(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の駆動輪にディファレンシャルギヤ及びドライブシャフトを介して接続し、前記駆動輪に制駆動トルクを発生するモータと、前記車両の駆動輪の回転速度を検出する車輪速度検出部と、前記駆動輪に対して独立して制動力を発生可能な機械式制動装置と、を備えた電動車両に用いられるよう構成された電動車両の制御装置であって、
前記車両の車体速を算出する車体速算出部と、
制動時に、前記算出された車体速と前記検出された前記駆動輪の車輪速から前記駆動輪のスリップ率を算出し、所定以上のスリップ率を検出すると、前記駆動輪のスリップ率が目標モータスリップ率となるようにスリップ状態を抑制するスリップ抑制制御部と、
を備え、
前記スリップ抑制制御部は、前記駆動輪のスリップ率が前記目標モータスリップ率となるように前記モータの回生トルクを増減するモータスリップ抑制制御部と、前記機械式制動装置によって前記左右駆動輪のうち車輪速の高い駆動輪に低い駆動輪よりも大きな制動力を与える駆動輪制動力制御部と、を有することを特徴とする電動車両の制御装置。
車両の駆動輪にディファレンシャルギヤ及びドライブシャフトを介して接続し、前記駆動輪に回生トルクを発生するモータと、前記駆動輪に対して独立して制動力を発生可能な機械式制動装置と、前記車両の駆動輪の回転速度を検出する車輪速検出部と、を備えた電動車両に用いられる電動車両の制御装置において、
前記車両の車体速を算出する車体速算出部と、
前記回生制動のときに前記算出された車体速と前記検出された前記駆動輪の車輪速から前記駆動輪のスリップ率を算出し、所定以上のスリップ率を検出すると前記駆動輪のスリップ率が目標スリップ率になるよう前記駆動輪の速度を制御する駆動輪スリップ制御部と、
を備え、
前記駆動輪スリップ制御部は、発生している前記モータの回生トルクを所定の目標回生トルクに収束させると共に、前記機械式制動装置により前記左右駆動輪のうち車輪速の高い駆動輪に車輪速が低い駆動輪よりも大きな制動力を与え、前記駆動輪のスリップ率が前記目標スリップ率になるよう制御することを特徴とする電動車両の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施例1]
図1は実施例1の電動車両の構成を表すシステム図である。電動車両は、前輪駆動車両であり、駆動輪である前輪FR,FLと、従動輪である後輪RR,RLとを有する。各輪には、タイヤと一体に回転するブレーキロータにブレーキパッドを押し付けて摩擦制動力を発生させるホイルシリンダW/C(FR),W/C(FL),W/C(RR),W/C(RL)(単にW/Cとも記載する。)と、各輪の車輪速を検出する車輪速センサ9(FR),9(FL),9(RR),9(RL)(単に9とも記載する。)が設けられている。ホイルシリンダW/Cには液圧配管5aを介して液圧ユニット5が接続されている。
【0009】
液圧ユニット5は、複数の電磁弁と、リザーバと、ポンプ用モータと、ブレーキコントローラ50を備え、ブレーキコントローラ50からの指令に基づいて、各種電磁弁及びポンプ用モータの駆動状態を制御し、各輪のホイルシリンダ液圧を制御する。尚、液圧ユニット5は、周知のブレーキバイワイヤユニットでもよいし、ビークルスタビリティコントロールが実行可能な液圧回路を備えたブレーキユニットでもよく、特に限定しない。
【0010】
駆動源である電動モータ1には、モータ回転角を検出するレゾルバ2が設けられている。電動モータ1には、減速機構3aを介してディファレンシャルギヤ3が接続され、ディファレンシャルギヤ3に接続されたドライブシャフト4には、前輪FR.FLが接続されている。車両の後方には、電動モータ1に駆動用の電力を供給し、もしくは回生電力を回収する高電圧バッテリ6と、高電圧バッテリ6のバッテリ状態を監視及び制御するバッテリコントローラ60とが搭載されている。高電圧バッテリ6と電動モータ1との間に介在されたインバータ10は、モータコントローラ100により制御される。また、高電圧バッテリ6にはDC-DCコンバータ7を介して補機用バッテリ8が接続され、液圧ユニット5の駆動用電源として機能する。
実施例1の電動車両には、車両に搭載された複数のコントローラが接続された車内通信ラインであるCAN通信線が設けられ、ブレーキコントローラ50や、車両コントローラ110、バッテリコントローラ60等が互いに情報通信可能に接続されている
【0011】
図2は実施例1の各コントローラで送受信される情報の内容を表す制御ブロック図である。車両コントローラ110は、アクセルペダル位置情報や、シフト位置情報を入力し、基本的な運転者要求トルクやブレーキコントローラ50からの回生トルク指令値の結果に基づく第1トルク指令値を算出し、モータコントローラ100に第1トルク指令値を出力する。
ブレーキコントローラ50は、ブレーキペダル操作状態を表すブレーキスイッチのON・OFF状態やブレーキペダルストローク量もしくはブレーキペダル踏力といった運転者の制動意図を表す情報及び各輪の車輪速信号を入力し、ホイルシリンダW/Cに供給するブレーキ液圧及び電動モータ1により発生させる回生トルクを算出し、車両コントローラ110に回生トルク指令値を出力する。尚、車両コントローラ110から実回生トルク情報を受信し、これにより回生トルクフィードバック制御を行う。
モータコントローラ100では、トルク指令値に基づいて電動モータ1の作動状態を制御すると共に、検出された電流値等に基づいて電動モータ1が発生した実トルク情報を車両コントローラ110に出力する。
【0012】
(コントローラ内における制御の詳細について)
図3は実施例1のブレーキコントローラ内に設けられた制動力要求を出力する制御構成を表す制御ブロック図である。
運転者要求制動力算出部111では、ブレーキペダル操作状態に基づいて運転者要求制動力(以下、運転者要求制動トルクとも記載する。)を算出する。車体速度推定部512では、検出された車輪速度信号に基づいて車体速を推定する。具体的には、全ての輪の平均車輪速を採用してもよいし、後輪(従動輪)側の平均車輪速を採用してもよいし、最も高い車輪速の値を採用してもよい。また、車体減速度等に基づいて補正を行うようにしてもよく、特に限定しない。
回生摩擦配分制御部200では、運転者要求制動力と推定車体速とに基づいて、電動モータ1により発生させる第1回生トルク指令値と、ホイルシリンダW/Cにより発生させる第1ブレーキ液圧指令値とを算出し、モータABS制御部300及びブレーキABS制御部400に出力する。ここで、回生トルクと液圧制動トルクとの配分にあたっては、基本的に回生トルクのみで対応可能な運転者要求制動力であれば、全て回生トルクで対応する。そして、運転者要求制動力が回生トルクの上限値を超えている場合は、運転者要求制動力と回生トルク上限値との差分を液圧制動トルクにより補完する。
【0013】
モータABS制御部300では、推定車体速と駆動輪平均車輪速とからスリップ率を算出し、このスリップ率が予め設定された目標モータスリップ率Smとなるように第1回生トルク指令値からトルクが加減算された第2回生トルク指令値を出力する。尚、モータABS制御部300により制御される回生トルクは電動モータ1で発生するトルクであり、駆動輪である左右前輪FL,FRの両方に同時に作用することから駆動輪平均車輪速に基づくスリップ率を制御している。
ブレーキABS制御部400では、推定車体速度と各輪の車輪速とからスリップ率を算出し、このスリップ率が予め設定された目標ブレーキスリップ率Sbとなるように第1ブレーキ液圧指令値から液圧が加減算された第2ブレーキ液圧指令値を出力する。
【0014】
ここで、目標モータスリップ率Sm及び目標ブレーキスリップ率Sbの関係について説明する。
図4は実施例1の電動車両のタイヤと路面との間のμ―s特性と各目標スリップ率との関係を表す特性図である。このμ―s特性のうち、摩擦力が最大となるピーク値μpに対応するスリップ率をSpとしたとき、目標モータスリップ率Smは、ピーク値μpよりも低スリップ率側の線形領域上方に設定する。具体的な値は実際の適合実験において十分な制動力が得られる値に設定する。
【0015】
また、目標ブレーキスリップ率Sbは、目標モータスリップ率Smとピーク値μpに対応するスリップ率Spとの差を低スリップ率側に折り返した値とする。言い換えると、Sp−Sm=Sm−Sb、すなわちSb=2Sm−Spに設定する。これにより、前輪左右輪のうち、片輪がブレーキABS制御によってSbの付近に収束するように制御されると、もう一方の輪はディファレンシャルギヤ3の作用によってピーク値であるSpに収束するため、前輪左右輪の合計制動力が低下することを回避できる。尚、ブレーキABS制御における目標ブレーキスリップ率Sbは、基本的にSb=2Sm−Spの関係を満たすように設定するが、実回生トルクが運転者要求制動力に近づくほど、目標ブレーキスリップ率Sbを目標モータスリップ率Smに近づける。詳細については後述する。
【0016】
(ABS制御について)
モータABS制御部300及びブレーキABS制御部400内では、基本動作として、スリップを検出したら、目標スリップ率(目標モータスリップ率Sm,目標ブレーキスリップ率Sb)に収束するようにモータトルク及びブレーキ液圧を制御する。
図5は実施例1のABS制御作動を表すタイムチャートである。
時刻t1において左右平均車輪速が
下降して目標モータスリップ率Smを
上回る
(回転数としては閾値を下回る)と、回生トルクの絶対値を小さくするモータABS制御が行われる。このとき、左右駆動輪速も低下するが、路面状態や外乱等によって左右の摩擦係数が異なる場合がある。
図5の場合、右車輪速の摩擦係数が低く、右車輪速低下が大きいと、ディファレンシャルギヤ3の作用によって左車輪速はその分上昇する。このように左右輪での車輪速の差が大きくなると、意図しないヨーモーメントを発生してしまい、違和感となる。よって、時刻t2において、左車輪速が上昇して目標ブレーキスリップ率を下回る(回転数としては閾値を上回る)と、左輪のホイルシリンダW/Cにブレーキ液圧を与え、左輪が目標ブレーキスリップ率Sbに収束するように制御する。これにより、左輪に制動トルクが付与されることで、ディファレンシャルギヤ3を介して右輪にも制動トルクを付与することができ、意図しないヨーモーメントを抑制して安定した走行が実現できる。
【0017】
また、各ABS制御部内には、路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定部が設けられ、所定摩擦係数μ0以上の路面を高μ路と判断し、μ0未満の路面を低μ路と判断する。
高μ路と判断された路面を走行中に、電動モータ1の回生トルクに加えてホイルシリンダW/Cによるブレーキ液圧を併用しなければ運転者要求制動力を実現できないときにスリップ状態を検出した場合、電動モータ1による回生トルクを0とし、ブレーキ液圧のみによって運転者要求制動力を達成しつつブレーキABS制御を実行する。これにより、制御が煩雑化することを回避する。
【0018】
次に、低μ路から高μ路へとμジャンプが発生した場合について説明する。低μ路では、回生トルクのみでスリップ状態が生じており、さほど減速度が出ていないためモータABS制御とブレーキABS制御を併用していた状態である。この状態で高μ路に移行すると、回生トルクの絶対値を増大させて制動力を十分に発生させたとしても目標モータスリップ率に収束する。すなわち、左右平均駆動輪速のスリップ率が目標モータスリップ率Smに収束するため、回生トルクの絶対値を増大させて運転者要求制動トルク(もしくは回生トルク最大値)に近づける。このとき、目標ブレーキスリップ率Sbを目標モータスリップ率Smに近づける。そして、回生トルクを回生トルク最大値まで増大させても、回生トルクのみで運転者の要求制動トルクを達成できないため、回生トルクが運転者要求制動トルク(回生トルク最大値)と一致すると、高μ路でのABS制御要求であることから、回生トルクを0とし、ブレーキ液圧のみによって運転者要求制動力を達成しつつブレーキABS制御を実行する。尚、このときにはモータABS制御は行わないため、目標モータスリップ率Smは0にセットするが、Smを所定の低スリップ率とするか、元の値にとどめるように設定してもよい。
【0019】
図6は実施例1のμジャンプ時におけるABS制御作動を表すタイムチャートである。
時刻t1からt2の動作は
図5の説明と同じであるため説明を省略する。
時刻t3において、μジャンプが発生し、路面摩擦係数が低μであるμ1から所定摩擦係数μ0を超えて高μであるμ2に変化すると、回生トルクの絶対値を増大させて運転者要求制動トルクに近づける。このとき、目標ブレーキスリップ率Sbを目標モータスリップ率Smに近づけておく。
時刻t4において、回生トルクが運転者要求トルクに応じた回生トルク最大値と一致すると、回生トルクを一気に低下させ、ブレーキ液圧による制動力を発生させるブレーキABS制御に切り換える。これにより、安定したABS制御が実現できる。尚、通常のブレーキABS制御では、各輪において車輪速を制御しており、モータABS制御のように左右輪で大きな回転数差が生じるような場面は生じない。
【0020】
[実施例1の効果]
以下、実施例1に記載の電動車両の制御装置が奏する作用効果を列挙する。
(1)車両の駆動輪にディファレンシャルギヤ3及びドライブシャフト4を介して接続し、前記駆動輪に制駆動トルクを発生する電動モータ1と、
前記駆動輪に対して独立して制動力を発生可能なホイルシリンダW/C(機械式制動装置)と、
を備えた電動車両に用いられるよう構成された電動車両の制御装置であって、
前記車両の駆動輪の回転速度を検出する車輪速センサ9(車輪速度検出部)と、
前記車両の車体速を算出する車体速度推定部512(推定車体速車体速算出部)と、
前記算出された車体速と前記検出された前記駆動輪の車輪速から前記駆動輪のスリップ率を算出し、所定以上のスリップ率を検出すると、前記駆動輪のスリップ率が目標モータスリップ率となるようにスリップ状態を抑制するモータABS制御部300及びブレーキABS制御部400(スリップ抑制制御部)と、
を備え、
前記スリップ抑制制御部は、前記駆動輪のスリップ率が前記目標モータスリップ率Smとなるように電動モータ1のトルク絶対値を減少させるモータABS制御部300(モータスリップ抑制制御部)と、ホイルシリンダW/Cによって前記左右駆動輪のうち車輪速の高い駆動輪に低い駆動輪よりも大きな制動力を与えるブレーキABS制御部400(駆動輪制動力制御部)と、を有することを特徴とする電動車両の制御装置。
すなわち、電動モータ1のトルク絶対値を減少させると共に、ホイルシリンダW/Cによって車輪速の高い駆動輪に大きな制動力を与えることで、車輪速の高い駆動輪のスリップ率を大きくして制駆動力を確保すると共に、ディファレンシャルギヤ3の作用により車輪速の低い駆動輪の車輪速が上昇することでスリップ率が小さくなり、これにより左右駆動輪の制駆動力を確保できる。よって、左右の制駆動力差を小さくできるため、意図しないヨーモーメントを発生させることなく、車両挙動を安定させることができる。
【0021】
(2)上記(1)に記載の電動車両の制御装置において、
前記スリップ抑制制御部は、制動時に実施されることを特徴とする電動車両の制御装置。
よって、制動時の車両姿勢を安定化できる。
(3)上記(1)に記載の電動車両の制御装置において、
前記駆動輪制動力制御部は、前記車輪速の低い駆動輪には制動力を与えないことを特徴とする電動車両の制御装置。
左右の回転数差が小さくできるため、制動時の車両安定性がより向上する。
(4)上記(1)に記載の電動車両の制御装置において、
走行中の路面摩擦係数を算出する路面摩擦係数算出部と、
前記車両の減速度を算出する減速度算出部と、
を備え、
前記スリップ抑制制御部は、算出された路面摩擦係数が所定摩擦係数以上であって、前記算出された減速度が所定減速度以上のときに、前記モータトルクをゼロ付近となるよう低減することを特徴とする電動車両の制御装置。
電動モータ1の回生トルクのみで要求制動力を満たせないような高μ路の高減速度発生時では、液圧ブレーキのみで制御するため、電動モータ1による制動力とブレーキ液圧による制動力とを相互に制御する必要が無いため、制御の安定性を確保できる。
【0022】
(5)上記(1)に記載の電動車両の制御装置において、
運転者の要求制動力を算出する要求制動力算出部と、
前記車両に発生している実制動力を算出する実制動力算出部と、
走行中の路面摩擦係数を算出する路面摩擦係数算出部と、
を備え、
前記駆動輪制動力制御部は、前記機械式制動装置によって前記駆動輪のスリップ率が前記目標モータスリップ率よりも小さな目標ブレーキスリップ率となるようにスリップ状態を抑制する制御部であり、
前記スリップ抑制制御部は、算出された路面摩擦係数が第1の路面摩擦係数から該第1の路面摩擦係数より高い第2の路面摩擦係数へ変化したときは、前記実制動力が前記要求制動力に近づくほど、前記目標ブレーキスリップ率を前記目標モータスリップ率に近づけることを特徴とする電動車両の制御装置。
高μ路へのμジャンプが発生した場合には、回生トルクの絶対値を増大させ、目標ブレーキスリップ率Sbを目標モータスリップ率Smに近づけることで、ブレーキ制御による制動力を確保できる。
(6)上記(5)に記載の電動車両の制御装置において、
前記モータスリップ抑制制御部は、前記実制動力が前記要求制動力と一致した後に、前記目標モータスリップ率をゼロとすることを特徴とする電動車両の制御装置。
モータABS制御からブレーキABS制御に移行することで、安定した制御が実現できる。
【0023】
(7)車両の駆動輪にディファレンシャルギヤ及びドライブシャフトを介して接続し、前記駆動輪に回生トルクを発生するモータと、
前記駆動輪に対して独立して制動力を発生可能な機械式制動装置と、
備えた電動車両に用いられる電動車両の制御装置において、
前記車両の駆動輪の回転速度を検出する車輪速検出部と、
前記車両の車体速を算出する車体速算出部と、
前記回生制動のときに前記算出された車体速と前記検出された前記駆動輪の車輪速から前記駆動輪のスリップ率を算出し、所定以上のスリップ率を検出すると前記駆動輪のスリップ率が目標スリップ率になるよう前記駆動輪の速度を制御する駆動輪スリップ制御部と、
を備え、
前記駆動輪スリップ制御部は、発生している前記モータの回生トルクを所定の目標回生トルクに減少させると共に、前記機械式制動装置により前記左右駆動輪のうち車輪速の高い駆動輪に車輪速が低い駆動輪よりも大きな制動力を与え、前記駆動輪のスリップ率が前記目標スリップ率になるよう制御することを特徴とする電動車両の制御装置。
すなわち、電動モータ1のトルク絶対値を減少させると共に、ホイルシリンダW/Cによって車輪速の高い駆動輪に大きな制動力を与えることで、車輪速の高い駆動輪のスリップ率を大きくして制駆動力を確保すると共に、ディファレンシャルギヤ3の作用により車輪速の低い駆動輪の車輪速が上昇することでスリップ率が小さくなり、これにより左右駆動輪の制駆動力を確保できる。よって、左右の制駆動力差を小さくできるため、意図しないヨーモーメントを発生させることなく、車両挙動を安定させることができる。
【0024】
(8)上記(7)に記載の電動車両の制御装置において、
前記駆動輪スリップ制御部は、前記車輪速の低い駆動輪に対して前記機械式制動装置による制動力を与えないことを特徴とする電動車両の制御装置。
左右の回転数差が小さくできるため、制動時の車両安定性がより向上する。
(9)上記(8)に記載の電動車両の制御装置において、
走行中の路面摩擦係数を算出する路面摩擦係数算出部と、
前記車両の減速度を算出する減速度算出部と、
を備え、
前記駆動輪スリップ制御部は、算出された路面摩擦係数が所定の路面摩擦係数以上であって、前記算出された減速度が所定の減速度以上のときは前記モータトルクをゼロ付近になるよう低減することを特徴とする電動車両の制御装置。
電動モータ1の回生トルクのみで要求制動力を満たせないような高μ路の高減速度発生時では、液圧ブレーキのみで制御するため、電動モータ1による制動力とブレーキ液圧による制動力とを相互に制御する必要が無いため、制御の安定性を確保できる。
【0025】
(10)上記(9)に記載の電動車両の制御装置において、
運転者の要求制動力を算出する要求制動力算出部と、
前記車両に発生している実制動力を算出する実制動力算出部と、
走行中の路面摩擦係数を算出する路面摩擦係数算出部と、
を備え、
前記駆動輪スリップ制御部は、前記機械式制動装置によって前記駆動輪のスリップ率が前記目標スリップ率よりも小さな目標ブレーキスリップ率となるようにスリップ状態を抑制する制御部であり、
前記駆動輪スリップ制御部は、算出された路面摩擦係数が第1の路面摩擦係数から該第1の路面摩擦係数より高い第2の路面摩擦係数へ変化したときは、前記実制動力が前記要求制動力に近づくほど、前記目標ブレーキスリップ率を前記目標スリップ率に近づけることを特徴とする電動車両の制御装置。
高μ路へのμジャンプが発生した場合には、回生トルクの絶対値を増大させ、目標ブレーキスリップ率Sbを目標モータスリップ率Smに近づけることで、ブレーキ制御による制動力を確保できる。
(11)上記(10)に記載の電動車両の制御装置において、
前記駆動輪スリップ制御部は、前記実制動力と前記要求制動力とが一致した後に、前記目標スリップ率をゼロとすることを特徴とする電動車両の制御装置。
モータABS制御からブレーキABS制御に移行することで、安定した制御が実現できる。
【0026】
(12)上記(7)に記載の電動車両の制御装置において、
前記目標スリップ率は、駆動輪と路面との間のμ―s特性曲線の頂点のスリップ率より低スリップ率側の線形領域に設定されていることを特徴とする電動車両の制御装置。
よって、十分な制動力を確保できる。
(13)上記(12)に記載の電動車両の制御装置において、
前記目標ブレーキスリップ率は、前記目標スリップ率から、前記頂点のスリップ率と前記目標スリップ率との差分を減じた低スリップ率側の線形領域に設定されていることを特徴とする電動車両の制御装置。
よって、駆動輪における合計制動力の低下を抑制できる。
【0027】
(14)車両の駆動輪にディファレンシャルギヤ及びドライブシャフトを介して接続し、前記駆動輪に回生トルクを発生するモータと、
前記駆動輪に対して独立して制動力を発生可能な機械式制動装置と、
を備えた電動車両の制御装置であって、
前記車両の駆動輪の回転速度を検出する車輪速検出部と、
前記車両の車体速を算出する車体速算出部と、
前記回生制動のときに前記算出された車体速と前記検出された前記駆動輪の車輪速から前記駆動輪のスリップ率を算出し、所定以上のスリップ率を検出すると前記駆動輪のスリップ率が目標スリップ率になるよう前記駆動輪の速度を制御する駆動輪スリップ制御部と、
を備え、
前記駆動輪スリップ制御部は、発生している前記モータの回生トルクを所定の目標回生トルクに減少させると共に、前記機械式制動装置を用いて前記左右駆動輪のうちスリップ率が低い駆動輪に対してのみ制動力を与えることを特徴とする電動車両の制御装置。
すなわち、電動モータ1のトルク絶対値を減少させると共に、ホイルシリンダW/Cによって車輪速の高い駆動輪に大きな制動力を与えることで、車輪速の高い駆動輪のスリップ率を大きくして制駆動力を確保すると共に、ディファレンシャルギヤ3の作用により車輪速の低い駆動輪の車輪速が上昇することでスリップ率が小さくなり、これにより左右駆動輪の制駆動力を確保できる。よって、左右の制駆動力差を小さくできるため、意図しないヨーモーメントを発生させることなく、車両挙動を安定させることができる。
【0028】
(15)上記(14)に記載の電動車両の制御装置において、
前記車両の減速度を算出する減速度算出部を備え、
前記駆動輪スリップ制御部は、前記算出された減速度が所定の減速度以上のときには前記モータトルクをゼロ付近になるように低減することを特徴とする電動車両の制御装置。
電動モータ1の回生トルクのみで要求制動力を満たせないような高減速度発生時では、液圧ブレーキのみで制御するため、電動モータ1による制動力とブレーキ液圧による制動力とを相互に制御する必要が無いため、制御の安定性を確保できる。
(16)上記(15)に記載の電動車両の制御装置において、
走行中の路面摩擦係数を算出する路面摩擦係数算出部を備え、
前記駆動輪スリップ制御部は、前記算出された路面摩擦係数が所定の路面摩擦係数以上のときには前記モータトルクをゼロ付近になるように低減することを特徴とする電動車両の制御装置。
電動モータ1の回生トルクのみで要求制動力を満たせないような高μ路時では、液圧ブレーキのみで制御するため、電動モータ1による制動力とブレーキ液圧による制動力とを相互に制御する必要が無いため、制御の安定性を確保できる。
【0029】
(17)上記(16)に記載の電動車両の制御装置において、
運転者の要求制動力を算出する要求制動力算出部と、
前記車両に発生している実制動力を算出する実制動力算出部と、
を備え、
前記駆動輪スリップ制御部は、前記機械式制動装置によって前記駆動輪のスリップ率が前記目標モータスリップ率よりも小さな目標ブレーキスリップ率となるようにスリップ状態を抑制する制御部であり、
前記駆動輪スリップ制御部は、算出された路面摩擦係数が第1の路面摩擦係数から該第1の路面摩擦係数より高い第2の路面摩擦係数へ変化すると、前記実制動力が前記要求制動力に近づくほど、前記目標ブレーキスリップ率を前記目標スリップ率へ近づけることを特徴とする電動車両の制御装置。
高μ路へのμジャンプが発生した場合には、回生トルクの絶対値を増大させ、目標ブレーキスリップ率Sbを目標モータスリップ率Smに近づけることで、ブレーキ制御による制動力を確保できる。
【0030】
(18)上記(17)に記載の電動車両の制御装置において、
前記駆動輪スリップ制御部は、前記実制動力と前記要求制動力とが一致した後に、前記目標スリップ率をゼロとすることを特徴とする電動車両の制御装置。
モータABS制御からブレーキABS制御に移行することで、安定した制御が実現できる。
(19)上記(14)に記載の電動車両の制御装置において、
前記目標スリップ率は、駆動輪と路面との間のμ―s特性曲線の頂点のスリップ率より低スリップ側の線形領域に設定されていることを特徴とする電動車両の制御装置。
よって、十分な制動力を確保できる。
(20)上記(19)に記載の電動車両の制御装置において、
前記目標ブレーキスリップ率は、前記目標スリップ率から、前記頂点のスリップ率と前記目標スリップ率との差分を減じた低スリップ率側の線形領域に設定されていることを特徴とする電動車両の制御装置。
よって、駆動輪における合計制動力の低下を抑制できる。