(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236695
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20171120BHJP
A61M 16/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
A61M1/36 145
A61M16/06 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-223113(P2013-223113)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-84794(P2015-84794A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】396020132
【氏名又は名称】株式会社システック
(72)【発明者】
【氏名】香高 孝之
(72)【発明者】
【氏名】山下 伊智朗
(72)【発明者】
【氏名】川島 信幸
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−110119(JP,A)
【文献】
特開2007−000621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に供給物を供給する供給管と、前記供給管に供給物の通過可能に接続していて患者の所望の身体部に取りつけられる装着部を有する医療・介護用装具であって、前記装着部には、前記装着部と患者の皮膚との間に配置され、前記装着部への押圧により前記皮膚面に倣って前記皮膚面に接触する柔軟なシート状電極を備え、接触面積に対応した静電容量を示す接触センサを備え、前記シート状電極は、この引き出し部には、前記供給管を挟むことで、前記供給管に前記接触センサを固定する固定具を備え、前記固定具には、前記引き出し部に電気的に繋がる検出回路部が接続し、前記検出回路部は、
前記接触センサから得られる前記シート状電極の皮膚への接触状態量に応じた測定値を所定の閾値と比較して、それを超える場合は、所定量以上の外れやずれがあると判定し、接触状態量または及びその判定結果を警報出力するか、前記接触センサ又は前記検出部に予め付与された固有の識別符号とともに、前記接触状態量または及び前記判定結果を監視局に通信により送付するための判定警報・通信手段を備えていることを特徴とする外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具。
【請求項2】
前記固定具は、前記検出回路部を格納する筐体を接続するための嵌め合う接続部を備え、嵌め合うことで、前記引き出し部と前記検出回路部が電気的に接続することを特徴とする請求項1記載の外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具。
【請求項3】
患者に供給物を供給する供給管と、前記供給管に供給物の通過可能に接続していて患者の所望の身体部に取りつけられる装着部を有する医療・介護用装具に取り付けるものであって、前記装着部に取り付けられる接触センサと、前記供給管に前記接触センサを固定する固定具と、前記固定具に繋がる検出回路部とを備え、
前記接触センサは、前記装着部と患者の皮膚との間に配置され、前記装着部への押圧により前記皮膚面に倣って前記皮膚面に接触する柔軟なシート状電極を備え、接触面積に対応した静電容量を示し、
前記固定具は、前記シート状電極の引き出し部にあって、前記供給管を挟むことで、前記供給管に前記接触センサを固定し、
前記検出回路部は、前記接触センサから得られる前記シート状電極の皮膚への接触状態量に応じた測定値を所定の閾値と比較して、それを超える場合は、所定量以上の外れやずれがあると判定し、接触状態量または及びその判定結果を警報出力するか、前記接触センサ又は前記検出部に予め付与された固有の識別符号とともに、前記接触状態量または及び前記判定結果を監視局に通信により送付するための判定警報・通信手段であることを特徴とする医療・介護用装具の外れ・ずれ状態量検知具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工呼吸器や酸素吸入器、点滴などのように医療・介護に置いて装具を患者の体に長時間に亘り施す場合に、外れやずれの状態量を検知し、警報を出す検知具を備えた
医療・介護用装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人工呼吸器や酸素吸入器、点滴、人工透析など医療・介護用装具を患者に施す装置として色々のものが上げられるが、一例として点滴や人工透析装置を例に取ると、特許文献1から特許文献3のものが挙げられる。特許文献1のものは、
図5に示すようなものである。これを説明すると、点滴用の場合には、挿入管は一本でよいが、この図では、人工透析装置用の挿入管として、静脈用と動脈用の二本が固定されている。管を挟み固定するクリップ状の部分があり、これが腕に貼り付ける腕のカーブに沿った腕木についていて、この先端に磁力センサが設置されていて、その近傍の肌には磁石が貼り付けられる。
管が何らかの力により抜けると腕木が動いて、磁石に対して磁力センサが動くので、警報出力を出すことができる。
センサが検知しているのは、磁石と磁力センサの位置や移動の距離であり、管即ち針先の挿入状態の微妙な動きでは、検出が難しく、数mmの抜けが無いと、抜けがあるのかないのか検出判定が難しい難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−85635
【特許文献2】特開2007−621
【特許文献3】特開2013−81626
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、抜けや外れの量が少なくてもはっきりした検出が可能な外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具は、前記装着部への押圧により前記皮膚面に倣って前記皮膚面に接触する柔軟なシート状電極を備えて接触状態量に応じた静電容量を計る接触センサと、これを供給管に固定する固定具と、前記固定具には、前記シート状電極に電気的に繋がり、接触状態量を既定の閾値と比較判定し判定出力を出す検出回路部を備えた外れ・ずれ状態量検知具を前記供給管又は及び患者の所望の身体部に取りつけられる装着部に備えている。
以下、請求項に沿って記述する。
【0006】
請求項1記載の発明は、外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具であって、
患者に供給物を供給する供給管と、前記供給管に供給物の通過可能に接続していて患者の所望の身体部に取りつけられる装着部を有する医療・介護用装具であって、前記装着部には、前記装着部と患者の皮膚との間に配置され、前記装着部への押圧により前記皮膚面に倣って前記皮膚面に接触する柔軟なシート状電極を備え、接触面積に対応した静電容量を示す接触センサを備え、前記シート状電極は、この引き出し部には、前記供給管を挟むことで、前記供給管に前記接触センサを固定する固定具を備え、前記固定具には、前記引き出し部に電気的に繋がる検出回路部が接続し、前記検出回路部は、
前記接触センサから得られる前記シート状電極の皮膚への接触状態量に応じた測定値を所定の閾値と比較して、それを超える場合は、所定量以上の外れやずれがあると判定し、接触状態量または及びその判定結果を警報出力するか、前記接触センサ又は前記検出部に予め付与された固有の識別符号とともに、前記接触状態量または及び前記判定結果を監視局に通信により送付するための判定警報・通信手段を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項
2記載の発明は、請求項1記載の外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具において、
前記固定具は、前記検出回路部を格納する筐体を接続するための嵌め合う接続部を備え、嵌め合うことで、前記引き出し部と前記検出回路部が電気的に接続することを特徴とする。
【0008】
請求項
3記載の発明は、医療・介護用装具の外れ・ずれ状態量検知具であって、
患者に供給物を供給する供給管と、前記供給管に供給物の通過可能に接続していて患者の所望の身体部に取りつけられる装着部を有する医療・介護用装具に取り付けるものであって、前記装着部に取り付けられる接触センサと、前記供給管に前記接触センサを固定する固定具と、前記固定具に繋がる検出回路部とを備え、
前記接触センサは、前記装着部と患者の皮膚との間に配置され、前記装着部への押圧により前記皮膚面に倣って前記皮膚面に接触する柔軟なシート状電極を備え、接触面積に対応した静電容量を示し、
前記固定具は、前記シート状電極の引き出し部にあって、前記供給管を挟むことで、前記供給管に前記接触センサを固定し、
前記検出回路部は、前記接触センサから得られる前記シート状電極の皮膚への接触状態量に応じた測定値を所定の閾値と比較して、それを超える場合は、所定量以上の外れやずれがあると判定し、接触状態量または及びその判定結果を警報出力するか、前記接触センサ又は前記検出部に予め付与された固有の識別符号とともに、前記接触状態量または及び前記判定結果を監視局に通信により送付するための判定警報・通信手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の様に構成されているので、外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具では、外れやずれの量がすくなくても、その量が影響する場合には、はっきりした検出出力を提供して、警報を発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具と、その構成の一実施態様を示す図である。
【
図2】本発明による外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具と、その構成の一実施態様を示す図である。
【
図3】本発明による外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具の他の適用例を示す図である。
【
図4】本発明による外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具が装着された状態、外れ又はずれの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具は、前記装着部への押圧により前記皮膚面に倣って前記皮膚面に接触する柔軟なシート状電極を備えて接触状態量に応じた静電容量を計る接触センサと、これを供給管に固定する固定具と、前記固定具には、前記シート状電極に電気的に繋がり、接触状態量を既定の閾値と比較判定し判定出力を出す検出回路部を備えた外れ・ずれ状態量検知具を前記供給管又は及び患者の所望の身体部に取りつけられる装着部に備えている。
以下図に沿って説明する。
以下、顔面の口、鼻、首などに取り付ける酸素吸入器、人口呼吸器、カニューレなどを例に説明するが、これにとらわれない。
【0012】
図1は、本発明による外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具と、その構成の一実施態様を示す図である。
1−Cには、呼吸のための酸素や空気を供給する呼吸管110であり、これは、供給側に繋がる供給管101とこれに繋がり、患者の鼻に差し込む差込管102を備えている。
これが患者の顔面に取り付けられるが、時には抜けやずれがあり、患者に重大な損傷を与えることがあるため、看護者等は過度の注意を注ぐべき状態に置かれる。
1−Aでは、外れ・ずれ状態量検知具120を備えた呼吸管110となっている。呼吸管110は、勿論、患者に供給物を供給する医療・介護用装具の一形態である。
外れ・ずれ状態量検知具120は、供給管101に固定設置される検出部130とこれから差込管102側に伸びた接触センサ140を備えている。接触センサ140は、
供給管101の差込管102のある側で供給管101に沿って配置されることで、供給管101の顔面への押し圧により顔面との接触面に倣って接触するようになっている。
【0013】
検出回路部130は、接触センサ140から得られる接触状態量を所定の閾値と比較して、それを超える場合(接触面積が減少し、又は、接触間隔が増大)は、所定量以上の外れやずれがあると判定し、接触状態量または及び判定結果を警報出力するか、接触センサ140又は検出回路部130の固有の識別符号とともにこれらを監視局に通信により送付する、判定手段及び通信手段を備えている。検出回路部130の更に具体的例として、1−Fに示す。
1−Fは、検出回路部130であり、適当な筐体160とその中に収納される検出回路があり、検出回路は、電気端子161を備え、これらは後述する固定具150A、又は150Bの電気端子に接続される。検出回路の具体例は、多くの回路例が可能だが、例えば、右下に示すように、発振回路を備え、接触センサ140の静電容量を発振回路の素子として用いて、発振出力を整流して電圧量に直す、又は発振周波数に比例した出力を電圧量として出すかして、皮膚との接触量又は接触距離に関係した静電容量に比例する電圧値を得て、これと所定の閾値を比較することができる。尚、認識符号を持たせることや、通信手段、特に無線通信手段を備えることは特段の技術ではなく利用できる。
【0014】
接触センサ140は、色々の形態が取れるが、1−Dもその一つの例である。
特に、接触状態量(接触面積、接触離間距離)を検出するには、従来例に示した一次元の距離の移動を見ることは、前述のように余り適当ではない。適当な手段として、皮膚との接触抵抗を測る手段と皮膚との電極の面接触による静電容量を測る手段が考えられる。このうち、皮膚との接触抵抗を測る手段は、うそ発見器でも用いられるように、興奮等による発汗状態で敏感に接触抵抗が変わるため、接触状態のみを測定するには好ましくない。
幸いなのは、皮膚との電極の面接触による静電容量は、発汗状態の影響はない。更に、
外れやずれなど部分的に状態が変わっても、静電容量は、その各部の状態量の並列値で与えられるため、何%が外れているかなどを忠実に表現できる。供給管101、従って、その裏側に付いた接触センサ140が皮膚から外れたことが静電容量に表れる。
勿論、接触センサ140は、供給管101の押圧により、皮膚の凹凸(曲がり)に倣って接触し、供給管101が皮膚から離れると、これと共に移動し皮膚から離れるものである。
そのため、接触センサ140は、柔軟性でシート状になっている。接触センサ140の詳細を1−Dを用いて説明する。1−Dは、シート状の接触センサ140で、皮膚に接触させてその間の静電容量を計るための電極を備えている。
【0015】
A−Aで切った断面を左に示す。シート状の柔軟性基板141の上に、静電容量を計るためのセンサ電極142とこの周辺にはガードリング電極143がある。ガードリング電極143は、必ずしも必要がないが、この電極を一定の電位にしておけば、ノイズの遮蔽に効果がある。尚、電極の上には、薄い絶縁層144を被覆してもよい。センサ電極142の面積は、接触面積を検出するので、上唇と鼻の下の周辺をカバーするほどの面積を持つようにする。二つの電極は、図の右端ように供給管101との固定部150Aにおいて、検出回路部130に繋がるようになっている。固定部は、これにこだわらないが、接触センサ140を供給管101の裏側に配置し、固定するために固定具150Aとこれにかみ合う固定具150Bを備えている。固定具150Bは、1−Eに示されている。従って、固定具150Aの断面コの字の凹部に供給管101を挟み込み、固定具150Bを被せて押し込むと、固定具150Bと固定具150Aは堅固に噛み合うようになっている。
【0016】
図2は、本発明による外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具と、その構成の一実施態様を示す図である。
特に、
図1の例との違いは、
図1は患者の鼻に差し込む差込管102の例であるが、
図2は、鼻と口を全体的に覆うマスク状となっている。従って、1−Cの形状に対して、2−Bの形状になっていて、マスク202を備えている。マスク202は、患者の顔面に装着した場合に周辺が特に皮膚に密着するので、
図1の形状より、2−Aの形状の接触センサ240の方が好ましい。接触センサ240の詳細は、1−Dに対応して、2−Cに示される。マスク202の内側で、皮膚に接する周辺に沿って、センサ電極242が配置される。その周りにガードリング電極243が配置されている。それ以外の構造は、
図1と同じである。
【0017】
図3は、本発明による外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具の他の適用例を示す図である。
図1、
図2のような、接触センサ140、240を適用することができる。この図は、3−Aで、呼吸用のカニューレを患者の口に又は、3−Bで首に開けた穴を通じて挿入してある状態を示す。このようなカニューレの抜けやずれも検出することが容易である。
【0018】
図4は、本発明による外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具が装着された状態、外れ又はずれの状態を示す図である。4−Aでは、供給管101と接触センサ140、又は240が皮膚401に接触している状態を示す。4−Bでは、供給管101と接触センサ140が皮膚401から離れている状態を示す。この離れている部分の面積が多いほど、静電容量値は小さくなる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上のように本発明による外れ・ずれ状態量検知具を備えた医療・介護用装具は、患者の皮膚からの装具の外れ、ずれを供給管と一緒に動く接触センサの接触面積の変化として
測定するので、抜けのような一次元方向のような微妙な外れやずれにも敏感に対応でき産業上利用して極めて好都合である。
【符号の説明】
【0020】
100 医療・介護用装具
101 供給管
102 差込管
110 呼吸管
120 外れ・ずれ状態量検知具
130 検出回路部
140、240 接触センサ
141 柔軟性基板
142、242 センサ電極
143、243 ガードリング電極
144 絶縁層
150A、150B 固定具
160 筐体
161 電気端子
202 マスク
401 皮膚
以上。