(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236671
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】インタークーラの冷却構造
(51)【国際特許分類】
F02B 29/04 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
F02B29/04 K
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-108731(P2013-108731)
(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公開番号】特開2014-227931(P2014-227931A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】原田 央
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−011118(JP,A)
【文献】
特開2006−273097(JP,A)
【文献】
実開昭64−047936(JP,U)
【文献】
特開2010−196643(JP,A)
【文献】
特開2006−159994(JP,A)
【文献】
特開2001−039339(JP,A)
【文献】
実開平02−109724(JP,U)
【文献】
実開平02−109723(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 29/04
F01P 1/06
B60K 11/04
B62D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行風を導入することによりインタークーラを冷却可能なインタークーラの冷却構造であって、
車両の進行方向前方側に設けられた走行風取込口から前記インタークーラに向かう送風経路で走行風を送る送風ダクトが設けられており、
前記送風ダクトが、前記走行風取込口から前記送風経路の下流側に向けて延設される第一送風ダクトと、前記インタークーラから前記送風経路の上流側に向けて延設される第二送風ダクトとを備えており、前記第一送風ダクトから出た気流を前記第二送風ダクトにおいて受け止め、インタークーラに沿う方向に気流を偏向させることが可能とされており、
前記送風経路の中途において前記第一送風ダクトと第二送風ダクトとが分断されており、
前記インタークーラにおいて冷却用の走行風が通気可能な通気領域よりも前記走行風取込口側まで、前記第二送風ダクトが延設されていることを特徴とするインタークーラの冷却構造。
【請求項2】
前記第二送風ダクトに、前記インタークーラ側から前記送風経路の上流側に向けて跳ね返る気流を、前記インタークーラ側に偏向させる偏向部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインタークーラの冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行風を導入することによりインタークーラの冷却を行うためのインタークーラの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1〜3に開示されているような構成を採用することにより、走行風を用いてインタークーラの冷却がなされている。特許文献1の車両の外気取入構造においては、車両前端に中央ダクトを設け、この中央ダクトから取り入れた外気をエアダクトを介して車体内部に設けられたインタークーラに対して直接的に導入可能とされている。また、特許文献2の車両におけるインタークーラへの走行風案内装置においては、インタークーラ側に取り付けられたカバーの開口幅を、外気導入用の開口に繋がるダクトの下流端の開口幅よりも大きくすることで、冷却用の外気を効果的に取り込む構造とされている。また、特許文献3の車両のインタークーラ冷却用ダクトにおいては、エンジンフードを閉じた際にインタークーラ冷却用ダクトの気密性が十分確保されるようにする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−029028号公報
【特許文献2】特開2010−196643号公報
【特許文献3】特開2001−039171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1に開示されているような外気取入構造を採用した場合には、エアダクトを介して導入された外気が、インタークーラに当たって拡散してしまい、外気の取り込み量に対して十分な冷却効率が得られないという問題がある。
【0005】
一方、上記特許文献3のような構成を採用した場合には、インタークーラ冷却用ダクトの機密性を確保するために高い組み付け精度や部品の寸法精度等が求められる。また、上記特許文献2のような構成を採用した場合には、上記特許文献1の構成を採用した場合よりもインタークーラにおいて跳ね返った気流がダクト外に漏れることを回避できるものの、さらなる冷却効率の向上を図るべく、冷却に寄与することなく放出される気流をより一層少なくすることが望まれる。
【0006】
上述したような知見に基づき、本発明は、冷却用として送風ダクト内に取り込まれた走行風がインタークーラの冷却に寄与することなく放出されてしまうことを最小限に抑制し、さらなる冷却効率の向上を図りつつ、設計の自由度が高く容易に取り付け可能なインタークーラの冷却構造の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決すべく提供される本発明のインタークーラの冷却構造は、走行風を導入することによりインタークーラを冷却可能なインタークーラの冷却構造であって、車両の進行方向前方側に設けられた走行風取込口から前記インタークーラに向かう送風経路で走行風を送る送風ダクトが設けられており、前記送風ダクトが、前記走行風取込口から前記送風経路の下流側に向けて延設される第一送風ダクトと、前記インタークーラから前記送風経路の上流側に向けて延設される第二送風ダクトとを備えており、前記第一送風ダクトから出た気流を前記第二送風ダクトにおいて受け止め、インタークーラに沿う方向に気流を偏向させることが可能とされており、
前記送風経路の中途において前記第一送風ダクトと第二送風ダクトとが分断されており、前記インタークーラにおいて冷却用の走行風が通気可能な通気領域よりも前記走行風取込口側まで、前記第二送風ダクトが延設されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明のインタークーラの冷却構造においては、走行風取込口から第一送風ダクトを通過した気流を第二送風ダクトにおいて受け止め、インタークーラに沿う方向に気流を偏向させることとしている。これにより、インタークーラにおいて跳ね返る気流を最小限に抑制し、送風ダクトに取り込まれた走行風の大部分を用いてインタークーラを冷却することができる。
【0009】
また、本発明のインタークーラの冷却構造においては、インタークーラにおいて冷却用の走行風が通気可能とされた通気領域よりも走行風取込口側の位置まで第二送風ダクトが延設されている。これにより、インタークーラにおいて跳ね返った気流が送風ダクト外に放出されにくくなり、その分だけインタークーラにおける冷却効率を向上させうる。
【0010】
本発明のインタークーラの冷却構造においては、第二送風ダクトを通気領域よりも走行風取込口側の位置まで延設した分だけ、第一送風ダクトを短縮することができる。そのため、走行風取込口が形成されるフード等への取り付けを簡略化することができる。
【0011】
本発明のインタークーラの冷却構造においては、走行風取込口から取り込んだ走行風を直接的にインタークーラに対して当てるのではなく、第二送風ダクトにおいて偏向させてインタークーラに当てる構成とされている。そのため、第二送風ダクトの形状設計に基づき、インタークーラに向かう送風経路を容易に最適化することができる。
【0012】
上述したインタークーラの冷却構造は、前記第二送風ダクトに、前記インタークーラ側から前記送風経路の上流側に向けて跳ね返る気流を、前記インタークーラ側に偏向させる偏向部が設けられていることを特徴とするものであることが好ましい。
【0013】
かかる構成とすることにより、インタークーラ側から送風経路の上流側に跳ね返る気流の送風ダクト外への放出をより一層低減させ、冷却効率のさらなる向上に資することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却用として送風ダクト内に取り込まれた走行風がインタークーラの冷却に寄与することなく放出されてしまうことを最小限に抑制し、さらなる冷却効率の向上を図りつつ、設計の自由度が高く容易に取り付け可能なインタークーラの冷却構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインタークーラの冷却構造を搭載した車両を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るインタークーラの冷却構造を示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るインタークーラの冷却構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るインタークーラの冷却構造10ついて、これを採用した車両1を例に挙げて説明する。
図1に示すように、車両1は、車体2の前方内側にエンジンルーム3を有する。エンジンルーム3には、フード4を上下動させることにより開閉可能とされている。
【0017】
エンジンルーム3には、過給機付(ターボ)のエンジンが搭載されており、インタークーラ7が付設されている(
図2参照)。インタークーラ7は、過給機をエンジン本体に連結する吸気管の長手方向の中途部に介設されている。インタークーラ7は、冷却構造10により供給された走行風により冷却される。
【0018】
具体的には、
図2に示すように、インタークーラ7には、冷却用の走行風を通気可能なフィン等からなる通気領域7aが設けられている。インタークーラ7は、通気領域7aを下方に向けて通過する低温の走行風との熱交換により、インタークーラ7のコアの内部を流動するエンジンの吸気を熱交換により冷却(空冷)することができる。
【0019】
図2及び
図3に示すように、冷却構造10は、送風ダクト12を備えている。送風ダクト12は、車両1の進行方向前方側に設けられた走行風取込口8からインタークーラ7に向かう送風経路(
図2の矢印A参照)で走行風を送るためのダクトである。送風ダクト12は、送風経路の中途において第一送風ダクト14及び第二送風ダクト16に分断されている。第一送風ダクト14及び第二送風ダクト16は、断面形状が円形状のものや矩形状のものとすることが可能であり、本実施形態では矩形状のものとされている。
【0020】
第一送風ダクト14は、走行風取込口8から送風経路の下流側に向けて延設されたダクトである。第一送風ダクト14は、前端部が第一上流端開口14aとされ、後端部が第一下流端開口14bとされている。第一送風ダクト14は、第一上流端開口14a側をフード4に対して固定することにより、片持ち状に支持されている。第一上流端開口14aは、走行風を導入可能なように車体2の前方に向かって開口している。また、第一下流端開口14bは、インタークーラ7側に配置された第二送風ダクト16側に向けて開口している。第一送風ダクト14は、第一上流端開口14a側から第一下流端開口14b側に向けて緩やかに湾曲している。
【0021】
第二送風ダクト16は、インタークーラ7から送風経路の上流側に向けて延設されたダクトである。第二送風ダクト16は、送風経路の上流側から下流側に向かうに連れて緩やかに下方に向けて湾曲している。第二送風ダクト16は、前端部が第二上流端開口16aとされ、後端部が第二下流端開口16bとされている。第二送風ダクト16は、第二下流端開口16b側をインタークーラ7側に固定することにより、片持ち状に支持されている。第二送風ダクト16は、第一送風ダクト14に対して送風経路方向に離れた位置に設けられている。すなわち、第二送風ダクト16の第二上流端開口16aは、第一送風ダクト14の第一下流端開口14bに対して送風経路の下流側に離れた位置に設けられている。
【0022】
第二上流端開口16aは、第一送風ダクト14を通過してきた走行風を導入可能なように、第一下流端開口14bの送風経路の延長線上に設けられており、車体2の前方に向けて開口している。また、第二上流端開口16aの開口面積は、第一下流端開口14bの開口面積よりも大きい。また、第二上流端開口16aは、インタークーラ7の通気領域7aが設けられている位置よりも走行風取込口8側(送風経路の上流側)の位置まで延設されている。すなわち、第二送風ダクト16には、通気領域7aの位置よりも走行風取込口8側まで延設された延設部17が設けられている。延設部17を設けることにより、
図2において矢印Bで示すようなインタークーラ7において跳ね返った気流を受け止め、送風ダクト12の外に放出されるのを防止できる。これにより、インタークーラ7において跳ね返った走行風を再びインタークーラ7側に戻し、冷却に利用することができる。
【0023】
第二送風ダクト16は、インタークーラ7の近傍においてインタークーラ7側に向けて湾曲しており、内壁面18のうち側面視において屈曲半径が大きい側(外周側)の壁面(外周側内壁面18a)が上述した第一送風ダクト14から流出する気流の延長線上に位置している。すなわち、外周側内壁面18aは、第一送風ダクト14から第二送風ダクト16に流入した走行風の進行方向奥側にある奥壁に相当する壁面であり、インタークーラ7側に向けて湾曲している。そのため、
図2において矢印Aで示すように第一送風ダクト14から出た気流を外周側内壁面18aにおいて受け止めると共に、受け止めた気流をインタークーラ7に沿う方向に偏向させることができる。
【0024】
さらに、第二送風ダクト16の内壁面のうち、側面視において屈曲半径が小さい側(内周側)の壁面(内周側内壁面18b)には、偏向部20が設けられている。偏向部20は、外周側内壁面18aに案内されてインタークーラ7に沿うように流れる気流のうち、通気領域7aに向けて通過した気流の残部であって、インタークーラ7から離れる方向に流れる(跳ね返る)気流を再びインタークーラ7側に偏向させるためのものである(
図2の矢印C参照)。
【0025】
偏向部20は、内周側内壁面18bにおいて、インタークーラ7から上方に離れた位置に形成されている。偏向部20は、内周側内壁面18bから第二送風ダクト16の内側に向かって斜め上方に直線的に突出するように形成されている。
【0026】
上述した本実施形態の冷却構造10においては、
図2の矢印Aで示すように、走行風取込口8から第一送風ダクト14を通過した気流を第二送風ダクト16の外周側内壁面18aにおいて受け止め、インタークーラ7に沿う方向に気流を偏向させることとしている。これにより、インタークーラ7において冷却用として通気領域7aに取り込まれることなく跳ね返る気流を最小限に抑制し、送風ダクト12に取り込まれた走行風の大部分を用いてインタークーラ7を冷却することができる。これにより、インタークーラ7における冷却効率を向上させうる。
【0027】
また、上述した冷却構造10においては、第二送風ダクト16の延設部17が、インタークーラ7の通気領域7aよりも走行風取込口8側の位置まで第二送風ダクト16が延設されている。そのため、
図2の矢印Bで示すように、インタークーラ7において跳ね返った気流が送風ダクト12の外に放出されることを延設部17によって抑制でき、その分だけ送風ダクト12に取り込まれた走行風をインタークーラ7における冷却のために有効利用し、冷却効率を向上することができる。
【0028】
本実施形態の冷却構造10においては、第二送風ダクト16を通気領域7aよりも走行風取込口8側の位置まで延設した分だけ、第一送風ダクト14を短縮することができる。そのため、走行風取込口8が形成されるフード4への取り付け構造等を簡略化することができる。
【0029】
本実施形態の冷却構造10においては、走行風取込口8から取り込んだ走行風を直接的にインタークーラ7に対して直接的に当てるのではなく、第二送風ダクト16において偏向させてインタークーラ7に当てる構成とされている。そのため、第二送風ダクト16の形状設計を適切なものとすることにより、インタークーラ7に向かう送風経路を容易に最適化することができる。
【0030】
上述した冷却構造10は、第二送風ダクト16に、上述した延設部17に加えて偏向部20を設け、
図2において矢印Cで示すように偏向部20によってインタークーラ7側から送風経路の上流側に向けて跳ね返る気流をインタークーラ7側に偏向可能な構成とされている。これにより、インタークーラ7側から送風経路の上流側に跳ね返る気流の送風ダクト12外への放出をより一層低減させ、冷却効率をさらに向上させることができる。なお、本実施形態においては、偏向部20を設けることにより、インタークーラ7の冷却効率のさらなる向上を図った例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、偏向部20を設けない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の冷却構造は、インタークーラを備えた車両全般において、インタークーラにおける冷却効率を向上させるために有効利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 車両
7 インタークーラ
7a 通気領域
8 走行風取込口
10 冷却構造
12 送風ダクト
14 第一送風ダクト
16 第二送風ダクト
20 偏向部