【実施例】
【0010】
図1〜
図4は、この発明の実施例を示すものである。
図1において、車両等に搭載される内燃機関1は、シリンダブロック2にシリンダヘッド3を搭載して複数の燃焼室4を形成し、各燃焼室4に連通する吸気ポート5及び排気ポート6を形成している。吸気ポート5及び排気ポート6は、シリンダヘッド3のシリンダ中心線C1を挟んで両側にそれぞれ形成している。
吸気ポート5及び排気ポート6は、燃焼室4側を分岐して、それぞれ2つの吸気開口7及び排気開口8により燃焼室7に連通している。内燃機関1は、シリンダ中心線C1方向と直交する方向であって、吸気ポート5が形成された側を吸気側、排気ポート6が形成された側を排気側とする。
シリンダヘッド3は、吸気側の吸気ポート5の上部に吸気側上壁部9を設け、排気側の排気ポート6の上部に排気側上壁部10を設け、吸気側上壁部9と排気側上壁部10との間に中央側上壁部11を設けている。吸気側上壁部9には、吸気ポート5に貫通する吸気バルブ貫通孔12を形成し、吸気バルブガイド13を取り付けている。排気側上壁部10には、排気ポート6に貫通する排気バルブ貫通孔14を形成し、排気バルブガイド15を取り付けている。
【0011】
前記シリンダヘッド3には、吸気ポート5の2つの吸気開口7及び排気ポート6の2つの排気開口8をそれぞれ開閉するために、1気筒当たり2個の吸気バルブ16及び排気バルブ17を設けている。吸気バルブ16及び排気バルブ17は、シリンダヘッド3のシリンダ中心線C1を挟んで両側(シリンダヘッド3の吸気側及び排気側)に配置している。
吸気バルブ16は、吸気開口7に接離される吸気バルブ弁体18と、吸気バルブ弁体18に一端側を連結されて前記吸気バルブガイド13に往復動可能に支持された吸気バルブ軸19とを備えている。排気バルブ17は、排気開口8に接離される排気バルブ弁体20と、排気バルブ弁体20に一端側を連結されて前記排気バルブガイド15に往復動可能に支持された排気バルブ軸21とを備えている。
吸気バルブ16は、吸気バルブ軸線C2がシリンダ中心線C1に対して所定の角度θ1で傾くように配置している。排気バルブ17は、排気バルブ軸線C3がシリンダ中心線C1に対して所定の角度θ2で傾くように配置している。
【0012】
前記吸気バルブ16は、吸気バルブガイド13の上端から上方に突出された吸気バルブ軸19の他端側に吸気バルブスプリング22を取り付けている。吸気バルブスプリング22は、吸気バルブ軸19の上端側にコッタ23で取り付けられたリテーナ24に上端を支持され、吸気バルブガイド13の上部周囲の吸気側上壁部9に形成した受け座25に下端を支持され、吸気バルブ16を閉弁方向に弾性付勢する。
前記排気バルブ17は、排気バルブガイド15の上端から上方に突出された排気バルブ軸21の他端側に排気バルブスプリング26を取り付けている。排気バルブスプリング26は、排気バルブ軸21の上端側にコッタ27で取り付けられたリテーナ28に上端を支持され、排気バルブガイド15の上部周囲の排気側上壁部10に形成した受け座29に下端を支持され、排気バルブ17を閉弁方向に弾性付勢する。
【0013】
前記シリンダヘッド3には、吸気バルブ16及び排気バルブ17をそれぞれ開閉駆動するために、吸気ロッカーアーム30及び排気ロッカーアーム31を吸気バルブ16及び排気バルブ17の上方に配置している。
前記吸気ロッカーアーム30は、長手方向一側に支点側端部32を備え、長手方向中央にローラ33を備え、長手方向他側に揺動側端部34を備えている。吸気ロッカーアーム30は、支点側端部32を吸気バルブ16に対して排気バルブ17と反対側に配置し、揺動側端部34を吸気バルブ軸19の上方に配置している。吸気ロッカーアーム30は、支点側端部32よりも揺動側端部34が高くなるように、シリンダヘッド3の吸気側から排気側に向かい斜め上方に向かう姿勢で配置している。シリンダヘッド3には、支点側端部32の下方の吸気側上壁部9に吸気側埋設孔35を形成し、支点側端部32を支持する支持部材として油圧式の吸気ラッシュアジャスタ36の基端を埋設している。
吸気ロッカアーム30は、支点側端部32を吸気ラッシュアジャスタ36の先端部に当接して支持され、ローラ33に後述する吸気カム46を当接し、揺動側端部34を吸気バルブ軸19の上端面に当接している。吸気ロッカーアーム30は、長手方向一側の支点側端部32を中心として、長手方向中央のローラ33に吸気カム46から伝達される駆動力により長手方向他側の揺動側端部34を揺動され、吸気バルブ16を開閉駆動する。
前記シリンダヘッド3には、吸気ロッカーアーム30の下方に吸気ポート5を配置している。また、シリンダヘッド3に形成された吸気ポート5と吸気ラッシュアジャスタ36との間には、インジェクタ37を配置している。インジェクタ37は、吸気ポート5に連通する取付孔38に燃焼室4に向けて取り付けられている。
【0014】
前記排気ロッカーアーム31は、長手方向一側に支点側端部39を備え、長手方向中央にローラ40を備え、長手方向他側に揺動側端部41を備えている。排気ロッカーアーム31は、支点側端部39を排気バルブ16及び排気バルブ17の間に配置し、揺動側端部41を排気バルブ軸21の上方に配置している。排気ロッカーアーム31は、支点側端部39よりも揺動側端部41が低くなるように、シリンダヘッド3の吸気側から排気側に向かい斜め下方に向かう姿勢で配置している。シリンダヘッド3には、支点側端部39の下方の中央側上壁部11に排気側埋設孔42を形成し、支点側端部39を支持する支持部材として油圧式の排気ラッシュアジャスタ43の基端を埋設している。
排気ロッカアーム31は、支点側端部39を排気ラッシュアジャスタ43の先端部に当接して支持され、ローラ40に後述する排気カム47を当接し、揺動側端部41を排気バルブ軸21の上端面に当接している。吸気ロッカーアーム31は、長手方向一側の支点側端部39を中心として、長手方向中央のローラ40に排気カム47から伝達される駆動力により長手方向他側の揺動側端部41を揺動され、排気バルブ17を開閉駆動する。
【0015】
前記内燃機関1は、吸気ロッカーアーム30を支点側端部32よりも揺動側端部34が高くなるように配置し、排気ロッカーアーム31を支点側端部39よりも揺動側端部41が低くなるように配置したことで、
図2に示すように、吸気バルブ軸19は排気バルブ軸21よりも長さAだけ長くなっている。
この場合、
図3に示すように、吸気バルブスプリング22の取付け長さL1と排気バルブスプリング26の取付け長さL2とが同じ長さであると、吸気バルブ軸19の上端面から吸気バルブスプリング22上端までの距離(バルブ軸突出長さ)D1が排気バルブ軸21の上端面から排気バルブスプリング26上端までの距離(バルブ軸突出長さ)D2よりも長くなるため、
図4(B)に示すように、組み付け時に吸気ロッカーアーム30が傾いて吸気バルブ軸19から脱落するおそれがある。
そこで、
図1に示すように、内燃機関1は、コッタ23とリテーナ24との取付位置を吸気バルブ軸19の上端面側に移動させることで、吸気バルブ軸19の上端面から吸気バルブスプリング22上端までの距離D1と、排気バルブ軸21の上端面から排気バルブスプリング26上端までの距離D2とを、略同一にしている。また、内燃機関1は、吸気バルブスプリング22の取付け長さL1を、排気バルブスプリング26の取付け長さL2よりも大きくしている。
【0016】
前記シリンダヘッド3には、吸気ロッカーアーム30及び排気ロッカーアーム31を揺動させて吸気バルブ16及び排気バルブ17を開閉駆動するために、吸気カム軸44及び排気カム軸45をそれぞれ吸気ロッカーアーム30及び排気ロッカーアーム31の上方に配置している。
吸気カム軸44は、吸気ロッカーアーム30のローラ33に当接されて駆動力を伝える吸気カム46を備えている。排気カム軸45は、排気ロッカーアーム31のローラ40に当接されて駆動力を伝える吸気カム47を備えている。
シリンダヘッド3は、燃焼室4側にシリンダ中心線C1と直交する燃焼室側デッキ面48を備え、吸気カム軸44及び排気カム軸45が配置される側にカム軸側デッキ面49を備えている。
この内燃機関1は、シリンダヘッド3を吸気カム軸44及び排気カム軸45の各カム軸線方C4・C5向から見た場合、吸気カム軸44及び排気カム軸45の各カム軸線C4・C5を含むカム軸側デッキ面49が、シリンダヘッド3のシリンダ中心線C1と直交する燃焼室側デッキ面48と平行になるように形成している。
吸気カム軸44は、カム軸側デッキ面49に吸気ハウジング取付ボルト50で取り付けられた吸気カム軸ハウジング51により回転可能に支持される。排気カム軸45は、カム軸側デッキ面49に排気ハウジング取付ボルト52で取り付けられた排気カム軸ハウジング53により回転可能に支持される。
【0017】
このように、この内燃機関1は、排気ロッカーアーム31の支点側端部39を吸気バルブ16及び排気バルブ17の間に配置したことで、支点側端部39を支持する支持部材である排気ラッシュアジャスタ43を排気ポート6から離して設けることができる。このため、この内燃機関1は、排気ラッシュアジャスタ43と排気ポート6との間に熱伝達を緩和するウォータジャケットを配置する必要がなくなり、排気ポート6周辺のウォータジャケットの構造を簡素化でき、シリンダヘッド3の構造を簡素化できる。
また、この内燃機関1は、吸気ロッカーアーム30の支点側端部32を吸気バルブ16に対して排気バルブ17と反対側に配置し、排気ロッカーアーム31の支点側端部39を吸気バルブ16及び排気バルブ17の間に配置し、吸気カム軸44及び排気カム軸45の各カム軸線C4・C5を含むシリンダヘッド3のカム軸側デッキ面49が燃焼室側デッキ面48と平行になるように形成し、シリンダヘッド3には吸気ロッカーアームの下方に吸気ポート5を配置し、吸気バルブ16及び排気バルブ17の各バルブ軸線C2・C3がシリンダ中心線C1に対して所定の角度θ1・θ2で傾くように吸気バルブ16及び排気バルブ17を配置したことで、吸気バルブ軸19が排気バルブ軸21より長くなるため、吸気ロッカーアーム30の位置も上方となり、その下方に配置される吸気ポート5の形状の自由度を大きくすることができる。
よって、この内燃機関1は、燃焼室4の上方から燃焼室4に向かい略直線形状の吸気ポート5を形成することが可能になり、曲率の小さな曲がりが少ない形状の吸気ポート5によって吸気抵抗を減らすことができる。
【0018】
また、この内燃機関1は、少なくとも吸気ロッカーアーム30の支点側端部32をシリンダヘッド3に埋設した吸気ラッシュアジャスタ36の先端部に当接し、シリンダヘッド3に形成された吸気ポート5と吸気ラッシュアジャスタ36との間にインジェクタ37を配置している。
これにより、この内燃機関1は、吸気バルブ軸19が長く吸気ロッカーアーム30の位置が上方となっており、吸気ラッシュアジャスタ36の基端を上方に配置することができるで、前述のような吸気ポート5の配置の自由度を確保しつつ、インジェクタ37をより吸気ポート5及び燃焼室4に近づけて配置することができ、インジェクタ37により噴射されて霧化した燃料の壁面への付着を抑制することができる。
【0019】
さらに、この内燃機関1は、吸気バルブ軸19が排気バルブ軸21よりも長くなっており、この吸気バルブ軸19の上端面から吸気バルブスプリング22上端までの距離D1と排気バルブ軸21の上端面から排気バルブスプリング26上端までの距離D2とを略同一にし、かつ、コッタ23とリテーナ24との取付位置を吸気バルブ軸19の上端面側に移動させ、吸気バルブスプリング22の取付け長さL1を排気バルブスプリング26の取付け長さL2よりも大きくしたことで、吸気バルブスプリング22上端のリテーナ24に吸気ロッカーアーム30の揺動側端部31を近接させて配置することができる。
これにより、この内燃機関1は、吸気バルブ軸19の上端面に吸気ロッカーアーム30の揺動側端部31を当接させた状態で組付けを行う際に、
図4(A)に示すように、吸気ロッカーアーム30の傾きを吸気バルブスプリング22上端を支持するリテーナ24で受けて抑制することができ、吸気カム軸44の組付けまでに吸気ロッカーアーム30が吸気バルブ軸19の上端面から脱落することを防止できる。
また、この内燃機関1は、
吸気バルブスプリング22上端を支持するリテーナ24を吸気バルブ軸19の上端面側に移動させたことで、吸気バルブ軸19の上端面から
吸気バルブスプリング22上端までの距離D1が短くなるため、吸気バルブスプリング22上端を吸気バルブ軸19に固定するコッタ23及びリテーナ24の自動組み付け設備費用の増加と組付性の悪化を防ぐことができる。