(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明を適用した一実施形態であるデジタルミキサのハードウェア構成を示すブロック図である。中央処理装置(CPU)101は、このミキサ全体の動作を制御する処理装置である。フラッシュメモリ102は、CPU101が実行する各種のプログラムや各種のデータなどを格納した不揮発性メモリである。フラッシュメモリ102には、後述するライブラリ領域が設けられている。ランダムアクセスメモリ(RAM)103は、CPU101が実行するプログラムのロード領域やワーク領域に使用する揮発性メモリである。RAM103には、カレントメモリと呼ばれる記憶領域が設けられており、CPU101は、該カレントメモリに記憶された各種パラメータの現在値に基づいて、後述する信号処理部109等で行われている各種信号処理を制御する。電動フェーダ104は、このミキサの操作パネル上に設けられたレベル設定用の操作子である。PC用I/O(入出力インターフェース)105は、PC(パーソナルコンピュータ)と接続するためのインターフェースである。
【0018】
表示器106は、操作パネル上に設けられた各種の情報を表示するためのディスプレイであり、ユーザによるタッチ操作が検出可能なタッチパネルである。操作子107は、操作パネル上に設けられたユーザが操作するための各種の操作子(電動フェーダ以外のロータリーエンコーダ、スイッチ、ボタン等)である。なお、
図1中で太線で表現したブロックは操作パネルの構成要素である。波形I/O(オーディオ信号入出力インターフェース)108は、外部機器との間で音響信号をやり取りするためのインターフェースである。信号処理部(DSP)109は、CPU101の指示に基づいて各種のマイクロプログラムを実行することにより、波形I/O108経由で入力した音響信号のミキシング処理、効果付与処理、及び音量レベル制御処理などの信号処理を行い、処理後の音響信号を波形I/O108経由で出力する。バス110は、これら各部を接続するバスラインであり、コントロールバス、データバス、およびアドレスバスを総称したものである。なお、本明細書に記載されている「信号」は、特段の説明がない限り(制御信号であると説明されていない限り)、音響信号(オーディオ信号)を表すものである。
【0019】
図2は、本実施形態のデジタルミキサの操作パネルの外観(一部)を示す。操作パネル上には、タッチパネル201(
図1の表示器106)とともに各種の操作子が配置されている。202はホームボタンであり、後述するホーム画面(
図5(a))をタッチパネル201に呼び出すことを指示するボタンである。203はライブラリボタンであり、後述するライブラリ画面(
図6)をタッチパネル201に呼び出すことを指示するボタンである。204は複数のレイヤボタンである。レイヤボタンi1〜i3は、それぞれ、入力チャンネル(ch)1〜8、入力ch9〜16、および入力ch17〜24の各レイヤのホーム画面を呼び出すためのレイヤボタンである。レイヤボタンo1,o2は、それぞれ、出力ch1〜8および出力ch9〜12の各レイヤのホーム画面を呼び出すためのレイヤボタンである。これら5つのレイヤボタンは、常にユーザが最後に押下した何れか1つのレイヤボタンのみが、現在選択されているレイヤのレイヤボタンとしてオン状態になるように制御されている。
【0020】
図3は、本実施形態のミキサにおける信号処理のブロック図である。同図の信号処理は、
図2の波形I/O108およびDSP109により実現される。入力ポート301は、マイクや楽器などの信号供給源から入力したアナログ音響信号をデジタル音響信号に変換して入力する複数の入力ポートを示す。入力ch302はヘッドアンプ(HA)を備えており、カレントメモリに設定された各入力ch毎のパラメータに基づいて、各入力ポートからのアナログやデジタル音響信号に対するレベル制御や位相調整などの信号処理を行う。ここでは24個の入力chが設けてある。各入力ポートと各入力chとの結線、すなわち、どの入力ポートの信号をどの入力chに入力させるかの割り当ては、ユーザによる所定の操作で任意に行うことができる。各入力chの出力は、少なくとも12本のバスを含むバス303のそれぞれに出力することができ、各バスへの送出レベルは入力ch毎に任意に設定できる。各バス303は、各入力chから入力した信号をミキシングする。ミキシングされた信号は、そのバスに対応する出力ch304に出力される。バス303と出力ch304とは、1本のバスが1本の出力chに1対1で対応している。各出力chは、カレントメモリに設定されたパラメータの値に基づいて出力側の各種の信号処理を行う。出力ポート305は、出力ch304の各出力chからの音響信号をそれぞれアナログ音響信号に変換して出力する複数の出力ポートを示す。
【0021】
図4は、入力ch302のうちの1つのchの処理ブロックの概略構成を示すブロック図である。アッテネータ(Att)401は、当該chへ入力する信号に対してその入り口部分でのレベル制御を行う。イコライザ(EQ)402は信号の周波数特性を調整する。ゲート(Gate)403は、信号レベルが下がったときにノイズが残らないように、信号のレベルを絞るノイズゲートである。コンプレッサ(Comp)404は、信号のダイナミックレンジを圧縮する自動ゲイン調整を行う。レベル(Level)405は、信号の各バスへの送出レベルを調整するレベル調整部である。パン(Pan)406は、信号をステレオで出力する場合の左右定位(パン)の制御を行う。これら複数の各処理ブロックで行われる信号処理は、それぞれ、カレントメモリの当該chのパラメータに含まれる、当該処理ブロックに対応するパラメータセットのパラメータ値により制御される。図示しないが、出力ch304は、例えばイコライザ、コンプレッサ、およびレベル調整部などの処理ブロックにより構成されており、同様に、カレントメモリの当該出力chの複数のパラメータセットの値により制御されている。
【0022】
図5(a)は、入力ch1〜8のレイヤのホーム画面の例を示す。この画面500は、ユーザが、レイヤボタンi1をオンして入力ch1〜8を選択したときや、入力ch1〜8が選択されている状態でホームボタン202をオンしたときに表示される。他のレイヤのホーム画面も、同様に、レイヤボタンやホームボタンの操作により表示される。
【0023】
500−1〜500−8は、それぞれ、入力ch1〜8の各chのパラメータ設定状況を表示する縦長の表示領域(以下「ch表示領域」と呼ぶ)である。1ch分のch表示領域、例えば500−1において、501−1は当該領域で表示している入力chのch番号と名称の表示である。この表示501−1は、ホーム画面内で必ず画面の下側に固定的に表示される。511−1,512−1,513−1,514−1の4つの領域は、順に、当該chのアッテネータ(及びその結線先の入力ポートのヘッドアンプHA)401、イコライザ402、ゲート403、およびコンプレッサ404の各処理ブロックのパラメータセットの一部パラメータを表示する領域(以下、1つの処理ブロックのパラメータを表示する領域を「ブロック表示領域」と呼ぶ)である。
【0024】
なお、上記はch1のch表示領域500−1について説明したが、ch2〜8のch表示領域500−2〜500−8も同様である。上記の番号511〜514に、枝番として−2を付けてch2の各ブロック表示領域を表し、以下同様に枝番として−3〜−8を付けて以降のchのブロック表示領域を表すものとする。
【0025】
コンプレッサ404のパラメータを表示する各chのブロック表示領域514−1〜514−8の下側には各chのレベル405およびパン406のパラメータを表示するブロック表示領域が隠れており、表示されているブロック表示領域に対して上方向にスワイプ操作を行うと、ブロック表示領域が上にスクロールしてそれらの隠れているブロック表示領域が表示される。
【0026】
520はカーソルを示す太線の表示である。ユーザは、表示されているホーム画面内の任意のブロック表示領域に1回タッチすることで、そのブロック表示領域にカーソル520をセットすることができる。カーソル520がセットされたブロック表示領域を「選択された」領域あるいは「選択状態にある」領域と呼ぶ。また、カーソル520がセットされたブロック表示領域の操作対象chを「選択ch」と呼ぶ。画面上で選択状態にあるブロック表示領域は常に1つのみである。
図5(a)では、ch表示領域500−1すなわち入力ch1のch表示領域中のEQのパラメータを表示するブロック表示領域512−1が選択状態にある。ユーザが、選択状態にあるブロック表示領域を再度タッチすると、そのブロック表示領域に対応する当該選択chの当該処理ブロックのパラメータセットの設定を行うための詳細画面が表示される。
【0027】
図5(b)は、
図5(a)のホーム画面500の例えばch1のEQのブロック表示領域512ー1が選択状態にあるとき、さらに、同領域512ー1をユーザがタッチすることにより表示されるEQの詳細画面の例である。画面左側の領域531には、選択chに関して上記ch表示領域と同様の情報が表示される。ここでは選択chはch1であるから、
図5(a)のch1のch表示領域500−1と同じ情報が領域531に表示されており、領域531の下部には現時点での操作対象がch1であることを示す表示533が為されている。もちろん他の選択chの場合、例えばch3のブロック表示領域512ー3が2回タッチされてEQ詳細画面が表示された場合は、選択chはch3であるから、領域531には
図5(a)のch表示領域500−3と同じ情報が表示される。また現在表示されているのはEQの詳細画面であるので、カーソル532は領域531内のEQのパラメータ表示領域にセットされている。
【0028】
534はEQのパラメータセットの設定を行うための詳細画面であり、535は該詳細画面534がEQのパラメータセットを設定する詳細画面であることを示す見出し表示である。536はEQの設定状態を示すEQグラフの表示である。541〜544は各バンドのピーク位置を示すポインタである。ポインタ541〜544のうちの1つをタッチしながら上下に(ゲインの増加/減少方向に)スワイプすることで各バンドのゲインを設定・変更することができる。
【0029】
図5(c)は、
図5(a)のホーム画面500の例えばch1のCompのブロック表示領域514ー1が選択状態にあるとき、さらに、同領域514ー1をユーザがタッチすることにより表示されるCompの詳細画面の例である。551は、
図5(b)の領域531と同様の選択chに関する表示である。現在表示されているのはCompの詳細画面であるので、カーソル552は領域551内のCompのパラメータ表示領域にセットされている。
【0030】
554はCompのパラメータセットの設定を行うための詳細画面であり、555は該詳細画面がCompのパラメータセットを設定する詳細画面であることを示す見出し表示である。561〜566はCompの信号処理動作を規定する複数のパラメータ(パラメータセット)を設定するための操作子の表示である。操作子561〜565はスレッショルドやレシオなどの設定を行うスライダ型操作子である。スライダ型操作子は、画面上の該スライダ型操作子のツマミ部分(例えば操作子561であればツマミ571)を指でタッチしながら該操作子の長手方向にスライドさせることでパラメータ値を変更することができる。操作子566はボタン型操作子であり、ユーザがSoft、Med、またはHardの3つのボタンの何れかをタッチすることで択一的に値を設定することができる。
【0031】
上記ではEQとCompの詳細画面を説明したが、他の処理ブロックについても同様であり、その処理ブロックに対応する詳細画面で、その処理ブロックの複数パラメータ(パラメータセット)の値を詳細に設定することができる。なお、上述のホーム画面や詳細画面である操作子を利用したパラメータ設定の操作が行われると、カレントメモリ上のその操作子に対応するパラメータ値がその操作量に応じた値に設定される。カレントメモリには,各入力chや各出力chの各処理ブロックのパラメータセットや、各入力ポートや各出力ポートのパラメータセットなど、
図3に示される全ての処理ブロックのパラメータセットが保持されており、カレントメモリ上のパラメータデータは、常時、CPU101のバックグラウンド処理(図示せず)で、DSP109における信号処理に反映されている。
【0032】
図6(a)は、
図5(a)のホーム画面500が表示されている状態でライブラリボタン203がオンされたときに表示されるchライブラリ画面の例を示す。この画面600は、ホーム画面500でカーソル520がch1のch表示領域500ー1の何れかのブロック表示領域にある状態でライブラリボタン203がオンされて表示されるライブラリ画面であるので、選択chはch1であり、この選択chがライブラリ操作の対象となる。
【0033】
601はこのchライブラリ画面600の操作対象である選択chのch番号とその名称の表示である。602A,602Bはライブラリボタンである。本実施形態のミキサは2つのライブラリAとBを持ち、ライブラリボタン602A,602Bで何れかのライブラリを操作対象として選択する。図ではライブラリAが選択されている。603はクローズボタンであり、これがタッチされるとchライブラリ画面600が閉じられて元のホーム画面500に戻る。604はライブラリに保存されているプリセットの一覧(以下、「リスト」という)である。リスト604の各行が1つのプリセットに対応し、各プリセットの名前(Title)や保存日時(Date)などが表示されている。名前(Title)は、ユーザが任意に付けたプリセット名である。605はカーソルを示す。リスト604の各行のプリセットのうちの1つをタッチすることで、カーソル605を、リスト中の任意のプリセットにセットすることができる。
【0034】
611はリコールchボタンであり、これを指でタッチすると、選択chに、カーソル605で指定されたプリセットがリコールされる。すなわち、
図6(a)の場合で言えば、カーソル605がセットされているプリセットがライブラリから読み出され、選択chであるch1およびそのch1に結線されたヘッドアンプの動作を規定するカレントメモリ上のパラメータセットとして設定される。
【0035】
612〜614を包含チェックボックスと呼ぶ。これらの包含チェックボックスは、指でタッチすることでチェックの有無を切り替えることができる。
【0036】
包含チェックボックス612は、リコールchボタン611がタッチされて選択chにプリセットがリコールされる際に、アッテネータ401に結線されたヘッドアンプHA(入力ポート)のパラメータセットをそのリコール対象に含めるか否かを指定するチェックボックスである。包含チェックボックス612がチェック有りの場合、HAのパラメータセットはリコール対象となり、リコールするプリセット中のHAのパラメータセットはカレントメモリの当該選択chに結線されたHAのパラメータセットとして設定される。包含チェックボックス612がチェック無しの場合、HAのパラメータセットはリコール対象から除外され、カレントメモリの当該選択chに結線されたHAのパラメータセットは現状の値のまま維持され上書きされることはない。同様に、包含チェックボックス613は、当該選択chにどの入力ポートの信号を入力させるかを示す入力ポート割当情報をリコール対象とするか否かを指定するチェックボックスである。包含チェックボックス614は、当該選択chに付けたch名をリコール対象とするか否かを指定するチェックボックスである。
【0037】
包含チェックボックス612〜614でリコール対象とするか否かを指定できるようにしたのは、これらのパラメータがミキサの使用環境に応じて個別に設定されることが多いパラメータだからである。例えば、あるイベントを複数の会場で行う場合、ミキサのあるchの設定としては、予め1つのプリセットを用意しておき、どの会場でもそのプリセットをリコールして利用すれば良いと考えられる。しかし、ヘッドアンプHAに関しては、音を集音するマイク、マイクの音源からの距離、その音を演奏する人、等の様々な要因に応じて調整せねばならず、また、chと入力ポートの結線に関しては、どの入力ポートにどのマイクの音が入力するかイベント毎に異なるので、プリセットに含まれるHAや結線のパラメータセットを、多くの場合、そのまま使うことができない。そのような場合は、各会場や各イベントごとにHAのパラメータセットおよび入力ポートとchとの割り当てを個別に設定し、その上で、包含チェックボックス612,613のチェックを外して上記プリセットをリコールすればよい。これにより、HAの設定や入力ポートの結線は各会場で個別に設定した状態をそのまま維持しつつ、chの基本的なパラメータ設定はプリセットをリコールすることで簡単に設定できる。ユーザがchに付ける名称についても同様である。また、各会場や各イベントで、その場の状況に応じて付けた名称を使いたい場合がある。その場合は、包含チェックボックス614のチェックを外すことにより、ch名は変更せずにプリセットのリコールを行うことができる。
【0038】
621はストアアズボタンであり、これをタッチすることで、現状の選択chのカレントメモリ上のパラメータセット(結線されたヘッドアンプのパラメータセットを含む)をプリセット名(Title)を付けてライブラリに保存(ストア)することができる。622はストアボタンであり、これをタッチすることで、現状の選択chのカレントメモリ上のパラメータセットを、カーソル605がセットされているプリセットとしてストアすることができる。623はエディットボタンであり、これをタッチすることで、カーソル605がセットされているプリセットのプリセット名を編集することができる。
【0039】
図6(b)は、
図5(b)のEQ詳細画面が表示されている状態でライブラリボタン203がオンされたときに表示されるEQライブラリ画面630の例を示す。この画面630における選択chは、元の
図5(b)のEQ詳細画面の選択chと同じである。
図6(b)のEQライブラリ画面630と
図6(a)のchライブラリ画面600とで、同じ表示要素については同じ番号で示した。
図6(b)のこれらの表示要素は、
図6(a)で説明したのと同様に機能するものである。画面600と異なる点として、画面630ではリコールEQボタン615が表示されている。
【0040】
このリコールEQボタン615を指でタッチすると、選択chのEQに、指定されたプリセット中のEQのパラメータセットがリコールされる。すなわち、
図6(b)の場合で言えば、カーソル605がセットされているプリセット中のEQのパラメータセットがライブラリから読み出され、カレントメモリ上の、選択chであるch1のEQのパラメータセットとして設定される。このとき、当該プリセット中の当該EQ以外のパラメータセットはカレントメモリに設定されない。
【0041】
図6(c)は、
図5(c)のComp詳細画面が表示されている状態でライブラリボタン203がオンされたときに表示されるCompライブラリ画面650の例を示す。上記
図6(b)の説明はEQを対象とするものであるが、EQをCompに読み替えれば
図6(c)の説明となる。ただし、
図6(c)は
図5(c)のComp詳細画面から開いたライブラリ画面であるので、リコールEQボタン615の代わりにリコールCompボタン616が表示されている。このリコールCompボタン616を指でタッチすることで、カレントメモリの選択chのCompのパラメータセットに、指定されたプリセット中のCompのパラメータセットのみがリコールされる。
【0042】
図6(b)および(c)ではEQとCompを例に説明したが、他の処理ブロックについても同様である。ある処理ブロックのパラメータセットを設定するための詳細画面が表示されている状態でライブラリボタン203をオンすることで、その処理ブロック対応のライブラリ画面が表示される。そのライブラリ画面には、当該処理ブロックのパラメータセットのみをカレントメモリにリコールすることを指示するためのリコールxxボタン(
図6(b)のボタン615や
図6(c)のボタン616)が表示される。なお、「xx」は、EQやCompなどの複数種類の処理ブロックの何れか1つの種類を特定する識別子である。(つまり、chは特定しない。)
【0043】
当然であるが、
図5(b)のEQ詳細画面が表示されているときは、ユーザはEQのパラメータセットを編集する意図を持ってEQ詳細画面を表示させている。従って、EQ詳細画面が表示されている状態でライブラリボタン203をオンしたときは、ユーザはEQのパラメータセットに着目してライブラリ操作を行いたいものと想定できる。そこで、EQ詳細画面から表示されるEQライブラリ画面630には、EQのパラメータセットのみをリコールするためのリコールEQボタン615が表示されるようにして使い勝手をよくしている。Comp詳細画面からCompライブラリ画面650が表示される場合も同様であり、さらに他の処理ブロックのパラメータ設定を行う詳細画面からその処理ブロックのライブラリ画面を表示する場合も同様である。一方、
図6(a)のchライブラリ画面600にはリコールxxボタンは表示されない。これはホーム画面500からchライブラリ画面600が表示される場合は、ユーザはch単位でライブラリ操作を行いたいものと想定でき、ある特定の処理ブロックのライブラリ操作を行いたいのでは無いと想定されるからである。
【0044】
次に
図7を参照して、フラッシュメモリ102上に設けられるライブラリのデータ構成について説明する。ライブラリ701は、複数のプリセットを記憶する領域を備える。
図7では、N個のプリセットを記憶する領域701−1〜701−Nを持つライブラリとした。プリセットn(nは1〜N)は、領域701−nを指すとともに該領域701−nに格納されたデータセットをも指すものとする。1つのプリセットは、1つのchの動作を規定する全パラメータセットのデータである。例えば入力chの1つのプリセット710は、アッテネータのパラメータセット(結線先のヘッドアンプのパラメータセットを含む)711、EQのパラメータセット712、…から構成される。その他データ720は、各処理ブロックのパラメータセットには含まれないその他のパラメータであり、例えば、当該プリセットに付けられた名称データや、当該入力chに結線された入力ポートを特定する結線データや、当該入力chに付与された名称データなどである。上述したように、ヘッドアンプのパラメータセット、chの結線データ、chの名称データについては、それぞれ、対応する包含チェックボックスのチェックを外すことにより、リコール対象から除外することができる。
【0045】
なお、現実のミキサでは「プリセット」という用語をライブラリ中の読み出し専用のパラメータセットの意味で使うことが多いが、本願では、読み出し専用に限らず、ユーザが任意にストア/リコールできるch単位のパラメータセットを「プリセット」と呼ぶものとする。
【0046】
次に、
図8,9を参照して、上述の動作を実現するための制御CPU101の処理手順を説明する。
【0047】
図8(a)は、あるch(選択ch)のある処理ブロックの詳細画面(
図5(b)や(c))を開く処理のフローである。この処理は、
図5(a)のホーム画面内の何れかのch(選択ch)の何れかのブロック表示領域が選択されている状態で、ユーザによりその領域がタッチされたときに実行される。ステップ801で、選択chの指定された処理ブロックxx(タッチされたブロック表示領域に対応する処理ブロック)の詳細画面を表示する。
【0048】
図8(b)は、chライブラリ画面を開く処理のフローである。この処理は、
図5(a)のホーム画面が表示されている状態で、ユーザによりライブラリボタン203がオンされたときに実行される。ステップ802で、選択chのchライブラリ画面(
図6(a))を表示する。なお、選択chは、ライブラリボタン203がオンされてた時点において、ホーム画面中でそのブロック表示領域の何れかにカーソルがセットされていたchである。
【0049】
図8(c)は、選択chの何れかの処理ブロックxxの詳細画面(
図5(b)や(c)など)が表示されている状態で、ユーザによりその詳細画面内の各操作子の操作があったときの処理フローである。ステップ811で、その操作量に応じて、カレントメモリのそのchのその操作子に対応するパラメータ値(当該処理ブロックxxのパラメータセットに含まれる)を変更する。
【0050】
図8(d)は、選択chの何れかの処理ブロックxxの詳細画面(
図5(b)や(c)など)が表示されている状態で、ユーザによりライブラリボタン203がオンされたときの処理フローである。ステップ812で、選択chの当該処理ブロックxxに対応するxxライブラリ画面(ブロックライブラリ画面)を表示する。xxライブラリ画面とは、例えば元に表示されていたのがEQの詳細画面ならEQライブラリ画面であるし、元に表示されていたのがCompの詳細画面ならCompライブラリ画面である。
図6(b)(c)で説明したが、xxライブラリ画面には、処理ブロックxxのパラメータセットのみをリコールすることを指定するリコールxxボタンが表示される。
【0051】
図8(e)は、ユーザによりホームボタン202がオンされたときの処理フローである。なお、直前に表示されている画面にはかかわらず、ホームボタン202がオンされたときには本処理が実行される。ステップ822で、その時点における選択chが含まれるホーム画面(
図5(a))を表示する。
【0052】
図9(a)は、選択chのxxライブラリ画面が表示されている状態で、該画面中のリコールxxボタンがユーザによりタッチされたときの処理フローである。ステップ901で、その時点でリストで選択されているプリセット(カーソルがセットされているプリセット)をワークメモリに読み出す。ステップ902で、ワークメモリに読み出した当該プリセット中の処理ブロックxxのパラメータセットを、カレントメモリのそのchのその処理ブロックxxのパラメータセットに上書きする。
【0053】
図9(b)は、選択chのxxライブラリ画面が表示されている状態で、該画面中のリコールchボタンがユーザによりタッチされたときの処理フローである。ステップ911で、リストで選択されているプリセット(カーソルがセットされているプリセット)をワークメモリに読み出す。ステップ912で、ワークメモリに読み出した当該プリセット中の包含チェックボックスが無チェックのパラメータセットを除くパラメータセットをカレントメモリのそのchのパラメータセットおよびそのchに結線されたヘッドアンプのパラメータセットに上書きする。なお、chライブラリ画面でリコールchボタンがタッチされた場合も
図9(b)と同じ処理が実行される。
【0054】
図9(c)は、選択chのxxライブラリ画面が表示されている状態で、該画面中のクローズボタンがユーザによりタッチされたときの処理フローである。ステップ921で、xxライブラリ画面を閉じて、選択chのxx詳細画面を再表示する。なお、chライブラリ画面でクローズボタンがタッチされた場合は、chライブラリ画面を閉じて、選択chを含むホーム画面を再表示する処理が実行される。
【0055】
本実施形態のミキサは、プリセットをメーカから供給したり、複数ユーザでプリセットを共有する場合に適用すると好適である。そのためには、ネットワークや記憶媒体経由で提供されたプリセットをライブラリに登録してリコールできるように構成すればよい。ユーザは、新たに入手したプリセットをchにリコールすることもできるし、EQやCompなどのchの一部の処理ブロックのパラメータセットのみをそのプリセットからリコールすることもできるので、他者から入手した限られた数のプリセットを、複数の処理ブロックで使い勝手よく利用できる。また、他者から入手したプリセットでは、HAの設定や入力ポートと入力chとの結線などがそのまま利用できない場合が多いが、本ミキサでは包含チェックボックスのチェックを外すことでそれらをリコール対象から簡単に外せるので、その点でも使い勝手がよい。他者に提供することを前提とするプリセットに関しては、例えば「チャンネルの使用目的等を示すコメント」などをそのプリセットに添付するとよい。ユーザは、それを参照することで、入手したプリセットの利用の仕方を判断できる。
【0056】
なお、上記実施例では、
図5(a)のホーム画面で選択中のブロック表示領域をタッチしたとき、対応する詳細画面が表示されるようになっていたが、ユーザ指示で詳細画面を開く方法はこれに限らない。例えば、選択中か否かに関わらず、あるchのある処理ブロックのブロック表示領域をタッチしたら、その処理ブロックの詳細画面が開くようにしてもよい。或いは、各処理ブロックに対応する複数ボタンを用意し、あるchが選択されている状態で何れかのボタンを操作すると、そのchのそのボタンに対応した処理ブロックの詳細画面が開くようにしてもよい。
【0057】
上記実施形態ではミキサの入力chのライブラリ処理を例に説明したが、本発明はミキサの出力chやその他、レコーダー、アンプ、スピーカー等、任意の音響機器の任意のchの各種処理ブロックのライブラリ処理にも適用可能である。また、入力chと出力chなど別のタイプのchが混在する場合は、chのタイプごとにライブラリを分けてもよいし共通化したライブラリとしてもよい。ライブラリの構造は
図7に限らない。
【0058】
包含チェックボックスは付番612〜614の3種類を例に説明したが、chのプリセットに含まれる任意の1つあるいは複数のパラメータに対して包含チェックボックスを設けるようにできる。
【0059】
上記実施形態の表示手段はタッチセンサを備えたタッチパネルであったが、タッチセンサを備えないディスプレイと、マウス、タッチパッド等のポインティングデバイスとに置き換えてもよい。また、ホームボタンやライブラリボタンは物理的なボタンの代わりに画面上に表示されたボタンでもよい。さらに、リコールボタンやクローズボタンは画面上のボタンの代わりに物理的なボタンでもよい。ディスプレイは1枚である必要は無く、ホーム画面や詳細画面やライブラリ画面を、複数のディスプレイに別々に表示するようにしてもよい。例えば、1つのディスプレイにあるブロックの詳細画面を開いたまま、別のディスプレイにそのブロックのライブラリ画面を表示するようにしてもよい。また、ディスプレイは、ミキサ本体のディスプレイに限らず、パーソナルコンピュータやタブレット端末のディスプレイであってもよい。