(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236746
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】電圧変換回路、ストロボ装置、撮影装置およびサージ電圧低減方法
(51)【国際特許分類】
G03B 15/05 20060101AFI20171120BHJP
G03B 15/02 20060101ALI20171120BHJP
G03B 15/03 20060101ALI20171120BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20171120BHJP
H05B 41/32 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
G03B15/05
G03B15/02 Z
G03B15/03 X
H04N5/225 600
H05B41/32
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-29989(P2014-29989)
(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公開番号】特開2015-155935(P2015-155935A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2017年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】311015207
【氏名又は名称】リコーイメージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100183760
【弁理士】
【氏名又は名称】山鹿 宗貴
(72)【発明者】
【氏名】垣内 伸一
【審査官】
渡邉 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−196402(JP,A)
【文献】
特開平11−055944(JP,A)
【文献】
特開平06−302390(JP,A)
【文献】
特開2000−321633(JP,A)
【文献】
特開平07−288975(JP,A)
【文献】
特開平04−368464(JP,A)
【文献】
特開2005−317278(JP,A)
【文献】
米国特許第3969737(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 15/00 − 15/16
H04N 5/222− 5/257
H05B 41/30 − 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側電磁誘導素子に入力される電圧を電磁誘導を利用して変換して二次側電磁誘導素子から出力する電圧変換素子と、
前記一次側電磁誘導素子に接続された電圧平滑用の容量素子と、
前記一次側電磁誘導素子への電流の流入と遮断を行う電路開閉手段と、
前記電路開閉手段による前記電流の遮断時に、該電路開閉手段に瞬間的に定常状態を超えて生じるサージ電圧を低減するために、前記二次側電磁誘導素子から前記電路開閉手段に電荷を伝達するための還流手段と、
を備えることを特徴とする電圧変換回路。
【請求項2】
前記還流手段は、前記二次側電磁誘導素子の両端を接続するように設けられることを特徴とする、
請求項1に記載の電圧変換回路。
【請求項3】
前記還流手段は、前記二次側電磁誘導素子と前記一次側電磁誘導素子を接続するように設けられることを特徴とする、
請求項1に記載の電圧変換回路。
【請求項4】
前記還流手段は、容量素子であることを特徴とする、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電圧変換回路。
【請求項5】
前記容量素子の容量は、前記電路開閉手段の寄生容量とほぼ等しいことを特徴とする、
請求項4に記載の電圧変換回路。
【請求項6】
前記電路開閉手段に生じる発熱を抑えたまま、前記電路開閉手段の動作周波数を相対的におよそ5倍から10倍程度に増加させ、周辺回路に与える電磁界ノイズを目立たなくすることが可能な、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電圧変換回路。
【請求項7】
前記電路開閉手段に生じる発熱を抑えたまま、前記電路開閉手段の単位電路開閉周期一回あたりの転送電流量を相対的におよそ1/5倍から1/10倍程度に減少させ、周辺回路に与える電磁界ノイズを減少することが可能な、
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の電圧変換回路。
【請求項8】
前記電路開閉手段に生じる発熱を抑えたまま、前記一次側電磁誘導素子に流入する電流の流入速度を相対的におよそ5倍から10倍程度に増加させ、前記電圧変換素子として、一次側電磁誘導素子の電磁誘導係数の比較的小さな小型軽量の電圧変換素子を用いることが可能な、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電圧変換回路。
【請求項9】
前記電路開閉手段に生じる発熱を抑えたまま、前記電圧変換回路全体の部品体積を相対的におよそ1/5倍から1/10倍程度に減少させ、コストダウンと小型軽量化を実現することが可能な、
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電圧変換回路。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の電圧変換回路と、
前記電圧変換回路に電圧を供給する電源供給手段と、
前記電圧変換回路の出力を整流する整流素子と、
前記整流素子からの出力によって充電される蓄電素子と、
前記蓄電素子に充電された電圧によって発光する発光手段と、
を備えることを特徴とするストロボ装置。
【請求項11】
請求項10に記載のストロボ装置を備えることを特徴とする撮影装置。
【請求項12】
電圧変換回路におけるサージ電圧を低減する方法であって、
電路開閉手段により、一次側電磁誘導素子に入力される電圧を電磁誘導を利用して変換して二次側電磁誘導素子から出力する電圧変換素子の該一次側電磁誘導素子への電流の流入と遮断を行うステップと、
前記電路開閉手段による前記電流の遮断時に、該電路開閉手段に瞬間的に定常状態を超えて生じるサージ電圧を低減するために、前記二次側電磁誘導素子から前記一次側電磁誘導素子に電荷を伝達するステップと、
を含み、
前記電路開閉手段の動作周波数を相対的におよそ5倍から10倍程度に増加させることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される電圧を変換する電圧変換回路、該電圧変換回路を備えるストロボ装置、該ストロボ装置を備える撮影装置、および電圧変換回路におけるサージ電圧低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カメラなどの照明装置として、昇圧トランスおよびスイッチング素子からなる昇圧回路、コンデンサ、ならびにキセノン管を備えるストロボ装置が用いられる。近年、カメラの小型化により、ストロボ装置に対しても小型化の要望が高まっている。ストロボ装置の昇圧トランスは、昇圧比が15〜30倍と大きいにもかかわらず、スイッチング周波数が2k〜100kHzと低く、一次側のインダクタンスを少なくとも10μ〜20μH程度確保しておかないと、スイッチング開始時の突入電流を制御可能な領域で推移することが難しい。このような一次側のインダクタンスを確保するために、一次側の巻き数を15巻程度とすると、二次側の巻き数が225〜450巻に増え、トランスの寸法が大きくなってしまう。もし、昇圧トランスを小型化するために、使用する巻き線材の直径を細くすると、断面積が減り、直流抵抗成分が大きくなる。しかし、コンデンサの充電は、規定の時間内で行わなければならないため、充電開始から充電完了までの通電電流量を小さくすることはできない。そのため、銅損による発熱が増加し、昇圧トランス自体が高温になり、磁気飽和を誘発して昇圧効率が悪くなることがある。また、畜熱によってコイルの絶縁被膜が溶けて内部ショートを起こし、昇圧トランスとしての機能を果たさなくなる恐れもある。このように、ストロボ装置の小型化を行うためには、昇圧トランスの発熱による不具合を防ぐことも重要なポイントとなる。
【0003】
また、昨今のカメラにおいて、静止画撮影と動画撮影の両方の機能を併せ持ち、光学ファインダーの代わりに映像表示用液晶表示装置を用いて動画を常時表示し続けることが標準動作となっていることが多い。動画を常時表示しないときは、ストロボ装置のコンデンサへの充電動作とその他の機能を排他的に動作させていたのに対して、動画を常時表示する場合は、動画表示とストロボ装置のコンデンサの充電動作を同時に動作する必要がある。この場合に生じる問題としては、充電時の大きなスイッチング電流によって、昇圧トランスから漏れ出す磁気ノイズが磁気の影響を受け易い回路に影響を与えて動画表示にノイズを重畳させることが考えられる。また、実際に電源ラインに大きな電流リップルを生じさせるため、それが電子回路の電源入力やGNDを不安定にし、ノイズとして回路全体に影響を与える可能性もある。
【0004】
上記のような問題を解決する方法として、スイッチング周波数を高くして一回当たりの通電電流量を小さくし、単位時間当たりの転送回数を増やす方法が知られている。これをストロボ装置に適用すると、スイッチング周波数を300kHz〜1MHzと高くすることで一次側のインダクタンスを少なくとも0.5μ〜1μH程度と低くすることができる。そのため、一次側が5巻程度となり、二次側の巻き数も75〜150巻へと減らすことができ、昇圧トランスを小型化することができる。また、巻き数が減ることにより、小型化とともに巻き線材の直径を太くできるため、銅損による発熱も低く抑えることができる。さらに、一回当たりのスイッチングの通電電流量を減らしているため、昇圧トランスの周辺部品である整流ダイオードやスイッチング素子の小型化も同時に行うことができ、ストロボ装置全体のコストダウン効果も見込めることになる。
【0005】
しかしながら、ある程度以上昇圧トランスを小型化し、一次側の巻き数を減らしていくと、コアを構成しているフェライトなど磁気回路部分との結合が疎になるため、一次側コイルの漏れ磁束が相対的に大きくなり、回路に様々な影響を及ぼすことがある。特許文献1では、ストロボ装置において、漏れ磁束による影響を考慮して、コンデンサの充電電圧を検出する技術が提案されている。特許文献1に記載されるストロボ装置は、昇圧の際にトランスの一次側に誘起された一次電圧を分圧抵抗によって検出し、検出した一次電圧に基づいてコンデンサの充電が完了したか否かを判別する。このとき、一次側の漏れ磁束によるノイズの影響を低減するため、ノイズが少なくなる所定時間後に一次電圧をラッチする構成とすることで、コンデンサの電圧を正確に検出するとともに、ストロボ装置を小型で安価な構成で実現することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−317278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に記載されるようなストロボ装置において、小型化のためにスイッチング素子に高速スイッチングタイプを用いた場合、当該スイッチング素子の寄生容量Cdsは比較的小さなものとなる。そのため、スイッチング素子のOFF時に、一次側コイルの漏れインダクタンスによって一次側に発生するサージ電圧がさらに大きくなり、一次側コイルに接続されるスイッチング素子自体の破壊を誘発する恐れがある。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、装置の小型化を実現するとともに、サージ電圧によるスイッチング素子の破壊を防ぐことが可能な電圧変換回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る電圧変換回路は、一次側に入力される電圧を変換して二次側から出力するトランスと、トランスの一次側の通電をON/OFFするためのスイッチング手段と、スイッチング手段のOFF時に、該スイッチング手段に生じるサージ電圧を低減するために、トランスの二次側から一次側に電荷を伝達するためのバイパス手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成とすることにより、バイパス手段によってトランスの二次側から一次側に電流を流すことで、スイッチング手段に流れる電流パルスを相殺し、サージ電圧を低減することができる。これにより、スイッチング手段の破壊を防ぎ、安全に装置の小型化を実現することが可能となる。
【0011】
また、上記バイパス手段は、トランスの二次側ホット端子と二次側コールド端子とを接続するように設けられても良い。または、上記バイパス手段は、昇圧トランスの二次側ホット端子と一次側ホット端子を接続するように設けられても良い。
【0012】
また、上記バイパス手段は、コンデンサであっても良い。さらに、該コンデンサの容量は、スイッチング手段の寄生容量とほぼ等しいものであっても良い。
【0013】
また、上記スイッチング手段の発熱を抑えたまま、スイッチング手段の動作周波数を相対的におよそ5倍〜10倍程度に増加させ、周辺回路に与える電磁界ノイズを目立たなくすることが可能である。
【0014】
また、上記スイッチング手段の発熱を抑えたまま、スイッチング手段の単位スイッチング周期一回あたりの転送電流量を相対的におよそ1/5倍〜1/10倍程度に減少させ、周辺回路に与える電磁界ノイズを減少することが可能である。
【0015】
また、上記スイッチング手段の発熱を抑えたまま、トランスの一次側に流入する電流の流入速度を相対的におよそ5倍〜10倍程度に増加させ、トランスとして、一次側インダクタンスの小さな小型軽量のトランスを用いることが可能である。
【0016】
また、上記スイッチング手段の発熱を抑えたまま、電圧変換回路全体の部品体積を相対的におよそ1/5倍〜1/10倍程度に減少させ、コストダウンと小型軽量化を実現することが可能である。
【0017】
また、本発明の実施形態に係るストロボ装置は、上記いずれかの電圧変換回路と、電圧変換回路に電圧を供給する電源供給手段と、電圧変換回路によって充電されるコンデンサと、コンデンサに充電された電圧によって発光する発光手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の実施形態に係る撮影装置は、上記ストロボ装置を備えることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の実施形態に係る、電圧変換回路におけるサージ電圧を低減する方法は、一次側に入力する電圧を変換して二次側から出力するトランスを、スイッチング手段によってON/OFFするステップと、スイッチング手段のOFF時に、該スイッチング手段に生じるサージ電圧を低減するために、トランスの二次側から一次側に電荷を伝達するステップと、を含み、スイッチング手段の動作周波数を相対的におよそ5倍〜10倍程度に増加させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電圧変換回路によれば、トランスの一次側の漏れインダクタンスおよびスイッチング手段の寄生容量を含む回路上の分布容量によって生じるスイッチOFF時のサージ電圧を低減し、安全に回路の小型化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明のストロボ装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明のストロボ装置における発光処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態のストロボ装置の回路図である。
【
図5】
図5は、本発明の第二実施形態のストロボ装置の回路図である。
【
図6】
図6は、ストロボ装置の動作波形図である。
図6(a)は、従来例のストロボ装置の動作波形を示し、
図6(b)は、本発明の第一実施形態のストロボ装置の動作波形を示し、
図6(c)は、本発明の第二実施形態のストロボ装置の動作波形を示す。
【
図7】
図7は、別の例のストロボ装置の動作波形図である。
図7(a)は、従来例のストロボ装置の動作波形を示し、
図7(b)は、本発明の第一実施形態のストロボ装置の動作波形を示し、
図7(c)は、本発明の第二実施形態のストロボ装置の動作波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態における電圧変換回路の一例である昇圧回路を備えるストロボ装置について図面を参照しながら説明する。以下においては、本発明の一実施形態として、デジタルカメラなどの撮影装置に搭載されるストロボ装置について説明する。
【0023】
図1は、本発明の第一実施形態におけるストロボ装置100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、ストロボ装置100は、電池1、昇圧回路2、メインコンデンサC3、発光回路4、キセノン管5および制御回路6を備える。
【0024】
電池1は、ストロボ装置100を動作させるためのエネルギー源である。電池1は、主に1.5V〜11V程度の低い電圧の電源であり、昇圧回路2に接続される。昇圧回路2は、電池1からの電圧を昇圧し、メインコンデンサC3を充電するための回路である。メインコンデンサC3は、キセノン管5を発光させるためのエネルギーを一時的に蓄積するためのものである。メインコンデンサC3には、昇圧回路2によって300V以上の高電圧に昇圧された電圧が充電される。メインコンデンサC3の充電電圧は分圧されて制御回路6に読み取られ、昇圧回路2の動作制御のための情報として用いられる。これにより、メインコンデンサC3の充電電圧が必要十分な電圧に達した時点で、昇圧回路2の動作を停止して待機することが可能になる。
【0025】
発光回路4は、メインコンデンサC3が充電されていて、かつ、制御回路6からキセノン管5を発光するよう指示があった場合に、メインコンデンサC3の充電電圧を昇圧し、キセノン管5の発光を誘発する回路である。制御回路6は、撮影装置200に接続され、撮影装置200からの指示信号に従い、昇圧回路2および発光回路4を制御する。
【0026】
図2は、本実施形態のストロボ装置100による発光処理の流れを示すフローチャートである。本処理は、撮影装置200の操作に従って、制御回路6の制御の下、実行される。まず、制御回路6は、撮影装置200からの充電開始を指示する信号に基づき、昇圧回路2を制御して、メインコンデンサC3の充電を開始する(S1)。続いて、制御回路6は、メインコンデンサC3の充電電圧を検出し、充電が完了しているかどうかを判断する(S2)。ここで、メインコンデンサC3の充電が完了していない場合は(S2:NO)、引き続きメインコンデンサC3の充電を行い(S3)、S2にて充電が完了したと判断されるまで、S3の充電動作を繰り返す。
【0027】
一方、メインコンデンサC3の充電が完了している場合(S2:YES)、制御回路6は、撮影装置200から発光を指示する信号が来ているか否かを判断する(S4)。そして、発光を指示する信号が来ていない場合は(S4:NO)、撮影装置200の他の動作のための割り込み処理を行い(S5)、S2に戻って再びメインコンデンサC3の充電が完了しているかどうかを判断する。そして、S2にて充電が完了したと判断されるまで、S3の充電動作を繰り返す。
【0028】
一方、発光を指示する信号が来ている場合(S4:YES)、制御回路6は、発光回路4を制御してキセノン管5を発光させる(S6)。その後、撮影装置200より、再動作を指示する信号が来ているかを判断し(S7)、再動作をする場合は(S7:YES)、S2に戻って再びS3〜S7の処理を繰り返す。一方、再動作を指示する信号が来ていない場合は(S7:NO)、本処理を終了する。
【0029】
続いて、本実施形態のストロボ装置100の回路構成について、
図3を参照して説明する。電源端子J1およびGND端子J2は、電池1が接続される電源入力端子である。電池1から供給される電源電圧は、電源用平滑コンデンサC1によって平滑化される。
【0030】
昇圧回路2は、昇圧トランスL1、昇圧用スイッチングトランジスタQ1およびプルダウン抵抗R1で構成される。プルダウン抵抗R1は、昇圧用スイッチングトランジスタQ1が不用意にONになって大電流が流れることを防ぐために、非動作時には昇圧用スイッチングトランジスタQ1のゲートをGNDにプルダウンしておくためのものである。昇圧トランスL1の一次側コイルを昇圧用スイッチングトランジスタQ1によってスイッチングすることで、巻き線比に対応した高電圧スイッチングパルスが二次側コイルに生じる。そのパルスを整流ダイオードD1によって直流に整流することにより、昇圧が行われる。
【0031】
メインコンデンサC3は、整流ダイオードD1によって直流に整流された電圧で充電される。メインコンデンサC3の充電電圧は、高電圧側分圧抵抗R4と低電圧側分圧抵抗R5によって分圧され、制御回路6によって検出される。これにより、制御回路6で、メインコンデンサC3の充電状態を把握することができる。高電圧側分圧抵抗R4と低電圧側分圧抵抗R5は、メインコンデンサC3に300Vの高電圧がかかっている状態で焼き切れることが無いように十分に大きな抵抗値と電力耐性を持ったものが採用される。
【0032】
発光回路4はコンデンサ充電用抵抗R2、トリガー用コンデンサC2、トリガー用トランスL2、発光用スイッチングトランジスタQ2およびプルダウン抵抗R3で構成される。プルダウン抵抗R3は、発光用スイッチングトランジスタQ2が不用意にONとなってトリガーパルスを発することを防ぐために、非動作時に発光用スイッチングトランジスタQ2のゲートをGNDにプルダウンしておくためのものである。トリガー用コンデンサC2は、メインコンデンサC3が充電されるにつれて、コンデンサ充電用抵抗R2を介した電流によって充電される。そして、メインコンデンサC3の充電が完了した時点で、最大の充電状態になっているように時定数が調整されている。発光用スイッチングトランジスタQ2は、メインコンデンサC3の充電が完了した時点で、トリガー用トランスL2のコモン端子をGNDにショートし、トリガー用トランスL2の一次側コイルにトリガー用コンデンサC2に充電された電荷を通電する。これにより、トリガー用トランスL2は、巻き線比に対応した50倍〜100倍の高電圧パルスを二次側コイルに生じさせ、キセノン管5にトリガー電圧を与える。
【0033】
キセノン管5は、アノードとカソードの端子間にメインコンデンサC3の電圧がかけられた状態でトリガー電圧が与えられることにより励起され発光する。
【0034】
図4は、ストロボ装置100の動作波形図である。尚、
図4における各波形のディビジョンスケールは、V
1=2V/div、V
2=20V/div、V
3=2V/ div、V
4=400V/div、I
2=2A/div、I
4=50mA/div、500ns/divである。
図4に示すように、初期状態では昇圧用スイッチングトランジスタQ1のゲート側TP1の電圧V
1はLowのため、昇圧用スイッチングトランジスタQ1はOFFとなる。次に、TP1の電圧V
1がHighになると、昇圧用スイッチングトランジスタQ1がONとなり、TP2はGNDにショートされる。このとき、TP2の電流I
2は昇圧トランスL1の一次側コイルのインダクタンスに従って増加していき、V
1が再びLowになり昇圧用スイッチングトランジスタQ1がOFFになるまで状態が継続される。そして、V
1が再びLowになり、昇圧用スイッチングトランジスタQ1がOFFになると、理想的には直ちに電流は遮断され磁束流となって二次側コイルに伝達される。これにより、昇圧トランスL1の二次側コイルのホット側TP4は、昇圧トランスL1の巻き線比に従った高電圧(V
4)を出力する。
【0035】
ここで、整流ダイオードD1がONする電圧は、整流ダイオードD1のカソード側電圧、つまりメインコンデンサC3のホット側TP5の電圧V
5によって上下する。具体的には、TP5の電圧V
5が高くなるにつれ、整流ダイオードD1がONする電圧が高くなる。
【0036】
昇圧用スイッチングトランジスタQ1のON時間(すなわち昇圧トランスL1の一次側コイルの通電ON時間)が一定に制御されている場合は、昇圧トランスL1の一次側コイルに流れる電流量は常に一定となり、昇圧トランスL1内を流れる磁束流は一定になる。そのため、V
5が低いほど、TP4に流れる電流量I
4は多く、V
5が高いほどI
4は少なくなる。
【0037】
しかしながら、実際のメインコンデンサC3の充電制御においては、できるだけ早く充電を完了するために、昇圧用スイッチングトランジスタQ1のON時間を、TP5の電圧V
5が高くなればなるほど長くするとともに、充電開始時の突入電流を抑えるために、V
5が低ければ低いほど短くする。このような制御を行った場合、昇圧トランスL1の一次側コイルに流れる電流量は、V
5が高くなればなるほど多くなっていき、同様に昇圧トランスL1内を流れる磁束流もそれに従って増加する。また、V
5が低いほど、TP4に流れる電流量I
4は少なく、同様に昇圧トランスL1内を流れる磁束流も少ない。電流量I
4は、V
5が高い時に許容できる最大の電流量になるように調整し、そこからV
5が低いほうにかけてそれぞれの状態で許容できる電流量を超えないように、昇圧トランスL1の一次側コイルに通電する電流量を抑えてゆく方法で調整される。そのため、上記した昇圧用スイッチングトランジスタQ1のON時間が一定に制御されている場合に比べると、短時間で大きな電力を昇圧トランスL1の一次側から二次側へ移動できる。
【0038】
ここで、V
1が再びLowになり、昇圧用スイッチングトランジスタQ1がOFFになったとき、電流I
2の遮断開始から終了までの時間は、約100nsec程度である。遮断に要する時間が短時間のため電流変動が急速に生じ、それに伴って磁束流の変動も急速に生じることになる。電流遮断開始のタイミングは昇圧トランスL1の二次側コイルに電圧が発生し始める時で、電流遮断終了は二次側コイルの電位がV
5と同じになる時である。すなわち、この時間は、整流ダイオードD1に電圧がかかり始めて順方向にONするまでの時間に相当する。この間にも磁束流を介してTP4に向けて電流が流れようとする筈であるが、実際には整流ダイオードD1がONする電圧になるまで電流は流れず、磁束流の増加に呼応して電圧のみあがってゆき、整流ダイオードD1がONする電圧まで達したとき、一気にTP4に向けて電流が流れる。
【0039】
昇圧用スイッチングトランジスタQ1がOFFになると、昇圧トランスL1の一次側コイルに蓄えられたエネルギーは、二次側に移動される。しかしながら、一次側の漏れ磁束成分によって生じる漏れインダクタンスLeに蓄積されたエネルギーは、二次側に伝達されない。そのため、
図3の実線矢印で示すように、漏れインダクタンスLeから昇圧用スイッチングトランジスタQ1の寄生容量Cdsに電流が流れ続ける。これにより、一次側コイルの端子であるTP2の電圧V
2が上昇し、サージ電圧V
sが発生する。
【0040】
これは、電流によって漏れインダクタンスLeに蓄えられたエネルギーがコイルおよび回路上の分布容量と共振している現象である。ここで言う「コイルおよび回路上の分布容量」は、部品配置や配線長を良く考慮して設計された場合、昇圧用スイッチングトランジスタQ1の寄生容量Cdsがほとんどの部分を占めると考えられる。そのため、回路起因の不確定な要素を除いて計算すると、サージ電圧V
sの最大値V
spは、以下の簡易式で求められる。ここで、I
pは電流I
2の最大値である。下記の式に示すように、第2項の回路要因が一定であれば、サージ電圧の最大値V
spはI
pの大きさによって増減する。
【数1】
【0041】
そこで、本実施形態の昇圧回路2は、
図3に示すように、昇圧トランスL1の一次側コイルのホット側TP3と、二次側コイルのホット側TP4とを接続するバイパスコンデンサC4を有する。これにより、
図3の破線矢印で示すように、昇圧トランスL1の二次側コイルのホット側TP4からバイパスコンデンサC4を通った電流パルスが、平滑コンデンサC1を介して昇圧用スイッチングトランジスタQ1の寄生容量Cdsのコールド側に流れ込む。その結果、スイッチングトランジスタQ1の寄生容量Cdsのホット側に、一次側コイルの漏れインダクタンスLeによって注入される電流パルスを相殺することができる。
【0042】
ここで、バイパスコンデンサC4の容量は、寄生容量Cdsを相殺する意味で、Cds ≒ C4と考えられ、以下の式で求められる。
C4 ≒ (Ip / Vsp)
2 × Le
また、寄生容量Cdsは出力容量(Coss)から帰還容量(Crss)をさしひいたものであり、以下の式で求められる。
Cds≒Coss−Crss
なお、漏れインダクタンスLeは、一次側コイルのインダクタンスの0.3%〜0.5%と考えられる。
【0043】
続いて、本発明の第二実施形態のストロボ装置100Aについて説明する。第二実施形態のストロボ装置100Aの概略構成および発光処理の流れは、第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、第一実施形態と同様の構成要素については、同じ参照番号を付す。
【0044】
図5は、第二実施形態のストロボ装置100Aの回路構成を示す図である。第一実施形態におけるストロボ装置100との相違は、バイパスコンデンサC4が、昇圧トランスL1の二次側コイルのホット側TP4と二次側コイルのコールド側TP6とを接続するように設けられている点である。これにより、
図5に破線矢印で示すように、電流パルスがTP4からバイパスコンデンサC4を通ってTP6へ送られ、スイッチングトランジスタQ1のOFF時に生じる寄生容量Cdsのコールド側に流れ込む。その結果、一次側コイルの漏れインダクタンスLeによって寄生容量Cdsのホット側に注入される電流パルスを相殺することができる。
【0045】
続いて、
図6および
図7を参照して、本発明の第一および第二実施形態におけるストロボ装置の効果について説明する。
図6(a)は、従来例のストロボ装置の動作波形を示し、
図6(b)は、本発明の第一実施形態のストロボ装置の動作波形を示し、
図6(c)は、本発明の第二実施形態のストロボ装置の動作波形を示す。尚、
図6における各波形のディビジョンスケールは、V
1=2V/div、V
2=20V/div、V
3=5V/ div、I
c4=100mA/div、500ns/divである。
【0046】
上記のように、第一実施形態のストロボ装置100では、昇圧トランスL1の二次側コイルのホット側TP4からバイパスコンデンサC4を通って電流パルス(I
c4)が一次側コイルのホット側TP3へ流れ込むことで、一次側コイルの漏れインダクタンスLeによってスイッチングトランジスタQ1の寄生容量Cdsのホット側に注入される電流パルスが相殺される。これによって、
図6(b)に示すように、サージ電圧V
sのピーク(V
sp)が、
図6(a)に示す従来例に対して約10V低くなる。
【0047】
また、第二実施形態のストロボ装置100Aでは、昇圧トランスL1の二次側コイルのホット側TP4からバイパスコンデンサC4を通って電流パルス(I
c4)が二次側コイルのコールド側TP6へ流れ込むことで、一次側コイルの漏れインダクタンスLeによってスイッチングトランジスタQ1の寄生容量Cdsのホット側に注入される電流パルスが相殺される。これによって、第二実施形態の場合も、
図6(c)に示すように、サージ電圧V
sのピーク(V
sp)が、
図6(a)に示す従来例に対して約10V低くなる。
【0048】
図7は、漏れインダクタンスLeとコイルおよび回路上の分布容量(主にCds)によるサージ電圧Vsの相違を示すために、
図6に示す例とは同じ回路構成で、異なる仕様の部品を用いた場合の例の動作波形図である。
図7(a)は、従来例のストロボ装置の動作波形を示し、
図7(b)は、本発明の第一実施形態のストロボ装置の動作波形を示し、
図7(c)は、本発明の第二実施形態のストロボ装置の動作波形を示す。尚、
図7における各波形のディビジョンスケールは、V
1=2V/div、V
2=20V/div、V
3=5V/ div、I
c4=100mA/div、500ns/divである。
【0049】
図7(b)および(c)に示すように、第一実施形態のストロボ装置100または第二実施形態のストロボ装置100Aにおいては、
図7(a)に示す従来のストロボ装置に比べて、サージ電圧V
sのピーク(V
sp)が約15V低くなる。
【0050】
このように、上記第一および第二実施形態によると、バイパスコンデンサC4によって、昇圧トランスL1の二次側コイルのホット側TP4から寄生容量Cdsのコールド側に電流パルスを流すことで、漏れインダクタンスLeによって注入される電流パルスを相殺し、サージ電圧を低減することができる。これにより、一次側コイルの漏れインダクタンスLeとスイッチング時に影響を与える昇圧用スイッチングトランジスタQ1の寄生容量を含む回路上の分布容量によって生じるサージ電圧によって、昇圧用スイッチングトランジスタQ1の破壊されることを防ぐことができ、安全なストロボ装置を提供することが可能となる。
【0051】
また、サージ電圧の低減が可能になることで、昇圧用スイッチングトランジスタQ1に寄生容量Cdsが小さくなる高速スイッチングタイプを用い、昇圧用スイッチングトランジスタQ1の発熱を抑えたままスイッチング周波数を高くして単位スイッチング周期一回当たりの通電電流量を小さくすることができる。具体的には、周波数を相対的におよそ5倍〜10倍程度に増加させること、単位スイッチング周期一回あたりの転送電流量を相対的におよそ1/5倍〜1/10倍(0.2倍〜0.1倍)程度に減少させること、および一次側に流入する電流の流入速度を相対的におよそ5倍〜10倍程度に増加させることが可能となる。
【0052】
さらに、これにより、昇圧トランスL1の漏れインダクタンスの増加の影響を気にせずに巻き数を減らすことや、周辺部品を電力体力の小さなものを利用することができるため、昇圧回路2の小型化を実現することができる。具体的には、回路全体の部品体積を相対的におよそ1/5倍〜1/10倍(0.2倍〜0.1倍)程度に減少させることも可能となる。
【0053】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等または自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。また、上記実施形態では、撮影装置200に搭載されるストロボ装置を例に説明したが、撮影装置200に外付けされるストロボ装置であっても良い。さらに、上記実施形態における電圧変換回路は、ストロボ装置だけでなく、様々な装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 電池
2 昇圧回路
L1 昇圧トランス
Q1 昇圧用スイッチングトランジスタ
C3 メインコンデンサ
C4 バイパスコンデンサ
4 発光回路
5 キセノン管
100、100A ストロボ装置
200 撮影装置