(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るフライヤー用電波発生装置、及び当該装置を用いた食材の調理方法について、図を参照して説明する。
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係るフライヤー用電波発生装置2、及びフライヤー用電波発生装置2を搭載したフライヤー1を示している。
フライヤー1は、食材及び食材を揚げ調理するための調理用油を収容する油槽11と、この油槽11内に設置され、油槽11内の調理用油を加熱する加熱装置12とからなる。
【0017】
油槽11は、ステンレス等の金属からなり、内部に揚げ調理に使う調理用油を収容可能な槽である。
加熱装置12は、例えばステンレス管などの金属パイプの中にニクロム線などの発熱コイルを収容しており、外部電源から供給された電力によって駆動し、油槽11内の調理用油を加熱する。
【0018】
フライヤー用電波発生装置2は、一対の薄板電極21、22、及び薄板電極21に高周波電流を流す発振器を内蔵した中継装置から構成され、フライヤー1と電気的に絶縁した状態で油槽11内に収容設置される。
【0019】
一対の薄板電極21、22はいずれも、L字形状に屈曲した導電性の金属板であって、水平な底面部211、221と、底面部211、221の一側縁部から直角に延び出た側面部212、222とからなる。
なお、このL字形状は、角部が僅かに丸みを帯びたR状に屈曲されており、放射線状に油槽11内に万遍なく電磁誘導を起こすことができるようになっている。
このようなL字形状とすることで、底面部211、221と側面部212、222の双方から電波を発生させられるので、底面部211、221間ないしは底面部221、221上に載置される食材に対して万遍なく電波を照射でき、得られる効果が大きい。
この一対の薄板電極21、22は、所定の間隙を設けて相対する形で油槽11内に配置させられる。
【0020】
この一対の薄板電極21、22には夫々、底面部211、221の裏面側の四隅に絶縁体23が取り付けられている。また、この絶縁体23は外側に僅かに張り出しており、これによりフライヤー用電波発生装置2は、底面側や側面側において、油槽11や加熱装置12等の部材に当接することなく、電気的に絶縁した状態を確保している。
なお、絶縁体23の絶縁素材としては、ポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン−登録商標−)等のフッ素樹脂などを用いることができる。
【0021】
また、薄板電極21、22の底面部211、221には、複数の六角形状の貫通孔2aが穿設されている。六角形状の貫通孔2aが設けられていることで、加熱時、油槽11内の調理用油が貫通孔2aを通って下方から上方へ上昇すると、スパイラル状の流れを生みだす。そして、この対流にしたがって、油槽11内の調理用油が常にかき混ぜられているような状態になり、油槽11内の調理用油の温度が低下しにくくなっている。
なお、貫通孔2aは、側面部212、222にも設けられていてもよい。
【0022】
薄板電極21、22の側面部212、222には夫々、油槽11の内壁と向き合う面にマグネット3が取り付けられている。
このマグネット3は、金属製の油槽11の内壁に対し、金属製の薄板電極21、22を磁力によって固着させる。
一方で、このマグネット3は、ポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン−登録商標−)等の絶縁体で覆われており、これにより、薄板電極21、22と油槽11との間を電気的に絶縁した状態としている。これにより、薄板電極21、22と油槽11との絶縁性を確保しつつ、薄板電極21、22を油槽11内に固定設置することができる。
【0023】
薄板電極21、22の側面部212、222には夫々、一端部に、中継装置内に集約される導線の一端を接続するための端子41、42が設けられている。
この端子41、42は、側面部212、222の一端側の上部に、上方に突出して取り付けられた棒状の部材として構成され、フライヤー用電波発生装置2を油槽11内に設置した際、調理用油の投入量を調整することで、油面から突き出た状態とすることができる。
【0024】
中継装置は、薄板電極21に高周波電流を流す発振器と、薄板電極21、22間の電流値を測定する測定器を内蔵しており、外部電源と接続して、これらの発振器や測定器に電力が供給される。
一対の薄板電極21、22夫々の端子41、42には、導線の一端が接続されており、他端は中継装置内に集約されている。
【0025】
中継装置内において、薄板電極21の端子41と接続する導線は発振器と接続しており、発振器からは、薄板電極21に対して高周波電流が流される。
一方、薄板電極22の端子42と接続する導線はアースに接続されている。
なお、薄板電極22には、薄板電極21、22間に大きな電流が流れた場合に、装置の故障を防ぐため、ヒューズや電流遮断装置など、装置を保護するための部品や装置を取り付けておいてもよい。
【0026】
さらに、端子41、42と接続する導線は、薄板電極21、22間の抵抗値を測定する測定器に接続している。この測定器は、導線を流れる電流に基づいて、薄板電極21、22間の電流値ないしは抵抗値を常時、又は断続的に測定している。
発振器は、この測定器による測定に基づき、薄板電極21、22間の電流値を所定の値に保つべく、高周波電流の強度を調整することができる。
【0027】
以上の構成からなるフライヤー用電波発生装置2において、薄板電極21に高周波電流が流されると、所定の間隙をおいて隔てられることにより絶縁された一対の薄板電極21、22間に振動電流が発生する。そして、振動電流は電波(電波)を発生させ、この電波が油槽11内の食材に照射される。
【0028】
この点、本例では、電波として150kHz以下の長波を用いるのが好適である。長波を用いることで、フライヤー用電波発生装置2周辺をシールドする必要がないし、対象物内の水分に対してエネルギーを付加しすぎることなく微小振動させることができる。なお、本例で用いる電波としては150kHz以下であれば好適であって、長波のほか、超長波、あるいは極超長波であっても適用可能である。
【0029】
なお、本例で用いる電波として150kHz以下の長波を用いることが好適なことは、
図11に示されるデータから明らかである。即ち、誘電分光による水のダイナミクスを明らかにした
図11に示されるデータによれば、電波を氷(Ice)に照射するのに、150kHz以下の周波数帯が最も好適であることが把握される。したがって、特に冷凍保存されている食品等を揚げ調理する場合、フライヤー用電波発生装置2によってこの150kHz以下の長波を食品等に照射することが最適である。
【0030】
そして、例えば50kHzの高周波電流であれば、5万回/秒の極性変化を伴う電磁界振動にのった長波(電波)が発信されることになる。電磁界振動が双極子を持つ食材に到達すると、静電誘導現象が発現する。
静電誘導現象を発現させることで斥力を生み、食材内の水分を微小振動させ続けることで、食材に対する油分の浸透を妨げる効果や、静電吸着効果と食材から浸み出すドリップ及び水分を微細化し、凝縮することで油跳ねが抑制され、さらには摩擦熱で食材自体が加温されるため、油温を10℃程度下げることが可能となり、油の酸化抑制にも効果を発揮することができる。
【0031】
なお、斥力に関しては、周波数における極性変化が影響し、互いに吸着・反発するので食材に油が吸着しにくいため、油の浸透が抑制される。また、油跳ねに関しては、極性変化が多いと、水分や油の分子が細分化される。細分化された水分に油がまとわりつくため、油跳ねを防ぐことができる。
さらに、食材の双極子の極性変化によって運動エネルギーを生じると、当該運動エネルギーは摩擦熱を発現させるため、食材は加温されることになる。したがって、加熱温度を下げることができ、油の酸化を抑制することができる。
【0032】
次に、
図3及び
図4により、本発明の他の実施形態に係るフライヤー用電波発生装置5について説明する。
フライヤー用電波発生装置5は、一対の薄板電極51、52、当該一対の薄板電極51、52を連結する連結具6、及び薄板電極51に高周波電流を流す発振器を内蔵した中継装置から構成され、フライヤー1と電気的に絶縁した状態で油槽11内に収容設置される。
【0033】
一対の薄板電極51、52はいずれも、L字形状に屈曲した導電性の金属板であって、水平な底面部511、521と、底面部511、521の一側縁部から直角に延び出た側面部512、522とからなる。
なお、このL字形状は、角部が僅かに丸みを帯びたR状に屈曲されており、放射線状に油槽11内に万遍なく電磁誘導を起こすことができるようになっている。
このようなL字形状とすることで、底面部511、521と側面部512、522の双方から電波を発生させられるので、底面部511、521間ないしは底面部521、521上に載置される食材に対して万遍なく電波を照射でき、得られる効果が大きい。
この一対の薄板電極51、52は、間隙Sを設けて相対する形で油槽11内に配置させられる。
【0034】
この一対の薄板電極51、52は、その底面部511、521の裏面側に絶縁体23が取り付けられている。また、この絶縁体23は外側に僅かに張り出しており、これによりフライヤー用電波発生装置5は、底面側や側面側において、油槽11や加熱装置12等の部材に当接することなく、電気的に絶縁した状態を確保している。
なお、絶縁体53の絶縁素材としては、ポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン−登録商標−)等のフッ素樹脂などを用いることができる。
【0035】
また、薄板電極51、52の底面部511、521には、複数の六角形状の貫通孔5aが穿設されている。六角形状の貫通孔5aが設けられていることで、加熱時、油槽11内の調理用油が貫通孔5aを通って下方から上方へ上昇すると、スパイラル状の流れを生みだす。そして、この対流にしたがって、油槽11内の調理用油が常にかき混ぜられているような状態になり、油槽11内の調理用油の温度が低下しにくくなっている。
なお、貫通孔5aは、側面部512、522にも設けられていてもよい。
【0036】
また、薄板電極51、52の底面部511、521には、連結具6に連結して取り付けられるための複数のビス止め用の貫通孔5bが穿設されている。この貫通孔5bと、連結具6の貫通孔6aにビス5cを連通させて締結することで、薄板電極51、52と連結具6とを連結することができる。
【0037】
薄板電極51、52の側面部512、522には夫々、一端部に、中継装置内に集約される導線の一端を接続するための端子71、72が設けられている。
この端子71、72は、側面部512、522の一端側の上部に、上方に突出して取り付けられた棒状の部材として構成され、フライヤー用電波発生装置5を油槽11内に設置した際、調理用油の投入量を調整することで、油面から突き出た状態とすることができる。
【0038】
連結具6は、一対の薄板電極51、52の裏面側に取り付けられ、油槽11内の加熱装置6上に薄板電極51、52を支持すると共に、一対の薄板電極51、52を連結している。
この連結具6は、ポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン−登録商標−)等のフッ素樹脂などの絶縁性材料からなる長方形状の薄板であって、複数の貫通孔6aが穿設されている。ここで、貫通孔6aは、貫通孔5aと同様に六角形状からなり、油槽11内に対流を起こすと同時に、ビス止め用の孔を兼ねている。
【0039】
一対の薄板電極51、52の連結においては、一端側で薄板電極51を下面側から支持した状態で、薄板電極51の貫通孔5bと連結具6の貫通孔6aとにビス5cが連通して締結されると共に、他端側で薄板電極52を下面側から支持した状態で、薄板電極52の貫通孔5bと連結具6の貫通孔6aとにビス5cが連通して締結され、これにより薄板電極51、52同士が連結されている。
なお、薄板電極51、52の貫通孔5b、連結具6の貫通孔6aが共に、連結方向に沿って複数設けられていることから、任意の貫通孔5b、貫通孔6aによって薄板電極51、52と連結具6をビス5cで連結することにより、薄板電極51、52間の間隙Sを所望の長さに設定することができる。また、連結具6が絶縁性素材からなることで、薄板電極51、52同士、さらには加熱装置12と薄板電極51、52との絶縁性が担保されている。
【0040】
中継装置は、薄板電極51に高周波電流を流す発振器と、薄板電極51、52間の電流値を測定する測定器を内蔵しており、外部電源と接続して、これらの発振器や測定器に電力が供給される。
一対の薄板電極51、52夫々の端子71、72には、導線の一端が接続されており、他端は中継装置内に集約されている。
【0041】
中継装置内において、薄板電極51の端子71と接続する導線は発振器と接続しており、発振器からは、薄板電極51に対して高周波電流が流される。
一方、薄板電極52の端子72と接続する導線はアースに接続されている。
なお、薄板電極52には、薄板電極51、52間に大きな電流が流れた場合に、装置の故障を防ぐため、ヒューズや電流遮断装置など、装置を保護するための部品や装置を取り付けておいてもよい。
【0042】
さらに、端子71、72と接続する導線は、薄板電極51、52間の抵抗値を測定する測定器に接続している。この測定器は、導線を流れる電流に基づいて、薄板電極51、52間の電流値ないしは抵抗値を常時、又は断続的に測定している。
発振器は、この測定器による測定に基づき、薄板電極51、52間の電流値を所定の値に保つべく、高周波電流の強度を調整することができる。
【0043】
以上の構成からなるフライヤー用電波発生装置5において、薄板電極51に高周波電流が流されると、間隙Sによって絶縁された一対の薄板電極51、52間に振動電流が発生する。そして、振動電流は電波(電波)を発生させ、この電波が油槽11内の食材に照射される。
【0044】
この点、本例でも、フライヤー用電波発生装置2と同様、電波として150kHz以下の長波を用いるのが好適である。長波を用いることで、フライヤー用電波発生装置5周辺をシールドする必要がないし、対象物内の水分に対してエネルギーを付加しすぎることなく微小振動させることができる。
【0045】
なお、本実施形態に係るフライヤー用電波発生装置5は、薄板電極51、52に設けられた複数の貫通孔5bのうちの所定の貫通孔5bと、連結具6に設けられた複数の貫通孔6aのうちの所定の貫通孔6aとをビス止めすることにより、間隙Sの長さを可変としたが、他の構造によることもできる。
例えば、上面が開口したガイドレールと、当該ガイドレール内に嵌め込まれ、外周面にネジ溝が切られた調整ボルトからなる絶縁性の支持具を用いることができる。
調整ボルトには、調整ボルトに螺合すると共に、この調整ボルトを回すことによって、調整ボルト及びガイドレール上を長さ方向に摺動する支持板を取り付けておき、支持板上に一対の薄板電極51、52を支持させる。調整ボルトを回して、支持板を調整ボルト及びガイドレールの長さ方向に摺動させることによって、一対の薄板電極51、52は互いに接近したり、離間したりすることができる。これにより、一対の薄板電極51、52間に所望の長さの間隙Sを設けることができる。
なお、このような支持具を、中継装置の制御に基づいて動作可能なものとし、測定器による測定に基づき、薄板電極51、52間の電流値を所定の値に保つべく、間隙Sの長さを調整することができるようにしてもよい。
【0046】
また、以上の本実施形態に係るフライヤー電波発生装置2(5)において、L字状の薄板電極21(51)、22(52)を取り付ける向きを任意の向き変えてもよい。即ち、フライヤー電波発生装置2では、底面部211、221が油槽11内の底面と向き合い、側面部212、222が油槽11内の側面に向き合うように薄板電極21、22を配置しているが、底面部211、221と側面部212、222が共に油槽11内の側面に向き合うように配置してもよい。また、互いに向き合う薄板電極21、22が、互いと線対称あるいは点対称な位置に配置されてもよい。
また、L字状の薄板電極21(51)、22(52)は、L字に屈曲させず、四分円の円弧状に湾曲させた形状のものとすることもできる。
このよう、L字状の薄板電極21(51)、22(52)を任意の向きに向けて配置した場合や、円弧状に湾曲させた構成とした場合でも、互いとの絶縁性及び油槽11との絶縁性を確保することで上記のとおりの作用を奏することができる。
【0047】
以上の本実施形態に係るフライヤー用電波発生装置2(5)による調理について説明する。
まず、フライヤー1の油槽11内にフライヤー用電波発生装置2(5)を設置する。この際、フライヤー用電波発生装置2(5)の薄板電極21(51)、22(52)は、絶縁体23(53)、さらには絶縁素材からなる連結具6(フライヤー用電波発生装置5の場合)などにより、油槽11とは電気的に絶縁した状態となっている。
【0048】
次に、油槽11内に調理用油を投入し、フライヤー用電波発生装置2(5)及び加熱装置12を起動させ、調理用油を加熱する。
調理用油が調理に適した温度になったら、油槽11内に食材を投入する。
【0049】
この状態において、発振器からは薄板電極21(51)に高周波電流が流され、これにより薄板電極21(51)、22(52)間に振動電流が惹起されて電波が発生し、油槽11中の食材に電波が照射される。
電波が照射された食材の内部では、水分子を繋ぐ振動子の振動や、クラスターの微細化が生じており、その結果、短い時間で調理でき、また、水分を内部に閉じ込めつつ表面をカラッと揚げて、食味の良いものにすることができる。また、これと同時に、油の酸化・劣化がより効果的に抑制される。
さらに、薄板電極22(52)がアースに接続されているため、感電の危険性がなく、安全に使用することができる。
【0050】
以下では、上述した本実施形態に係るフライヤー用電波発生装置2(5)を用いたフライヤー1により、食材を調理した場合の効果を検証した。
この検証では、幾つかの食材の中から、調理前後における極性化合物量の大きいイカ軟骨の唐揚げを対象として、極性化合物量(TMP)、酸価値(AV)、過酸化物価(PV)、トランス脂肪酸含有量、うま味(グルタミン酸の含有量)を評価した。
【0051】
なお、酸価値については、以下のとおりに計算している。
酸価値=A×F×5.611/B
A: 0.1mol/l エタノール性水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)
F: 0.1mol/l エタノール性水酸化カリウム溶液の力値
B: 試料の採取量(g)
【0052】
また、過酸化物価については、以下のとおりに計算している。
過酸化物価(meq/kg)=A×F×10/B
A:0.01mol/l チオ硫酸ナトリウム標準液の滴定量(ml)
F:0.01mol/l チオ硫酸ナトリウム標準液の力値
B:試料の採取量(g)
【0053】
<調理方法>
調理方法1では、フライヤー用電波発生装置2を起動させた状態で、イカ軟骨唐揚げ(冷凍、未加熱)を1日当たり6kg、5日間調理し、計30kg揚げた。
また、調理方法1に対する比較例として、調理方法2では、フライヤー用電波発生装置2(5)を起動させずに、イカ軟骨唐揚げ(冷凍、未加熱)を同様に、1日当たり6kg、5日間調理し、計30kg揚げた。
そして、一日ごとに揚げた後の油をサンプルとして耐熱ビンに採取、冷凍保存し、分析サンプルとした。
なお、食用油は、23リットル用い、調理過程で減少した分は随時、補充した。
【0054】
<極性化合物量(TMP)>
図5は、調理方法1及び調理方法2におけるTMP値の経時変化を示しており、
A:調理方法1
B1:調理方法2において、一対の薄板電極21、22の内側から採取
B2:調理方法2において、一対の薄板電極21、22の外側から採取
である。
【0055】
また、
図6も同様に、調理方法1及び調理方法2におけるTMP値の経時変化を示しており、
A:調理方法1
B’:調理方法2において、一対の薄板電極21、22の内側と外側(油槽11内)における平均値
である。
【0056】
この結果によれば、調理方法1に比べ、調理方法2によれば、調理時間を6分から4.5分に短縮することができ、TMP値の上昇を抑えることができることが分かった。
また、一対の薄板電極21(51)、22(52)の内外においても、TMP値に差が生じており、一対の薄板電極21(51)、22(52)の内側に食材を配置して調理することにより、高い効果を得られることが分かった。
さらに、調理された食材を食した被験者の多くがおいしいと感じるTMP値17.5%に達するまでの日数を求めると、調理方法1では3日間であるが、調理方法2では、一対の薄板電極21(51)、22(52)の内側の場合で6.6日間、一対の薄板電極21(51)、22(52)の内外の平均値では5.3日間と推算された。したがって、フライヤー用電波発生装置2(5)を用い、一対の薄板電極21(51)、22(52)の内側に食材を配置して調理することで、フライヤー用電波発生装置2(5)を用いない場合に比べ、2.2倍長く、おいしく食べられるTMP値17.5%以下で揚げ調理をできることが検証された。
【0057】
<酸価値(AV)>
図7は、調理方法1及び調理方法2における酸価値(AV)を示しており、
A:調理方法1
B:調理方法2
である。
【0058】
試験0日目の油のAV値は0.17であったが、5日目の油の酸価値は、調理方法1で0.28、調理方法2で0.26であった。この結果、フライヤー用電波発生装置2(5)を用いることで、調理済みの油の酸価を0.02(AV)、調理方法1に比して7.1%抑制できることが把握された。
【0059】
<過酸化物価(PV)>
図8に示されるように、過酸化物価は、調理方法2では1.08、調理方法1では1.21であった。したがって、フライヤー用電波発生装置2を用いることで、調理済みの油の過酸化物価を0.13(PV)、調理方法1に比して10.7%抑制できることが把握された。
【0060】
<トランス脂肪酸含有量>
図9に示されるように、試験5日目の油のトランス脂肪酸量は、調理方法1で0.17g/100g、フライヤー用電波発生装置2(5)を用いた調理方法2で0.10g/100g上昇した。よって、フライヤー用電波発生装置2(5)を用いることで、調理済みの油中のトランス脂肪酸を0.07g/100g、調理方法1の9.9%抑制できることが把握された。
【0061】
<うま味(グルタミン酸の含有量)>
うま味はグルタミン酸の含有量として検証した。
HPLC分析の結果、
図10に示されるように、6分付近に見られるグルタミン酸のピークの面積値を比較したところ、調理方法2では159022、調理方法1では137741であった。
よって、フライヤー用電波発生装置2(5)を用いることで、調理方法1に比して1.2倍グルタミン酸が多く含まれていることが分かった。
【0062】
以上のとおり、フライヤー用電波発生装置2(5)を用いることで、食材の揚げ調理において、調理時間を短縮して、長く、よりおいしく食べられるようにすることができることが明らかとなった。
【0063】
以上の実施形態では、フライヤー用電波発生装置2(5)をフライヤー1に適用したが、このフライヤー用電波発生装置2(5)をフライヤー1用途に限定せず、冷蔵庫や冷凍庫内に設置して駆動させれば、庫内の食料品の鮮度維持の効果を奏することもできる。即ち、フライヤー用電波発生装置2(5)による電波を食料品に照射し、これにより、食料品中の水分を微振動させることによって、蒸散作用が抑制されるなどして、食料品の鮮度を維持することができる。
また、コーヒーメーカーに設置し、コーヒーサーバの受け具としてフライヤー用電波発生装置2(5)を設置すれば、コーヒーに電波を照射することで、コーヒーの美味しさを維持することにも効果がある。
【0064】
また、本発明は、検体、血液、臓器、薬品などの医療分野、化粧品、健康食品などの美容・健康分野にも応用可能である。具体的には、薬品や化粧水など、水分を内包するものであれば、フライヤー用電波発生装置2(5)による電波を照射して水分を微振動させることができ、これにより品質維持あるいは向上といった効果を得ることができる。
さらには、鮮度維持、解凍、保蔵、ドリップレス解凍、ドリップレス冷凍食品の製造ができる家庭用・業務用のプレハブ、コンテナ、備蓄倉庫、船、電車、飛行機、車内用揚げ物ウォーマー、おでん器、野菜のオープンショーケース、ケーキのショーケース、肉まん・飲茶のショーケース、餃子焼き器、ゆで麺器、温蔵庫、飛行機用ワゴンなどに応用することも可能である。