特許第6236849号(P6236849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236849
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20171120BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B41J2/165 207
   B41J2/165 101
   B41J2/165 501
   B41J2/01 401
   B41J2/01 451
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-88089(P2013-88089)
(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-237267(P2013-237267A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2016年3月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-96304(P2012-96304)
(32)【優先日】2012年4月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】的場 健司
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−5852(JP,A)
【文献】 特開2011−207091(JP,A)
【文献】 特開2012−158070(JP,A)
【文献】 特開昭61−286140(JP,A)
【文献】 特開2009−078499(JP,A)
【文献】 特開2005−028280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口が形成された吐出面を有するヘッドと、
水及び不揮発性成分を含む加湿液が貯留された貯留部を有し、前記加湿液により加湿された加湿空気を前記吐出面と対向する吐出空間に供給する加湿動作を行う加湿空気供給手段と、
前記貯留部内の前記加湿液の前記不揮発性成分の濃度を示す指標を取得する取得手段と、
前記加湿空気供給手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記取得手段によって取得された前記指標が示す前記濃度が高くなるに連れて、前記加湿動作における、前記加湿空気の供給量を増加させること、及び加湿効率を増加させること、の少なくともいずれかを行うように前記加湿空気供給手段を制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記吐出空間が外部空間から封止された封止状態と、前記吐出空間が前記外部空間に対して開放された非封止状態とを取り得るキャップ手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記吐出空間を前記封止状態とするように前記キャップ手段を制御した後に、前記加湿空気を前記封止状態の前記吐出空間に供給する前記加湿動作を行うように前記加湿空気供給手段を制御するものである請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記指標として、前記加湿動作毎の加湿空気の前記供給量を累積した累積供給量を取得し、
前記制御手段は、前記累積供給量が多くなるに連れて、前記加湿動作における前記加湿空気の供給量を増加させるように前記加湿空気供給手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記加湿空気供給手段は、各加湿動作において、一定の流速で前記加湿空気を供給し、
前記制御手段は、前記累積供給量が多くなるに連れて、前記加湿動作における前記加湿空気の供給時間を長くするように前記加湿空気供給手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記累積供給量として、前記加湿空気の前記供給時間を累積した累積時間を取得することを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記加湿空気供給手段は、各加湿動作において、一定の供給時間だけ前記加湿空気を供給し、
前記取得手段は、前記指標として、前記加湿動作毎の加湿空気の前記供給量を累積した累積供給量を取得し、
前記制御手段は、前記累積供給量が多くなるに連れて、前記加湿動作における前記加湿空気の流速を速くするように前記加湿空気供給手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記貯留部に貯留された前記加湿液が含む前記不揮発性成分の量を記憶する記憶手段と、
前記貯留部に貯留された前記加湿液の残量を検知する残量センサと、をさらに備え、
前記取得手段は、前記記憶手段に記憶された前記不揮発成分の量と、前記残量センサにより検知される前記加湿液の残量とに基づいて、前記貯留部内の前記加湿液の前記不揮発性成分の濃度を示す指標を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記貯留部に貯留された前記加湿液を加熱する加熱手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記取得手段によって取得された前記指標が示す前記濃度が高くなるにつれて、前記貯留部に貯留された前記加湿液の水温が高くなるように、前記加熱手段を制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記ヘッド周辺の湿度を検出する検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記検出手段が検出した湿度が所定範囲よりも低い場合は前記加湿動作における前記加湿空気の供給量を増加させ、高い場合は前記供給量を減少させるように、前記加湿空気供給手段を制御することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記指標が示す前記濃度が所定値を超えたときにだけ、ユーザに報知する報知手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記吐出口から前記液体を排出させる液体排出動作を行う液体排出手段をさらに備えており、
前記制御手段は、前記加湿動作後に前記吐出空間を前記非封止状態とするように前記キャップ手段を制御した後に、前記液体排出動作を行うように前記液体排出手段を制御するとともに、前記指標が示す前記濃度が所定値を超えたときに、前記液体排出動作における液体排出量が、前記指標が示す前記濃度が前記所定値以下のときよりも多くなるように、前記液体排出手段を制御することと特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記排出手段は、前記ヘッド内の前記液体に吐出エネルギーを付与することで、前記吐出口から液滴を吐出させるエネルギー付与手段を有しており、
前記制御手段は、前記液体排出動作として前記吐出口から前記液滴を吐出させるフラッシングを行うように前記エネルギー付与手段を制御することを特徴とする請求項11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記貯留部に貯留された加湿液の少なくとも一部を外部に排出する加湿液排出手段をさらに備えており、
前記制御手段は、前記指標が示す前記濃度が所定値を超えたときに、前記貯留部に貯留された加湿液の少なくとも一部を外部に排出するよう前記加湿液排出手段を制御することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記貯留部には、空気を流入させるための空気流入口と、前記貯留部から空気を流出させるための空気流出口とが形成されており、
前記キャップ手段は、第1の開口及び前記第1の開口とは異なる第2の開口を有し、
前記加湿空気供給手段は、一端が前記空気流出口に接続され他端が前記第1の開口に接続された第1空気流路と、一端が前記空気流入口に接続され他端が第2の開口に接続された第2空気流路と、空気を循環させるポンプと、を備え、
前記制御手段は前記吐出空間内の空気が前記第2の開口、前記第2空気流路及び前記空気流入口を経由して前記貯留部に送られ、その前記貯留部に送られた空気が前記貯留部に貯留される加湿液により加湿され、加湿された加湿空気が前記空気流出口、前記第1空気流路及び前記第1の開口を経由して前記吐出空間に供給されるように、前記ポンプを制御することを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクジェットヘッドのノズル内のインクが増粘するのを防止するために、ノズルが開口するノズル面(吐出面)を気密に封止するキャップ内と、水(加湿液)を貯留している水タンク(貯留部)と連通させる技術について記載されている。これにより、水タンクが貯溜する水によって加湿された空気がキャップ内に充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−122543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術によると、水タンクに貯留された水に不揮発性成分(例えば、防腐剤の成分)が含まれていると、加湿時間が経過するに連れて水分だけが蒸発し、水タンク内における不揮発性成分の量が多くなる。水タンク内の不揮発性成分の濃度が高くなると、加湿された空気によるキャップ内を加湿する加湿能力が低下する。この結果、ノズル近傍のインクが乾燥しやすくなり、これを回復するためのノズルからのインク排出量を多くする必要が生じる。上記加湿能力の低下は、キャップを行わないで加湿を行う場合でも起こりうる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出する吐出口が形成された吐出面を有するヘッドと、水及び不揮発性成分を含む加湿液が貯留された貯留部を有し、前記加湿液により加湿された加湿空気を前記吐出面と対向する吐出空間に供給する加湿動作を行う加湿空気供給手段と、前記貯留部内の前記加湿液の前記不揮発性成分の濃度を示す指標を取得する取得手段と、前記加湿空気供給手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記取得手段によって取得された前記指標が示す前記濃度が高くなるに連れて、前記加湿動作における、前記加湿空気の供給量を増加させること、及び加湿効率を増加させること、の少なくともいずれかを行うように前記加湿空気供給手段を制御する。
【0007】
これによると、加湿液の不揮発性成分の濃度が高くなっても、加湿空気の供給量及び加湿効率の少なくともいずれかが増加するので、吐出空間の湿度を所定湿度に保つことが可能となる。このため、吐出口近傍の液体の乾燥が抑制される。
【0008】
本発明において、前記吐出空間が外部空間から封止された封止状態と、前記吐出空間が前記外部空間に対して開放された非封止状態とを取り得るキャップ手段をさらに備え、 前記制御手段は、前記吐出空間を前記封止状態とするように前記キャップ手段を制御した後に、前記加湿空気を前記封止状態の前記吐出空間に供給する前記加湿動作を行うように前記加湿空気供給手段を制御することが好ましい。これにより、吐出口近傍の液体の乾燥がさらに抑制される。
【0009】
本発明において、前記取得手段は、前記指標として、前記加湿動作毎の加湿空気の前記供給量を累積した累積供給量を取得し、前記制御手段は、前記累積供給量が多くなるに連れて、前記加湿動作における前記加湿空気の供給量を増加させるように前記加湿空気供給手段を制御することが好ましい。これにより、これにより、簡単な制御で吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0010】
本発明において、前記加湿空気供給手段は、各加湿動作において、一定の流速で前記加湿空気を供給し、前記制御手段は、前記累積供給量が多くなるに連れて、前記加湿動作における前記加湿空気の供給時間を長くするように前記加湿空気供給手段を制御することが好ましい。これにより、簡単な制御で吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明において、前記取得手段は、前記累積供給量として、前記加湿空気の前記供給時間を累積した累積時間を取得することが好ましい。これにより、より簡単な制御で吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0012】
また、本発明において、前記加湿空気供給手段は、各加湿動作において、一定の供給時間だけ前記加湿空気を供給し、前記取得手段は、前記指標として、前記加湿動作毎の加湿空気の前記供給量を累積した累積供給量を取得し、前記制御手段は、前記累積供給量が多くなるに連れて、前記加湿動作における前記加湿空気の流速を速くするように前記加湿空気供給手段を制御することが好ましい。これにより、簡単な制御で吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記貯留部に貯留された前記加湿液が含む前記不揮発性成分の量を記憶する記憶手段と、前記貯留部に貯留された前記加湿液の残量を検知する残量センサと、をさらに備え、前記取得手段は、前記記憶手段に記憶された前記不揮発成分の量と、前記残量センサにより検知される前記加湿液の残量とに基づいて、前記貯留部内の前記加湿液の前記不揮発性成分の濃度を示す指標を取得することが好ましい。これにより、簡単な制御で吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0014】
また、本発明において、前記貯留部に貯留された前記加湿液を加熱する加熱手段をさらに備え、前記制御手段は、前記取得手段によって取得された前記指標が示す前記濃度が高くなるにつれて、前記貯留部に貯留された前記加湿液の水温が高くなるように、前記加熱手段を制御することが好ましい。これにより、簡単な制御で吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0015】
また、本発明において、 前記ヘッド周辺の湿度を検出する検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記検出手段が検出した湿度が所定範囲よりも低い場合は前記加湿動作における前記加湿空気の供給量を増加させ、高い場合は前記供給量を減少させるように、前記加湿空気供給手段を制御することが好ましい。これにより、ヘッド周辺の湿度環境に応じて、加湿空気の供給量の増減が可能となる。このため、湿度が低い場合は供給量が多くなるので、吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。湿度が高い場合は供給量が低くなるので、加湿液の不揮発性成分の濃度が上昇するのを抑制することが可能となる。
【0016】
また、本発明において、 前記指標が示す前記濃度が所定値を超えたときにだけ、ユーザに報知する報知手段をさらに備えていることが好ましい。これにより、加湿液の詰め替えタイミングをユーザに知らせることが可能となる。
【0017】
また、本発明において、前記吐出口から前記液体を排出させる液体排出動作を行う液体排出手段をさらに備えており、前記制御手段は、前記加湿動作後に前記吐出空間を前記非封止状態とするように前記キャップ手段を制御した後に、前記液体排出動作を行うように前記液体排出手段を制御するとともに、前記指標が示す前記濃度が所定値を超えたときに、前記液体排出動作における液体排出量が、前記指標が示す前記濃度が前記所定値以下のときよりも多くなるように、前記液体排出手段を制御することが好ましい。これにより、濃度が所定値を超え、吐出口近傍の液体が乾燥しやすくなっても、液体排出量を増加させるため、吐出口近傍の乾燥した液体が排出される。このため、画像記録時の画像品質を維持することが可能となる。
【0018】
また、本発明において、前記液体排出手段は、前記ヘッド内の前記液体に吐出エネルギーを付与することで、前記吐出口から液滴を吐出させるエネルギー付与手段を有しており、前記制御手段は、前記液体排出動作として前記吐出口から前記液滴を吐出させるフラッシングを行うように前記エネルギー付与手段を制御することが好ましい。これにより、液体排出動作が吐出フラッシングとなる。
【0019】
また、本発明において、前記貯留部に貯留された加湿液の少なくとも一部を外部に排出する加湿液排出手段をさらに備えており、前記制御手段は、前記指標が示す前記濃度が所定値を超えたときに、前記貯留部に貯留された加湿液の少なくとも一部を外部に排出するよう前記加湿液排出手段を制御することが好ましい。これにより、濃度が高くなりすぎた加湿液を、外部に排出することができる。
【0020】
また、本発明において、前記貯留部には、空気を流入させるための空気流入口と、前記貯留部から空気を流出させるための空気流出口とが形成されており、前記キャップ手段は、第1の開口及び前記第1の開口とは異なる第2の開口を有し、前記加湿空気供給手段は、一端が前記空気流出口に接続され他端が前記第1の開口に接続された第1空気流路と、一端が前記空気流入口に接続され他端が第2の開口に接続された第2空気流路と、空気を循環させるポンプと、を備え、前記制御手段は前記吐出空間内の空気が前記第2の開口、前記第2空気流路及び前記空気流入口を経由して前記貯留部に送られ、その前記貯留部に送られた空気が前記貯留部に貯留される加湿液により加湿され、加湿された加湿空気が前記空気流出口、前記第1空気流路及び前記第1の開口を経由して前記吐出空間に供給されるように、前記ポンプを制御することが好ましい。これにより、加湿液の蒸発速度を遅くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の液体吐出装置によると、加湿液の不揮発性成分の濃度が高くなっても、加湿空気の供給量が増加するので、吐出空間の湿度を所定湿度に保つことが可能となる。このため、吐出口近傍の液体の乾燥が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の液体吐出装置の一実施形態によるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
図2図1のプリンタに含まれるヘッドのヘッド本体を示す平面図である。
図3図2の一点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
図4図3に示すIV−IV線に沿った部分断面図である。
図5図4の一点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
図6図1のプリンタに含まれるヘッドホルダ及び加湿空気供給機構を示す概略図である。
図7図6の一点鎖線で囲まれた領域を示す部分断面図であり、キャップが離隔位置にある状況を示す図である。
図8図1に示す制御部の機能ブロック図である。
図9図1のプリンタの制御部が実行するメンテナンス動作に関する一連の動作フローを示すフローチャート図である。
図10】本発明の一実施形態による制御部の変形例を示す機能ブロック図である。
図11】タンククリーニングを行う形態におけるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
図12図11のプリンタに含まれるヘッドホルダ及び加湿空気供給機構および回収機構を示す概略図である。
図13】加湿空気の水分量をヒータにより増加させる形態における制御部のブロック図である。
図14】タンクに貯溜された加湿液中の不揮発性成分の濃度を算出する形態における制御部のブロック図である。
図15】タンクに設けられた排出通路よりタンクの加湿液が排出される形態におけるタンクの概略図である。
図16】キャップがヘッドから独立して形成されていている形態におけるヘッド、キャップ、及び加湿空気供給機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
先ず、図1を参照し、本発明の液体吐出装置の一実施形態であるインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
【0025】
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部4が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙部23から排紙部4に向かう用紙搬送経路が形成されており、図1に示す黒太矢印に沿って用紙Pが搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像形成、用紙Pの排紙部4への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aのヘッド1に対してインクが供給される。
【0026】
空間Aには、ブラックインクを吐出するヘッド1、搬送機構40、用紙Pをガイドする2つのガイド部10a,10b、用紙センサ26、湿度センサ29(図8参照)、加湿動作に用いられる加湿空気供給機構50(図6参照)、クリーナユニット37、ブザー27(図8参照)、及び、制御部100等が配置されている。なお、湿度センサ(検出手段)29は、ヘッド1近傍に配置されており、ヘッド1周囲の湿度を検出する。
【0027】
ヘッド1は、ヘッドホルダ5を介して筐体101aに支持されている。ヘッド1の下面は、複数の吐出口108(図3参照)が配列された吐出面1aとなっている。ヘッドホルダ5は、吐出面1aと搬送ベルト43との間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド1を保持している。
【0028】
ヘッド1は、ヘッド本体3(図2参照)に加えて、リザーバユニット、フレキシブルプリント配線基板(FPC)、回路基板等が積層された積層体である。回路基板で調整された信号は、FPC上のドライバICで駆動信号に変換され、さらにアクチュエータユニット21に出力される。アクチュエータユニット21が駆動されると、リザーバユニットから供給されたインクが、吐出口108から吐出されることになる。
【0029】
ヘッドホルダ5には、加湿空気供給機構50を構成するキャップ60が取り付けられている。キャップ60は、ヘッド1に配設された環状部材であって、平面視でヘッド1を内包する。キャップ60の構成、動作、機能等は、後に詳述する。
【0030】
搬送機構40は、2つのベルトローラ41,42と、搬送ベルト43と、プラテン46と、ニップローラ47と、剥離プレート45とを有している。搬送ベルト43は、両ローラ41,42の間に巻回されたエンドレスのベルトである。プラテン46は、ヘッド1に対向配置され、搬送ベルト43の上側ループを内側から支える。ベルトローラ42は、駆動ローラであって、搬送ベルト43を走行させる。ベルトローラ42は、図示しないモータによって、図1中時計回りに回転される。ベルトローラ41は、従動ローラであって、搬送ベルト43の走行によって回転される。ニップローラ47は、給紙部23から搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト43の外周面に押さえ付ける。用紙Pは、シリコン層(弱粘着性の外周面被覆層)によって搬送ベルト43に保持され、ヘッド1に向かって搬送される。剥離プレート45は、搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト43から剥離し、下流側の排紙部4へと導く。
【0031】
2つのガイド部10a,10bは、搬送機構40を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部10aは、2つのガイド31a,31bと送りローラ対32とを有し、給紙部23と搬送機構40とを繋ぐ。画像形成用の用紙Pが、搬送機構40に向けて搬送される。搬送方向下流側のガイド部10bは、2つのガイド33a,33bと2つの送りローラ対34,35とを有し、搬送機構40と排紙部4とを繋ぐ。画像形成後の用紙Pが、排紙部4に向けて搬送される。
【0032】
用紙センサ26は、ヘッド1の上流側に配置され、搬送される用紙Pの先端を検知する。このとき出力された検知信号は、ヘッド1と搬送機構40との駆動の同期に用いられ、所望の解像度と速度で画像が形成されることになる。
【0033】
クリーナユニット37は、洗浄液塗布部材37a、ブレード37b及び移動機構37c(図8参照)を有し、搬送ベルト43の外周面をクリーニングする。クリーナユニット37は、図1に示すように、搬送ベルト43の右下方にあって、ベルトローラ42と対向して配置されている。洗浄液塗布部材37aは、多孔質体(例えば、スポンジ)とこれを支持する支持部材から構成され、ブレード37bは、板状弾性部材(例えば、ゴム)で構成される。共に、搬送ベルト43を全幅に亘って接触可能である。移動機構37cは、洗浄液塗布部材37a及びブレード37bを搬送ベルト43の外周面に離接させる。クリーニング動作において、多孔質体から外周面に洗浄液が塗布され、下流側のブレード37bにより汚れや洗浄液が外周面から掻き取られる。
【0034】
空間Bには、給紙部23が配置されている。給紙部23は、給紙トレイ24及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ24が、筐体101aに対して着脱可能となっている。給紙トレイ24は、上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収納可能である。給紙ローラ25は、制御部100の制御により、給紙トレイ24内で最も上方の用紙Pを送り出す。
【0035】
ここで、副走査方向とは、搬送機構40によって搬送される用紙搬送方向Dと平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0036】
空間Cには、ブラックインクを貯留するカートリッジ22が筐体101aに着脱可能に配置されている。カートリッジ22は、ヘッド1にチューブ及びポンプ(ともに不図示)を介して接続されている。なお、ポンプは、ヘッド1にインクを強制的に送るとき(例えば、インクの初期導入時)以外は停止状態にあり、ヘッド1へのインク供給を妨げない。
【0037】
次に、制御部100について説明する。制御部100は、プリンタ101各部の動作を制御してプリンタ101全体の動作を司る。制御部100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から供給された印刷信号に基づいて、画像形成動作を制御する。具体的には、制御部100は、用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作等を制御する。
【0038】
制御部100は、外部装置から受信した印刷信号に基づいて、給紙部23、搬送機構40、及び、各送りローラ対32,34,35を駆動する。給紙トレイ24から送り出された用紙Pは、上流側ガイド部10aによりガイドされ搬送機構40に送られる。搬送機構40によって搬送される用紙Pは、ヘッド1のすぐ下方を通過する際に、インクが吐出される。これにより、用紙P上に所望の画像が形成される。画像が形成された用紙Pは、剥離プレート45によって搬送ベルト43から剥離された後、下流側ガイド部10bによりガイドされて、筐体101a上部から排紙部4に排出される。
【0039】
また、制御部100は、メンテナンス動作も制御する。メンテナンス動作では、ヘッド1のインク吐出特性の回復・維持や印刷に係わる準備が行われる。メンテナンス動作には、吐出フラッシング動作、搬送ベルト43のクリーニング動作、キャッピングや加湿によるインクの増粘防止動作等が含まれる。
【0040】
吐出フラッシング動作では、アクチュエータが駆動されて、吐出口108からインクが吐出される。インク吐出は、吐出フラッシングデータ(画像データと異なるデータ)に基づいて行われる。また、クリーニング動作では、搬送ベルト43がクリーナユニット37によって払拭される。クリーニング動作は、吐出フラッシング動作後に行われ、搬送ベルト43上のインクなどの異物が除去される。
【0041】
キャッピングでは、図6に示すように、キャップ60により吐出空間(吐出面1aと対向する空間)S1が外部空間S2から隔離されて、メニスカスの乾燥が抑制される。加湿動作では、隔離された吐出空間S1に加湿空気が供給される。キャッピングにより吐出空間S1内に水蒸気が留まり、メニスカスの乾燥がさらに抑制される。
【0042】
次に、図2図5を参照しつつヘッド1について詳細に説明する。図3では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
【0043】
流路ユニット9は、図4に示すように、ステンレス製の9枚の金属プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の上面には、図2に示すように、計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図2図4に示すように、インク供給口105bを一端とするマニホールド流路105、及び、マニホールド流路105から分岐した複数の副マニホールド流路105aが形成されている。さらに、各副マニホールド流路105aの出口からアパーチャ112及び圧力室110を経て吐出口108に至る複数の個別インク流路132が形成されている。流路ユニット9の下面は、吐出面1aであって、多数の吐出口108がマトリクス状に配置されている。これら吐出口108は、主走査方向に所定の距離ずつ離れて並んでいる。
【0044】
リザーバユニットは、流路ユニット9と同様に、インク流路が形成された流路部材である。インク流路のリザーバには、流路ユニット9へのインクが貯留される。図2図4に示すように、リザーバユニットのインクは、インク供給口105bから流路ユニット9内に供給される。なお、ポンプは、リザーバユニットを介して流路ユニット9にインクを強制的に供給する。
【0045】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。アクチュエータユニット21は、流路ユニット9の上面に固定されて、ヘッド本体3を構成する。図2に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給
口105bを避けるよう主走査方向に千鳥状に配置されている。
【0046】
アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックス製であり、3枚の圧電層161〜163から構成されたピエゾ式アクチュエータである。最上層の圧電層161は、厚み方向に分極され、上面の個別電極135及び下面全体の共通電極134に挟まれている。図5に示すように、個別電極135は、大部分が圧力室110と対向し、平面視で圧力室外の一部が個別ランド136と接続している。この形態が、圧力室110毎に形成されている。このとき、個別電極135と圧力室110とで挟まれた部分が、個別のアクチュエータ(エネルギー付与手段:液体排出手段)として働く。つまり、アクチュエータユニット21には、圧力室110に対応した数のアクチュエータが作り込まれており、それぞれ圧力室110内のインクに選択的な吐出エネルギーを与える。
【0047】
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。各アクチュエータは、いわゆるユニモルフ型アクチュエータである。圧電層161の両電極134、135で挟まれた部分は、分極方向に電界が印加されると、分極方向と直交する方向(平面方向)に縮む。このとき、下の圧電層162、163との間で歪み差が生じるので、個別電極135と圧力室110で挟まれた部分が、圧力室110側に向かって突出する。これに伴い、圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、吐出口108からインク滴が吐出される。
【0048】
なお、本実施形態においては、個別電極135の電位が、予め所定の電位が付与されているところ、駆動信号が供給されて、一旦グランド電位となり、その後の所定のタイミングで再び所定電位に復帰する。いわゆる、引き打ち駆動である。グランド電位となるタイミングでは、圧力室110の容積増大に伴い、圧力室110内にインクが吸い込まれる。続く所定電位への復帰では、圧力室110の容積減少(インク圧力の上昇)により、吐出口108からインク滴が吐出される。
【0049】
次に、図6及び図7を参照し、ヘッドホルダ5に取り付けられたキャップ手段の構成について説明する。
【0050】
ヘッドホルダ5は、金属等からなる枠状フレームであり、ヘッド1の側面を全周に亘って支持している。ヘッドホルダ5は、ヘッド1の支持部材であるが、キャップ手段の構成部材でもある。ヘッドホルダ5には、キャップ60も取り付けられている。ここで、ヘッドホルダ5とヘッド1との当接部は、全周に亘って封止剤で封止されている。また、ヘッドホルダ5とキャップ60との当接部も、全周に亘って接着剤で固定されている。
【0051】
キャップ手段は、ヘッドホルダ5及びキャップ60に加えて、昇降力伝達機構及び搬送ベルト43を含む。昇降力伝達機構は、キャップ60を搬送ベルト43に対して離接させ、吐出面1aに対向する吐出空間S1を非封止状態あるいは封止状態とする。昇降力伝達機構は、昇降モータ64(図8参照)及び複数のギア63を含む。キャップ60は、矩形の環状部材であって、平面視で対応するヘッド1の外周全体を取り囲む。図7に示すように、キャップ60は、弾性体61と可動体62とから構成される。
【0052】
弾性体61は、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド1の外周を取り囲んでいる。弾性体61は、図7に示すように、基部61x、基部61xの下面から突出した突出部61a、ヘッドホルダ5に固定された固定部61c、及び、基部61xと固定部61cとを接続する接続部61dを含む。突出部61aは、断面が三角形であり、下方に向かって先細である。また、固定部61cは、断面がT字状である。固定部61cの平らな上端部分は、接着剤等によって、ヘッドホルダ5に固定されている。固定部61cはまた、ヘッドホルダ5と各ジョイント51(後述)の基端部51xとで挟持されている。接続部61dは、固定部61cの下端から湾曲しつつ外側(平面視で吐出面1aから離隔する方向)に延び、基部61xの下側側面に接続している。接続部61dは、可動体62の昇降に伴って変形する。基部61xの上面には、凹部61bが形成されており、可動体62の下端と嵌合している。
【0053】
可動体62は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなり、平面視でヘッド1の外周を取り囲んでいる。可動体62は、基部61xに支持され、ヘッドホルダ5に対して鉛直方向に相対移動可能である。可動体62は、複数のギア63を介して昇降モータ64と連結されている。制御部100による制御の下、昇降モータ64が駆動されると、ギア63が回転して可動体62が昇降する。これにより、突出部61aの先端61a1と吐出面1aとの相対位置が、鉛直方向に変化する。
【0054】
突出部61aは、先端61a1が搬送ベルト43の外周面に当接する当接位置(図6に示す位置)と、外周面から離隔した離隔位置(図7に示す位置)とを選択的に取る。当接位置では、吐出空間S1が、外部空間S2から隔離された封止状態にある。また、離隔位置では、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放された非封止状態にある。
【0055】
次に、図6を参照し、加湿空気供給機構50の構成について説明する。加湿空気供給機構(加湿空気供給手段)50は、キャップ手段のキャップ60に加え、図6に示すように、一対のジョイント51、チューブ55、57、ポンプ56及びタンク54等を含む。このうち、キャップ60は封止状態の吐出空間S1を作り、ジョイント51は当該空間S1内の空気を加湿空気と置換する。
【0056】
一対のジョイント51は、吐出空間S1に対する加湿空気の出入口である。一対のジョイント51は、図6に示すように、第1の開口の一例である供給口51aを持つ左側ジョイント51と第2の開口の一例である排出口51bを持つ右側ジョイント51とから構成され、ヘッド1を主走査方向に挟んで配置されている。加湿動作では、吐出空間S1に対し、供給口51aから加湿空気が供給され、排出口51bから空気が排出される。
【0057】
ジョイント51は、方形状の基端部51xと円柱状の先端部51yとから構成され、両者を上下に貫通する中空空間51z(図7参照)が内部に形成されている。中空空間51zは、先端部51yでは円柱状空間であり、基端部51xでは扇状空間である。扇状空間は、円柱状空間に繋がる一方で、拡開して供給口51aに繋がる。供給口51aは、副走査方向に細長く、吐出面1aの長さとほぼ等しい。なお、外形サイズは、先端部51yより基端部51xが大きい。
【0058】
ジョイント51は、図7に示すように、ヘッドホルダ5の貫通孔5aに固定されている。先端部51yが、貫通孔5aに貫挿され、両者の隙間には封止剤が充填されている。
【0059】
チューブ55,57は、一対のジョイント51とタンク54とに接続され、タンク54と吐出空間S1とを連通させている。詳しくは、チューブ55は、タンク54の空気流出口54bと接続され、チューブ57は、タンク54の空気流入口54aと接続されている。ここで、キャップ60が封止状態にあるとき、ポンプ56による加湿空気の循環が可能となる。
【0060】
タンク(貯留部)54は、下部空間に加湿液を貯留し、且つ、上部空間に加湿空気を貯蔵している。加湿液は、防腐剤などの不揮発性成分、及び、水などを含む。タンク54の上壁には、上部空間と大気とを連通する大気連通孔53が形成されている。ここで、チューブ57はタンク54の下部空間(加湿液中)と連通し、チューブ55はタンク54の上部空間と連通している。なお、タンク54内の加湿液が少なくなった場合には、ユーザにより加湿液が補給される。
【0061】
ポンプ56は、図6に示すように、チューブ57の途中部位に設けられている。ポンプ56は、駆動されると一方向に送気する。この場合の送気方向は、ポンプ56からタンク54の方向である。両者間には逆止弁(不図示)が配設されており、タンク54の水はポンプ56に流れ込まない。なお、変形例では、ポンプ56は逆方向にも駆動される。
【0062】
このような構成において、加湿動作が実行されると、制御部100の制御により、ポンプ56が駆動され、図6に示すように、タンク54内の空気が白抜き矢印に沿って循環する。タンク54の上部空間の加湿空気は、供給口51aから吐出空間S1に供給される。このとき、吐出空間S1は封止状態であるため、内部の空気が加湿空気と置換されながら排出口51bに向かって流れる。チューブ57はタンク54と水中で連通しているため、吐出空間S1から流出した空気は、タンク54で加湿される。生成された加湿空気は、ポンプ56の駆動が続く間、吐出空間S1に供給される。
【0063】
次に、図8を参照しつつ、制御部100について説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御部100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図8に示すように、制御部100は、搬送制御部141と、画像データ記憶部142と、ヘッド制御部144と、時間計測部145と、累積時間記憶部146と、メンテナンス制御部150とを有している。
【0064】
搬送制御部141は、外部装置から受信した印刷信号に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙部23、ガイド部10a,10b、及び、搬送機構40の各動作を制御する。画像データ記憶部142は、外部装置からの印刷信号に含まれる画像データを記憶する。ヘッド制御部144は、画像データに基づく用紙Pへの画像形成(印刷)、及び、吐出フラッシングデータに基づく吐出フラッシング動作が行われるようにヘッド1を制御する。ヘッド制御部144は、用紙センサ26の出力に基づいて、用紙Pの搬送と同期したタイミングでアクチュエータを制御する。
【0065】
時間計測部145は、画像データに基づく印刷が終了した時点からの経過時間を計測する。累積時間記憶部(取得手段)146は、加湿動作が実行された加湿実行時間を累積する。なお、累積時間記憶部146は、ユーザによってタンク54内の加湿液が詰め替えられた後に、リセットボタン(不図示)が押されることによって、記憶された累積時間がリセットされる。
【0066】
本実施形態における加湿動作は、加湿空気が一定の流速で吐出空間S1に供給される。タンク54内の加湿液は、加湿実行時間(供給時間)と共に、水分を消費して、相対的に不揮発成分の濃度が上昇する。本実施形態では、加湿実行時間の累積(累積時間)を、不揮発成分の濃度を示す指標として採用している。単位時間当たりの加湿空気の供給量も容易に水分の消費速度と対応付けることができるので、供給量の累積(累積供給量)を指標としても良い。累積供給量は、累積時間に流速(単位時間当たりの加湿空気の供給量に関連する流速)を乗じることで算出される。いずれの場合も、不揮発成分の濃度への関連づけは、各累積量と濃度との関係を実測しておくことで可能となる。
【0067】
メンテナンス制御部150は、吐出フラッシングデータ記憶部151と、判定部152とを有し、吐出フラッシング動作を行う際に、ヘッド制御部144を介してアクチュエータを制御する。吐出フラッシング動作は、印刷に係る準備動作であって、吐出フラッシングデータ記憶部151に記憶された吐出フラッシングデータに基づいて行われる。つまり、印刷信号を受信すると、キャッピングの解除が行われ、搬送ベルト43への吐出フラッシングへと続く。
【0068】
吐出フラッシングデータ記憶部151は、初期状態として、吐出フラッシング動作の基本データ(吐出フラッシングデータ)を記憶している。基本データには、吐出フラッシングでのアクチュエータの駆動回数に関する情報が含まれている。この駆動回数は、全アクチュエータに共通である。吐出フラッシングデータは、書き換え可能であり、必要に応じて初期状態に戻せる。
【0069】
判定部152は、累積時間記憶部146に記憶された累積時間が、所定時間(所定値)を超えたか否かを判定する。加湿動作の継続(時間の累積)により、加湿液中の不揮発性成分濃度が高まり、加湿空気中の水分量は減っていく。ついには、吐出口108近傍のインクに対して、画質劣化原因である水分の供給不足を招く虞がある。そこで、メンテナンス制御部150は、累積時間が所定時間を超えると、所定時間以下のときよりもインク排出量を増加させる。つまり、ここでいう所定時間は、予め決められたキャッピング時間後の画像形成において、インク排出量を増やさなくても、画質低下を識別不可能な範囲に止められる最大累積時間である。この時間内であれば、1回の加湿動作内で、画質維持に必要最低限以上の水分量を吐出口108近傍に供給できる。この時間を超すと、水分の供給不足が心配される。しかし、累積時間が所定時間を超えると、インク排出量を増加させるため、印刷時の画像品質を維持することが可能となる。具体的には、吐出フラッシングにおけるインク滴の吐出回数を増加させる。このとき、メンテナンス制御部150によって、吐出フラッシングデータ記憶部151にある吐出フラッシングデータが書き換えられる。例えば、累積時間が所定時間以下の場合(初期状態の吐出フラッシングデータ)に比べて、1000回の吐出回数の増加が指示される。変形例として、1回の吐出による液適量を増加させてもよい。この場合は、同じ吐出回数でもインク排出量は増加する。
【0070】
メンテナンス制御部150は、キャッピング及び加湿動作による増粘防止動作を行う際に、可動体62(突出部61aの先端61a1)を昇降させる昇降モータ64、及び、加湿空気供給機構50のポンプ56の駆動を制御する。また、メンテナンス制御部150は、第1係数記憶部153と、加湿時間算出部154と、第2係数記憶部155と、加湿実行時間算出部156とを有しており、これら各部の協働により、加湿動作における加湿実行時間が算出される。
【0071】
このうち、第1係数記憶部153及び加湿時間算出部154は、累積時間に対応して、基本加湿時間tr(例えば、120秒)の補正値(補正加湿時間th)の算出に関与している。第2係数記憶部155及び加湿実行時間算出部156は、環境条件(例えば、加湿動作時の湿度)及び補正加湿時間thに対応して、加湿の実行時間である加湿時間(加湿実行時間)の算出に関与している。
【0072】
加湿動作の継続(累積時間の増加)により、タンク54内の水分が減る。代わりに不揮発成分の濃度が高くなり、加湿空気の生成効率を落とす。このとき、加湿空気中の含有水分量も減る。1回の加湿動作において、吐出口108近傍のインクに所定量の水分補給をする観点から、加湿時間算出部154は、基本加湿時間trを補正して補正加湿時間thを算出する。
【0073】
第1係数記憶部153は、累積時間が長いほど大きくなる係数αを記憶している。本実施形態では、累積時間記憶部146で記憶される累積時間に応じて、0時間以上200時間未満でα=1.0、200時間以上500時間未満でα=1.2及び500時間以上で
α=1.5と、3つの係数値が設定されている。例えば、累積時間が500時間以上の時点では、補正加湿時間th=α・trは180秒(=1.5×120秒)と算出される。
【0074】
加湿動作において、吐出口108近傍のインクへの水分補給量は、インクの増粘度合いによって異なる。例えば、低湿度環境下では、増粘が進むので、補給量が多くなる。そのため、加湿空気の生成に際して、消費されるタンク54内の水分量も多くなる。逆に、高湿度環境下では、補給量は少なくて済み、加湿動作時間が同じでも、消費水分量は少なくてよい。そこで、加湿動作で過不足無く水分を供給するという観点から、加湿実行時間算出部156は、補正加湿時間thを加湿動作時の湿度に基づいて補正し、実際の加湿時間である加湿実行時間tを算出する。
【0075】
第2係数記憶部155は、加湿動作時の湿度が高いほど小さくなる係数βを記憶している。本実施形態では、動作湿度範囲が3分割され、0%以上30%未満でβ=1.2、30%以上70%未満でβ=1.0及び70%以上でβ=0.8と3つの係数値が設定されている。例えば、湿度70%以上の高湿度環境下では、加湿実行時間tは、加湿時間算出部154の算出した補正加湿時間thに対して、0.8(係数β)を掛けて算出する。加湿実行時間tは、累積されて、累積時間記憶部146で累積時間として記憶される。なお、加湿動作時の湿度は、湿度センサ29により検出される。
【0076】
また、メンテナンス制御部150は、吐出フラッシングが行われた後に、搬送ベルト43のクリーニング動作を行う。このとき、メンテナンス制御部150は、洗浄液塗布部材37a及びブレード37bを当接位置に移動させるように、移動機構37cを制御するとともに、搬送制御部141を介して搬送ベルト43を時計回りに走行させるように、搬送機構40を制御する。このとき、ベルトの走行速度は、印刷時の搬送速度より小さい。これにより、搬送ベルト43の外周面に洗浄液が均一に塗布され、外周面上のインクなどの異物が、洗浄液と共にブレード37bに確実に掻き取られる。
【0077】
次に、図9を参照し、メンテナンス動作に係るプリンタ101の一連の動作フローについて説明する。なお、この図9の動作フローの開始時における状態は、印刷終了後の待機状態である。印刷終了時点より、時間計測部145が計時を始める。
【0078】
まず、制御部100が、時間計測部145による計時結果に基づいて、先の印刷が終了した時から所定の待機時間が経過したか否かを判定する(F1)。所定待機時間が経過していないと判定した場合には、ステップF1の処理に戻る。なお、所定待機時間が経過する前に外部装置から印刷信号を受信した際には、搬送制御部141及びヘッド制御部144によって当該印刷信号に基づく印刷が行われる。
【0079】
一方、所定待機時間が経過したと判定した場合には、メンテナンス制御部150が、昇降モータ64を制御して吐出面1aをキャッピング(吐出空間S1を封止状態に)する(F2)。次に、ステップF3において、加湿時間算出部154が、加湿時間thを算出する。このとき、例えば、累積時間記憶部146に記憶された累積時間が100時間の場合は、第1係数記憶部153に記憶された係数αから1が選択される。そして、加湿時間thとして、120秒(基本加湿時間tr)×1(係数α)=120秒が算出される。なお、累積時間が増加するに連れて、係数αも1→1.2→1.5と増加し、加湿時間thが長くなる。
【0080】
次に、ステップF4において、加湿実行時間算出部156が、加湿実行時間tを算出する。このとき、湿度センサ29によりヘッド1周辺の湿度が検出される。例えば、このときの湿度が40%の場合は、第2係数記憶部155に記憶された係数βから1が選択される。そして、加湿実行時間tとして、120秒(加湿時間th)×1(係数β)=120
秒が算出される。なお、検出された湿度が、所定湿度範囲(30%以上70%未満)よりも低い場合は、係数βが1→1.2に増加し加湿実行時間tが長くなる。つまり、加湿空気の供給量が増加する。一方、検出された湿度が、所定湿度範囲(30%以上70%未満)よりも高い場合は、係数βが1→0.8に低下し加湿実行時間tが短くなる。つまり、加湿空気の供給量が低下する。
【0081】
次に、ステップF5において、メンテナンス制御部150が、加湿実行時間算出部156で算出された加湿実行時間tだけ、ポンプ56を駆動する。これにより、吐出空間S1が加湿空気で満たされ、吐出口108近傍のインクの乾燥が抑制される。この後、ステップF6において、今回実行された加湿実行時間tが累積時間記憶部146に累積される。このように加湿実行時間tが累積されることで、現状のタンク54内の不揮発成分の濃度を示す指標が取得される。
【0082】
次に、ステップF7において、制御部100が、印刷信号を受信したか否かを判定する。印刷信号を受信した場合、ステップF8に進み、印刷信号を受信していない場合は、ステップF16に進む。ステップF8においては、判定部152が、累積時間記憶部146に記憶された累積時間が所定時間を超えたか否かを判定する。所定時間以下の場合は、ステップF9に進む。一方、所定時間を超えた場合は、ステップF10に進み、メンテナンス制御部150が、音を発する(エラー報知)ようにブザー27を制御する。これにより、ユーザにタンク54への加湿液の詰め替えタイミングを知らせる(報知する)ことが可能となる。ユーザは、加湿液を詰め替えた後、リセットボタンを押す。これにより、累積時間記憶部146に記憶された累積時間がリセットされる。
【0083】
次に、ステップF11において、メンテナンス制御部150が吐出フラッシングデータ記憶部151にある吐出フラッシングデータを書き換える。これにより、累積時間が所定時間以下の場合に比べて、吐出フラッシングによるインク排出量が増加する。
【0084】
次に、ステップF9においては、メンテナンス制御部150が、昇降モータ64を制御してキャッピングを解除し、吐出空間S1を非封止状態にする。次に、ステップF12において、メンテナンス制御部150が、吐出フラッシングデータ記憶部151に記憶された吐出フラッシングデータに基づいた吐出フラッシング動作を行う。つまり、累積時間が所定時間以下の場合は初期状態の吐出フラッシングデータに基づき、累積時間が所定時間を超えた場合は書き換えられた吐出フラッシングデータに基づいて、メンテナンス制御部150が、ヘッド1のアクチュエータを制御し、設定された吐出回数だけ各吐出口108から搬送ベルト43上にインク滴を吐出させる(吐出フラッシング)。この後、ステップF13において、メンテナンス制御部150が、吐出フラッシングデータ記憶部151に記憶された吐出フラッシングデータを初期化する(初期状態に戻される)。
【0085】
次に、ステップF14において、メンテナンス制御部150が、移動機構37cを制御して洗浄液塗布部材37a及びブレード37bを当接位置に移動させるとともに、搬送制御部141を介して搬送機構40を制御し、搬送ベルト43を時計回りに走行させる。これにより、搬送ベルト43の外周面に洗浄液が塗布され、外周面上のインクが、洗浄液と共にブレード37bに掻き取られる(クリーニング動作)。
【0086】
次に、ステップF15において、搬送制御部141及びヘッド制御部144によって、ステップF7において受信した印刷信号に基づく印刷が行われる。この後、ステップF1に戻る。
【0087】
ステップF16においては、制御部100が、電源オフ信号を受信したか否かを判定する。ユーザによってプリンタ101の電源ボタン(不図示)が押されていない場合は、ステップF7に戻る。一方、電源ボタンが押されると、電源ボタンから電源オフ信号が出力される。こうして、プリンタ101の電源がオフになり、印刷及びメンテナンスの動作フローが終了する。なお、再度、ユーザによって電源ボタンが押されるとプリンタ101に電源が入る。
【0088】
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ101によると、加湿液の不揮発性成分の濃度が高くなっても、加湿実行時間が長くなって加湿空気の供給量が増加する。このため、封止状態の吐出空間S1内湿度を所定湿度に保つことが可能となる。このため、吐出口108近傍のインクの乾燥が抑制される。
【0089】
また、濃度を示す指標として、加湿実行時間を累積した累積時間を採用し、この累積時間(加湿空気の供給量)が増加するに連れて、加湿実行時間t(加湿時間th)が長くなる。これにより、簡単な制御で吐出口108近傍のインクの乾燥を抑制することが可能となる。
【0090】
また、加湿実行時間は、検出された湿度が、所定湿度範囲(30%以上70%未満)よりも低い場合は長くなり(加湿空気の供給量が増加し)、所定湿度範囲よりも高い場合は短くなる(加湿空気の供給量が低下する)。これにより、ヘッド周辺の湿度環境に応じて、加湿空気の供給量の増減が可能となる。このため、湿度が低い場合は供給量を多くして、吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。湿度が高い場合は供給量を低くして、加湿液の不揮発性成分の濃度が上昇するのを抑制することが可能となる。
【0091】
上述の実施形態における加湿動作においては、一定の流速で加湿空気を供給しているため、加湿液の不揮発成分の濃度上昇(加湿空気の累積供給量の増大)に応じて、加湿実行時間を増やし加湿空気の供給量を増やしている。しかしながら、加湿動作において、加湿時間(加湿実行時間)を一定にし、加湿液の不揮発成分の濃度上昇に応じて加湿空気の流速を速くすることで、加湿空気の供給量を増やしてもよい。
【0092】
この変形例においては、図10に示すように、制御部200が、累積時間記憶部146に代えて累積供給量記憶部246、メンテナンス制御部150に代えてメンテナンス制御部250、加湿時間算出部154に代えて供給量算出部254、加湿実行時間算出部156に代えて実行供給量算出部256、第1係数記憶部153に代えて第1係数記憶部253、及び、判定部152に代えて判定部252を有するとともに、流速算出部257を有する。なお、上述の実施形態と同様なものに関しては同符号を示し、説明を省略する。
【0093】
累積供給量記憶部(取得手段)246は、加湿動作において実行される実行供給量qを累積する。なお、累積供給量記憶部246においても、ユーザによって加湿液が詰め替えられた後に、リセットボタンが押されることによって、記憶された累積供給量がリセットされる。
【0094】
第1係数記憶部253は、累積供給量範囲が増加するに連れて、増加する係数αを記憶している。第1係数記憶部253は、例えば、順にその範囲が増加する3つの第1〜第3累積供給量範囲において、1、1.2、1.5と増加する係数αを記憶している。なお、累積供給量範囲は複数であれば、3つより少なくても多くてもよい。
【0095】
供給量算出部254は、加湿時間tr(例えば、2分:120秒)と、基本流速vと、係数αとを乗じることで供給量qhを算出する。このときの係数αは、累積供給量記憶部246に記憶された累積供給量に基づいて、第1係数記憶部253に記憶された複数の係数αの中から選択される。
【0096】
実行供給量算出部256は、供給量算出部254で算出された供給量qhに係数βを乗じることで実行供給量qを算出する。このときの係数βは、加湿実行時間算出部156と同様に、湿度センサ29が検出した湿度に基づいて、第2係数記憶部155に記憶された複数の係数βの中から選択される。
【0097】
流速算出部257は、実行供給量算出部256で算出された実行供給量qを加湿時間trで除して、実行流速v1を算出する。メンテナンス制御部250は、加湿動作を行うときに、加湿空気を実行流速v1で供給するようにポンプ56を制御するとともに、ポンプ56を加湿時間trの間だけ駆動する。
【0098】
判定部252は、累積供給量記憶部246に記憶された累積供給量が、所定量(所定値)を超えたか否かを判定する。メンテナンス制御部250は、累積供給量が所定量を超えると、所定量以下のときよりもインク排出量(吐出フラッシングにおけるインク滴の吐出回数)を増加させる。ここでいう所定量は、累積された実行供給量の上限値である。実行供給量の累積がこの上限値を超えるときには、タンク54内の水分が非常に減少し、不揮発成分の濃度が上昇している。このため、上述の実施形態と同様に、累積供給量が所定量を超えると、インク排出量を増加させる。
【0099】
続いて、本変形例によるメンテナンス動作に係るプリンタの一連の動作フローについて説明する。なお、動作フローにおいても上述の実施形態と同様な部分に関しては、説明を省略する。
【0100】
本変形例においても、ステップF1からステップF2に進み、ステップF3においては、供給量算出部254が、供給量qhを算出する。このとき、累積供給量が増加するに連れて、係数αも増加するため、供給量qhも増大する。
【0101】
次に、ステップF4において、実行供給量算出部256が、実行供給量qを算出する。このとき、湿度センサ29によりヘッド1周辺の湿度が検出される。なお、検出された湿度が、所定湿度範囲(30%以上70%未満)よりも低い場合は、係数βが1→1.2に増加し実行供給量が増加する。一方、検出された湿度が、所定湿度範囲よりも高い場合は、係数βが1→0.8に低下し実行供給量が低下する。また、このとき、流速算出部257が、実行流速v1を算出する。
【0102】
次に、ステップF5において、メンテナンス制御部250が、加湿時間trだけ、ポンプ56を駆動する。このときのポンプ56による加湿空気の流速を実行流速v1とする。これにより、所望量(実行供給量)の加湿空気が吐出空間S1に供給され、吐出口108近傍のインクの乾燥が抑制される。この後、ステップF6において、今回実行された実行供給量qが累積供給量記憶部246に累積される。このように実行供給量qが累積されることで、現状のタンク54内の不揮発成分の濃度を示す指標が取得される。
【0103】
次に、ステップF7からステップF8に進むと、判定部252が、累積供給量記憶部246に記憶された累積供給量が所定量(所定値)を超えたか否かを判定する。所定量以下の場合は、ステップF9に進む。一方、所定量を超えた場合は、ステップF10に進む。これにより、ユーザにタンク54への加湿液の詰め替えタイミングを知らせることが可能となる。ユーザは、加湿液を詰め替えた後、リセットボタンを押す。これにより、累積供給量記憶部246に記憶された累積供給量がリセットされる。そして、ステップF11に進み、吐出フラッシングデータが書き換えられる。
【0104】
次に、ステップF9、ステップF12〜ステップF15に進んだ後、ステップF1に戻る。また、ステップF16においては、上述の実施形態と同様である。こうして、プリン
タ101の電源がオフになり、印刷及びメンテナンスの動作フローが終了する。
【0105】
以上に述べたように、本変形例によるプリンタにおいても、上述の実施形態と同様な部分については、同じ効果を得ることができる。濃度を示す指標として、実行供給量を累積した累積供給量を採用し、この累積供給量が増加するに連れて、実行流速v1が速くなる。これにより、簡単な制御で吐出口108近傍のインクの乾燥を抑制することが可能となる。
【0106】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、湿度センサ29が設けられていなくてもよい。この場合、上述の実施形態においては、第2係数記憶部155及び加湿実行時間算出部156も設けられていなくてもよく、加湿動作において、加湿時間算出部154で算出された加湿時間thだけ、ポンプ56が駆動される。上述の変形例においても、第2係数記憶部155及び実行供給量算出部256が設けられていなくてもよく、流速算出部257が供給量算出部254で算出された供給量に基づいて実行流速v1を算出し、当該実行流速v1で加湿空気を供給すればよい。また、ブザー27が設けられていなくてもよい。
【0107】
第1係数記憶部153は、本実施形態では3つの係数αを記憶しているが、2以上の係数を有していて良い。もちろん、係数αと湿度との関係を関数形式で記憶していても良い。同様のことは、係数βについても言え、第2係数記憶部155は、2以上の係数を有しておれば良く、係数βと累積時間との関係を関数形式で記憶していても良い。
【0108】
また、吐出空間S1を封止状態と非封止状態とに取り得るキャップ手段として、吐出面1aと対向する底部及びこの底部の周縁に立設された環状部を有するキャップと、環状部の先端が吐出面1aと当接する位置及び吐出面1aから離隔した位置にキャップを移動させる移動機構とを含んで構成されていてもよい。この場合、キャップの底部に加湿空気を供給する供給口と排出口とが設けられておればよい。
【0109】
上述の実施形態では、加湿液が水分の供給不足を生じるほどに少なくなった場合、タンク54内の加湿液を詰め替えるとしたが、補充するとしても良い。不揮発成分は、加湿動作で消費されず、蓄積される。補充回数が増えると、見かけの残量の割には、早期に水分の供給不足を来す。これに対しては、例えば、補充回数を計数するカウンタを設けて、得られるカウント値に基づいて所定時間自体の補正をするようにしても良い。例えば、係数γを設定し、補充回数が増加するとより短い所定時間に補正する。このとき、複数の係数γを用意しても良いし、係数γと累積時間との関係を関数形式で用意(記憶)していても良い。また、カウント値が規定回数以上となった場合や、上記関数により求まる値が示す加湿液の濃度が規定値を超えた場合には、加湿液を詰め替える構成としてもよい。また、加湿液の詰め替えの方法の1つとして、タンククリーニングを実行してもよい。以下に、タンククリーニングを行う場合の構成について図11図12を用いて説明する。ただし、上述の実施形態と重複する部材については同じ参照符号を付し、説明を省略する。
【0110】
図11に示すように、搬送機構40は、プラテン309と、搬送方向に関するプラテン309の両側に配置された搬送ニップローラ345、346等を有する。搬送ニップローラ345、346は、用紙Pを上下方向に挟持するように対向配置された一対のローラ部材をそれぞれ有しており、挟持した用紙Pが搬送方向に搬送されるように用紙Pに搬送力を付与する。搬送方向上流側に配置された搬送ニップローラ345によって搬送力を付与された用紙Pは、プラテン309の上面に支持されつつ搬送方向に搬送される。プラテン309の上面を通過した用紙Pは、搬送ニップローラ346によって搬送力を付与され、プラテン309からさらに搬送方向下流側へと搬送される。
【0111】
ヘッド1の下方には、反転機構307が配置されている。反転機構307には、プラテン309とガラステーブル308とが互いに対向するように固定されている。反転機構307は、プラテン309及びガラステーブル308のいずれかをヘッド1(吐出面1a)と対面させるように動作する。例えば、印刷時においては、反転機構307はプラテン309を吐出面1aと対面させている。この状態から加湿動作又はタンククリーニングが行われるとき、反転機構307は、プラテン309及びガラステーブル308が吐出面1aと干渉しないように、一旦下方に移動し、ガラステーブル308が吐出面1aと対向するように回転した後、上方に移動する。
【0112】
図12に示すようにガラステーブル308には、排出機構の一例である回収機構380が設置されている。回収機構380は、廃液タンク381と、チューブ382、383と、回収ポンプ384とを有している。チューブ382、383は、廃液タンク381と吐出空間S1とが連通するように、廃液タンク381及びガラステーブル308にそれぞれ接続されている。回収ポンプ384は、チューブ382に設けられている。タンククリーニングにおいて開口51bから排出された加湿液が吐出空間S1内に貯溜された後に、回収ポンプ384が駆動されることで吐出空間S1内に貯溜された廃液がチューブ382を経由して廃液タンク381に貯溜される。このとき、廃液タンク381内の空気がチューブ383を経由して吐出空間S1内に供給される。これにより、吐出空間S1内に貯溜された廃液をスムーズに回収することができる。
【0113】
タンククリーニングが実行されると、封止状態に移行された後にポンプ56が一旦正回転で駆動される。これにより、タンク54内に強制的に供給された空気によって加湿液が攪拌され、底面に堆積した不揮発性成分の堆積物が浮遊する。その後、ポンプ56が逆回転で駆動されることで、不揮発性成分が加湿液と共に開口51bから吐出空間S1内に排出される。本実施形態においては、タンク54内の加湿液を全て排出させるが、加湿液の一部がタンク54内に残存するように一定量の加湿液を排出させてもよい。加湿液の排出が完了した直後、補給機構359がタンク54内にフレッシュな加湿液を補給する。
【0114】
また、加湿空気の水分量加湿効率をヒータにより変化増加させる構成としてもよい。以下、詳細を説明する。図13に示すように、プリンタ101はタンク54に貯溜された加湿液の温度を調節するためのヒータ491とタンク54に貯溜された加湿液の温度を検出するための液温センサ492をさらに有しており、メンテナンス制御部150において加湿効率決定部464を設けている。加湿効率決定部464は、タンク54に設けられた液温センサ492によりタンク54に貯溜されている加湿液の温度を検出し、ヒータ491への電気入力を変更することによりタンク54に貯溜されている水の温度を調節することができる。ここでヒータ491はシーズヒータなどの一般的なヒータである。タンク54に貯溜されている加湿液の温度が高いほど加湿液の水分が蒸発しやすくなるので、タンク54に貯溜されている加湿液に含まれる不揮発性成分の濃度が高くなったとしても、加湿液の温度を上げて加湿効率を高くすることにより、加湿機能の低下を抑制することが可能である。そこで、加湿効率決定部464は、累積時間記憶部146に記憶された累積時間が増加するに連れて、タンク54に貯溜されている加湿液の温度を高くする。以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ101によると、不揮発性成分の濃度が高くなるに連れて加湿効率を高くしているため、不揮発性成分の濃度が高くなることによりタンク54に貯溜されている加湿液の水分の蒸発効率が変わることを抑制できるので、加湿機能が低下することを抑制することができる。
【0115】
また、加湿効率を他の方法により制御してもよい。例えば、超音波式加湿器を用い、加湿器の出力を制御することにより加湿効率を制御してもよい。つまり、加湿空気を生成する構成については、加湿効率が調整できるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0116】
上記実施形態において、加湿動作は吐出空間が外部空間から封止された状態で行われていた。しかし、吐出空間が外部空間から封止されていない非封止状態で加湿動作が行われる構成としてもよい。すなわち、図7に示すように、突出部61aが、搬送ベルト43から離隔した離隔位置を取る状態において、加湿動作が行われる構成としてもよい。その場合、加湿動作を印刷が行われているときに実行する構成としてもよい。
【0117】
上記実施形態においては、累積時間記憶部146(図8)に記憶された累積時間、又は、累積供給量記憶部246(図10参照)に記憶された累積供給量に基づいて制御を行うものであるが、タンク54に貯溜されている不揮発性成分の量を記憶しておき、不揮発性成分の量に基づいて制御を行うものであってもよい。タンク54に貯溜されている加湿液の量が同じであれば不揮発性成分の量が多い場合ほど蒸発機能が低下することになるので、不揮発性成分の量が多いほど上述の実施形態のようにポンプ56の駆動時間を長くする、流速を速くする、あるいは、ヒータ491により加湿液の温度を高くし、単位時間当たりに吐出空間S1に供給される加湿空気の水分量を増加させることにより加湿機能の低下を抑制することができる。
【0118】
また、上記実施形態においては、累積時間記憶部146(図8)に記憶された累積時間、又は累積供給量記憶部246に記憶された累積供給量を、タンク54内の加湿液中の不揮発成分の濃度を示す指標として採用している。しかし、加湿液に含まれる不揮発性成分の量を、加湿液の量で割ることによりタンク54に貯溜された加湿液における現在の不揮発性成分の濃度を算出する構成としてもよい。具体的には、図14に示すように加湿液残量センサ554が、タンク54中の加湿液の量を取得する。そして、不揮発性成分量記憶部564が、タンク54に供給された加湿液に含まれる不揮発性成分の量を記憶する。そして、濃度算出部565が、タンク54中の加湿液の濃度を算出する。
【0119】
また、タンク54の内に貯留された加湿液の濃度を直接的に計測して用いてもよい。直接的な計測手段としては、光学的あるいは重量式濃度計などによる濃度計測が挙げられる。また、チューブ57からタンク54の加湿液が排出される構成であるが、図15のように、タンク54に設けられた排出通路656よりタンク54の加湿液が排出される構成であってもよい。この場合、排出通路656に設けられた排出弁657がメンテナンス制御部に制御され、排出弁657を開弁することによりタンク54の加湿液が廃液タンク381に排出される。
【0120】
上述した実施形態においては、累積時間記憶部146に記憶された累積時間が所定時間を超えた場合に、ユーザにタンク54への加湿液の詰め替えタイミングを知らせる(報知する)構成であるが、自動的にタンク54の加湿液が排出される構成としてもよい。
【0121】
加えて、上述した実施形態においては、チューブ57はタンク54と水中で連通していたが、水中で連通していなくてもよい。タンク54内に空気の循環がなされることによりタンク54内に貯留された加湿液の水分が蒸発することにより空気の加湿が行われるからである。
【0122】
また、上述した実施形態においては、加湿動作において、加湿空気が循環する循環経路が形成される構成であるが、吐出空間に排出された加湿空気が循環しない構成であってもよい。
【0123】
なお、図12においてチューブ383が吐出空間S1に開口している構成であるが、チューブ383を設けない構成であってもよい。この場合は、適宜、排出された加湿液の回収がなされるよう、排出された加湿液の回収時に吐出空間S1を大気と連通させる。
【0124】
らに、突出部61a(図6図7参照)は、上述の実施形態のように移動可能であることに限定されない。例えば、突出部が移動不能にヘッドホルダに固定され、突出部の先端の吐出面に対する相対位置が一定であってもよい。この場合、ヘッドホルダ又は媒体支持部の支持面を昇降させることにより、突出部の先端の支持面に対する相対位置を変化させ、突出部が当接位置と離隔位置とを選択的に取ることができる。
【0125】
さらに、図16に示すように、キャップ740がヘッド1から独立して形成されていてもよい。この場合、キャップ740は、搬送機構を下方に移動させた後に、吐出面1aと対向する位置に配置されてもよい。そして、キャップ740は、ヘッド1及びキャップ740の少なくともいずれかを昇降させることによって、キャップ740の端部741aが吐出面1aに当接する当接位置と、端部741aが吐出面1aから離隔する離隔位置とを選択的に取りうる。キャップ740が当接位置にあるとき、吐出空間がキャップ740によって封止され(封止状態)、キャップ740が離隔位置にあるとき、吐出空間が開放される(非封止状態)。図16の構成において、加湿空気供給機構50がキャップ740に設けられていてもよい。この場合、ポンプ56を逆回転で駆動してキャップ740内にタンク54に貯留された加湿液を排出すると、チューブ55にこの排出された加湿液が流れ込みやすくなるので、開口51aを閉塞することが有効になる。この場合、ポンプ56を逆回転で駆動する際、タンク54の上部に設けられた大気連通弁(図示せず)を開放してタンク54から排出する分の空気を外部から導入するなどして、ポンプ56の駆動が阻害されないようにする。
【0126】
また、上述したタンククリーニングでは、不揮発性成分が加湿液と共に排出される直前に、ポンプ56を正回転で駆動させることでタンク54内に空気を強制的に供給して加湿液を攪拌する構成であるが、加湿液を撹拌しない構成であってもよい。また、タンククリーニングが実行されると、タンク54から排出された廃液(不揮発性成分の濃度が高い加湿液)が回収機構380(図12参照)により回収され、回収機構380は回収した廃液を廃液タンク381内に貯溜する構成であるが、廃液タンク381内に液体を吸収するフォームなどを配置しておき廃液を吸収する構成であってもよい。廃液をフォームなどに吸収して保管することで、プリンタ1が倒れた場合などにおいても、廃液タンク381から廃液が漏れることを抑制できる。
【0127】
また、上述した実施形態においては、タンク54に貯溜された加湿液における不揮発性成分の濃度に基づいて、加湿空気の供給量又は加湿効率をメンテナンス制御部が制御する構成であるが、加湿空気の供給量及び加湿効率の両方をメンテナンス制御部が制御する構成であってもよい。
【0128】
また、循環流路の流入口及び排出口は、ヘッド、ヘッドホルダ又はキャップに形成され且つ吐出空間に開口する限り、形状や位置は特に限定されない。例えば、一方の開口がヘッド、他方の開口がヘッドホルダに形成されてもよい。キャップの突出部に開口が形成されてもよい。開口は、平面視で、副走査方向に関して吐出面1a(又は、ヘッドに開口を形成する場合は吐出口群。以下同じ。)を挟む位置に配置されてよい。或いは、開口は、平面視で吐出面1aを挟まない位置(即ち、吐出面1aに対して一方向に関して同じ側)に配置されてよい。
【0129】
なお、上述した実施形態においては、不揮発性成分として防腐剤中の成分があげられているが、不揮発性成分としてタンク54に堆積することで、加湿機能を低下させるものであれば種類は問わない。
【0130】
なお、上述の実施形態においては、加湿動作においてタンク54から吐出空間S1に加湿空気が一定の流速で供給されており、また、上述の変形例においては、加湿動作においてタンク54から吐出空間S1に加湿空気が一定の加湿時間trだけ供給されていたが、この構成に限られることは無い。例えば、タンク54内の不揮発性成分の濃度を示す指標として累積供給量を採用し、この累積供給量が増加するに連れて、加湿空気を供給する流速及び加湿時間trを増加させることにより、供給量を増加させても良い。
【0131】
また、上述の実施形態及び変形例においては、F4において検出された湿度が所定湿度範囲内であるか、所定湿度範囲外であるかに応じて供給量を変化させていたが、この構成に限られることが無い。例えば、湿度センサ29によって検出された湿度が低い場合は、検出された湿度が高い場合に比べて、供給量が多くなるように供給量が決定されることとしても良い。
【0132】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。
図1
図2
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