(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236892
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20171120BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20171120BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
H05K9/00 V
G09F9/00 309Z
G09F9/00 350Z
G02F1/1333
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-120820(P2013-120820)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-239148(P2014-239148A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼間 秋作
【審査官】
征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−253996(JP,A)
【文献】
特開2007−017966(JP,A)
【文献】
特開2004−193082(JP,A)
【文献】
特開2002−215052(JP,A)
【文献】
特開2011−022381(JP,A)
【文献】
特開2006−003862(JP,A)
【文献】
特開平11−298182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K9/00
G02F1/1333
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズ発生源(21)を有する表示パネルユニット(13)と、前記表示パネルユニットが取り付けられる金属製のフレーム(14)と、を備える表示装置(10)であって、
前記表示パネルユニットは、前記フレームに設けられた取り付け部(141)に固定されており、
前記取り付け部以外に、前記表示パネルユニットと前記フレームとを接触させる接触部(15,16,17,142)が設けられており、
前記ノイズ発生源(21)を覆うベース銅箔(22)と、
前記ベース銅箔(22)に継ぎ足されるようにして前記ノイズ発生源(21)を覆う増設銅箔(23,24)と、
を備え、
前記接触部(15,17)は、前記フレーム(14)とは別の部品であって、前記増設銅箔(23,24)から所定距離を有する位置に配置され、
前記増設銅箔は、前記ノイズ発生源と前記接触部との間をつなぐノイズの流路として機能することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記接触部として、前記表示パネルユニットと前記フレームとの間にばね(15,16,17)を備えることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ばね(15,16,17)は、複数備えられていることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示パネルユニット(13)には、前記ノイズ発生源(21)を覆う銅箔(23,24)が設けられており、
前記ばね(15,17)は、前記銅箔から所定距離を有する位置に配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記ばね(16,17)は、前記表示パネルユニットが装置本体(11)に取り付けられた状態で当該表示パネルユニットの上側の端部となる上辺から所定距離を有する位置に配置されていることを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ナビゲーション装置の表示装置に、金属製のフレームに支持された液晶表示パネルユニットを備えるものがある。この液晶表示パネルユニットは、ドライバICやコネクタ基板などの各種電子部品を有しているが、これら電子部品からノイズが発生するという問題がある。このため、この種の表示装置においては、ノイズによる影響を低減するための対策が取られている。例えば、特許文献1では、スライド式の制御基板の銅箔面をアース金具で挟むことにより輻射ノイズを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−105997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、複雑な形状をしたアース金具が必要であり、また、ノイズ発生源がスライド式で取り付けられる制御基板でなければ適用することができない。
そこで、本発明は、ノイズ発生源から発生するノイズの影響を低減するための対策を改良した表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、ノイズ発生源を有する表示パネルユニットと、表示パネルユニットが取り付けられる金属製のフレームとを備える表示装置において、表示パネルユニットは、フレームに設けられた取り付け部に固定されている。そして、表示装置は、この取り付け部以外に、表示パネルユニットとフレームとを接触させる接触部を設けている。この種の表示装置において、フレームは当該表示装置の筺体に固定されて接地されている。そのため、このフレームと表示パネルユニットとが接触する接触部を増設したことにより、表示パネルユニットから発生するノイズが接触部を介してフレームに流れやすくなる。従って、ノイズ発生源から発生するノイズの影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態に係る表示装置の外観を示す斜視図
【
図3】表示装置に内蔵された表示パネルユニットおよびフレームを示す斜視図
【
図6】ノイズのシールド効果に関する比較実験結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示す表示装置10は、例えば車両に搭載されるナビゲーション装置などに備えられ、
図2に示す装置本体11の収納部12内に取り付けられるように構成されている。
図3に示すように、表示装置10の内部には、フレーム14に取り付けられた表示パネルユニット13が備えられている。表示パネルユニット13とフレーム14との間には、
図4に示すように複数のばね15,16,17が介在されている。
【0008】
表示パネルユニット13は、液晶の表示パネルユニットで構成されており、詳しい図示は省略するが、2枚のガラス基板の間に液晶を充填し、その背後にバックライトを配置して構成されている。表示パネルユニット13は、
図1,
図3,
図4に示す状態で手前側の面が各種画面を表示する表示面となっている。そして、
図5に示すように、表示パネルユニット13は、表示面とは反対側の面である背面側に回路基板部21を備えている。この回路基板部21には、ノイズ発生源である図示しないドライバICやコネクタ基板などの各種電子部品が設けられており、回路基板部21から発生するノイズを遮蔽するためのベース銅箔22によって覆われている。この場合、回路基板部21の一部がベース銅箔22によって覆われている。また、このベース銅箔22には、当該ベース銅箔22に継ぎ足されるようにして回路基板部21を覆う増設銅箔23,24が増設されている。なお、これら増設銅箔23,24の大きさ、形状、位置などは、他の部品との位置関係などに応じて、あるいは、より高いノイズの低減効果を図るために、適宜変更して実施することができる。
【0009】
また、表示パネルユニット13の背面側には、フレキシブルプリントケーブル25(以下、「FPC25」と称する)が取り付けられている。このFPC25は、例えば複数枚のプラスチックフィルム製のプリント基板を積層して構成した可撓性を有する多層基板からなり、そのほぼ全体に電気絶縁性のコーティングが施されている。このFPC25は、信号線として機能する銅線からなる多数の配線パターンを有しており、例えばハンダ付けなどによって回路基板部21に接続されている。このFPC25もノイズ発生源となり得る。
【0010】
図4に示すように、フレーム14は、ほぼ矩形状に形成された金属製の部材である。このフレーム14の端部には、複数の取付片部141が一体的に形成されている。また、このフレーム14には、既存の取付片部141に加えて、さらに複数の取付片部142が増設されている。これら取付片部142は、何れも接触部の一例であり、既存の取付片部141の間に存在するスペースなどを利用して設けられる。表示パネルユニット13は、既存の取付片部141および増設された取付片部142に、例えばねじ止めされることにより、あるいは、嵌め込まれることにより、フレーム14に固定される。取付片部142は、例えば表示装置10を構成する他の部品との位置関係などに応じて、あるいは、より高いノイズの低減効果を図るために、表示パネルユニット13の外周部の適宜の位置に接触するように設けられる。また、この取付片部142は、フレーム14に一体的に設けてもよいし、フレーム14とは別の取付部品として設けてもよい。
【0011】
表示パネルユニット13がフレーム14に支持された状態では、これら表示パネルユニット13とフレーム14との間に隙間が形成されており、本実施形態では、この隙間に、3つのばね15,16,17が挟み込まれている。なお、このフレーム14は、
図1に示す表示装置10の金属製の筺体101に直接的あるいは間接的に接続された状態で固定され、これにより、接地電位で維持されるようになっている。
ばね15,16,17は、何れも接触部の一例であり、金属により構成されている。これらばね15,16,17は、表示パネルユニット13とフレーム14との間に取り付けられる前の状態で、その伸縮方向である長手方向の寸法が、表示パネルユニット13とフレーム14との間の寸法よりも長くなるように設計されている。従って、これらばね15,16,17は、表示パネルユニット13とフレーム14との間に取り付けられた状態では、その長手方向に沿って圧縮された状態となる。これにより、ばね15,16,17は、表示パネルユニット13とフレーム14との間に取り付けられた状態では、その付勢力によって、表示パネルユニット13の背面およびフレーム14の前面の双方に密着した状態となる。
【0012】
図5に示すように、ばね15,16,17は、例えば表示装置10を構成する他の部品との位置関係などに応じて、あるいは、より高いノイズの低減効果を図るために、それぞれ異なる位置に配置される。ここで、本実施形態におけるばね15,16,17の配置位置について説明する。なお、以下の説明では、表示パネルユニット13を内蔵する表示装置10が装置本体11に取り付けられた状態で当該表示パネルユニット13の上側に向かう方向(図中の矢印参照)を上方、下側に向かう方向(図中の矢印参照)を下方とする。
【0013】
即ち、この場合、ばね15は、回路基板部21を覆う増設銅箔23の近傍において、当該増設銅箔23から上方に所定距離Daを有した位置に配置されている。ばね16は、表示パネルユニット13の背面上部において、当該表示パネルユニット13の上側の端部となる上辺から下方に所定距離Dbを有した位置に配置されている。また、このばね16は、ばね15から上方に所定距離Dcを有した位置に配置されている。ばね17は、表示パネルユニット13の背面上部において、当該表示パネルユニット13の上側の端部となる上辺から下方に所定距離Ddを有した位置に配置されている。また、このばね17は、回路基板部21を覆う増設銅箔24の近傍において、当該増設銅箔24から上方に所定距離Deを有した位置に配置されている。
なお、複数のばね15,16,17の配置位置を決める所定距離Da〜Deは、例えば他の部品との位置関係などに応じて、あるいは、より高いノイズの低減効果を図るために、適宜変更して実施することができる。また、所定距離Dbと所定距離Ddを同じ距離で設定してもよい。即ち、表示パネルユニット13の上辺からばね16までの距離と表示パネルユニット13の上辺からばね17までの距離を同じ距離で設定してもよい。
【0014】
上記構成の表示装置10において、ノイズ発生源を有する回路基板部21やFPC25からはノイズが発生する。このノイズによる影響を低減するために、この表示装置10においては、表示パネルユニット13とフレーム14との間に複数のばね15,16,17が増設されている。この構成によれば、表示パネルユニット13およびフレーム14は、取付片部141を介して相互に接触することに加えて、さらに、ばね15,16,17を介しても相互に接触する。このため、ノイズ発生源を有する表示パネルユニット13と接地電位に維持されるフレーム14とが接触する部分が増加し、表示パネルユニット13から発生するノイズが既存の接触部および増設された接触部を介してフレーム14に流れやすくなる。従って、ノイズ発生源から発生するノイズの影響を低減することができる。
【0015】
ここで、本実施形態では、弾性部材であるばね15,16,17を用いているので、ばね15,16,17が表示パネルユニット13およびフレーム14の双方に密着した状態で接触し、表示パネルユニット13およびフレーム14に対するばね15,16,17の接触が不十分となることがない。これによって、表示パネルユニット13から発生するノイズをばね15,16,17を介して確実にフレーム14に流すことができる。
さらに、表示装置10によれば、ばね15は、ノイズ発生源を有する回路基板部21を覆う増設銅箔23から所定距離Daを有する近傍位置に配置されている。この構成によれば、増設銅箔23が回路基板部21とばね15との間をつなぐノイズの流路として機能するため、より効率良くノイズの影響を低減することができる。
【0016】
さらに、表示装置10によれば、表示パネルユニット13およびフレーム14は、既存の取付片部141を介して相互に接触することに加えて、さらに、増設された取付片部142を介しても相互に接触する。そのため、表示パネルユニット13とフレーム14とが接触する部分が増加し、表示パネルユニット13から発生するノイズが既存の接触部および増設された接触部を介してフレーム14に流れやすくなる。従って、ノイズ発生源から発生するノイズの影響を低減することができる。
【0017】
図6は、本実施形態の効果を確認するために、本実施形態に係る表示装置と従来品とについて、入力信号の周波数を種々変えて回路基板部21近傍の電界強度を測定した結果を示す。なお、
図6(a)は接触部を増設していない従来品の測定結果を示し、
図6(b)は本実施形態の表示装置の測定結果を示す。これら測定結果から明らかなように、本実施形態の表示装置は従来品と比較してノイズの影響が低減されており、特に400〜500MHzの帯域において顕著なノイズ低減効果を得ることができた。
また、本実施形態に係る表示装置10の発明者等による検証結果によれば、本実施形態の表示装置10において、ノイズの水平方向の成分が従来よりも約4〜13dBほど改善し、ノイズの垂直方向の成分が従来よりも約3〜10dBほど改善したことが確認された。
【0018】
図7は、表示パネルユニット13の背面上部に配置されるばね16,17を、当該表示パネルユニット13の上辺から下方に所定距離を有した位置ではなく、当該表示パネルユニット13の上辺に沿って配置した比較例を示す。この例では、ノイズの水平方向の成分が従来よりも約3〜10dBほど改善し、ノイズの垂直方向の成分が従来よりも約3〜7dBほど改善したことが確認された。この構成例によっても、ノイズの低減効果を得ることができた。しかし、より高いノイズの低減効果を得るためには、
図5に示すように、表示パネルユニット13の上端部に配置されるばね16,17を、当該表示パネルユニット13の上辺から下方に所定距離を有する位置に配置した方が好ましい。なお、この
図7に示す例も、本発明の概念に含まれる構成例である。
【0019】
図8は、
図5に示す本実施形態の構成から増設銅箔23を除去した比較例を示す。この例では、ノイズの水平方向の成分のうち比較的低い帯域では従来よりも約4〜7dBほど改善したが、比較的高い帯域では従来よりも5〜10dBほど悪化したことが確認された。また、ノイズの垂直方向の成分が従来よりも約3〜4dBほど悪化したことが確認された。よって、より高いノイズの低減効果を得るためには、
図5に示すように、増設銅箔を設けた方が好ましい。なお、この
図8に示す例も、本発明の概念に含まれる構成例である。
【0020】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用することができる。例えば、表示パネルユニット13は、液晶の表示パネルユニットに限られず、例えば、ELパネル(EL:Electro Luminescence)、FEDパネル(FED:Field Emission Display)などで構成してもよい。また、ばねの形状、寸法、増設数、増設位置などは適宜変更して実施することができる。また、取付片部の形状、寸法、増設数、増設位置などは適宜変更して実施することができる。また、フレーム14の外周部の全周あるいは一部に取付片部を連続的に増設してもよい。また、ノイズ低減対策として、ばねのみを増設した構成としてもよいし、取付片部のみを増設した構成としてもよい。なお、発明者等による検証結果によれば、ノイズ低減対策として取付片部のみを増設した構成においても、ノイズの水平方向の成分が従来よりも約3〜6dBほど改善したことが確認された。
【符号の説明】
【0021】
図面中、10は表示装置、13は表示パネルユニット、14はフレーム、15,16,17はばね(接触部)、21は回路基板部(ノイズ発生源)、23,24は銅箔、141は取付片部(取り付け部)、142は取付片部(接触部)を示す。