【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために、回転ラッチおよび少なくとも1つのつめからなるロック機構を備えるドアまたはフラップ用のロックが回転ラッチをロックするために提供される。一実施形態では、回転ラッチはつめに開モーメントを引き起こすことができる。あるいは、回転ラッチはつめに閉モーメントを引き起こすこともできる。一般に、ドアまたはフラップの閉状態で、追加の外力(ドア密閉圧力によって引き起こされるような内力に追加)がロック機構に引き起こされないときに、過大な応力は存在しない。過大な応力は、特に、衝突が起きた場合、ドアまたはフラップのロックボルトに相当な力がドアまたはフラップの開放方向に引き起こされたときに発生しうる。本発明によれば、ロック機構は、過大な応力がかかった場合、回転ラッチが回転ラッチの戻り止め位置にとどまる形で、特に回転ラッチの所定の屈曲点のために、回転ラッチが変形するように設計される。所定の屈曲点は、収集アームまたは主荷重アーム上に設けられることが好ましい。過大な応力にもかかわらず、回転ラッチとつめとの重なり部分は残存する。重なり部分はさらに増大することが好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態では、所定の屈曲点は収集アーム上に配置される。所定の屈曲点は凹所の形で設けることもでき、かつ/または、少なくとも、ロック機構のロック位置で収集アームの、ドアまたはフラップのロックボルトから離れる方向に向いている側に配置された凹所を含むことができる。凹所とは、回転ラッチを貫通して十分に延びる回転ラッチの開口を意味し、言い換えると、凹所は回転ラッチ内に隙間を形成する。本発明によれば、凹所は、少なくとも収集アームまたは主荷重アーム内に設けることができる。しかし、収集アームは2つ以上の凹所を含むこともできる。
【0014】
ロック機構の閉状態でロックホルダに面する回転ラッチのアーム内に、離間された2つの凹所が形成されるかまたは設けられることが好ましい。別の好ましい実施形態では、ロック機構を中間閉位置でロックするために使用されうる高所またはアームが、凹所間に位置する回転ラッチの領域内に設けられる。回転ラッチに面する第1の凹所は、好ましくは収集アーム上に所定の屈曲点の位置を画定するために使用することができる。これにより、例えば、所定の屈曲点は、回転ラッチ内の第1の凹所の深さ、すなわち、回転ラッチのピボット点の方向の凹所の径方向延長部の深さに応じて変化することが可能になる。所定の屈曲点の位置は、回転ラッチとつめとの間の重なり部分に影響を与えることもできる。例えば、回転ラッチの外縁部から回転ラッチの中に深く延びる凹所が回転ラッチ内に挿入される場合は、凹所の深さによって所定の屈曲点の位置が決まる。
【0015】
ロック機構が過度に応力を受けた場合、例えば事故が発生した場合、ロック機構は解放されないかもしれない。回転ラッチおよびつめは係合されたままでなければならない。このことは、本発明に開示されているように回転ラッチ内に所定の屈曲点を設けることにより積極的に支援されうる。回転ラッチの一部が所定の屈曲点にわたって曲がると、回転ラッチとつめとの間の係合点は重なり部分が大きくなる方向に移動する。すなわち、解放が妨げられるだけでなく、ロック機構も付加的に固定される。これは、所定の屈曲点の位置の結果として、回転ラッチとつめとの間の係合点の領域内での相対的移動が、過大な応力が生じた場合に制御可能であることを明確に示している。言い換えると、本発明により、高応力または過大な応力がかかった場合に回転ラッチとつめとの間の重なり部分に影響を与えることが可能になる。
【0016】
回転ラッチ内の深い凹所は、応力印加にさらされると長いレバーアームを引き起こし、したがって重なり部分の拡大を引き起こす。レバーアームとは、屈曲点の位置(所定の屈曲点)と、回転ラッチとつめとの間の係合点と、の間の距離を意味する。回転ラッチ内の小さい方の凹所、すなわちより小さい凹所の場合でも、重なり部分は同様に増大する。しかし、レバーアームが短くなるほど、回転ラッチとつめとの間の係合点の、より大きな重なり部分を作り出す方への移動が小さくなる。
【0017】
第1の凹所から間隔をあけて第2の凹所が配置されると、回転ラッチの重量を好適に軽くすることができ、かつ/または、曲げ挙動に良い影響を与えることができる。再形成された材料がロック機構の中間閉位置用の係止部としても機能するように回転ラッチ内に凹所を配置するという選択肢もある。
【0018】
所定の屈曲点は、材料特性(弾性)の変更、厚みの変更、曲げ剛性の低減、断面積の減少、および/または安定性の低下によって実現することができる。材料は、例えば、このようにして所定の屈曲点を設けるために、遡及的処理の結果として所定の箇所でさらに弱くなっている可能性がある。材料の厚みは、所望の箇所に所定の屈曲点を実現するために、1箇所を薄くすることができる。例えば、所定の屈曲点を設けるためにある箇所またはある領域内の材料特性を変更することが可能である。これは、例えば、熱処理により回転ラッチに硬度の高い領域または硬度の低い領域が作られることで実現することができる。例えば事故が発生した場合のように過大な応力がロック、したがってロック機構に加えられたときに、硬度の低い領域は、ロック機構が解放されることなく、所定の屈曲点として働く。所定の屈曲点の有利な位置を選択することにより、重なり部分は好ましくは増大して、ロック機構の特定の信頼できるロッキングを確実にする。
【0019】
代替的にまたは変更した材料特性と組み合わせて、回転ラッチ、好ましくは収集アームは、断面減少部を含むことができる。断面減少部は回転ラッチの片側または両側に設けることができる。両側の減少部は、回転ラッチの対称設計の利点を提供するとともに、回転ラッチの潜在的変形に良い影響を与えることもできる。回転ラッチは、所定の屈曲点を画定するとともに、所定の屈曲点の曲げ挙動に特異的に影響を与えるために、2つ以上の断面減少部を含むことも可能である。回転ラッチに沿って異なる長さの凹所を1つまたは複数設けることもできる。複数の凹所は、例えば、回転ラッチ内に連続的に増大する長さ、または、増大し次いで減少する長さをなして設けられる。
【0020】
本発明の一実施形態では、凹所は、回転ラッチに成形、刻印、および/または機械加工を施して作ることができる。回転ラッチの少なくとも部分的厚み減少部も凹所と見なされる。1つまたは複数の凹所を、例えば回転ラッチにフライス加工または刻印を施して作ることもできる。
【0021】
別の実施形態では、凹所は、連続湾曲部および/またはU字形状および/または尖頭ノッチとして描かれうる断面部を含むことができる。断面部の形状を使用すると、ノッチの数、したがって所定の屈曲点は好適に影響されうる。ロックは1つまたは2つのつめを含むことができる。中間閉位置の他に、ロックは、ロック機構がロックされうる完全閉位置も含むことができる。したがって、回転ラッチは、ロッキング用の1つまたは2つのロック面を含むことができる。ロックは、つめを戻り止め位置で阻止する阻止レバーを含むことができる。回転ラッチは、戻り止め位置でつめに開トルク、閉トルク、または無トルクを引き起こすことができる。
【0022】
この構成は、ロック機構の予期せぬ開放をもたらす例えば10kN〜30kNの過大な荷重によって引き起こされる変形のために、回転ラッチのロック面がつめのロック面から解放されるのを妨げる。一実施形態では、収集アームは、特に、回転ラッチとつめとの間に重なり部分または増大した重なり部分が作られるように、過大な荷重がかかった結果として荷重アームに関連して曲げられる。この曲げは、一般に収集アームおよび荷重アームの2つの自由端の間の距離を増大させる。
【0023】
この実施形態は公差補正も可能にする。つめのロック面と回転ラッチのロック面との計画重なり部分は、回転ラッチおよびつめの支持点での公差の増大により、および/または、支持プラスチック部品の変形により、ロックの寿命にわたって減少している可能性がある。回転ラッチとつめとの間の重なり部分は一般に増大することになるので、ロック機構が過大な応力を受けて予期せず開放するおそれは依然としてない。
【0024】
特に、つめが引き起こされた開モーメントによってつめの戻り止め位置から動かされていないときに、タペットはつめをつめの戻り止め位置から動かすだけである。当該実施形態において、解放レバーが阻止レバーをつめから遠ざけるだけでなく、つめを回転ラッチの係合領域から動かすことも確実にするために、解放レバーは10°を超えて規則的に枢動されなければならない。解放レバーが10°を超えて枢動された後でしか、一般に解放レバーに装着されているタペットがつめと相互作用してつめが解放レバーによって機械的に枢動されることはない。したがって、開放機構が引き起こされた開トルクのために機能しなくなったときに、タペットによりつめはつめの戻り止め位置から確実に動かされる。
【0025】
一実施形態では、ロック機構は、好ましくは解放レバーとしても働く中間閉位置つめを含む。この実施形態では、特に、回転ラッチは、ロック面を有する全体的に変形可能なアームから凹所によって切り離された、中間閉位置でロックするためのアームを含むことが好ましい。中間閉位置では、つめ、好ましくは、中間閉位置つめのアームは、回転ラッチを中間閉位置でロックするために、回転ラッチの上記アームに当接する。この実施形態により、収集アーム上に所定の屈曲点を設けること、ならびに、所望の箇所に中間閉位置つめ用のロック面を設けることが可能になる。この中間閉位置つめ用のアームは、特に、回転ラッチの表面積によって提供されるレベルを越えて延びる。これにより、つめの上方に中間閉位置用の解放レバーを設けて、中間閉位置つめを形成することも可能になる。
【0026】
一実施形態では、ロック機構は、つめをつめの戻り止め位置で阻止することができる阻止レバーを含む。つめは、つめが阻止レバーによって阻止されると、つめの戻り止め位置から離れることができない。ロック機構は、特に阻止レバーによって確実にロックすることができる。
【0027】
より少ない部品でさらにコンパクトな設計を実現するために、ロック機構のつめおよび解放レバーは、一実施形態では共通軸上に回転可能に取り付けられる。
【0028】
好適には、回転ラッチは、ドア密閉圧力が存在していなくてもつめにモーメントを引き起こすことができるようにするために、ばねによってロックの開位置の方向に予張力を与えられる。
【0029】
本発明の一実施形態では、解放レバーは、ロック機構の阻止レバーを阻止レバーの阻止位置から動かすことができる。このためには、一般に比較的小さい力で十分である。つめがその後、回転ラッチによってつめに引き起こされた開モーメントによってつめの戻り止め位置から動かされる状況で、ロック機構を開放するために必要な全力は非常に小さいことが有効である。
【0030】
一実施形態は、阻止レバーを阻止レバーの阻止位置まで動かすためのばねを備える。したがって、阻止レバーは、ばねによって阻止レバーの阻止位置まで簡単かつ確実に動かすことができる。一実施形態では、阻止レバーおよびつめは、阻止レバーを阻止レバーの阻止位置で動かすことにより、つめもまたつめの戻り止め位置まで動かされるように設計される。したがって、必要な部品の数はさらに削減される。同時に、重量も必要スペースも低減される。
【0031】
一実施形態では、解放レバーは3つのレバーアームを含む。第1のレバーアームを使用して、阻止レバーは、特に、ロック機構のロックを解除するために阻止レバーの阻止位置から動かされる。解放レバーの第2のレバーアームは、つめを上述した態様で解放することが好ましい。すなわち、つめをロック位置の方向に動かすことができるばね力が少なくともロック機構の開放中に減じられる。好ましくは、この第2のレバーアームは、つめをつめのロック位置から動かすためのタペットを含んでいて、コンパクトで生産が簡単な設計を可能にする。第3のレバーアームは、解放レバーを作動させるために、すなわち、例えばロッド配置またはボーデンケーブルの助けを借りて、好ましくは連結されたハンドルまたは電気駆動部の助けを借りて使用される。ハンドルが作動されるかまたは電気駆動部が起動されると、このことが、第3のレバーアームおよび解放レバーも作動させてロック機構のロックを解除し、前記解放レバーは特に軸を中心に枢動される。好適には、本発明は、必要スペースおよび重量を最小限に抑えかつ解放レバーが所望の最終位置を通過するのを妨げるために、第2のレバーアーム用の係止部も備える。
【0032】
つめは2つのレバーアームを含んでいて、一方のレバーアームが回転ラッチをロックすることが好ましい。機構、例えば予張力を与えられたばねの助けを借りてつめをつめの戻り止め位置まで動かすことができるようにするために、機構、例えば予張力を与えられたばねは他方のレバーアームに作用する。つめのこの他方のレバーアームは、解放レバーのタペットによって随意に係合されてロック機構のロックを解除し、それに応じて動かされ、特に軸を中心に枢動される。好適には、つめがつめの完全戻り止め位置を通過するのを妨げるために、このレバーアーム用の係止部も設けられる。
【0033】
つめをつめの戻り止め位置で阻止するための阻止レバーは、好ましくは2つのレバーアームを含む。阻止レバーの第1のレバーアームは、特に、つめをつめのラッチ位置で阻止しかつ/またはつめをつめのラッチ位置まで動かすことができる。一実施形態では、特に、この第1のレバーアームは、好適には解放レバーによって係合され、特に軸を中心に枢動することによって阻止レバーの阻止位置から動くこともできる。阻止レバーの第2のレバーアームは、好ましくは、阻止レバーが与えられた最終位置を通過して動かされうるように係止部に対して動くことができる。第2のレバーアームを設けることは、好適には、阻止レバーの重心が、阻止レバーがそれを中心に枢動されうる軸の方向に移動することにも寄与する。こうした重心の移動は阻止レバーの枢動を促進する。
【0034】
一実施形態では、阻止レバーは、構成要素の数を最小限に抑えるために解放レバーとしても機能することができる。一実施形態では、解放レバーは、回転ラッチを中間閉位置でロックすることができる中間閉位置つめとしても機能する。その場合、ロック機構はドアまたはフラップをロックすることができる。しかし、ドアまたはフラップは、完全閉位置で計画されたほどにはロックされない。中間ロック位置からは、回転ラッチがロック位置の方向にさらに枢動された場合にのみ完全閉位置に至る。
【0035】
本発明のロック機構は、特に、金属ロックプレート上または一般に金属製のロックケーシング上に配置される。通常、そのようなロックは、一般にプラスチック製のロックハウジングも含み、ロックハウジングはロックの構成要素を外的影響から保護することができる。この構成は、特にプラスチック製のロックカバー、および/または、特に、保護するためにも設けられるセントラルロッキング用のプラスチックカバーをさらに含むことができる。ロックは、例えば、建築物のドアもしくはフラップの一部または自動車のドアもしくはフラップの一部とすることができる。
【0036】
本発明はさらに、回転ラッチの完全閉位置用のつめ(「完全閉位置つめ」とも称される)と、回転ラッチの中間閉位置用のつめ(「中間閉位置つめ」とも称される)とを有し、好適には前記完全閉位置つめ用の阻止レバーも有するかかるロックも含む。この種のロックは、独国特許出願公開第102008061524号明細書に開示されている。しかし、本発明のロックは、阻止レバーに加えて、回転ラッチを中間ロック位置および完全閉位置でロックするためのただ1つのつめも含むことができる。
【0037】
回転ラッチは、自動車のドアまたはフラップが閉じられたときにドアまたはフラップのロックボルトが入るフォーク状の入口スロットを含む。その場合、ロックボルトは回転ラッチを開位置から戻り止め位置へ枢動させる。戻り止め位置になると、ロックボルトはもはや回転ラッチから動くことができない。つめは回転ラッチを戻り止め位置でロックして、回転ラッチが開位置に逆戻りできないようにする。
【0038】
本発明によるロックは、枢動されうるかつ枢動されるべき、つめ、阻止レバー、または回転ラッチなどの構成要素を含む。このような構成は、通常、ばねの力の結果としてそのような構成要素の所望の枢動運動をもたらすために使用される少なくとも1つの予張力を与えられたばね、特に脚ばねを含んでいる。このような予張力を与えられたばねは、例えば、つめをつめの戻り止め位置まで、阻止レバーを阻止レバーの阻止位置まで、または回転ラッチを回転ラッチの開位置まで動かすことができる。