(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モノマーの混合物が、1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物である成分A、および、フルオロアルキル基を有する重合性モノマーである成分Bを含む混合物であることを特徴とする請求項8に記載の低含水性軟質眼用レンズの製造方法。
前記放射線が、照射量1kGy以上25kGy以下のγ線、または照射量1kGy以上40kGy以下の電子線であることを特徴とする請求項10または11に記載の低含水性軟質眼用レンズの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る低含水性軟質眼用レンズおよびその製造方法の実施の形態を説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0034】
本発明の低含水性軟質眼用レンズにおいて、低含水性とは含水率が10質量%以下であることを意味する。また、軟質とは引張弾性率が10MPa以下であることを意味する。
ここで、含水率は、例えば、コンタクトレンズ形状の試験片の乾燥状態での質量と、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試験片の表面水分を拭き取った際の質量(湿潤状態での質量)とから、[{(湿潤状態での質量)−(乾燥状態での質量)}/湿潤状態での質量](質量%)により与えられる。
【0035】
本明細書において、湿潤状態とは、試料を室温(23℃〜25℃)の純水あるいはホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬した状態を意味する。湿潤状態での物性値の測定は、試料を純水中あるいはホウ酸緩衝液中から取り出した後、可及的速やかに実施される。
【0036】
また、本明細書において、乾燥状態とは、湿潤状態の試料を40℃で16時間真空乾燥した状態を意味する。該真空乾燥における真空度は2hPa以下とする。乾燥状態での物性値の測定は、上記真空乾燥の後、可及的速やかに実施される。
【0037】
本明細書においてホウ酸緩衝液とは、特表2004−517163号公報の実施例1中に記載の「塩溶液」である。具体的には塩化ナトリウム8.48g、ホウ酸9.26g、ホウ酸ナトリウム(四ホウ酸ナトリウム十水和物)1.0g、およびエチレンジアミン四酢酸0.10gを純水に溶かして1000mLとした水溶液である。
【0038】
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、低含水性であることから、装用者の眼の乾燥感が小さく装用感に優れるという特徴を有する。また本発明の低含水性軟質眼用レンズは、低含水性であることから、細菌の繁殖リスクが小さいという利点を有する。含水率は5質量%以下がより好ましく2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が最も好ましい。含水率が高すぎると、眼用レンズ装用者の眼の乾燥感が大きくなったり、細菌の繁殖リスクが高まるなどするために好ましくない。
【0039】
本発明の低含水性軟質眼用レンズの引張弾性率の下限は、0.01MPa以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。一方、本発明の低含水性軟質眼用レンズの引張弾性率の上限は、5MPa以下が好ましく、3MPa以下がより好ましく、2MPa以下がさらに好ましく、1MPa以下がよりいっそう好ましく、0.6MPa以下が最も好ましい。引っ張り弾性率が小さすぎると、軟らかすぎてハンドリングが難しくなる傾向がある。一方、引っ張り弾性率が大きすぎると、硬すぎて装用感が悪くなる傾向がある。引っ張り弾性率2MPa以下になると良好な装用感が得られ、1MPa以下になるとさらに良好な装用感が得られるので好ましい。引張弾性率は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
【0040】
本発明の低含水性軟質眼用レンズの引張伸度(破断伸度)は100%〜1000%が好ましく、200%〜700%がより好ましい。引張伸度が小さいと、低含水性軟質眼用レンズが破れやすくなるので好ましくない。引張伸度が大きすぎる場合には、低含水性軟質眼用レンズが変形しやすくなる傾向があり好ましくない。引張伸度は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
【0041】
眼用レンズは、動的接触角(前進時、浸漬速度:0.1mm/sec)が100゜以下が好ましく、90゜以下がより好ましく、80゜以下がさらに好ましい。装用者の角膜への貼り付きを防止する観点からは、動的接触角はより低いことが好ましく、65゜以下が好ましく、60゜以下がより好ましく、55゜以下がさらに好ましく、50゜以下が一層好ましく、45゜以下が最も好ましい。動的接触角は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて、ホウ酸緩衝液に対して測定される。
【0042】
また、装用者の角膜への貼り付きを防止する観点からは、眼用レンズの表面の液膜保持時間が長いことが好ましい。ここで、液膜保持時間とは、ホウ酸緩衝液に浸漬した眼用レンズを液から引き上げ、空中に直径方向が垂直になるように保持した際に、眼用レンズ表面の液膜が切れずに保持される時間である。液膜保持時間は、5秒以上が好ましく、10秒以上がさらに好ましく、20秒以上が最も好ましい。ここで、直径とは、眼用レンズの縁部が構成する円の直径である。
【0043】
装用者の角膜への貼り付きを防止する観点からは、眼用レンズの表面が優れた易滑性を有することが好ましい。易滑性を表す指標としては、本明細書の実施例に示した方法で測定される摩擦が小さい方が好ましい。摩擦は、60gf(0.59N)以下が好ましく、50gf(0.49N)以下がより好ましく、40gf(0.39N)以下がさらに好ましく、30gf(0.29N)以下が最も好ましい。また、摩擦が極端に小さいと脱着用時の取扱が難しくなる傾向があるので、摩擦は5gf(0.049N)以上、好ましくは10gf(0.098N)以上であることが好ましい。摩擦は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
【0044】
眼用レンズの、防汚性は、ムチン付着、脂質(パルミチン酸メチル)付着、および人工涙液浸漬試験により、評価することができる。これらの評価による付着量が少ないものほど、装用感に優れるとともに、細菌繁殖リスクが低減されるために好ましい。ムチン付着量は5μg/cm
2以下が好ましく、4μg/cm
2以下がより好ましく、3μg/cm
2以下が最も好ましい。
【0045】
眼用レンズ装用者の眼への大気からの酸素供給の観点から、低含水性軟質眼用レンズは高い酸素透過性を有することが好ましい。酸素透過係数[×10
−11(cm
2/sec)mLO
2/(mL・hPa)]は50〜2000が好ましく、100〜1500がより好ましく、200〜1000がさらに好ましく、300〜700が最も好ましい。酸素透過性を大きくしすぎると機械物性などの他の物性に悪影響が出る場合があり好ましくない。酸素透過係数は、乾燥状態の試料にて測定される。
【0046】
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、レンズ形状の成型体(以下、基材と呼ぶ)を含み、該基材の表面の少なくとも一部に、親水性ポリマーからなる層が形成された低含水性軟質眼用レンズであり、少なくとも該層内の一部が架橋されている。上記親水性ポリマーは、例えば酸性ポリマーおよび/又は塩基性ポリマーである。
【0047】
基材は、高い酸素透過性を有するため、および、表面にコーティングされるポリマーとの間に共有結合を介さずに強固な密着性を得るために、珪素原子を5質量%以上含むことが好ましい。以下、珪素原子を5質量%以上含む基材を珪素含有基材と呼ぶ。
【0048】
珪素原子の含有量(質量%)は、乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として算出される。基材の珪素原子含有率は5質量%〜36質量%が好ましく、7質量%〜30質量%がより好ましく、10質量%〜30質量%がさらに好ましく、12質量%〜26質量%が最も好ましい。珪素原子の含有率が大きすぎる場合は引張弾性率が大きくなる場合があり好ましくない。
【0049】
基材における珪素原子の含有量は以下の方法で測定することができる。十分乾燥した基材を白金るつぼに秤取し、硫酸を加えてホットプレートおよびバーナーで加熱灰化する。灰化物を炭酸ナトリウムで融解し、水を加えて加熱溶解した後、硝酸を加え水で定容する。この溶液について、ICP発光分光分析法により珪素原子を測定し、基材中の含有量を求める。
【0050】
基材は、1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物である成分Aの重合体、または、上記成分Aおよび重合性官能基を有する化合物であって、成分Aとは異なる化合物との共重合体を主成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として50質量%以上含まれる成分であることを意味する。ここで、ポリシロキサン化合物とは Si−O−Si−O−Siで表される結合を有する化合物である。
【0051】
本発明において、親水性ポリマーとは、次のいずれかの条件を満たすポリマーである。
(1)25℃において0.01質量%以上の濃度で水に溶解するポリマー。ただし溶解過程においては加熱してもよい。
(2)コーティング層を形成したときに、25℃において該コーティング層の含水率が10質量%以上となるポリマー。ただし該コーティング層の乾燥質量を基準とする。ここで含水率とは、表面に付着した水の質量は含まない値である。
【0052】
珪素含有基材は珪素、炭素、酸素原子等を含有するため、基材の表面の元素分析を行うと、Si、C、O等の元素が検出される。一方、本発明においてコーティング層の形成のために用いられる酸性ポリマーおよび塩基性ポリマー等の親水性ポリマーは有機化合物であり、少なくともその1つのポリマーは窒素原子を含有し、かつ珪素原子を含有しない。さらに、コーティング層における窒素元素含有率が珪素含有基材に含まれる窒素元素含有率よりも多くなるポリマーを用いると、コーティングを行った後、単位領域あたりの窒素の元素含有率は増加する。その場合、コーティング層の付着量を窒素元素含有率の増加量で評価することができる。
【0053】
上記基材またはコーティング後のレンズ表面の元素分析は、X線光電子分光法(以下、XPSと略す)を用いて行うことができる。XPSにおいては、サンプル表面にX線を照射し、それによって生じる光電子のエネルギーを測定することで、サンプルの構成元素とその電子状態とを分析することができる。より詳細には、X線を試料に照射すると、X線は試料表面から数μmの深さの領域まで侵入するが、試料表面からの深さが概ね数nmから数十nmの範囲である場合に限り、光電子が脱出することができる。従って、表面のごく近傍で発生した光電子のみが検出される。この現象を利用して、XPSによりナノオーダーでのレンズ表面の化学状態を分析することができる。ここで、励起X線はAl、Mgが好ましく、本発明においてはAlを用いる。また、光電子脱出角度(試料表面に対する検出器の傾き)は90°とする。
【0054】
XPS分析では、検出された全元素含有量に対する特定の元素含有量の割合が得られる。また、上記の通りレンズ表面から数nmの深さの領域におけるデータを得るものであるため、一般に検出されるコーティング後の珪素含有量は、コーティング前の珪素含有量に比べて少なくなる。
【0055】
従って、コーティングによる親水性ポリマーの層の増加量を窒素の増加量を用いて純粋に比較する場合、XPSにより得られる窒素元素含有率(%)、珪素元素含有率(%)をそれぞれR(N)、R(Si)とすると、パラメータR(N)/R(Si)(=窒素元素含有率/珪素元素含有率)が有用である。以下、このパラメータをN/Si元素含有比という。
【0056】
コーティング前のN/Si元素含有比をX、コーティング後のN/Si元素含有比をYとしたとき、YとXとの差(Y−X)はコーティング層である親水性ポリマーの付着量の指標となる。Y−Xは0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.08以上が最も好ましい。
【0057】
コーティング前のレンズ表面におけるN/Si元素含有比(X)は、コーティング後のレンズからは直接測定できないことから、次のようにして測定した値で代用することができる。すなわち、先ずコーティング後のレンズを鋭利かつ清浄な刃物で2等分にしてレンズの断面を出す。このレンズの断面は、弓状となる。次に、当該断面の弓状の頂点付近かつ断面の厚み方向の中心付近の地点においてN/Si元素含有比の測定を行うことにより、Xを求める。
【0058】
また、レンズの実際の使用条件を考慮して、コーティング後のレンズに、後述する条件で行う所定の擦り洗いを施した後のN/Si元素含有比をZとしたとき、Z−Xは擦り洗い耐久性の指標となる。Z−Xは0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.06以上が最も好ましい。
【0059】
また、レンズの実際の使用条件を考慮して、上記コーティング後、擦り洗い前のレンズ表面におけるN/Si元素含有比(Y)と、擦り洗い後のレンズ表面におけるN/Si元素含有比(Z)との差(Y−Z)は、0.05以下であることが好ましく、0.04以下であることがより好ましく、0.03以下であることがさらに好ましく、0.02以下であることが特に好ましい。
【0060】
ここで、上記Y−X、Z−X、Y−Zの好ましい各範囲を示す境界値は、X、Y、Zを小数点以下3桁まで測定し、これらのX、Y、Zを用いて算出したY−X、Z−X、Y−Zの小数点以下第3位を四捨五入して求めた値である。
【0061】
なお、本発明において珪素原子の含有量(質量%)は、乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として算出される。珪素含有基材の珪素元素含有量の下限としては、上記の通り5質量%以上が好ましく、また、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、12質量%以上が最も好ましい。また、上限としては、36質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、26質量%以下が最も好ましい。珪素原子の含有量が多すぎる場合は引張弾性率が大きくなる場合があり好ましくない。
【0062】
珪素含有基材は、1分子あたり複数の重合性官能基を有するポリシロキサン化合物である成分Aの重合体、または、上記成分Aおよび重合性官能基を有する化合物であって、成分Aとは異なる化合物との共重合体を主成分とすることが好ましい。成分Aとは異なる化合物としては、
成分B:フルオロアルキル基を有する重合性モノマー、
成分M:1分子あたり1個の重合性官能基、およびシロキサニル基を有する単官能モノマー、
成分C:成分A、成分B、成分Mとは異なる成分、
の任意の組み合わせであることが好ましい。
ここで、主成分とは乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として50質量%以上含まれる成分であることを意味する。
【0063】
成分Aの数平均分子量は6000以上であることが好ましい。発明者らは、成分Aの数平均分子量がこの範囲にあることで、柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた低含水性軟質眼用レンズが得られることを見出した。成分Aのポリシロキサン化合物の数平均分子量は、耐折り曲げ性などの機械物性により優れた低含水性軟質眼用レンズが得られることから、8000以上が好ましい。成分Aの数平均分子量は8000〜100000の範囲にあることが好ましく、9000〜70000の範囲にあることがより好ましく、10000〜50000の範囲にあることが一層好ましい。成分Aの数平均分子量が小さすぎる場合には耐折り曲げ性などの機械物性が低くなる傾向があり、特に6000未満では耐折り曲げ性が低くなる。成分Aの数平均分子量が大きすぎる場合には、柔軟性や透明性が低下する傾向があり好ましくない。
【0064】
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、光学製品であるので、透明性が高いことが好ましい。透明性の基準としては、目視した際に透明で濁りがないことが好ましい。さらに眼用レンズは、レンズ投影機で観察した場合、濁りがほとんど観察されないことが好ましく、濁りが全く観察されないことが最も好ましい。
【0065】
成分Aの分散度(質量平均分子量を数平均分子量で除した値)は、6以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましく、1.5以下が最も好ましい。成分Aの分散度が小さい場合、他の成分との相溶性が向上し、得られるレンズの透明性が向上する、得られるレンズに含まれる抽出可能な成分が減る、レンズ成型に伴う収縮率が小さくなる、などの利点が生じる。レンズ成型に伴う収縮率は、レンズ成型比=[レンズ直径]/[モールドの空隙部の直径]で評価することができる。ここで、直径とは、レンズの縁部が構成する円の直径である。レンズ成型比は、1に近いほど高品位のレンズを安定に製造することが容易となる。成型比は0.85〜2.0の範囲が好ましく、0.9〜1.5の範囲がより好ましく、0.91〜1.3の範囲が最も好ましい。
【0066】
本発明において、成分Aの数平均分子量は、クロロホルムを溶媒として用いたゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。質量平均分子量および分散度(質量平均分子量を数平均分子量で除した値)も同様の方法で測定される。また、他の成分についても、同様の方法で数平均分子量、質量平均分子量、および分散度が測定される。
【0067】
なお、本明細書においては、質量平均分子量をMw、数平均分子量をMnで表す場合がある。また分子量1000を1kDと表記することがある。例えば「Mw33kD」という表記は「質量平均分子量33000」を表す。
【0068】
成分Aは、複数の重合性官能基を有するポリシロキサン化合物である。成分Aの重合性官能基の数は、1分子あたり2個以上であればよいが、より柔軟(低弾性率)な眼用レンズが得られやすいという観点からは、1分子あたり2個が好ましい。特に分子鎖の両末端に重合性官能基を有する構造が好ましい。
【0069】
成分Aの重合性官能基としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0070】
なお、本明細書において(メタ)アクリロイルという語はメタクリロイルおよびアクリロイルの両方を表すものであり、(メタ)アクリル、(メタ)アクリレートなどの語も同様である。
【0071】
成分Aとしては、下記式(A1)の構造を有するものが好ましい。
【化1】
【0072】
式(A1)中、X
1およびX
2はそれぞれ独立に重合性官能基を表す。R
1〜R
8はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、および炭素数1〜20のフルオロアルキル基から選ばれた置換基を表す。L
1およびL
2は、それぞれ独立に2価の基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に各繰返し単位の数を表す。
【0073】
X
1およびX
2としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものが好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0074】
R
1〜R
8の好適な具体例は、水素;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基;フェニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、およびノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。これらの中で、眼用レンズに良好な機械物性と高酸素透過性を与えるという観点からさらに好ましいのは、水素およびメチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。
【0075】
L
1およびL
2としては、炭素数1〜20の2価の基が好ましい。中でも式(A1)の化合物が高純度で得られやすい利点を有することから、下記式(LE1)〜(LE12)で表される基が好ましく、中でも下記式(LE1)、(LE3)、(LE9)および(LE11)で表される基がより好ましく、下記式(LE1)および(LE3)で表される基がさらに好ましく、下記式(LE1)で表される基が最も好ましい。なお、下記式(LE1)〜(LE12)は、左側が重合性官能基X
1またはX
2に結合する末端、右側が珪素原子に結合する末端として描かれている。
【化2】
【0076】
式(A1)中、aおよびbは、それぞれ独立に各繰返し単位の数を表す。aおよびbはそれぞれ独立に0〜1500の範囲が好ましい。aとbの合計値(a+b)は、80以上が好ましく、100以上がより好ましく、100〜1400がより好ましく、120〜950がより好ましく、130〜700がさらに好ましい。
【0077】
R
1〜R
8が全てメチル基の場合、b=0であり、aは、80〜1500が好ましく、100〜1400がより好ましく、120〜950がより好ましく、130〜700がさらに好ましい。この場合、aの値は、成分Aのポリシロキサン化合物の分子量によって決まる。
【0078】
本発明の成分Aは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
成分Aと共重合させる他の化合物として、上述したフルオロアルキル基を有する重合性モノマーである成分Bは、フルオロアルキル基に起因する臨界表面張力の低下により、撥水撥油性の性質を持ち、これにより、眼用レンズ表面が涙液中のタンパク質や脂質などの成分によって汚染されることを抑える効果がある。また、成分Bは、柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた低含水性軟質眼用レンズを与える効果がある。成分Bのフルオロアルキル基の好適な具体例は、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、およびノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。より好ましくは、炭素数2〜8のフルオロアルキル基、例えば、トリフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、オクタフルオロペンチル基、およびドデカフルオロオクチル基であり、最も好ましくはトリフルオロエチル基である。
【0079】
成分Bの重合性官能基としてはラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などであるが、これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0080】
柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた低含水性軟質眼用レンズが得られる効果が大きいことから、成分Bとして最も好ましいのは(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルである。かかる(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルの具体例としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、およびトリデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレートが挙げられる。トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。最も好ましくはトリフルオロエチル(メタ)アクリレートである。
【0081】
本発明のB成分は1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
共重合体中における成分Bの好ましい含有量は、成分A100質量部に対して、10〜500質量部、より好ましくは20〜400質量部、さらに好ましくは20〜200質量部である。成分Bの使用量が少なすぎる場合は、得られる眼用レンズに白濁が生じたり、耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向がある。
【0082】
さらにまた、上述した基材に用いる共重合体として、成分Aに加えて、1分子あたり1個の重合性官能基、およびシロキサニル基を有する単官能モノマーである成分Mをさらに共重合させたものを用いてもよい。本明細書において、シロキサニル基とはSi−O−Si結合を有する基を意味する。
【0083】
成分Mのシロキサニル基は直鎖状であることが好ましい。シロキサニル基が直鎖状であれば、得られる低含水性軟質眼用レンズの形状回復性が向上する。ここで直鎖状とは、重合性基を有する基と結合した珪素原子を起点とする、一本の線状に連なるSi−(O−Si)
n−1−O−Si結合で示される構造を指す(ただし、nは2以上の整数を表す)。得られる医療デバイスが十分な形状回復性を得るためにはnは3以上の整数が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、6以上が最も好ましい。ここで、「シロキサニル基が直鎖状である」とはシロキサニル基が上記の直鎖状構造を有し、且つ直鎖状構造の条件を満たさないSi−O−Si結合を有さないことを意味する。
【0084】
基材は、数平均分子量が300〜120000である成分Mを含む共重合体を主成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として50質量%以上含まれる成分であることを意味する。
【0085】
成分Mの数平均分子量は、300〜120000であることが好ましい。成分Mの数平均分子量がこの範囲にあることで、柔軟(低弾性率)で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた基材が得られる。成分Mの数平均分子量は、耐折り曲げ性などの機械物性により優れ、且つ形状回復性に優れた基材が得られることから、500以上がより好ましい。成分Mの数平均分子量は、1000〜25000の範囲にあることがより好ましく、5000〜15000の範囲にあることが一層好ましい。成分Mの数平均分子量が小さすぎる場合には耐折り曲げ性や形状回復性などの機械物性が低くなる傾向があり、特に500未満では耐折り曲げ性、および形状回復性が低くなることがある。成分Mの数平均分子量が大きすぎる場合には、柔軟性や透明性が低下する傾向があり好ましくない。
【0086】
成分Mの重合性官能基としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0087】
成分Mとしては、下記式(ML1)の構造を有するものが好ましい。
【化3】
式(ML1)中、X
3は重合性官能基を表す。R
11〜R
19はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、および炭素数1〜20のフルオロアルキル基から選ばれた置換基を表す。L
3は2価の基を表す。cおよびdは、それぞれ独立に0〜700の整数を表す。ただしcとdは同時に0ではない。
【0088】
X
3としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものが好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0089】
また、成分Mの重合性官能基は、良好な機械物性の低含水性軟質眼用レンズが得られやすいことから、成分Aの重合性官能基と共重合可能であることがより好ましく、成分Mと成分Aが均一に共重合されることで良好な表面特性を有する低含水性軟質眼用レンズが得られやすいことから、成分Aの重合性官能基と同一であることがさらに好ましい。
【0090】
R
11〜R
19の好適な具体例は、水素;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基;フェニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、およびノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。これらの中で、低含水性軟質眼用レンズに良好な機械物性と高酸素透過性を与えるという観点からさらに好ましいのは、水素およびメチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。
【0091】
L
3としては、炭素数1〜20の2価の基が好ましい。中でも式(ML1)の化合物が高純度で得られやすい利点を有することから、下記式(LE1)〜(LE12)で表される基が好ましく、中でも下記式(LE1)、(LE3)、(LE9)および(LE11)で表される基がより好ましく、下記式(LE1)および(LE3)で表される基がさらに好ましく、下記式(LE1)で表される基が最も好ましい。なお、下記式(LE1)〜(LE12)は、左側が重合性官能基X
3に結合する末端、右側が珪素原子に結合する末端として描かれている。
【0093】
式(ML1)中、cとdの合計値(c+d)は、3以上が好ましく、10以上がより好ましく、10〜500がより好ましく、30〜300がより好ましく、50〜200がさらに好ましい。
【0094】
R
11〜R
18が全てメチル基の場合、d=0であり、cは、3〜700が好ましく、10〜500がより好ましく、30〜300がより好ましく、50〜200がさらに好ましい。この場合、cの値は、成分Mの分子量によって決まる。
【0095】
本発明の低含水性軟質眼用レンズの基材において、成分Mは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の低含水性軟質眼用レンズの基材が適当な量の成分Mを含有することにより、架橋密度が減少してポリマーの自由度が大きくなり、適度に柔らかい低弾性率の基材を実現することができる。これに対し、成分Mの含有量が少なすぎると架橋密度が高くなり、基材が硬くなる。また、成分Mの含有量が多すぎると軟らかくなりすぎ、破れやすくなるため好ましくない。
【0096】
また、本発明の低含水性軟質眼用レンズの基材において、成分Mと成分Aとの質量比は、成分A100質量部に対して成分Mが5〜200質量部、より好ましくは7〜150質量部、最も好ましくは10〜100質量部、であることが好ましい。成分Mの含有量が、成分A100質量部に対し5質量部を下まわると、架橋密度が高くなり、基材が硬くなる。また、成分Mの含有量が、成分A100質量部に対し200質量部を超えると、軟らかくなりすぎ、破れやすくなるため好ましくない。
【0097】
ここで、本発明の低含水性軟質眼用レンズは、基材表面の少なくとも一部に、親水性ポリマーからなる層(以下、コーティング層と呼ぶ)が形成されており、少なくとも該層内の一部が架橋されていることを特徴とするが、該架橋は好ましくは放射線の照射により生成する。本発明の低含水性軟質眼用レンズにおいては、上記基材と上記層との間で少なくとも一部が架橋されていることもある。これにより、レンズの表面に良好な濡れ性と易滑性が付与され、優れた装用感を与えることができる。しかしながら、放射線の照射は同時に基材内の一部にも架橋を生成する可能性があり、基材内で過度の架橋が生成すると、基材の弾性率が上がって柔軟さが損なわれるために好ましくない。しかしながら本発明の低含水性軟質眼用レンズの基材の原料が適当な量の成分Mを含有することにより、架橋密度が減少してポリマーの自由度が大きくなり、放射線を照射した際の基材の弾性率の過度の上昇を抑制することができ、適度に柔らかい低弾性率の基材を得ることができるという利点がある。
【0098】
また、上述したように、基材に用いる共重合体として、成分A、成分B、成分Mとは異なる成分である成分Cを用いる場合、成分Cは、共重合体のガラス移転点を室温あるいは0℃以下に下げるものがよい。これらは凝集エネルギーを低下させるので、共重合体にゴム弾性と柔らかさを与える効果がある。
【0099】
成分Cの重合性官能基としてはラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などであるが、これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
【0100】
成分Cとして、柔軟性や耐折り曲げ性などの機械的特性の改善のために好適な例は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびn−ステアリル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、より好ましくは、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレートである。これらの中でアルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルはさらに好ましい。アルキル基の炭素数が大きすぎると得られるレンズの透明性が低下する場合があり好ましくない。
【0101】
さらに、機械的性質、表面濡れ性、レンズの寸法安定性などを向上させるためには、所望に応じ、以下に述べるモノマーを成分Cとして共重合させることができる。
機械的性質を向上させるためのモノマーとしては、例えばスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
【0102】
表面濡れ性を向上させるためのモノマーとしては、例えばメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、およびN−ビニル−N−メチルアセトアミド等が挙げられる。中でもN,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、およびN−ビニル−N−メチルアセトアミドなどのアミド基を含有するモノマーが好ましい。
【0103】
レンズの寸法安定性を向上させるためのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビニルメタクリレート、アクリルメタクリレートおよびこれらのメタクリレート類に対応するアクリレート類、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0104】
成分Cは、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
成分Cの好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.001〜400質量部、より好ましくは0.01〜300質量部、さらに好ましくは0.01〜200質量部、最も好ましくは0.01〜30質量部である。成分Cの使用量が少なすぎる場合は成分Cに期待する効果が得られにくくなる。成分Cの使用量が多すぎる場合は得られる眼用レンズに白濁が生じたり耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向がある。
【0105】
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、紫外線吸収剤、色素、着色剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬および栄養補助成分、相溶化成分、抗菌成分、離型剤等の成分をさらに含んでいてもよい。上記した成分はいずれも、非反応性形態または共重合形態で含有され得る。
【0106】
紫外線吸収剤を含む場合、眼用レンズ装用者の眼を有害紫外線から保護することができる。また、着色剤を含む場合、眼用レンズが着色されて、識別が容易になり、取扱時の利便性が向上する。
【0107】
上記した成分はいずれも、非反応性形態または共重合形態で含有され得る。上記成分を共重合した場合、すなわち重合性基を有する紫外線吸収剤、重合性基を有する着色剤などを使用した場合は、該成分が基材に共重合されて固定化されるので溶出の可能性が小さくなるので好ましい。
【0108】
基材は、紫外線吸収剤および着色剤から選ばれる成分、ならびに、これら以外の2種類以上の成分C(以下、成分Ck)からなることが好ましい。その場合、成分Ckとしては、炭素数1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから少なくとも1種類、上記表面濡れ性を向上させるためのモノマーから少なくとも1種類が選ばれることが好ましい。成分Ckを2種類以上使用することにより、紫外線吸収剤や着色剤との親和性が増し、透明な基材を得ることが容易になる。
【0109】
紫外線吸収剤を用いる場合、その好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.01〜20質量部、より好ましくは0.05〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜2質量部である。着色剤を用いる場合、その好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.00001〜5質量部、より好ましくは0.0001〜1質量部、さらに好ましくは0.0001〜0.5質量部である。紫外線吸収剤や着色剤の含有量が少なすぎる場合は、紫外線吸収効果や着色効果が得られにくくなる。逆に、多すぎる場合はこれらの成分を基材中に溶解せしめることが難しくなる。成分Ckの好ましい使用量は、それぞれ、成分A100質量部に対して、0.1〜100質量部、より好ましくは1〜80質量部、さらに好ましくは2〜50質量部である。成分Ckの使用量が少なすぎる場合は、紫外線吸収剤や着色剤との親和性が不足して透明な基材を得るのが難しくなる傾向がある。成分Ckの使用量が多すぎる場合も得られる眼用レンズに白濁が生じたり耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向があり好ましくない。
【0110】
また、本発明の低含水性軟質眼用レンズの基材は、架橋度が2.0〜18.3の範囲であることが好ましい。架橋度は、下記式(Q1)で表される。
【化5】
【0111】
式(Q1)において、Qnは1分子あたりn個の重合性基を有するモノマーの合計ミリモル量、Wnは1分子あたりn個の重合性基を有するモノマーの合計質量(kg)を表す。また、モノマーの分子量が分布を有する場合は、数平均分子量を用いてミリモル量を計算することとする。
【0112】
本発明の基材の架橋度が、2.0より小さくなると、柔らかすぎてハンドリングが難しくなり、18.3より大きくなると硬すぎて装用感が悪くなる傾向があるので好ましくない。架橋度のより好ましい範囲は3.5〜16.0であり、さらに好ましい範囲は8.0〜15.0であり、最も好ましい範囲は9.0〜14.0である。
【0113】
低含水性軟質眼用レンズの基材、すなわちレンズ形状の成型体を製造する方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、いったん、丸棒や板状の重合体を得て、これを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、およびスピンキャスト重合法などを使用することができる。レンズを切削加工で得る場合には、低温での冷凍切削が好適である。
【0114】
一例として、成分Aを含む原料組成物をモールド重合法により重合して眼用レンズを製造する方法について、次に説明する。まず、一定の形状を有する2枚のモールド部材間の空隙に原料組成物を充填する。モールド部材の材料としては、樹脂、ガラス、セラミックス、金属等が挙げられる。光重合を行う場合は光学的に透明な素材が好ましいので、樹脂またはガラスが好ましく使用される。モールド部材の形状や原料組成物の性状によっては、眼用レンズに一定の厚みを与え、且つ、空隙に充填した原料組成物の液モレを防止するために、ガスケットを用いてもよい。空隙に原料組成物を充填したモールドは、続いて紫外線、可視光線またはこれらの組み合わせなどの活性光線を照射されるか、もしくはオーブンや液槽中などで加熱されることにより、充填した原料組成物を重合する。2通りの重合方法を併用する方法もありうる。すなわち、光重合の後に加熱重合したり、または加熱重合後に光重合することもできる。光重合の具体的態様は、例えば水銀ランプや紫外線ランプ(例えばFL15BL、東芝)の光のような紫外線を含む光を短時間(通常は1時間以下)照射する。熱重合を行う場合には、組成物を室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めて行く条件が、眼用レンズの光学的な均一性および品位を保持し、且つ再現性を高めるために好まれる。
【0115】
重合に際しては、重合をしやすくするために過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤または光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度において最適な分解特性を有するものが選択される。一般的には、10時間半減期温度が40〜120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光重合を行う場合の光開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、およびこれらの金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独で、または混合して用いられる。重合開始剤の量は、重合混合物に対し最大で5質量%までが好ましい。
【0116】
重合する際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。溶媒の例としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、テトラヒドロリナロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびポリエチレングリコール等のアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルおよびポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチルおよび安息香酸メチル等のエステル系溶媒;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタンおよびノルマルオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロへキサンおよびエチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;並びに石油系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0117】
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、基材表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマー等の親水性ポリマーからなる層(以下、コーティング層と呼ぶ)が形成されている。これら親水性ポリマーの内、少なくとも一種のポリマーは窒素原子を含有し、且つ珪素原子を含有しないことが好ましい。
【0118】
表面の濡れ性、および易滑性の観点から、親水性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリ(N−メチルビニルアセトアミド)、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカプロラクタム、各種セルロース誘導体、および各種多糖類が、好適な例として挙げられる。以上は主としてホモポリマーの例を挙げたが、これらのコポリマーも好適である。
【0119】
親水性ポリマーの中でも、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーは特に好適である。
好ましい例として、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーを使用する場合、少なくとも1つの酸性ポリマーおよび少なくとも1つの塩基性ポリマーが窒素原子を含有し、且つ珪素原子を含有しないことが好ましい。また、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの全てが珪素原子を含有しないことがより好ましい。ここでいう「含有」とは、ポリマーを構成する原子として含有する、あるいは含有しないことをいい、これらのポリマーと単に混合した化合物、またはこれらのポリマーの溶媒に含まれる原子を意図するものではない。いずれにしても、コーティング層における窒素元素含有率が珪素含有基材の窒素元素含有率よりも大きいものが用いられる。本発明において「層」とは基材表面上に形成される分子の集合体を意味する。本発明の「層」は微視的には平面方向や深さ方向に均一な構造を有している必要はなく、また各ポリマーが平らに積み重なった構造である必要はない。例えば、本発明の層においては微視的に酸性ポリマーおよび/または塩基性ポリマーが存在しない部分があってもよい。また酸性ポリマー、塩基性ポリマー、および基材から選ばれた任意の2種以上が混在したり、層の明確な界面が存在しない場合もありうる。
【0120】
親水性ポリマーからなる層の厚みは、厚すぎると光学的に不均一になりやすいことから100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましく、0.5μm以下が特に好ましい。一方、層の厚みが薄すぎると表面の親水性が不足しやすいことから、0.1nm以上が好ましく、1nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましく、50nm以上が特に好ましい。ここで親水性ポリマーからなる層の厚みは、乾燥状態での厚みを意味し、電子顕微鏡などの手法で求めることができる。
【0121】
上記コーティング層は、少なくとも層内の一部において架橋されている。また、上記基材とコーティング層との間で少なくとも一部が架橋されていることもある。ここで、架橋とは、ポリマー同士が自らの官能基又は架橋剤を用いて橋架け構造を作って結合することである。
【0122】
本発明においては、コーティング層が架橋されていることを判定する方法として、下記(1)または(2)のいずれか、あるいはこれらの組み合わせを適用することができる。
(1)機器分析的手法により層内の少なくとも一部が架橋されているか否かを判定する。
(2)コーティング層に含まれるポリマーを、該ポリマー単体であれば溶解可能な溶媒ないし溶液に溶解させ、該ポリマーの架橋物を含む不溶物を観測する。
【0123】
なお、コーティング層のモデル成形体を、上記コーティング層において架橋が形成される工程と同一の条件(または実質同一の条件)に暴露し、その後、上記(1)または(2)の方法で、架橋の有無を判定してもよい。コーティング層のモデル成形体としては、例えばコーティング層に含まれるポリマーのフィルム状成形体(成形体I)が挙げられる。また、上記基材と同一(ないし実質同一)材質のフィルム状成形体(成形体II)の上に成形体Iが形成されたものを用いてもよい。後者のモデル成形体は、基材とコーティング層の間で架橋されていることの判定に有用である。
【0124】
上記架橋は、基材に少なくとも親水性ポリマーを付着させた状態で放射線を照射することにより生じさせることが好ましい。放射線は、各種のイオン線、電子線、陽電子線、エックス線、ガンマ(γ)線、中性子線が好ましく、より好ましくは電子線およびγ線である。最も好ましくはγ線である。
【0125】
上述のようにコーティング層内やコーティング層と基材との間で架橋を生じさせることにより、上述した擦り洗い耐久性が付与される他、レンズの表面に良好な濡れ性と易滑性が付与され、優れた装用感を与えることができる。
【0126】
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、コンタクトレンズ形状の試験片をホウ酸緩衝液に浸漬した後、試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、人差し指で所定回数擦った時の感応評価として、非常に優れた易滑性があり、又は、優れた易滑性がある(中程度の易滑性と非常に優れた易滑性との中間程度)。
【0127】
また、本発明の低含水性軟質眼用レンズは、コンタクトレンズ形状の試験片をホウ酸緩衝液に浸漬した後、試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、空中に直径方向が垂直になるように保持した際の表面の様子に対する目視観察において、表面の液膜が5秒以上保持されて切れる程度の水濡れ性を少なくとも有する。ここで、直径とは、コンタクトレンズの縁部が構成する円の直径である。
【0128】
本発明の低含水性軟質眼用レンズにおいては、低含水性且つ軟質であるにも関わらず、また基材が中性であっても、表面に親水性ポリマーからなるコーティング層を形成することによって、レンズ表面に十分な濡れ性、易滑性および防汚性を付与することが可能である。これにより、装用時にレンズが角膜に貼り付く現象を大幅に低減ないし回避することができる。
【0129】
本発明の低含水性軟質眼用レンズのコーティング層は、基材との間に共有結合を有する必要はない。簡便な工程での製造が可能となることから、コーティング層は基材との間に共有結合を有さないことが好ましい。コーティング層は、基材との間に共有結合を有さなくても、実用的な耐久性を有する。
【0130】
なお、低含水性軟質眼用レンズの耐久性は、例えば成人男性の手の平の中央に窪みを作ってそこにサンプル(コンタクトレンズ形状)を置き、そこに必要に応じて所定の洗浄液を加え、もう一方の手の人差し指の腹で表裏100回ずつ擦った後、サンプルをホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で、上記水濡れ性、易滑性、およびコーティング量を判断することにより評価される。低含水性軟質眼用レンズの表面に、放射線が照射されたコーティング層を設けた場合、上述した擦り洗い処理を施した後でも、良好な水濡れ性および易滑性を有する。なお、上記擦り洗い方法は、想定されるコンタクトレンズの使用方法を考慮して定めたものである。
【0131】
本発明の低含水性軟質眼用レンズのコーティング層は、下記に詳細に説明する親水性ポリマー溶液(「溶液」は、水溶液を意味する)で基材表面を処理することにより形成する。ここで、水溶液とは、水を主たる成分とする溶液である。
【0132】
本発明の親水性ポリマー溶液は、通常、1種(1種とは、1の合成反応により製造されたポリマー群を意味する。1種(同一)のポリマーであっても、濃度が異なる溶液は1種とはみなさない。また、構成するモノマー種が同一であっても、配合比を変えて合成したポリマーは1種ではない)のポリマーを含有する溶液を意味する。
【0133】
コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー、および1種以上の塩基性ポリマーからなることが好ましい。2種以上の酸性ポリマーまたは2種以上の塩基性ポリマーを用いると、眼用レンズ表面に易滑性や防汚性などの性質を発現させやすいためにより好ましい。特に2種以上の酸性ポリマーと1種以上の塩基性ポリマーを使用した場合にその傾向が強まるのでさらに好ましい。
【0134】
コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理を1回以上、および1種以上の塩基性ポリマー溶液による処理を1回以上行うことにより形成されることが好ましい。
【0135】
また、コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理および1種以上の塩基性ポリマー溶液による処理を、好ましくはそれぞれ1〜5回、より好ましくはそれぞれ1〜3回、さらに好ましくはそれぞれ1〜2回行うことにより基材の表面に形成される。酸性ポリマー溶液による処理の回数と塩基性ポリマー溶液による処理の回数は異なっていてもよい。
【0136】
本発明の低含水性軟質眼用レンズにおいては、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理および1種以上の塩基性ポリマー溶液による処理が合計2回または3回という極めて少ない回数で優れた濡れ性や易滑性を付与しうる。これは製造工程の短縮化という観点から、工業的に非常に重要な意味を持つ。その意味で、本発明の低含水性軟質眼用レンズにおいて、酸性ポリマー溶液による処理および塩基性ポリマー溶液による処理の合計は2回または3回が好ましい。
【0137】
本発明の低含水性軟質眼用レンズにかかるコーティング層は、2種の酸性ポリマー溶液による処理を各1回および塩基性ポリマー溶液による処理を1回行うことが好適である。
【0138】
発明者らは、コーティング層が、酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液のいずれか一方による処理のみを行うだけでは、濡れ性や易滑性の発現がほとんど見られないことも確認している。
【0139】
塩基性ポリマーとしては、塩基性を有する複数の基をポリマー鎖に沿って有するホモポリマーまたは共重合ポリマーを好適に用いることができる。塩基性を有する基としてはアミノ基およびその塩が好適である。たとえば、このような塩基性ポリマーの好適な例は、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアミン)、ポリアニリン、ポリ(アミノスチレン)、ポリ(N,N−ジアルキルアミノエチルメタクリレート)などのアミノ基含有(メタ)アクリレート重合体、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)などのアミノ基含有(メタ)アクリルアミド重合体およびこれらの塩などである。以上はホモポリマーの例であるが、これらの共重合体(すなわち上記塩基性ポリマーを構成する塩基性モノマーどうしの共重合体、あるいは塩基性モノマーと他のモノマーの共重合体)も好適に用いることができる。
【0140】
塩基性ポリマーが共重合体である場合、該共重合体を構成する塩基性モノマーとしては、重合性の高さという点でアリル基、ビニル基、および(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが最も好ましい。該共重合体を構成する塩基性モノマーとして好適なものを例示すれば、アリルアミン、ビニルアミン(前駆体としてN−ビニルカルボン酸アミド)、ビニルベンジルトリメチルアミン、アミノ基含有スチレン、アミノ基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、およびこれらの塩である。これらの中でも重合性の高さからアミノ基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、およびこれらの塩がより好ましく、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、およびこれらの塩が最も好ましい。
【0141】
塩基性ポリマーは、第四級アンモニウム構造を有するポリマーであってもよい。第四級アンモニウム構造を有するポリマー化合物は、軟質眼用レンズのコーティングに使用されると、軟質眼用レンズに抗微生物性を付与することができる。
【0142】
酸性ポリマーとしては、酸性を有する複数の基をポリマー鎖に沿って有するホモポリマーまたは共重合ポリマーを好適に用いることができる。酸性を有する基としては、カルボキシル基、スルホン酸基およびこれらの塩が好適であり、カルボキシル基およびその塩が最も好適である。たとえば、このような酸性ポリマーの好適な例は、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(ビニル安息香酸)、ポリ(チオフェン−3−酢酸)、ポリ(4−スチレンスルホン酸)、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)およびこれらの塩などである。以上はホモポリマーの例であるが、これらの共重合体(すなわち上記酸性ポリマーを構成する酸性モノマーどうしの共重合体、あるいは酸性モノマーと他のモノマーの共重合体)も好適に用いることができる。
【0143】
酸性ポリマーが共重合体である場合、該共重合体を構成する酸性モノマーとしては、重合性の高さという点でアリル基、ビニル基、および(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが最も好ましい。該共重合体を構成する酸性モノマーとして好適なものを例示すれば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩である。これらの中で、(メタ)アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩がより好ましく、最も好ましいのは(メタ)アクリル酸、およびその塩である。
【0144】
塩基性ポリマーおよび酸性ポリマーのうちの少なくとも1種が、アミド基および水酸基から選ばれた基を有するポリマーであることが好ましい。塩基性ポリマーおよび/または酸性ポリマーがアミド基を有する場合、濡れ性のみならず易滑性のある表面を形成できるために好ましい。塩基性ポリマーおよび/または酸性ポリマーが水酸基を有する場合、濡れ性のみならず涙液に対する防汚性に優れた表面を形成できるために好ましい。
【0145】
上記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーのうちの2種以上が、水酸基およびアミド基から選ばれた基を有するポリマーであることがより好ましい。すなわち、低含水性軟質眼用レンズが、水酸基を有する酸性ポリマー、水酸基を有する塩基性ポリマー、アミド基を有する酸性ポリマーおよびアミド基を有する塩基性ポリマーから選ばれた2種以上を含むことが好ましい。この場合、易滑性のある表面が形成される効果、または涙液に対する防汚性に優れた表面を形成できる効果がより顕著に発現できるために好ましい。
【0146】
また、コーティング層が、水酸基を有する酸性ポリマーおよび水酸基を有する塩基性ポリマーから選ばれた少なくとも1種、ならびにアミド基を有する酸性ポリマーおよびアミド基を有する塩基性ポリマーから選ばれた少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。この場合、易滑性のある表面が形成される効果、および涙液に対する防汚性に優れた表面を形成できる効果の両方が発現できるために好ましい。
【0147】
アミド基を有する塩基性ポリマーの例としては、アミノ基を有するポリアミド類、部分加水分解キトサン、塩基性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。
【0148】
アミド基を有する酸性ポリマーの例としては、カルボキシル基を有するポリアミド類、酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。
【0149】
水酸基を有する塩基性ポリマーの例としては、キチンなどのアミノ多糖類、塩基性モノマーと水酸基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。
【0150】
水酸基を有する酸性ポリマーの例としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロースなどの酸性基を有する多糖類、酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。
【0151】
アミド基を有するモノマーとしては、重合の容易さの点で(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーおよびN−ビニルカルボン酸アミド(環状のものを含む)が好ましい。かかるモノマーの好適な例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、およびアクリルアミドを挙げることができる。これら中でも易滑性の点で好ましいのは、N−ビニルピロリドンおよびN,N−ジメチルアクリルアミドであり、N,N−ジメチルアクリルアミドが最も好ましい。
【0152】
水酸基を有するモノマーの好適な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、ヒドロキシスチレン、ビニルアルコール(前駆体としてカルボン酸ビニルエステル)を挙げることができる。水酸基を有するモノマーとしては、重合の容易さの点で(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルモノマーはより好ましい。これらの中で、涙液に対する防汚性の点で好ましいのは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、およびグリセロール(メタ)アクリレートであり、中でもヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
【0153】
塩基性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/N−ビニルピロリドン共重合体、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/N−ビニルピロリドン共重合体、およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。最も好ましくはN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。
【0154】
酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、(メタ)アクリル酸/N−ビニルピロリドン共重合体、(メタ)アクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/N−ビニルピロリドン共重合体、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。最も好ましくは(メタ)アクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。
【0155】
塩基性モノマーと水酸基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体である。最も好ましくはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体である。
【0156】
酸性モノマーと水酸基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、(メタ)アクリル酸/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体である。最も好ましくは(メタ)アクリル酸/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体である。
【0157】
上記塩基性モノマーあるいは酸性モノマーと他のモノマーの共重合体を用いる場合、その共重合比率は[塩基性モノマーあるいは酸性モノマーの質量]/[他のモノマーの質量]が、1/99〜99/1が好ましく、2/98〜90/10がより好ましく、10/90〜80/20がさらに好ましい。共重合比率がこの範囲にある場合に、易滑性や涙液に対する防汚性などの機能を発現しやすくなる。
【0158】
コーティング層の種々の特性、たとえば厚さを変えるために、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの分子量を変えることができる。具体的には、分子量を増すと、一般にコーティング層の厚さは増す。しかし、分子量が大きすぎる場合、粘度増大により取り扱い難さが増す可能性がある。そのため、本発明で使用される酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーは、2000〜150000の分子量を有することが好ましい。より好ましくは、分子量5000〜100000であり、さらに好ましくは、75000〜100000である。酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(水系溶媒)で測定されるポリエチレングリコール換算の質量平均分子量である。
【0159】
コーティング層の塗布は、たとえばWO99/35520、WO01/57118または米国特許公報第2001−0045676号に記載されているような多数の方法で達成することができる。
【0160】
次に、本発明の低含水性軟質眼用レンズの製造方法について説明する。本発明の低含水性軟質眼用レンズは、レンズ形状の成型体(基材)の表面に、1種以上の酸性ポリマー溶液と1種以上の塩基性ポリマー溶液をそれぞれ1〜5回、より好ましくはそれぞれ1〜3回、さらに好ましくはそれぞれ1〜2回塗布してコーティング層を形成し、さらに、該コーティング層に対して放射線(好ましくはγ線)を照射することにより得られる。酸性ポリマー溶液の塗布工程と塩基性ポリマー溶液の塗布工程の回数は異なっていてもよい。
【0161】
発明者らは、本発明の低含水性軟質眼用レンズの製造方法において、1種以上の酸性ポリマー溶液の塗布工程および1種以上の塩基性ポリマー溶液の塗布工程が合計2回または3回という極めて少ない回数で優れた濡れ性や易滑性を付与しうることを見出した。これは製造工程の短縮化という観点から、工業的に非常に重要な意味を持つ。その意味で、酸性ポリマー溶液の塗布工程および塩基性ポリマー溶液の塗布工程の合計は2回または3回が好ましい。
【0162】
濡れ性、易滑性、および製造工程短縮の観点から、コーティング層の塗布は、下記の構成1〜4から選ばれた構成で施されることが好ましい。下記の表記は、成型体表面に左から順に各塗布工程が施されることを表している。
【0163】
構成1:塩基性ポリマー溶液の塗布/酸性ポリマー溶液の塗布
構成2:酸性ポリマー溶液の塗布/塩基性ポリマー溶液の塗布
構成3:塩基性ポリマー溶液の塗布/酸性ポリマー溶液の塗布/塩基性ポリマー溶液の塗布
構成4:酸性ポリマー溶液の塗布/塩基性ポリマー溶液の塗布/酸性ポリマー溶液の塗布
これらの構成の中でも、構成1と構成4が、得られる低含水性軟質眼用レンズが特に優れた濡れ性を示すためにより好ましい。
【0164】
酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液を塗布するにあたって、基材の表面は、未処理であっても、処理済みであってもよい。ここで基材の表面が処理済みであるとは、基材の表面を公知の手法によって表面処理または表面改質することをいう。表面処理または表面改質の好適な例としては、プラズマ処理、化学的改質、化学的官能化、およびプラズマコーティングなどである。
【0165】
本発明の低含水性軟質眼用レンズの製造方法の好ましい態様の1つは、下記工程1〜工程4をこの順に含むものである。
<工程1>
モノマーの混合物を重合して低含水性軟質のレンズ形状の成型体を得る工程。
<工程2>
成型体を塩基性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該塩基性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。
<工程3>
成型体を酸性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該酸性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。
<工程4>
成型体に放射線を照射する工程。
【0166】
上記のように、レンズ形状の成型体を酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液に順次接触させることにより、該成型体上に酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層を形成することができる。その後、余剰のポリマーを十分に洗浄除去することが好ましい。
【0167】
上記成型体を酸性ポリマー溶液または塩基性ポリマー溶液に接触させる方法としては、浸漬法(ディップ法)、刷毛塗り法、スプレーコーティング法、スピンコート法、ダイコート法、スキージ法などの種々のコーティング手法を適用できる。
【0168】
溶液の接触を浸漬法で行う場合、浸漬時間は、多くの因子に応じて変化させることができる。酸性ポリマー溶液または塩基性ポリマー溶液への成型体の浸漬は、好ましくは、1〜30分間、より好ましくは2〜20分間、そして最も好ましくは1〜5分間の間行う。
【0169】
酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液の濃度は、酸性ポリマーないし塩基性ポリマーの性質、所望のコーティング層の厚さ、およびその他の多数の因子に応じて変化させることができる。好ましい酸性ポリマーまたは塩基性ポリマーの濃度は、0.001〜10質量%、より好ましくは0.005〜5質量%、さらに好ましくは0.01〜3質量%、そして最も好ましくは0.7〜1.3質量%である。
【0170】
酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液pHは、好ましくは2〜5、より好ましくは2.5〜4.5に維持すると良い。
【0171】
余剰の酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの洗浄除去は、一般に清浄な水または有機溶媒を用いて、コーティング後の成型体をすすぐことによって行われる。すすぎは該成型体を水または有機溶媒に浸漬したり、水流や有機溶媒流にさらすことで行うことが好ましい。すすぎは、1つの工程で完了させてもよいが、すすぎの工程を複数回行うほうが、効率的であることが認められた。2〜5の工程ですすぎを行うのが好ましい。すすぎ溶液へのそれぞれの浸漬には、1〜3分間を費やすのが好ましい。
【0172】
すすぎ溶液としては純水も好ましいが、コーティング層の密着を高めるために、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜5、そしてさらにより好ましくは2.5〜4.5のpHに緩衝された水溶液も好適に用いられる。
【0173】
過剰のすすぎ溶液の乾燥または除去を行う工程を含んでも良い。成型体を大気雰囲気下に単に放置することによって、成型体はある程度乾燥させることができるが、緩やかな空気流を表面に送ることによって、乾燥を亢進することが好ましい。空気流の流速は、乾燥する材料の強度、および材料の機械的固定(fixturing)の関数として調節することができる。成型体を完全に乾燥してしまう必要はない。ここでは、成型体の乾燥よりはむしろ、成型体表面に密着した溶液の液滴を除去することが重要である。したがって、成型体表面上の水または溶液の膜が除去される程度にまで乾燥するだけでよく、その方が工程時間の短縮のつながるために好ましい。
【0174】
酸性ポリマーと塩基性ポリマーとは交互に塗布することが好ましい。交互に塗布することで、どちらか一方のみでは得られない優れた濡れ性や易滑性、さらには優れた装用感を有する低含水性軟質眼用レンズを得ることができる。
【0175】
コーティング層は、非対称であることができる。ここで「非対称」とは、低含水性軟質眼用レンズの第一の面と反対側の第二の面とで異なるコーティング層を有することをいう。ここで「異なるコーティング層」とは、第一の面に形成されたコーティング層と第二の面に形成されたコーティング層とが、異なる表面特性または機能性を有することをいう。
【0176】
コーティング層の厚さは、塩化ナトリウムなどの一つまたはそれ以上の塩を酸性ポリマー溶液または塩基性ポリマー溶液に加えることによって、調節することができる。好ましい塩濃度は、0.1〜2.0質量%である。塩の濃度が上昇するにつれて、高分子電解質は、より球状の立体構造をとる。しかし濃度が高くなりすぎると、高分子電解質は、成型体表面に、沈着するとしても良好には沈着しない。より好ましい塩濃度は、0.7〜1.3質量%である。
【0177】
放射線の照射は、成型体をコーティング液に浸漬した状態で行っても良いし、成型体をコーティング液から引き出して洗浄した後で行っても良い。また、成型体をコーティング液以外の液体に浸漬した状態で放射線の照射を行うことも好ましく行われる。この場合、照射線がより効率的に作用するために好ましい。この場合、コーティングした成型体を浸漬するために使用する液体のための溶媒は有機系、無機系の各種溶媒が適用可能であり特に制限はない。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3,7−ジメチル−3−オクタノールなどの各種アルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラファインなどの各種脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコールなどの各種エステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などの各種グリコールエーテル系溶媒であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。これらのうち、最も好ましいのは水である。成型体を水系の液体に浸漬した状態で放射線の照射を行う場合、水系の液体としては、純水のほかに、生理食塩水、リン酸系の緩衝液(好ましくはpH7.1〜7.3)、ホウ酸系の緩衝液(好ましくはpH7.1〜7.3)が好適である。
成型体を容器に密閉した状態で放射線を照射すれば、成型体の滅菌を同時に行うことができるという利点がある。
【0178】
放射線としては、各種のイオン線、電子線、陽電子線、エックス線、γ線、中性子線が好ましく、より好ましくは電子線およびγ線であり、最も好ましくはγ線を用いると良い。この場合、照射する放射線の線量は少なすぎると成型体とコーティング層の十分な結合が得られないことから、線量は1kGy以上が好ましく、5kGy以上がより好ましい。また、照射する放射線の線量が多すぎると成型体の物性低下を招くことから、線量は40kGy以下が好ましく、25kGy以下が好ましく、15kGy以下がより好ましい。特にγ線を用いる場合は、線量は25kGy以下とすることが好ましい。これにより、コーティング層内の少なくとも一部およびコーティング層と成型体との間の少なくとも一部が架橋され、コーティング層の耐久性(例えば擦り洗い耐久性)を向上させることができる。
【0179】
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、低含水性ソフトコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、角膜インレイ、角膜オンレイ、メガネレンズなどの眼用レンズとして有用である。中でも低含水性ソフトコンタクトレンズに特に好適である。
【実施例】
【0180】
以下、実施例により本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
分析方法および評価方法
(1)含水率
コンタクトレンズ形状の試験片を使用した。試験片をホウ酸緩衝液に浸漬し室温で24時間以上おいた後、表面水分をワイピングクロス(日本製紙クレシア製”キムワイプ(登録商標)”)で拭き取って質量(Ww)を測定した。その後、試験片を真空乾燥器で40℃、16時間乾燥し質量(Wd)を測定した。次式にて含水率を求めた。得られた値が1%未満の場合は測定限界以下と判断し、「1%未満」と表記した。
含水率(%)=100×(Ww−Wd)/Ww
【0181】
(2)水濡れ性
コンタクトレンズ形状の試験片を、室温でビーカー中のホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬した。試験片とホウ酸緩衝液の入ったビーカーを超音波洗浄器にかけた(30秒間)。試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、空中に直径方向が垂直になるように保持した際の表面の様子を目視観察し、表面の液膜保持時間を測定することにより下記の基準で判定した。ここで、直径とは、コンタクトレンズの縁部が構成する円の直径である。
A:表面の液膜が20秒以上保持する。
B:表面の液膜が10秒以上20秒未満で切れる。
C:表面の液膜が5秒以上10秒未満で切れる。
D:表面の液膜が1秒以上5秒未満で切れる。
E:表面の液膜が瞬時に切れる(1秒未満)。
【0182】
(3)易滑性
コンタクトレンズ形状の試験片を、室温でビーカー中のホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬した。試験片とホウ酸緩衝液の入ったビーカーを超音波洗浄器にかけた(30秒間)。試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、人差し指で5回擦った時の感応評価で行った。
A:非常に優れた易滑性がある。
B:AとCの中間程度の易滑性がある。
C:中程度の易滑性がある。
D:易滑性がほとんど無い(CとEの中間程度)。
E:易滑性が無い。
【0183】
(4)擦り洗い耐久性(実施例1〜4)
手のひらの中央に窪みを作ってそこにホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプル(コンタクトレンズ形状)を置き、そこに洗浄液(ボシュロム、“レニュー(登録商標)”)を加えて、もう一方の手の人差し指の腹で表裏10回ずつ擦った。その後、さらに親指と人差し指でサンプルを挟み洗浄液をサンプルにかけながら両面を20回擦った。擦り洗い後のサンプルをホウ酸緩衝液中に浸漬した。その後、(3)易滑性評価を行った。
【0184】
(5)コーティング量評価
コーティング量は、X線光電子分光法(XPS)を用いて評価した。測定は以下の条件で行った。
装置:ESCALAB220iXL
励起X線:monochromatic Al Kα1,2線(1486.6eV)
X線径:1mm
光電子脱出角度:90°(試料表面に対する検出器の傾き)
サンプル測定箇所:コンタクトレンズ中心付近
物質中の束縛電子の結合エネルギー値から、物質表面(数nm)の元素情報を得て、窒素元素含有率に対する珪素元素含有率の割合(N/Si元素含有比)を求めた。
【0185】
(6)静的接触角評価
静的接触角の評価については、CONTACT−ANGLE METER(model CA−D、協和界面科学株式会社製)を用いて行った。
【0186】
<合成例>
実施例においてコーティングに供した共重合体の合成例を示すが、本合成例において共重合体の分子量は以下に示す条件で測定した。
(GPC測定条件)
装置:島津製作所製 Prominence GPCシステム
ポンプ:LC−20AD
オートサンプラ:SIL−20AHT
カラムオーブン:CTO−20A
検出器:RID−10A
カラム:東ソー社製GMPWXL(内径7.8mm×30cm、粒子径13μm)
溶媒:水/メタノール=1/1(0.1N硝酸リチウム添加)
流速:0.5mL/分
測定時間:30分
サンプル濃度:0.1質量%
注入量:100μL
標準サンプル:Agilent社製ポリエチレンオキシド標準サンプル(0.1kD〜1258kD)。
【0187】
(合成例1)
以下、純水とは逆浸透膜で濾過して精製した水を表す。
<p(DMAA/AA):N,N−ジメチルアクリルアミド/アクリル酸(モル比2/1)>
500mL三口フラスコにN,N−ジメチルアクリルアミド(59.50g、0.600mol)、アクリル酸(21.62g、0.300mol)、純水(325.20g)、重合開始剤VA−061(和光純薬、0.1408g、0.562mmol)、2−メルカプトエタノール(43.8μL、0.63mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液をエバポレータで400gまで濃縮し、2−プロパノール/n−ヘキサン=500mL/500mL中に注ぎ入れて静置後、上澄み液をデカンテーションで除いた。得られた固形分を2−プロパノール/n−ヘキサン=250mL/250mLで3回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:55kD、Mw:192kD(Mw/Mn=3.5)であった。
【0188】
(参考例1)
着色剤の作製
50mLスクリュー瓶に20g純水を入れた。UniBlue A(品番298409、シグマアルドリッチ)を0.5g加え、37℃のインキュベータ中で溶解させた。溶解後、1N塩酸を4g添加し、pH試験紙でpH約1〜2を確認した。酢酸エチルを24g添加し、軽く攪拌した。100mLナスフラスコに移し、静置した。UniBlue Aが酢酸エチル側に移るので下層の水層を捨てた。酢酸エチル層を100mLナスフラスコに移し、20℃のエバポレーターで蒸発させた。その後、真空乾燥器で40℃、16時間乾燥させ、酸型UniBlue A〔推定構造式(M1)〕を得た。
【化6】
【0189】
(参考例2)
コーティング溶液の調製
<PAA溶液>
ポリアクリル酸(169−18591、和光純薬工業、分子量25万)を純水に溶解して1.2質量%水溶液とした。
<PEI溶液>
ポリエチレンイミン(P3143、シグマアルドリッチ、分子量75万)を純水に溶解して1質量%水溶液とした。
<p(DMAA/AA)溶液>
発明者らがラボで合成した合成例1のN,N−ジメチルアクリルアミド/アクリル酸を純水に溶解して1質量%水溶液とした。
【0190】
(参考例3)
成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、JNC、式(M2)の化合物、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(50質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業)(45質量部)、成分Cとして2−エチルヘキシルアクリレート(3質量部)、成分Cとしてジメチルアミノエチルアクリレート(1質量部)、成分Cとして重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(1質量部)、成分Cとして参考例1の酸型Uniblue A(0.04質量部)、重合開始剤“イルガキュア(登録商標)”819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.75質量部)およびt−アミルアルコール(10質量部)を混合し撹拌した。メンブレンフィルター(0.45μm)でろ過して不溶分を除いてモノマー混合物を得た。このモノマー混合物を試験管に入れ、タッチミキサーで攪拌しながら減圧20Torr(27hPa)にして脱気を行い、その後アルゴンガスで大気圧に戻した。この操作を3回繰り返した。窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ベースカーブ側ポリプロピレン、フロントカーブ側ゼオノア)製のコンタクトレンズ用モールドにモノマー混合物を注入し、蛍光ランプ(東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(1.01mW/cm
2、20分間)して重合した。重合後に、モールドごと60質量%イソプロピルアルコール水溶液中に浸漬して、モールドからコンタクトレンズ形状の成型体を剥離した。それによって得られた成型体を、大過剰量の80質量%イソプロピルアルコール水溶液に60℃、2時間浸漬した。さらに、成型体を大過剰量の50質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温(25℃)で30分間浸漬し、次に大過剰量の25質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温(同上)で30分間浸漬し、次に大過剰量の純水に室温(同上)で2時間以上浸漬した。得られたレンズの縁部の直径は約14mm、中心部の厚みは約0.07mmであった。
【化7】
【0191】
(参考例4)
成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、JNC、式(M2)の化合物、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(50質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業)(48.5質量部)、成分Cとしてメタクリル酸メチル(0.5質量部)、成分Cとして重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(1質量部)、重合開始剤“イルガキュア(登録商標)”819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.75質量部)およびt−アミルアルコール(10質量部)を混合し撹拌した。その後、参考例3と同様の操作を行い、レンズを作製した。得られたレンズの縁部の直径は約14mm、中心部の厚みは約0.07mmであった。
【0192】
(参考例5)
メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(98質量部)、トリエチレングリコールジメタクリレート(1.0質量部)、光開始剤イルガキュア1850(1.0質量部)を混合し、撹拌した。その後、参考例3と同様の操作を行い、レンズを作製した。得られたレンズの縁部の直径は約14mm、中心部の厚みは約0.07mmであった。
【0193】
(参考例6)
式(M3)で表されるシリコーンモノマー(13.4質量部)、N,N−ジメチルアクリルアミド(37.0質量部)、式(M4)で表されるシリコーンモノマー(36.6質量部)、光開始剤イルガキュア1850(1.26質量部)、紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(1.26質量部)メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(9.2質量部)、トリエチレングリコールジメタクリレート(1.26質量部)、式(M5)で表されるUniblue A(0.02質量部)、テトラヒドロリナロール(23.9質量部)を混合し撹拌した。その後、参考例3と同様の操作を行い、レンズを作製した。得られたレンズの縁部の直径約14mm、中心部の厚みは約0.07mmであった。
【化8】
【化9】
【化10】
【0194】
(参考例7)
成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、JNC、上式(M2)の化合物、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(40質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業)(45質量部)、成分Cとして2−エチルヘキシルアクリレート(3質量部)、成分Cとしてジメチルアミノエチルアクリレート(1質量部)、成分Cとして重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(1質量部)、成分Cとして参考例1の酸型Uniblue A(0.04質量部)、重合開始剤“イルガキュア”(登録商標)819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.75質量部)およびt−アミルアルコール(10質量部)、成分Mとして片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM0721、JNC、式(M6)の化合物、質量平均分子量6.8kD、数平均分子量6.5kD)(10質量部)、を混合し撹拌した。メンブレンフィルター(0.45μm)でろ過して不溶分を除いてモノマー混合物を得た。このモノマー混合物を試験管に入れ、タッチミキサーで攪拌しながら減圧20Torr(27hPa)にして脱気を行い、その後アルゴンガスで大気圧に戻した。この操作を3回繰り返した。窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ベースカーブ側ポリプロピレン、フロントカーブ側ゼオノア)製のコンタクトレンズ用モールドにモノマー混合物を注入し、蛍光ランプ(東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(1.01mW/cm
2、20分間)して重合した。重合後に、モールドごと60質量%イソプロピルアルコール水溶液中に浸漬して、モールドからコンタクトレンズ形状の成型体を剥離した。それによって得られた成型体を、大過剰量の80質量%イソプロピルアルコール水溶液に60℃、2時間浸漬した。さらに、成型体を大過剰量の50質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温(23℃)で30分間浸漬し、次に大過剰量の25質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温(同上)で30分間浸漬し、次に大過剰量の純水に室温(同上)で2時間以上浸漬した。得られたレンズの縁部の直径は約14mm、中心部の厚みは約0.07mmであった。
【化11】
【0195】
(実施例1)
参考例3で得られた成型体をPAA溶液に室温(25℃)で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中にコーティングした成型体を浸漬した状態で入れ、γ線照射した。γ線線量は、35kGyであった。評価結果を表1に示した。
【0196】
(実施例2)
参考例3で得られた成型体をPAA溶液に室温(25℃)で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、PAA溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中にコーティングした成型体を浸漬した状態で入れ、γ線照射した。γ線線量は、35kGyであった。評価結果を表1に示した。
【0197】
(実施例3)
参考例4で得られた成型体をPAA溶液に室温(25℃)で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中にコーティングした成型体を浸漬した状態で入れ、γ線照射した。γ線線量は、35kGyであった。評価結果を表1に示した。
【0198】
(実施例4)
参考例4で得られた成型体をPAA溶液に室温(25℃)で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、PAA溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中にコーティングした成型体を浸漬した状態で入れ、γ線照射した。γ線線量は、35kGyであった。評価結果を表1に示した。
【表1】
【0199】
(比較例1)
参考例3で得られた成型体をPAA溶液に室温(25℃)で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、コーティングした成型体を密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。評価結果を表1に示した。
【0200】
(比較例2)
参考例3で得られた成型体を密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、γ線照射した。γ線線量は、35kGyであった。γ線照射後の成型体をビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。その後、PAA溶液に室温(25℃)で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、コーティングした成型体を密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。評価結果を表1に示した。
【0201】
(比較例3)
参考例4で得られた成型体を密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。評価結果を表1に示した。
【0202】
(比較例4)
市販品ソフトコンタクトレンズ“O
2 OPTIX”(登録商標)(CIBA Vision社製)をビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。次に、新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。評価結果を表1に示した。
【0203】
(比較例5)
参考例5で得られた成型体を密閉バイアル瓶中のアルコックスL−6(エチレンオキサイド、Mw6万、明成化学工業株式会社製)0.8質量%水溶液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。評価結果を表1に示した。
【0204】
(比較例6)
参考例5で得られた成型体を密閉バイアル瓶中のアルコックスL−11(エチレンオキサイド、Mw11万、明成化学工業株式会社製)0.8質量%水溶液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。評価結果を表1に示した。
【0205】
(比較例7)
参考例5で得られた成型体を密閉バイアル瓶中のアルコックスEP−20(共重合体、質量%比エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=80/20、Mw80万、明成化学工業株式会社製)0.8質量%水溶液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。評価結果を表1に示した。
【0206】
(実施例5)
参考例7で得られた成型体をPAA溶液に室温(23℃)で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、密閉バイアル瓶中にコーティングした成型体を入れ、25kGyのγ線を照射した。この成型体を用いて、コーティング量、含水率、接触角、水濡れ性、易滑性の評価を行った。各評価結果を表2に示した。
【0207】
なお、表2中の記号Xは、コーティング前のレンズ表面におけるN/Si元素含有比を示し、記号Yは、コーティング後の製品を擦り洗いする前のレンズ表面におけるN/Si元素含有比を示し、記号Zは、コーティング後の製品を擦り洗いした後のレンズ表面におけるN/Si元素含有比を示す。
【0208】
(実施例6)
参考例7で得られた成型体をPAA溶液に室温(23℃)で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、密閉バイアル瓶中にコーティングした成型体を入れ、10kGyのγ線を照射した。
【0209】
γ線照射後、手のひらの中央に窪みを作って成型体を置き、水を流しながらもう一方の手の人差し指の腹で表裏100回ずつ擦った。この成型体を用いて、コーティング量、含水率、接触角、水濡れ性、易滑性の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0210】
(実施例7)
手のひらの中央に窪みを作って実施例5で得られた成型体を置き、水を流しながらもう一方の手の人差し指の腹で表裏100回ずつ擦った。この成型体を用いて、コーティング量、含水率、接触角、水濡れ性、易滑性の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0211】
(実施例8)
コーティング後の成形体に照射する放射線を1kGyのγ線とした他は、実施例5と同様に成形体を作成し、実施例7と同様にして擦り洗い処理を行って、コーティング量の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0212】
(実施例9)
コーティング後の成形体に照射する放射線を1kGyの電子線とした他は、実施例5と同様に成形体を作成し、実施例7と同様にして擦り洗い処理を行って、コーティング量の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0213】
(実施例10)
コーティング後の成形体に照射する放射線を10kGyの電子線とした他は、実施例5と同様に成形体を作成し、実施例7と同様にして擦り洗い処理を行って、コーティング量の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0214】
(実施例11)
コーティング後の成形体に照射する放射線を40kGyの電子線とした他は、実施例5と同様に成形体を作成し、実施例7と同様にして擦り洗い処理を行って、コーティング量の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0215】
(比較例8)
コーティング後の成形体に照射する放射線を0.3kGyのγ線とした他は、実施例5と同様に成形体を作成し、実施例7と同様にして擦り洗い処理を行って、コーティング量の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0216】
(比較例9)
コーティング後の成形体に照射する放射線を40kGyのγ線とした他は、実施例5と同様に成形体を作成し、実施例7と同様にして擦り洗い処理を行って、コーティング量の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0217】
(比較例10)
コーティング後の成形体に照射する放射線を50kGyのγ線とした他は、実施例5と同様に成形体を作成し、実施例7と同様にして擦り洗い処理を行って、コーティング量、含水率、接触角、水濡れ性、易滑性の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0218】
(比較例11)
参考例7で得られた成型体をPAA溶液に室温(23℃)で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、PEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。その後、実施例7と同様にして擦り洗い処理を行って、コーティング量、含水率、接触角、水濡れ性、易滑性の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0219】
(比較例12)
参考例7で得られた成型体を用いて、コーティング量、含水率、接触角、水濡れ性、易滑性の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【表2】