特許第6236820号(P6236820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236820携帯端末装置、歩数計数方法及び歩数計数プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236820
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】携帯端末装置、歩数計数方法及び歩数計数プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06M 3/00 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   G06M3/00 L
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-58020(P2013-58020)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-182721(P2014-182721A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三本木 正雄
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−266060(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/164262(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06M 3/00
G01C 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの身体に装着可能な携帯端末装置において、
重力方向への加速度の波形を検出する波形検出手段と、
前記波形検出手段により検出された前記波形に基づいて歩数値を計数する歩数計数手段と、
連続する所定歩数を1セットとし、この1セット分の前記波形である第一セット波形と、当該第一セット波形から1歩分だけ後にずらした1セット分の前記波形である第二セット波形との振幅又は時間幅を比較して、同等であるか否かを判定する第一波形比較手段と、
前記第一波形比較手段により前記第一セット波形と前記第二セット波形とが同等ではないと判定された場合に、前記第一セット波形と、前記第二セット波形よりも後の歩を最初の1歩とする1セット分の前記波形である第三セット波形との振幅又は時間幅を比較して、同等であるか否かを判定する第二波形比較手段と、
前記第二波形比較手段により前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定された場合に、前記第二セット波形に基づく歩数値を増減させて補正する歩数補正手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末装置において、
前記歩数補正手段は、前記第二波形比較手段により前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定された場合に、前記第二セット波形での各歩数時の時間幅を前記第一セット波形での各歩数時の時間幅に合わせるようにして、当該第二セット波形に基づく歩数値を増減させて補正することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯端末装置において、
前記第一波形比較手段により前記第一セット波形と前記第二セット波形とが同等ではないと判定された場合に、前記第二セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅よりも短いか否かを判定する波形時間幅比較手段を備え、
前記歩数補正手段は、
前記第二波形比較手段により前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定されたときであって、
前記波形時間幅比較手段により前記第二セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅よりも短いと判定された場合には、当該第二セット波形に基づく歩数値を減らす補正を行い、
前記波形時間幅比較手段により前記第二セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅よりも長いと判定された場合には、当該第二セット波形に基づく歩数値を増やす補正を行うことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項4】
ユーザの身体に装着可能な携帯端末装置において、
重力方向への加速度の波形を検出する波形検出手段と、
前記波形検出手段により検出された前記波形に基づいて歩数値を計数する歩数計数手段と、
連続する所定歩数を1セットとし、この1セット分の前記波形である第一セット波形と、当該第一セット波形から1歩分だけ後にずらした1セット分の前記波形である第二セット波形とを比較して、同等であるか否かを判定する第一波形比較手段と、
前記第一波形比較手段により前記第一セット波形と前記第二セット波形とが同等ではないと判定された場合に、前記第一セット波形と、前記第二セット波形よりも後の歩を最初の1歩とする1セット分の前記波形である第三セット波形とを比較して、同等であるか否かを判定する第二波形比較手段と、
前記第二波形比較手段により前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定された場合に、前記第二セット波形に基づく歩数値を増減させて補正する歩数補正手段と、
を備え、
前記第一波形比較手段は、前記第二セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅に対して10%以上異なる場合に、当該第一セット波形と当該第二セット波形とが同等ではないと判定し、
前記第二波形比較手段は、前記第三セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅に対して10%以上異なる場合に、当該第一セット波形と当該第三セット波形とが同等ではないと判定することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項5】
重力方向への加速度の波形を検出する波形検出手段と、前記波形検出手段により検出された前記波形に基づいて歩数値を計数する歩数計数手段と、を備えた、ユーザの身体に装着可能な携帯端末装置の歩数計数方法において、
連続する所定歩数を1セットとし、この1セット分の前記波形である第一セット波形と、当該第一セット波形から1歩分だけ後にずらした1セット分の前記波形である第二セット波形との振幅又は時間幅を比較して、同等であるか否かを判定する第一波形比較ステップと、
前記第一波形比較ステップにより前記第一セット波形と前記第二セット波形とが同等ではないと判定された場合に、前記第一セット波形と、前記第二セット波形よりも後の歩を最初の1歩とする1セット分の前記波形である第三セット波形との振幅又は時間幅を比較して、同等であるか否かを判定する第二波形比較ステップと、
前記第二波形比較ステップにより前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定された場合に、前記第二セット波形に基づく歩数値を増減させて補正する歩数補正ステップと、
からなる歩数計数方法。
【請求項6】
ユーザの身体に装着可能な携帯端末装置に備えられ、ユーザの歩数値を計数する歩数計数プログラムにおいて、
前記携帯端末装置に、
重力方向への加速度の波形を検出する波形検出機能と、
前記波形検出機能により検出された前記波形に基づいて歩数値を計数する歩数計数機能と、
連続する所定歩数を1セットとし、この1セット分の前記波形である第一セット波形と、当該第一セット波形から1歩分だけ後にずらした1セット分の前記波形である第二セット波形との振幅又は時間幅を比較して、同等であるか否かを判定する第一波形比較機能と、
前記第一波形比較機能により前記第一セット波形と前記第二セット波形とが同等ではないと判定された場合に、前記第一セット波形と、前記第二セット波形よりも後の歩を最初の1歩とする1セット分の前記波形である第三セット波形との振幅又は時間幅を比較して、同等であるか否かを判定する第二波形比較機能と、
前記第二波形比較機能により前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定された場合に、前記第二セット波形に基づく歩数値を増減させて補正する歩数補正機能と、
を実現させることを特徴とする歩数計数プログラム。
【請求項7】
重力方向への加速度の波形を検出する波形検出手段と、前記波形検出手段により検出された前記波形に基づいて歩数値を計数する歩数計数手段と、を備えた、ユーザの身体に装着可能な携帯端末装置の歩数計数方法において、
連続する所定歩数を1セットとし、この1セット分の前記波形である第一セット波形と、当該第一セット波形から1歩分だけ後にずらした1セット分の前記波形である第二セット波形とを比較して、同等であるか否かを判定する第一波形比較ステップと、
前記第一波形比較ステップにより前記第一セット波形と前記第二セット波形とが同等ではないと判定された場合に、前記第一セット波形と、前記第二セット波形よりも後の歩を最初の1歩とする1セット分の前記波形である第三セット波形とを比較して、同等であるか否かを判定する第二波形比較ステップと、
前記第二波形比較ステップにより前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定された場合に、前記第二セット波形に基づく歩数値を増減させて補正する歩数補正ステップと、
からなり、
前記第一波形比較ステップでは、前記第二セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅に対して10%以上異なる場合に、当該第一セット波形と当該第二セット波形とが同等ではないと判定され、
前記第二波形比較ステップでは、前記第三セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅に対して10%以上異なる場合に、当該第一セット波形と当該第三セット波形とが同等ではないと判定される、
ことを特徴とする歩数計数方法。
【請求項8】
ユーザの身体に装着可能な携帯端末装置に備えられ、ユーザの歩数値を計数する歩数計数プログラムにおいて、
前記携帯端末装置に、
重力方向への加速度の波形を検出する波形検出機能と、
前記波形検出機能により検出された前記波形に基づいて歩数値を計数する歩数計数機能と、
連続する所定歩数を1セットとし、この1セット分の前記波形である第一セット波形と、当該第一セット波形から1歩分だけ後にずらした1セット分の前記波形である第二セット波形とを比較して、同等であるか否かを判定する第一波形比較機能と、
前記第一波形比較機能により前記第一セット波形と前記第二セット波形とが同等ではないと判定された場合に、前記第一セット波形と、前記第二セット波形よりも後の歩を最初の1歩とする1セット分の前記波形である第三セット波形とを比較して、同等であるか否かを判定する第二波形比較機能と、
前記第二波形比較機能により前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定された場合に、前記第二セット波形に基づく歩数値を増減させて補正する歩数補正機能と、
を実現させ、
前記第一波形比較機能は、前記第二セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅に対して10%以上異なる場合に、当該第一セット波形と当該第二セット波形とが同等ではないと判定し、
前記第二波形比較機能は、前記第三セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅に対して10%以上異なる場合に、当該第一セット波形と当該第三セット波形とが同等ではないと判定する、
ことを特徴とする歩数計数プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置、歩数計数方法及び歩数計数プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザに携帯されてその歩行時や走行時の歩数をカウントする、いわゆる歩数計や活動量計などの携帯端末装置が知られている。この携帯端末装置は、一般に加速度センサーを備えており、当該加速度センサーによって人間の歩行時や走行時における立脚挙動時の振動を検出して歩数値を計数する。
【0003】
ところが、この種の携帯端末装置では、立脚挙動時の振動の個人差や当該装置の身体への装着状態などに起因して、振動検出が正しく行われずに歩数が誤カウントされてしまうという問題がある。例えば、ポケットに入れておくものや腕に装着するものなど、体幹の近くに密着されずに立脚挙動以外の動作を受けやすい携帯端末装置では、立脚挙動時の振動振幅が歩数カウントの閾値を越えないカウント抜けや、立脚挙動以外の動作時の振動振幅がこの閾値を超えてしまうカウント過多が生じやすい。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に記載の携帯端末装置では、ユーザが一定速度で歩行した場合の一定周期の加速度波形のデータが補正用データとして予め記憶されており、GPS等によりユーザが移動しているかどうかを検知して、ユーザが移動しているときには加速度センサーによる歩数カウントを補正用データに基づいて補正し、ユーザが移動していないときには歩数カウントを行わないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−28674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の携帯端末装置では、ユーザが一定速度で歩行した場合を想定した補正用データを用いているため、ユーザの歩行速度が変化する場合には歩数値を適切に補正することができず、誤カウントを防止することができない。
【0007】
さらに、当該特許文献1に記載の携帯端末装置では、ユーザの移動を検知するためのGPSセンサーなどの補正専用の部品を必要としており、その分だけ装置構成が大型化・高コスト化してしまう。したがって、このような補正専用の部品を必要としない簡便な構成によって歩数値の誤カウントを防止できることが望ましい。
【0008】
本発明の課題は、簡便な構成で、ユーザの歩行速度が変化する場合にも歩数値の誤カウントを防止することができる携帯端末装置、歩数計数方法及び歩数計数プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明は、
ユーザの身体に装着可能な携帯端末装置において、
重力方向への加速度の波形を検出する波形検出手段と、
前記波形検出手段により検出された前記波形に基づいて歩数値を計数する歩数計数手段と、
連続する所定歩数を1セットとし、この1セット分の前記波形である第一セット波形と、当該第一セット波形から1歩分だけ後にずらした1セット分の前記波形である第二セット波形との振幅又は時間幅を比較して、同等であるか否かを判定する第一波形比較手段と、
前記第一波形比較手段により前記第一セット波形と前記第二セット波形とが同等ではないと判定された場合に、前記第一セット波形と、前記第二セット波形よりも後の歩を最初の1歩とする1セット分の前記波形である第三セット波形との振幅又は時間幅を比較して、同等であるか否かを判定する第二波形比較手段と、
前記第二波形比較手段により前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定された場合に、前記第二セット波形に基づく歩数値を増減させて補正する歩数補正手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便な構成で、ユーザの歩行速度が変化する場合にも歩数値の誤カウントを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】携帯端末装置の外観図である。
図2】携帯端末装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】歩数計数処理の流れを示すフローチャートである。
図4】歩数計数処理の流れを示すフローチャートである。
図5】重力方向成分の加速度の原波形とデジタル波形を説明するための図である。
図6】歩数値のカウント抜けが発生した場合の加速度の原波形とデジタル波形を示す図である。
図7】歩数値のカウント過多が発生した場合の加速度の原波形とデジタル波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0013】
[構成]
まず、本実施形態における携帯端末装置1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、携帯端末装置1の外観図であり、図2は、携帯端末装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、携帯端末装置1は、例えば腕時計状に形成されており、ユーザの手首に装着されるようになっている。この携帯端末装置1は、図2に示すように、表示部11と、入力部12と、センサー群13と、記憶部14と、通信部15と、CPU16等とを備えて構成されている。
【0015】
表示部11は、ディスプレイ110を備えており、CPU16から入力される表示信号に基づいて各種情報をディスプレイ110に表示する。なお、本実施形態におけるディスプレイ110は、いわゆるタッチパネル121と一体的に形成されており、ユーザによるタッチ操作を受け付け可能となっている。
【0016】
入力部12は、入力キー群120やタッチパネル121を備えており、押下されたキーの種類やタッチパネル121の位置に対応する信号をCPU16に出力する。
【0017】
センサー群13は、複数種類のセンサーを有しており、本実施形態においては、加速度センサー13aと、方位センサー13bとを有している。
【0018】
加速度センサー13aは、携帯端末装置1に加わる加速度を3軸方向の成分に分解して計測するセンサーである。なお、この加速度センサー13aは、ユーザ操作などに応じてON状態(通電状態)に設定され、センシング動作を行うようになっている。
【0019】
方位センサー13bは、携帯端末装置1が向いている方位を3軸方向の成分に分解して計測するセンサーである。なお、この方位センサー13bは、ユーザ操作などに応じてON状態(通電状態)に設定され、センシング動作を行うようになっている。
【0020】
記憶部14は、携帯端末装置1の各種機能を実現するためのプログラムやデータを記憶するとともに、CPU16の作業領域としても機能するメモリである。本実施形態においては、記憶部14は、本発明に係る歩数計数プログラム140を記憶するとともに、歩数データ記憶領域141、波形データ記憶領域142、フラグ記憶領域143等を有している。
【0021】
歩数計数プログラム140は、後述の歩数計数処理(図3及び図4参照)をCPU16に実行させるためのプログラムである。
【0022】
歩数データ記憶領域141は、後述の歩数計数処理(図3及び図4参照)において、計数(カウント)されたユーザの歩数値が記憶されるようになっている。また、この歩数データ記憶領域141には、歩数計数処理の開始時においては、歩数値の初期値として0が記憶されている。
【0023】
波形データ記憶領域142は、後述の歩数計数処理(図3及び図4参照)において、加速度センサー13aによって計測された加速度のデータのうち、重力方向成分の原波形Waやデジタル波形Wd(図5参照)が記憶されるようになっている。
【0024】
フラグ記憶領域143は、後述の歩数計数処理(図3及び図4参照)において、個別にON/OFFが設定されるFフラグ及びSフラグが記憶されるようになっている。これらFフラグ及びSフラグは、歩数計数処理の開始時には何れもOFFに設定されており、後述するように、歩数計数処理中にONに設定される場合には、そのときの歩数値を対応付けてフラグ記憶領域143に記憶される。
【0025】
通信部15は、例えばWi-Fi等の無線LANによる無線通信や、Bluetooth(登録商標)を用いる近距離通信などにより、他の電子機器(例えばパソコンなど)との間での通信を行う。
【0026】
CPU16は、携帯端末装置1の各部を中央制御する。具体的には、CPU16は、記憶部14に記憶されているシステムプログラム及び各種アプリケーションプログラムの中から指定されたプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行する。
【0027】
[動作]
続いて、携帯端末装置1が歩数計数処理を実行する際の動作について、図3及び図4等を参照して説明する。
図3及び図4は、歩数計数処理の流れを示すフローチャートである。
【0028】
歩数計数処理は、ユーザが携帯端末装置1を装着した状態で歩行又は走行したときに、その歩数値を計数(カウント)する処理である。この歩数計数処理は、ユーザ操作により当該歩数計数処理の実行指示が入力されたときに、CPU16が記憶部14から歩数計数プログラム140を読み出して展開することで、実行される。
【0029】
図3に示すように、歩数係数処理が実行されると、まずCPU16は、加速度センサー13aをON状態に設定して、携帯端末装置1に加わる加速度の計測を開始する(ステップS1)。
【0030】
次に、CPU16は、加速度センサー13aによって計測された3軸方向の加速度のデータに基づいて重力方向を推定し、この重力方向成分の加速度を抽出(検出)する(ステップS2)。
【0031】
次に、CPU16は、ステップS2で抽出された重力方向成分の加速度のデータに基づいて、ユーザの脚が着地したか否かを判定する(ステップS3)。なお、このステップS3以降の処理では、加速度として重力方向成分のものだけを取り扱うため、以下の説明では、この「重力方向成分の加速度」を単に「加速度」ということとする。
【0032】
具体的には、このステップS3では、図5に示すように、CPU16は、ステップS2で抽出された加速度の原波形Waに基づいて、当該原波形Waをデジタル化した加速度のデジタル波形Wdを生成しつつ、ユーザの脚が着地したか否かを判定する。
【0033】
より詳しくは、CPU16は、加速度の原波形Waが所定の正の閾値T1及び負の閾値T2を越えることを検知することにより、原波形Waにおける加速度の山がパルス状にデジタル化されたデジタル波形Wdを生成する。すなわち、CPU16は、原波形Waでの加速度の山が、負の閾値T2を負側へ越えた後に正の閾値T1を正側へ超えて再び負の閾値T2を負側へ超えた場合に、加速度のデジタル波形Wdにパルスを生成し、ユーザの脚が着地したと判定する。
【0034】
加速度の原波形Waでは、ユーザが1歩歩くときの1回の立脚挙動(一方の脚を地面から離してから再び着けるまでの動作)時に、1つの山が形成される。したがって、原波形Waでの1つの山に相当するデジタル波形Wdでの1つのパルスが、ユーザの1歩に相当する。なお、加速度の原波形Waでは、脚着地時の床面反力の影響を受けるために、立脚挙動時の山は例えば正弦波状などのきれいな波形にはならず、脚着地時の下側ピーク部分がやや歪な形の波形となる。
【0035】
図3に示すように、ステップS3において、ユーザの脚が着地していないと判定した場合、つまり加速度のデジタル波形Wdに歩行を示すパルスが生成されていない場合には(ステップS3;No)、CPU16は、後述のステップS5に移行する。
【0036】
また、ステップS3において、ユーザの脚が着地したと判定した場合、つまり加速度のデジタル波形Wdに歩行を示すパルスが1つ生成されている場合には(ステップS3;Yes)、CPU16は、記憶部14の歩数データ記憶領域141に記憶されている歩数値を1歩増やして記憶させ直す(ステップS4)。
【0037】
次に、CPU16は、加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdを、当該歩数時のものとして記憶部14の波形データ記憶領域142に記憶させる(ステップS5)。
【0038】
次に、図4に示すように、CPU16は、記憶部14のフラグ記憶領域143に記憶されたFフラグ及びSフラグが何れもOFFであるか否かを判定する(ステップS6)。ここで、Fフラグ及びSフラグとは、後述するように、所定歩数N歩分のデジタル波形Wdの時間幅が、1歩ずらした直前の所定歩数N歩分のデジタル波形Wdの時間幅よりも、短い(すなわち歩行のピッチが速い(Fast))のか、或いは長い(すなわち歩行のピッチが遅い(Slow))のかの判定結果を保持するフラグである。
【0039】
このステップS6において、Fフラグ及びSフラグが何れもOFFであると判定した場合(ステップS6;Yes)、CPU16は、Nを所定歩数として、連続する直前のN+1歩分の原波形Wa及びデジタル波形Wdが記憶部14の波形データ記憶領域142に記憶されているか否かを判定し(ステップS7)、記憶されていないと判定した場合には(ステップS7;No)、上述のステップS1へ移行する。
【0040】
また、このステップS6において、N+1歩分の原波形Wa及びデジタル波形Wdが記憶部14の波形データ記憶領域142に記憶されていると判定した場合には(ステップS7;Yes)、CPU16は、所定歩数N歩分の連続するデジタル波形Wdを1セットとして、N+1歩分のデジタル波形Wdのうち、その1歩目からN歩目までの1セット分の第一セット波形Wd1(図6及び図7参照)と、当該第一セット波形Wd1から1歩分だけ後にずらした2歩目からN+1歩目までの1セット分の第二セット波形Wd2(図6及び図7参照)とを比較して、これらが同等であるか否かを判定する(ステップS8)。
【0041】
具体的には、このステップS8では、CPU16は、第一セット波形Wd1と第二セット波形Wd2との各時間幅を比較して、当該時間幅が同等である場合に、第一セット波形Wd1と第二セット波形Wd2とが同等であると判定する。より詳しくは、CPU16は、第二セット波形Wd2の時間幅が、第一セット波形Wd1の時間幅に対して±10%以上異なる場合に、これらの時間幅が同等ではないと判定し、ひいては、第一セット波形Wd1と第二セット波形Wd2とが同等ではないと判定する。例えば、ユーザが一定周期t[秒]の歩行を行っていたとして、第一セット波形Wd1の時間幅が4tであったのに対し、第二セット波形Wd2の時間幅が4.4t以上であったり、3.6t以下であったりした場合には、第一セット波形Wd1と第二セット波形Wd2とが同等ではないと判定される。
【0042】
なお、このステップS8では、デジタル波形Wdの比較に代えて、原波形Waを比較することとしてもよい。具体的には、CPU16は、N+1歩分の原波形Waのうち、その1歩目からN歩目までの1セット分の第一セット波形Wa1(図6及び図7参照)と、当該第一セット波形Wa1から1歩分だけ後にずらした2歩目からN+1歩目までの1セット分の第二セット波形Wa2(図6及び図7参照)とを比較して、同等であるか否かを判定してもよい。
この場合、CPU16は、デジタル波形Wdである第一セット波形Wd1と第二セット波形Wd2との比較と同様にして、原波形Waである第一セット波形Wa1と第二セット波形Wa2との時間幅を比較してもよいし、振幅や波形自体の形状などを比較してもよい。振幅を比較する場合、例えば、第二セット波形Wa2だけに、歩数値が計数される正の閾値T1には満たないものの明らかな振幅のピークを有する山がある場合(図6参照)などには、第一セット波形Wa1と第二セット波形Wa2とが同等でないと判定することができる。
【0043】
このステップS8において、第一セット波形Wd1と第二セット波形Wd2とが同等であると判定した場合には(ステップS8;Yes)、CPU16は、上述のステップS1へ移行する。
【0044】
また、ステップS8において、第一セット波形Wd1と第二セット波形Wd2とが同等ではないと判定した場合には(ステップS8;No)、CPU16は、第二セット波形Wd2の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅よりも短いか否かを判定する(ステップS9)。
【0045】
このステップS9の時点では、第二セット波形Wd2の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅に対して±10%以上異なることが、上述のステップS8において既に判定されている。したがって、例えば、ユーザが一定周期t[秒]の歩行を行っていたとして、第一セット波形Wd1の時間幅が4tであったときに、第二セット波形Wd2の時間幅が3.6t以下であった場合には、第二セット波形Wd2の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅よりも短いと判定され、第二セット波形Wd2の時間幅が4.4t以上であった場合には、第二セット波形Wd2の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅よりも短くない(長い)と判定される。
【0046】
このステップS9において、第二セット波形Wd2の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅よりも短いと判定した場合には(ステップS9;Yes)、CPU16は、記憶部14のフラグ記憶領域143に記憶されたFフラグをONに設定して、このときの歩数値と対応付けて当該フラグ記憶領域143に記憶させ直し(ステップS10)、上述のステップS1へ移行する。
【0047】
また、ステップS9において、第二セット波形Wd2の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅よりも短くない(長い)と判定した場合には(ステップS9;No)、CPU16は、記憶部14のフラグ記憶領域143に記憶されたSフラグをONに設定して、このときの歩数値と対応付けて当該フラグ記憶領域143に記憶させ直し(ステップS11)、上述のステップS1へ移行する。
【0048】
また、上述のステップS6において、Fフラグ及びSフラグのうちの何れか一方がONであると判定した場合には(ステップS6;No)、CPU16は、記憶部14の歩数データ記憶領域141に記憶された歩数値に基づいて、この何れか一方のフラグがONに設定された歩数時から他の所定歩数Mの歩行が経過したか否かを判定し(ステップS12)、当該他の所定歩数Mの歩行が経過していないと判定した場合には(ステップS12;No)、上述のステップS1へ移行する。ここで、他の所定歩数Mとは、所定歩数N以上の値を取る歩数である。
【0049】
また、このステップS12において、ONに設定された何れか一方のフラグがONに設定された歩数時から、他の所定歩数Mの歩行が経過したと判定した場合には(ステップS12;Yes)、CPU16は、波形データ記憶領域142に記憶されているデジタル波形Wdのうち、第一セット波形Wd1と、第二セット波形Wd2よりも後の歩を最初の1歩とする1セット(N歩)分の第三セット波形Wd3(図6及び図7参照)とを比較して、これらが同等であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0050】
具体的には、このステップS13では、CPU16は、一方のフラグがONに設定された歩数時よりも後のM歩分のデジタル波形Wdのうち、最も新しいN歩分のものを第三セット波形Wd3として、当該第三セット波形Wd3と第一セット波形Wd1とを比較する。つまり、第三セット波形Wd3は、一方のフラグがONに設定された歩数時よりも(M−N+1)歩後の歩を最初の1歩とするN歩分のデジタル波形Wdである。例えば、N=M=4の場合には、一方のフラグがONに設定された歩数時よりも1(=4−4+1)歩だけ後の歩(すなわち、第二セット波形Wd2終了直後の第1歩目)から4歩分のデジタル波形Wdが第三セット波形Wd3となる。また、N=4,M=5の場合には、一方のフラグがONに設定された歩数時よりも2(=5−4+1)歩後の歩(すなわち、第二セット波形Wd2終了後の第2歩目)から4歩分のデジタル波形Wdが第三セット波形Wd3となる。或いは、N=4,M=6の場合には、一方のフラグがONに設定された歩数時よりも3(=6−4+1)歩後の歩(すなわち、第二セット波形Wd2終了後の第3歩目)から4歩分のデジタル波形Wdが第三セット波形Wd3となる。なお、この他の所定歩数Mの値は、本体機器や装着者(ユーザ)の歩き方の傾向等に応じて、最適な値が適宜設定されることとする。
【0051】
また、このステップS13では、上述のステップS8における第一セット波形Wd1と第二セット波形Wd2との比較と同様にして、第一セット波形Wd1と第三セット波形Wd3とを比較する。つまり、CPU16は、第一セット波形Wd1と第三セット波形Wd3との各時間幅を比較して、当該時間幅が同等である場合に、第一セット波形Wd1と第三セット波形Wd3とが同等であると判定する。より詳しくは、CPU16は、第三セット波形Wd3の時間幅が、第一セット波形Wd1の時間幅に対して±10%以上異なる場合に、これらの時間幅が同等ではないと判定し、ひいては、第一セット波形Wd1と第三セット波形Wd3とが同等ではないと判定する。
なお、このステップS13は、デジタル波形Wdである第一セット波形Wd1及び第三セット波形Wd3に代えて、原波形Waである第一セット波形Wa1及び第三セット波形Wa3(図6及び図7参照)を比較することとしてもよい点についても、上述のステップS8と同様である。
【0052】
このステップS13において、第一セット波形Wd1と第三セット波形Wd3とが同等ではないと判定した場合(ステップS13;No)、CPU16は、後述のステップS17へ移行する。
【0053】
また、ステップS13において、第一セット波形Wd1と第三セット波形Wd3とが同等であると判定した場合には(ステップS13;Yes)、CPU16は、記憶部14のフラグ記憶領域143に記憶されたFフラグがONに設定されているか否かを判定する(ステップS14)。
【0054】
このステップS14において、FフラグがONに設定されていると判定した場合(ステップS14;Yes)、CPU16は、記憶部14の歩数データ記憶領域141に記憶されている歩数値を1歩減らして記憶させ直す(ステップS15)。
【0055】
つまり、このステップS15では、第一セット波形Wd1と第三セット波形Wd3とが同等であり、且つ、第二セット波形Wd2の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅よりも短いことに基づいて、CPU16は、第二セット波形Wd2に基づく歩数値の計数に、チャタリングなどに起因するカウント過多があったと判断する。そこで、CPU16は、第二セット波形Wd2での各歩数時の時間幅を第一セット波形Wd1での各歩数時の時間幅に合わせるようにして、当該第二セット波形Wd2に基づく歩数値を減らす補正を行って、このカウント過多を解消する。
【0056】
また、上述のステップS14において、FフラグがONに設定されていないと判定した場合、すなわちSフラグがONに設定されていると判定した場合には(ステップS14;No)、CPU16は、記憶部14の歩数データ記憶領域141に記憶されている歩数値を1歩増やして記憶させ直す(ステップS16)。
【0057】
つまり、このステップS16では、第一セット波形Wd1と第三セット波形Wd3とが同等であり、且つ、第二セット波形Wd2の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅よりも長いことに基づいて、CPU16は、第二セット波形Wd2に基づく歩数値の計数にカウント抜けがあったと判断する。そこで、CPU16は、第二セット波形Wd2での各歩数時の時間幅を第一セット波形Wd1での各歩数時の時間幅に合わせるようにして、当該第二セット波形Wd2に基づく歩数値を増やす補正を行って、このカウント抜けを解消する。
【0058】
次に、CPU16は、記憶部14のフラグ記憶領域143に記憶されたFフラグ及びSフラグのON設定をクリアすることで、これらFフラグ及びSフラグをOFFに設定し、このときの歩数値と対応付けて当該フラグ記憶領域143に記憶させ直して(ステップS17)、上述のステップS1へ移行する。
【0059】
[動作例]
続いて、上述の携帯端末装置1の動作について、具体例を示して説明する。
【0060】
<動作例1>
まず、動作例1として、例えばユーザの立脚挙動以外の動作に起因する歩数値のカウント抜けが発生した場合の携帯端末装置1の動作について説明する。より詳しくは、この動作例1では、所定歩数N=4,他の所定歩数M=4として、4歩分の原波形Wa又はデジタル波形Wdが1セットとされたときの歩数計数処理において、ユーザの実際の5歩目に歩数値のカウント抜けが発生した場合の携帯端末装置1の動作について説明する。なお、以下では、「実際の」等の記載を付して特に断らない限り、歩数値は計数されたものを指すこととする。
【0061】
図6は、歩数値のカウント抜けが発生した場合の加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdを示す図である。
【0062】
まず、ユーザが、携帯端末装置1を手首に装着し、所定の操作を行って歩数係数処理を実行したうえで略一定周期の歩行を開始すると、加速度センサー13aがON状態に設定されて携帯端末装置1に加わる加速度が計測され(ステップS1)、この計測値から重力方向成分の加速度が抽出(検出)される(ステップS2)。
【0063】
次に、図6に示すように、抽出された加速度の原波形Waに基づいて、ユーザの1歩に相当する1つのパルスを有するデジタル波形Wdが生成され、当該デジタル波形Wdに基づいてユーザの脚が着地したと判定されて(ステップS3;Yes)、記憶部14の歩数データ記憶領域141に記憶されている歩数値が1歩増加される(ステップS4)。そして、このときの加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdが、1歩目のものとして記憶部14の波形データ記憶領域142に記憶される(ステップS5)。
【0064】
次に、Fフラグ及びSフラグが何れもOFFのままであり(ステップS6;Yes)、且つ、未だ5歩(N+1歩)分の加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdが記憶されていないため(ステップS7;No)、ユーザの歩行の継続に伴って、2歩目から4歩目までが1歩目と同様に計数され、そのときの加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdが記憶される(ステップS1〜S3;Yes,S4〜S6;Yes,S7;No)。
【0065】
次に、ユーザの実際の5歩目において、それまでと同様に加速度が計測されるものの(ステップS1,S2)、加速度の原波形Waのピークが正の閾値T1を超えないまま負の閾値T2を超えたために、ユーザの脚が着地したと判定されない(ステップS3;No)。そのため、この実際の5歩目が計数されないまま(ステップS5,S6;Yes,S7;No)、続く実際の6歩目での着地判定(ステップS1〜S3;Yes)によって、5歩目が計数され(ステップS4)、そのときの加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdが記憶される(ステップS5)。つまり、実際の5歩目において歩数値のカウント抜けが発生し、実際の5歩目と6歩目の加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdが、5歩目のものとして記憶されてしまう。
【0066】
次に、Fフラグ及びSフラグが何れもOFFのままであり(ステップS6;Yes)、5歩(N+1歩)分の加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdが記憶部14の波形データ記憶領域142に記憶されているため(ステップS7;Yes)、1〜4歩目の4歩分の第一セット波形Wd1と、2〜5歩目の4歩分の第二セット波形Wd2とが、同等であるか否かが判定される(ステップS8)。
【0067】
このとき、ユーザは一定周期t[秒]の歩行を行っているので、第一セット波形Wd1の時間幅が4tであるのに対し、第二セット波形Wd2の時間幅は5tとなる。したがって、第二セット波形Wd2の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅に対して25%も大きく、±10%以上異なっているため、これら第一セット波形Wd1と第二セット波形Wd2とは同等でないと判定される(ステップS8;No)。
【0068】
次に、第二セット波形Wd2の時間幅(5t)が第一セット波形Wd1の時間幅(4t)よりも長いため(ステップS9;No)、記憶部14のフラグ記憶領域143に記憶されたSフラグがONに設定され、このときの歩数値(5歩)と対応付けて当該フラグ記憶領域143に記憶される(ステップS11)。
【0069】
その後、5歩目から3歩が経過する8歩目までは、上記同様に歩数値の計数やデジタル波形Wdの記憶等が順次繰り返される(ステップS1〜S3;Yes,S4〜S6;No,S12;No)。
【0070】
次に、9歩目の計数やデジタル波形Wdの記憶等が上記同様に行われると(ステップS1〜S3;Yes,S4,S5)、このときに、SフラグがONであり(ステップS6;No)、SフラグがONに設定された5歩目から4歩(M歩)が経過するため(ステップS12;Yes)、1〜4歩目の4歩分の第一セット波形Wd1と、6〜9歩目の新たな4歩分の第三セット波形Wd3とが、同等であるか否かが判定される(ステップS13)。
【0071】
なお、Mの値が、N以上の数値範囲において実施製品に応じて適宜設定されるものであることは、上述した通りである。例えば、第二セット波形Wd2直後のものを含む5歩目と6歩目(実際の6歩目と7歩目)が、通常の良好な他の歩と異なるような場合には、M=5と設定されることが好ましい。この場合、第二セット波形Wd2(2〜5歩目)よりも2歩後からの7〜10歩目のデジタル波形Wdを第三セット波形Wd3として、当該第三セット波形Wd3と、1〜4歩目の4歩分の第一セット波形Wd1とが、同等であるか否かが判定されることとなる。
【0072】
このとき、ユーザは6歩目以降も一定周期t[秒]の歩行を行っているので、第一セット波形Wd1の時間幅が4tであるのに対し、第三セット波形Wd3の時間幅も4tとなる。したがって、第三セット波形Wd3の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅に対して±10%以上異なっていないため、これら第一セット波形Wd1と第三セット波形Wd3とは同等であると判定される(ステップS13;Yes)。
【0073】
なお、仮にここで、第三セット波形Wd3の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅に対して±10%以上異なっており、第一セット波形Wd1と第三セット波形Wd3とが同等でないと判定された場合には(ステップS13;No)、第一セット波形Wd1から第三セット波形Wd3に掛けて連続的に時間幅(すなわち歩行周期)が変化していると判断され、カウント抜けが発生しているとは判断されない。これにより、ユーザが歩行周期を変化させたときに、歩数値にカウント抜けが発生したと誤認してしまうことを防止することができる。
【0074】
次に、記憶部14のフラグ記憶領域143に記憶されたFフラグがOFFに設定されており、SフラグがONに設定されているため(ステップS14;No)、第二セット波形Wd2に基づく歩数値の計数にカウント抜けがあったと判断されて、記憶部14の歩数データ記憶領域141に記憶されている歩数値を1歩増やす補正が行われる(ステップS16)。
【0075】
こうして、歩数値のカウント抜けが解消されて、正しい歩数値に補正された後、Fフラグ及びSフラグがOFFの設定にクリアされたうえで(ステップS17)、ユーザの歩行に併せて上記同様の処理が継続される。
【0076】
<動作例2>
続いて、動作例2として、例えばチャタリングに起因する歩数値のカウント過多が発生した場合の携帯端末装置1の動作について説明する。より詳しくは、この動作例2では、所定歩数N=4,他の所定歩数M=5として、4歩分の原波形Wa又はデジタル波形Wdが1セットとされたときの歩数計数処理において、ユーザの実際の4歩目において歩数値のカウント過多が発生した場合の携帯端末装置1の動作について説明する。
【0077】
図7は、歩数値のカウント過多が発生した場合の加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdを示す図である。
【0078】
まず、ユーザが、携帯端末装置1を手首に装着し、所定の操作を行って歩数係数処理を実行したうえで略一定周期の歩行を開始すると、図7に示すように、1歩目から3歩目までは、上記動作例1と同様にして、計測した加速度に基づいて歩数値が計数され、加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdが記憶される(ステップS1〜S3;Yes,S4〜S6;Yes,S7;No)。
【0079】
次に、ユーザの4歩目において、それまでと同様に歩数値が計数されて加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdも記憶されるものの(ステップS1〜S3;Yes,S4〜S6;Yes,S7;No)、このときにチャタリングが発生してしまう。その結果、この4歩目での原波形Wa及びデジタル波形Wdの時間幅がやや短くなるとともに、実際の歩行によるものではない原波形Waのピークが閾値T1,T2を越えることによって、当該ピークが5歩目として計数され、その原波形Wa及びデジタル波形Wdが記憶される(ステップS1〜S3;Yes,S4,S5)。つまり、実際の4歩目においてチャタリングによる歩数値のカウント過多が発生し、実際の4歩目だけの加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdが、4歩目及び5歩目のものとして記憶されてしまう。
【0080】
次に、Fフラグ及びSフラグが何れもOFFのままであり(ステップS6;Yes)、5歩(N+1歩)分の加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdが記憶部14の波形データ記憶領域142に記憶されているため(ステップS7;Yes)、1〜4歩目の4歩分の第一セット波形Wd1と、2〜5歩目の4歩分の第二セット波形Wd2とが、同等であるか否かが判定される(ステップS8)。
【0081】
このとき、ユーザは一定周期t[秒]の歩行を行っているが、チャタリングの発生によって4歩目が0.75tと計測され、5歩目が0.25tと計測されるため、第一セット波形Wd1の時間幅が3.75tであるのに対し、第二セット波形Wd2の時間幅は3tとなる。したがって、第二セット波形Wd2の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅に対して20%も小さく、±10%以上異なっているため、これら第一セット波形Wd1と第二セット波形Wd2とは同等でないと判定される(ステップS8;No)。
【0082】
次に、第二セット波形Wd2の時間幅(3t)が第一セット波形Wd1の時間幅(3.75t)よりも短いため(ステップS9;Yes)、記憶部14のフラグ記憶領域143に記憶されたFフラグがONに設定され、このときの歩数値(5歩)と対応付けて当該フラグ記憶領域143に記憶される(ステップS10)。
【0083】
その後、5歩目から4歩が経過する9歩目までは、上記同様に歩数値の計数やデジタル波形Wdの記憶等が順次繰り返される(ステップS1〜S3;Yes,S4〜S6;No,S12;No)。
【0084】
次に、10歩目の計数やデジタル波形Wdの記憶等が上記同様に行われると(ステップS1〜S3;Yes,S4,S5)、このときに、FフラグがONであり(ステップS6;No)、FフラグがONに設定された5歩目から5歩(M歩)が経過するため(ステップS12;Yes)、1〜4歩目の4歩分の第一セット波形Wd1と、7〜10歩目の新たな4歩分の第三セット波形Wd3とが、同等であるか否かが判定される(ステップS13)。
【0085】
なお、Mの値が、N以上の数値範囲において実施製品に応じて適宜設定されるものであることは、上述した通りである。例えば、第二セット波形Wd2直後のものを含む5〜7歩目が、通常の良好な他の歩と異なるような場合には、M=6と設定されることが好ましい。この場合、第二セット波形Wd2(2〜5歩目)よりも3歩後からの8〜11歩目のデジタル波形Wdを第三セット波形Wd3として、当該第三セット波形Wd3と、1〜4歩目の4歩分の第一セット波形Wd1とが、同等であるか否かが判定されることとなる。
【0086】
このとき、ユーザは7歩目以降も一定周期t[秒]の歩行を行っているので、第一セット波形Wd1の時間幅が3.75tであるのに対し、第三セット波形Wd3の時間幅は4tとなる。したがって、第三セット波形Wd3の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅に対して6.7%だけ大きく、±10%以上異なっていないため、これら第一セット波形Wd1と第三セット波形Wd3とは同等であると判定される(ステップS13;Yes)。
【0087】
なお、仮にここで、第三セット波形Wd3の時間幅が第一セット波形Wd1の時間幅に対して±10%以上異なっており、第一セット波形Wd1と第三セット波形Wd3とが同等でないと判定された場合には(ステップS13;No)、第一セット波形Wd1から第三セット波形Wd3に掛けて連続的に時間幅(すなわち歩行周期)が変化していると判断され、カウント過多が発生しているとは判断されない。これにより、ユーザが歩行周期を変化させたときに、歩数値にカウント過多が発生したと誤認してしまうことを防止することができる。
【0088】
次に、記憶部14のフラグ記憶領域143に記憶されたFフラグがONに設定されているため(ステップS14;Yes)、第二セット波形Wd2に基づく歩数値の計数にカウント過多があったと判断されて、記憶部14の歩数データ記憶領域141に記憶されている歩数値を1歩減らす補正が行われる(ステップS15)。
【0089】
こうして、歩数値のカウント過多が解消されて、正しい歩数値に補正された後、Fフラグ及びSフラグがOFFの設定にクリアされたうえで(ステップS17)、ユーザの歩行に併せて上記同様の処理が継続される。
【0090】
以上、本実施形態によれば、図3のステップS4や、図4のステップS8,S13〜S16、図6図7等に示したように、加速度の波形(原波形Wa又はそのデジタル波形Wd)に基づいて歩数値を計数し、所定歩数の1セット分の第一セット波形と、当該第一セット波形から1歩分だけ後にずらした1セット分の第二セット波形とが同等であるか否かを判定し、第一セット波形と第二セット波形とが同等でないと判定された場合に、第一セット波形と、第二セット波形よりも後の歩を最初の1歩とする1セット分の第三セット波形とが同等であるか否かを判定し、第一セット波形と第三セット波形とが同等であると判定された場合に、第二セット波形に基づく歩数値が補正される。
つまり、最初の第一セット波形と次の第二セット波形とが同等でなく、且つ、第一セット波形と新たな第三セット波形とが同等であった場合には、第二セット波形において何かしら不規則な歩行が検出されて、これによって歩数値が誤カウントされたと判断される。そして、第二セット波形での各歩数時の時間幅(各歩行の周期)を第一セット波形でのものに合わせるようにして、当該第二セット波形に基づく歩数値が補正される。これにより、ユーザが一定速度で歩行した場合を想定した補正用データを用いていた従来と異なり、ユーザの歩行速度が変化する場合であっても、適切に歩数値を補正して誤カウントを防止することができる。また、GPSセンサーなどの補正専用の部品を必要としていた従来と異なり、このような補正専用の部品を必要としない簡便な構成によって、歩数値の誤カウントを防止することができる。したがって、簡便な構成で、ユーザの歩行速度が変化する場合にも歩数値の誤カウントを防止することができる。
【0091】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0092】
例えば、本発明に係る携帯端末装置は、ユーザの手首に装着されずに、足首や胸部などに装着されることとしてもよい。
【0093】
また、歩数計数処理におけるステップS5では、加速度の原波形Wa及びデジタル波形Wdを記憶部14の波形データ記憶領域142に記憶させることとしたが、ステップS8,S9及びS13において原波形Wa及びデジタル波形Wdのうちの何れか一方だけを用いてセット波形の比較を行うのであれば、ステップS5において記憶させる波形は、当該何れか一方のものだけでよい。またこの場合には、ステップS7において、N+1歩分のものが記憶されているか否かが判定される判定対象の波形も、当該何れか一方のものだけでよい。
【0094】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
ユーザの身体に装着可能な携帯端末装置において、
重力方向への加速度の波形を検出する波形検出手段と、
前記波形検出手段により検出された前記波形に基づいて歩数値を計数する歩数計数手段と、
連続する所定歩数を1セットとし、この1セット分の前記波形である第一セット波形と、当該第一セット波形から1歩分だけ後にずらした1セット分の前記波形である第二セット波形とを比較して、同等であるか否かを判定する第一波形比較手段と、
前記第一波形比較手段により前記第一セット波形と前記第二セット波形とが同等ではないと判定された場合に、前記第一セット波形と、前記第二セット波形よりも後の歩を最初の1歩とする1セット分の前記波形である第三セット波形とを比較して、同等であるか否かを判定する第二波形比較手段と、
前記第二波形比較手段により前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定された場合に、前記第二セット波形に基づく歩数値を増減させて補正する歩数補正手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。
<請求項2>
請求項1に記載の携帯端末装置において、
前記歩数補正手段は、前記第二波形比較手段により前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定された場合に、前記第二セット波形での各歩数時の時間幅を前記第一セット波形での各歩数時の時間幅に合わせるようにして、当該第二セット波形に基づく歩数値を増減させて補正することを特徴とする携帯端末装置。
<請求項3>
請求項1又は2に記載の携帯端末装置において、
前記第一波形比較手段は、前記第一セット波形と前記第二セット波形との振幅又は時間幅を比較して、同等であるか否かを判定し、
前記第二波形比較手段は、前記第一セット波形と前記第三セット波形との振幅又は時間幅を比較して、同等であるか否かを判定することを特徴とする携帯端末装置。
<請求項4>
請求項1〜3の何れか一項に記載の携帯端末装置において、
前記第一波形比較手段は、前記第二セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅に対して10%以上異なる場合に、当該第一セット波形と当該第二セット波形とが同等ではないと判定し、
前記第二波形比較手段は、前記第三セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅に対して10%以上異なる場合に、当該第一セット波形と当該第三セット波形とが同等ではないと判定することを特徴とする携帯端末装置。
<請求項5>
請求項1〜4の何れか一項に記載の携帯端末装置において、
前記第一波形比較手段により前記第一セット波形と前記第二セット波形とが同等ではないと判定された場合に、前記第二セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅よりも短いか否かを判定する波形時間幅比較手段を備え、
前記歩数補正手段は、
前記第二波形比較手段により前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定されたときであって、
前記波形時間幅比較手段により前記第二セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅よりも短いと判定された場合には、当該第二セット波形に基づく歩数値を減らす補正を行い、
前記波形時間幅比較手段により前記第二セット波形の時間幅が前記第一セット波形の時間幅よりも長いと判定された場合には、当該第二セット波形に基づく歩数値を増やす補正を行うことを特徴とする携帯端末装置。
<請求項6>
ユーザの身体に装着可能な携帯端末装置に備えられ、ユーザの歩数値を計数する歩数計数プログラムにおいて、
前記携帯端末装置に、
重力方向への加速度の波形を検出する波形検出機能と、
前記波形検出機能により検出された前記波形に基づいて歩数値を計数する歩数計数機能と、
連続する所定歩数を1セットとし、この1セット分の前記波形である第一セット波形と、当該第一セット波形から1歩分だけ後にずらした1セット分の前記波形である第二セット波形とを比較して、同等であるか否かを判定する第一波形比較機能と、
前記第一波形比較機能により前記第一セット波形と前記第二セット波形とが同等ではないと判定された場合に、前記第一セット波形と、前記第二セット波形よりも後の歩を最初の1歩とする1セット分の前記波形である第三セット波形とを比較して、同等であるか否かを判定する第二波形比較機能と、
前記第二波形比較機能により前記第一セット波形と前記第三セット波形とが同等であると判定された場合に、前記第二セット波形に基づく歩数値を増減させて補正する歩数補正機能と、
を実現させることを特徴とする歩数計数プログラム。
【符号の説明】
【0095】
1 携帯端末装置
13a 加速度センサー
16 CPU
140 歩数計数プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7