特許第6236684号(P6236684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236684
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】建築用部材
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/03 20060101AFI20171120BHJP
   H04B 1/38 20150101ALI20171120BHJP
   E06B 3/70 20060101ALI20171120BHJP
   E06B 7/28 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H04B1/03
   H04B1/38
   E06B3/70 Z
   E06B7/28 A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-560019(P2016-560019)
(86)(22)【出願日】2015年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2015086443
(87)【国際公開番号】WO2016104804
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2016年8月29日
(31)【優先権主張番号】特願2014-264234(P2014-264234)
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
(73)【特許権者】
【識別番号】513002795
【氏名又は名称】有限会社ロッグロッグ
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】高崎 和之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐文
【審査官】 原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−147846(JP,A)
【文献】 特開平08−125433(JP,A)
【文献】 特開2004−140832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/03
H04B 1/38
E06B 3/70
E06B 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材本体と、
該建材本体の一部に収容された電波送受信ユニットとからなり、
上記建材本体は、
上記電波送受信ユニットを収容する収容部を具備し、
上記建材本体は区画された部屋を区切るための部材であって枠体と該枠体にはめ込まれたガラス部材とからなる窓部材であり、該ガラス部材は、部屋の内方に面する内面と部屋の外方に面する外面とを備えた複層ガラスからなり、
上記収容部は、開口を有する箱体からなり、該箱体は上記複層ガラスに嵌合されており、該箱体の底面を複層ガラスの外面に密着させて、上記収容部の内部に熱がこもらないように電波送受信ユニットからの熱を放散する放熱部が形成されていることを特徴とする建築部材。
【請求項2】
上記収容部は上記開口を封止する蓋体を具備し、該蓋体にも、その下側と上側とに開口が形成されて上記放熱部が形成されており、上記箱体は熱伝導性の高い材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載の建築部材。
【請求項3】
上記収容部は、電波送受信ユニットごと建材本体から取り外し可能になされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築部材。
【請求項4】
上記ガラス部材は、電波遮断部材としてのLow−Eガラスからなることを特徴とする請求項2記載の建築部材。
【請求項5】
上記電波送受信ユニットは、上記窓部材の上部に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の建築部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の無線通信環境を良好に保つことのできる建築用部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット環境の発達に応じていわゆるモバイル機器の発展が目覚ましい。このようなモバイル機器の発展に伴い、様々な場面でモバイル機器を使用するユビキタス社会も急速に進展しているが、現状では各使用者個人で通信機器をもって移動することにより通信環境を整えている。
しかし、このように各個人が通信機器をもって移動する形態では屋外や電波の入りやすい場所では不自由なく通信環境を整えることができるものの、電波の入りにくい場所では良好な通信環境を整えることはできていない。
そこで、通信環境を整える手段が種々検討されているが、通信機器そのものに対する工夫は種々なされているものの、各種端末への接続を考えての通信環境全体を整えるには至っていない。
また、現在は屋内にwifiルーターなどの機器を設置して通信環境を改善しているが、これでは機器の設置場所の問題や配線が複雑になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−107484
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
別に特許文献1のように、窓ガラス部材に、微小なICタグチップと人体検知センサを備えて、微弱電波を使ってガラス部材の状況を逐一データ発信するように構成したものも提案されている。
しかしながら、上述の提案にかかる装置は、単に微弱な電波を発信するためのものであり、通信環境そのものを整えることが目的ではなかったため、この提案を用いても未だ十分な通信環境の整備には至っていない。
したがって、本発明の目的は、室内などの外部電波が届きにくい場所でも良好な通信環境を整えることが可能で、設置場所や配線の問題を解消することができる通信機器を備えた建築用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、建材にWifi機器を備えさせれば上述の課題を解消し得るという知見に基づき、その場合の問題点を抽出し、該問題点を解消すべくさらに検討し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.建材本体と、
該建材本体の一部に収容された電波送受信ユニットとからなり、
上記建材本体は、
上記電波送受信ユニットを収容する収容部を具備することを特徴とする建築部材。
2.上記建築部材は区画された部屋を区切るための部材であって、部屋の内方に面する内面と部屋の外方に面する外面とを備え、
上記建材本体の外面が電波遮断効果を有する電波遮断部材を用いて形成されている
ことを特徴とする1記載の建築部材。
3.上記収容部は、その内部に熱がこもらないように電波送受信ユニットからの熱を放散する放熱部を有することを特徴とする1又は2記載の建築部材。
4.上記収容部は、電波送受信ユニットごと建材本体から取り外し可能になされていることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の建築部材。
5.上記建築部材は枠体と該枠体にはめ込まれたガラス部材とからなる窓部材であり、
上記ガラス部材は、上記電波遮断部材としてのLow-Eガラスからなる
ことを特徴とする2記載の建築部材。
6.上記ガラス部材は、Low−Eガラスからなる複層ガラスであり、上記収容部は、該複層ガラスに嵌合されて配されていることを特徴とする5記載の建築部材。
【発明の効果】
【0006】
本発明の建築用部材は、室内などの外部電波が届きにくい場所でも良好な通信環境を整えることが可能で、設置場所や配線の問題を解消することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は本発明の建築用部材の1実施形態を摸式的に示す斜視図である。
図2図2図1のII-II断面図である。
図3図3図1に示す建築用部材における収容部内部を摸式的に示す平面図である。
図4図4は収容部を模式的に拡大して示す図(図2の一部拡大図の相当図)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について実施例を示してさらに具体的に説明するが本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0009】
まず、本発明の建築用部材の一実施形態を図1〜3を参照して説明する。
<全体構成>
本実施形態の建築用部材1は、枠体と該枠体にはめ込まれたガラス部材とからなる窓部材であり、枠体10aとガラス部材10bとからなる建材本体10と、建材本体10の一部に収容された電波送受信ユニット20とからなり、建材本体10は、電波送受信ユニット20を収容する収容部12を具備する。
以下詳細に説明する。
【0010】
<建材本体>
建材本体10は、区画された部屋を区切るための部材であって、部屋の内方に面する内面10cと部屋の外方に面する外面10dとを備えた平板状の部材である。いわゆるプレキャスト部材と呼ばれるコンクリート部材等が該当するが、本実施形態においては、建物の外面を形成する窓部材であり、建物設置時に窓ガラス部10bが形成されていると共に、その上方に電波送受信ユニット20を収容するための収容部12が設けられている。電波送受信ユニット20は、図1においては摸式的に建材本体10の上下方向長さの1/4程度の高さを有するように表しているが、実際には2〜10cm程度の高さがあれば十分である。
窓枠10aは、平板状の建材本体の外周を構成するように設けられており、また、窓枠と同一素材により窓ガラス部10bと収容部12とを区切る仕切り部10eが設けられている。また、側面にはケーブルを通すために収容部12まで貫通している開口部10fが設けられている。窓枠10aの形成材料は特に制限されず、アルミやステンレス、FRP(繊維強化プラスチック)等を使用することができる。
窓ガラス部10bは、長方形状であり、通常の窓部材と同様に窓枠10aに嵌合されている。本実施形態において窓ガラス部10bは複層ガラスにより形成されている。ガラスの材質などは特に制限されないが、好ましくは後述する電波送受信ユニットとの関係で電波遮断効果を有する電波遮断部材であるlow−Eガラスが用いられる。このような熱線遮断機能を有するLow−Eガラスを用いることにより、無線LANの電波(2.4GHz帯の電波)を遮断する効果があることから、アクセス範囲の制御が可能となり、より快適な通信環境を室内に形成することができる。なお、Low−Eガラス(Low Emissivity=低放射)とは板ガラスの表面に酸化スズや銀などの特殊金属膜8(Low−E膜)をコーディングしたもので、このLow-E膜が遠赤外線の反射率を高めている。
このように、電波遮断部材により収容部の上下方向の部材を構成することにより、より室内の電波状況を良好なものとすることができる。なお、電波遮断部材としては上述のLow−Eガラスが電波遮断性とガラスを通して外部の視認性が良好な点から好ましいが、このほかにもアルミ箔を埋め込んだ板材やレンジバリア(商品名、メイワパックス社製)等の種々部材を用いることができる。
【0011】
<収容部>
収容部12は、窓枠10aを構成する部材により矩形状に形成された凹部12aを形成し、さらにその凹部12aの開口12bを封止する蓋体12cを開口12bに嵌合させることにより構成されている。
また、本実施形態においては、収容部12は、凹部全体にはまる開口の形成された箱体12dを凹部12aに嵌合させている。そしてこの箱体は電波遮断効果を有する電波遮断部材により形成されている。また蓋体12cは電波透過性の高い材料により形成されている。この際用いることのできる電波遮断部材としては、金属等が用いられる。電波透過性の高い材料としては、プラスチック、ガラス、FRP等が用いられる。
このように外側(建物の外部側)と内側(建物の内部側)とに電波遮蔽効果の差をつけることで、外部への電波漏れを最小限に抑えつつ、建物内部の電波環境を良好なものとすることができる。
【0012】
収容部12における蓋体12cは、その内部に熱がこもらないように電波送受信ユニット20からの熱を放散する放熱部として機能するようになされている。具体的には、その下側と上側とに開口を形成する構成、箱体12dを熱伝導性の高い材料で形成し、外部への放熱性能を高くする構成とすることができる。
また、図4に示すような構成として熱放散構造とすることができる。なお、図4においては、100番台の番号を付して説明する。また、仕切り部10eを省略して示すが、この図4に示すように仕切り部10eを設けない構成とすること、及び仕切り部を設ける構成のいずれも採用可能である。
図4に示す構成においては、収容部112を複層ガラス110b−1、110b−2に嵌合して配することで、本実施形態の建築部材を形成している。このため、収容部112の蓋体112cが複層ガラスの内面110b−1と同一面に位置し、箱体112dの底面を複層ガラスの外面110b−2に密着させて設けられている。このように構成することで収容体12の熱が複層ガラスの外面110b−2を通じて外部に放散される。また、この場合収容体112の箱体112dはアルミなどの熱伝導性の高い金属材料を用いて形成することが好ましい。
また、この際用いられるガラス材料としても、上述のlow−Eガラスを用いるのが好ましい。
また、この構成は、図1に示すように、上部に電波送受信ユニット20が配されている場合に有効である。これは、上部に位置する場合に、建物の構造上日が遮られて日陰となる、梁の真下に位置することで梁の直下部分の温度が低くなることから、放熱性能が向上するためであると考えられる。また、上部に位置させることで電波送受信ユニットの形成された部分に対する防水性も向上する。
【0013】
<電波送受信ユニット>
本実施形態における電波送受信ユニット20は、複数の機能モジュール22と、無線装置24と、電源装置26とからなり、それぞれ配線28を介して連結されている。本実施形態においては、いわゆる無線LANユニットであり、本実施形態においては、無線装置として、無線LAN°通信規格IEEE802.11に準拠したプロトコルを用いて通信を行う機能を具備する無線LAN°通信システムユニットを用いているが、通信を司る装置でれば制限なく、無線LAN、3G/LTE、Bluetooth(登録商標)等を用いることができる。
また、機能モジュールとしては、サーバー(ユーザー認証、広告データの挿入、メール配信、webサーバーなど)、温度センサーや人感センサー、カメラなどのモジュールが用いられ、環境に応じたサービスを提供できるように機能拡張が行えるのが好ましい。
また、特に図示しないが無線装置及び機能モジュールには必要に応じてアンテナが設けられている。
【0014】
<使用方法、効果>
本発明の建築用部材は、建築に際して建物の構成部材として使用することができる。たとえば本実施形態であればビルの外壁材として用いることができる。
そして、電源ライン及びイーサネット(登録商標)を壁の内部から本体に連結して無線ランルーター機能を発揮させることができる。
【0015】
なお、本発明は上述の実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
たとえば上述の実施形態においてはガラスをはめ込んだ外装材を例示して説明したが、この例に制限されず、ドア、壁材、ガラスのない外装材等種々形態とすることができる。
電波送受信ユニットは、下方に配することもできる。
また、通信範囲を制御しやすいことを利用して、サービスの提供エリアに適した情報(広告など)を挿入することができる。これらは機能モジュールによって必要に応じて追加することができる。
建材本体の形状は、長方形状だけでなく、正方形等の矩形状の他、円形状、三角形状、ひし形状等異形でもよい。
また、窓の構成をアクリル窓、太陽光パネル窓、ELフイルム窓とすることも可能である。
【符号の説明】
【0016】
1:建築用部材、10:建材本体、20:送受信ユニット
図1
図2
図3
図4