ膜セットとを収納するパッケージと、を含んでなる緊急用防災非常用眼鏡セットであって
前記左右の眼鏡レンズは、遠老視度の視力矯正用レンズからなり、
前記レンズ膜セットは、前記左右の眼鏡レンズのレンズ度数を+0.5D変化させる機能を備えた第1の遠視用レンズ膜、レンズ度数を+1.0D変化させる機能を備えた第2の遠視用レンズ膜、レンズ度数を+1.5D変化させる機能を備えた第3の遠視用レンズ膜、を少なくとも含んでなり、
これらのレンズ膜は、レンズ内側の湾曲度合が前記眼鏡レンズの外側面の湾曲度合と一致するようにされた透明な光学樹脂フィルムからなり、各々、前記透明の剥離紙に、並べて貼着したままで、装着状態の前記眼鏡レンズに外側から、前記剥離紙とともに順次指で押し付けて、最適な矯正度数のレンズ膜を選択可能とされ、そのうちの1枚又は2枚の遠視用レンズ膜を前記透明の剥離紙から剥離して、前記左右の眼鏡レンズの少なくとも一方に、レンズ外側から貼着可能とされたことを特徴とする緊急用防災非常用眼鏡セット。
【請求項3】
左右の眼鏡レンズを一体として構成される透明樹脂製の眼鏡レンズ部及びテンプル部を有してなるテンポラリー眼鏡と、前記テンポラリー眼鏡における前記眼鏡レンズに貼着可能で、且つ、視力を矯正可能な度数を有するレンズ膜が透明の剥離紙に、透明の粘着層を介して貼り付けられているレンズ膜セットと、前記テンポラリー眼鏡と前記レンズ膜セットとを収納するパッケージと、を含んでなる緊急用防災非常用眼鏡セットであって
前記左右の眼鏡レンズは、低近視度の視力矯正用レンズからなり、
前記レンズ膜セットは、前記左右の眼鏡レンズのレンズ度数を−0.5D、−1.0D、−1.5D、−2.0D、−2.5D、−3.0D、−3.5D、−4.0D及び−4.5Dに変化させる機能を備えた9種類のレンズ膜、を少なくとも含んでなり、
これらのレンズ膜は、レンズ内側の湾曲度合が前記眼鏡レンズの外側面の湾曲度合と一致するようにされた透明な光学樹脂フィルムからなり、各々、前記透明の剥離紙に、並べて貼着したままで、装着状態の前記眼鏡レンズに外側から、前記剥離紙とともに順次指で押し付けて、最適な矯正度数のレンズ膜を選択可能とされ、そのうちの1種類のレンズ膜を前記透明の剥離紙から剥離して、前記左右の眼鏡レンズの少なくとも一方に、レンズ外側から貼着可能とされたことを特徴とする緊急用防災非常用眼鏡セット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記テンポラリー眼鏡における前記眼鏡レンズに貼着された前記レンズ膜の上に更に貼着可能で、且つ、乱視を矯正可能な少なくとも1種類の乱視矯正用レンズ膜を含んでおり、
前記乱視矯正用レンズ膜は、円柱レンズを円形に切り取った形状であり、最も厚くなっている幅方向中央部を外側にして、透明の剥離紙に、透明の粘着層を介して貼り付けられていて、前記透明な剥離紙に貼着したままで、装着状態の前記眼鏡レンズの前に、前記剥離紙とともに指で押し付けて、その状態で円柱レンズの軸線を円形中心廻りに回転させて調節して、最適な角度位置を決定してから、前記剥離紙から剥離して、前記貼着されているレンズ膜に貼着可能とされたことを特徴とする緊急用防災非常用眼鏡セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急用防災非常用眼鏡セットに関する。
【背景技術】
【0002】
緊急用防災非常用眼鏡として、ADLENS(登録商標)と称される可変焦点レンズおよびメガネが開発されている。
【0003】
これは、左右の眼鏡レンズのそれぞれの前面に、小型の眼鏡レンズを重ねてねじにより左右に移動させることにより、度数を調整可能としたものである。
【0004】
しかしながら、この緊急用防災非常用眼鏡は、視度調整の範囲が狭く、また、可動な小型レンズの範囲に視野が限定されてしまうという問題点がある。さらに、乱視の矯正もできないという問題点がある。
【0005】
また、上記の緊急用防災非常用眼鏡は、左右の眼鏡レンズにそれぞれ可動な小型レンズを取り付けた構成であるので、製造コストが高く、且つ、収納時の容積が大きいために、災害用として、自治体などが大量に備蓄するには適していないという問題点もある。
【0006】
更に、特許文献1には左右一体形の眼鏡レンズを有する左右一体形眼鏡が開示されているが、レンズ枠と眼鏡レンズとが別体であるので、製造コストが高くなり、災害に備えて、大量に備蓄するには適当でないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−47862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、緊急用防災非常用眼鏡としての、視度の調整範囲が大きく、且つ、視野が狭く限定されないようにした緊急用防災非常用眼鏡セットを提供することを課題とする。
【0009】
更に、乱視の矯正ができる緊急用防災非常用眼鏡セットを提供することを課題とする。
【0010】
また、製造コストが低く、収納時の容積が小さい緊急用防災非常用眼鏡セットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意研究の結果、低コストで製造できると共に、収納時の容積が小さく、
災害に備えて大量に備蓄するのに最適な緊急用防災非常用眼鏡セットを開発した。
【0012】
すなわち、以下の実施例によって上記課題を解決することができる。
【0013】
本発明の緊急用防災非常用眼鏡セットは、左右の眼鏡レンズを一体として構成される透明樹脂製の眼鏡レンズ部及びテンプル部を有してなるテンポラリー眼鏡と、前記テンポラリー眼鏡における前記眼鏡レンズに、1枚又は2枚重ねで貼着可能で、且つ、視力を矯正可能な度数を有するレンズ膜が透明の剥離紙に、透明の粘着層を介して貼り付けられているレンズ膜セットと、前記テンポラリー眼鏡と前記レンズ膜セットとを収納するパッケージと、を含んでなり、前記左右の眼鏡レンズは、低近視度又は高近視度の視力矯正用レンズからなり、前記レンズ膜セットは、前記左右の眼鏡レンズのレンズ度数を−0.5D変化させる機能を備えた第1の近視用レンズ膜、レンズ度数を−1.0D変化させる機能を備えた第2の近視用レンズ膜、レンズ度数を−1.5D変化させる機能を備えた第3の近視用レンズ膜、を少なくとも含んでなり、これらのレンズ膜は、レンズ内側の湾曲度合が前記眼鏡レンズの外側面の湾曲度合と一致するようにされた透明な光学樹脂フィルムからなり、各々、前記透明の剥離紙に、並べて貼着したままで、装着状態の前記眼鏡レンズに外側から、前記剥離紙とともに順次指で押し付けて、最適な矯正度数のレンズ膜を選択可能とされ、そのうちの1枚又は2枚の近視用レンズ膜を前記透明の剥離紙から剥離して、前記左右の眼鏡レンズの少なくとも一方に、レンズ外側から貼着可能として、上記課題を解決したものである。なお、Dは角膜屈折力の単位であるディオプトリーを示す。
【0014】
また、本発明の緊急用防災非常用眼鏡セットは、左右の眼鏡レンズを一体として構成される透明樹脂製の眼鏡レンズ部及びテンプル部を有してなるテンポラリー眼鏡と、前記テンポラリー眼鏡における前記眼鏡レンズに、1枚又は2枚重ねで貼着可能で、且つ、視力を矯正可能な度数を有するレンズ膜が透明の剥離紙に、透明の粘着層を介して貼り付けられているレンズ膜セットと、前記テンポラリー眼鏡と前記レンズ膜セットとを収納するパッケージと、を含んでなり、前記左右の眼鏡レンズは、遠老視度の視力矯正用レンズからなり、前記レンズ膜セットは、前記左右の眼鏡レンズのレンズ度数を+0.5D変化させる機能を備えた第1の遠視用レンズ膜、レンズ度数を+1.0D変化させる機能を備えた第2の遠視用レンズ膜、レンズ度数を+1.5D変化させる機能を備えた第3の遠視用レンズ膜、を少なくとも含んでなり、これらのレンズ膜は、レンズ内側の湾曲度合が前記眼鏡レンズの外側面の湾曲度合と一致するようにされた透明な光学樹脂フィルムからなり、各々、前記透明の剥離紙に、並べて貼着したままで、装着状態の前記眼鏡レンズに外側から、前記剥離紙とともに順次指で押し付けて、最適な矯正度数のレンズ膜を選択可能とされ、そのうちの1枚又は2枚の遠視用レンズ膜を前記透明の剥離紙から剥離して、前記左右の眼鏡レンズの少なくとも一方に、レンズ外側から貼着可能として、上記課題を解決したものである。
【0015】
更に、本発明の緊急用防災非常用眼鏡セットは、左右の眼鏡レンズを一体として構成される透明樹脂製の眼鏡レンズ部及びテンプル部を有してなるテンポラリー眼鏡と、前記テンポラリー眼鏡における前記眼鏡レンズに貼着可能で、且つ、視力を矯正可能な度数を有するレンズ膜が透明の剥離紙に、透明の粘着層を介して貼り付けられているレンズ膜セットと、前記テンポラリー眼鏡と前記レンズ膜セットとを収納するパッケージと、を含んでなり、前記左右の眼鏡レンズは、低近視度の視力矯正用レンズからなり、前記レンズ膜セットは、前記左右の眼鏡レンズのレンズ度数を−0.5D、−1.0D、−1.5D、−2.0D、−2.5D、−3.0D、−3.5D、−4.0D及び−4.5Dに変化させる機能を備えた9種類のレンズ膜、を少なくとも含んでなり、これらのレンズ膜は、レンズ内側の湾曲度合が前記眼鏡レンズの外側面の湾曲度合と一致するようにされた透明な光学樹脂フィルムからなり、各々、前記透明の剥離紙に、並べて貼着したままで、装着状態の前記眼鏡レンズに外側から、前記剥離紙とともに順次指で押し付けて、最適な矯正度数のレンズ膜を選択可能とされ、そのうちの1種類のレンズ膜を前記透明の剥離紙から剥離して、前記左右の眼鏡レンズの少なくとも一方に、レンズ外側から貼着可能として、上記課題を解決したものである。
【0016】
なお、前記テンポラリー眼鏡における前記眼鏡レンズに貼着された前記レンズ膜の上に更に貼着可能で、且つ、乱視を矯正可能な少なくとも1種類の乱視矯正用レンズ膜を含んでおり、前記乱視矯正用レンズ膜は、円柱レンズを円形に切り取った形状であり、最も厚くなっている幅方向中央部を外側にして、透明の剥離紙に、透明の粘着層を介して貼り付けられていて、前記透明な剥離紙に貼着したままで、装着状態の前記眼鏡レンズの前に、前記剥離紙とともに指で押し付けて、その状態で円柱レンズの軸線を円形中心廻りに回転させて調節して、最適な角度位置を決定してから、前記剥離紙から剥離して、前記貼着されているレンズ膜に貼着可能としてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の緊急用防災非常用眼鏡セットでは、左右の眼鏡レンズの各々の外側に、装着者の視力に最適な度数を有するレンズ膜を選択して貼着する構成であり、複数のレンズ膜が、各々透明の剥離紙に透明の粘着層を介して並べて貼り付けられていて、且つ、レンズ内側の湾曲度合が前記眼鏡レンズの外側面の湾曲度合と一致するようにされているので、これをそのまま装着状態のテンポラリー眼鏡のレンズに外側から、前記剥離紙とともに順次指で押し付けた状態で最適な視力を得られるレンズ膜を確実に選択することができ、また、視度矯正用のレンズ膜を移動させたりする必要がなく、構造が簡単、且つ、低コストで製造できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例に係る緊急用防災非常用眼鏡セットに用いられるテンポラリー眼鏡を模式的に示す斜視図
図2】本発明の実施例1に係る緊急用防災非常用眼鏡セットを模式的に示す斜視図
図3図1のIII−III線に沿う断面図
図4】同実施例における近視用レンズ膜をテンポラリー眼鏡の眼鏡レンズに貼着した状態を示す斜視図、及び、近視用レンズ膜セットを模式的に拡大して示す断面図
図5】実施例2における遠視用レンズ膜セットを模式的に拡大して示す断面図
図6】実施例3における乱視矯正用レンズ膜を模式的に拡大して示す斜視図
図7】乱視矯正用レンズ膜を模式的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
実施例1に係る緊急用防災非常用眼鏡セット10は、図1に示されるような、テンポラリー眼鏡20と、図2に示されるような、レンズ膜セット30と、これらテンポラリー眼鏡20及びレンズ膜セット30とを収納するパッケージ40とで構成されている。
【0027】
テンポラリー眼鏡20は、眼鏡レンズ部22と、テンプル部24と、テンプル部24が接続可能な智部26、鼻パッド28とを有して構成されていて、眼鏡レンズ部22は、左右の眼鏡レンズ22A、22Bを一体として構成され、透明樹脂材料から形成されている。
【0028】
図1に示されるように、智部26は、眼鏡レンズ部22の左右の端部の一部をこの端部よりもレンズ内側に肉厚に盛り上げて形成されている。更に、図3に示されるように、眼鏡レンズ部22の外周のうち、上端縁に沿う部分をレンズ中心側部分よりも肉厚に形成して、フレーム部23としている。肉厚部分は、図3に示されるように、レンズ中心側部分から滑らかに連続的に厚さを変化させて形成する。
【0029】
又、鼻パッド28は、左右の眼鏡レンズ22A、22Bの間の位置で、眼鏡レンズ22A、22Bの端部をレンズ内側に突出させて眼鏡レンズ22A、22Bと一体的に形成されている。
【0030】
上記実施例において、フレーム部23は、眼鏡レンズ部22の上端縁に沿う部分が肉厚に形成されることにより構成されているが、上端縁に沿う部分に加えて、眼鏡レンズ部22の他の外周部分を肉厚にしてフレーム部にしても良い。また、鼻パッド28は、眼鏡レンズ部22と一体的に構成することなく、後付けであっても良い。テンプル部24は、智部26に対して、例えばねじからなる接続金具24Aにより、揺動自在に接続可能とされている。
【0031】
眼鏡レンズ22A、22Bは、低近視度又は高近視度の視力矯正用レンズであって、これに対して、図4に示されるように、レンズ膜セット30は、レンズ度数を−0.5D変化させる機能を備えた第1の近視用レンズ膜31と、レンズ度数を−1.0D変化させる機能を備えた第2の近視用レンズ膜32と、レンズ度数を−1.5D変化させる機能を備えた第3の近視用レンズ膜33と、を各々2枚含んで構成されている。これらのレンズ膜31、32、33は、透明の剥離紙34に、それぞれ透明の粘着層を介して貼り付けられている。
【0032】
テンポラリー眼鏡20の眼鏡レンズ部22は、通常のレンズ用光学樹脂を用いて製造されている。又、第1〜第3の近視用レンズ膜31〜33は、透明な光学樹脂フィルム、例えば、コンタクトレンズ用のPMMA(ポリメチルメタアクリレート)や、このPMMAにケイ素を加えた材料からなり、通常のコンタクトレンズと同様に、キャストモールド法、スピンキャスト法、レースカット法等によって成形されている。また、レンズ内側の湾曲度合いは、眼鏡レンズ22A、22Bの外側面の湾曲度合と一致するようにされている。なお、PMMAはハードコンタクトレンズに用いられているが、ソフトコンタクトレンズ用の材料は、乾燥すると脆弱となるので、そのままでは適当でないが、乾燥しないようにコーティングすれば用いることができる。
【0033】
テンポラリー眼鏡20とレンズ膜セット30は、パッケージ40内に収納されていて、緊急時等に取り出して用いる。使用時には、眼鏡レンズ部22の智部26に、テンプル部24を接続金具24Aによって取り付け、この状態で、テンポラリー眼鏡20を装着し、その上から、レンズ膜セット30の第1〜第3の近視用レンズ膜31〜33を、透明の剥離紙34に貼着したままで、眼鏡レンズ22A又は22Bに順次指で押し付けて、最適の矯正度数の近視用レンズ膜を選択し、これを剥離紙34から剥離して、眼鏡レンズ22A又は22Bにレンズ外側から貼り付ける。
【0034】
なお、1枚のレンズ膜では十分に矯正できない場合は、他の近視用レンズ膜を重ねて試してみてから、最初の近視用レンズ膜の上に重ね貼りする。
【0035】
即ち、このテンポラリー眼鏡20においては、予め低近視度用に、眼鏡レンズ22A、22Bが構成されていて、その上に、1枚又は2枚の近視用レンズ膜を貼り付けることによって、レンズ度数を−0.5Dから、最大で、−2.5Dまで、0.5D刻みで矯正することができる。
【実施例2】
【0036】
上記実施例の眼鏡レンズ22A、22Bは、低近視度用又は高近視度用であり、レンズ膜セット30は、第1〜第3の近視用レンズ膜31〜33から構成されているが、本発明はこれに限定されるものでなく、図5に示される実施例2のように、遠老視度の視力矯正用レンズと、これに貼着するレンズ膜セット50から構成しても良い。
【0037】
この場合、対応するレンズ膜セット50は、レンズ度数を+0.5D変化させる機能を備えた第1の遠視用レンズ膜51と、レンズ度数を+1.0D変化させる機能を備えた第2の遠視用レンズ膜52と、レンズ度数を+1.5D変化させる機能を備えた第3の遠視用レンズ膜53から構成する。
【0038】
これら第1〜第3の遠視用レンズ膜51〜53は、第1〜第3の近視用レンズ膜31〜33の場合と同様に、1枚又は2枚を左右の眼鏡レンズに貼り付けることができる。
【0039】
上記実施例1、2は、近視用又は遠視用レンズ膜を、レンズ度数を−0.5D、−1.0D、−1.5D変化させる機能又は、レンズ度数を+0.5D、+1.0D、+1.5D変化させる機能をそれぞれ有するレンズ膜によって構成しているが、更に、レンズ度数を幅広く変化させるようにしても良い。
【0040】
眼鏡レンズが低近視度の視力矯正用レンズからなる場合、レンズ膜セットは、レンズ度数を、−0.5D、−1.0D、−1.5D、−2.0D、−2.5D、−3.0D、−3.5D、−4.0D及び−4.5Dに変化させる機能を備えた9種類のレンズ膜から構成すると良い。
【0041】
これらは、レンズ膜を重ね貼りしない場合のものであり、9種類のうちから、1種類のレンズ膜を、左右の眼鏡レンズの少なくとも一方に貼着可能とされている。
【0042】
なお、高近視度の場合及び遠老視度の場合は、もともと、眼鏡レンズが強い矯正度数を
有しているので、上記のように多くのレンズ膜を準備する必要は無い。
【実施例3】
【0043】
眼鏡による視力矯正が必要な人の、少なくない割合で、乱視の矯正の必要な人がいる。このような乱視矯正の場合を考慮して、図6に示されるような、実施例3に係る乱視矯正用レンズ膜60を用いる。
【0044】
この乱視矯正用レンズ膜60は、テンポラリー眼鏡20の眼鏡レンズ22A、22Bに貼着された近視用あるいは遠視用レンズ膜の上に更に貼着可能で、且つ、少なくとも1種類を用意する。
【0045】
このような乱視矯正用レンズ膜60は、円柱レンズ61の円周面を軸方向の平面で切り取ってから平面形状が円形となるようにしたものであり、断面が符号62で示されるように、幅方向中央部が最も厚くなっていて、図7に示されるように、レンズ膜セットの剥離紙34に貼着しておく。乱視矯正用レンズ膜60は、剥離紙34から剥離させる前に、眼鏡レンズ22A、22Bの前に押し付けて、その状態で、円柱レンズ61の直線状中央部60Aを円形中心廻りに回転させて調節して、最適な角度位置を決定してから、剥離紙34から剥離して、図4に2点鎖線で示されるように、眼鏡レンズ22A、22B上に貼着されているレンズ膜の上から更に重ね貼りする。
【0046】
上記実施例に係るテンポラリー眼鏡20は、眼鏡レンズ部22の左右の眼鏡レンズ22A、22Bが一体として構成され、透明樹脂材料から形成されているが、緊急用防災非常用眼鏡セットに用いられる場合、低コストで製造できて、収納体積が小さいものであれば他の構成でもよい。
【0047】
例えば、智部とテンプル部とが一体的に樹脂で形成されたもの、フレーム部、智部、テンプル部が一体的に樹脂で形成されていて、これに光学樹脂からなる眼鏡レンズ部を組合せたもの等であってもよい。
【0048】
但し、上記実施例のテンポラリー眼鏡20は、眼鏡レンズ部22とフレーム部23が同一材料で一体的に形成されているので、低コストで製造でき、且つ、収納体積も小さくなる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
災害等に備えて、緊急用防災非常用眼鏡セットをテンポラリー眼鏡及びレンズ膜セットと共にパッケージに入れた状態で多数製造し、備蓄しておくという利用分野がある。
【符号の説明】
【0050】
10…緊急用防災非常用眼鏡セット
20…テンポラリー眼鏡
22…眼鏡レンズ部
22A、22B…眼鏡レンズ
23…フレーム部
24…テンプル部
26…智部
28…鼻パッド
30、50…レンズ膜セット
31…第1の近視用レンズ膜
32…第2の近視用レンズ膜
33…第3の近視用レンズ膜
34…剥離紙
40…パッケージ
51…第1の遠視用レンズ膜
52…第2の遠視用レンズ膜
53…第3の遠視用レンズ膜
60…乱視矯正用レンズ膜
60A…直線状中央部
62…断面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7