(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクチュエータによって前記ピンが押圧された際に、前記座は、前記固定部から前記第二の面に向けて突出して、前記第二の面に機械加工によって形成された第二の加工面に、該座の形状を維持するよう接する突出部を有する請求項3に記載のロータ回転治具。
前記ピンは、前記第一の面から前記ロータの前記軸線方向に凹んで形成された第一の穴に挿入され、前記ピンの軸線を中心として前記第一の穴に対して回転摺動する挿入部と、
前記挿入部から前記ピンの軸線方向に突出して形成される受け部と、を有し、
前記受け部は、前記ピンの前記軸線に対して平行な受け面が形成される請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のロータ回転治具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなロータ回転治具では、軸受箱の内面にオイルジャッキを設置するため、軸受箱を分割可能な構成として、ロータを回転させる場合に、軸受箱の一部を開放しなければ使用することができない。さらに、軸受箱を開放した後、ロータ周りに残された軸受箱の内壁面の一部にオイルジャッキを設置するため、オイルジャッキの取り付け位置に制限が生じてしまう。その結果、取付作業が煩雑になってしまう。また、軸受箱の形状によっては、ロータ回転治具の設置スペースが限られてしまう。さらに、回転治具の取付位置が、回転機械本体から離れた位置にあるため、オイルジャッキとロータとの間にアダプタ等を介在させる必要があり、装置が大掛かりなものとならざるを得ない。そのため、容易にロータ回転治具をロータ周りに設置してロータを回転させることが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、軸受箱や吸気ダクト等を開放してロータ周りの部材を撤去せずとも容易に設置できるとともに、ロータを容易に回転させることができるロータ回転治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係るロータ回転治具は、軸線に対して直角であってかつ前記軸線を中心とした環状の第一の面が形成され、前記軸線に対して径方向へ突出する環状部を有するロータと、前記第一の面と前記ロータの軸線方向で対向する第二の面が形成された対向部を有するステータと、を備える回転機械の前記ロータを該ステータに対して前記軸線を中心に回転させるロータ回転治具において、前記第一の面に取り付けられるピンと、前記第二の面に固定され、前記ロータの周方向に前記ピンを押圧する押圧手段と、を備える。
【0009】
このような構成のロータ回転治具によれば、ロータやステータを覆う吸気ダクトのような部材が配置されていても、このような部材を撤去することなくピンと押圧手段とを設置することができる。これにより、ロータ回転治具を設置する負担を軽減して、容易にピンと押圧手段とを設置できるとともに、ロータを外部から容易に回転させることができる。
そして、互いに近接した位置にピンと押圧手段とを設置できる。加えて、ロータ回転治具をピンと押圧手段とによって簡易に構成している。そのため、ロータ回転治具自体を小さくすることができる。
さらに、近接した位置にピンと押圧手段とを設置することで、押圧手段がピンを押圧するために必要なストローク量を小さくできる。また、ロータを回転させる回転角度の微小なコントロールも容易になり、任意の回転角度で回転させることができる。これにより、ロータを据え付ける場合等のように、ロータ同士を固定するボルトの位置合わせ等が容易になる。
【0010】
また、本発明の他の態様に係るロータ回転治具は、前記対向部が、前記ロータを回転可能に支持する軸受装置の一部であって、前記第二の面から前記ロータの前記軸線方向に凹む第二の穴が形成され、前記押圧手段は、前記ピンを押圧するアクチュエータと、前記アクチュエータを前記第二の面に固定する座と、を有し、前記座は、前記アクチュエータが固定される本体部と、前記第二の穴を利用して前記第二の面に固定される固定部と、を有していてもよい。
【0011】
このような構成のロータ回転治具によれば、押圧手段を対向部に対して取り付けたり、取り外したりすることが容易となる。これにより、ロータ回転治具を用いてロータを回転させる作業を、迅速に行うことができる。
さらに、押圧手段を座とアクチュエータとに分けて構成していることで、それぞれを個別に取り換えることができ、故障した場合等の交換作業の負担を軽減できる。
また、アクチュエータの本体部に対する取り付け位置を調整することができ、ピンに対する位置を容易に調整できる。即ち、ピンを押圧しやすい位置となるようにピンに対して近づけるようアクチュエータの位置を調整することができる。したがって、押圧手段であるアクチュエータによってピンを精度良く押圧することができ、ロータを回転させる回転角度の微調整を容易に行うことができる。
【0012】
さらに、本発明の他の態様に係るロータ回転治具は、前記固定部と前記第二の面との間に介在して前記固定部と前記第二の面とを離間して固定させ、前記第二の面に機械加工によって形成された第一の加工面に接する間隙保持手段を備えていてもよい。
【0013】
このような構成のロータ回転治具によれば、機械加工によって形成された第一の加工面を介して第二の面に接している間隙保持手段によって、座が第二の面に対して離間して固定される。これにより、第二の面の表面形状によらず、座を対向部に精度高く固定することができる。
【0014】
また、本発明の他の態様に係るロータ回転治具は、前記アクチュエータによって前記ピンが押圧された際に、前記座は、前記固定部から前記第二の面に向けて突出して、前記第二の面に機械加工によって形成された第二の加工面に、該座の形状を維持するよう接する突出部を有していてもよい。
【0015】
このような構成のロータ回転治具によれば、アクチュエータがピンを押した場合には、ピンの反力により、座の固定部にはねじれ変形を起こす向きに力が発生する。即ち、座の固定部が第二の面に向かって変形するような力を受ける。しかし、突出部が第二の加工面に接するため、座の固定部は安定して支持される。これにより、突出部によって、座がアクチュエータから受ける力によってねじれ変形してしまうことを防止できる。
【0016】
また、本発明の他の態様に係るロータ回転治具は、前記第二の穴が、前記軸線を中心として周方向に複数形成され、前記第二の加工面は、前記第二の穴の位置よりも前記軸線の径方向外側に形成され、かつ、前記アクチュエータのストローク方向において、前記アクチュエータと前記本体部との固定位置を基準として前記ピンと反対側に形成されていてもよい。
【0017】
このような構成のロータ回転治具によれば、第二の加工面に接する座の突出部も、第二の加工面が形成されている位置と対応する位置に配置される。即ち、座の突出部は、座のアクチュエータと本体部との固定位置を挟んでピンと反対側の位置に形成されている。そのため、アクチュエータが移動したときの反力で座の本体部にはアクチュエータが移動した方向と反対の方向に座を移動させようとする力が発生する。そして、座の固定部は第二の穴に固定されていることから、座には、座を第二の面に向けて回転させる方向のモーメントが発生する。しかし、座において、第二の穴の位置よりもロータの軸線の径方向外側に形成された第二の加工面に対して、座の突出部が接するため、座の回転を防止することができる。
【0018】
さらに、本発明の他の態様に係るロータ回転治具は、前記ピンが、前記第一の面から前記ロータの前記軸線方向に凹んで形成された第一の穴に挿入され、前記ピンの軸線を中心として前記第一の穴に対して回転摺動する挿入部と、前記挿入部から前記ピンの軸線方向に突出して形成される受け部と、を有し、前記受け部は、前記ピンの前記軸線に対して平行な受け面が形成されていてもよい。
【0019】
このような構成のロータ回転治具によれば、ピンをアクチュエータによって押圧する場合に、アクチュエータと受け面とを面接触させて押圧することができる。これにより、ピンの一部に負荷がかかって、ピンが破損してしまうことを防止できる。
なお、ここでいうピンの受け面とは、ピンの受け面とアクチュエータとが、ピンが押圧される方向に対して垂直な方向に摺動するように形成されたものであればよい。
また、アクチュエータと受け面とを面接触させて押圧することで、アクチュエータが押圧する力を、ピンに精度高く伝達することできる。そのため、アクチュエータによってピンを押圧する力の調整が容易となる。これにより、ロータを回転させる回転角度の調整をより精度高く容易に行うことができる。
さらに、アクチュエータは第二の面に固定された状態であるので、アクチュエータによるピンの押圧方向はある一点におけるロータの周方向若しくは接線方向の一定方向である。そして、受け面を有するピンが押圧される向きは一定であるが、ピンの挿入部がロータの第一の穴に対して摺動回転するので、ロータが回転しても、ピンの受け面をアクチュエータの押圧部に対して向けた状態で維持し続けることができる。ピンの受け面をアクチュエータに対して向けた状態を維持したまま押せるので、ロータをスムーズに回転させることができる。そのため、受け面を常にアクチュエータに対向するよう配置して移動させることができる。そして、アクチュエータと受け面とを面接触させて押圧することで、アクチュエータが受け面を押圧する位置が中心からずれたとしても、ピンの軸線から外れなければ、ピンを押し続けて安定してロータを回転させることができる。
また、ピンの挿入部は第一の穴に対して回転摺動する大きさであるため、第一の穴が形成される環状部の第一の面に対して容易にピンを着脱させることができる。これにより、アクチュエータによって押圧して、ロータを回転させた場合でも、ピンを取り外して他の第一の穴に挿入することが容易となる。これにより、ピンを第一の穴に対して取り付けたり取り外したりすることで、ロータを連続して任意の角度だけ回転させることができる。
【0020】
また、本発明の他の態様に係るロータ回転治具は、前記ピンが、前記第一の穴の内径寸法よりも大きい外径寸法をなし、前記挿入部と前記受け部との間に形成される鍔部を有していてもよい。
【0021】
このような構成のロータ回転治具によれば、鍔部によって第一の穴に対してピンが深く挿入されすぎてしまうことを防止できる。そのため、受け部を第一の面に対して突出させる量を一定とすることができる。これにより、ピンの受け面とアクチュエータとの位置を容易に調整することができる。
また、アクチュエータによって押圧されるピンが、押圧されている途中で、第一の穴に挿入されてしまい、ピンの軸線に沿って受け面がずれてしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のロータ回転治具によれば、ロータ周りの部材を撤去せずとも容易に設置できるとともに、ロータを容易に回転させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る第一実施形態について図面を参照して説明する。
まず、本実施形態のロータ回転治具が適用される回転機械について説明する。本実施形態で用いられる回転機械は、
図1に示すように、ガスタービン1である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態のガスタービン1は、空気を圧縮する圧縮機2と、圧縮機2で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器3と、高温高圧の燃焼ガスにより駆動するタービン4と、を備えている。
圧縮機2は、圧縮機ケーシング21と、圧縮機ケーシング21内で軸線Oを中心に回転する圧縮機ロータ22とを備えている。
圧縮機ケーシング21は、吸気側に吸気ダクト21aが形成されている。吸気ダクト21aは、後述する軸受装置5や圧縮機ロータ22の環状部24を径方向の外側から周方向にわたって覆うように配置されている。
【0030】
タービン4は、タービンケーシング41と、タービンケーシング41内で軸線Oを中心に回転するタービンロータ42とを備えている。
圧縮機ロータ22とタービンロータ42とは互いに連結されて、これらが一体となってガスタービンロータ10を構成している。
また、圧縮機ケーシング21やタービンケーシング41は後述する軸受装置5とともにガスタービン1のステータの一部を構成している。
【0031】
圧縮機ロータ22は、軸線Oを中心に円柱状をなして軸線Oの軸線方向に延在するロータである。圧縮機ロータ22は、不図示の発電機の発電機ロータ11とも、同一の軸線Oを中心として回転するよう相互に連結されている。圧縮機ロータ22は、軸線Oを中心として円柱状をなして延在するロータ本体23と、ロータ本体23の端部に形成されている環状部24と、ロータ本体23の外周から突出する複数の動翼25とを有している。
【0032】
環状部24は、
図2に示すように、ロータ本体23の外周から軸線Oに対して径方向へ軸線Oを中心として円環状に突出するフランジである。環状部24は、発電機の発電機ロータ11の端部に形成されたフランジとの接続部である。環状部24には、圧縮機2を向く面である第一の面240が形成されている。
【0033】
第一の面240は、圧縮機ロータ22の外周から軸線Oの一方側(
図1紙面右方向)を向いて軸線Oに対して直角であって、軸線Oを中心として円環状に広がって形成されている。第一の面240は、環状部24の軸線方向の面のうち、圧縮機2側を向く面である。第一の面240は、ボルトが挿通するよう軸線方向に凹んだ複数の第一の穴240aが形成されている。
【0034】
第一の穴240aは、第一の面240から軸線方向に凹んで形成された断面円形状の貫通穴である。第一の穴240aは、軸線Oを中心として周方向に一定の間隔をあけて同一形状をなして環状部24に複数形成されている。また、第一の穴240aは、
図5に示すように、第一の面240側において、貫通穴の周りに凹部が形成されている。即ち、第一の穴240aは、第一の面240から一段凹んだ後に、貫通孔が形成されている。第一の穴240aは、貫通穴の直径が内径寸法D1をなしている。
【0035】
さらに、圧縮機2は、圧縮機ロータ22を回転可能に支持する軸受装置5を有している。
軸受装置5は、ロータ本体23の環状部24側に配置されている。軸受装置5は、ステータの一部である。軸受装置5は、圧縮機ロータ22を回転可能に支持する軸受本体部51と、軸受本体部51を外側から覆うように配置される対向部52とを有している。
【0036】
軸受本体部51は、圧縮機ロータ22を回転可能に支持するスラスト軸受である。
対向部52は、
図2から
図6に示すように、軸受装置5の一部であって、軸受本体部51を内部に収容して外部から覆う軸受装置5の外装部品である。対向部52は、環状部24の第一の面240と軸線O方向で対向する第二の面521が形成されている。本実施形態における対向部52は、例えば、軸線Oの径方向の外側から軸受本体部51を覆う外装部品の本体である有底円筒状部材と、軸線Oの他方側(
図1紙面左方向)である環状部24側から有底円筒状部材の開口を閉塞する外装部品の一部である蓋部材とを有している。即ち、軸受本体部51を有底円筒状部材と蓋部材とによって覆うことで外装部材を構成している。そして、対向部52は、有底円筒状部材に蓋部材を固定する締結部材522を有している。対向部52は、例えば、鋳造によって製造され、表面が凹凸形状となっている。
【0037】
第二の面521は、第一の面240と軸線O方向の他方側で対向し、軸線Oを中心として円環状に広がって形成されている。即ち、第二の面521は、ステータの一部である対向部52の蓋部材の軸線O方向において環状部24側を向く面である。第二の面521には、軸線O方向に凹む複数の第二の穴521aと、後述する間隙保持手段84が接する第一の加工面521bと、後述する座81の一部が接する第二の加工面521cとが形成されている。
【0038】
第二の穴521aは、対向部52に軸線Oを中心として周方向に複数形成されている。本実施形態においては、第二の穴521aは、第二の面521から軸線O方向に凹んで貫通して形成されている。本実施形態における第二の穴521aは、対向部52の有底円筒状部材と蓋部材とを閉塞する際に締結部材522が挿入される穴と同じ穴であるが、別に形成してもよい。
【0039】
第一の加工面521bは、第二の面521における第二の穴521aが形成されている位置に機械加工によって複数形成された面である。第一の加工面521bは、第二の穴521aを中心として周りを囲むように円環状をなしている。第一の加工面521bは、第二の面521と平行に形成されている。そして、第一の加工面521bは、第二の面521よりも平面度が高くなるよう平滑に第二の面521から削られて形成されている。なお、第一の加工面521bは、締結部材522を安定して取り付けるために対向部52に予め設けられている場合もある。
【0040】
第二の加工面521cは、第二の面521における第二の穴521aが形成されている位置よりも軸線Oの径方向外側に形成された面である。第二の加工面521cは、後述するアクチュエータ82のストローク方向において、アクチュエータ82と後述する座81の本体部812との固定位置を基準として、ピン7と反対側にも面が配置されるように形成されている。即ち、第二の加工面521cは、第二の面521の径方向の最外形部分において円環状をなしている。第二の加工面521cは、第二の面521と平行に形成されている。そして、第二の加工面521cは、第二の面521よりも平面度が高くなるよう平滑に第二の面521から削られて形成されている。
【0041】
締結部材522は、内部に軸受本体部51を収容した状態で、対向部52の蓋部材を有底円筒状部材に固定して、軸受装置5を構成する。締結部材522は、第二の面521に対して軸線Oを中心とする周方向にわたって等間隔ずつ離間している第二の穴521aに挿入されて複数配置されている。締結部材522は、本実施形態では、例えば、ボルトが用いられる。なお、締結部材522は、ロータ回転治具6を使用するか否かに関わらず、軸受装置5の対向部52に対して取り付けられている。
【0042】
図2から
図6に示すように、本実施形態のロータ回転治具6は、圧縮機ロータ22をステータである軸受装置5の対向部52や圧縮機ケーシング21に対して外部から軸線Oを中心に回転させる装置である。ロータ回転治具6は、環状部24の第一の面240に取り付けられるピン7と、圧縮機ロータ22の周方向にピン7を押圧する押圧手段8とを備える。
【0043】
ピン7は、第一の面240に形成された第一の穴240aに挿入されて取り付けられている。具体的には、ピン7は、第一の面240の第一の穴240aに挿入されて軸線O方向に延在するピン7の軸線O2を中心として回転可能に取り付けられている。ピン7は、ピン7の軸線O2を中心として回転可能に第一の穴240aに挿入される挿入部71と、挿入部71と一体に第一の面240から突出して形成される受け部72と、挿入部71と受け部72との間に形成される鍔部73とを有している。
【0044】
挿入部71は、ピン7の軸線O2を中心として延在する円柱状をなしている。本実施形態では、挿入部71は、環状部24の第一の面240の形成された第一の穴240aに挿入されている。挿入部71は、第一の穴240aの内周面に対して摺動可能とされていることで、軸線Oと平行なピン7の軸線O2を中心として回転摺動可能とされている。
【0045】
受け部72は、環状部24の第一の面240から対向部52の第二の面521に向かって、挿入部71から突出している。受け部72は、挿入部71の中心軸でもあるピン7の軸線O2に対して平行な受け面72aがピン7の軸線O2と垂直方向に対向して形成されている。本実施形態において受け部72は、円柱状をなす部材からピン7の軸線O2に平行な平面を径方向外側から削りとって受け面72aとした形状をなしている。
【0046】
受け面72aは、受け部72において押圧手段8によって押圧される面である。受け面72aは、ピン7の軸線O2に対して平行な面であって、平坦な面として形成されている。
なお、ここでいうピン7の受け面72aとは、ピン7の受け面72aとアクチュエータ82とが、ピン7が押圧される方向に対して垂直な方向に摺動するように形成されたものであればよい。
鍔部73は、挿入部71と受け部72との間に円柱形状に形成されている。鍔部73は、第一の穴240aの内径寸法D1よりも大きい外径寸法D2をなしている。
【0047】
押圧手段8は、圧縮機ロータ22の軸線Oの周方向にピン7を押圧する。押圧手段8は、軸受装置5の対向部52の第二の面521に取り付けられる座81と、座81に取り付けられてピン7を押すアクチュエータ82と、座81を対向部52の第二の面521に取り付ける取り付け部材83とを有している。
【0048】
座81は、ピン7を押すアクチュエータ82をステータの一部である対向部52に取り付けている。座81は、座81自体の対向部52に固定される部分である固定部811と、アクチュエータ82を座81自体に固定する本体部812と、座81を補強して剛性を高める座補強部813と、座81自体の形状や姿勢を維持するよう対向部52に接して支持する突出部814とを有している。
【0049】
固定部811は、第二の穴521aを利用してステータの一部である対向部52の第二の面521に固定される。固定部811は、軸線Oと直交する面における断面形状が台形状をなす板状部材である。固定部811は、第二の面521と固定面811aとが平行に離間して配置されている。固定部811は、対向部52の第二の面521と対向する平面である固定面811aが形成されている。そして、固定部811は、第二の面521に形成された第二の穴521aと対応するよう軸線O方向に貫通する固定孔部811bが形成されている。
【0050】
固定孔部811bは、周方向に三点隣接する第二の穴521aのうち、真ん中の一つ以外の二つの第二の穴521aの位置と対応するように、軸線Oを中心とする周方向の二箇所に形成されている。
【0051】
本体部812は、固定部811に接続されて、後述するアクチュエータ82のケーシング部821が固定されている。本体部812は、固定部811の固定面811aと対向する面から環状部24側に向かって軸線O方向に沿って板状部材が突出して形成されている。本体部812は、軸線Oに対して垂直方向である圧縮機ロータ22の水平方向(
図4における紙面左右方向)にアクチュエータ82のケーシング部821を挿通させる円形状の挿通孔が形成されている。本体部812は、挿通孔の周囲にねじの切られた円形状の孔部が、水平方向に貫通して周方向に等間隔に配置されて四カ所形成されている。なお、軸線Oに対して垂直方向とは、圧縮機ロータ22の周方向であって、本実施形態では水平方向を指している。
【0052】
座補強部813は、座81が変形しないよう補強している。固定部811と本体部812とに鉛直方向(
図4における紙面上下方向)の上側で接するように軸線O方向に平行な面における断面形状が三角形状に形成されている。即ち、座補強部813は、軸線O方向に平行な面に広がって固定部811及び本体部812と一体に形成されている。
【0053】
突出部814は、後述するアクチュエータ82のロッド部822がピン7を押した際に、座81の姿勢や形状を維持している。具体的には突出部814は、固定部811の固定面811aから対向部52の第二の加工面521cに向かって円柱形状に突出して形成されている。突出部814は、第二の面521に形成された第二の加工面521cに、座81の形状や姿勢を維持するように接して形成されている。そして、突出部814は、アクチュエータ82のストローク方向であってピン7を押圧する方向である周方向において、本体部812とアクチュエータ82との固定位置を基準として、ピン7と反対側に形成されている。
【0054】
アクチュエータ82は、座81の本体部812に取り付けられて、ピン7に向けて直線的に移動してピン7を押圧する油圧ジャッキである。アクチュエータ82は、座81に固定されるケーシング部821と、ケーシング部821の内部に収容されて軸線Oに対して垂直方向を移動方向として移動可能とされるロッド部822とを有している。即ち、アクチュエータ82は、ケーシング部821に対してロッド部822を飛び出させるように移動させ、移動方向であるストローク方向にロッド部822を移動させる。これにより、アクチュエータ82は、移動方向であるストローク方向にロッド部822を移動させて、ピン7を圧縮機ロータ22の周方向に押圧する。アクチュエータ82は、本体部812の挿通孔に挿通されて、軸線Oに対して垂直方向である水平方向にケーシング部821が沿うよう配置されている。アクチュエータ82は、図示しない油圧ポンプと接続されており、駆動することで作動油が送り込まれ、油圧によってロッド部822をケーシング部821の延在方向である軸線Oに対して垂直方向に移動可能とされている。
【0055】
ケーシング部821は、アクチュエータ82のシリンダを構成する外装部材である。ケーシング部821は、座81の本体部812に形成された挿通孔に挿通されて固定されている。ケーシング部821は、有底円筒形状をなすケーシング部本体821aと、ケーシング部本体821aの外周から円環状に突出するケーシングフランジ821bと、ケーシングフランジ821bを本体部812に固定するケーシング固定部821cとを有している。
ケーシング部本体821aは、ケーシング部本体821aは、座81の本体部812と直交する方向である軸線Oに対して垂直方向に有底円筒状をなして延在している。ケーシング部本体821aは、ピン7が配置されている側に開口を向けて取り付けられている。
【0056】
ケーシングフランジ821bは、ケーシング部本体821aから径方向に環状に突出している。ケーシングフランジ821bは、ケーシング部本体821aの延在方向において本体部812よりもピン7側に近づいて配置されている。ケーシングフランジ821bには、円形状の孔部が本体部812に形成された孔部と対応する位置である周方向に等間隔に四カ所形成されている。
【0057】
ケーシング固定部821cは、ケーシングフランジ821bを本体部812に固定している。ケーシング固定部821cは、本実施形態では、ボルトが用いられる。ケーシング固定部821cであるボルトは、ケーシングフランジ821bに形成された孔部と本体部812に形成された孔部とを挿通するよう配置されている。
【0058】
ロッド部822は、ケーシング部821内に摺動可能に収容されて、軸線Oに対して垂直方向に移動してピン7を押すことが可能に支持されている。即ち、ロッド部822は、ピン7と接しながら軸線Oに対して垂直方向に移動することでピン7を押すように配置されている。ロッド部822は、ケーシング部本体821a内に収容されるロッド部本体822aと、軸線Oに対して垂直方向に移動した場合にピン7と接する押圧部822bとを有している。
【0059】
ロッド部本体822aは、ケーシング部本体821a内で軸線Oに対して垂直方向に移動可能に支持されている。ロッド部本体822aは、ケーシング部本体821aの延在方向に円柱状をなして延びて形成される。
押圧部822bは、ロッド部822の延在方向のピン7側の先端部分で、ロッド部822が油圧によって軸線Oに対して垂直方向である水平方向に移動した場合に、ピン7の受け部72と接する部分である。押圧部822bは、ロッド部本体822aと同軸を中心とする円板状をなしている。押圧部822bは、ロッド部822の延在方向のピン7側の先端部分で、ロッド部本体822aと一体に形成されている。
【0060】
取り付け部材83は、対向部52に座81を取り付けているボルト等である。本実施形態における取り付け部材83は、軸受装置5を構成する際に用いられる締結部材522を利用して、座81を第二の面521に固定している。具体的には、取り付け部材83は、座81を取り付けたい位置に対応する周方向に隣接する三カ所の対向部52の第二の穴521aに挿入されている締結部材522であるボルトを利用している。
【0061】
間隙保持手段84は、座81の固定部811と対向部52の第二の面521に形成された第一の加工面521bとの間に介在して配置されている。本実施形態における間隙保持手段84は、固定面811a及び第二の面521に直交する軸を中心とする円筒形状に形成されている。そして、間隙保持手段84は、間隙保持手段84の中空部分に取り付け部材83を挿通させて、固定面811aと第一の加工面521bとに挟まれて配置されている。そして、間隙保持手段84は、固定部811と第二の面521との間を離間させた状態で固定する。
【0062】
次に、上記構成の本実施形態のロータ回転治具6の作用について説明する。
上記のような実施形態のロータ回転治具6では、
図2から
図6に示すように、ステータの一部である軸受装置5の対向部52に押圧手段8を取り付ける。
押圧手段8の座81は、対向部52の第二の穴521aに取り付けられている締結部材522を取り付け部材83として利用することで取り付けられる。具体的には、ロータ回転治具6の座81を取り付ける位置に対応する周方向に隣接する三カ所の対向部52の第二の穴521aから、すでに取り付けられていた締結部材522であるボルトを抜き取る。その後、座81を配置後に、締結部材522であるボルトを座81の固定孔部811bに挿通させつつ、再び第二の穴521aに挿入する。これにより、締結部材522を取り付け部材83として利用して、座81を対向部52に固定している。
【0063】
この際、間隙保持手段84を固定面811aと第二の面521と間に配置して、円筒形状をなす間隙保持手段84の中空部分と固定孔部811bと第二の穴521aとの位置を合わせて取り付け部材83を挿通させる。これにより、座81は、間隙保持手段84を81と対向部52とで挟み込んだ状態となる。そのため、座81は、固定部811と対向部52の第二の面521とを離間した位置に固定される。
【0064】
座81を対向部52に固定した後に、座81にアクチュエータ82を取り付ける。アクチュエータ82のロッド部822がケーシング部821に完全に収容された状態で、座81の本体部812に形成された挿通孔にケーシング部本体821aが挿通される。ケーシング部本体821aは、ロッド部822が配置されている側が軸線O側を向いた状態で、ケーシングフランジ821bを本体部812に対して軸線O側に配置されるよう挿入される。ケーシングフランジ821bと本体部812とが接した状態で、ケーシングフランジ821b及び本体部812に形成された4カ所の孔部にケーシング固定部821cであるボルトを挿通させて、アクチュエータ82を座81に固定する。これにより、押圧手段8は対向部52に対して取り付けられる。
【0065】
押圧手段8を対向部52に取り付けた後に、ピン7を環状部24の第一の面240に回転摺動可能に取り付ける。ピン7は、ロッド部822のストローク方向に対応する位置の第一の穴240aに挿入されて取り付けられる。具体的には、ピン7は、ロッド部822が移動する軌道の延長上に位置する第一の穴240aに挿入部71を挿入して取り付けられる。挿入部71が第一の穴240aに挿入されると、第一の穴240aの周りに形成された凹部に鍔部73が接して、鍔部73は第一の穴240aに挿入されない。即ち、鍔部73の一部と受け部72とが、第一の面240から突出した状態で、ピン7は環状部24に取り付けられる。
【0066】
押圧手段8及びピン7を取り付けた後に、アクチュエータ82を駆動させる。アクチュエータ82は、油圧によってケーシング部821に収容されたロッド部822をストローク方向に移動させる。即ち、ロッド部822は、軸線Oに対して垂直方向である水平方向に向かって移動する。ロッド部822が水平方向に移動すると、ロッド部本体822aの先端部分の押圧部822bの頂面がピン7の受け部72と接触する。
【0067】
ここで、ピン7は、第一の穴240aに対して挿入部71が回転摺動することでピン7の軸線O2を中心として回転可能に取り付けられている。そのため、受け部72の受け面72aも挿入部71と一体となって回転する。したがって、受け面72aは、ロッド部822の移動する軸線Oに対して垂直方向である水平方向に向いた状態で、ロッド部822の押圧部822bの頂面と接触することができる。
【0068】
受け面72aにロッド部822の押圧部822bの頂面が面接触したまま、ロッド部822はさらにケーシング部821から飛び出すように水平方向に移動する。そのため、圧縮機ロータ22の接線方向でもある圧縮機ロータ22の周方向にピン7が押圧される。その結果、ピン7が挿入されている第一の穴240aを介して第一の面240が形成された環状部24も周方向に力を受ける。環状部24が受ける周方向の力により環状部24は軸線Oの周方向に回転し、圧縮機ロータ22が回転する。
【0069】
ここで、環状部24が回転すると、第一の面240の第一の穴240aに取り付けられているピン7も環状部24とともに軸線Oの周方向に回転する。即ち、ピン7は、アクチュエータ82のロッド部822の押圧部822bに対して、水平方向に移動しながら鉛直方向にも移動を開始する。ピン7は、挿入部71が回転することで、受け部72の受け面72aを水平方向に向けたまま軸線O回りを周方向に移動する。これにより、ピン7が移動を開始することで、ロッド部822の押圧部822bの頂面が鉛直方向にずれながらも、ピン7の受け面72aと面接触したままとなって、ピン7を押し続けている。その結果、環状部24を任意の回転角度だけ回転させて、環状部24と一体に形成されている圧縮機ロータ22を回転させている。
【0070】
アクチュエータ82がピン7を押圧する際に、ピン7が回転摺動可能に取り付けられているために、ロッド部822はピン7の軸線O2から外れないように受け部72を押圧している。これにより、ピン7の軸線O2を中心としてピン7を回転させずに、アクチュエータ82でピン7を押圧することができる。
【0071】
また、押圧手段8の位置を変更せずに圧縮機ロータ22を大きな回転角度で回転させる場合には、座81は移動させずにピン7を第一の穴240aから引き抜く。同時に、アクチュエータ82のロッド部822をケーシング部821に再び収容する。そして、ピン7を引き抜いた第一の穴240aとは異なる第一の穴240aにピン7を挿入する。具体的には、ロッド部822の押圧部822bのストローク方向と対応する位置に配置されている第一の穴240aにピン7を挿入して取り付ける。そして、油圧ジャッキであるアクチュエータ82を駆動させてロッド部822を移動させることで、さらに、環状部24を回転させて任意の回転角度だけ圧縮機ロータ22を回転させている。
【0072】
上記のようなロータ回転治具6によれば、ロータ回転治具6であるピン7と押圧手段8とを、環状部24に形成される第一の面240と対向部52に形成される第二の面521とが軸線O方向に対向することで形成される空間に配置することができる。即ち、ロータ回転治具6を圧縮機ロータ22や軸受装置5を覆う吸気ダクト21aのような部材が配置されていても、このような部材を撤去することなくピン7と押圧手段8とを設置することができる。これにより、ロータ回転治具6を設置する負担を軽減して、容易にピン7と押圧手段8とを圧縮機ロータ22に対して設置できるとともに、圧縮機ロータ22を外部から回転させることができる。
【0073】
そして、ピン7と押圧手段8とを第一の面240と第二の面521との対向する面同士の間に配置することで、互いに近接した位置にピン7と押圧手段8とを設置できる。加えて、ロータ回転治具6をピン7と押圧手段8とによって簡易に構成している。そのため、ロータ回転治具6自体を小さくすることができる。
【0074】
さらに、近接した位置にピン7と押圧手段8とを設置することで、押圧手段8がピン7を押圧するために必要なストローク量を小さくできる。また、圧縮機ロータ22を回転させる回転角度の微小なコントロールも容易になり、任意の回転角度で回転させることができる。これにより、圧縮機ロータ22を据え付ける場合等に、発電機側のロータ継手とロータ同士を固定する場合等の継手ボルトの位置合わせ等が容易になる。
【0075】
また、押圧手段8は、対向部52に形成される第二の面521に固定される座81と、座81に固定されるアクチュエータ82とに分けて構成されている。そのため、押圧手段8を対向部52に対して取り付けたり、取り外したりすることは容易となる。これにより、ロータ回転治具6によって、圧縮機ロータ22を回転させる作業を迅速に行うことができる。
【0076】
さらに、押圧手段8は、座81とアクチュエータ82とに分けて構成されていることで、それぞれを個別に取り換えることができ、故障した場合等の交換作業の負担を軽減できる。
【0077】
また、アクチュエータ82が座81の本体部812を介して第二の面521に固定されている。そのため、アクチュエータ82の本体部812に対する取り付け位置を調整することができ、ピン7に対する位置を容易に調整できる。即ち、ピン7を押圧しやすい位置となるようにピン7に対して近づけるようアクチュエータ82の位置を調整することができる。したがって、押圧手段8であるアクチュエータ82によってピン7を精度良く押圧することができ、圧縮機ロータ22を回転させる回転角度の微調整を容易に行うことができる。そして、アクチュエータ82とピン7との距離が近づくことで、よりロータ回転治具6自体を小さくすることができる。
【0078】
また、第二の面521に機械加工によって平滑に形成された第一の加工面521bに接して配置される間隙保持手段84によって、座81は第二の面521に対して離間して固定されている。これにより、第二の面521の表面形状によらず、座81をステータの一部である対向部52に確実に精度高く固定することができる。
【0079】
例えば、本実施形態のように軸受装置5の対向部52が鋳造によって製造されている場合、対向部52の表面は鋳肌面となっており、凹凸の大きい表面形状をしている。そのため、対向部52の表面に形成される第二の面521もざらついており、座81をそのまま固定しようとすると固定部811の固定面811aと第二の面521とが面接触せず、部分的に接触しているようながたついた状態で固定されてしまう場合がある。
【0080】
ところが、本実施形態においては、機械加工によって平滑に形成された第一の加工面521bを介して第二の面521に接する間隙保持手段84によって、第二の面521と固定面811aとを離間させて座81を固定している。即ち、本実施形態では、座81を第二の面521に対して離間させて、間隙保持手段84が対向部52と接するようにしている。そして、間隙保持手段84の接する部分だけ機械加工をして第一の加工面521bのように平滑にしている。そのため、第二の面521の表面形状に関わらず、座81を容易に対向部52に安定した状態で固定することができる。
【0081】
また、アクチュエータ82のロッド部822がピン7を押した場合に、座81の形状や姿勢を維持するよう第二の面521に接して支持する突出部814が座81に形成されている。ロッド部822がピン7を押した場合には、ピン7の反力により、座81の本体部812や固定部811にはねじれ変形を起こす向きに力が発生する。即ち、座81の固定部811が第二の面521に向かって変形するような力を受ける。しかし、突出部814が第二の加工面521cに接するため、座81の固定部811は安定して支持される。
【0082】
特に、本実施形態においては、第二の加工面521cが、第二の穴521aの位置よりも軸線Oの径方向外側に形成されている。さらに、第二の加工面521cが、アクチュエータ82のストローク方向において、アクチュエータ82と本体部812との固定位置を基準として、ピン7と反対側に形成されている。そして、第二の加工面521cに接する座81の突出部814も、第二の加工面521cが形成されている位置と対応する位置に配置される。即ち、座81の突出部814は、座81のアクチュエータ82と本体部812との固定している位置を挟んで、ピン7と反対側の位置であるピン7から離れた位置に形成されている。
【0083】
例えば、本実施形態においては、第二の穴521aを利用して取り付け部材83によって座81が固定されている。第二の穴521aは、第二の面521上の軸線Oを中心とする周方向に配置されているため、取り付け部材83も軸線Oを中心とする周方向の位置で座81を固定している。そのため、アクチュエータ82がロッド部822を移動させてピン7を押すと、アクチュエータ82のケーシング部821を固定している座81に、取り付け部材83を結ぶ直線を中心として座81を回転させるモーメントが発生する。
【0084】
ところが、ピン7が配置されている側と反対側に突出部814が形成されている。そのため、アクチュエータ82が移動したときの反力で座81の本体部812には、アクチュエータ82が移動した方向と反対の方向に座81を移動させようとする力が発生する。そして、座81の固定部811は第二の穴521aに固定されていることから、座81には、座81を第二の面521に向けて回転させる方向のモーメントが発生する。しかし、座81において、第二の穴521aの位置よりもロータ本体23の軸線Oの径方向外側に形成された第二の加工面521cに対して、座81の突出部814が接するため、座81の回転を防止することができる。即ち、取り付け部材83同士を結ぶ直線を中心として座81の固定部811を回転させる力が座81の固定部811に力がかかっても、突出部814が支持することにより、座81が変形することを防止できる。
【0085】
さらに、ピン7の軸線O2に対して平行であって平滑な受け面72aがピン7に形成されている。そのため、ピン7をアクチュエータ82によって押圧する場合に、ロッド部822の頂面と受け面72aとを面接触させて押圧することができる。これにより、ピン7の一部に負荷がかかって、ピン7が破損してしまうことを防止できる。
【0086】
また、ロッド部822の頂面と受け面72aとを面接触させて押圧することで、アクチュエータ82が押圧する力を、ピン7に精度高く伝達することできる。そのため、アクチュエータ82によってピン7を押圧する力の調整が容易となる。これにより、圧縮機ロータ22を回転させる回転角度の調整をより精度高く容易に行うことができる。
【0087】
さらに、アクチュエータ82は第二の面521に固定された状態であるので、アクチュエータ82によるピン7の押圧方向はある一点におけるロータ本体23の周方向若しくは接線方向の一定方向である。そして、受け面72aを有するピン7が押圧される向きは一定であるが、ピン7の挿入部71がロータ本体23の第一の穴240aに対して摺動回転するので、ロータ本体23が回転しても、ピン7の受け面72aをアクチュエータ82の押圧部822bに対して向けた状態で維持し続けることができる。ピン7の受け面72aをアクチュエータ82に対して向けた状態を維持したまま押せるので、圧縮機ロータ22をスムーズに回転させることができる。そのため、受け面72aを常にロッド部822の円盤状をなす押圧部822bの頂面に対向するよう周方向に向けたまま移動させることができる。そして、ロッド部822の頂面と受け面72aとを面接触させて押圧することで、ロッド部822が受け面72aを押圧する位置が中心からずれたとしても、ピン7の軸線O2から外れなければ、ピン7を押し続けて安定して圧縮機ロータ22を回転させることができる。
【0088】
また、ピン7の挿入部71は第一の穴240aに対して回転摺動する大きさであるため、第一の穴240aが形成される環状部24の第一の面240に対して容易にピン7を着脱させることができる。これにより、アクチュエータ82によってピン7を押圧して、圧縮機ロータ22を回転させた場合でも、ピン7を取り外して他の第一の穴240aに挿入することが容易となる。これにより、ピン7を異なる第一の穴240aに対して取り付けたり取り外したりすることで、圧縮機ロータ22を連続して任意の角度だけ回転させることができる。
【0089】
さらに、ピン7に鍔部73が形成されていることで、鍔部73によって第一の穴240aに対してピン7が深く挿入されすぎてしまうことを防止できる。そのため、受け部72を第一の面240に対して突出させる量を一定とすることができる。これにより、ピン7の受け面72aとアクチュエータ82における押圧部822bの頂面との位置を容易に調整することができる。
【0090】
また、鍔部73によって、アクチュエータ82によって押圧されるピン7が、押圧されている途中で、第一の穴240aに挿入されてしまい、ピン7の軸線O2に沿って受け面72aの位置がずれてしまうことを防止できる。
【0091】
さらに、第二の面521の第二の穴521aに挿入されていた締結部材522を取り付け部材83として利用して座81を固定する。そのため、既設の圧縮機ロータ22の周りのステータである軸受装置5に用いられているボルト等を取り付け部材83として利用することができる。これにより、座81を圧縮機ロータ22に固定するための取り付け部材83や固定用のねじ穴等を新たに設ける必要が無く、座81やアクチュエータ82をステータの一部である軸受装置5の対向部52に容易に固定することができる。
【0092】
次に、
図7から
図9を参照して第二実施形態のロータ回転治具6について説明する。
第二実施形態においては第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第二実施形態のロータ回転治具6は、ピン7の形状及び押圧手段8の構成について第一実施形態と相違する。
【0093】
即ち、
図7から
図9に示すように、ロータ回転治具6は、第一実施形態のピン7に対応する曲面ピン700と、押圧手段8に対応する外部押圧手段85と、を備えている。
曲面ピン700は、
図8及び
図9に示すように、第一実施形態と同様に、第一の面240に形成された第一の穴240aに挿入されて取り付けられている。具体的には、曲面ピン700は、第一実施形態と同様に第一の穴240aに挿入される挿入部71と、挿入部71と受け部72との間に形成される鍔部73とを有している。曲面ピン700は、受け部72についてピン7と相違し、曲面受け部720を有している。
【0094】
曲面受け部720は、環状部24の第一の面240から対向部52の第二の面521に向かって、挿入部71から突出している。本実施形態において曲面受け部720は、円柱状をなす部材からピン7の軸線O2に平行な平面を径方向外側から削りとった後に、この平面に沿って曲面ピン700の延在方向と直交する方向に対して一様な円弧断面をなすように削ることで、曲面受け面720aが形成されている。
【0095】
曲面受け面720aは、挿入部71の中心軸でもあるピン7の軸線O2の軸線方向と垂直、かつ、外部押圧手段85によって押圧される方向に垂直に形成された線分である母線が集合することにより、凹んで形成される曲面である。即ち、この母線は、曲面ピン700の軸線O2の軸線方向に垂直であって同一方向の線分である。より具体的には、曲面受け面720aは、曲面ピン700の軸線O2に平行な平面に対して、この平面に沿って曲面ピン700の延在方向と直交する方向に同一円弧断面をなすように形成されている。
【0096】
外部押圧手段85は、第一の面240と対向する対向部52の第二の面521ではなく、圧縮機ロータ22の周りの床や他の装置に設置されている。外部押圧手段85は、圧縮機ロータ22の周りに固定される外部ケーシング部851と、外部ケーシング部851の内部に収容されて軸線Oに対して垂直方向に移動可能とされる外部ロッド部852とを有している。外部押圧手段85は、第一実施形態と同様に、図示しない油圧ポンプと接続されており、駆動することで作動油が送り込まれ、油圧によって外部ロッド部852を外部ケーシング部851の延在方向である軸線Oに対して垂直方向に移動可能とされている。
【0097】
外部ケーシング部851は、外部押圧手段85のシリンダを構成する外装部材である。外部ケーシング部851は、第一実施形態のケーシング部821と同様の構成をなしているが、固定されている位置について相違している。即ち、外部ケーシング部851は、不図示の圧縮機ロータ22の周りの床や他の装置に設置されている。
【0098】
外部ロッド部852は、外部ケーシング部851内に摺動可能に収容されて、軸線Oに対して垂直方向に移動してピン7を押すことが可能に支持されている。即ち、外部ロッド部852は、ピン7と接しながら軸線Oに対して垂直方向に移動することでピン7を押すように配置されている。外部ロッド部852は、軸線Oに対して垂直方向に移動した場合にピン7と接する曲面押圧部852aを有している。
【0099】
曲面押圧部852aは、
図8及び
図9に示すように、外部ロッド部852の延在方向のピン7側の先端部分で、外部ロッド部852が油圧によって軸線Oに対して垂直方向である圧縮機ロータ22の周方向に移動した場合に、曲面ピン700と接する部分である。曲面押圧部852aは、第一実施形態の押圧部822bとは形状が異なっている。曲面押圧部852aは、曲面受け部720と接する面が、曲面受け面720aの形状に沿う様に形成されている。即ち、曲面押圧部852aは、外部押圧手段85によって曲面ピン700を押圧する方向である外部ロッド部852の移動する方向とピン7の軸線O2の軸線方向とを含む面による断面形状が半円状をなすような柱状に形成されている。
【0100】
上記のような曲面ピン700を有するロータ回転治具6によれば、外部押圧手段85の外部ケーシング部851に収容された外部ロッド部852が移動する方向と垂直であってピン7の軸線O2に対して垂直な母線の集合によって形成される曲面受け面720aが曲面受け部720から凹んで形成されている。そして、曲面押圧部852aは、曲面受け面720aと対応する形状で形成されている。そのため、曲面押圧部852aが移動して曲面受け面720aと接すると、曲面押圧部852aは曲面受け面720aにはまり込んだ状態となる。したがって、曲面押圧部852aは曲面ピン700の軸線O2の軸線方向の動きを規制する。つまり、外部押圧手段85によって曲面ピン700を押圧する場合に、一度曲面受け部720が押圧される位置が決定されると、曲面ピン700の軸線O2の軸線方向に曲面ピン700がずれることを防止できる。そのため、曲面ピン700が外部押圧手段85によって押圧されている時に、曲面ピン700が環状部24の第一の穴240aから不意に脱落してしまうことを防止できる。これにより、ピン7を押し続けてより一層安定して圧縮機ロータ22を回転させることができる。
【0101】
さらに、曲面ピン700を外部押圧手段85によって押圧する場合に、外部ロッド部852の曲面押圧部852aの頂面と曲面受け面720aとを対応する形状とすることで、面接触させて押圧することができる。これにより、曲面ピン700の一部に負荷がかかって、曲面ピン700が破損してしまうことを防止できる。
【0102】
また、曲面押圧部852aの頂面と曲面受け面720aとを対応する形状とすることで、面接触させて押圧することで、外部押圧手段85が押圧する力を、曲面ピン700に精度高く伝達することできる。そのため、外部押圧手段85によって曲面ピン700を押圧する力の調整が容易となる。これにより、圧縮機ロータ22を回転させる回転角度の調整をより精度高く容易に行うことができる。
【0103】
さらに、外部押圧手段85は外部に固定された状態であるので、外部押圧手段85による曲面ピン700の押圧方向はある一点におけるロータ本体23の周方向若しくは接線方向の一定方向である。そして、曲面受け面720aを有する曲面ピン700が押圧される向きは一定であるが、曲面ピン700の挿入部71がロータ本体23の第一の穴240aに対して摺動回転するので、ロータ本体23が回転しても、曲面ピン700の曲面受け面720aを外部押圧手段85の曲面押圧部852aに対して向けた状態で維持し続けることができる。曲面ピン700の曲面受け面720aを外部押圧手段85に対して向けた状態を維持したまま押せるので、圧縮機ロータ22をスムーズに回転させることができる。即ち、曲面受け面720aが曲面ピン700の軸線O2を中心として回転すると同時に、その曲面受け面720aが形成される曲面ピン700も圧縮機ロータ22とともに軸線Oを中心として周方向に回転する。そのため、曲面受け面720aを常に外部ロッド部852の曲面押圧部852aの頂面に対向するよう周方向に向けたまま移動させることができる。そして、曲面押圧部852aの頂面と曲面受け面720aとを面接触させて押圧することで、外部ロッド部852が曲面受け面720aを押圧する位置が中心からずれても、曲面ピン700の軸線O2から外れなければ、曲面ピン700を押し続けて安定して圧縮機ロータ22を回転させることができる。
【0104】
また、曲面ピン700が第一の穴240aに回転摺動する挿入部71を有することで曲面ピン700を環状部24の第一の面240に対して容易に着脱させることができる。これにより、外部押圧手段85によって曲面ピン700を押圧して、圧縮機ロータ22を回転させた場合でも、曲面ピン700を取り外して他の第一の穴240aに挿入することが容易となる。これにより、曲面ピン700を異なる第一の穴240aに対して取り付けたり取り外したりすることで、連続して圧縮機ロータ22を容易に回転させることができる。
【0105】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、第一実施形態の変形例である第一変形例として、ピン7の受け部72に凹部が複数形成されていてもよい。
即ち、第一変形例は、
図10に示すように、受け面72aに窪み穴72cが複数形成される第一変形ピン7bであってもよい。
第一変形ピン7bは、受け面72aに複数の凹部である窪み穴72cが形成された第一変形受け部72bを有している。
窪み穴72cは、受け面72aから半球状をなして窪んで複数形成されている。
【0106】
このような第一変形例の第一変形ピン7bを有するロータ回転治具6によれば、第一変形受け部72bに窪み穴72cが複数形成されていることで、第一変形受け部72bを軽量化して第一変形ピン7bの重量を抑えることができる。
【0107】
また、第二実施形態の変形例である第二変形例として、曲面ピン700の曲面受け面720aが、曲面ではなく、V字状をなして凹んで形成されていてもよい。
即ち、第二変形例は、
図11に示すように、曲面受け面720aの代わりにV字状に凹む第二変形受け面721aが形成される第二変形受け部721を有する第二変形ピン701であってもよい。
【0108】
第二変形受け面721aは、第二変形ピン701の軸線O2と垂直、かつ、外部押圧手段85によって押圧される方向と垂直に形成された母線が集まる二つの面がよって凹んで形成される。より具体的には、第二変形受け面721aは、第二変形ピン701の軸線O2に平行な平面に対して、この平面に沿って曲面ピン700の延在方向と直交する方向、即ち、外部押圧手段85によって押圧される方向にV字状断面で凹んで形成されている。
なお、第二変形例では、第二実施形態における曲面押圧部852aも、第二変形受け面721aの形状に合わせて頂面の形状が形成された第二変形押圧部862aを用いている。
【0109】
このような第二変形例の第二変形ピン701を有するロータ回転治具6によれば、曲面ピン700と同様の作用効果を奏することができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【0111】
なお、第一の面240は、圧縮機ロータ22に設けられる環状部24に形成されていることに限定されるものでない。例えば、環状部24と同様の形状に形成されるフランジ部等を備えていても良い。フランジ部としては、例えば、圧縮機ロータ22の環状部24が形成されていない側の端部と、タービンロータ42の端部とにおいてそれぞれ突出するフランジが合わされることで構成することができる。そして、このフランジ部に第一の面240が形成されていても良い。
また、ステータとしては、軸受装置5に限定されるものではなく、例えば、圧縮機2の圧縮機ケーシング21や、タービン4のタービンケーシング41等を利用しても良い。
【0112】
また、受け面72aの形状は、第一実施形態のように平坦な面や、第二実施形態の曲面受け面720aのように曲面や、第一変形例の凹部が形成された面、及び第二変形例のようにV字状の面に限定されるものではなく、ピンの軸線O2に対して平行な成分を有する面であればよい。例えば、受け面72aは、表面に複数の凹部又は凸部が形成され、アクチュエータを受けることができるものであってもよい。
さらに、ロッド部822の移動する方向である軸線Oに対して垂直方向とは、水平方向に限定されるものではなく、軸線Oの径方向に対して直交する方向である圧縮機ロータ22の垂線方向や、軸線Oを通過して直交する方向であってもよい。即ち、圧縮機ロータ22等のロータの周方向である接線方向であればよい。なお、ここでいうロータの周方向とは、多少のずれが許容されピン7が押圧されることで、ロータを回転させることが可能な方向であればよい。
また、ロータ回転治具6は、ロータとして圧縮機ロータ22単体を回転させることに限定されるものではない。例えば、圧縮機ロータ22が、発電機ロータ11やタービンロータ42と環状部24のような継手部で接続されている場合、これらの他のロータと接続させたまま、全てのロータを一体として回転させてもよい。