特許第6236824号(P6236824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236824
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】プリント配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20171120BHJP
   C23F 1/18 20060101ALI20171120BHJP
   C23F 1/30 20060101ALI20171120BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20171120BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20171120BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H05K3/18 H
   C23F1/18
   C23F1/30
   C23C28/00 A
   C25D7/00 J
   H05K3/18 D
   H05K3/06 M
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-62201(P2013-62201)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2013-229585(P2013-229585A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】特願2012-77749(P2012-77749)
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】三浦 徹
(72)【発明者】
【氏名】番場 啓太
(72)【発明者】
【氏名】横沢 伊裕
【審査官】 原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−221430(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/137549(WO,A1)
【文献】 特開2011−014848(JP,A)
【文献】 特表昭58−500765(JP,A)
【文献】 特開2010−138451(JP,A)
【文献】 特開2002−100876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/18
C23C 28/00
C23F 1/18
C23F 1/30
C25D 7/00
H05K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムの少なくとも片面に、無電解めっきにより、銅以外の金属で構成される金属めっき層を形成し、該金属めっき層を含む下地層を形成する工程1と、
前記下地層の一部に、めっきレジストを形成する工程2と、
電解銅めっきにより、前記めっきレジストで覆われていない下地層部分に銅配線層を形成する工程3と、
前記めっきレジストを前記下地層から剥離除去する工程4と、
前記めっきレジストを剥離除去して露出した下地層をエッチング除去する工程5とを含む、プリント配線基板の製造方法であって、
前記金属めっき層がニッケルめっき層であり、
前記工程5において、前記エッチング液として、硫酸と硝酸と過酸化水素とを含有し、ニッケルに対するエッチング速度と、銅に対するエッチング速度との速度比が、ニッケル:銅=1:0.9〜5であるエッチング液を用いて、前記下地層をエッチング除去すると共に、前記銅配線層の側面を同時にエッチングすることを特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【請求項2】
工程3における銅配線層を形成する際の前記銅配線層の膜厚が1〜20μmである請求項に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項3】
エッチング後の前記下地層のアンダーカット率が0〜10%であり、銅配線の幅減少量が0.2〜5μmである、請求項1又は2に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記工程1において、前記金属めっき層上に薄銅層を形成して前記下地層を形成する請求項1〜のいずれか1項に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記薄銅層の膜厚が0.1〜1.0μmである請求項に記載のプリント配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板の製造方法に関し、更に詳しくは、アンダーカットが抑制されたプリント配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁基板に配線パターンを形成したプリント配線基板は、電子部品や半導体素子等を実装するために広く用いられている。近年の電子機器の小型化、高機能化の要求に伴い、プリント配線板には、配線パターンの更なる微細化が望まれている。
【0003】
配線パターンの形成方法としては、サブトラクティブ工法と、セミアディティブ工法等がある。このうち、セミアディティブ工法は、より微細な配線パターンの形成が可能であることから、微細な配線パターンのプリント配線基板の製造に用いられている。
【0004】
セミアディティブ工法では、例えば、以下のようにしてプリント配線基板が製造される。すなわち、基板の表面に、無電解めっきやスパッタ等によりニッケル、Ni−Cr等の下地層を形成する。次に、下地層にレジストを形成し、露光及び現像してめっきレジスト層を形成する。次に、電解銅めっきを行い、めっきレジストで覆われていない部分に銅配線層を形成する。次に、めっきレジストを剥離除去し、銅配線層間の、不要となった下地層をエッチング除去する。このようにして、プリント配線基板が製造される。
【0005】
セミアディティブ工法では、不要となった下地層をエッチング除去する際に、特許文献1,2に記載されるように、銅配線層が侵食されないようなエッチング液を用いて、下地層のみを選択的にエッチング除去することが従来より行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−140084号公報
【特許文献2】特開2003−31927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、セミアディティブ工法により配線パターンを形成する場合、不要となった下地層をエッチング除去する際に、従来では、下地層のみを選択的にエッチング除去していたので、図2に示すように、銅配線層4の真下の下地層2にも浸食が進んで、下地層2の線幅が狭くなる、いわゆるアンダーカット現象が生じ易かった。
【0008】
また、配線パターンが微細になるにつれ、基板と下地層との密着性が低下し易い。このため、基板として、ポリイミドフィルム等の樹脂基板を用いる場合においては、金属成分を樹脂基板表面に対して一定の深さまで析出させてアンカー効果を発現させ、下地層と基板との密着性を向上させることが行われている。しかしながら、樹脂基板表面に金属成分を一定の深さまで析出させた場合、プリント配線基板の絶縁信頼性を確保するには、不要となった下地層をエッチング除去する際に、下地層のエッチングを通常より強く処理する必要があった。このため、樹脂基板上に微細な配線パターンを形成する場合、アンダーカットが発生する可能性がより一層高まる傾向にあった。
【0009】
アンダーカットが発生すると、基板と下地層の接着面が減少することから、配線が基板から剥離し易くなり、密着信頼性が低下する。また、配線パターンを形成した後に保護膜として絶縁層を形成する場合においては、アンダーカットが生じている部分に絶縁層を十分に被覆できないことがあり、絶縁信頼性が低下する恐れがある。
【0010】
よって、本発明の目的は、下地層のアンダーカットの発生を抑制したプリント配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のプリント配線基板の製造方法は、
ポリイミドフィルムの少なくとも片面に、無電解めっきにより、銅以外の金属で構成される金属めっき層を形成し、該金属めっき層を含む下地層を形成する工程1と、
前記下地層の一部に、めっきレジストを形成する工程2と、
電解銅めっきにより、前記めっきレジストで覆われていない下地層部分に銅配線層を形成する工程3と、
前記めっきレジストを前記下地層から剥離除去する工程4と、
前記めっきレジストを剥離除去して露出した下地層をエッチング除去する工程5とを含む、プリント配線基板の製造方法であって、
前記工程5において、銅と、前記金属めっき層を構成する金属とに対してエッチング能力のあるエッチング液を用いて、前記下地層をエッチング除去すると共に、前記銅配線層の側面を同時にエッチングすることを特徴とする。
【0012】
本発明のプリント配線基板の製造方法は、前記エッチング液として、前記金属めっき層を構成する金属に対するエッチング速度と、銅に対するエッチング速度との速度比が、金属めっき層を構成する金属:銅=1:0.9〜10であるものを用いることが好ましい。
【0013】
本発明のプリント配線基板の製造方法は、前記金属めっき層が、ニッケルめっき層であり、前記エッチング液として、銅とニッケルに対してエッチング能力のあるもの用いることが好ましい。
【0014】
本発明のプリント配線基板の製造方法は、前記エッチング液として、硫酸と硝酸と過酸化水素とを含有するものを用いることが好ましい。
【0015】
本発明のプリント配線基板の製造方法は、工程3における銅配線層を形成する際の前記銅配線層の膜厚が1〜20μmであることが好ましい。
【0016】
本発明のプリント配線基板の製造方法は、エッチング後の前記下地層のアンダーカット率が0〜10%であり、銅配線の幅減少量が0.2〜5μmであることが好ましい。
【0017】
本発明のプリント配線基板の製造方法は、前記工程1において、前記金属めっき層上に薄銅層を形成して前記下地層を形成してもよい。これにより、工程3における電解銅めっき時に、下地層の抵抗の影響を低減することができる。この態様において、薄銅層の膜厚は、0.1〜1μmであることが、十分な電流が確保しやすく、後の除去も容易なため好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプリント配線基板の製造方法によれば、下地層からめっきレジストを剥離除去して露出した下地層を、銅と、金属めっき層を構成する金属に対してエッチング能力のあるエッチング液を用いてエッチング除去すると共に、銅配線層の側面を同時にエッチングすることにより、アンダーカット等の形状不良がないか、または極めて小さく、銅配線層の線幅と、その真下の下地層の線幅とがほぼ等しい、略矩形状の配線を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のプリント配線基板の製造方法の概略工程図である。
図2】アンダーカットの発生状態を示す概略図である。
図3】エッチング液1の、ニッケルに対するエッチング速度と銅に対するエッチング速度とを示す図である。
図4】エッチング液4の、ニッケルに対するエッチング速度と銅に対するエッチング速度とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のプリント配線基板の製造方法の一実施形態について、図1を用いて説明する。
【0021】
まず、図1(a)に示すように、ポリイミドフィルム1の少なくとも片面に、無電解めっきにより、銅以外の金属で構成される金属めっき層を形成し、該金属めっき層を含む下地層2を形成する(工程1)。ポリイミドフィルムの表面に、無電解めっきにより金属めっき層を形成することで、ポリイミドフィルムと金属めっき層との密着性が向上し、プリント配線基板の長期の熱負荷時に、回路(銅めっき層)の接着力低下の原因となる、銅のポリイミドフィルム側への拡散移行を防止することができる。
【0022】
ポリイミドフィルム1は、従来公知の方法で製造できる。例えば、ポリアミック酸と有機溶媒とを含むポリイミド前駆体溶液を支持体にキャストし、乾燥して自己支持性を有する自己支持性フィルムを形成し、得られた自己支持性フィルムを加熱処理してイミド化を完結して製造できる。
【0023】
ポリイミドフィルム1としては、配線基板などの各種基板に好適に用いることができる市販のポリイミドフィルムなどを用いることができる。
【0024】
ポリイミドフィルム1の線膨張係数(50〜200℃)は、ポリイミドフィルムに積層する銅の線膨張係数に近いことが好ましく、0.3×10−5〜2.8×10−5cm/cm/℃であることがより好ましい。
【0025】
ポリイミドフィルム1は、熱収縮率が0.05%以下で、熱変形が小さく、耐熱性、電気絶縁性などに優れるものを好適に用いることができる。
【0026】
ポリイミドフィルム1は、単層、または2層以上を積層した複層のフィルム、またはシート状のものを用いることができる。
【0027】
ポリイミドフィルム1の厚みは、特に限定されず、製造や取扱いが問題なく行なえ、形成する金属層や配線パターン層を充分に支持できる厚みであればよい。好ましくは1〜500μmであり、より好ましくは2〜300μmであり、さらに好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは5〜175μmであり、最も好ましくは5〜100μmである。
【0028】
無電解めっきは、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、荏原ユージライト株式会社のエルフシードプロセス、奥野製薬工業株式会社のSLPプロセスなどが挙げられる。また、無電解めっきで形成される金属めっき層は純粋な金属膜でも良いが膜質を制御するためにリンなどの他成分を含有してもよい。
【0029】
無電解めっきに用いる金属の種類は、銅以外の金属であって、ポリイミドフィルム上に、無電解めっきによって膜形成が可能なものであればよく、特に限定はない。例えば、ニッケル、錫、銀、コバルト、インジウム化合物及びこれらの合金等が挙げられる。好ましくは、ニッケル又はニッケル合金である。ニッケルやニッケル合金は、下地層対して均一なエッチング除去が容易で、金属めっき層の皮膜が安定して銅配線層との密着強度が得やすく、導電性が比較的良好で、銅配線層からのポリイミドフィルムへの銅の拡散に対してバリア性が高い。更には、ニッケルやニッケル合金は、無電解めっきの技術完成度が高く、様々なプロセスが普及しており、プロセスを適切に選択し易い。
【0030】
ポリイミドフィルムに金属めっき層が積層した金属めっき層積層ポリイミドフィルムを製造する方法の一例としては、ポリイミドフィルムを、少なくとも界面活性剤を含む酸またはアルカリ性の脱脂液で洗浄する工程、アルカリ溶液で処理する工程、塩基性アミノ酸溶液で処理する工程、触媒を付与する工程、無電解めっきにより金属めっき層を形成する工程、加熱する工程をこの順で行う方法が挙げられる。
【0031】
上記各工程を詳しく以下に示す。
【0032】
1)界面活性剤を含む酸またはアルカリ性の脱脂液で洗浄する工程では、ポリイミドフィルムの表面の油脂成分などを除去するために、洗浄効果を有する脱脂液でポリイミドフィルムの表面を処理する。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの界面活性剤と、水酸化ナトリウムやモノエタノールアミンなどを含むアルカリ溶液で、30〜60℃、1〜10分間浸漬して油脂成分などの汚れを除去し、ポリイミドフィルムを洗浄する方法が一例として挙げられる。
【0033】
2)アルカリ溶液で処理する工程では、ポリイミドフィルムの表面をアルカリ溶液に噴きつけや浸漬などの方法で接触させて、ポリイミドフィルムの表面を処理する。アルカリ溶液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどを含む溶液が挙げられる。例えば、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムを10〜200g/l含有するアルカリ水溶液で、25〜80℃、10秒〜10分間浸漬処理する方法が一例として挙げられる。
【0034】
3)塩基性アミノ酸溶液で処理する工程では、ポリイミドフィルムの表面を、アミノ酸を含む塩基性溶液に噴きつけや浸漬などの方法で接触させる。例えば、水酸化カリウムでpHを6に調整した、リシン塩酸塩やアルギニン塩酸塩を30〜300g/l含有する水溶液で、30〜60℃、10秒〜10分間浸漬処理する方法が一例として挙げられる。
【0035】
4)触媒を付与する工程では、ポリイミドフィルムの表面に無電解下地金属析出の核を形成するために、ポリイミドフィルムの表面の一部又は全部に触媒を吸着などの方法で付与する。例えば、イオン性パラジウム触媒溶液で、30〜60℃、1〜10分間浸漬してポリイミドフィルムの表面にパラジウムイオンを吸着させ、その後、還元溶液に浸漬して、パラジウムイオンを金属パラジウムに還元させる方法が一例として挙げられる。
【0036】
5)金属めっき層を形成する工程では、金属を無電解めっき法により析出させて、金属めっき層を形成する。例えば、ニッケルを無電解めっき法でニッケルめっき層を形成する場合を挙げて説明すると、市販の無電解ニッケルめっき浴に、25〜45℃で2分〜20分間浸漬することにより、ニッケルめっき層を形成できる。他の金属の場合においても同様にして形成できる。
【0037】
金属めっき層の膜厚は、金属の種類により異なる。例えば、ニッケルめっき層の場合、膜厚は、十分密着が得られて後に除去可能な厚みであれば特に制限されるものではないが、0.1μmを超えて0.3μm以下であることが好ましく、0.11μm〜0.28μmであることがより好ましく、0.12μm〜0.27μmであることがより好ましい。ニッケルめっき層の膜厚が0.1μm未満であると、長期の熱負荷時の銅のポリイミドフィルム側への拡散移行を防止できないため、長期の熱負荷時の密着強度の低下も抑制することが難しくなる場合がある。つまり、長期の熱負荷と、高温の熱負荷の両方に耐えうるニッケルめっき層とポリイミドフィルムの密着性を確保することが難しくなる場合がある。また、ニッケルめっき層の膜厚が0.3μmを超えると、ニッケルめっき層形成後、銅配線層4の形成前の熱処理で、ニッケルめっき層とポリイミドフィルムとの密着性が低下することがある。
【0038】
また、後述する銅配線層4を形成する際に、電解銅めっきを効率よく行うために、金属めっき層上に、電解銅めっき、無電解銅めっき、スパッタ等により、薄銅層を形成してもよい。すなわち、下地層2は、銅以外の金属を無電解めっきで形成した金属めっき層からなる下層と、薄銅層からなる上層とで構成されるものであってもよい。
【0039】
下地層2が、金属めっき層からなる下層と、薄銅層からなる上層とで構成される場合、薄銅層の膜厚は、0.1〜1.0μmが好ましい。薄銅層の膜厚が0.1μm未満であると、薄銅層を形成した効果が殆ど得られない場合がある。また、薄銅層の膜厚が1.0μmを超えると、下地層をエッチング除去する際に、手間を要し、微細な配線パターンの形成が困難となる傾向にある。
【0040】
次に、図1(b)に示すように、下地層2にレジストを形成し、露光して、配線パターンとなる部位のレジストを現像除去してめっきレジスト3を形成する(工程2)。
【0041】
本発明では、後述する工程5において、銅と、金属めっき層を構成する金属に対してエッチング能力のあるエッチング液を用いて、下地層2をエッチング除去すると共に、銅配線層4の側面を同時にエッチングする。このため、工程5において、銅配線層の線幅が減少することとなるので、工程5における銅配線層4の線幅減少量に相当する長さ分、工程3で得られる銅配線層の線幅が太くなるようにめっきレジスト3を形成することが好ましい。
【0042】
レジストの種類は、ネガ型又はポジ型を用いることができる。ネガ型レジストの場合は、露光部以外が現像で除去される。一方、ポジ型レジストの場合は、露光部が現像で除去される。
【0043】
レジストの形成方法は、特に限定は無く、従来公知の方法により行うことができる。例えば、フィルム状のレジスト材を熱ラミネートする方法や、液状タイプのレジスト材を塗布し、乾燥する方法等が挙げられる。レジストを形成した後、常法に従って、フォトマスクを通して露光を行う。
【0044】
レジストの現像除去方法としては、特に限定は無く、従来公知の方法により行うことができる。例えば、炭酸ソーダ水溶液等の現像液をスプレーして、配線パターンとなる部位のレジストを現像除去する方法が挙げられる。なお、めっきレジストパターンの形成は、配線となる部位を除いて印刷や転写により行っても良い。
【0045】
次に、図1(c)に示すように、めっきレジスト間3,3、つまり露出した下地部分に電解めっきにより、銅配線層4を形成する(工程3)。
【0046】
電解めっき条件は、特に限定は無い。公知の条件を適宜選択して行なうことができる。例えば、下地層2の露出部を酸等で洗浄し、硫酸銅を含有する溶液中で、銅をカソード電極として用いて、0.1〜10A/dmの電流密度で電解銅めっきを行なうことで銅配線層4を形成することができる。めっき液としては、例えば硫酸銅を180〜240g/lと、硫酸を45〜60g/lと、塩素イオンを20〜80g/lと、添加剤とを添加したものを用いることができる。添加剤としては、チオ尿素、デキストリン、糖蜜等が挙げられる。銅配線層4の膜厚は、どのような厚みでもよいが1〜20μmが好ましい。
【0047】
次に、図1(d)に示すように、めっきレジスト3を、下地層2から剥離除去する(工程4)。
【0048】
めっきレジスト3の剥離除去方法は、特に限定は無く、従来公知の方法により行うことができる。例えば、苛性ソーダ水溶液(2質量%など)などをスプレーしてレジスト層を剥離除去することができる。
【0049】
次に、図1(e)に示すように、めっきレジスト3を剥離除去して露出した下地層2をエッチング除去する(工程5)。
【0050】
本発明では、工程5において、銅と、金属めっき層を構成する金属とに対してエッチング能力のあるエッチング液を用いて、下地層2をエッチング除去すると共に、銅配線層4の側面を同時にエッチングする。
【0051】
従来では、不要となった下地層2をエッチング除去する際に、例えば、下地層2がニッケルめっき層のみからなる場合においては、ニッケルのみを選択的にエッチングするエッチング液を用いて、ニッケルめっき層を選択的にエッチング除去していた。また、下地層2が薄銅層からなる上層と、ニッケルめっき層からなる下層とで構成される場合においては、まず、上層の薄銅層のみを選択的にエッチングするエッチング液を用いて、薄銅層を選択的にエッチング除去し、次いで、下層のニッケルめっき層のみを選択的にエッチングするエッチング液を用いて、ニッケル層を選択的にエッチング除去していた。
【0052】
しかしながら、ニッケルのみを選択的にエッチングするエッチング液を用いて、ニッケルめっき層を選択的にエッチング除去した場合、図2に示すように、銅配線層4の真下の下地層2にも浸食が進んで、下地層2のアンダーカットが生じ易かった。特に、ポリイミドフィルム等のような樹脂基板に、無電解めっきで、ニッケル等の金属で構成される金属めっき層を形成した場合においては、金属成分が樹脂基板の内部まで拡散しているので、金属めっき層のエッチングを強く行う必要があり、アンダーカットがより発生し易かった。
【0053】
本発明では、銅と、金属めっき層を構成する金属とに対してエッチング能力のあるエッチング液を用いて、下地層2をエッチング除去すると共に、銅配線層4の側面を同時にエッチングするので、アンダーカット等の形状不良がないか、または極めて小さく、銅配線層4の線幅W2と、その真下の下地層2の線幅W3とがほぼ等しい、略矩形状の配線を形成できる。
【0054】
下地層2と、銅配線層4の側面とが同時にエッチングされる機構については、必ずしも明らかではないが、下地層の線幅方向へのエッチングの進行と銅配線層側面のエッチングの進行が一定の割合で進んでいると推定される。銅配線層のエッチングの進行が早すぎない為、銅配線層が細くなりすぎない。これにより、微細配線のプリント配線基板を作成することができる。
【0055】
なお、下地層2をエッチング除去すると共に、銅配線層4の側面を同時にエッチングするため、エッチング後の銅配線層4の線幅W2は、エッチング前の銅配線層の線幅W1よりも短くなる。しかしながら、下地層2の膜厚は、銅配線層4の膜厚に比べて極めて薄いので、銅配線層4の線幅減少量は極少量であり、エッチング処理前の銅配線層4の線幅を予め太くする事で解決出来る程度である。
【0056】
エッチング後の銅配線層4の線幅W2は、例えば5〜25μmである。さらに、エッチング後の基板1と銅配線層4の間に位置する下地層2の線幅は、例えば4.5〜22.5μmである。本発明におけるアンダーカット率は、0〜10%であることが好ましく、0〜5%がより好ましい。ここで、アンダーカット率とは、次式で定義される。
【0057】
アンダーカット率(%)=((エッチング後の銅配線層4の線幅)−(エッチング後の下地層2の線幅))/(エッチング後の銅配線層4の線幅)×100
【0058】
ここで言うエッチング後の銅配線層4の線幅とは、銅配線層4のボトム部分の線幅である。
【0059】
また、エッチング後の銅配線層の幅減少量は、0.2〜5μmが好ましく、0.3〜3μmがより好ましい。なお、ここでいう銅配線層の幅減少量とは、エッチング前の銅配線層のボトム部分の線幅から、エッチング後の銅配線層のボトム部分の線幅を差し引いた値である。
【0060】
本発明において、エッチング液の、金属めっき層を構成する金属に対するエッチング速度と、銅に対するエッチング速度との速度比は、金属めっき層を構成する金属:銅=1:0.9〜10が好ましく、1:0.9〜5がより好ましく、1:0.9〜2が特に好ましく、1:1〜2が特に好ましい。銅のエッチング速度の速度比が、0.9未満であると、アンダーカットが発生し易くなる傾向にあり、10を超えると配線のトップの線幅が、ボトムの線幅と比較して細くなりすぎる傾向にある。一般的に、配線が著しく細り易くなる場合、ファインピッチを形成する場合には十分なフラッシュエッチング処理が行いづらく、金属めっき層が完全には除去出来ないため、電気信頼性が不足する可能性が有る。両者のエッチング速度の速度比が上記範囲であればアンダーカットが生じる事無く、配線が著しく細る事も無い為、ファインピッチの場合での配線間の金属めっき層が除去し易く、電気信頼性の高いプリント配線板が作成出来る。特に、上記速度比が1:0.9〜5の場合には、配線のトップの線幅と、ボトムの線幅が同じに近づき、より矩形に近い配線を形成できる。
【0061】
また、下地層の金属めっき層が、ニッケルめっき層の場合は、エッチング液の銅に対するエッチング速度との速度比は、ニッケル:銅=1:0.9〜10が好ましく、1:0.9〜5がより好ましく、1:0.9〜2が特に好ましく、1:1〜2が特に好ましい。
【0062】
なお、本発明において、エッチング液の、金属めっき層を構成する金属に対するエッチング速度と、銅に対するエッチング速度との速度比は、以下の方法で測定した値である。
【0063】
すなわち、ポリイミドフィルムに無電解めっき処理を行って厚さ200nmの金属めっき層を形成したサンプルAと、サンプルAに更に電解銅めっきで厚さ10μmの金属銅層を形成したサンプルBとを用意し、サンプルA、Bをエッチング液を用いてエッチング処理して、処理時間と、処理前後の厚みの差から、金属めっき層を構成する金属に対するエッチング速度と、銅に対するエッチング速度を算出し、速度比を求めた。
【0064】
本発明において、エッチング液としては、銅と、金属めっき層を構成する金属に対してエッチング能力のあるものであれば、いずれも好ましく用いることができる。例えば、無機酸−過酸化水素系、過酸化水素−フッ化物系、塩化第二鉄等が挙げられる。金属めっき層を構成する金属の種類によって、エッチング液の組成等を適宜調整して用いる。
【0065】
例えば、金属めっき層が、ニッケルめっき層で構成される場合、エッチング液としては、銅とニッケルに対してエッチング能力を有するものを用いる。銅とニッケルに対してエッチング能力を有するエッチング液としては、例えば、無機酸と過酸化水素とを含有する無機酸−過酸化水素系エッチング液等が挙げられる。
【0066】
また、金属めっき層がコバルトめっき層で構成される場合、エッチング液としては、銅とコバルトに対してエッチング能力を有するものを用いる。銅とコバルトに対してエッチング能力を有するエッチング液としては、例えば、無機酸と過酸化水素とを含有する無機酸―過酸化水素系エッチング液が挙げられる。
【0067】
無機酸としては、硫酸、硝酸、燐酸、硼酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、無機酸として硫酸と硝酸とを併用する。すなわち、本発明では、硫酸と硝酸と過酸化水素とを含有する硫酸−硝酸−過酸化水素系エッチング液が好ましく用いられる。硫酸−硝酸−過酸化水素系エッチング液は、銅とニッケルに対するエッチング速度がほぼ同程度である。
【0068】
無機酸−過酸化水素系エッチング液において、過酸化水素濃度は、1〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。過酸化水素濃度が1質量%未満では十分な溶解速度が得られない場合がある。過酸化水素濃度が30質量%を越えると、それ以上の溶解速度向上が得られず経済上好ましくない。
【0069】
無機酸−過酸化水素系エッチング液において、無機酸濃度は、1〜30質量%が好ましく、より好ましくは8〜25質量%である。無機酸濃度が1質量%未満では十分な溶解速度が得られない場合がある。無機酸濃度が30質量%を越えると、それ以上の溶解速度向上が得られず経済上好ましくない。また、無機酸として硫酸と硝酸とを併用する場合は、硫酸濃度は、0.01〜1.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。また、硝酸濃度は、1〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。
【0070】
エッチング時の温度は、10〜60℃であることが好ましい。また、エッチング時間は、5〜180秒が好ましい。エッチング手段としては、浸漬式やスプレー式などが挙げられる。エッチング手段がスプレー式の場合におけるスプレー圧力は、0.01〜0.3MPaが好ましい。
【実施例】
【0071】
(使用したエッチング液)
・エッチング液1:
95%硫酸6.84mlと、30%過酸化水素249.6mlと、60%硝酸495mlと、純水3371mlとを混合し、エッチング液1を調製した。このエッチング液は、銅及びニッケルに対してエッチング能力を有するものであった。
【0072】
・エッチング液2:
47%硫酸300mlと、硫酸第二鉄1200mlと、銅粉50gと、純水3500mlとを混合し、エッチング液2を調製した。このエッチング液は、銅に対してエッチング能力を有するが、ニッケルに対するエッチング能力は実質的にはないものであった。
【0073】
・エッチング液3:
ニッケル選択エッチング液(商品名「NC」、日本化学産業株式会社製)をエッチング液3として用いた。このエッチング液は、ニッケルに対してエッチング能力を有するが、銅に対するエッチング能力は実質的にはないものであった。
【0074】
・エッチング液4:
95%硫酸6.84mlと、30%過酸化水素249.6mlと、60%硝酸145mlと、純水3854mlとを混合し、エッチング液4を調製した。このエッチング液は、銅及びニッケルに対してエッチング能力を有するものであった。
【0075】
(エッチング速度比の測定方法)
ポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名「ユーピレックス 25SGA」)に無電解ニッケルめっき処理を行って厚さ200nmのニッケルめっき層を形成したサンプルAと、サンプルAに更に電解銅めっきで厚さ10μmの金属銅層を形成したサンプルBを用意した。
このサンプルA、Bを、エッチング1,4を用いてエッチング処理し、処理時間と、処理前後の厚みの差から、ニッケルに対するエッチング速度と銅に対するエッチング速度を算出し、速度比を求めた。
【0076】
エッチング液1のニッケルに対するエッチング速度と、銅に対するエッチング速度との速度比は、ニッケル:銅=1:1.11であった。また、エッチング液4のニッケルに対するエッチング速度と、銅に対するエッチング速度との速度比は、ニッケル:銅=1:4.17であった。
【0077】
エッチング液1の、ニッケルに対するエッチング速度と銅に対するエッチング速度とを図3に示し、エッチング液4の、ニッケルに対するエッチング速度と銅に対するエッチング速度とを図4に示す。
【0078】
(実施例1)
ポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名「ユーピレックス 25SGA」)を、エルフシードプロセス(荏原ユージライト製)により無電解ニッケルめっきを行い、厚さ0.13μmのニッケルめっき層を形成した。次に、電解銅めっきを行い、ニッケルめっき層上に厚さ0.45μmの薄銅層を形成し、ニッケルめっき層(下層)と、薄銅層(上層)とからなる下地層を形成した。
次に、下地層にレジストを形成し、露光し、配線パターンとなる部位のレジストを現像除去してめっきレジストを形成した。
次に、電解銅めっきを行い、めっきレジスト間の露出した下地層に、線幅17.5μm、厚さ9μmの銅配線層を30μmピッチで形成した。
次に、めっきレジストを下地層から剥離除去した。
そして、エッチング液1を用い、30℃で20秒間、スプレー圧0.05MPaでスプレー処理して下地層をエッチング除去すると共に、銅配線層の側面を同時にエッチングして、プリント配線基板を製造した。
エッチング処理後の銅配線層の線幅は13μmで、銅配線層の真下の下地層の線幅は13μmであり、アンダーカットは無かった(アンダーカット率は0%、銅配線の幅減少量が4.5μmである)。また、エッチング処理前後で、銅配線層の線幅が減少したが、減少量は極少量であり、製品特性上問題が生じないレベルであった。
また、25μmPの櫛歯パターンを作成して、85℃、85%Rhの条件で52Vの電圧を印加した状態で絶縁信頼性を確認する試験である電気絶縁信頼性試験において、10の12乗から13乗という高い抵抗値を1000時間保つことが出来た。
【0079】
(実施例2)
ポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名「ユーピレックス 25SGA」)を、エルフシードプロセス(荏原ユージライト製)により無電解ニッケルめっきを行い、厚さ0.13μmのニッケルめっき層を形成して下地層を形成した。
次に、下地層にレジストを形成し、露光し、配線パターンとなる部位のレジストを現像除去してめっきレジストを形成した。
次に、電解銅めっきを行い、めっきレジスト間の露出した下地層に、線幅17.5μm、厚さ9μmの銅配線層を30μmピッチで形成した。
次に、めっきレジストを下地層から剥離除去し、150℃で1時間アニールした。
そして、エッチング液1を用い、30℃で10秒間、スプレー圧0.05MPaでスプレー処理して下地層をエッチング除去すると共に、銅配線層の側面を同時にエッチングして、プリント配線基板を製造した。
エッチング処理後の銅配線層の線幅は14μmで、銅配線層の真下の下地層の線幅は14μmであり、アンダーカットは無かった(アンダーカット率は0%、銅配線の幅減少量が3.5μmである)。また、エッチング処理前後で、銅配線層の線幅が減少したが、減少量は極少量であり、製品特性上問題が生じないレベルであった。
【0080】
(実施例3)
実施例1において、露出した下地層をエッチング除去する際に、エッチング液1の代わりに、エッチング液4を用いて、30℃で10秒間、スプレー圧0.05MPaでスプレー処理して下地層をエッチング除去すると共に、銅配線層の側面を同時にエッチングして、プリント配線基板を製造した。
エッチング処理後の銅配線層の線幅は、トップの線幅が16μm、ボトムの線幅が17μmであった。また、銅配線層の真下の下地層の線幅は17μmであり、アンダーカットは無かった(アンダーカット率は0%、銅配線の幅減少量が1.5μmである)。
【0081】
(比較例1)
実施例1において、露出した下地層をエッチング除去する際に、エッチング液1の代わりに、エッチング液2,3を用いて2段階のエッチングを行った。すなわち、まず、エッチング液2を用い、30℃で8秒間、スプレー圧0.05MPaでスプレー処理して下地層の上層部分の薄銅層をエッチング除去した。次に、50℃に保ったエッチング液3に60秒間浸漬して手動揺動、スターラー攪拌を行い、下地層の下層部分のニッケルめっき層をエッチング除去してプリント配線基板を製造した。
エッチング処理前の銅配線層の線幅が16μm、エッチング処理後の銅配線層の線幅は14.5μmであり、銅配線層の真下の下地層の幅は11μmであった。エッチング処理前後で、銅配線層の線幅の減少は無かったが、下地層のアンダーカットが発生した。アンダーカット率は24%と大きく、銅配線の幅減少量は1.5μmであった。
【符号の説明】
【0082】
1:ポリイミドフィルム
2:下地層
3:めっきレジスト
4:銅配線層
図1
図2
図3
図4