(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236776
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】反射防止膜、それを用いた光学部材、及び光学機器
(51)【国際特許分類】
G02B 1/115 20150101AFI20171120BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20171120BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
G02B1/115
B32B7/02 103
B32B9/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-270750(P2012-270750)
(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-115541(P2014-115541A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】311015207
【氏名又は名称】リコーイメージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
(72)【発明者】
【氏名】竹友 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀雄
【審査官】
池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−277606(JP,A)
【文献】
特開2006−053180(JP,A)
【文献】
特開2012−163779(JP,A)
【文献】
米国特許第5332618(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/11
B32B 7/02
B32B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長587.56 nmのHe光源のd線に対する屈折率が1.43〜1.73の光学基材の表面上に、第1層〜第7層を前記基材側からこの順に積層してなる反射防止膜であって、
前記第1層は前記d線に対する屈折率が1.37〜1.56であり、光学膜厚が230〜290 nmであり、
前記第2層は前記d線に対する屈折率が1.85〜2.7であり、光学膜厚が20〜80 nmであり、
前記第3層は前記d線に対する屈折率が1.37〜1.52であり、光学膜厚が10〜60 nmであり、
前記第4層は前記d線に対する屈折率が2.1〜2.7であり、光学膜厚が130〜220 nmであり、
前記第5層は前記d線に対する屈折率が1.37〜1.52であり、光学膜厚が5〜40 nmであり、
前記第6層は前記d線に対する屈折率が2.1〜2.7であり、光学膜厚が20〜90 nmであり、
前記第7層は前記d線に対する屈折率が1.37〜1.4であり、光学膜厚が100〜160 nmであり、
前記第4層及び前記第6層と前記第1層、前記第3層、前記第5層及び前記第7層との間の屈折率差は0.7以上であり、
可視域の波長帯390〜720 nmの光に対する反射率が0.2%以下であることを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】
請求項1に記載の反射防止膜において、前記第7層の屈折率は、前記第1層、前記第3層及び前記第5層の屈折率以下であり、かつ前記第1層の屈折率より0.0001〜0.019低い及び/又は前記第3層及び前記第5層の屈折率より0.001〜0.019低いことを特徴とした反射防止膜。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の反射防止膜において、前記第1層、前記第3層及び前記第5層はMgF2又はSiO2の単体又はSiO2とAl2O3、Nb2O5又はTiO2との混合物又は化合物からなり、前記第2層、前記第4層及び前記第6層はTiO2、Nb2O5、CeO2、Ta2O5又はZrO2の単体又はそれらとSiO2との混合物又は化合物からなり、第7層がMgF2の単体又はMgF2とSiO2、CaF2又はLiFとの混合物又は化合物からなることを特徴とした反射防止膜。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止膜を施したことを特徴とする光学部材。
【請求項5】
請求項4に記載の光学部材を有することを特徴とする光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテレビカメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、車載カメラ、顕微鏡、望遠鏡等の光学機器に搭載するレンズ、プリズム、フィルター等の光学部材に適用される反射防止膜、それを用いた光学部材、及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
写真用や放送用等に広く用いられている単焦点レンズやズームレンズは、一般的に多数枚のレンズからなる鏡筒構成を有しており、そのレンズ数は10枚程度から40枚程度にもなる。
【0003】
レンズ枚数が多くなると各レンズ表面の反射光の総量が増加し、またその反射光が多重反射を繰り返して感光面に入射することでフレアやゴーストといった光学特性を著しく劣化させる弊害を発生させる原因となる。そのためこれらのレンズの表面には、基板とは異なる屈折率をもつ誘電体膜を組み合わせ、各誘電体膜の光学膜厚を中心波長λに対して1/2λや1/4λに設定して干渉効果を利用した多層膜による反射防止処理が施されている。
【0004】
例えば、特開2007-213021号公報(特許文献1)は、基板上に設けられ、基板と反対側から順に積層された第1層〜第8層を含む反射防止膜であって、第1層及び第4層はd線に対して1.35以上1.50以下の屈折率を示す低屈折率材料からなり、第3層及び第5層は、d線に対して1.55以上1.85以下の屈折率を示す中間屈折率材料からなり、第2層及び第6層は、d線に対して1.70以上2.50以下の範囲において前記中間屈折率材料よりも高い屈折率を示す高屈折率材料からなる反射防止膜を開示している。この反射防止膜は、おおよそ400〜700 nmの波長帯においてほぼ0.15%以下の反射率を有する。
【0005】
特開2002-267801号公報(特許文献2)は、基板上に該基板側から順に第1層〜第9層の誘電体よりなる薄膜を施した反射防止膜であって、第2層、第4層、第6層、第8層の材質の波長550 nmでの屈折率をN
hとし、第1層、第3層、第5層、第7層の材質の波長550 nmでの屈折率をN
mとし、第9層の材質の波長550 nmでの屈折率をN
lとしたとき、2.00 ≦ N
h ≦ 2.20,1.50 ≦ N
m≦ 1.80,N
l ≦ 1.46を満足する反射防止膜を開示している。この反射防止膜は、おおよそ400〜680 nmの波長帯においてほぼ0.2%以下の反射率を有する。
【0006】
特開2002-107506号公報(特許文献3)は、基板上に積層された10層の薄膜を有する設計波長λ
0 =550 nmの反射防止膜であって、第2層、第4層、第6層、第9層の設計波長λ
0 における屈折率が2.00以上であり、第1層及び第7層の設計波長λ
0 における屈折率が1.50〜1.80の範囲内であり、第3層、第5層、第8層及び第10層の設計波長λ
0 における屈折率が1.46以下である反射防止膜を開示している。この反射防止膜は、おおよそ400〜710 nmの波長帯においてほぼ0.2%以下の反射率を有する。
【0007】
特開2001-100002号公報(特許文献4)は、基板上に該基板側から順に第1層〜第10層の誘電体よりなる薄膜を施した反射防止膜であって、第2層,第4層,第6層,第9層の材質の波長550 nmでの屈折率をN
hとし、第1層,第8層の材質の波長550 nmでの屈折率をN
mとし、該第3,第5,第7,第10層の材質の波長550 nmでの屈折率をN
Lとしたとき、2.0 ≦ N
h,1.5 ≦ N
m ≦ 1.8,N
L ≦ 1.46を満足する反射防止膜を開示している。この反射防止膜は、おおよそ410〜690 nmの波長帯においてほぼ0.2%以下の反射率を有する。
【0008】
しかし、これらの反射防止膜は、一般的に可視域とされる波長帯380〜780 nmにおいて、反射防止帯域幅が300 nm程度と小さいという問題がある。人間の目はこの可視域の中でも特に波長390〜720 nmの範囲において、色みをより強く感じる視覚感度を有する。このことは明所視の際に働く視細胞である錐体の分光視感効率から分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-213021号公報
【特許文献2】特開2002-267801号公報
【特許文献3】特開2002-107506号公報
【特許文献4】特開2001-100002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特願2012-202386は、基材の表面上に、第1層〜第9層を基材側からこの順に積層してなる反射防止膜であって、第2層、第4層、第6層及び第8層は波長587.56 nmのd線に対して2.21以上2.70以下の屈折率を示す高屈折率材料により形成された高屈折率層であり、第1層、第3層、第5層及び第7層はd線に対して1.40以上1.55未満の屈折率を示す中間屈折率材料により形成された中間屈折率層であり、第9層はd線に対して1.35以上1.40未満の屈折率を示す低屈折率材料により形成された低屈折率層であり、可視域の波長帯390〜720 nmの光に対する反射率が0.2%以下である反射防止膜を記載している。この反射防止膜は広い波長帯域で最大反射率が0.2%以下に抑えられるが、層数が9と多い。
【0011】
従って本発明の目的は、少ない積層数でありながら、従来の反射防止帯域幅の300 nmを超える、より広い波長帯域390〜720 nmの範囲において優れた反射防止性能を発揮する反射防止膜を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の別の目的は、かかる反射防止膜を施した光学部材を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、かかる光学部材を有する光学機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、特願2012-202386に記載の9層構成の反射防止膜の第1層〜第3層を1つの層で置き換えることにより、7層構成と少ない積層数でありながら、波長390〜720 nmの広い可視光域において0.2%以下の反射率を有する反射防止膜が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0015】
即ち、本発明の反射防止膜、光学部材及び光学機器は以下の特徴を有している。
[1] 波長587.56 nmのHe光源のd線に対する屈折率が1.43〜1.73の光学基材の表面上に、第1層〜第7層を前記基材側からこの順に積層してなる反射防止膜であって、
前記第1層は前記d線に対する屈折率が1.37〜1.56であり、光学膜厚が230〜290 nmであり、
前記第2層は前記d線に対する屈折率が1.85〜2.7であり、光学膜厚が20〜80 nmであり、
前記第3層は前記d線に対する屈折率が1.37〜1.52であり、光学膜厚が10〜60 nmであり、
前記第4層は前記d線に対する屈折率が2.1〜2.7であり、光学膜厚が130〜220 nmであり、
前記第5層は前記d線に対する屈折率が1.37〜1.52であり、光学膜厚が5〜40 nmであり、
前記第6層は前記d線に対する屈折率が2.1〜2.7であり、光学膜厚が20〜90 nmであり、
前記第7層は前記d線に対する屈折率が1.37〜1.4であり、光学膜厚が100〜160 nmであり、
前記第4層及び前記第6層と前記第1層、前記第3層、前記第5層及び前記第7層との間の屈折率差は0.7以上であり、
可視域の波長帯390〜720 nmの光に対する反射率が0.2%以下であることを特徴とする反射防止膜。
[2] 上記[1] に記載の反射防止膜において、前記第7層の屈折率は、前記第1層、前記第3層及び前記第5層の屈折率以下であり、かつ前記第1層の屈折率より0.0001〜0.019低い及び/又は前記第3層及び前記第5層の屈折率より0.001〜0.019低いことを特徴とした反射防止膜。
[3] 上記[1] 又は[2] に記載の反射防止膜において、前記第1層、前記第3層及び前記第5層はMgF
2又はSiO
2の単体又はSiO
2とAl
2O
3、Nb
2O
5又はTiO
2との混合物又は化合物からなり、前記第2層、前記第4層及び前記第6層はTiO
2、Nb
2O
5、CeO
2、Ta
2O
5又はZrO
2の単体又はそれらとSiO
2との混合物又は化合物からなり、第7層がMgF
2の単体又はMgF
2とSiO
2、CaF
2又はLiFとの混合物又は化合物からなることを特徴とした反射防止膜。
[
4] 上記[1] 〜[
3] のいずれかに記載の反射防止膜を施したことを特徴とする光学部材。
[
5] 上記[
4] に記載の光学部材を有することを特徴とする光学機器。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、少ない積層数でありながら、波長390〜720 nmの広い可視光域において反射率0.2%以下を確保できるため、極めて高い透過率特性と優れたカラーバランスを備えた反射防止膜、それを用いたフレアやゴースト等の光学特性を著しく劣化させる弊害を発生しない高性能な光学部材、及びそれを有する光学機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施例による反射防止膜を示す図である。
【
図2】(A) は実施例1の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図3】(A) は実施例2の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図4】(A) は実施例3の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図5】(A) は実施例4の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図6】(A) は実施例5の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図7】(A) は実施例6の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図8】(A) は実施例7の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図9】(A) は実施例8の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図10】(A) は実施例9の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図11】(A) は実施例10の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図12】(A) は実施例11の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図13】(A) は実施例12の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図14】(A) は比較例1の反射防止膜の基本データを示す表であり、(B) はその反射率の分光特性を示すグラフである。
【
図15】本発明の実施例による反射防止膜に用いるコーティング材料の屈折率分散を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の一実施例による基材10の表面上に基材10から順に第1層21〜第7層27を積層してなる反射防止膜20を示す図である。
【0019】
図1に示す基材10は平板であるが、本発明はこれに限らず、レンズ、プリズム、ライトガイド、フィルム又は回折素子でも良い。基材10は、波長587.56 nmのHe光源のd線(以下、単に「d線」とする。)に対して屈折率が1.43〜1.73であるものを好適に用いることができる。基材10の材料は、ガラス、結晶性材料、プラスチック等の透明材料を用いても良い。具体的には、S-FPL53(登録商標)(nd=1.43875)、S-PSL5(登録商標)(nd=1.48749)、S-BSL7(登録商標)(nd=1.51633)、S-BAL50(登録商標)(nd=1.55963)、S-BSM14(登録商標)(nd=1.60311)、S-LAL7(登録商標)(nd=1.65160)、S-LAL10(登録商標)(nd=1.72000)等の光学ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス(nd〜1.48)、石英(nd〜1.46)、青板ガラス(nd〜1.51)、白板ガラス(nd〜1.52)、ゼロデュア(登録商標)(nd=1.5424)、蛍石(nd=1.434)、アクリル(nd=1.49)、ポリカーボネート(nd=1.58)、ポリエチレンテレフタレート(nd=1.58)、アペル(登録商標)(nd=1.54)、ゼオネクス(登録商標)(nd=1.53)、アートン(登録商標)(nd=1.52)等が挙げられる。
【0020】
反射防止膜20の第1層21はd線に対する屈折率が1.37〜1.56であり、光学膜厚[屈折率(n)×物理膜厚(d)]が230〜290 nmであり、第2層22はd線に対する屈折率が1.85〜2.7であり、光学膜厚が20〜80 nmであり、第3層23はd線に対する屈折率が1.37〜1.52であり、光学膜厚が10〜60 nmであり、第4層24はd線に対する屈折率が2.1〜2.7であり、光学膜厚が130〜220 nmであり、第5層25はd線に対する屈折率が1.37〜1.52であり、光学膜厚が5〜40 nmであり、第6層26はd線に対する屈折率が2.1〜2.7であり、光学膜厚が20〜90 nmであり、第7層27はd線に対する屈折率が1.37〜1.4であり、光学膜厚が100〜160 nmである。
【0021】
本発明の反射防止膜は、特願2012-202386に記載の9層構成の反射防止膜の第1層及び第3層と非常に膜厚が小さい第2層とを第1層で置き換えた7層構成に基づいている。7層構成としたことに伴い、各層の屈折率及び光学膜厚を上記範囲に設定することにより、少ない積層数でありながら、より広い波長帯に亘って反射率を十分に低減することができる。具体的には、可視域380〜780 nmのうち特に感度が高い波長帯390〜720 nmの光に対して0.2%以下の反射率に抑えることができる。また第1層21〜第7層27の光学膜厚は、基材10及び各層21〜27の屈折率に応じてコンピュータシミュレーションを用いて上記範囲内における最適値を求めることができる。
【0022】
高屈折率を有する第2層22、第4層24及び第6層26と、低屈折率を有する第1層21、第3層23、第5層25及び第7層27との間の屈折率差を大きくすることにより、反射防止膜20全体の膜厚を大きくすることなく、可視域の広い波長帯390〜720 nmの光に対して反射率を十分に低減することができる。特に高屈折率を有する第4層24及び第6層26と、低屈折率を有する第1層21、第3層23、第5層25及び第7層27との間の屈折率差が大きいのが望ましい。具体的には、第4層24及び第6層26と第1層21、第3層23、第5層25及び第7層27との間の屈折率差は0.49〜1.4であるのが好ましく、0.7〜1.33であるのがより好ましい。また第4層24及び第6層26の好ましい屈折率は2.1〜2.7である。
【0023】
第7層27の屈折率は、第1層21、第3層23及び第5層25の屈折率以下であるのが好ましい。反射防止膜20の最外層である第7層27の屈折率を低く抑えることにより、広い波長帯に亘って反射防止膜20の反射率を低減することができる。第7層27の好ましい屈折率は1.37以上1.4未満であり、より好ましい屈折率は1.375〜1.395である。また第1層21の好ましい屈折率は1.38〜1.56であり、第3層23及び第5層25の好ましい屈折率は1.38〜1.52である。
【0024】
第7層27の屈折率は第1層21の屈折率より0.0001〜0.019低いのが好ましく、第3層23及び第5層25の屈折率より0.001〜0.019低いのが好ましい。反射防止膜20の最外層である第7層27の屈折率を第1層21、第3層23及び第5層25の屈折率より低くすることにより、反射防止膜20の反射率をさらに低減することができる。
【0025】
本発明の反射防止膜としての特性に影響を与えない範囲であれば反射防止膜20にさらに膜を追加しても良い。例えば、反射防止膜の特性に影響を与えない範囲であれば、反射防止膜の層間に屈折率の異なる薄い膜を挿入しても良い。
【0026】
第2層22、第4層24及び第6層26の材料としては、TiO
2、Nb
2O
5、CeO
2、Ta
2O
5又はZrO
2の単体又はそれらとSiO
2との混合物又は化合物を用いることができる。すなわち、TiO
2、Nb
2O
5、CeO
2、Ta
2O
5又はZrO
2は高屈折率を有するため、単独で第2層22、第4層24及び第6層26の材料として用いることができるが、それらの材料とSiO
2との混合物又は化合物を用いることもできる。第1層21、第3層23及び第5層25の材料としては、MgF
2又はSiO
2の単体又はSiO
2とAl
2O
3、Nb
2O
5又はTiO
2との混合物又は化合物を用いることができる。第7層27の材料としては、MgF
2の単体又はMgF
2とSiO
2、CaF
2又はLiFとの混合物又は化合物を用いることができる。第1層21〜第7層27の材料は上記のものに限定されず、所望の屈折率が得られるものであれば、適宜用いることができる。
【0027】
第1層21〜第7層27はスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法等の物理蒸着法により形成するのが好ましい。特に第1層〜第6層をスパッタリング法又はイオンプレーティング法により形成し、第7層を加工精度の良い真空蒸着法により形成するのが好ましい。それにより屈折率が安定した反射防止膜20を効率良く形成することができる。
【0028】
本発明の反射防止膜を施した光学部材は、優れた屈折率特性を有し、テレビカメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、車載カメラ、顕微鏡、望遠鏡等の光学機器に搭載するレンズ、プリズム、フィルター等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
実施例1〜8
反射防止膜20の第1層21〜第7層27の屈折率及び光学膜厚、及び基材10の屈折率を最適化したシミュレーションを行った。各実施例1〜8の屈折率及び光学膜厚を
図2(A) 〜
図9(A) に示す。設計波長は550 nm(以下の例も同様)とした。各実施例1〜8の反射防止膜20に垂直に光を入射させたときの分光反射率をシミュレーションにより求めた。得られた反射率計算結果を
図2(B) 〜
図9(B) に示す。基材10及び各層21〜27の屈折率分散を考慮し、基材10の反射防止膜20が形成されていない面での反射はないものとした。
【0031】
図2(B) 〜
図9(B) から分かるように、実施例1〜8の反射防止膜20は、波長390〜720 nmの範囲(波長帯域幅は約330 nm)において、最大反射率が0.2%以下に抑えられた。このことから本発明の反射防止膜は、少ない積層数でありながら、より広い波長帯に亘って反射率を十分に低減することができ、もってフレアやゴーストといった光学特性を著しく劣化させる弊害の発生を抑制するとともに、より優れたカラーバランスを効果的に得られることが分かった。
【0032】
実施例1〜8の結果から、実際に使用する基材材料に最適な屈折率を有する反射防止膜材料を選定した。反射防止膜材料の屈折率分散を
図15に示す。これらの基材材料及び反射防止膜材料を用いたときの反射防止特性を以下の実施例及び比較例にてシミュレーションにより求めた。
【0033】
実施例9
S-FSL5(株式会社オハラ製、nd=1.4875)からなる基材10に、
図10(A) に示す材料からなる第1層21〜第7層27を真空蒸着法により形成してなる反射防止膜20に垂直に光を入射させたときの分光反射率をシミュレーションにより求めた。得られたシミュレーション結果を
図10(B) に示す。基材10及び各層21〜27の屈折率分散を考慮し、基材10の反射防止膜20が形成されていない面での反射はないものとした。
【0034】
実施例10
S-BSL7(株式会社オハラ製、nd=1.5163)からなる基材10に、
図11(A) に示す材料からなる第1層21〜第7層27を真空蒸着法により形成してなる反射防止膜20に垂直に光を入射させたときの分光反射率をシミュレーションにより求めた。得られたシミュレーション結果を
図11(B) に示す。基材10及び各層21〜27の屈折率分散を考慮し、基材10の反射防止膜20が形成されていない面での反射はないものとした。
【0035】
実施例11
S-BSM15(株式会社オハラ製、nd=1.6230)からなる基材10に、
図12(A) に示す材料からなる第1層21〜第7層27を真空蒸着法により形成してなる反射防止膜20に垂直に光を入射させたときの分光反射率をシミュレーションにより求めた。得られたシミュレーション結果を
図12(B) に示す。基材10及び各層21〜27の屈折率分散を考慮し、基材10の反射防止膜20が形成されていない面での反射はないものとした。
【0036】
実施例12
S-LAL12(株式会社オハラ製、nd=1.6779)からなる基材10に、
図13(A) に示す材料からなる第1層21〜第6層26をスパッタリング法により形成し、第7層27を真空蒸着法により形成してなる反射防止膜20に垂直に光を入射させたときの分光反射率をシミュレーションにより求めた。第1層21はスパッタ成膜成分の割合はTiO
2が94%、SiO
2が6%とした。得られたシミュレーション結果を
図13(B) に示す。基材10及び各層21〜27の屈折率分散を考慮し、基材10の反射防止膜20が形成されていない面での反射はないものとした。
【0037】
比較例1
S-BSM15(株式会社オハラ製、nd=1.6230)からなる基材に、
図14(A) に示す材料からなる第1層〜第9層を真空蒸着法により形成してなる反射防止膜に垂直に光を入射させたときの分光反射率をシミュレーションにより求めた。反射防止膜中のOH-5はキャノンオプトロン製のTiO
2とZrO
2の混合蒸着材料である。得られたシミュレーション結果を
図14(B) に示す。基材及び各層の屈折率分散を考慮し、基材の反射防止膜が形成されていない面での反射はないものとした。
【0038】
実施例9〜12と比較例1とを比較すると、波長390〜720nmの範囲(波長帯域幅330 nm)において、本発明の膜構成は最大反射率0.2%以下に抑えられているのに対し、比較例1の膜構成では最大反射率が0.2%を越えていることが分かった。
【0039】
以上の通り、本発明の反射防止膜は、より少ない積層数でありながら、より広い波長帯に亘って反射率を十分に低減することができ、フレアやゴーストといった光学特性を著しく劣化させる弊害の発生を抑制するとともに、より優れたカラーバランスを効果的に得ることができることが分かった。
【符号の説明】
【0040】
10・・・基材
20・・・反射防止膜