(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る加圧加熱接合構造及び加圧加熱接合方法を半導体装置としてのパワー半導体モジュールに適用した場合の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1〜
図6は本発明を半導体装置としてのパワー半導体モジュールに適用した場合の第1の実施形態を示す図である。
本発明を適用し得るパワー半導体モジュール1は、
図1に示すように、エポキシ樹脂等の樹脂材でモールド成形された成形体として例えば長さ60mm×幅22mm×高さ13.4mm程度の直方体状に構成されている。このパワー半導体モジュール1は、左右端部側に固定ねじを挿通する挿通孔2が形成され、これら挿通孔2を囲むように平面から見てU字状の絶縁用壁部3が形成されている。
【0016】
また、パワー半導体モジュール1は、上面における左右の絶縁用壁部3間の前後端部側にそれぞれ第2の部材としての同一構成のピン状円柱体に形成された外部接続用端子4A、4B及び4Cと制御端子5Aa,5Ab及び5Ba,5Bbとが上方に突出して形成されている。これら外部接続用端子4A、4B及び4Cと制御端子5Aa,5Ab及び5Ba,5Bbとは、内蔵された第1の部材としての絶縁基板11A及び11Bに搭載された主回路構成部品となる半導体チップ12A及び12Bに電気的に接続されている。
絶縁基板11Aは、伝熱性の良いアルミナ等のセラミックスを主成分とする例えば正方形状の基板13を有し、この基板13の表面には厚みが0.5mm以上の銅板で構成される導体パターン14が貼り付けられており、裏面には同様の厚みを有する銅板で構成されるが貼り付けられている。
【0017】
導体パターン14は、
図3に示すように、左端部が基板13の幅と略等しい幅を有する幅広部14aと、この幅広部14aの右側に連接する幅広部14aより狭い幅の幅狭部14bとからなる平面形状が凸字形状に形成されたチップ搭載パターン14cを有する。また、導体パターン14は、チップ搭載パターン14cの幅狭部14bの外側に所定間隔を保って独立した端子接続パターン14d及び14eを有する。これら端子接続パターン14d及び14eの側縁はチップ搭載パターン14cの幅広部14aの側縁と一致されている。ここで、チップ搭載パターン14cの幅広部14aには、
図3(a)に示すように、ハンダ等の接合部材を介して第1の半導体チップ12A及び第2の半導体チップ12Bが実装されている。また、チップ搭載パターン14cには、第1の半導体チップ12Aの幅方向外側に主回路用の外部接続端子4Aを加圧加熱接合する接合凹部14fが形成されている。また、端子接続パターン14d及び14eには外部接続端子4Bを加圧加熱接合する接合凹部14gが形成されている。
【0018】
また、絶縁基板11Bも、絶縁基板11Aと同様にセラミックを主成分とする基板13とその表裏に形成された導体パターン14及び放熱用伝熱パターン15とを有する。導体パターン14は、絶縁基板11Aと同様に、幅広部14h及び幅狭部14iで平面形状が凸字形状に形成されたチップ搭載パターン14jと、このチップ搭載パターン14jの幅狭部14iの外側に所定間隔を保って独立して形成されたそれぞれ2つの端子接続パターン14ka,14kb及び14ma,14mbとが形成されている。
【0019】
そして、チップ搭載パターン14jには、
図3(a)に示すように、第1の半導体チップ12A及び第2の半導体チップ12Bがハンダ等の接合部材を介して実装されている。また、チップ搭載パターン14jには、第1の半導体チップ12Aの幅方向外側に外部接続端子4Cを加圧加熱接合する断面円形の接合凹部14oが形成されている。
さらに、端子接続パターン14ka,14kb及び14ma,14mbには、制御端子5Aa,5Ab及び5Ba,5Bbを加圧加熱接合する接合凹部14p及び14qが形成されている。
【0020】
ここで、外部接続端子4A、4B、4C及び5Aa,5Ab、5Ba,5Bbの材質は、絶縁基板11A及び11Bの導体パターン14の接合凹部14f、14g、14o及び14p,14qに加圧加熱接合する関係で、接合相手となる導体パターン14を構成する銅(Cu)の線膨張係数(α1=16.5×10
−6)に対して大きな線膨張係数(α2=23.1×10
−6)を有するアルミニウム(Al)系のものであることが望ましい。しかし、はんだ接合の容易さを考慮するとき、外部接続端子4A〜4C及び5A,5Bにはニッケル(Ni)あるいは錫(Sn)系の表面処理を施して、はんだ接合の濡れ性を改善することによって、実装効率を高めることが可能である。
【0021】
さらに、半導体チップ12A及び12Bは、
図3に示すように、上面に所定距離離間して配置されたプリント基板16に形成された導電性ポスト17aが電気的接合材としての半田を介して電気的に接続されている。また、導体パターン14の端子接続パターン14d及び14eの上面がプリント基板16に形成された導電性ポスト17bに電気的接合材としての半田を介して電気的に接続されている。さらに、絶縁基板11Aの導体パターン14aがプリント基板16に形成された一対の導体パターン16a及び16bのうち導体パターン16bと接続された導電性ポスト17cに電気的接合材としての半田を介して電気的に接続されている。
【0022】
次に、本発明に係る静流体圧による加圧接合方法の概要を
図6について説明する。
この加圧接合方法は、
図6(a)に示すように、例えば絶縁基板11Bの導体パターン14に相当する板状のベース部材21に例えば導電体ポスト17cに対応する接合部材22をAg微粒子等の金属微粒子を含有した金属微粒子含有ペースト23を介して接合する場合を一例として説明する。
【0023】
加圧接合方法では、先ず、
図6(b)に示すように、ベース部材21に接合部材としての銀(Ag)微粒子等の金属微粒子含有ペースト23をベース部材21の表面から盛り上がるように接合部材22の断面積に応じて接合部材2
2の接合側端部を十分に覆うことができる所定量塗布する。
ここで、金属微粒子含有ペースト23としては、揮発性のバインダー材中にAg微粒子等の金属微粒子を分散させて、Ag微粒子等の金属微粒子の表面をバインダー材で被覆して、ペースト状としたものが適用できる。また、金属微粒子としては、銀(Ag)のほかに銅(Cu)等を適用することができる。バインダー材は、例えば、カルボン酸類、アルコール類、アミン類のうち少なくとも1種からなる有機物を適用することができる。
【0024】
次いで、
図6(c)に示すように、ベース部材21に塗布した金属微粒子含有ペースト23内に接合部材22の接合端部を接触させた状態で予備加熱することにより、金属微粒子含有ペースト23に含まれる有機溶剤を揮発させると共に金属微粒子を溶融させてから冷却してベース部材21に対して接合部材22を分離しない程度に仮接合状態として一体化する。
【0025】
次いで、
図6(d)に示すように、密閉容器25内にその例えば上面側に設けたロッククランプ式の開閉蓋25aを開け、仮接合状態として一体化したベース部材21及び接合部材22を密閉容器25内に搬入する。このとき、ベース部材21の底面側を例えば密閉容器25の底面25bに植立させたピン状支持部26で3点以上支持し、ベース部材21の底面を密閉容器25の底面25aから上方に所定距離浮かした状態で位置決め支持する。
【0026】
次いで、密閉容器25の開閉蓋25bを閉じて密閉状態とし、この密閉容器25内に高温・高圧流体を充填して密閉容器25内を高温・高圧流体雰囲気状態とし、この高温・高圧流体雰囲気状態を一定時間保持して加熱・加圧接合を行う。この高温・高圧流体雰囲気を形成するには、予め加熱された流体を高圧ポンプで密閉容器25内に充填するか又は流体を高圧ポンプで密閉容器25内に充填してから加熱する密閉容器25毎加熱するようにしてもよい。
【0027】
すなわち、
図6(d)に示すように、ベース部材21に接合部材を仮接合した状態で、密閉容器25内で高温・高圧流体雰囲気状態で時間維持されると、静流体圧となる静水圧がベース部材21、接合部材及び金属微粒子含有ペースト23の全部位に均等に作用することになり、接合面となるベース部材21の金属微粒子含有ペースト23で覆われる平面部分と接合部材22の金属性微粒子含有ペースト23で覆われる底面部及びこれに隣接する底面側の円周部とに十分な接合圧力を与えて、加熱・加圧接合することができる。
金属微粒子含有ペースト23は、加熱によってバインダー成分が分解され金属微粒子が露出する。金属微粒子含有ペースト23からバインダー成分が分解されて金属微粒子が露出しているので、加圧力が作用した箇所については、露出した金属微粒子が焼結する。
【0028】
そして、所定時間経過後に、まず圧力を低下させてから温度を低下させることにより、気相状態を保ったまま常温・常圧まで降温及び降圧することにより、液体残渣を抑制することができる。
その後、密閉容器25内が常温・常圧まで低下した後に開閉蓋25aを開けて加熱・加圧接合されたベース部材21及び接合部材22を外部に取り出す。
【0029】
このように、静流体圧を利用して加熱・加圧接合を行うことにより、ベース部材21及び接合部材22の接合面を含む全ての外表面に静流体圧を均等に付与することができる。このため、ベース部材21と接合部材22との間の接合面が、ベース部材21及び接合部材22間の対向面に限定されることがなく、ベース部材21上では接合部材22の外側の金属微粒子含有ペースト21の外周まで接合面JF3を広げることができると共に、接合部材22では、底面部の接合面JF1及びこれに隣接して金属微粒子含有ペースト23と接触する円周部の接合面JF2まで含めることができる。したがって、ベース部材21と接合部材22との接合面の面積を従来例に比較して大きくすることができるので、ベース部材21及び接合部材22間の接合強度を向上させることができる。この結果、ベース部材21と接合部材22との対向面積が小さい場合でもベース部材21及び
接合部材22の加熱・加圧接合を確実に行うことができる。
【0030】
同様に、半導体チップ12A及び12Bの上面とプリント基板16に形成された導電体ポスト17aとの間の接合についても上記と同様に行うことができる。このため、これら半導体チップ12A及び12Bと導電体ポスト17aの加熱・加圧接合と、上述した絶縁基板11A及び11Bとプリント基板16に形成された導電体ポスト17b及び17
cとの加熱・加圧接合とを同時に行うことができる。
【0031】
なお、上記第1の実施形態においては、密閉容器25内に充填する流体は任意の圧縮性の低い流体を適用することができ、温度及び圧力も任意に設定することができる。
また、接合部材としてはベース部材21と柱状の接合部材22とに限定されるものではなく、半導体チップをベース配線回路基板に金属微粒子含有ペーストを介して接合したり、半導体チップと柱状接合部材とを接合したりしてもよい。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態を
図8について説明する。
この第2の実施形態では、超臨界状態又は亜臨界状態となる流体を利用して加圧・加熱接合を行うようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、密閉容器25内に充填する流体としては超臨界状態又は亜臨界状態となる流体を適用したものである。この超臨界状態又は亜臨界状態となる流体としては、水、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、メタノール、エタノール等が適用される。これら超臨界状態又は亜
臨界状態となる流体の臨界温度及び臨界圧力は下記表1に示す通りである。
【0034】
これらの流体のうち、超臨界流体として良く使用されるのが水及び二酸化炭素であり、これらの状態図は、
図7に示すように、水の場合は温度T=374℃且つ圧力P=22.1MPaで臨界点となり、これら以上の温度及び圧力で気体と流体の区別がつかない超臨界状態となり、この超臨界状態から液相領域側に温度を低下させると共に、圧力を低下させると亜臨界状態となる。
【0035】
一方、二酸化炭素の場合には、温度T=31.1℃且つ圧力P=7.38で臨界点となり、これら以上の温度及び圧力で超臨界状態となり、この超臨界状態から液相領域側に温度を低下させると共に、圧力を低下させると亜臨界状態となる。
したがって、高温・高圧流体として水を使用する場合には、臨界温度が374.1℃であり、接合部材としての金属微粒子含有ペースト23の金属微粒子を溶融させることができると共に、接合部に十分な接合圧力を与えることができる。
【0036】
そして、第2の実施形態では、導電体ポスト17aと半導体チップ12A及び12Bとの接合、導電体ポスト17b及び17cと絶縁基板12A及び12Bの導体パターン14との接合を同時に行うことができる。
すなわち、前述したパワー半導体モジュール1の絶縁基板11A及び11Bの導体パターン14上における半導体チップ12A及び12Bの接合位置に、
図8(a)に示すように、金属微粒子含有ペースト27を塗布する。
【0037】
次いで、
図8(b)に示すように、金属微粒子含有ペースト27上に面実装型の半導体チップ12A及び12Bを載置する。そして、各半導体チップ12A及び12Bの上面の導電体ポスト17aを接合する位置に金属微粒子含有ペースト28を塗布すると共に、絶縁基板11A及び11Bの導電パターン14上の導電体ポスト17b及び17cの接合位置に金属微粒子含有ペースト29を塗布する。
【0038】
次いで、
図8(c)に示すように、半導体チップ12A及び12B上に導電体ポスト17a〜17cを形成したプリント基板16を位置決めして載置した状態で、予備加熱を行って金属微粒子含有ペースト41〜43の有機溶剤を蒸発させると共に、金属微粒子を溶融させてから冷却することにより、半導体チップ12A及び12bを絶縁基板11A及び11Bの導体パターン14上に仮接合状態として一体化する。これと同時に導電体ポスト17a〜17cの底面側を半導体チップ12A及び12Bの上面側と絶縁基板11A及び11Bの導体パターン14の上面とに仮接合状態として一体化する。
【0039】
この一体化された絶縁基板11A及び11B、半導体チップ12A及び12C及びプリント基板16を、
図9に示す加圧接合装置を構成する例えばロッククランプ式の開閉蓋25aを開けた状態の密閉容器25内に、絶縁基板11A及び11Bの放熱用伝熱パターン15の底面をピン状支持部25bで3点以上支持した状態で、放熱要伝熱パターン14を密閉容器25の底面25cから所定距離浮かせた状態で位置決め保持する。
【0040】
この密閉容器25には、
図9に示すように、例えばプランジャー式やダイヤフラム式の往復動形の高圧ポンプ30及び電磁開閉弁31が介挿された加圧部となる加圧水系配管32の一端が接続されている。この加圧水系配管32の他端は、タンク等の水供給源33に接続されている。また、加圧水系配管32の高圧ポンプ30及び電磁開閉弁32をバイパスするように電磁開閉弁34を介挿したバイパス配管35が設けられている。
【0041】
さらに、バイパス配管35と圧力水系配管32との接続点に電磁開閉弁36及び電磁圧力制御弁37を介挿した排出配管38の一端が接続され、この配排出配管38の他端が水供給源33のリターン側に接続されている。
また、密閉容器25の下面側には加熱ヒータ等の加熱部を配置した加熱装置40が配設され、密閉容器25の上面側の開閉蓋25aにはペルチェ効果素子等の冷却部を配置した冷却装置41が配置されている。
【0042】
そして、高圧ポンプ30、電磁開閉弁31、34及び36、電磁圧力制御弁37、加熱装置40及び冷却装置41が制御装置42によって制御される。この制御装置42には、密閉容器25内の温度を検出する温度センサ43から出力される温度検出値と密閉容器25内の圧力を検出する圧力センサ44から出力される圧力検出値とが入力され、さらに起動スイッチ45が設けられている。この制御装置42では、起動スイッチ45がオン状態となると、先ず、電磁開閉弁34を開状態に制御して水供給源33からの常温で常圧よりは僅かに高く送水可能な圧力に設定された水をパイパス配管35を介して密閉容器25内に注入を開始する。その後、密閉容器25内に水が充満して圧力センサ41の圧力が送水圧に達すると、電磁開閉弁34を閉じて、密閉容器25内への水の注入を停止する。
【0043】
この状態で、加熱装置40を作動させて、密閉容器25内に充満された水の加熱を開始し、水の温度が100℃を超えると、高圧ポンプ30を作動状態とするとともに、電磁開閉弁31を開状態として密閉容器25内の水の加圧を開始する。そして、密閉容器25内の温度及び圧力を監視して前述した
図7の状態図における気相領域を通って超臨界点を超えて超臨界領域となるように温度及び圧力を制御する。
【0044】
その後、超臨界領域に達すると、高圧ポンプ30による加圧を停止し、電磁開閉弁31を閉じるが、加熱装置37については超臨界領域の温度を維持するように定温制御する。
その後、所定時間経過後に、加熱装置40による加熱を停止し、これに代えて冷却装置41を作動させて密閉容器25内の冷却を開始し、密閉容器25内の温度が下がって超臨界領域から気相領域に入ると、電磁圧力制御弁37の設定圧力を超臨界領域の圧力から徐々に下げるとともに、電磁開閉弁36を開状態とする。これにより、密閉容器25内の水が電磁開閉弁36及び電磁圧力制御弁37を介して水供給源33のリターン側に戻される。このため、密閉容器25内の温度及び圧力が気相領域内を通って降温・降圧制御される。
【0045】
その後、密閉容器25内の温度及び圧力が常温・常圧に復帰すると、電磁開閉弁36を閉じて加熱・加圧処理を終了し、制御装置42に接続された密閉容器25の開操作が可能であることを表示する表示器46を点灯させる。
そして、
図9に示すように、密閉容器25内に
図8(c)に示す仮接合状態で一体化された絶縁基板11A及び11B、半導体チップ12A及び12B及びプリント基板16を絶縁基板11A及び11Bの放熱用伝熱パターン15をピン状支持体25bに載置した状態で、開閉蓋25aを閉じてロッククランプすることにより、密閉容器25を密閉状態とする。
【0046】
この状態で、制御装置42の起動スイッチ45をオン状態とすることにより、制御装置42で静流体圧による加圧加熱接合処理が実行される。この加圧加熱接合処理は、先ず、バイパス配管35の電磁開閉弁34を開いて水供給源33から供給される常圧よりは僅かに高い送水圧を有する水を密閉容器25内に注入する。この状態では、送水圧を低く抑制することで注入された水によって仮接合状態の絶縁基板A,11B、半導体チップ12A,12B及びプリント基板16が移動することを抑制することができる。このとき、密閉容器25内に溜まっている空気は密閉容器25の上部に配設された電磁開閉弁を有する空気抜き配管から排出する。
【0047】
その後、密閉容器25内に水が充満して、圧力センサ44で検出される圧力が送水圧に達すると、電磁開閉弁34が閉制御される。これと同時に又はその前に加熱装置40が作動されて密閉容器45内の水の加熱が開始される。
その後、密閉容器45内の温度が例えば100℃を超えると、電磁開閉弁34が開制御されると共に、高圧ポンプ30が作動されて、高圧ポンプ30から出力される高圧水が密閉容器25内に供給される。この場合、密閉容器25内は既に水で満たされているので、高圧ポンプ30から供給される水量は僅かであり、圧力のみが上昇するこのため、ピン状支持部材25bに支持されている仮接合状態の絶縁基板11A,11B、半導体チップ12A,12B及びプリント基板16は水圧によって移動することはない。
【0048】
このようにして、加熱装置40で昇温しながら高圧ポンプ30で昇圧するので、
図7における状態図で、気相領域を通りながら昇温及び昇圧を継続し、温度及び圧力の双方が臨界点を超えると、超臨界状態に達する。この超臨界状態では、水温が374.1℃以上となり、圧力が22.1MPa以上となる。このため、仮接合状態となっている金属微粒子含有ペースト27〜29が溶融すると共に、前述した第1の実施形態と同様に、静水圧が絶縁基板11A,11B、半導体チップ12A,12B及びプリント基板16と金属粒子含有ペースト27〜29とに均等に作用することになり、各部の接合部に静水圧による接合圧力を作用させることができる。このため、前述した第1の実施形態と同様に複数の接合面に接合圧を付与することができる。
【0049】
この臨界状態となると、高圧ポンプ30の作動が停止されるとともに開閉弁31が閉制御されて、圧力一定状態に制御されると共に、加熱装置40を定温度制御する。
この超臨界状態を所定時間維持してから例えばリリーフ弁37のリリーフ圧を臨界点圧力に制御した状態で、電磁開閉弁36を開制御することにより、密閉容器25の内圧の降圧を開始し、これによって密閉容器25内の圧力が臨界点まで降圧され、その後リリーフ弁37のリリーフ圧を徐々に低下させて気相領域で降圧を開始し、その後、加熱装置40での加熱を停止し、これに代えて冷却装置41を作動させることにより、密閉容器25内の水温を降温制御する。このとき、圧力と温度とが常に気相領域内を通るように降温・降圧制御を行う。
【0050】
その後、密閉容器25内の水の殆どが戻り配管38を通じて水供給源33に戻され、密閉容器25内の温度及び圧力が常温・常圧状態に復帰すると、電磁開閉弁36が閉制御されると共に、表示器46が点灯される。
このため、密閉容器25の開閉蓋25aを開けて接合された絶縁基板11A,11B、半導体チップ12A,12B及びプリント基板16を取り出し、次いで新たな仮接合状態の絶縁基板11A,11B、半導体チップ12A,12B及びプリント基板16をセットしてから開閉蓋25bを閉じてロッククランプし、再度静流体圧による加熱加圧接合処理を実行する。
【0051】
このように、第2の実施形態では、密閉容器25内で水を超臨界状態とすることで、金属微粒子含有ペーストを溶解し、その後、気相領域を通って降温・降圧制御を行うことにより、水は蒸発して金属微粒子含有ペーストのみが接合部に残り、確実な加熱加圧接合を行うことができる。この場合の接合面が前述した第1の実施形態と同様に導電体ポスト17a〜17cのような接合面積の小さい接合部材であっても接合強度を向上させた接合を行うことができる。
【0052】
なお、上記第2の実施形態では、密閉容器25内に水を充填して、超臨界状態とする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、二酸化炭素を充填して超臨界状態とするようにしてもよい。この場合には、超臨界状態で二酸化炭素がさまざまな物質を良く溶解する。このため、超臨界状態から気相領域で降温・降圧を行うことにより、二酸化炭素が気化して溶質となる金属微粒子ペーストのみが残り、確実な加熱加圧接合を行うことができる。この場合、気化した二酸化炭素は回収して再利用することができる。
【0053】
その他、密閉容器25内に充填する流体としては、超臨界状態となるメタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、アセトン等を適用することができる。
また、超臨界状態の水は酸化力が極めて高くなるので、亜臨界状態で使用するようにしてもよい。
【0054】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、
図1〜
図5に示すパワー半導体モジュール1を構成する絶縁基板11A,11B、半導体チップ12A.12B及びプリント基板16の接合を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2つの部材の接合を、金属微粒子含有ペーストを使用して行う場合に、本発明を適用することができる。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、静流体圧のみによって接合圧力を付与する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、密閉容器25内に流体シリンダ等の加圧手段を配置して、この加圧手段で被接合部材及び接合部材の一方に外力を付与して、接合圧力をさらに高めることができる。
【0055】
また、上記第1及び第2の実施形態における絶縁基板11A及び11Bは、上記構成に限定されるものではなく、セラミックスと銅をロウ付けし、エッチングによって銅をパターニングした所謂AMB(Active Metal Brazing)基板、セラミックス基板と銅とを直接接合したDCB(Direct Copper Bonding)基板を適用することができる。また、セラミックス基板材料としては、アルミナ(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si
3N
4)等を適用することができる。さらに、セラミックス基板に代えて樹脂基板を適用することもできる。要は絶縁性を確保できる基板であればよい。
【0056】
また、上記第1及び第2の実施形態では、第1の半導体チップ12AにIGBTを形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第1の半導体チップ12Aにパワー電界効果トランジスタを形成するようにしてもよく、他の電圧制御型半導体素子を内蔵するようにしてもよい。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、絶縁基板11A及び11Bに第1の半導体チップ12A及び第2の半導体チップ12Bを複数配置する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、トランジスタ内蔵ダイオードを使用できる場合や、同期整流方式を採用する場合などは、第2の半導体チップ12Bとしてのフリー・ホイーリング・ダイオード(Free Wheeling Diode,FWD)を省略してパワーMOSFETやIGBT等のパワー半導体素子のみで構成することもできる。
【0057】
また、本発明は、半導体モジュールの端子接続の組み合わせだけで所望する回路構成が得られることから、本発明は上述した電力変換用インバータ装置に限定されるものではなく、パワー半導体モジュールを使用する他の電力変換装置や高周波用途のスイッチングIC等の他の半導体装置に本発明を適用することができる。