(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン(21)からの排気ガスを車両後方に向けて排出する排気管(24)の後端に配置され、車両側面に沿うように前後に延び、排気エネルギーを減衰させて消音する消音器装置(50)を備える鞍乗り型車両(1)の消音器構造において、
前記消音器装置(50)は、
筒型で前後に延びる消音器本体(51)と、前記消音器本体(51)の後端に装着される後端キャップ(53)と、を備え、
前記消音器本体(51)は、該消音器本体(51)の後端に排気口(66a)を有し、
前記後端キャップ(53)は、前記消音器本体(51)の後端縁(51a)から後方へ先細りに膨出する形状をなし、前記消音器本体(51)の後端縁(51a)が囲む後端形状よりも小さい後端面(53b)を形成し、
前記後端面(53b)は、前記消音器本体(51)の左右幅(L2)の中心(A1)よりも車幅方向内側に位置して開口し、前記排気口(66a)を臨ませて前記消音器装置(50)としての排気部(50a)を構成し、
前記消音器本体(51)は、前記後端縁(51a)の車幅方向外側を前進させ、
前記後端キャップ(53)は、前記後端面(53b)の周囲縁(53c)と前記後端縁(51a)との間に、上面視で、前記後端面(53b)の左右幅中心線(A3)に対し、前記後端キャップ(53)の車幅方向内側と車幅方向外側とで対称角度に傾斜する傾斜平面(53f)を形成するとともに、
前記消音器本体(51)は、該消音器本体(51)の後端で後方に延びて前記排気口(66a)を形成するテールパイプ(66)と、該消音器本体(51)の後端を塞ぐエンドプレート(60)と、をさらに備え、
前記テールパイプ(66)は、前記後端キャップ(53)の前記後端面(53b)近傍まで延び、
前記後端面(53b)の開口部(53a)は、前記テールパイプ(66)に対し全周において隙間(S1)のある大きさであり、
前記エンドプレート(60)の車幅方向内側は、前記テールパイプ(66)が貫通し、前記エンドプレート(60)の車幅方向外側は、周縁が前記後端縁(51a)と同様に前進することで傾斜し、
前記後端キャップ(53)の前端縁(53e)は、前記後端縁(51a)と同様に車幅方向外側において前進し、該前端縁(53e)と後端縁(51a)との間に所定幅の隙間(S2)を形成することを特徴とする鞍乗り型車両の消音器構造。
前記消音器本体(51)は、前記エンジン(21)よりも下方かつ後方で前記排気管(24)が接続される接続筒(57)と、一定断面形状を形成する外筒(55b)と、前記接続筒(57)から拡径して前記外筒(55b)に至るテーパ筒(54a)と、を有し、
前記消音器装置(50)は、その前端から後端まで後上がりに後方へ延び、
前記外筒(55b)は、後輪(8)を支持するスイングアーム(9)のアーム体(9a)の車幅方向外側を、該アーム体(9a)と側面視で交差するように上後方へ延び、
前記テーパ筒(54a)は、側面視での下縁(54at)が前側よりも後側を高くすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両の消音器構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の消音器構造では、消音器後方における合わせ部の車幅方向外側への張出し量が多くなって取廻しに影響し、鞍乗り型車両の全体のスタイリングがスマートでなくなるおそれがあるとともに走行風への悪影響を伴う。
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、鞍乗り型車両の消音器構造において、消音器後方における車幅方向外側への張出し量を抑えて取廻しを良くし、スタイリングをスマートにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、エンジン(21)からの排気ガスを車両後方に向けて排出する排気管(24)の後端に配置され、車両側面に沿うように前後に延び、排気エネルギーを減衰させて消音する消音器装置(50)を備える鞍乗り型車両(1)の消音器構造において、前記消音器装置(50)は、筒型で前後に延びる消音器本体(51)と、前記消音器本体(51)の後端に装着される後端キャップ(53)と、を備え、前記消音器本体(51)は、該消音器本体(51)の後端に排気口(66a)を有し、前記後端キャップ(53)は、前記消音器本体(51)の後端縁(51a)から後方へ先細りに膨出する形状をなし、前記消音器本体(51)の後端縁(51a)が囲む後端形状よりも小さい後端面(53b)を形成し、前記後端面(53b)は、前記消音器本体(51)の左右幅(L2)の中心(A1)よりも車幅方向内側に位置して開口し、前記排気口(66a)を臨ませて前記消音器装置(50)としての排気部(50a)を構成し、前記消音器本体(51)は、前記後端縁(51a)の車幅方向外側を前進させ、前記後端キャップ(53)は、前記後端面(53b)の周囲縁(53c)と前記後端縁(51a)との間に、
上面視で、前記後端面(53b)の左右幅中心線(A3)に対し、前記後端キャップ(53)の車幅方向内側と車幅方向外側とで対称
角度に傾斜する傾斜平面(53f)を形成する
とともに、前記消音器本体(51)は、該消音器本体(51)の後端で後方に延びて前記排気口(66a)を形成するテールパイプ(66)と、該消音器本体(51)の後端を塞ぐエンドプレート(60)と、をさらに備え、前記テールパイプ(66)は、前記後端キャップ(53)の前記後端面(53b)近傍まで延び、前記後端面(53b)の開口部(53a)は、前記テールパイプ(66)に対し全周において隙間(S1)のある大きさであり、前記エンドプレート(60)の車幅方向内側は、前記テールパイプ(66)が貫通し、前記エンドプレート(60)の車幅方向外側は、周縁が前記後端縁(51a)と同様に前進することで傾斜し、前記後端キャップ(53)の前端縁(53e)は、前記後端縁(51a)と同様に車幅方向外側において前進し、該前端縁(53e)と後端縁(51a)との間に所定幅の隙間(S2)を形成することを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、前記消音器本体(51)は、一定断面形状の筒型であり、前記消音器本体(51)の上下幅(L1)が最大となる部分(B)は、前記後端面(53b)に合わせて車幅方向内側に設けられることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、前記消音器本体(51)は、断面形状が上下に長い8角形であることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、前記消音器本体(51)は、前記エンジン(21)よりも下方かつ後方で前記排気管(24)が接続される接続筒(57)と、一定断面形状を形成する外筒(55b)と、前記接続筒(57)から拡径して前記外筒(55b)に至るテーパ筒(54a)と、を有し、前記消音器装置(50)は、その前端から後端まで後上がりに後方へ延び、前記外筒(55b)は、後輪(8)を支持するスイングアーム(9)のアーム体(9a)の車幅方向外側を、該アーム体(9a)と側面視で交差するように上後方へ延び、前記テーパ筒(54a)は、側面視での下縁(54at)が前側よりも後側を高くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、消音器本体における車幅方向外側で前進した後端縁に向けて、後端キャップの後端面の周囲縁から車幅方向内外で対称に傾斜する傾斜平面を延ばすことで、消音器本体の後方における車幅方向外側への張出し量が少なって取廻しが良くなり、スマートなスタイリングを得ることができる。また、車幅方向外側における消音器本体の外面と後端キャップの傾斜平面との間の角度変化が小さくなり、走行風への悪影響を減少させることができる。
また、後端キャップ内に排気ガスが篭りにくく、後端キャップ内にテールパイプからの伝熱もないため、後端キャップの温度上昇を抑えることができる。
また、後端キャップの前端縁側、後端面側ともに隙間があるので、走行風の一部を後端キャップ内に流して積極的に冷却することができる。また、側面視で後端キャップの前端縁側の隙間の奥が傾斜したエンドプレートで隠されるため、隙間を目立たなくすることができる。
請求項2に記載した発明によれば、消音器本体の上下幅が最大となる部分を車幅方向内側に寄せることで、消音器本体の重心を車体寄りに配置することができる。
請求項3に記載した発明によれば、鞍乗り型車両が旋回時に車体を傾ける場合にも、消音器装置と地面との間に充分な距離を取ることができる。また、平面部と折り曲げ部との適度な組合せにより、消音器本体の外板の面剛性を高めることができる。
請求項4に記載した発明によれば、消音器装置のテーパ筒が側面視での下縁を後上がりに傾斜させることで、消音器装置と地面との間に充分な距離を取るとともに、消音器装置の容量を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の消音器構造を適用する自動二輪車(鞍乗り型車両)1において、その前輪2は左右一対のフロントフォーク3の下端部に軸支される。左右フロントフォーク3の上部は、ステアリングステム4を介して車体フレーム5前端のヘッドパイプ6に操向可能に枢支される。ステアリングステム4の上部には、前輪転舵用のハンドル7が取り付けられる。自動二輪車1の後輪8は、スイングアーム9の左右アーム体9aの後端部に軸支される。
【0011】
スイングアーム9の前端部は、車体前後中間部の左右ピボットプレート11にピボットシャフト10を介して上下揺動可能に枢支される。スイングアーム9の前部下側にはリンク機構18が取り付けられ、このリンク機構18を介してリアクッション19の下端部がスイングアーム9に取り付けられる。リアクッション19の上端部は車体フレーム5のクロスフレーム16に軸支される。左右アーム体9aは、
図1,2,7に示す1G状態(車重分の作動状態)の側面視で、ピボットシャフト10から後下がりに後方へ延び、後端部にリアアクスル9bを支持する。
【0012】
車体フレーム5は、ヘッドパイプ6の上部から斜め下後方へ延びる左右一対のメインチューブ12と、左右メインチューブ12の後端部から下方へ延びる左右一対のピボットプレート11と、ヘッドパイプ6の下部からメインチューブ12よりも急傾斜をなして斜め下後方へ延びる左右一対のダウンフレーム13と、左右メインチューブ12の後部から斜め上後方へ延びる左右一対のシートレール14と、左右ピボットプレート11の上部後側からシートレール14よりも急傾斜をなして斜め上後方へ延びるサポートパイプ15と、を有する。
【0013】
ダウンフレーム13は、メインチューブ12の前部との間に傾斜パイプ13aを架け渡してトラス構造を形成する。ダウンフレーム13の下方にはハンガーフレーム13bが取り付けられる。ハンガーフレーム13bの下端部には、車体フレーム5の内方に搭載したエンジン21のクランクケース22の前端部下側が支持される。クランクケース22の後端部下側は、左右ピボットプレート11の下端部に支持される。クランクケース22の後端部上側は、左右ピボットプレート11の上部間を連結するクロスフレーム16から斜め下前方に延びる左右一対のエンジンハンガー17の前端部に支持される。
【0014】
エンジン21は、4サイクル単気筒の内燃機関であって、クランクケース22の前部上方にやや前傾姿勢の不図示のシリンダ及びシリンダヘッド23を立設する。シリンダヘッド23の前部には、排気管24が接続される。排気管24は、クランクケース22の前方及び下方を通過するように湾曲し、車体後部右側に配設された消音器装置50に接続される。シリンダヘッド23の後部には、吸気系部品であるスロットルボディ26及びエアクリーナボックス27が順に接続される。
【0015】
左右シートレール14上には、シート28が支持される。シート28の前方では、燃料タンク29が車体フレーム5に支持される。車体前部両側には、シュラウド31が取り付けられ、車体前後中間部両側には、センタサイドカバー32が取り付けられ、車体後部には、リアカウル33が取り付けられる。左ピボットプレート11の下部には、車体を左側に傾斜した起立状態で支持するサイドスタンド34が取り付けられる。
【0016】
ステアリングステム4には、ヘッドランプ36、左右フロントウインカ37、メータ装置38及びフロントカウル35が支持され、これらがステアリングステム4と共にヘッドパイプ6中心に回動可能とされる。
フロントカウル35は、ヘッドランプ36周辺を覆うカウル本体35aと、カウル本体35aの上方に連なりメータ装置38を覆うメータカバー35bと、カウル本体35aの左右両側に取り付けられる左右サイドカウル35cとを有する。
【0017】
リアカウル33は、左右両側部を構成する左右リアサイドカバー39と、左右リアサイドカバー39の上縁部間に渡るリアセンターカバー40とに分割される。左右リアサイドカバー39は、左右シートレール14等に締結等により固定される。リアセンターカバー40は、左右リアサイドカバー39の上縁部に対して着脱自在であり、リアフェンダ41の上部左側に配したキーシリンダ42の施錠解除操作によりシート28を外した後、容易に取り外し可能である。シート28後方には、左右シートレール14に跨ってアシストグリップ43が取り付けられる。アシストグリップ43の下方には、左右リアウインカ44が配置される。リアカウル33の後端部内側には、テールランプ45が配置される。
【0018】
次に、消音器装置50について
図2〜
図8を参照して詳細に説明する。
図2に示すように、消音器装置50は、エンジン21からの排気ガスを車両後方に向けて排出する排気管24の後端に、エンジン21より下方かつ後方で接続される。消音器装置50は、車両右側面に沿うように前後に延び、排気エネルギーを減衰させて消音するシングルタイプのサイレンサーである。消音器装置50は、側面視において排気管24の後端から斜め後上方に向かって延出し、上面視においては、車体側面に対して後側ほど車幅方向外側に位置するように僅かに傾斜して後方に延出する(
図8参照)。
【0019】
消音器装置50は、消音器本体51と、消音器カバー52と、後端キャップ53と、を備える。消音器カバー52は、消音器本体51の上方を覆い、後端キャップ53は、消音器本体51の後端を覆う。
【0020】
図3〜
図5に示すように、消音器本体51は、排気管24の下流端(後端)に接続筒57を介して接続されるテーパ筒54aと、テーパ筒54aの下流端に接続される外筒55bと、外筒55b内に隙間S3を空けて配置される内筒54bと、内筒54bの上流端(前端)を外筒55bの上流端内周に支持する支持環54cと、内筒54bの下流端を外筒55bの下流端内周に支持するとともに外筒55bの下流端を塞ぐエンドプレート60と、内筒54bの軸方向中間部の上流寄りの内周に支持される第1セパレータ58と、内筒54bの軸方向中間部の下流寄りの内周に第1セパレータ58と離間して支持される第2セパレータ59と、第1セパレータ58前方の第1消音室61と第2セパレータ59後方の第3消音室63とを連通する第1連通パイプ64と、第3消音室63と各セパレータ58,59間の第2消音室62とを連通する第2連通パイプ65と、第2消音室62とエンドプレート60後方の外部空間70とを連通するテールパイプ66と、を備える。
【0021】
テーパ筒54aは、上流側から下流側に向かってテーパ状に拡径する。外筒55b及び内筒54bは、一定断面形状の筒型で前後に延びる筒型部56を形成する。外筒55b及び内筒54b間の隙間S3には、グラスウールGが充填される。
【0022】
内筒54b内には、第1セパレータ58、第2セパレータ59及びエンドプレート60が、互いに間隔を空けて取り付けられる。第1セパレータ58の上流側には第1消音室61が設けられ、第1セパレータ58と第2セパレータ59との間には第2消音室62が設けられ、第2セパレータ59とエンドプレート60との間には第3消音室63が設けられる。
【0023】
第1セパレータ58及び第2セパレータ59には、第1連通パイプ64が支持される。第1連通パイプ64は、丸パイプ状をなし、消音器本体51の上下中間部の車幅方向外側で外筒55b及び内筒54bと平行に延びる。第1連通パイプ64は、上流側(前端側)が第1セパレータ58の車幅方向外側を貫通して支持され、下流側(後端側)が第2セパレータ59の車幅方向外側を貫通して支持される。第1連通パイプ64は、上流端(前端)開口を第1消音室61に臨ませるとともに、下流端(後端)開口を第3消音室63に臨ませる。
【0024】
第2セパレータ59には、第2連通パイプ65が支持される。第2連通パイプ65は、第1連通パイプ64より細身の丸パイプ状をなし、消音器本体51の下部の車幅方向内側で外筒55b及び内筒54bと平行に延びる。第2連通パイプ65は、第2セパレータ59の下部の車幅方向内側を貫通して支持される。第2連通パイプ65は、上流端(後端)開口を第3消音室63に臨ませるとともに、下流端(前端)開口を第2消音室62に臨ませる。
【0025】
第2セパレータ59及びエンドプレート60には、テールパイプ66が支持される。テールパイプ66は、第2連通パイプ65より僅かに細身の丸パイプ状をなし、消音器本体51の上部の車幅方向内側から消音器本体51の上下中間部の左右幅中心寄りに変化しつつ前後に延びる。テールパイプ66は、上流側(前端側)が第2セパレータ59の上部の車幅方向内側を貫通して支持され、下流側(後端側)がエンドプレート60の上下中間部の左右幅中心寄りを貫通して支持される。
【0026】
テールパイプ66は、前部及び後部が外筒55b及び内筒54bと平行に延び、前後中間部が第3消音室63内で外筒55b及び内筒54bに対して傾斜して延びる。テールパイプ66は、上流端(前端)開口を第2消音室62に臨ませるとともに、下流端(後端)開口をエンドプレート60後方の外部空間70に臨ませる。テールパイプ66の下流端開口は排気口66aとなる。
図5を参照し、本実施形態では、テールパイプ66の下流側の中心軸線A3は、消音器本体51の上下幅L1が最大となる部分Bの左右幅中心A2に配置される。
【0027】
外筒55bの外周には、車体取り付け用のブラケット67と、消音器カバー52取り付け用のブラケット68、69と、が固設される。テーパ筒54aの外周には、消音器カバー52取り付け用のブラケット71が固設される。消音器カバー52は、消音器本体51の上方を覆った状態で、ブラケット68、69に係止され、かつブラケット71に締結されることで、消音器本体51に取り付けられる。
【0028】
図2を参照し、消音器装置50は、接続筒57を排気管24の下流端に外嵌させ、かつブラケット67を車体(例えばサポートパイプ15から延びるステップステー15a)に締結することで、車体に取り付けられる。このとき、消音器装置50は、側面視において排気管24の後端から斜め後上方に延びるように配置される。筒型部56及びテーパ筒54aは、スイングアーム9の右アーム体9aの車幅方向外側を該アーム体9aと側面視で交差するように配置される。テーパ筒54aの側面視での下縁54atは、後上がりに傾斜して配置される。
【0029】
図5を参照し、消音器本体51の筒型部56は、その長手方向(軸方向)から見て上下に長い8角形状に形成される。筒型部56は、その長手方向と直交する断面形状が前記8角形状で一定とされる。筒型部56は、前記断面形状の上下辺56a,56b間で上下幅L1が最大となり、この部分Bの左右幅中心A2(テールパイプ66の中心軸線A3の位置に相当)が、筒型部56の前記断面形状の左右幅L2の中心A1よりも車幅方向内側にある。そのため、消音器装置50の重心が車両左右中心に近付くとともに、車幅方向外側の下部の張り出しが小さくなり、自動二輪車1が消音器装置50側へ旋回する時の車体傾斜時に消音器装置50と地面との間に距離を取り易い。また、筒型部56は、平面と折り曲げ部の適度な組合せにより、外板に面剛性があって変形し難い。エンドプレート60には、後端キャップ53取り付け用のブラケット66bが固設される。
【0030】
図6〜
図8に示すように、後端キャップ53は、前方に開放するカップ状をなし、
図5と同様の後面視(
図6参照)で、筒型部56と同様の8角形状に形成される。後端キャップ53は、消音器本体51の後端縁51a近傍から後方に向けて先細りに膨出する形状をなし、外筒55bに連なるように形成される前縁部53hと、前縁部53hの後方で先細りのテーパ状に膨出するテーパ部53iとを有する。テーパ部53iの後端には、消音器本体51の後端縁51aが囲む後端形状よりも小さい後端面53bが形成される。後端面53bの中央部には、丸パイプ状のテールパイプ66を挿入する矩形状の開口部53aが形成される。開口部53aは、上下に長い長方形状をなし、中心軸線A3に沿う方向から見て、テールパイプ66の外周に対して全周に渡って周方向の隙間S1を形成する。
【0031】
テーパ部53iは、後端面53bの周囲縁53cと消音器本体51の後端縁51a(詳細には前縁部53hの後端縁)との間に、複数の傾斜平面53fを形成する。これらの傾斜平面53fは、後端面53bの周囲縁53cと消音器本体51の後端縁51aとを最短距離で結ぶ。これらの傾斜平面53fの内、車幅方向内側及び外側にあるものは、
図8に示す断面視で、テールパイプ66の中心軸線A3(後端キャップ53の後端面53bの左右幅中心でもある)に対し、車幅方向内側と車幅方向外側とで対称に傾斜する。
図8中線CLは車両左右中心を示す。
【0032】
後端キャップ53の後端面53bは、テールパイプ66を中心に開口することで、筒型部56の上下幅L1が最大となる部分Bに合わせて車幅方向内側に位置して開口する。後端面53bは、開口部53a内にテールパイプ66の排気口66aを臨ませて、消音器装置50としての排気部50aを構成する。後端面53bは、後端面53bの周囲縁53cから内周側へ延びるフランジ53dを有する。フランジ53dは、エンドプレート60側に向けて湾曲するカール状に形成され、その内周側を開口部53aとする。
【0033】
図7を参照し、テールパイプ66の排気口66aは、後端キャップ53の開口部53aの端縁(本実施形態ではフランジ53dの前端縁)53atに対して、中心軸線A3に沿う軸方向で距離L3だけ前方(後端キャップ53内)に位置する。これにより、テールパイプ66の排気口66aが後端キャップ53の開口部53aにおいて目立たなくなる。一方、距離L3は、中心軸線A3に沿う軸方向から見た前記隙間S1の何れの周方向位置での幅よりも小さく、排気ガスが後端キャップ53内に籠り難い。
【0034】
後端キャップ53における上下及び車幅方向外側の傾斜平面53fには、筒型部56の軸方向と直交する締結座面73aを形成する凹部73が形成される。後端キャップ53は、消音器本体51の後端に装着され、締結座面73aのねじ孔53gに挿通したねじ72をブラケット66bのねじ孔66c(
図5参照)に締結することで固定される。このとき、後端キャップ53の前端縁53eと消音器本体51の後端縁51aとの間には、前端縁53e及び後端縁51aの全周で均等幅の隙間S2が形成される。
【0035】
図3を併せて参照し、消音器本体51の後端縁51aの車幅方向内側は、筒型部56の軸方向と直交する平面に沿って形成されるのに対し、後端縁51aの車幅方向外側は、車幅方向外側ほど前側に位置するように傾斜した平面に沿って形成される。これにより、後端縁51aの車幅方向外側が筒型部56の軸方向と直交する平面に沿って形成される場合における後端縁51aの車幅方向外側端51at’に対して、本実施形態における後端縁51aの車幅方向外側端51atが前進する。
【0036】
これに対応し、後端キャップ53の前端縁53eも、車幅方向外側において前進し、消音器本体51の後端縁51aとの間に均等な隙間S2を形成する。エンドプレート60の車幅方向外側は、筒型部56の軸方向と直交するように形成される車幅方向内側に対して、後端縁51aと同様に前進して傾斜する。
【0037】
図8を参照し、消音器本体51の後端縁51a及び後端キャップ53の前端縁53eが前進しない場合、図中鎖線で示すように、車幅方向内側に寄った後端面53bの周囲縁53cから延びる車幅方向外側の傾斜平面53f’は、車幅方向内側の傾斜平面53fよりも筒型部56の外面に対する角度が大きくなる。
【0038】
これに対し、消音器本体51の後端縁51a及び後端キャップ53の前端縁53eが前進すると、図中実線で示すように、車幅方向外側の傾斜平面53fと車幅方向内側の傾斜平面53fとで、筒型部56の外面に対する角度を同一にすることが可能である。すなわち、後端キャップ53の後端面53bの左右幅中心に対し、車幅方向外側の傾斜平面53fと車幅方向内側の傾斜平面53fとを対称に傾斜させることが可能である。
【0039】
これにより、前者の後端縁51aの車幅方向外側端51at’に対して、後者の後端縁51aの車幅方向外側端51atが前進し、車幅方向外側の傾斜平面53fに沿う張り出し部74が消失するため、消音器後方における車幅方向外側への張り出し量が抑えられる。また、車幅方向外側における筒型部56外面に対する傾斜平面53fの角度変化も小さくなり、走行風の巻き込みが抑えられる。
【0040】
以上説明したように、上記実施形態は、エンジン21からの排気ガスを車両後方に向けて排出する排気管24の後端に配置され、車両側面に沿うように前後に延び、排気エネルギーを減衰させて消音する消音器装置50を備える自動二輪車1の消音器構造において、消音器装置50は、一定断面形状の筒型で前後に延びる消音器本体51と、消音器本体51の後端に装着される後端キャップ53と、を備え、消音器本体51は、該消音器本体51の後端に排気口66aを有し、かつ上下幅L1が最大となる部分Bを該消音器本体51の左右幅L2の中心A1よりも車幅方向内側に有し、後端キャップ53は、消音器本体51の後端縁51aから後方へ先細りに膨出する形状をなし、消音器本体51の後端縁51aが囲む後端形状よりも小さい後端面53bを形成し、後端面53bは、消音器本体51の上下幅L1が最大となる部分Bに合わせて車幅方向内側に位置して開口し、排気口66aを臨ませて消音器装置50としての排気部50aを構成し、消音器本体51は、後端縁51aの車幅方向外側を前進させ、後端キャップ53は、後端面53bの周囲縁53cと後端縁51aとの間に、該後端キャップ53の車幅方向内側と車幅方向外側とで対称に傾斜する傾斜平面53fを形成する。
【0041】
この構成によれば、消音器本体51の上下幅L1が最大となる部分Bを車幅方向内側に寄せて重心を車両左右中心に近付けた消音器装置50において、消音器本体51における車幅方向外側で前進した後端縁51aに向けて、後端キャップ53の後端面53bの周囲縁53cから車幅方向内外で対称に傾斜する傾斜平面53fを延ばすことで、消音器本体51の後方における車幅方向外側への張り出し量が少なくなり、スマートなスタイリングを得ることができる。また、車幅方向外側における消音器本体51の外面と後端キャップ53の傾斜平面53fとの間の角度変化が小さくなり、走行風への悪影響を減少させることができる。
【0042】
また、上記消音器構造において、消音器本体51は、該消音器本体51の後端で後方に延びて排気口66aを形成するテールパイプ66をさらに備え、テールパイプ66は、後端キャップ53の後端面53b近傍まで延び、後端面53bの開口部53aは、テールパイプ66に対し全周において隙間S1のある大きさである。
この構成によれば、後端キャップ53内に排気ガスが篭りにくく、後端キャップ53内にテールパイプ66からの伝熱もないため、後端キャップ53の温度上昇を抑えることができる。
【0043】
また、上記消音器構造において、消音器本体51は、該消音器本体51の後端を塞ぐエンドプレート60を備え、エンドプレート60の車幅方向内側は、テールパイプ66が貫通し、エンドプレート60の車幅方向外側は、周縁が後端縁51aと同様に前進することで傾斜し、後端キャップ53の前端縁53eは、後端縁51aと同様に車幅方向外側において前進し、該前端縁53eと後端縁51aとの間に所定幅の隙間S2を形成する。
この構成によれば、後端キャップ53の前端縁53e側、後端面53b側ともに隙間があるので、走行風の一部を後端キャップ53内に流して積極的に冷却することができる。また、側面視で後端キャップ53の前端縁53e側の隙間S2の奥が傾斜したエンドプレート60で隠されるため、隙間S2を目立たなくすることができる。
【0044】
また、上記消音器構造において、消音器本体51は、断面形状が上下に長い8角形である。
この構成によれば、自動二輪車1が旋回時に車体を傾ける場合にも、消音器装置50と地面との間に充分な距離を取ることができる。また、平面部と折り曲げ部との適度な組合せにより、消音器本体51の外板の面剛性を高めることができる。
【0045】
なお、本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、例えば、消音器装置が車体両側に配置されるデュアルタイプであったり3つ以上用いられるものであってもよい。
また、前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。
そして、上記各実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。