(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236701
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】改良型チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタ
(51)【国際特許分類】
H01P 7/08 20060101AFI20171120BHJP
H01P 1/203 20060101ALI20171120BHJP
H01P 1/205 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
H01P7/08
H01P1/203
H01P1/205 A
H01P1/205 K
【請求項の数】18
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-113512(P2015-113512)
(22)【出願日】2015年6月3日
(65)【公開番号】特開2016-111671(P2016-111671A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-248878(P2014-248878)
(32)【優先日】2014年12月9日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年2月16日国立大学法人山梨大学、平成26年度山梨大学工学部電気電子システム工学科卒業論文発表会予稿集情報通信システムコース第7頁〜第8頁
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年2月24日電子情報通信学会2015年総合大会講演論文集第81頁
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年4月15日電子情報通信学会 電子情報通信学会技術研究報告、超電導エレクトロニクス第13頁から第17頁
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度 総務省「戦略的情報通信研究開発推進事業/次世代移動体通信基地局用超伝導デュアルバンド帯域通過フィルタの研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100112173
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 修身
(74)【代理人】
【識別番号】100169683
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 等
(72)【発明者】
【氏名】關谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 勝廣
(72)【発明者】
【氏名】岸田 和人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 庸夫
(72)【発明者】
【氏名】北田 典敬
【審査官】
橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−130699(JP,A)
【文献】
特開2007−096934(JP,A)
【文献】
特開2011−061296(JP,A)
【文献】
特開平11−136013(JP,A)
【文献】
特開平09−139612(JP,A)
【文献】
特開2009−231947(JP,A)
【文献】
特開2010−021639(JP,A)
【文献】
特開2014−036258(JP,A)
【文献】
特開2009−005333(JP,A)
【文献】
特開2009−225014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/20−1/219
H01P 7/00−7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド共振器であって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該ストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体からなる形状の奇モード共振器と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振器からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことを特徴とするデュアルバンド共振器において、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bは半波長共振器10とスタブ11を合わせた長さの中間部に設け、スタブ11の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25をそれぞれ設けることを特徴とする偶モードと奇モードの共振周波数を独立して周波数チューニングが可能であるチューナブルデュアルバンド共振器。
【請求項2】
半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド帯域通過フィルタであって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該ストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体であり、かつ、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する形状の奇モード共振器と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振器からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことを特徴とするデュアルバンド帯域通過フィルタであって、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bは半波長共振器10とスタブ11を合わせた長さの中間部に設け、半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、スタブ11の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25をそれぞれ設けることを特徴とするチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタ。
【請求項3】
半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド帯域通過フィルタであって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され当該ストリップ導体が、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体であり、かつ、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する形状の奇モード共振器と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振器からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことを特徴とするデュアルバンド共振器と、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド帯域通過フィルタであって、第一のデュアルバンド共振器と第二のデュアルバンド共振器の奇モード共振導波路10に沿って、給電導体線13を設け、一方の給電導体線13を入力側とし、もう一方の給電導体線13を出力側としたことに特徴を有する2段型デュアルバンド帯域通過フィルタであって、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bは半波長共振器10とスタブ11を合わせた長さの中間部に設け、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、各スタブ11の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25をそれぞれ設けることを特徴とする2段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタ。
【請求項4】
請求項3の2段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間にそれぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離をすべて同じ高さに調整することにより、奇モードのみ通過帯域特性を調整する周波数チューニングのシフト量の調整方法。
【請求項5】
請求項3の2段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、各スタブ11の上部空間にそれぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離をすべて同じ高さに調整することにより、偶モードのみ通過帯域特性を調整する周波数チューニングのシフト量の調整方法。
【請求項6】
請求項3の2段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおける周波数チューニング後に発生する帯域内通過特性の劣化を改善する方法(トリミング)は、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間にそれぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離を個別に調整することにより、奇モードのみの帯域内通過帯域特性を改善する方法。
【請求項7】
請求項3の2段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおける周波数チューニング後に発生する帯域内通過特性の劣化を改善する方法(トリミング)は、各スタブ11の上部空間にそれぞれ設けられた各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離を個別に調整することにより、偶モードのみの帯域内通過帯域特性を調整する改善する方法。
【請求項8】
半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド帯域通過フィルタであって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該細いストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体であり、かつ、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する形状の奇モード共振導波路と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振導波路からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振導波路として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振導波路として働くことを特徴とするデュアルバンド共振器と、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド共振器と、さらに、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド共振器とからなる合計3基のデュアルバンド共振器とからなる構造を有し、第一のデュアルバンド共振器と第三のデュアルバンド共振器の奇モード共振導波路10に沿って、給電導体線13を設け、一方の給電導体線13を入力側とし、もう一方の給電導体線13を出力側としたことに特徴を有する多段型デュアルバンド帯域通過フィルタであって、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bは半波長共振器10とスタブ11を合わせた長さの中間部に設け、半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、各スタブ11の上部空間にそれぞれ断面円形の誘電体ロッド25をそれぞれ設けることを特徴とする3段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタ。
【請求項9】
請求項8の3段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、それぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離を調整することにより、奇モードのみ通過帯域特性を調整する周波数チューニングのシフト量の調整方法。
【請求項10】
請求項8の3段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、各スタブ11の上部空間にそれぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離を調整することにより、偶モードのみ通過帯域特性を調整する周波数チューニングのシフト量の調整方法。
【請求項11】
請求項8の3段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおける周波数チューニング後に発生する帯域内通過特性の劣化を改善する方法(トリミング)は、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間にそれぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離を個別に調整することにより、奇モードのみの帯域内通過帯域特性を改善する方法。
【請求項12】
請求項8の3段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおける周波数チューニング後に発生する帯域内通過特性の劣化を改善する方法(トリミング)は、各スタブ11の上部空間にそれぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離を個別に調整することにより、偶モードのみの帯域内通過帯域特性を改善する方法。
【請求項13】
半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド帯域通過フィルタであって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該細いストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体であり、かつ、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する形状の奇モード共振導波路と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振導波路からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振導波路として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振導波路として働くことを特徴とするデュアルバンド共振器と、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド共振器と、さらに、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド共振器と、さらに、4番目、5番目、・・n番目からなるからなる合計n基のデュアルバンド共振器とからなる構造を有し、第一のデュアルバンド共振器とn番目デュアルバンド共振器の奇モード共振導波路10に沿って、給電導体線13を設け、一方の給電導体線13を入力側とし、もう一方の給電導体線13を出力側としたことに特徴を有するn段型デュアルバンド帯域通過フィルタであって、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bは半波長共振器10とスタブ11を合わせた長さの中間部に設け、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、各スタブ11の上部空間にそれぞれ断面円形の誘電体ロッド25をそれぞれ設けることを特徴とするn段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタ。
【請求項14】
半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを、スタブ11と半波長共振器10との接続付近まで延長した構造10-a’,10-b’とすることにより、ステップインピーダンス構造とした半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド共振器であって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該ストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体からなる形状の奇モード共振器と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振器からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことを特徴とするデュアルバンド共振器において、スタブ11の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、半波長共振器10のステップインピーダンス構造10-a’,10-b’の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、それぞれのロッドを所定位置で上下方向に移動させてチューニングを行うことを特徴とする偶モードと奇モードの共振周波数を独立して周波数チューニングが可能であるチューナブルデュアルバンド共振器。
【請求項15】
半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを、スタブ11と半波長共振器10との接続付近まで延長した構造を10-a’,10-b’とすることにより、ステップインピーダンス構造とした半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド帯域通過フィルタであって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該ストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体からなる形状の奇モード共振器と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振器からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことを特徴とするデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、スタブ11の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、半波長共振器10のステップインピーダンス構造10-a’、10-b’の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、それぞれのロッドを所定位置で上下方向に移動させてチューニングを行うことを特徴とする偶モードと奇モードの共振周波数を独立して周波数チューニングが可能であるチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタ。
【請求項16】
請求項14に記載したチューナブルデュアルバンド共振器において、ステップインピーダンス構造10-a’、10-b’の一部を、溝の外側方向に拡張した突起部(容量成分調整部)10-a’1、10-b’1を設けたチューナブルデュアルバンド共振器。
【請求項17】
請求項16に記載のチューナブルデュアルバンド共振器を用いたチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタ。
【請求項18】
請求項14に記載したチューナブルデュアルバンド共振器において、ステップインピーダンス構造10-a’、10-b’の一部を、溝の外側に拡張した突起部(容量成分調整部)10-a’1、10-b’1を設けたチューナブルデュアルバンド共振器と、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド共振器と、さらに、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド共振器と、さらに、4番目、5番目、・・n番目からなるからなる合計n基のデュアルバンド共振器とからなる構造を有し、第一のデュアルバンド共振器とn番目デュアルバンド共振器の奇モード共振導波路10に沿って、給電導体線13を設け、一方の給電導体線13を入力側とし、もう一方の給電導
体線13を出力側としたことに特徴を有するn段型デュアルバンド帯域通過フィルタであって、ステップインピーダンス構造の各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b溝の外側に拡張した突起部(容量成分調整部)10-a’1、10-b’1上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、各スタブ11の上部空間にそれぞれ断面円形の誘電体ロッド25をそれぞれ設けることを特徴とするn段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高周波やマイクロ波を使った装置、例えば、移動体通信、衛星通信、固定マイクロ波通信、その他の通信技術分野において信号の送受信に利用されるデュアルバンド帯域通過フィルタの周波数チューニングと帯域内通過特性の改善(トリミング)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、映像などのデータ通信が爆発的に増大し、ネットワーク容量の逼迫と周波数資源の逼迫が世界的に見込まれ大きな問題となっている。これ対して高速・大容量通信と周波数資源の有効利用を同時に実現可能な移動体通信基地局用マイクロ波フィルタの開発が求められている。さらに、近年では複数の周波数帯に対応する通信機器が望まれている。
【0003】
高速・大容量通信を実現する一つの方法として二つの周波数帯域を同時に使って通信する方法が提案されており、その要素技術として二つの周波数帯域を同時に通過させるデュアルバンド帯域通過フィルタが提案されている。
【0004】
従来、通過帯域を二つもつことを特徴とするデュアルバンド帯域通過フィルタは、次のような構成方法が存在する。
図1に示すように、二つの周波数で共振する複数のデュアルバンド共振器N1、N2、N3が従属結合され、その従属結合の両端の入出力ポートM1、M2とそれぞれ結合することによってフィルタ100を構成している(非特許文献1)。
【0005】
デュアルバンド共振器N1、N2、N3は偶・奇モードを有し、この二つのモードを制御することで二つの通過帯域を持つデュアルバンド共振器を構成している。このフィルタ100では、入出力ポートM1、M2は両端のデュアルバンド共振器N1、N3と直接結合し、二つの通過帯域の両方で所望の特性を同時に得られる接続位置を決定する必要がある。
【0006】
一方、周波数資源の有効利用には急峻な遮断特性を有する帯域通過フィルタが求められている。一般的に共振器の数を増やす多段化を行うと急峻な遮断特性を実現できる。しかし、銅などの常伝導体には抵抗があるため、多段化とともに挿入損失も増大し、低損失と急峻な遮断特性の両立は不可能であった。この問題を解決するひとつの方法として、例えば超伝導帯域通過フィルタが提案されている(特許文献1)。超伝導体は銅などと比べて表面抵抗がマイクロ波帯で2〜3桁ほど低いため、多段化しても挿入損失を小さく抑えることができるため、低損失で急峻な遮断特性の両立を実現することができる。
また、複数の周波数帯に対応する方法としては帯域通過フィルタの中心周波数を可変することができる中心周波数チューナブル帯域通過フィルタが提案されている。
図2は、従来の超伝導チューナブル帯域通過フィルタの構成例である。誘電体基板S5上に形成されたマイクロストリップ型のフィルタパターンS1の上方に、誘電体プレートS10を配置する。圧電素子などのアクチュエータなどを用いて誘電体S10とフィルタパターンS1との距離hを変えることでフィルタパターンS1から放射される電界分布を変化させ中心周波数を可変する(特許文献2)。
デュアルバンド帯域通過フィルタは、二つの通過帯域の共振周波数を1つの共振器で実現するデュアルバンド共振器を用いてデュアルバンド帯域通過フィルタを実現する。
図1に示すデュアルバンド帯域通過フィルタの各帯域の中心周波数は各デュアルバンド共振器N1、N2、N3に発生する偶・奇モードによって決定される。デュアルバンド共振器N1、N2、N3の奇モード部分は偶モードと共通なため、奇モードを調整すると偶モードにも影響を与える。各帯域の帯域幅は各デュアルバンド共振器N1、N2、N3の共振器間距離で制御するが、このデュアルバンド帯域通過フィルタに誘電体プレートS10を用いて中心周波数チューニングを行うと、デュアルバンド帯域通過フィルタの上方全面を誘電体プレートが覆うこととなる。そのため、デュアルバンド帯域通過フィルタの偶・奇モード両方に影響を与えることから、中心周波数をチューニングすることが可能であるが、偶・奇モードを独立して周波数チューニングすることは困難である。また、フィルタ全体を誘電体プレートで覆われているため、デュアルバンド共振器間の電磁界分布にも影響を与えることから帯域幅も変化する問題も生じる。さらに、中心周波数のシフト量が増加すると帯域内通過特性が劣化するため、各共振器の共振器周波数を調整するためのトリミング機構が周波数チューニング機構とは別に必要となる。ここで、トリミングとは、帯域内通過特性を改善する方法のことである。
これらの問題を解決する方法として、本発明者は特許文献3では、二つの通過帯域それぞれの中心周波数を独立してチューニング(可変)することができ、なおかつ中心周波数チューニング後に劣化する帯域内通過特性を、新たにトリミング機構を導入せずに周波数チューニング機構を用いて改善することができる中心周波数チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタを提案している。
さらに、
図3には、奇モードの共振のシフト量を変えるのに効率が良い誘電体ロッド25の断面が楕円形のものについて言及され、半波長共振器10の上部空間に誘電体ロッド25を設けることにより、奇モードの共振のシフト量を変えることが出来ることが提案されている。しかし、半波長共振器10と誘電体ロッド25との空間を微調整するに際して、誘電体ロッド25の断面が楕円形であれば、回転させると長径の先端部分が半波長共振器10のストリップ導体の幅を超えてしまうため特性値が極端に変化するので、回転させずに、近づけたり、遠ざけたりしなければならない。そのため、誘電体ロッド25の断面が楕円形のものについては、半波長共振器10と誘電体ロッド25との空間を微調整するに際して、特別の装置を必要とする。
特に超伝導体を用いたデュアルバンド帯域通過フィルタの場合、真空チャンバー内で-200℃以下に冷凍機で冷却しながら測定するため、チャンバー外部からロッド25を上下させる必要がある。そのため、ロッド25はネジの回転で押し込む構造が特に望ましい。その場合、奇モードの周波数シフト量を増やすためにロッド25を楕円形にすると、ロッド25を回転させずに上下させる機構が必要となり、チューニング機構が大変複雑になり、大型化する。この場合、チューニング機構自体をフィルタ上部に設置できなくなる可能性があり、コスト面からも楕円形のロッド25を用いることは現実的ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−57506号公報
【特許文献2】特許第3535469号公報
【特許文献3】特願2014−014962
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jia-Sheng Hong ,Wenxing Tang, “Dual-band filter based on non-degenerate dual-mode slow-wave open-loop resonators ,” IEEE MTT-S International Microwave Symposium Digest, pp. 861-864, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本件発明は、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、特別の装置を必要とせず、また、奇モードの共振のシフト量を変えるのに効率が良いチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明で用いる代表的デュアルバンド共振器は基本的には、
図4に示すように、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10にスタブ11を付加した構造である。突起部(容量成分調整部)10-a,10-bの形状は、ストリップ導体に沿って、突出しておればよく、矩形でも、階段状でもよいが、左右対象であることが好ましい。半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bは基本的にストリップ導体と同じく電気を良く通す導体である。
図4に示すように
デュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド共振器であって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該ストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体からなる形状の奇モード共振器と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振器からなり、
図5に示すように、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことを特徴とするデュアルバンド共振器であり、このデュアルバンド共振器をチューニング可能な構造とすることを見出だし、既に、特許文献3に開示した通りである。本発明は、さらに、このチューニング可能なデュアルバンド共振器について、奇モードにおける特性をさらに改良したものである。
【0011】
すなわち本発明は、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド共振器であって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該ストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体からなる形状の奇モード共振器と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振器からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことを特徴とするデュアルバンド共振器において、
半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bは半波長共振器10とスタブ11を合わせた長さの中間部に設け、スタブ11の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25をそれぞれ設けることを特徴とする偶モードと奇モードの共振周波数を独立して周波数チューニングが可能であるチューナブルデュアルバンド共振器である。
【0012】
さらに、本発明は、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド帯域通過フィルタであって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該ストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体であり、かつ、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する形状の奇モード共振器と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振器からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことを特徴とするデュアルバンド帯域通過フィルタであって、
半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bは半波長共振器10とスタブ11を合わせた長さの中間部に設け、半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、スタブ11の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25をそれぞれ設けることを特徴とするチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタである。
【0013】
また本発明は、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド帯域通過フィルタであって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され当該ストリップ導体が、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体であり、かつ、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する形状の奇モード共振器と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振器からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことを特徴とするデュアルバンド共振器と、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド帯域通過フィルタであって、第一のデュアルバンド共振器と第二のデュアルバンド共振器の奇モード共振導波路10に沿って、給電導体線13を設け、一方の給電導体線13を入力側とし、もう一方の給電導体線13を出力側としたことに特徴を有する2段型デュアルバンド帯域通過フィルタであって、
半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bは半波長共振器10とスタブ11を合わせた長さの中間部に設け、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、各スタブ11の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25をそれぞれ設けることを特徴とする2段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタである。
さらに、本発明の2段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間にそれぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離をすべて同じ高さに調整することにより、奇モードのみ通過帯域特性を調整する周波数チューニングのシフト量の調整方法である。
また、本発明の2段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、各スタブ11の上部空間にそれぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離をすべて同じ高さに調整することにより、偶モードのみ通過帯域特性を調整する周波数チューニングのシフト量の調整することができる。
【0014】
さらに、本発明の調整方法においては、2段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおける周波数チューニング後に発生する帯域内通過特性の劣化を改善する方法(トリミング)は、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間にそれぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離を個別に調整することにより、奇モードのみの帯域内通過帯域特性を改善することができる。
またさらに、本発明の2段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおける周波数チューニング後に発生する帯域内通過特性の劣化を改善する方法(トリミング)は、各スタブ11の上部空間にそれぞれ設けられた各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離を個別に調整することにより、偶モードのみの帯域内通過帯域特性を調整する改善することができる。
【0015】
さらに、本発明は、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10にスタブ11を付加した構造である
デュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド帯域通過フィルタであって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該細いストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体であり、かつ、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する形状の奇モード共振導波路と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振導波路からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振導波路として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振導波路として働くことを特徴とするデュアルバンド共振器と、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド共振器と、さらに、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド共振器とからなる合計3基のデュアルバンド共振器とからなる構造を有し、第一のデュアルバンド共振器と第三のデュアルバンド共振器の奇モード共振導波路10に沿って、給電導体線13を設け、一方の給電導体線13を入力側とし、もう一方の給電導体線13を出力側としたことに特徴を有する多段型デュアルバンド帯域通過フィルタであって、
半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bは半波長共振器10とスタブ11を合わせた長さの中間部に設け、半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、各スタブ11の上部空間にそれぞれ断面円形の誘電体ロッド25をそれぞれ設けることを特徴とする3段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタである。
さらに、本発明の3段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、それぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離を調整することにより、奇モードのみ通過帯域特性を調整する周波数チューニングのシフト量の調整することができる。
また、本発明の3段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、各スタブ11の上部空間にそれぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離を調整することにより、偶モードのみ通過帯域特性を調整する周波数チューニングのシフト量の調整することができる。
さらに、本発明の3段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、周波数チューニング後に発生する帯域内通過特性の劣化を改善する方法(トリミング)は、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間にそれぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離を個別に調整することにより、奇モードのみの帯域内通過帯域特性を改善することができる。
また、本発明の3段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、周波数チューニング後に発生する帯域内通過特性の劣化を改善する方法(トリミング)は、各スタブ11の上部空間にそれぞれ設けられた断面円形の各誘電体ロッド25のみ、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタとの距離を個別に調整することにより、偶モードのみの帯域内通過帯域特性を改善することができる。
【0016】
さらに、本発明は、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド帯域通過フィルタであって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該細いストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体であり、かつ、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する形状の奇モード共振導波路と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振導波路からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振導波路として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振導波路として働くことを特徴とするデュアルバンド共振器と、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド共振器と、さらに、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド共振器と、さらに、4番目、5番目、・・n番目からなるからなる合計n基のデュアルバンド共振器とからなる構造を有し、第一のデュアルバンド共振器とn番目デュアルバンド共振器の奇モード共振導波路10に沿って、給電導体線13を設け、一方の給電導体線13を入力側とし、もう一方の給電導体線13を出力側としたことに特徴を有するn段型デュアルバンド帯域通過フィルタであって、
半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bは半波長共振器10とスタブ11を合わせた長さの中間部に設け、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、各スタブ11の上部空間にそれぞれ断面円形の誘電体ロッド25をそれぞれ設けることを特徴とするn段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタである。
【0017】
さらに、本発明は、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを、スタブ11と半波長共振器10との接続付近まで延長した構造10-a’,10-b’とすることにより、ステップインピーダンス構造とした半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド共振器であって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該ストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体からなる形状の奇モード共振器と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振器からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことを特徴とするデュアルバンド共振器において、スタブ11の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、半波長共振器10のステップインピーダンス構造10-a’,10-b’の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、それぞれのロッドを所定位置で上下方向に移動させてチューニングを行うことを特徴とする偶モードと奇モードの共振周波数を独立して周波数チューニングが可能であるチューナブルデュアルバンド共振器である。
さらに、本発明は、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを、スタブ11と半波長共振器10との接続付近まで延長した構造を10-a’,10-b’とすることにより、ステップインピーダンス構造とした半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器とスタブが偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド帯域通過フィルタであって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該ストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体からなる形状の奇モード共振器と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振器からなり、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことを特徴とするデュアルバンド帯域通過フィルタにおいて、スタブ11の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、半波長共振器10のステップインピーダンス構造10-a’、10-b’の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、それぞれのロッドを所定位置で上下方向に移動させてチューニングを行うことを特徴とする偶モードと奇モードの共振周波数を独立して周波数チューニングが可能であるチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタである。
また、本発明は、チューナブルデュアルバンド共振器において、ステップインピーダンス構造10-a’、10-b’の一部を、溝の外側方向に拡張した突起部(容量成分調整部)10-a’1、10-b’1を設けたチューナブルデュアルバンド共振器である。
さらに本発明は、上記のチューナブルデュアルバンド共振器を用いたチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタである。 また、本発明は、上記のチューナブルデュアルバンド共振器において、ステップインピーダンス構造10-a’、10-b’の一部を、溝の外側に拡張した突起部(容量成分調整部)10-a’1、10-b’1を設けたチューナブルデュアルバンド共振器と、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド共振器と、さらに、一定間隔mをおいて、180度向きを変えた同一のデュアルバンド共振器の間に、導波路端部の長さnのH型の導波路12を設けた構造を有するデュアルバンド共振器と、さらに、4番目、5番目、・・n番目からなるからなる合計n基のデュアルバンド共振器とからなる構造を有し、第一のデュアルバンド共振器とn番目デュアルバンド共振器の奇モード共振導波路10に沿って、給電導体線13を設け、一方の給電導体線13を入力側とし、もう一方の給電導体線13を出力側としたことに特徴を有するn段型デュアルバンド帯域通過フィルタであって、各半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設け、各スタブ11の上部空間にそれぞれ断面円形の誘電体ロッド25をそれぞれ設けることを特徴とするn段チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、二つの通過帯域それぞれの中心周波数、帯域幅、入出力の整合の設計自由度が高く、さらに二つの通過帯域の中心周波数を独立してチューニングすることが可能であり、また、チューニング後に劣化する帯域内通過特性を改善することができる。
本発明のチューナブルデュアルバンド共振器及びそれを用いたチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタにおいては、奇モードにおけるシフト幅を大幅に増加させることができるチューナブルデュアルバンド共振器及びそれを用いたチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】本発明者が提案した奇モードの共振のシフト量を変えるのに効率が良い断面が楕円形誘電体ロッド25(参考例)
【
図4】本発明で用いたデュアルバンド共振器の上面図
【
図5】本発明で用いたデュアルバンド共振器の電流分布図
【
図6】半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10(上図)と半波長共振器突起部(容量成分調整部)がない半波長共振器10(下図)
【
図7】半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10(上図)の周波数特性、半波長共振器突起部(容量成分調整部)がない半波長共振器10(下図)の周波数特性
【
図8】半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10を用いた本発明の2段フィルタ
【
図9】半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10を用いた本発明の3段フィルタ
【
図10】半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10を用いた本発明の6段フィルタとその周波数特性
【
図11】通常のデュアルバンド共振器(a)と半波長共振器をステッピングインピーダンス構造にしたデュアルバンド共振器(b)。
【
図12】通常のデュアルバンド共振器(a)に誘電体ロッドを用いたときと用いないときの周波数特性。半波長共振器をステッピングインピーダンス構造にしたデュアルバンド共振器(b)に誘電体ロッドを用いたときと用いないときの周波数特性。
【
図13】半波長共振器をステッピングインピーダンス構造にし、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10−a’1、10−b’1を有する本発明のデュアルバンド共振器(b)の平面図。
【
図14】半波長共振器をステッピングインピーダンス構造にし、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10−a’1、10−b’1を有する本発明のデュアルバンド共振器(b)に誘電体ロッドを用いたときと用いないときの周波数特性。
【
図15】ステッピングインピーダンス構造と、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10−a’1、10−b’1を有するデュアルバンド共振器を用いた4段デュアルバンド帯域通過フィルタ。
【
図16】ステッピングインピーダンス構造と、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10−a’1、10−b’1を有するデュアルバンド共振器を用いた4段デュアルバンド帯域通過フィルタの誘電体ロッドを用いたときと用いないときの周波数特性。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明で用いる誘電体基板は、周知の誘電体を用いることが出来、成形性に優れたものが好ましい。誘電体損を抑えるために、誘電正接の小さい材料が望ましい。また、温度上昇を抑えるために熱伝導率の高い材料が望ましい。
ストリップ導体、マイクロストリップラインに用いる常伝導体や超伝導体についても、知られているどのようなものでも用いることが出来る。半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを構成する材料についてもストリップ導体、マイクロストリップラインに用いる常伝導体や超伝導体についても、知られているどのようなものでも用いることが出来る。
本発明で用いる共振器の代表的な構成単位としての構造を
図4に示す。
図4は、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器(奇モード共振)10であり、基本的には溝幅gのヘアピン形状をした左右対称のマイクロストリップライン構造である。
図4の右端は、スタブ11を示す。スタブを構成するについてもストリップ導体、マイクロストリップラインに用いる常伝導体や超伝導体についても、知られているどのようなものでも用いることが出来る。突起部(容量成分調整部)10-a,10-bの形状は、ストリップ導体に沿って、突出しておればよく、矩形でも、階段状でもよいが、左右対象であることが好ましい。
図4中央は、ヘアピン形状をした半波長共振器10にスタブ11を付加した構造であるデュアルバンド共振器の対称面A−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器であって、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10とスタブ11が偶モードによる共振器となり、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整し、若しくは、奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振することができるデュアルバンド共振器であって、所定の厚さの誘電体の下面に接地導体が配置され、上面にストリップ導体が配置され、当該ヘアピン形状をしたストリップ導体は、開放端(ストリップが繋がっていない箇所)で切断されている1本の細いストリップ導体であって、深く入り込んだ幅gの溝を有し、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有し、溝の先端部とストリップ導体の端面は幅dを有する左右対称形の1本のストリップ導体からなる形状の奇モード共振器と、長さlのスタブ11を開放端の反対側の端面で接続した形状の偶モード共振器からなり、
図5に示すように、対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことを特徴とするデュアルバンド共振器である。
当該デュアルバンド共振器は、単独又は複数個組み合わせて、デュアルバンド帯域通過フィルタをつくることができる。
【0021】
ストリップ導体10、スタブ11面に対して垂直方向に動かすことが出来るロッド25は、高誘電率、低誘電正接の材料が望ましく、サファイヤ、京セラSV380などを挙げることが出来る。また、本発明においてはロッド25の形状は、断面が円形の棒状体であり、ロッド25をネジの回転で押し込む構造が好ましい。また、円形の断面の直径は、溝幅gから最大2本のストリップ導体の外幅までが好ましい。
また、本発明のチューナブルデュアルバンド共振器及びそれを用いたチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタは、本発明者が先に提案した特許文献3(特願2014−014962)における半波長共振器に代えて、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器を用いる点のみ相違するため、基本的構造は本発明者が先に提案した特許文献3に記載したチューナブルデュアルバンド共振器及びそれを用いたチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタと同じであり、奇モードのみ通過帯域特性を調整する周波数チューニングのシフト量の調整方法や偶モードのみ通過帯域特性を調整する周波数チューニングのシフト量及び周波数チューニング後に発生する帯域内通過特性の劣化を改善する方法(トリミング)を、特許文献3(特願2014−014962)と同様に行うことが出来る。
次に、その構造について詳述するが、当業者であればこの構造を摸して似た構造のデュアルバンド帯域通過フィルタを作ることが可能であるので、本発明はこの構造のみに限定されるべきではない。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施形態の共振器ではマイクロストリップライン構造を用いるが、本発明はこの構造のみに限定されるべきではない。
本発明では、マイクロストリップライン構造を用いるが、全体の外観は
図2に示すように、誘電体22の上にストリップ導体23(半波長共振器10、スタブ11、導波路12、給電線13等に相当)を設け、誘電体22の下は接地導体21が設けられている。誘電体22は、誘電体損を抑えるために、誘電正接の小さい材料を用いて形成することが望ましい。また、温度上昇を抑えるために熱伝導率の高い材料を用いて形成することが望ましい。接地導体21は導体損の小さい材料で特に超伝導材料が望ましい。ストリップ導体も導体損失の小さい材料で特に超伝導材料が望ましい。)この説明は、以下のマイクロストリップライン構造を用いた共振器、フィルタを示す全ての図面において同様である。
必要に応じて、
図4の10と11の間にスイッチを設けることもできるが、本実施例ではスイッチが無いものについて示す。
図4のデュアルバンド共振器のA−B面は電気/磁気壁をなし、奇モード共振と偶モード共振によって、2周波数帯域で動作するデュアルバンド共振器となる。基本的構造は半波長共振器10にスタブ11を付加した構造である。半波長共振器10が奇モードによる共振器となり、半波長共振器10とスタブ11が偶モードによる共振器となる。
図5は本発明のデュアルバンド共振器の電流分布である。奇モードの場合は
図5(a)のようにデュアルバンド共振器に流れる電流は半波長共振器10にだけ流れ、奇モード共振器として動作する。このとき半波長共振器10の屈曲部は半波長共振器10の中心部分であり、電圧が0で電流最大となることからGNDとみなすことができるためスタブ11は半波長共振器10の共振周波数に影響を与えない。また、偶モードの場合は
図5(b)のように半波長共振器10とスタブ11に電流が流れ、半波長ストレートライン共振器として動作する。
以上の電流分布から対称面A−B面に電流が流れ込むときは、奇モード共振器として働き、対称面A−B面に電流が流れ込まないときは、偶モード共振器として働くことでデュアルバンド共振器として作用することが出来る。
本共振器では、奇モードを低周波側、偶モードを高周波側で共振するように共振器長を調整した。場合によっては奇モードを高周波側、偶モードを低周波側で共振するように共振器長を調整することも可能である。半波長共振器10及びスタブ11をステップインピーダンス構造にすることで、小型化が望める。
図6の上図は本発明に従って構成されたチューナブルデュアルバンド共振器の一実施例の断面図である。半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a、10-bは共振器を構成するマイクロストリップ導体からなる半波長共振器10と一体に作られる。また、デュアルバンド共振器に信号を入出力するために、半波長共振器10に沿って、給電線13が配置されている。
半波長共振器10の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-b上部空間の断面円形の誘電体ロッド25を設けて、誘電体ロッド25をストリップ導体10面に対して垂直方向に動かすことにより、奇モードにおけるシフト幅を大幅に増加させることができた(
図7上図参照)。この時、奇モードだけの共振周波数がシフトしており、偶モードは一定値を示していることから、完全に独立して共振周波数をチューニングできることがわかる。
【0023】
(参考例)
図6の下図は、参考のために構成されたチューナブルデュアルバンド共振器の断面図である。半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a、10-bを持たない共振器を構成するマイクロストリップ導体からなる半波長共振器10である。また、デュアルバンド共振器に信号を入出力するために、半波長共振器10に沿って、給電線13が配置されている。信号を取り出すために、もう一方の半波長共振器10に沿って、給電線13が配置されている。
この共振器において、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有さない通常の半波長共振器10の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設けることを特徴とするチューナブルデュアルバンド共振器であり、半波長共振器10の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設けて、誘電体ロッド25をストリップ導体10面に対して配置しているときと配置していないときの周波性特性を調べた。
このことを確認するために、3次元電磁界解析シミュレータMW-studio(AET社製)を用いてシミュレーションを行った。デュアルバンド共振器の共振周波数は奇モードが2.2GHzとし、偶モードを3.5 GHzとした。誘電体ロッド25の誘電率は39とし、誘電体ロッド25の直径はデュアルバンド共振器の幅と同じとした。このときの誘電体ロッド25の直径は2.5 mmであった。また、誘電体ロッド25の長さは20 mm とした。誘電体ロッドを配置した時のデュアルバンド共振器と誘電体ロッド25の距離は0.01 mmとした。
図7上図より、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有する半波長共振器10は、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを有さない通常の半波長共振器10に比して(
図7下図)、奇モードにおけるシフト幅は、約1.8倍と大きくシフトしていることがわかる。このとき、偶モードの周波数はシフトしていないため、奇モードの共振周波数だけを独立して調整できることがわかる。
【実施例2】
【0024】
図8は、本件発明のチューナブルデュアルバンド共振器を2段に組み合わせたチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタである。12は導波路であり、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタに信号を入出力するために、左側の半波長共振器10に沿って、給電線13が配置されている。信号を取り出すために、もう一方の半波長共振器10に沿って、給電線13が配置されている。誘電体ロッド25は、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bの上部空間とスタブ11の上部空間にあるが図示していない。
【実施例3】
【0025】
図9は、本件発明のチューナブルデュアルバンド共振器を3段に組み合わせたチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタである。12は導波路であり、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタに信号を入出力するために、左側の半波長共振器10に沿って、給電線13が配置されている。信号を取り出すために、右端の半波長共振器10に沿って、給電線13が配置されている。各半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bの上部空間と各スタブ11の上部空間にある誘電体ロッド25については図示していない。
【実施例4】
【0026】
図10は本発明に従って構成された6段デュアルバンド帯域通過フィルタの一実施例の平面図であり、マイクロストリップライン構造を用いている。12は導波路であり、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタに信号を入出力するために、左側の半波長共振器10に沿って、給電線13が配置されている。信号を取り出すために、右端の半波長共振器10に沿って、給電線13が配置されている。各半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bの上部空間と各スタブ11の上部空間にある誘電体ロッド25については図示していない。
さらに、
図10の下図には、6段デュアルバンド帯域通過フィルタに対して、誘電ロッド25を半波長共振器10に挿入した場合としない場合の特性を示した。半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを設けた半波長共振器10を用いる本件発明のデュアルバンド帯域通過フィルタでは、奇モードの中心周波数が大幅にシフトしていることが確かめられた。
【実施例5】
【0027】
図11(b)は本発明に従って構成されたチューナブルデュアルバンド共振器の一実施例の平面図である。半波長共振器10をステップインピーダンス構造とすることで奇モードのシフト量を増加させる。半波長共振器10のステップインピーダンス構造は、
図11(b)に示すように、開放端付近を細くし、スタブ11と半波長共振器10との接続付近まで線路幅を太くしたもので、半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a,10-bを、スタブ11と半波長共振器10との接続付近まで延長した構造10-a’,10-b’となる。このようにすることで、
図11(a)の半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a’,10-b’を有さない通常のデュアルバンド共振器を構成する半波長共振器10に比して
図11(b)の半波長共振器10の全長が長くなる。
この共振器において、半波長共振器10の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設けることを特徴とするチューナブルデュアルバンド共振器であり、半波長共振器10の上部空間に断面円形の誘電体ロッド25を設けて、誘電体ロッド25をストリップ導体10面に対して配置しているときと配置していないときの周波性特性を調べる。
このことを確認するために、3次元電磁界解析シミュレータMW-studio(AET社製)を用いてシミュレーションを行った。デュアルバンド共振器の共振周波数は奇モードが1.5 GHzとし、偶モードを2.0 GHzとした。誘電体ロッド25の誘電率は39とし、誘電体ロッド25の直径はデュアルバンド共振器の幅と同じとした。このときの誘電体ロッド25の直径は2.0 mmであった。また、誘電体ロッド25の長さは20 mm とした。誘電体ロッドを配置した時のデュアルバンド共振器と誘電体ロッド25の距離は0.01 mmとした。
図12(b)より、ステップインピーダンス構造である半波長共振器10は、
図12(a)の通常の半波長共振器10に比して、奇モードにおけるシフト幅は、約2.3倍と大きくシフトしていることがわかる。このとき、偶モードの周波数はシフトしていないため、奇モードの共振周波数だけを独立して調整できることがわかる。
【0028】
さらに
図11(b)の共振器構造で奇モードチューニングにおける共振周波数のシフト量を増加させるために
図13に示すように半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a’1,10-b’1を付加する。こうすることで、
図11(b)で使用していた誘電体ロッド25より大きい直径の誘電体を使用することができることから共振器の容量成分の変化量が増加し、奇モードの共振周波数のシフト量が増加する。
図14に誘電体ロッド25があるときとないときの周波数特性を示す。この時使用した誘電体ロッドの直径は2.5mmであり、
図12で使用した誘電体ロッドより直径が0.5mm大きなっている。
図14より、共振周波数のシフト量は約163MHzであり、
図11(a)の通常の半波長共振器10を用いるより3.26倍シフト量が増加した。このとき、偶モードの周波数はシフトしていないため、奇モードの共振周波数だけを独立して調整できることがわかる。
【実施例6】
【0029】
図15は本発明に従って構成されたステップインピーダンス共振器構造と半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a’1,10-b’1を設けた半波長共振器10を用いた4段デュアルバンド帯域通過フィルタの一実施例の平面図であり、マイクロストリップライン構造を用いている。12は導波路であり、チューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタに信号を入出力するために、左側の半波長共振器10に沿って、給電線13が配置されている。信号を取り出すために、右端の半波長共振器10に沿って、給電線13が配置されている。各半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a’1,10-b’1の上部空間と各スタブ11の上部空間にある誘電体ロッド25については図示していない。
さらに、
図16は、4段デュアルバンド帯域通過フィルタに対して、誘電ロッド25を半波長共振器10に挿入した場合としない場合の周波数特性である。ステップインピーダンス構造と半波長共振器突起部(容量成分調整部)10-a’1,10-b’1を設けた半波長共振器10を用いる本件発明によるデュアルバンド帯域通過フィルタでは、奇モードの中心周波数が大幅にシフトしていることが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のチューナブルデュアルバンド共振器及びそれを用いたチューナブルデュアルバンド帯域通過フィルタは、各帯域の中心周波数を独立して調整可能であり、奇モードの中心周波数を大幅にシフトさせることが可能であり、中心周波数チューニング後に劣化する帯域内特性も同時に改善できることからあらゆる種類の通信用フィルタに転用可能であり、通信業界の発展に寄与できるので、産業上きわめて利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0031】
10 半波長共振器
10-a半波長共振器突起部(容量成分調整部)
10-b半波長共振器突起部(容量成分調整部)
10-a’ ステップインピーダンス構造
10-a’1 突起部(容量成分調整部)
10-b’ ステップインピーダンス構造
10-b’1 突起部(容量成分調整部)
11 スタブ゛
12 導波路
13 給電導体線
21 接地導体
22 誘電体
23 ストリップ導体
25 誘電体ロッド