特許第6236666号(P6236666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6236666ポリアミド−410含有モノフィラメントを含むブラシ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236666
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ポリアミド−410含有モノフィラメントを含むブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46D 1/00 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   A46D1/00 101
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-535121(P2014-535121)
(86)(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公表番号】特表2014-528338(P2014-528338A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2012070487
(87)【国際公開番号】WO2013057102
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年9月16日
(31)【優先権主張番号】11185487.3
(32)【優先日】2011年10月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】マトゥアー, サンジェイ
(72)【発明者】
【氏名】クローン, ド, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リグトハルト, ゴデフリドゥス ベルナルドゥス ヴィルヘルムス レオナルドゥス
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−132519(JP,A)
【文献】 国際公開第2000/009586(WO,A1)
【文献】 特開昭61−231214(JP,A)
【文献】 特許第3685758(JP,B2)
【文献】 特開平10−201538(JP,A)
【文献】 特表2001−503650(JP,A)
【文献】 特開2011−200352(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/138397(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 1/00−17/08
A46D 1/00−99/00
A61C 17/22−17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドの全量に対して少なくとも80重量%のポリアミド−410を含むポリアミドを含有するモノフィラメントを含み、
前記ポリアミド−410の粘度数が100〜200ml/gである、ブラシ。
【請求項2】
前記ポリアミドが、実質的にポリアミド−410からなる請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
前記ポリアミド−410の粘度数が少なくとも120ml/gである請求項1または2に記載のブラシ。
【請求項4】
前記ポリアミド−410の粘度数が少なくとも140ml/gである請求項1〜3のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項5】
前記モノフィラメントが二酸化チタンをさらに含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項6】
前記ブラシが歯ブラシである請求項1〜5のいずれか一項に記載のブラシ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ポリアミド含有モノフィラメントを含むブラシ、特にこれらのモノフィラメントを含む歯ブラシに関する。
【0002】
ナイロンとしても知られているポリアミドを含有するモノフィラメントを含むブラシは知られており、例えば英国特許出願公開第800610A号明細書に記載されている。英国特許出願公開第800610A号明細書には、ナイロンモノフィラメントを含むブラシが記載されており、この用途のためのナイロン−66およびナイロン−610に言及している。ブラシ、特に歯ブラシでの用途では、所謂「湿潤時曲げ回復性」がモノフィラメントにとって必須の特性である。「湿潤時曲げ回復性」とは、濡れている間の変形後、元の形に戻る材料の能力のことをいう。湿潤時曲げ回復性が高いということは、モノフィラメントが容易に元の形に戻ることを意味し、例えば、これらのモノフィラメントを含むブラシをより長期間使用することが可能になる。
【0003】
したがって、本発明の目的は、高い湿潤時曲げ回復性を示す、ポリアミドからなるモノフィラメントを含むブラシを提供することにある。
【0004】
驚いたことに、この目的は、ポリアミド−410を含むポリアミドを含有するモノフィラメントを含むブラシを提供することにより達成された。PA−410を含むポリアミドを含有するモノフィラメントは、国際公開第00/09586号パンフレットで知られている。しかしながら、国際公開第00/09586号パンフレットには、湿潤状態でのフィラメントの特性について記載されておらず、またそれらをブラシで使用することについて記載されていない。
【0005】
[ポリアミド−410]
本明細書では、ポリアミド−410は、10個の炭素原子を有するジカルボン酸と4個の炭素原子を有するジアミンから誘導されるモノマー単位を含むポリアミドであると理解される。ジカルボン酸としては、1,10デカン二酸の使用が好ましい。ジアミンとしては、1,4−ブタンジアミンの使用が好ましい。PA−410は、さらに他のモノマー単位、例えば、10個未満の炭素原子を有するジカルボン酸、または4個超の炭素原子を有するジアミンを、ポリアミド全量に対し最大30重量%まで含んでもよい。本発明のブラシに使用されるモノフィラメントに使用されるPA−410は、カルボキシル基間に10個の炭素原子からなる原子鎖を有するジカルボン酸と、4個の炭素原子を有するジアミンを、ポリアミドの全量に対して少なくとも80重量%含むことが好ましく、ポリアミドの全量に対して少なくとも90重量%含むことがより好ましく、ポリアミドの全量に対して少なくとも95重量%含むことがより一層好ましく、少なくとも99重量%含むことがより一層好ましく、ポリアミドの全量に対して少なくとも99.9重量%含むことが最も好ましい。
【0006】
本発明のブラシで使用するモノフィラメントは、ポリアミドの全量に対して、好ましくは少なくとも40重量%のポリアミド−410、より好ましくは少なくとも50重量%のポリアミド−410、最も好ましくは少なくとも60重量%のポリアミド−410を含むポリアミドから製造される。ポリアミドは実質的にPA−410からなることが最も好ましい。好ましい実施形態では、ポリアミド含有モノフィラメントは他のポリマーを含まない。
【0007】
他の重要な改良点は、ポリアミド−410が少なくとも部分的に再生可能資源をベースとし得るため、本発明のモノフィラメントが、もはや完全には化石系炭素をベースとしないことである。モノフィラメントのポリアミドが、たとえ、ほんのわずかのポリアミド−410を含有し、そしてまた他ポリマーを含有するにしても、このことは特に有利である。少なくとも部分的に天然資源由来のモノマーをベースとするPA410をモノフィラメントに使用することにより、特にモノフィラメント工業、およびその用途では、既に地球温暖化ガスおよびCOの重要な削減をもたらしている。
【0008】
本発明のブラシに使用するモノフィラメントの他の利点は、湿潤時の剛性保持力が良好なことである。本明細書では、「湿潤時剛性保持力」は、通常、ISO5271Aにしたがって、例えば相対湿度0%などの乾燥条件と比較した、高湿下、すなわち相対湿度50%下で、引張弾性率としてMPaの単位で測定される剛性を保持する能力であると理解される。湿潤時の高い剛性保持力を歯ブラシに適用すると、歯磨きは湿潤状態で行われるものであるため、快適な歯磨き感が得られる。このように、モノフィラメントは、非常に良好な湿潤時曲げ回復性と良好な湿潤時剛性保持力とを併せ持つとき、歯ブラシの毛として有利に使用できる。
【0009】
ポリアミド−410は、例えば、実施例に記載するようにして調製することができる。モノフィラメントは、ポリアミド−410の粘度数(VN)が少なくとも100ml/gであることが好ましく、少なくとも110ml/gであることがより好ましく、少なくとも120ml/gであることがより一層好ましく、少なくとも140ml/gであることが最も好ましい。粘度が高いほど、モノフィラメントの機械的特性が改善されるであろう。粘度数は高くとも200ml/gであることが好ましい。粘度数が高すぎると、紡糸機の処理能力が限定される。粘度数は、ISO 307、2007年版にしたがい、ギ酸(90重量%)中、濃度0.005g/mlで、25℃で測定される。
【0010】
[モノフィラメント]
本発明のブラシに使用するモノフィラメントは、1マイクロメートル〜1.5mmの平均直径を有することが好ましい。モノフィラメントは、15マイクロメートル〜1.2mmの平均直径を有することが好ましい。モノフィラメントは、ポリアミドを溶融させ、その後、ダイスに通して押し出すことにより製造できる。ダイスを出た後、モノフィラメントは急冷浴で冷却されることが好ましい。高品質のモノフィラメントを製造するために、糸を互いに離れた状態に維持することが好ましい。これは、分離ガイドまたは櫛によりなし得る。エアーギャップの長さ、すなわち紡糸板と水表面の距離は、モノフィラメントの表面および機械的特性に影響し得る。モノフィラメントに要求される特性に応じて、少なくとも単段または少なくとも2段の延伸工程を、例えば温浴中、または熱風炉もしくは赤外線加熱炉オーブン中で行うことができる。2段延伸プロセスの第2段は、通常、熱風炉中で行われ、第1段の温度より高い温度が要求される。非常に精密な交差が要求される場合、第1段に水浴を使用することが好ましい。
【0011】
延伸比および適用する温度は、モノフィラメントの分子の物理的構造に影響する。引張強さ、伸び、弾性率、耐熱性および非反応性染料による染色性などの多くの特性が物理的構造に依存するため、延伸プロセスはモノフィラメントの特性に広く、かつ多様な影響を及ぼす。
【0012】
任意選択による第3の工程として、熱安定性、引張強さ、破断伸びおよび染色性などのモノフィラメントの特性は、固定または緩和により所望のレベルに調整することができる。許容される緩和の割合および適用する温度は、最終的に要求される特性に大きく依存する。適切な固定/緩和を達成するには、第3工程におけるモノフィラメントの温度は、延伸過程での温度に少なくとも等しくすべきであり、むしろ通常はそれより高くすべきである。加熱炉の温度設定は、ライン速度、モノフィラメントの直径、炉長および気流速度に大きく依存する。
【0013】
本発明のブラシに使用するモノフィラメントは、白色の外観を与えるために、二酸化チタンなどの顔料を含むことが好ましい。本発明のモノフィラメントはまた、透明性をより高めるために、エチレンビスステアリルアミン(EBA)などの潤滑剤を含んでもよい。
【0014】
モノフィラメントは、毛、好ましくは歯ブラシの毛に有利に使用することができる。このように、本発明はまた、モノフィラメントを含む歯ブラシに関する。歯ブラシは良好な湿潤時曲げ回復性と良好な湿潤時剛性保持力を併せ持つ。これにより、歯ブラシを廃棄する必要が生じるまでに、より長期に亘る使用が可能になる。さらにこれは、より長期間使用できることと、ブラシの少なくとも一部が再生可能資源から作られていることの両方から、CO削減においても有利である。
【0015】
[実施例]
[PA−410の調製]
不活性な2Lのオートクレーブ反応器中で、410塩の45%溶液を調製した。348.2gの固体1,10−デカン二酸を加える前に、1,4−ジアミノブタンの67.5%溶液230mlを65℃で540mlの水に加えた。反応器の最大圧力を2barAに設定した。塩溶液を60分で153℃まで加熱した。この過程で、水の濃度が153℃で10%になるよう、過剰の水を蒸留除去した。反応器の圧力を12barAに設定した。410塩溶液を15分以内に加熱して圧力を12barAとし、それにより塩溶液を重合させた。溶融ポリマーが得られ、かつ温度が250℃に達するまで、12barAを維持しながら、さらに多くの水を蒸留除去する。250℃に達すると、60分で265℃へと加熱しながら、また溶融ポリマーをさらに重合させながら、反応器を1.02barAまで減圧した。溶融ポリマーをさらに290℃に加熱し、1.02barAで16時間その温度に維持した。溶融ポリマーの水を少量の窒素流れにより除去した。重縮合段階の終了後、水浴中へ内容物を注いで反応器を空にしてポリマーのストランドを得、これを切断して粒状とした。PA−410ポリマーは、90%ギ酸中、179ml/gの溶液粘度を有していた。
【0016】
PA−410を270℃の温度にして溶融させ、その後、ダイスに通して押し出すことにより、直径0.2mmのモノフィラメントを得た。
【0017】
[測定]
[粘度数(VN)]
ISO 307 2007年版にしたがい、PA−410試料を0.005g/mlの濃度でギ酸(90重量%)に溶解させ、ウベローデ(Ubelohde)粘度計により、溶媒の流下時間(t0)と溶液の流下時間(t1)を25℃で測定し、式VN=[(t1/t0)−1]×200ml/グラムから粘度数を計算することにより、粘度数を求めた。
【0018】
[ピンチ曲げ回復試験]
所謂、ピンチ穴曲げ回復法により、各種モノフィラメントについて曲げ回復試験を行った。この方法は、各種サイズの金属板の穴を使用する(それぞれ、1.5mm、2.5mmおよび3.5mmの穴を有する板A、BおよびC)。以下の手順を用いた。
【0019】
20±1℃の温度の水にモノフィラメントを18時間浸漬した。穴の中央にモノフィラメントを置き、モノフィラメントをもつれさせないように、鈍器を用いて穴の中に静かに押し込んだ。モノフィラメントが穴の半径からはみ出さないように位置決めした。
【0020】
モノフィラメントを含む金属板を50±2℃の水に2分間、その後20±2℃の水に30秒間浸漬した。板を水から取り出し、モノフィラメントを穴から取り出した。20±2℃の水を満たしたペトリ皿の中にモノフィラメントを入れた。15分間の浸漬後、モノフィラメントを取り出し、モノフィラメントが平滑面上に横にして置かれているのを確認しながら、夾角を測定した。
【0021】
回復率を式[1]により算出した。
回復率=夾角×100/180% [式1]
結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
驚いたことに、表1は、歯ブラシ用繊維に通常使用されている、特にPA−610およびPA−612と比べて、PA−410が3つの全ての径で高い回復率を有することを示している。
【0024】
[マンドレル湾曲回復試験]
直径2.5mmの心棒に繊維を接着し、10回巻き付ける心棒回復試験も行った。この後、心棒に巻いた繊維をその位置のまま室温で1時間放置し、その後心棒から繊維を切り離して、水が入った皿の中で1時間回復させた。%で表される心棒湾曲回復性は、回復期間の最後における繊維の巻き数に対する心棒に巻きつけた巻き数である。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
これらの試験はまた、特に、歯ブラシ用繊維に通常使用されているポリアミド−610およびポリアミド−612と比較して、PA−410からなるモノフィラメントが非常に高い回復性を有することを示している。
【0027】
ISO 527 1Aにしたがって、PA−410板の引張弾性率を測定し、他のポリアミドと比較した。結果を表3に示す。
【0028】
【表3】

【0029】
PA−410の剛性保持率は、PA−6およびPA−66より高いことが示されている。しかしながら、PA−410の本質的により高い剛性のために、湿潤状態でのPA−410の剛性もまたPA−610およびPA−612の剛性より高い。これらのデータは、湿潤時曲げ回復性の結果と併せて、本発明のモノフィラメントが、例えば歯ブラシ用の毛の用途で要求される、これらの特性の最良の組み合わせを与えることを示している。