特許第6236882号(P6236882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236882
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】レーザ治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20171120BHJP
   A61F 9/008 20060101ALI20171120BHJP
   A61N 5/067 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61F9/007 200C
   A61F9/008 120A
   A61N5/067
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-116815(P2013-116815)
(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-233469(P2014-233469A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】冨田 誠喜
(72)【発明者】
【氏名】河合 真人
(72)【発明者】
【氏名】恩田 紀雄
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−514564(JP,A)
【文献】 特許第3615487(JP,B2)
【文献】 特表2002−524144(JP,A)
【文献】 特開昭59−088160(JP,A)
【文献】 特表2014−534011(JP,A)
【文献】 特開2002−282298(JP,A)
【文献】 特開2008−018251(JP,A)
【文献】 特開2007−268285(JP,A)
【文献】 特開2003−265514(JP,A)
【文献】 特許第4723780(JP,B2)
【文献】 特許第5028073(JP,B2)
【文献】 特許第4851468(JP,B2)
【文献】 特許第4713466(JP,B2)
【文献】 特許第5852237(JP,B2)
【文献】 特開2011−062566(JP,A)
【文献】 特表2011−502585(JP,A)
【文献】 特表2006−514352(JP,A)
【文献】 特開2011−212349(JP,A)
【文献】 特開2011−161739(JP,A)
【文献】 特許第5462933(JP,B2)
【文献】 特許第5656627(JP,B2)
【文献】 特表2013−523409(JP,A)
【文献】 特表2001−522279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61F 9/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の照射実行指示を入力する毎に、患者眼の組織にレーザ光を照射するレーザ治療装置であって、
前記患者眼の前記組織を術者に観察させる観察光学系と、表示手段による画像の表示を制御する表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、
レーザ光を照射する予定の領域であり、且つ、1回の前記照射実行指示に基づいてレーザ光が照射される領域よりも広い領域である照射予定領域と,該照射予定領域に照射するレーザ光の予定スポット数とを示したグラフィック画像を作成して前記表示手段に表示させる予定領域表示制御手段と、
前記組織にレーザ光が照射された場合に、レーザ光が照射された領域である照射済み領域を前記照射実行指示に基づいて、前記グラフィック画像上グラフィックとして表示させる照射済み領域表示制御手段と、
を備え、
前記予定領域表示制御手段が作成する前記照射予定領域の範囲は、前記観察光学系によって術者が観察できる範囲よりも広い範囲とされている、
ことを特徴とするレーザ治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者眼の組織(例えば、眼底、線維柱帯等)にレーザ光を照射することで組織を治療するレーザ治療装置関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光による患者眼の治療をより的確に行うための技術が開示されている。例えば、特許文献1が開示する眼科用レーザ治療装置は、治療レーザ光またはエイミング光(照準光)の照射像を撮影する。撮影した画像に基づいて、治療レーザ光が照射された照射済み部位を検出する。検出した照射済み部位を示すマークを、眼底画像に合成して表示する。術者は、表示されたマークを見ることで、照射済み部位を把握する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−339758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、術者は画像を見ることで、レーザ光が照射された照射済み部位を把握することはできる。しかし、術者は、レーザ光を照射する予定の領域を自ら記憶した状態で治療を進めなければならなかった。よって、治療の進捗状況を容易に把握しつつ治療を進めることは、従来の技術では困難であった。
【0005】
本発明は、レーザ光による患者眼の治療の進捗状況をより容易に術者に把握させることができるレーザ治療装置提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ治療装置は、レーザ光の照射実行指示を入力する毎に、患者眼の組織にレーザ光を照射するレーザ治療装置であって、前記患者眼の前記組織を術者に観察させる観察光学系と、表示手段による画像の表示を制御する表示制御手段を備え、前記表示制御手段は、レーザ光を照射する予定の領域であり、且つ、1回の前記照射実行指示に基づいてレーザ光が照射される領域よりも広い領域である照射予定領域と,該照射予定領域に照射するレーザ光の予定スポット数とを示したグラフィック画像を作成して前記表示手段に表示させる予定領域表示制御手段と、前記組織にレーザ光が照射された場合に、レーザ光が照射された領域である照射済み領域を前記照射実行指示に基づいて、前記グラフィック画像上グラフィックとして表示させる照射済み領域表示制御手段とを備え、前記予定領域表示制御手段が作成する前記照射予定領域の範囲は、前記観察光学系によって術者が観察できる範囲よりも広い範囲とされている
【0008】
本発明のレーザ治療装置、レーザ光による患者眼の治療の進捗状況をより容易に術者に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】レーザ治療装置1の概略構成を示す図である。
図2】患者眼Eとコンタクトレンズ26の模式的断面図である。
図3】コンタクトレンズ26を介して観察される観察部位の一例を模式的に示す図である。
図4】第一実施形態のレーザ治療装置1が実行する第一治療処理のフローチャートである。
図5】第一実施形態における進捗表示領域70の表示態様の一例を示す図である。
図6】21番目のスポットに対する治療レーザ光の照射が完了する前後の進捗表示領域70の表示態様の一例を示す図である。
図7】第二実施形態における治療レーザ光の照射タイミングと組織の撮影タイミングとの関係の一例を示すタイミングチャートである。
図8】第二実施形態のレーザ治療装置1が実行する第二治療処理のフローチャートである。
図9】第二実施形態におけるパノラマ画像185の一例を示す図である。
図10】第二実施形態における照射予定スポット171および照射済みスポット173の表示態様の一例を示す図である。
図11】変形例における眼底画像200の表示態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の典型的な実施形態の1つである第一実施形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、第一実施形態のレーザ治療装置1の概略構成について説明する。一例として、レーザ治療装置1は、照射光学系10、照明光学系30、観察光学系40、撮影光学系50、および制御部60を備える。
【0011】
<照射光学系>
第一実施形態の照射光学系10は、レーザ光源11、エイミング光源12、エネルギー調整部13、ビームスプリッタ17、光検出器18、安全シャッタ19、コリメータレンズ21、ダイクロイックミラー22、エキスパンダレンズ23、ダイクロイックミラー24、および対物レンズ25を備える。
【0012】
レーザ光源11は、患者眼Eの組織を治療するための治療レーザ光を出射する。一例として、本実施形態のレーザ光源11では、ネオジウムをドープしたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)結晶(Nd:YAG)がレーザロッドとして使用される。また、図示しない波長変換素子は、レーザ光源11によって出射された赤外レーザ光(波長:1064nm)を、可視レーザ光(波長:532nm)に変換することができる。
【0013】
エイミング光源12は、治療レーザ光が照射される位置(つまり、治療スポットの位置)を示すエイミング光を出射する。本実施形態では、波長が635nm(赤色)の可視レーザ光を出射する光源が、エイミング光源12として用いられる。しかし、エイミング光の波長等を適宜変更できるのは言うまでも無い。
【0014】
エネルギー調整部13は、患者眼Eの組織に照射される治療レーザ光のエネルギー量を調整する。本実施形態のエネルギー調整部13は、1/2波長板14および偏光板16を備える。1/2波長板14は、治療レーザ光の光軸を中心として、モータ15によって回転する。偏光板16は、ブリュースタ角で配置されている。1/2波長板14と偏光板16の組合せによって、治療レーザ光のエネルギー量が調整される。
【0015】
ビームスプリッタ17は、治療レーザ光の一部を光検出器18へ向けて反射させる。光検出器18は、ビームスプリッタ17によって反射された治療レーザ光を受光することで、治療レーザ光のエネルギー量を検出する。安全シャッタ19は、シャッタ駆動部(例えばソレノイド)20によって、治療レーザ光の光軸上と光軸外との間を移動する。安全シャッタ19は、治療レーザ光の光軸上に配置されることで、患者眼Eへの治療レーザ光の照射を遮断する。
【0016】
コリメータレンズ21は、エイミング光源12によって出射されたエイミング光を平行光束とする。ダイクロイックミラー22は、治療レーザ光とエイミング光を合波する。本実施形態のダイクロイックミラー22は、治療レーザ光を反射し、且つエイミング光を透過させることで、治療レーザ光とエイミング光を合波する。なお、レーザ治療装置1は、治療レーザ光とエイミング光を合波せずに、別々の光路から患者眼Eに照射してもよい。
【0017】
エキスパンダレンズ23は、ダイクロイックミラー22によって合波されたレーザ光(治療レーザ光およびエイミング光)の光束を拡大する。エキスパンダレンズ23によって拡大されたレーザ光は、ダイクロイックミラー24によって反射され、対物レンズ25を透過する。本実施形態では、対物レンズ25を透過したレーザ光は、患者眼Eに装着されたコンタクトレンズ26を介して患者眼Eの組織に照射される。ダイクロイックミラー24は、患者眼Eによって反射された治療レーザ光の反射光が術者の眼に入射し難くなるように、反射光の波長の光をほぼ反射させる。なお、照射光学系10には、組織に照射されるレーザ光のスポットサイズを調整するための構成等が設けられていてもよい。
【0018】
<照明光学系>
照明光学系30は、治療対象の組織を含む観察部位を照明する。第一実施形態の照明光学系30は、ランプ31、レンズ32、絞り33、レンズ群34、およびプリズム35を備える。例えば、ランプ31には白色発光素子等を用いることができる。なお、照明光学系30は、観察部位にスリット光を照明するためのスリット板等を備えていてもよい。
【0019】
<観察光学系>
観察光学系40は、術者が患者眼Eの観察部位を観察するために用いられる。本実施形態の観察光学系40は、顕微鏡41に組み込まれており、変倍光学系42、術者保護フィルタ43、結像レンズ44、正立プリズム群45、視野絞り46、および接眼レンズ47を備える。ダイクロイックミラー24および対物レンズ25は、照射光学系10と観察光学系40によって共用され、且つ、顕微鏡41内の左右の観察光路(術者の左目用の光路と右目用の光路)によって共用される。その他の構成(変倍光学系42等)は、左右の観察光路の各々に設けられている。変倍光学系42は、観察倍率を変更するために用いられる。例えば、屈折力の異なる複数のレンズが組み合わされた回転ドラム等を変倍光学系42に用いることができる。術者保護フィルタ43は、治療レーザ光の波長を減衰する特性を有する。術者保護フィルタ43は、患者眼E等で反射した治療レーザ光が術者の眼に到達することを抑制する。
【0020】
<撮影光学系>
撮影光学系50は、患者眼Eの観察部位を撮影するために用いられる。本実施形態の撮影光学系50は、観察光学系40と共に顕微鏡41に組み込まれており、ハーフミラー51、結像レンズ52、および撮影素子53を備える。ダイクロイックミラー24および対物レンズ25は、照射光学系10および観察光学系40に加えて撮影光学系50でも共用される。ハーフミラー51は、顕微鏡41に設けられた左右の観察光路のいずれかに配置されている。ハーフミラー51によって反射された光は、結像レンズ52を介して撮影素子53に入射する。なお、第一実施形態では撮影光学系50を省略してもよい。
【0021】
<制御部>
制御部60は、レーザ治療装置1の動作を制御する。本実施形態の制御部60は、CPU(プロセッサ)61、ROM62、RAM63、および不揮発性メモリ65等を備える。CPU61は、レーザ治療装置1における各部の制御を司る。ROM62には、各種プログラム、初期値等が記憶されている。RAM63は、各種情報を一時的に記憶する。不揮発性メモリ65は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、制御部60に着脱可能に装着されるUSBメモリ、制御部60に内蔵されたフラッシュROM等を、不揮発性メモリ65として使用することができる。
【0022】
本実施形態では、制御部60には、レーザ光源11、エイミング光源12、モータ15、光検出器18、シャッタ駆動部20、ランプ31、撮影素子53、表示画面66、およびトリガスイッチ67等が接続されている。表示画面66は各種画像を表示する。本実施形態の表示画面66はタッチパネル機能を有し、表示手段と入力手段を兼ねる。術者等は、表示画面66の表面を操作することで、各種指示を入力することができる。トリガスイッチ67は、治療レーザ光の照射実行指示を入力するために術者によって操作される。
【0023】
<SLTの治療態様>
第一実施形態のレーザ治療装置1を用いて選択的レーザ線維柱帯形成術(Selective Laser Trabeculoplasty:SLT)を行う場合の治療態様の一例について説明する。SLTとは、患者眼Eの房水の排出量を増加させるために、患者眼Eの隅角の線維柱帯に治療レーザ光を照射する治療方法である。SLTでは、環状の線維柱帯の全周または一部に渡って治療レーザ光が複数回照射される。
【0024】
図2に示すように、本実施形態におけるSLTでは、患者眼Eの角膜Cにコンタクトレンズ26が装着される。コンタクトレンズ26には、一例として、患者眼Eの隅角Aを観察するための隅角鏡(ゴニオスコープ)、ゴールドマンの三面鏡を用いることができる。コンタクトレンズ26には反射ミラー27が設けられている。隅角Aは、反射ミラー27を介して観察される。従って、図3に示すように、本実施形態では隅角Aの全体(全周)が同時に観察されるわけではなく、隅角Aの一部が扇形状に観察される。図3に例示するような観察状態で、治療レーザ光が隅角Aの線維柱帯TMに照射されることで、本実施形態のSLTが実行される。術者は、コンタクトレンズ26の位置を調整しながら、エイミング光の照射位置を、治療するスポットSに合わせる。術者は、位置合わせが完了した状態でトリガスイッチ67を操作することで、スポットSに治療レーザ光を照射させる。なお、SLTでは、組織の熱変性を生じ難くするために、アルゴンレーザ線維柱帯形成術(ALT)よりも低い出力(エネルギーおよび照射時間)で治療レーザ光が照射される。従って、術者は、術前および術後における治療部位の状態変化を視認し難い。
【0025】
<第一治療処理>
図4から図6を参照して、第一実施形態のレーザ治療装置1が実行する第一治療処理について説明する。第一治療処理は、SLTを実行する指示がタッチパネル等を介して入力された場合に、制御部60のCPU61によって実行される。CPU61は、ROM62または不揮発性メモリ65に記憶された制御プログラムに従って、図4に示す第一治療処理を実行する。
【0026】
まず、照射予定領域および照射予定スポット数の指定が受け付けられる(S1)。照射予定領域とは、患者眼Eの治療対象組織のうち、術者が治療レーザ光を照射させる予定の領域である。照射予定領域は、1回の照射実行指示を契機としてレーザ光が照射される領域(つまり、エイミング光が照射される領域)よりも広い領域である。従って、術者は、複数回の照射実行指示によって治療を行う広範囲の領域を、照射予定領域によって容易に確認することができる。照射予定スポット数とは、一連の治療において治療レーザ光を照射する予定のスポットの数である。術者は、操作部(例えば、表示画面66のタッチパネル等)を操作することで、照射予定領域および照射予定スポット数をレーザ治療装置1に入力すればよい。
【0027】
一例として、第一実施形態では、術者は「全周」モードおよび「半周」モードのいずれかを指定することで、照射予定領域および照射予定スポット数をまとめて指定する。詳細には、第一実施形態では、隅角Aの全周に渡る複数のスポットに治療レーザ光を照射する「全周」モードと、隅角Aの半周に渡る複数のスポットに治療レーザ光を照射する「半周」モードとが予め用意されている。「全周」モードにおける照射予定スポット数のデフォルト値は120に定められている。「半周」モードにおける照射予定スポット数のデフォルト値は60に定められている。術者によって「全周」モードの指定が受け付けられると、CPU61は、隅角Aの全周に渡る領域を照射予定領域に設定し、且つ、「120」を照射予定スポット数に設定する。また、術者によって「半周」モードの指定が受け付けられると、CPU61は、隅角Aの半周に渡る領域を照射予定領域に設定し、且つ、「60」を照射予定スポット数に設定する。本実施形態では、術者は、「半周」モードを指定した場合、タッチパネルの操作、またはマウスによるドラッグ操作等を行い、隅角Aの「上半分・下半分・右半分・左半分」等を指定することで、隅角Aにおける照射予定領域の詳細な位置を指定する。CPU61は、入力された結果に基づいて照射予定領域を設定する。
【0028】
なお、照射予定領域および照射予定スポット数の指定を受け付ける方法を変更できることは言うまでもない。例えば、レーザ治療装置1は、「全周」モードおよび「半周」モード以外のモードを予め用意していてもよい。CPU61は、術者からの角度(360度以下の範囲内)の指定を受け付けて、指定された角度に応じた領域を照射予定領域に設定してもよい。CPU61は、照射予定スポット数を術者に直接入力させて、入力された照射予定スポット数を、選択されたモードに関わらず設定してもよい。CPU61は、モード毎に予め定められている照射予定スポット数を、術者による操作指示に応じて変更してもよい。CPU61は、隣接する2つのスポットの間隔を術者に入力させると共に、照射予定領域のパラメータ(例えば、第一実施形態では周方向の長さ)と、入力されたスポットの間隔とに応じて照射予定スポット数を算出してもよい。
【0029】
次いで、照射順序の指定が受け付けられる(S2)。一例として、第一実施形態では、照射開始位置、照射終了位置、および治療を進める際の方向(時計回りまたは反時計回り)の少なくともいずれかを術者に指定させることで、照射順序が決定される。例えば、図5に示す例では、環状の隅角Aを示す領域のうちの右半分が照射予定領域として設定されており、照射予定領域内に60個の照射予定スポットが設定されている。図5に示す例で、上端の照射予定スポットが照射開始位置に設定され、且つ下端の照射予定スポットが照射終了位置に設定された場合を仮定する。この場合、上端の照射予定スポットから時計回りに順に1番目から60番目までの照射順序が設定される。また、治療を進める際の方向が時計回りに設定された場合にも、同様の照射順序が設定される。
【0030】
なお、照射順序の指定を受け付ける方法も適宜変更できる。例えば、隅角Aの全周が照射予定領域として指定されている場合、CPU61は、照射開始位置と治療を進める方向とを術者に指定させることで、照射順序を設定してもよい。CPU61は、タッチパネル等を術者に直接操作させることで、照射順序を術者に入力させてもよい。
【0031】
次いで、指定された照射予定領域が表示画面66に表示される(S3)。照射完了スポット数(照射開始前の時点では「0」)と、指定された照射予定スポット数とが、表示画面66に表示される(S4)。一例として、第一実施形態では、図5に示すように、表示画面66の表示領域内に、進捗表示領域70が形成される。進捗表示領域70内において複数の照射予定スポット71が表示されることで、照射予定領域が表示される。つまり、第一実施形態では、複数の照射予定スポット71によって形成される領域が照射予定領域となる。また、「照射完了スポット数/照射予定スポット数」(図5に示す例では0/60)が、照射数表示領域75内に表示される。さらに、照射開始位置を示す「START」の矢印と、照射終了位置を示す「END」の矢印が表示される(「全周」モードの場合には「START」のみを表示してもよい)。第一実施形態では、観察光学系40によって術者が観察できる範囲(例えば、図3に示す範囲)よりも広い範囲(例えば、隅角Aの全周、半周等)で照射予定領域が表示される。
【0032】
なお、照射予定領域、照射完了スポット数、および照射予定スポット数の表示方法も適宜変更できる。例えば、CPU61は、指定された照射予定領域の周囲を取り囲む枠部を表示させることで、照射予定領域を表示させてもよい。照射予定領域の内部の色と、照射予定領域の外部の色とを異なる色にすることで、照射予定領域を示してもよい。後述する照射済み領域の表示方法についても、照射予定領域と同様に変更できる。また、照射完了スポット数および照射予定スポット数を数字以外で表示してもよい。例えば、治療の進捗率を示すプログレスバー等の図形によって、照射完了スポット数および照射予定スポット数を表示させることも可能である。プログレスバーを用いる場合、例えば、図形の全範囲を照射予定スポット数に対応させ、図形の全範囲のうち、照射完了スポット数に対応する割合の範囲の表示態様を変化させればよい。
【0033】
次いで、照射予定領域等の設定を確定させる指示が入力されたか否かが判断される(S6)。設定をやり直す指示が入力された場合には(S6:NO)、処理はS1へ戻る。設定を確定させる指示が入力されると(S6:YES)、エイミング光源11によるエイミング光の照射が開始されて、治療レーザ光の照射処理(S9〜S16)が行われる。
【0034】
まず、照射完了スポットカウンタNの値が「0」に初期化される(S7)。照射完了スポットカウンタNは、照射完了スポット数(第一実施形態では、治療レーザ光の照射回数)を計数するためのカウンタである。
【0035】
次いで、治療レーザ光の照射実行指示が入力されたか否かが判断される(S9)。前述したように、第一実施形態では、術者は治療対象のスポットにエイミング光を合わせた状態で、トリガスイッチ67(図1参照)を操作することで、照射実行指示を入力する。照射実行指示が入力されていなければ(S9:NO)、S9の判断が繰り返される。照射実行指示が入力されると(S9:YES)、レーザ光源11が制御されて、設定されているエネルギーおよび照射時間で治療レーザ光が照射される(S10)。照射完了スポットカウンタNの値に「1」が加算される(S11)。
【0036】
次いで、表示画面66に表示された照射予定領域のうち、N番目の照射順序に対応する位置の照射予定領域の表示(本実施形態では、N番目の照射順序の照射予定スポット)が消去される(S12)。表示画面66のうち、N番目の照射順序に対応する位置に、照射済み領域が表示される(S13)。表示画面66に表示されている照射完了スポット数が「1」加算されて(S14)、処理はS16の判断へ移行する。
【0037】
S12〜S14の処理を、図6に示す例に基づいて説明する。図6は、照射順序が21番目のスポットに対する治療レーザ光の照射が完了する前後の進捗表示領域70の表示態様を示す。図6に示す例では、環状の隅角Aの半周に渡る複数のスポットに治療レーザ光を照射する「半周」モードが設定されている。照射予定スポット数は「60」に設定されている。上端の照射予定スポットを起点(照射開始位置)とした時計回りの順番が照射順序として設定されている。第一実施形態では、一例として、照射予定スポット71が桃色の円形で表示され、且つ、照射済みスポット73が緑色の円形で表示されている。従って、20番目のスポットに対する治療レーザ光の照射が完了した時点では、上端の位置から、時計回りに20番目の位置までの領域に、20個の照射済みスポット73が表示されている(図6の上の図を参照)。
【0038】
図6の上の図に示す状態で、21番目のスポットへ治療レーザ光が照射されると(S9:YES,S10)、図6に示す21番目の位置73Aに表示されていた照射予定スポット71が消去される(S12)。さらに、21番目の位置73Aに、照射済みスポット73が追加表示される(S13)。つまり、表示画面66に表示されている照射予定領域のうち、実行された治療レーザ光の照射の順序に対応する照射予定領域(図6に示す例では21番目の照射予定スポット71)の表示態様が、照射済み領域の表示態様(図6に示す例では照射済みスポット73)に切り換えられる。また、照射数表示領域75に表示される照射完了スポット数が「20」から「21」に切り換えられる(S14)。
【0039】
図4の説明に戻る。1回の照射実行指示に対応する治療レーザ光の照射処理(S9〜S16)が完了すると、複数のスポットに対する一連の治療が終了したか否かが判断される(S16)。一連の治療が終了していなければ(S16:NO)、処理はS9の判断へ戻る。一連の治療が終了すると(S16:YES)、第一治療処理は終了する。なお、CPU61は、一連の治療が終了したか否かを種々の方法で判断することができる。例えば、CPU61は、治療を終了させるための術者からの指示をタッチパネル等によって入力してもよい。また、CPU61は、予め設定された照射予定スポット数と、照射完了スポット数とが一致した場合に、予定していた回数の治療レーザ光の照射が実行されたことを警告音等によって術者に通知する。従って、術者は、予定していた回数の治療レーザ光の照射が実行されたか否かを的確に把握した上で、治療を終了させるか継続させるかを判断することができる。
【0040】
以上説明したように、第一実施形態のレーザ治療装置1は、照射予定領域を表示画面66に表示させる。また、第一実施形態のレーザ治療装置1は、治療レーザ光が実際に照射された場合に、治療レーザ光が照射された領域(照射済み領域)を表示画面66に表示させる。従って、術者は、照射予定領域と照射済み領域とを確認することで、治療の進捗状況をより正確且つ容易に判断することができる。照射予定領域は、1回の照射実行指示を契機としてレーザ光が照射される領域よりも広い。従って、術者は、複数回の照射実行指示を行うことで治療を行う広範囲の領域を、照射予定領域によって容易に把握することができる。また、第一実施形態のレーザ治療装置1は、1回の照射実行指示を契機としてレーザ光が照射される領域よりも広い照射済み領域を表示画面66に表示させることができる。よって、術者は、より容易に治療の進捗状況を把握できる。
【0041】
第一実施形態のレーザ治療装置1は、術者によって指定された照射予定領域を表示画面66に表示させる。従って、術者は、自らが治療を行う予定の領域を、表示画面66によって的確に把握することができる。また、第一実施形態のレーザ治療装置1は、観察光学系40によって術者が観察できる範囲よりも広い範囲で照射予定領域を表示させる。従って、術者は、観察光学系40によって広い範囲を観察できない場合でも、照射予定領域を的確に把握することができる。
【0042】
第一実施形態のレーザ治療装置1は、治療レーザ光が照射された場合に、術者によって指定された照射順序に従って、照射済み領域を順次表示させる。この場合、術者は、予定していた照射順序に従って表示される照射済み領域を確認することで、治療の進捗状況をより正確に把握することができる。また、第一実施形態のレーザ治療装置1は、治療レーザ光が実際に照射された位置を検出しなくても照射済み領域を表示させることができるので、装置の処理負担の増加等も生じ難い。
【0043】
第一実施形態のレーザ治療装置1は、表示画面66に表示されている照射予定領域のうち、実行された治療レーザ光の照射の順序に対応する照射予定領域の表示態様を、照射済み領域の表示態様に変化させる。この場合、術者は、照射予定領域と照射済み領域を、表示態様の違いによって容易に見分けることができる。よって、術者は、より容易且つ正確に治療の進捗状況を把握することができる。照射予定領域と照射済み領域とが重なって見にくくなる可能性も低い。
【0044】
第一実施形態のレーザ治療装置1は、照射予定スポット数と照射完了スポット数とを表示画面66に表示させる。この場合、術者は、照射予定領域および照射済み領域に加えて照射予定スポット数と照射完了スポット数を確認することで、治療の進捗状況をより正確に把握することができる。
【0045】
第一実施形態のレーザ治療装置1は、レーザ光が照射される単位領域であるスポットを表示画面66に複数表示させることで、照射予定領域および照射済み領域の少なくとも一方(第一実施形態では両方)を表示させる。従って、術者は、照射予定領域および照射済み領域をより正確に把握することができる。
【0046】
<第二治療処理>
図7から図10を参照して、第二実施形態について説明する。第二実施形態におけるレーザ治療装置1の構成の少なくとも一部には、前述した第一実施形態におけるレーザ治療装置1と同様の構成を採用することも可能である。第二実施形態の説明では、説明を簡略化するために、第一実施形態で例示した構成を採用できる構成については、第一実施形態と同じ符号を付し、説明を省略または簡略化する。第二実施形態のレーザ治療装置1は、患者眼Eの組織の撮影画像に基づいて照射済み領域を検出し、検出した照射済み領域を撮影画像上に表示させる。撮影画像には、例えば、撮影光学系50(図1参照)によって撮影された画像を用いることができる。
【0047】
まず、図7を参照して、第二実施形態における治療レーザ光の照射タイミングと組織の撮影タイミングとの関係の一例について説明する。第二実施形態では、CPU61は、治療レーザ光の照射実行指示の入力を受け付けると、照射実行指示が入力された時刻T0で撮影光学系50を制御し、第一画像を撮影する。第一画像では、エイミング光が照射された状態で組織が撮影される。CPU61は、第一画像の撮影が完了した以後の時刻T1に、エイミング光源12を制御してエイミング光を消灯させる。CPU61は、エイミング光の消灯が完了した以後の時刻T2に、第二画像を撮影する。第二画像では、エイミング光は組織に照射されておらず、且つ、エイミング光が照射されていた位置への治療レーザ光の照射も未だ行われていない。CPU61は、第二画像の撮影が完了した以後の時刻T3に、レーザ光源11を制御して治療レーザ光を組織に照射する。CPU61は、治療レーザ光の照射が完了した以後の時刻T4に、第三画像を撮影する。第三画像では、エイミング光は組織に照射されていないが、エイミング光が照射されていた位置への治療レーザ光の照射は終了している。CPU61は、第三画像の撮影が完了した以後の時刻T5に、エイミング光を再び点灯させる。撮影された第一〜第三画像は、記憶装置(例えば不揮発性メモリ65)に記憶される。
【0048】
図8を参照して、第二実施形態のレーザ治療装置1が実行する第二治療処理の一例について説明する。第二治療処理は、SLTを実行する指示がレーザ治療装置1に入力された場合に、CPU61によって実行される。CPU61は、ROM62または不揮発性メモリ65に記憶された制御プログラムに従って、図8に示す第二治療処理を実行する。なお、図8に示す第二治療処理の説明では、前述した第一治療処理(図4参照)と同様の処理を採用できるステップについては、第一治療処理で付したステップ番号と同じ番号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0049】
まず、照射予定領域および照射予定スポット数の指定が受け付けられる(S1)。一例として、第二実施形態では、術者は「全周」モードおよび「半周」モードのいずれかを指定することで、照射予定領域および照射予定スポット数をまとめて指定する。「全周」モードが指定された場合の照射予定スポット数と、「半周」モードが指定された場合の照射予定スポット数とは、モード毎に予め定められていてもよいし、術者によって指定または変更されてもよい。また、術者は、「半周」モードを指定した場合、環状の隅角Aの領域うち、照射予定領域とする半周の領域を、例えばタッチパネルの操作等によって制御部60に入力する。この場合、CPU61は、例えば、照射開始位置と、治療を進める際の方向(時計回りまたは反時計回り)とを術者に入力させてもよい。また、CPU61は、ドラッグ操作等によって半周の照射予定領域を術者に指定させてもよい。なお、照射予定領域および照射予定スポット数の指定を受け付ける方法は、第一実施形態においても説明したように、適宜変更できる。また、照射開始位置の指定を受け付ける方法も変更できる。例えば、術者は、観察位置(第二実施形態では撮影位置と同一)を照射開始位置へ移動させて、撮影画像上で照射開始位置を指定してもよい。また、CPU61は、以下説明するパノラマ画像表示処理によって、隅角Aの少なくとも一部(望ましくは、隅角Aのうち照射予定領域を少なくとも含む範囲)のパノラマ画像185(図9参照)を予め生成し、生成したパノラマ画像185上で照射予定領域および照射開始位置を術者に設定させてもよい。
【0050】
ここで、図9を参照して、第二実施形態においてCPU61が実行するパノラマ画像表示処理について説明する。第二実施形態では、CPU61は、ROM62または不揮発性メモリ65に記憶されたプログラムに基づいて、図9に例示するパノラマ画像185を表示するためのパノラマ画像表示処理を実行することができる。パノラマ画像表示処理は、例えば、パノラマ画像185を表示させるための操作指示が操作部(例えばタッチパネル)に入力されることを契機として実行されてもよいし、第二治療処理(図8参照)と並行して実行されてもよい。第二治療処理の前に予めパノラマ画像処理が実行されてもよい。
【0051】
第二実施形態におけるパノラマ画像表示処理では、CPU61は、組織上の異なる位置を撮影した複数の撮影画像181の各々に対して画像処理を実行する。画像処理によって検出された特徴点等が重なり合うように、複数の撮影画像181(図9の例では、撮影画像181A〜181C)を表示画面66の表示領域に配置することで、パノラマ画像185を表示させる。術者は、治療前に表示されるパノラマ画像185上で、照射予定領域および照射開始位置を指定することもできる。また、治療中および治療後に表示されるパノラマ画像185上では、第二治療処理(図8参照)のS122の処理(詳細は後述する)によって照射済みスポット173が表示される。従って、術者は、パノラマ画像185を見ることで、単独の撮影画像180を見る場合よりも容易に治療状況を確認することができる。なお、図9の例では、3つの撮影画像181A〜181Cがパノラマ化されている。しかし、パノラマ画像185を構成する撮影画像の数は2つ以上であればよい。従って、例えば隅角Aの全周に渡るパノラマ画像を生成してもよい。
【0052】
図8の説明に戻る。次いで、S1で指定された照射予定領域が、表示画面66に表示される(S103)。照射予定領域を表示させる方法の一例について、図10を参照して説明する。まず、第二実施形態で撮影される撮影画像180Aは、環状の線維柱帯TMの一部が撮影された画像である。例示的な第二実施形態では、理想的な複数の照射予定スポット171間の距離が予め定められているか、または術者によって予め指定されている。CPU61は、撮影された画像に対して周知の画像処理を行うことで、線維柱帯TMの両縁部を検出する。検出した両縁部の位置に基づいて、帯状の線維柱帯TMの中心線を検出する。検出した中心線上に照射予定スポット171の中心が位置するように、予め決定または指定されているスポット間距離で複数の照射予定スポット171を撮影画像180A上に配置する。その結果、図10の上に示す図では、1つの撮影画像180A上に3つの照射予定スポット171A,171B,171Cが表示されている。CPU61は、撮影画像の撮影倍率に応じて、撮影画像上の照射予定スポット171間の距離および照射予定スポット171の大きさの少なくともいずれかを調整してもよい。術者が撮影画像の範囲を移動させた場合、CPU61は、画像の移動方向および移動量を撮影画像等から検出し、移動後の撮影画像上にも同様の方法で照射予定スポット171を表示させる。以上説明した方法で照射予定スポット171を撮影画像上に表示させることで、CPU61は、術者の作業負担の増大を抑制しつつ、撮影画像上の適切な位置に照射予定スポット171を表示させることができる。なお、図10には示していないが、前述したパノラマ画像185上に照射予定スポット171を表示させてもよいことは言うまでもない。
【0053】
なお、表示画面66上に照射予定領域を表示させる方法も、適宜変更できる。例えば、CPU61は、術者にタッチパネル等を操作させることで、撮影画像上に照射予定領域を直接指定させてもよい。また、上記で例示した方法では、CPU61は、複数の照射予定スポット171を表示することで照射予定領域を表示する。しかし、CPU61は、照射予定領域を取り囲む枠の表示、照射予定領域の内側と外側における表示態様(例えば色)の変化等の少なくともいずれかを用いて照射予定領域を表示させてもよい。
【0054】
図8の説明に戻る。照射予定領域が表示されると(S103)、照射完了スポット数と照射予定スポット数が表示画面に表示される(S4)。照射予定領域等の設定を確定させる指示が入力されたか否かが判断される(S6)。設定をやり直す指示が入力された場合には(S6:NO)、処理はS1へ戻る。設定を確定させる指示が入力されると(S6:YES)、照射完了スポットカウンタNの値が「0」に初期化される(S7)。
【0055】
次いで、治療レーザ光の照射実行指示が入力されたか否かが判断される(S9)。入力されていなければ(S9:NO)、S9の判断が繰り返される。照射実行指示が入力されると(S9:YES)、治療レーザ光の照射制御、撮影制御、およびエイミング光の制御が行われる(S120)。S120における各制御の手順には、図7で例示した手順等、種々の手順を採用できる。次いで、照射完了スポットカウンタNの値に「1」が加算される(S11)。
【0056】
次いで、治療レーザ光が照射された照射済み領域が、撮影画像に基づいて検出される(S121)。例えば、CPU61は、治療レーザ光が照射される直前のタイミング(例えば、図7に示す例ではT0のタイミング)で撮影された第一画像に対して画像処理を行い、エイミング光が照射されていた領域(例えば座標情報)を照射済み領域として検出してもよい。また、図7に示す例では、CPU61は、エイミング光を含む第一画像と、エイミング光を含まない第二画像とを比較することで、エイミング光が照射されていた領域を照射済み領域として検出してもよい。SLTでは、治療レーザ光による治療痕が生じ難い。しかし、CPU61は、エイミング光を含む第一画像を用いることで、治療痕の有無に関わらず、照射済み領域を検出することができる。なお、治療レーザ光の照射領域と、撮影画像の画像領域との関係が一定である場合(例えば、治療レーザ光の光軸が常に撮影画像の画像領域の所定位置に一致する場合等)には、2つの領域の関係に基づいて照射済み領域が検出されてもよい。また、画像処理によって治療痕を検出できる場合には、治療痕の位置を検出することで照射済み領域を検出してもよい。
【0057】
次いで、検出された照射済み領域が、撮影画像上に表示される(S122)。一例として、第二実施形態では、その時点で撮影されている撮影画像に対して画像処理が行われることで、撮影画像における座標が検出される。撮影画像の座標に基づいて、S121で検出された照射済み領域が撮影画像上に表示される。図9の下に例示する撮影画像180Bでは、実線の円によって照射済みスポット173Aが表示されることで、照射済み領域が表示される。
【0058】
次いで、表示された照射済み領域と撮影画像上で重複している照射予定領域があるか否かが判断される。重複している照射予定領域が、撮影画像上から消去される(S123)。第二実施形態では、照射済み領域と少なくとも一部が重複している照射予定領域のうちの全体が、撮影画像上から消去される。しかし、照射予定領域を消去する方法も変更できる。例えば、CPU61は、照射予定領域のうち、照射済み領域と重複している部分のみを消去してもよい。照射予定領域と重複している部分と、その周囲の部分とを消去してもよい。照射済み領域と重複する照射予定領域を予め消去した後に、照射済み領域を表示させてもよい。
【0059】
次いで、表示画面66に表示されている照射完了スポット数が「1」加算される(S14)。複数のスポットに対する一連の治療が終了したか否かが判断される(S16)。終了していなければ(S16:NO)、処理はS9の判断へ戻る。一連の治療が終了すると(S16:YES)、第二治療処理は終了する。
【0060】
なお、第二実施形態では、術者は、撮影画像上に照射済み領域を表示させるか否かの指示を、操作部(例えばタッチパネル)によってレーザ治療装置1に入力することができる。CPU61は、入力された操作指示に応じて、撮影画像における照射済み領域の表示および非表示を切り換える。術者は、組織における治療済みの部位を撮影画像によって確認したい場合には、照射済み領域が重畳表示されていない組織の撮影画像を表示させることができる。よって、術者は、より的確に治療の進捗状況を把握することができる。ただし、照射済み領域の表示および非表示を切り換えない実施形態とすることも可能である。
【0061】
以上説明したように、第二実施形態のレーザ治療装置1は、撮影画像に基づいて、撮影画像における照射済み領域を検出する。検出した照射済み領域を撮影画像上に表示させる。この場合、術者は、治療レーザ光が実際に照射された領域を撮影画像上でより正確に把握することができる。よって、術者は治療の進捗状況をより正確に把握することができる。
【0062】
第二実施形態のレーザ治療装置1は、照射予定領域を撮影画像上に表示させると共に、照射済み領域と重複する照射予定領域を撮影画像上から消去する。この場合、先に表示されていた照射予定領域に照射済み領域が重なって表示されることが防止される。従って、術者は、照射予定領域と照射済み領域とを容易に見分けることができる。
【0063】
本発明は上記実施形態に限定されることは無く、様々な変形が可能であることは勿論である。図11を参照して、上記実施形態の変形例の1つについて説明する。図11に示す変形例のレーザ治療装置1は、患者眼Eの眼底に治療レーザ光を照射することで、眼底を治療することができる。一例として、図11に示す変形例のレーザ治療装置1は、1つの箇所にレーザ光を断続的に複数回照射する治療(断続的照射治療)を行うことができる。詳細には、本変形例では、1つのスポットを1発の治療レーザ光によって治療する場合に比べて低い出力で、且つ、マイクロ秒オーダーのパルス幅(例えば、25マイクロ秒〜10000マイクロ秒)で、各スポットに複数回断続的に治療レーザ光のパルスが照射される。この治療方法(所謂マイクロパルス閾値下凝固)では、組織に治療痕が残りにくい。しかし、照射済み領域を表示画面66に表示することで、術者は治療の進捗状況を容易に把握できる。
【0064】
図11に示すように、本変形例では、患者眼Eの眼底画像200が撮影される。CPU61は、操作部を介して照射予定領域の指定を受け付けると、指定された照射予定領域203を眼底画像200上に表示させる。また、治療レーザ光が組織に照射されると、CPU61は、眼底画像200におけるエイミング光の位置に基づいて、照射済み領域を検出する。検出した照射済み領域205(図11の例では9個のスポットで表示)を眼底画像200上に表示させる。
【0065】
なお、本変形例のレーザ治療装置1は、レーザ光を走査させる走査部(例えば、ガルバノミラー)を備える。レーザ治療装置1は、術者によって設定された照射パターンに従って走査部を走査することで、1回の照射実行指示(例えば、フットスイッチの操作)に対し、眼底組織上の複数のスポットに治療レーザ光を照射することができる。この場合、CPU61は、エイミング光がパターン照射された複数のスポットの位置を眼底画像200から検出することで、照射済み領域を検出する。また、CPU61は、1つの照射パターンに対応する領域よりも広い照射予定領域203を表示画面66に表示させる。
【0066】
以上説明したように、上記実施形態で例示した技術は、線維柱帯以外の患者眼Eの組織(例えば眼底等)に治療レーザ光を照射する場合にも適用できる。また、上記実施形態で例示した技術は、治療レーザ光の走査・偏向等を行うレーザ治療装置にも適用できる。
【0067】
上記実施形態で例示した技術にその他の変更を加えることも可能である。例えば、上記実施形態では、レーザ治療装置1の制御部60が照射予定領域と照射済み領域の表示を制御し、且つ、レーザ治療装置1の表示画面66に照射予定領域と照射済み領域が表示される。しかし、レーザ治療装置1以外の補助装置(例えば、レーザ治療装置1による治療を補助するためにレーザ治療装置1に電気的に接続されたPC等)の制御部が、照射予定領域と照射済み領域の表示を制御してもよい。この場合、補助装置の制御部は、図4および図8で例示した処理と同様の処理を、レーザ治療補助プログラムに従って実行することが可能である。図4および図8で例示した処理の各ステップを、複数の制御部が分担して実行してもよい。また、レーザ治療装置1は、照射予定領域と照射済み領域を外部の表示手段に表示させてもよい。照射予定領域と照射済み領域を複数の表示手段に表示させてもよい。
【0068】
照射予定領域の指定を受け付ける方法も変更できる。例えば、レーザ治療装置1は、スポットの位置を術者に入力させることで照射予定領域を指定させてもよい。レーザ治療装置1は、照射予定スポット数を術者に入力させて、入力されたスポット数に応じて照射予定スポットを設定してもよい。この場合、設定する複数の照射予定スポットの間隔は固定値でもよいし、術者に設定させてもよい。また、レーザ治療装置1は、照射予定領域の指定を受け付けずに、予め定められた照射予定領域(例えば、「全周」モードの照射予定領域)を自動的に表示させてもよい。照射予定領域および照射済み領域を表示させる表示画面には、液晶ディスプレイ、LEDドットマトリクス等、様々な表示画面を用いることができる。
【0069】
上記第二実施形態では、撮影画像に基づいて照射済み領域が検出される。しかし、照射済み領域を検出する方法も変更できる。例えば、レーザ治療装置1は、コンタクトレンズ26の回転角度をセンサ等によって検出し、検出した回転角度から照射済み領域を検出してもよい。上記実施形態において、照射予定スポット数の入力処理および表示処理を省略することも可能である。
【0070】
上記実施形態では、レーザ治療装置1は、治療レーザ光を1回照射する毎に照射済み領域を表示画面66に追加表示させる。しかし、レーザ治療装置1は、複数回のレーザの照射が行われた以後に、複数回の照射に対応する照射済み領域を一括して表示することも可能である。つまり、「レーザ光が照射された場合に」の文言は、「レーザ光が1回照射される毎に」の意味を示す文言ではない。また、照射予定領域および照射済み領域の表示態様も変更できる。例えば、形状等が異なる2種類のマークの一方を照射予定領域、他方を照射済み領域としてもよい。点滅するマークと常時点灯するマークとを用いて照射予定領域と照射済み領域とを表示させてもよい。
【0071】
上記第二実施形態では、照射済み領域と重なる照射予定領域が消去されることで、2つの表示が重複して見難くなることが防止される。しかし、照射予定領域を消去せずに照射済み領域を重ねて表示させることも可能である。
【0072】
レーザ治療装置1は、上記第二実施形態で例示したパノラマ画像表示処理において、照射予定領域の表示を省略することも可能である。第二実施形態のレーザ治療装置1は、以下のように表現することもできる。患者眼の組織に治療レーザ光を照射するレーザ治療装置であって、治療レーザ光を出射する治療レーザ光源と、治療レーザ光の照準位置を術者に認識させるエイミング光を出射するエイミング光源と、前記組織を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された画像であり、且つ前記組織における撮影範囲が互いに異なる複数の撮影画像を繋ぎ合わせて1つのパノラマ画像を生成する画像生成手段と、前記組織において治療レーザ光が照射された領域である照射済み領域を検出する検出手段と、前記画像生成手段によって生成された前記パノラマ画像上に、前記検出手段によって検出された前記照射済み領域を重畳させて表示手段に表示させる表示制御手段とを備えるレーザ治療装置。
【符号の説明】
【0073】
1 レーザ治療装置
11 レーザ光源
12 エイミング光源
50 撮影光学系
53 撮影素子
60 制御部
61 CPU
62 ROM
65 不揮発性メモリ
66 表示画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11