特許第6236670号(P6236670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236670ビール様アルコール飲料およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236670
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ビール様アルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/00 20060101AFI20171120BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C12G3/00
   C12C5/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-279623(P2012-279623)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-121292(P2014-121292A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一
(72)【発明者】
【氏名】島田 研作
(72)【発明者】
【氏名】勝田 康夫
【審査官】 厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−223987(JP,A)
【文献】 特開平08−000249(JP,A)
【文献】 特開平07−327659(JP,A)
【文献】 特開2011−200225(JP,A)
【文献】 特開2009−124994(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/136331(WO,A1)
【文献】 特開2005−261425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 1/00 − 3/14
C12C 1/00 − 13/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/FROSTI/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料混合工程、糖化工程および発酵工程を含むビール様アルコール飲料の製造方法であって、
メチル化分析において、β結合及びα−1,2結合を含まず、α−1,3結合またはα−1,6結合のいずれかを20〜30%含む分岐デキストリンを、前記分岐デキストリン由来の糖質が製品中に0.1〜5.0質量%含まれるように、原料混合工程および/または糖化工程に添加することを特徴とし、
前記分岐デキストリンが、β−アミラーゼで加水分解した時に、加水分解生成物(乾燥固形物)中に、重合度(DP)3以上の糖質成分を60質量%以上生成する分岐デキストリンである、ビール様アルコール飲料の製造方法。
【請求項2】
前記分岐デキストリンが、α−1,4結合を60〜80%含む、請求項1に記載のビール様アルコール飲料の製造方法。
【請求項3】
糖化工程に、麦芽および/または糖化酵素を使用する、請求項1又は2に記載のビール様アルコール飲料の製造方法。
【請求項4】
製品中に、分岐デキストリン由来の糖質が0.8〜5.0質量%含まれるように、分岐デキストリンを原料混合工程および/または糖化工程に添加する請求項1〜3のいずれか1項に記載のビール様アルコール飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味や味質等の香味、およびボディ感のバランスに優れたビール様アルコール飲料およびその製造方法に関し、特に、原料混合工程に、糖化工程および発酵工程を含むビール、発泡酒あるいは麦芽を使用しないビール風発酵飲料等のビール様アルコール飲料の製造方法であって、原料混合工程および/または糖化工程で分岐デキストリンを投入することを特徴とする、香味、ボディ感のバランスに優れた、安価なビール様アルコール飲料、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡酒などのビール様アルコール飲料は、年々多様化してきており、様々な商品が毎年上市されている。しかしながら、発泡酒や、麦芽を使用しないビール様アルコール飲料などでは、使用している原材料が、従来のビール原料と異なるために、風味や味質等の香味や、ボディ感などが劣る、いわゆる「まずいビール」になっているものがほとんどであった。
このような欠点の改善のために、ビール様アルコール飲料の香味やボディ感のバランスを改善する方法として、種々の方法が開示されている。
【0003】
例えば、イソマルトオリゴ糖を添加する方法(特許文献1、2参照)が、難消化性デキストリンやポリデキストロース等の水溶性食物繊維を添加する方法(特許文献3〜5参照)が、煮沸工程でデキストリンを添加する方法(特許文献6参照)が開示されている。
【0004】
これらのビール様アルコール飲料の製造方法は、酵母による非資化性の糖質を用いて、それらを製品中に残存させて、製品のコク味や旨味を増強させる方法であるが、特許文献1や2に記載のイソマルトオリゴ糖の添加では、ボディ感が得られにくく、また甘味も強くなるという問題点がある。また、特許文献3〜5に記載の水溶性食物繊維の添加では、原料価格が高く、製品価格も高くなるという問題点がある。特許文献6に記載のデキストリンの添加では、糖化工程で投入すると、麦芽に含まれる糖化酵素によって、投入したデキストリンの70%程度が、資化性糖に分解されてしまうため、糖化酵素を失活させるために煮沸工程を行ってから投入する必要があり、製造工程が一段階増加するという問題があった。
【0005】
また、特許文献7には、マルトトリオシル転移酵素を糖化工程に添加するビール様飲料の製造方法が開示されている。この方法で、麦汁中の非資化性糖質が増加するが、製品の評価は行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−68529号公報
【特許文献2】特開平7−6872号公報
【特許文献3】特開2005−261425号公報
【特許文献4】特開2006−6342号公報
【特許文献5】特開2007−6872号公報
【特許文献6】特開2011−223987号公報
【特許文献7】WO2012−105532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、従来のビール様アルコール飲料と比較して、香味およびボディ感のバランスに優れ、従来よりも安価なビール様アルコール飲料、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、香味およびボディ感のバランスに優れたビール様アルコール飲料の製造方法について鋭意検討する中で、原料混合工程、糖化工程及び発酵工程を含む、発泡酒などのビール様アルコール飲料の製造において、原料混合工程および/または糖化工程で、分岐デキストリンを添加することにより、ボディ感の付与と同時に、香味のバランスが格別に優れたビール様アルコール飲料を安価に製造する方法を開発し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ビール様アルコール飲料の製造に際して、原料混合工程および/または糖化工程に、メチル化分析において、α−1,3結合またはα−1,6結合のいずれかを10%以上含む分岐デキストリンを添加することを特徴とする、香味、ボディ感のバランスに優れたビール様アルコール飲料の製造方法からなる。
上記製造方法において使用される分岐デキストリンは、β−アミラーゼで加水分解した時に、加水分解生成物(乾燥固形物)中に、重合度(DP)3以上の糖質成分を50質量%以上生成する分岐デキストリンであることが好ましい。
また、糖化工程では麦芽および/または糖化酵素を使用することが好ましい。
【0010】
本発明におけるビール様アルコール飲料には、ビール、発泡酒、あるいは麦芽を使用しないビール風発泡飲料等が包含される。
【0011】
本発明のビール様アルコール飲料の製造方法においては、分岐デキストリン由来の糖質が、最終製品(ビール様アルコール飲料質量)の全質量に対して、0.1〜5.0質量%となるように、分岐デキストリンを副原料として添加することが好ましい。本発明のビール様アルコール飲料の製造方法において、分岐デキストリンは、原料混合工程および/または糖化工程に、副原料として添加することができる。
【0012】
また、本発明は、上記ビール様アルコール飲料の製造方法によって製造された、分岐デキストリン由来の糖質を0.1〜5.0質量%の範囲で含む安価で香味およびボディ感のバランスに優れたビール様アルコール飲料を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のビール様アルコール飲料の製造方法によれば、分岐デキストリンを原料混合工程および/または糖化工程で投入することにより、製品に風味やキレ等の香味を有し、しかもボディ感があり、これらの香味とボディ感のバランスが格別に優れたビール様アルコール飲料を安価に製造することができる。また、本発明は、該香味バランスに優れた、安価に製造できるビール様アルコール飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ビール様アルコール飲料の製造に際して、原料混合工程および/または糖化工程で分岐デキストリンを投入することにより、安価で香味およびボディ感のバランスに優れたビール様アルコール飲料の製造方法からなる。
【0015】
本発明において、「ビール様アルコール飲料」とは、ビール、発泡酒、麦芽を使用しないビール風発酵飲料(いわゆる第3のビール)またはその他のビール様アルコール飲料を包含する。
【0016】
本発明における「原料混合工程」とは、麦芽および副原料、水などを混合する工程を言う。
本発明における「糖化工程」とは、麦芽の糖化酵素、および市販の糖化酵素のうちいずれか、もしくは双方を利用することによって、麦芽および副原料の澱粉質の加水分解を行う工程を言う。
【0017】
本発明に使用する分岐デキストリンは、好ましくは糖化工程で非発酵性糖質を多く生成するデキストリンである。具体的には、下記条件でβ−アミラーゼ消化し、生成物を分析した時に、3糖類以上(DP3以上の成分)の割合が加水分解生成物(乾燥固形分)質量に対し50質量%以上となる分岐デキストリンであることが好ましい。
【0018】
本発明における分岐デキストリンのβ−アミラーゼによる加水分解及びその加水分解物の分析は、以下の通りに行うことができる。分岐デキストリン1g(固形分重量)を精秤し、2.0mlの0.5M酢酸バッファー(pH3.9)に溶解し、精秤した約0.1gのグリセロールを内部標準物質として加えたものを、10.5mlの純水で希釈し、その溶液にサツマイモ由来のβ−アミラーゼ(シグマ製、A7005)を1000単位添加し、60℃で60分間加水分解反応を実施した。反応終了後、95℃、15分間の失活反応をした溶液を、イオン交換樹脂で脱塩し、ロータリーエバポレーターでBx=5に濃縮したものを、HPLCで分析する。HPLCの条件は以下の通りである。
カラム:東ソー TSK−GEL 2500pwxl 2本直列
カラム温度:80℃
溶出:水(0.5ml/min)
検出器:示唆屈折率検出器
【0019】
また、本発明に使用する分岐デキストリンは、メチル化分析において、α−1,3結合またはα−1,6結合の割合が分岐デキストリン内の全結合数に対して10%以上である。更に好ましくはα−1,3結合またはα−1,6結合の割合が20%以上である。
本発明におけるメチル化分析は、Ciucanら(Ciucan et al. (1984) Carbohydr. Res. 131: 209-217)に記載の方法に従って行うことができる。
【0020】
本発明のビール様アルコール飲料は、副原料として添加した分岐デキストリン由来の糖質が、製品中に0.1〜5.0質量%含まれていることを特徴とする。分岐デキストリン由来の糖質の好ましい含量は0.8〜2.5質量%である。
また、本発明のビール様アルコール飲料は、添加した分岐デキストリン由来の糖質を含むことを要件とするが、品質に悪影響を及ぼさない限り、さらにその他の糖質を含んでいても良い。
【0021】
前述のごとく、本発明に用いる分岐デキストリンは、β−アミラーゼによる加水分解生成物(乾燥固形物)中に、重合度3以上の糖質を50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことが更に好ましい。
また、メチル化分析による構造解析において、α−1,3およびα−1,6結合のいずれかを10%以上含んでおり、20%以上含むことが好ましく、22〜30%含むことが最も好ましい。α−1,4結合の量は特に限定されないが、60〜90%程度含むことが好ましい。当該デキストリンは、市販されており、例えばHBD−20として松谷化学工業(株)から、メガロトース及びブランチオリゴとして日本食品化工(株)から、それぞれ購入することができる。
【0022】
本発明で使用する糖化酵素は、糖の加水分解に関わる酵素全般を指し、具体的にはα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、トランスグルコシラーゼなどが挙げられるが、分岐構造を加水分解することができる酵素、具体的にはグルコアミラーゼやイソアミラーゼ、プルラナーゼなどは包含しない。
【0023】
本発明のビール様アルコール飲料は、一般的に用いられる方法で製造することができる。例えば、麦芽、糖類等の副原料と共に、本発明に使用する分岐デキストリンを加えて、温水と混合し(原料混合工程)、必要に応じてアミラーゼ等の酵素を加えて糖化 (糖化工程)を行い、糖化後ろ過して麦汁を調製する。得られた麦汁にホップを添加し、煮沸後ろ過をして発酵用液を調製し、これに酵母を添加して、常法により発酵・熟成を行う。分岐デキストリンの添加タイミングは前述の麦汁調製前(原料混合工程)に他の副原料と一緒に添加するか、糖化工程の前に添加することが望ましい。
【0024】
糖化工程を経たのちに残留する3糖類以上の糖質(DP3以上の糖質)、および分岐構造を持つ糖質(非発酵性糖質)は、酵母によって分解も資化もされないので、分岐デキストリンの添加量は、製品中に含有させる分岐デキストリン由来の糖質の濃度から、予め計算して求めることができる。
【0025】
本発明においては、製品の全質量に対し、投入した分岐デキストリン由来の糖質が好ましくは0.1〜5.0質量%、更に好ましくは0.8〜2.5質量%となるように、分岐デキストリンを、糖化工程までに添加するが、分岐デキストリンの投入量がこの範囲を外れると、ボディ感と風味のバランスが損なわれてしまい、目的とするビール様アルコール飲料を得ることはできない。
【0026】
このようにして得られるビール様アルコール飲料は、分岐デキストリン由来の糖質によるボディ感、味質改善作用が働いた結果、香味およびボディ感のバランスに優れた、安価で従来にないビール様アルコール飲料を得ることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
(分岐デキストリンのβ−アミラーゼによるリミット反応)
市販の分岐デキストリン3種類(HBD−20、松谷化学工業製、ブランチオリゴ、日本食品化工製、メガロトース、日本食品化工製)と、対照として通常のデキストリン(グリスター、松谷化学工業製)を約1g精秤し、これに2mlの0.5Mリン酸緩衝液(pH5.28)、約0.5gの精秤したグリセロールを添加し、純水を10.5ml加えたのち、サツマイモ由来のβ−アミラーゼを1000単位添加し、60℃で60分、加水分解反応を実施した。反応終了後、95℃、15分で失活反応を行い、イオン交換樹脂で脱塩したのち、HPLC(2500pwxlカラム、東ソー製)により、DP3+の量を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
分岐デキストリンは、β−アミラーゼでの加水分解後でも、DP3以上の成分を50質量%以上含んでいることが明らかになった。
【実施例2】
【0030】
(デキストリンのメチル化分析による構造解析)
市販の分岐デキストリン3種類(HBD−20、松谷化学工業製、ブランチオリゴ、日本食品化工製、メガロトース、日本食品化工製)と、対照として通常のデキストリン(グリスター、松谷化学工業製)をCiucanら(1984)の方法に従って、メチル化分析を実施した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
分岐デキストリンは、α−1,6、α−1,3結合のいずれかを10%以上、より詳細には22〜30%程度含有していることが明らかになった。
【実施例3】
【0033】
(麦芽による糖化および酵母による発酵試験)
表3の処方により、麦芽によりデキストリンがどの程度糖化されるかを検証した。表中、分岐デキストリンとして、添加1ではHBD−20(松谷化学工業製)、添加2ではブランチオリゴ(日本食品化工製)、添加3ではメガロトース(日本食品化工製)を使用した。
【0034】
【表3】
【0035】
コントロール1は麦芽のみのもの、コントロール2は通常のデキストリン(グリスター)、添加1〜3は、麦芽に分岐デキストリンを加えたものとした。
上記配合に、内部標準物質としてトリエチレングリコールを約1g添加し、70℃、2時間の糖化反応を実施した。反応液は、スパージング(熱湯による洗いこみ)を行った後、100℃、1時間煮沸し、一部を回収して、糖組成分析カラム(CK08EC、三菱化学)で成分の分析を実施した。次いで、該麦汁に酵母を添加し、7日間の発酵試験を実施したものを、同様に糖組成分析カラムで成分の分析を実施した。100gのサンプル中に含まれる糖質を表4に示した。
【0036】
【表4】

【0037】
残留デキストリン量の算出は、発酵後の糖質の合計から、コントロール1の糖質量を減算したものである。この結果から、分岐デキストリン添加区(添加1〜3)では、添加量の57〜93質量%が残糖として残留していた。これは、麦芽の糖化酵素により、一部が資化性糖となり、発酵の際に資化されたことによる。従来のデキストリン(コントロール2)では、大半が資化性糖となり、残糖は32質量%であった。したがって、分岐デキストリンを、ビール様アルコール飲料中の糖化工程で投入しても、発酵後の製品に十分な量の糖質を残留させることができることが分かった。
【実施例4】
【0038】
(麦芽量を変動させた場合の糖化および酵母による発酵試験)
まず、表5の処方により、麦芽量を変動させた場合に、分岐デキストリンがどの程度糖化されるかを検証した。表中、分岐デキストリンとして、HBD−20(松谷化学製)を使用した。
【0039】
【表5】
【0040】
コントロール1〜3は麦芽5.5〜14.6gを単独で糖化反応を実施したものとし、添加1〜3は、麦芽を5.5〜14.6gと、分岐デキストリン6.6gを加えたものとした。
麦芽の添加量は、酒税法における発泡酒の規定に含まれるものとした。通常は麦芽と共に、穀類、澱粉、糖類等を添加するが、本実施例においては、分岐デキストリン単独での影響を調査するため、これらを添加せずに実施した。コントロール1/添加1では麦芽25%質量未満、コントロール2/添加2では麦芽50質量%未満、コントロール3/添加3では麦芽50質量%以上にそれぞれ該当する発泡酒が製造できる。
【0041】
上記配合により、内部標準物質としてトリエチレングリコールを約1g添加し、70℃、2時間の糖化反応を実施した。反応液は、スパージング(熱湯による洗いこみ)を行った後、100℃、1時間煮沸し、一部を回収して、糖組成分析カラム(CK08EC、三菱化学)で成分の分析を実施した。次いで、該麦汁に酵母を添加し、7日間の発酵試験を実施したものを、同様に糖組成分析カラムで成分の分析を実施した。これらの結果を表6に示した。
【0042】
【表6】

【0043】
分岐デキストリン量の算出は、実施例1と同様に、発酵後の添加1〜3における糖質の合計から、それぞれコントロール1〜3における糖質量を減算したものである。発酵後の結果から、添加量の55〜60質量%が残糖として残留していた。麦芽の投入量に応じた残存量の増減は認められず、分岐デキストリンの加水分解は、麦芽25質量%未満の発泡酒に使用される程度の麦芽に含まれる糖化酵素によって、ほぼ飽和していることが明らかになった。
【実施例5】
【0044】
(麦芽と糖化酵素を利用した糖化および酵母による発酵試験)
表7の処方の原材料を糖化させる際に、麦芽と共に、β−アミラーゼを反応させた場合に、分岐デキストリンがどの程度糖化されるかを検証した。表中、通常のデキストリンとしてグリスター(松谷化学製)、分岐デキストリンとしてHBD−20(松谷化学製)を使用した。
【0045】
【表7】
【0046】
コントロール1は麦芽のみ、コントロール2は麦芽と通常のデキストリンを混合したもの、コントロール3は通常のデキストリン単独、添加1は麦芽と分岐デキストリン、添加2は分岐デキストリンのみとした。
上記の配合に、内部標準物質として精秤したトリエチレングリコールを約1gと、β−アミラーゼとしてビオザイムL(天野エンザイム製)を80単位添加し、60℃、16時間の糖化反応を実施した。反応液は、スパージング(熱湯による洗いこみ)を実施した後、100℃、1時間煮沸し、一部を回収して糖組成分析カラム(CK08EC、三菱化学)で成分の分析を実施した。次いで、該麦汁に酵母を添加し、7日間の発酵試験を実施したものを、同様に糖組成分析カラムで成分の分析を実施した。これらの結果を表8に示した。
【0047】
【表8】

【0048】
分岐デキストリン量の算出は、実施例1と同様に、コントロール2、3と発酵後の添加1〜3における糖質の合計から、それぞれコントロール1における、麦芽由来の糖質量を減算したものである。発酵後の結果から、通常のデキストリンでは、添加量の30質量%程度が残留したのに対し、分岐デキストリンでは添加量の50〜54質量%が残糖として残留していた。麦芽の糖化酵素と、β−アミラーゼの双方あるいはβ−アミラーゼの単独での加水分解を行った場合でも、投入量の半分以上が発酵液中に残留することが明らかになった。
【実施例6】
【0049】
(残留する糖質量を変化させた分岐デキストリンを使用した発泡酒の製造)
表9の処方により、残留する分岐デキストリン由来の糖質量を変化させた発泡酒を製造した。表中、「分岐デキストリン」として、HBD−20(松谷化学工業製)を使用した。
【0050】
【表9】
【0051】
コントロールは、分岐デキストリンを添加しないもの、添加1〜5は、分岐デキストリンを添加したものとした。添加1〜5は、発酵終了液に内部標準物質を加えてHPLCで定量した際に、分岐デキストリン由来の糖質が、100gあたり0.05〜8gになるように調整した。
【0052】
上記配合により、10日間、酵母による発酵を行った。発酵液は、熟成操作(2次発酵)を行い、珪藻土を利用して発酵液から酵母を取り除き、発泡酒を得た。得られた発泡酒は、HPLCによる定量分析と、5名のパネラーによる官能評価を実施した。評価方法は、表10に示す各評価項目について、コントロールを基準とし、1(弱い)−3−5(強い)の5段階評価とし、評価点の平均値を求めた。また、総合評価は、コントロールを基準とし、1(悪い)−3−5(良い)の5段階評価をし、評価点の平均値を求めた。その結果、各評価項目および総合評価において、添加5までは、コントロールと比較して顕著な差が認められ、添加した分岐デキストリンの非資化性の糖質により、味質が大幅に改善されることが明らかとなった。一方、添加6では、コク味は十分に付与されているが、キレが悪くなり、総合評価はコントロールより低くなった。
【0053】
【表10】
*発泡酒100g中の質量に換算した