(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号シンボル数Lおよび前記信号シンボル数Mの少なくともいずれか一方を変更する変更部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光位相補償装置。
前記変更部が前記信号シンボル数Lおよび前記信号シンボル数Mの少なくともいずれか一方をスイープした結果に基づいて、前記主信号の光位相エラーの周波数分解の結果を取得する取得部を備えることを特徴とする請求項5記載の光位相補償装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施例の説明に先立って、WDM伝送システムの概略について説明する。
図1は、WDM伝送システム200の全体構成を説明するためのブロック図である。
図1を参照して、WDM伝送システム200は、複数の光送信器210、波長多重器220、光伝送路230、波長分離器240、複数の光受信器250などを備える。光伝送路230は、光ファイバが光増幅器によって中継される構成を有する。
【0010】
各光送信器210は、互いに異なる波長光の信号を生成し、波長多重器220に入力する。波長多重器220は、入力された複数の位相変調信号を合波する。合波によって得られた波長多重光信号は、光伝送路230を経由して波長分離器240に入力される。波長分離器240は、波長多重光信号を各波長の信号に分離する。光受信器250は、信号を復調する。WDM伝送システム200に用いられている光信号では、一例として4値の位相変調を用いる偏波多重QPSK(DP−QPSK:Dual Polization Quadrature Phase Shift Keying)方式がある。なお、
図1では、光送信器から光受信器に信号が伝送されているが、光送受信器を用いて双方行に信号を伝送する構成としてもよい。
【0011】
図2は、光受信器250の構成を説明するためのブロック図である。なお、
図2においては、光送信器210から光受信器250に至るまでに重畳される光位相エラーの一例が表されている。なお、実際の光位相エラーは光伝送路の様々な場所で生じているので分布定数として表記されるものの、図は光位相エラーの要素を集中定数として表記した簡易なモデルとしている。WDM伝送システム200においては、光送信器210と光受信器250との間で様々な光位相エラーが付与される。その光位相エラーには、光伝送の際の非線形光学効果等に起因する光位相エラーが含まれる場合がある。
【0012】
例えば、光信号が自らの光位相を変調する自己位相変調(SPM:Self Phase Modulation)に起因する光位相エラーが挙げられる。SPMに起因する光位相エラーは、変調方式、パワー等の特性、ビットシーケンス等に依存する。次に、隣接する光チャネルから干渉する相互位相変調(XPM:Cross−talk Phase Modulation)に起因する光位相エラーが挙げられる。XPMに起因する光位相エラーは、隣接する光チャネルの互いの変調方式やパワー等の特性、ビットシーケンス等に依存する。次に、隣接チャネル同士が干渉する4光波混合に起因する光位相エラーが挙げられる。なお、4光波混合によって、光位相エラーに加えて光信号の強度も劣化する。次に、光増幅器で付加される光ノイズ(ASE:Amplified Spontaneous Emission)に起因する光位相エラーが挙げられる。ASEは、ブロードバンドの白色ノイズとして光信号に重畳することによって当該光信号を劣化させる。なお、重畳される光位相エラーは、これらに限定されるものではない。
【0013】
ASE、SPM、XPM、および4光波混合に起因する光位相エラーは、WDM方式を含む光伝送路のネットワークの回線の特性や構成に依存して生じるものである。ネットワークの構成が異なると、光位相エラーが変化する。言い換えると、伝送路の特性や構成によってこれら光位相エラーは異なる。例えば、WDM伝送方式でその主信号チャネルのみならずWDMの隣接チャネルの回線切り替え等によって回線の構成が変化することで、主信号に重畳される光位相エラーは変化することになる。
【0014】
光受信器250のうち、DP−QPSK方式の光受信器の構成を示す。その受信器は、90°ハイブリッド等の光干渉器を用い、光受信器250に入力される光信号(以下、主信号)と局部発振(LO:Local Oscillation)光とを干渉させる。光受信器250は、得られた光に対する光電変換によって得た電流を電流/電圧変化し、アナログ/デジタル変換することによって、デジタルの電気信号を得る。なお、光伝送路230では、波長多重光信号に、偏光回転伝達関数、偏波分散伝達関数、偏波依存損失伝達関数、波長分散伝達関数などが付与される。光受信器250は、振幅アンバランス補償部、固定イコライザ、アクティブイコライザ等において、これらの伝達関数の逆関数を付与することによって、波形歪みを補償する。
【0015】
光受信器250は、イントラダイン検波方式を採用する光受信器である。イントラダイン検波方式とは、主信号の光周波数と局部発振光の光周波数とが完全には一致していない状態で、それら2つの光信号を干渉させて復調信号を得る方式である。光受信器250は、光信号の光周波数の差によって生じる光位相エラーを算出して補償する構成を内蔵している。光位相エラーを算出する構成は、周波数オフセット補償などと呼ばれている。光位相エラーの算出過程においては、光位相エラーが重畳した光信号のシンボルを、任意のあるN個を平均化の対象とし、移動平均化処理によって光位相エラーを算出することができる。
【0016】
図3(a)および
図3(b)は、比較例に係る光位相補償装置300の構成について説明するためのブロック図である。光位相補償装置300は、
図2の構成では、周波数オフセット補償部に対応する。光位相補償装置300は、光位相エラーが重畳した主信号のシンボルを任意のあるN個を対象にした平均化処理によって、光位相エラーを算出する構成を有している。例えば、主信号のシンボルを任意のN個を対象に光位相エラーを移動平均して平滑化することで、ある信号シンボルの光位相エラーが異常であっても、センシティブにその異常に反応することなく安定して光位相エラーを補償する。
【0017】
図3(a)を参照して、光位相補償装置300には、主信号として、光位相エラーが重畳された混合波(θs(t)=π/4、3π/4、5π/4、7π/4:信号シンボルの位相変調成分、θe(t):光位相エラー)が入力される。偏角計算部301は、混合波から位相角(θs(t)+θe(t))を抽出する。一方、4乗算部302および平均化部303は、混合波の位相角を4倍してθs(t)をπ、3π、5π、7πとすることによって信号位相を消去し、4×θe(t)を残留させる。その際、4乗算部302および平均化部303は、N個の入力信号からN個のシンボルで平均化する。偏角計算部304は、位相角を抽出する。1/4除算部305は、4×θeを4で除算することによって、光位相エラーθeを算出する。偏波調整部306は、偏波の回転角を調整することによって光位相エラーθe´を算出する。減算器307は、混合波の位相角(θs(t)+θe(t))から、算出された光位相エラーθe´を減算することによって、信号位相θs(t)を抽出する。復調部308は、得られた信号位相θs(t)に基づいて主信号を復調する。
【0018】
図3(b)を参照して、平均化部303は、複数のシフトレジスタ309を用いる。光位相補償装置300は、運用中においては常に光位相エラーθe´を出力し続けて信号シンボルθs(t)を補償することが好ましいものの、平均化対象の信号シンボル数の設定をN→M(≠N)に変えると、再演算を行うことになる。この際、再演算直後にθe´は正しく出力されず、結果、信号エラーが発生してしまう。例えば、運用中にWDMのネットワーク構成が変化してNよりもMの方が光位相エラーを適切に補償できるような場合、N→Mに信号シンボル数を変更することが好ましい。この場合、信号シンボル数をN→Mに変更すると、一時的にtrafficがfailするおそれがある。
【0019】
光位相補償装置300は、信号1シンボル当たり2サンプリング以上の高速サンプリングし、N個で移動平均して光位相エラーを算出する構成を有している。処理速度は、信号のビットレート相当であって、例えば120Gb/sのDP−QPSKでは、30GBaudrateである。したがって、信号シンボルは、60GSa/sの速度でサンプリングされる。光位相エラー算出部は、この速度に応じて移動平均化の演算処理をすることになる。なお、4乗算部302、平均化部303、偏角計算部304および1/4除算部305が光位相エラー算出部に相当する。また、この移動平均化の演算処理においては、シフトレジスタ等のハードウェアにより、主信号のクロックに同期したクロックを用いてタイミングを補償することが一般的である。演算処理といえども、高速で動作するハードウェアの構成において、移動平均の対象数を変更すると、その出力はシームレスに変更できないため、以上のような光位相補償エラーが生じてしまう。
【0020】
光位相補償装置300に入力される主信号の光位相エラーの成分(θe(t))は、様々な速度(dθe/dt)を含んでいる。光位相エラーを生成する光ノイズを整理すると、以下のようになる。これらの光ノイズは、それぞれの周波数成分(−dθe/dt→df)に着目して分類してある。θe(t)は、これらが加算されて入力されたものとしてみなすことができる。なお、一般には、周波数オフセットの補償とは、以下のノイズ1およびノイズ2によって生じる光位相エラーの補償のことである。
【0021】
ノイズ1:光送信器210および光受信器250のレーザ線幅による光周波数差に起因するθe。一例として、 Δ2MHz程度。
ノイズ2:光送信器210のレーザの中心光周波数と光受信器250のレーザの中心光周波数との差に起因するθe<Δ数百MHz程度。
ノイズ3:非線形現象(SPM:自己位相変調)に起因するθe。極めて高速な周波数成分を含む。
ノイズ4:非線形現象(XPM:相互位相変調)に起因するθe。極めて高速な周波数成分を含む。
ノイズ5:非線形現象(4光波混合、クロストーク等)に起因するθe。高速な周波数成分を含む。
ノイズ6:ASEノイズに起因するθe。ブロードバンドな白色。
【0022】
ノイズ3〜5は、光伝送の際に非線形光学効果による現象に起因して生じる光位相エラーであることから、光信号や隣接チャンネルの信号の性質が作用して生じる。ノイズ3〜5の成分は、信号のビットシーケンス等を含む周波数成分に依存する。したがって、
図4(a)を参照して、一例として、ノイズ3〜5は、ノイズ1,2と比較して高い周波数帯域の成分を含んでいる。
【0023】
これら、様々な周波数帯の光位相エラーに対して、比較例に係る光位相補償装置300では、1個の光位相エラー算出部を備え、任意のN個の信号シンボルで移動平均化することによって光位相エラーθe´を算出している。任意のN個の信号シンボルで移動平均化して出力する光位相エラーの算出過程は、デジタルフィルタであって、光位相エラーに対して1個のローパスフィルタで光位相を補償することを意味している。
【0024】
例えば、イントラダイン検波方式において光位相補償の対象とされるノイズ1,2を補償範囲とする場合は、
図4(b)を参照して、フィルタ1のようなローパスフィルタを設ければよい。さらにノイズ3〜5のような高周波数の帯域を包含しようとすれば、平均化対象の信号シンボル数を変更してフィルタ3のような広帯域のローパスフィルタを実現すればよい。
【0025】
しかしながら、光位相エラーを算出する際に定めた任意の信号シンボル数Nを、ある任意のM(≠N)に変更すると、変更直後において、光位相エラーの算出結果θe´として正しい値が出力されない。それにより、信号エラーが発生してしまう。その結果、光位相エラーを適切に補償できずに、信号品質が劣化してしまう。そこで、以下の実施例においては、光位相エラーを適切に補償することができる光位相補償装置、光受信器、ネットワークマネジメントシステム、および光位相補償方法について説明する。
【0026】
以下、図面を参照しつつ、実施例について説明する。
【実施例1】
【0027】
図5は、実施例1に係る光位相補償装置100の構成を説明するためのブロック図である。光位相補償装置100は、偏角計算部10、第1の光位相エラー算出部20a、第2の光位相エラー算出部20b、差分算出部30、利得調整部40、偏波調整部50a,50b、減算器60a,60b、復調部70、コントローラ80などを備える。光位相補償装置100が補償対象とする主信号は、信号シンボルの位相変調成分θs(t)および光位相エラーθe(t)が含まれる混合波である。
図6は、光位相補償装置100の各部における演算処理を表している。
【0028】
以下、
図5および
図6を参照しつつ、光位相補償装置100の動作について説明する。偏角計算部10は、混合波から位相角(θs(t)+θe(t))を抽出する。第1の光位相エラー算出部20aおよび第2の光位相エラー算出部20bは、混合波の位相角を4倍することによって、θs(t)をπ、3π、5π、7πとすることによって、信号位相を消去し、4×θe(t)を残留させる。第1の光位相エラー算出部20aは、L個の入力信号からL個の信号シンボルで平均化する。第2の光位相エラー算出部20bは、M(<L)個の入力信号からM個の信号シンボルで平均化する。また、第1の光位相エラー算出部20aおよび第2の光位相エラー算出部20bは、4×θeを4で除算することによって、光位相エラーθe´を算出する。本実施例においては、「M」として、ノイズ3〜5の光位相エラーを補償対象外とし、ノイズ1,2の光位相エラーを補償対象とする値が用いられ、「L」として、ノイズ1〜5の光位相エラーを補償可能とする値が用いられる。
【0029】
差分算出部30は、第1の光位相エラー算出部20aの算出結果θe_1と、第2の光位相エラー算出部20bの算出結果θe_2との差分Δθ_12=θe_1−θe_2を算出する。利得調整部40は、差分Δθ_12に対する利得G(例えば0〜1)を調整する。偏波調整部50aは、第2の光位相エラー算出部20bの算出結果θe_2の偏波角を調整し、光位相エラーθe´として出力する。偏波調整部50bは、利得調整部40の算出結果Δθ_12×Gの偏波角を調整して出力する。
【0030】
減算器60aは、混合波の位相角(θs(t)+θe(t))から、算出された光位相エラーθe´を減算する。減算器60bは、減算器60aの算出結果からΔθ_12×Gを減算することによって、信号位相θs(t)を抽出する。復調部70は、得られた信号位相θs(t)に基づいて主信号を復調する。コントローラ80は、第1の光位相エラー算出部20aおよび第2の光位相エラー算出部20bの平均化対象の信号シンボル数、ならびに利得調整部40の利得Gを設定する。
【0031】
次に、光位相エラー算出部のローパスフィルタの特性を更新する操作手順例について説明する。一例として、回線がサービスインしている状態であって、利得調整部40の利得Gがゼロに設定されていた状態をスタートとする。第2の光位相エラー算出部20bによって光位相エラーが補償されている状態から、第1の光位相エラー算出部20aによって決定されるローパスフィルタ特性によって光位相エラーが補償される状態に切り替える。
【0032】
具体的には、コントローラ80は、第1の光位相エラー算出部20aの平均化対象の信号シンボル数を任意のL個に設定する。次に、予めゼロに設定されていた利得Gをゼロから、緩やかに、例えば利得が0.1/ステップで0→1[真数]に高くしていく。コントローラ80は、利得Gが1に達した場合に操作を終了する。この操作手順によれば、周波数オフセット補償を中断することなく、徐々に第2の光位相エラー算出部20bのローパスフィルタ特性から、第1の光位相エラー算出部20aのローパスフィルタ特性に緩やかに切り替えたことになる。
【0033】
このことは、減算器60bが出力する[θs(t)+θe(t)−θe´−Δθ_12×G]に、Δθe_12=θe_1−θe´と、G:0→1を代入することと同義である。すなわち、上記の操作前の光位相補償後の出力は[θs(t)+θe(t)−θe´]であり、操作後は[θs(t)+θe(t)−θe_1]となり、操作前後で[θe´]が[θe_1]に置き換わることになる。
【0034】
図7(a)〜
図7(c)は、利得Gをゼロから1に制御した場合の補償操作を説明するための図である。
図7(a)〜
図7(c)において、横軸は光位相エラーの速度(dθe/dt)を表し、縦軸は光位相エラーθeの量を表す。
図7(a)は、ノイズ1〜6に起因する光位相エラーを表す図である。一例として、ノイズ3〜5に起因する光位相エラーは、ノイズ1,2に起因する光位相エラーと比べて高周波側に位置する。
【0035】
図7(b)は、利得Gがゼロの状態を表す。第2の光位相エラー算出部20bのローパスフィルタ特性(第2のLPF)は、ノイズ3〜5に起因する光位相エラーを補償対象外とし、ノイズ1,2に起因する光位相エラーを補償対象としている。
図7(c)は、利得Gがゼロから1に切り替わる途中の状態を表している。利得Gがゼロから1に徐々に切り替わるにつれて、第1の光位相エラー算出部20aのローパスフィルタ特性(第1のLPF)が補償するエラー量が多くなる。それにより、ノイズ1〜5に起因する光位相エラーが補償されるようになる。
【0036】
本実施例によれば、光受信器250がDP−QPSK方式の光受信器であって、それがサービスインの状態で信号が疎通している状態のまま、光位相エラーを算出するために定めた任意の信号シンボル数Mを、ある任意のL(>M)へ変更することができる。比較例においては、平均化対象の信号シンボル数を変えることで光位相エラー算出部のローパスフィルタの特性を更新することができるものの、更新の際にtrafficが不通状態となり得る。これに対して、本実施例では、第2の光位相エラー算出部20bのローパスフィルタ特性を維持しつつ、第1の光位相エラー算出部20aのローパスフィルタ特性に変更することができる。すなわち、本実施例によれば、光位相エラーを適切に補償することができる。
【0037】
なお、例えば、回線が運用中の状態で、WDM伝送システムの回線構成や隣接チャネルのパワーやBaudrate等、伝送路で主信号に付与される光位相エラーの周波数成分や量が変化する場合が起こり得る。この場合であっても、回線を瞬断することなく、光位相エラー算出部のローパスフィルタの特性を更新して、適切な光位相補償を行えるようになる。
【0038】
なお、利得Gの調整は、0.1/ステップに限られない。利得Gの調整は、光位相エラーの算出結果の出力が、過渡的に大きな変動をしないように適宜設定されればよい。また、利得調整部40の利得の設定は、入力された光位相エラーの差[rad]に係数を乗算して出力する構成を基本構成とする。係数を更新する速度は、光伝送路230で付与される光位相エラーの状態変化(例えば、WDM伝送システムのネットワーク構成を変える頻度)に応じてできる程度に、静的に行えばよい。
【0039】
本実施例においては、一例として、第2の光位相エラー算出部20bのローパスフィルタ特性の高域遮断周波数よりも、第1の光位相エラー算出部20aのローパスフィルタ特性の高域遮断周波数の方が高いことを前提としている。これは、第2の光位相エラー算出部20bの高域遮断周波数は、周波数オフセットを補償するためのものであって、光伝送路230で付与される光位相エラーはこれより高周波数の帯域にあるのが通常であることを前提としている。
【0040】
上記のように第2の光位相エラー算出部20bの特性から第1の光位相エラー算出部20aの特性に切り替わった後、さらに光位相エラー算出部のローパスフィルタの特性を変更してもよい。例えば、利得調整部40の利得Gを1から緩やかにゼロ(付近)に低下させて、第1の光位相エラー算出部20aの信号シンボル数を変更した後、利得調整部40の利得Gをゼロ(付近)→1に戻してもよい。このように、任意にローパスフィルタ特性を変更してもよい。
【実施例2】
【0041】
次に、光伝送路230で付与された光位相エラーを広帯域(dθ´/dtが小さい領域から大きい領域を広く包含する帯域)で補償しようとした場合について考える。ASEのようなブロードバンドの白色ノイズが多く包含されてしまうと、光位相エラーの算出結果に誤差が生じるおそれがある。その結果、信号品質が劣化するおそれがある。
【0042】
例えば、イントラダイン検波方式においては光位相補償の対象とされるノイズ1,2を補償範囲とする場合は、
図4(b)を参照して、フィルタ1のようなローパスフィルタを設ければよい。さらにノイズ3〜5のような高周波数の帯域を包含しようとすれば、フィルタ3のような広帯域のローパスフィルタを設ければよい。しかしながら、補償帯域を拡大すれば、ASEノイズのようなブロードバンドのノイズに起因する光位相エラーを広域に含んでしまう。この場合、光位相エラーの算出結果に誤差が生じてしまい、光信号の品質が劣化するおそれがある。これは、高周波数の白色ノイズが補償されずに、ローパスフィルタに包含されるASEノイズによる光位相エラーを算出した結果θe´は、実際の光位相エラーθe(t)とかけ離れた光位相エラーvs時間データ特性を有するからである。したがって、ASEノイズによる光位相エラー成分は、光位相エラーの算出の対象範囲となるローパスフィルタにできるだけ含めないようにすることが、確度良く光位相を補償するために好ましい。
【0043】
そこで、実施例2では、ASEノイズの影響を抑制しつつ光位相エラーを適切に補償することができる光位相補償装置および光位相補償方法について説明する。
図8は、実施例2に係る光位相補償装置100aの構成を説明するためのブロック図である。
図9は、光位相補償装置100aの各部における演算処理を表している。光位相補償装置100aが
図5および
図6の光位相補償装置100と異なる点は、第3の光位相エラー算出部20cがさらに備わっている点である。第3の光位相エラー算出部20cは、N(<M<L)個の入力信号からN個のシンボルで平均化する。
【0044】
本実施例においては、偏波調整部50aは、第3の光位相エラー算出部20cの算出結果θe_3の偏波角を調整し、光位相エラーθe´として出力する。コントローラ80は、第3の光位相エラー算出部20cの平均化対象の信号シンボル数Lを設定する。
【0045】
ここで、利得調整部40の詳細について説明する。第1の光位相エラー算出部20aは、L個の信号シンボルをサンプリングして移動平均処理を行う。第2の光位相エラー算出部20bは、M個の信号シンボルをサンプリングして移動平均処理を行う。具体例として、L=12、M=8を想定する。サンプリングされた信号の位相θs(t)に重畳している光位相エラーθe(t)が時間の経過とともに、θe1、θe2、θe3、…θe8、θe9、…θe12のように変化していったものと想定する。
【0046】
第1の光位相エラー算出部20aにおいて、12個の信号シンボルで移動平均して得られた光位相エラーθe_1は、θe_1=(θe12+θe11+…θe9+θe8+…θe3+θe2+θe1)/12と表すことができる。同様に、第2の光位相エラー算出部20bにおいて、8個の信号シンボルで移動平均して得られた光位相エラーθe_2は、θe_2=(θe12+θe11+…θe9+θe8+…θe6+θe5)/8と表すことができる。
【0047】
なお、θe12からθe5までの8個の信号シンボルに重畳した光位相エラーは、コヒーレント光受信器内のADCでサンプリングされた信号を同時に共有している。したがって、第1の光位相エラー算出部20aおよび第2の光位相エラー算出部20bの光位相エラーは、ASEノイズのように白色なノイズであっても同一の値を示すことになる。言い換えれば、白色ノイズであっても、同時にサンプリングした2つの値は、完全に同調することになる。その結果、これらの光位相エラー算出部で共有している周波数帯域に含まれる光位相エラーを、光位相エラー算出の対象から外すことができる。
【0048】
第1の光位相エラー算出部20aで移動平均された光位相エラー算出結果から、第2の光位相エラー算出部20bで移動平均された光位相エラー算出結果の差(=θe_1−θe_2)は、下記式のように表される。
θe_1−θe_2=(θe12+θe11+…θe9+θe8+…+θe6+θe5)/8−(θe12+θe11+…+θe9+θe8+…+θe3+θe2+θe1)/12
=(θe12+θe11+…+θe9+θe8+…+θe6+θe5)/24−(θe4+θe3+θe2+θe1)/12
【0049】
なお、θe12は、サンプリングした時間が最も進んでおり、θe1は最も時間が遅れている光位相エラーに位置するので、上記の式は時間が遅れている過去の光位相エラーからみた現在に近い光位相エラーの成分を示していることになる。また、デジタルフィルタの出力は実際の応答に比べて振幅(利得)が小さくなったり、時間(位相)が遅れたりする場合があることに留意して、利得や位相を調整し光位相補償を行うことが好ましい。また、利得(や位相)を調整するためにPID制御が知られている。利得調整部40は、静的な制御を行ってもよいが、I,Dの係数を有する利得調整を行ってもよい。これらの係数は、光伝送路で付加される光位相エラーの周波数成分や過渡応答を考慮した上で、一般のデジタルフィルタの技術の上で適したものを適用すればよい。
【0050】
本実施例によれば、第3の光位相エラー算出部20cが実現するローパスフィルタの特性を維持しつつ、バンドパスフィルタの特性を追加することができる。具体的には、第1の光位相エラー算出部20aのローパスフィルタ特性と、第2の光位相エラー算出部20bのローパスフィルタ特性との差の周波数帯域(:バンドパスフィルタ)を追加することができる。また、追加される帯域における利得Gを任意に設定することができる。
【0051】
例えば、「N」、「M(>N)」として、ノイズ3〜5の光位相エラーを補償対象外とし、ノイズ1,2の光位相エラーを補償対象とする値を用いる。「L」として、ノイズ1〜5の光位相エラーを補償可能とする値を用いることが好ましい。
【0052】
図10(a)〜
図10(c)は、利得Gをゼロから1に制御した場合の補償操作を説明するための図である。
図10(a)は、ノイズ1〜6に起因する光位相エラーを表す図である。
図10(b)は、利得Gがゼロから1に切り替わる途中の状態を表している。
図10(c)は、第1の光位相エラー算出部20aおよび第2の光位相エラー算出部20bの算出結果の一例を表す図である。
【0053】
図10(b)では、第1の光位相エラー算出部20aのローパスフィルタ特性(第1のLPF)と第2の光位相エラー算出部20bのローパスフィルタ特性(第2のLPF)との差のバンドパスフィルタ特性が描かれている。利得Gがゼロから1に徐々に切り替わるにつれて、当該差に基づくバンドパスフィルタ特性が補償するエラー量が多くなる。それにより、ノイズ1〜5に起因する光位相エラーが補償されるようになる。また、第2の光位相エラー算出部20bのローパスフィルタの帯域が補償対象外となる。この構成では、ノイズ1〜5に起因する光位相エラーが補償されるとともに、第3の光位相エラー算出部20cの補償上限速度から第2の光位相エラー算出部20bの補償上限速度までが補償対象外となる。これによって、ASEノイズの影響を抑制することができる。その結果、光位相エラーの補償精度を向上させることができる。
【0054】
第3の光位相エラー算出部20cのローパスフィルタ特性ができるだけASEノイズを含まないように高域遮断周波数が低く設定されるように、「N」を選択することが好ましい。また、第1の光位相エラー算出部20aのローパスフィルタ特性が高域の光位相エラーの最高周波数を含むように、「L」を選択することが好ましい。また、第2の光位相エラー算出部20bのローパスフィルタ特性が高域の光位相エラーの最低周波数以下までとなるように「M」を選択することが好ましい。
【0055】
なお、光位相エラー算出部を3より多く備えた場合は、複数のバンドパスフィルタを形成することができる。それにより、より光位相エラーが存在する帯域を微分した上で、光位相エラーの算出範囲に含める/含めないという選択を任意に行うことができる。この場合、光位相エラーの算出対象の帯域を確度良く選択して、精度良く光位相エラーの補償を行うことができる。
【0056】
任意の周波数帯域をスイープして、その帯域に含まれる光位相エラーの量を検出してもよい。例えば、コントローラ80は、主信号の光位相補償に影響を与えないように利得Gをゼロに設定し、平均化対象の信号シンボル数L,Mを任意にスイープすることで、光位相エラーを算出する対象の周波数帯域をスイープしてもよい。この場合、対象とする周波数帯域に含まれる光位相エラーの量を検出することができ、いわば、簡易的な光位相エラーのスペクトラムアナライザとして利用できる。これによって、光伝送路230で付与される様々な光位相エラーの量を、周波数分解することができる。周波数分解の結果は、コントローラ80によって取得される。
【0057】
なお、上記実施例1,2で光位相エラーの差分をある利得で増幅して、実際に光位相エラーが重畳している主信号から差し引いて光位相を補償する構成としているものの、必ず差し引いて補償する必要はない。例えば、予め定めたしきい値より位相エラーが大きい場合にのみ補償して、所望の信号品質を補償するという構成であってもよい。
【0058】
QPSK位相変調方式では、信号は光電界強度ベクターフィールド上で、π/2[rad]の間隔で4つの位相角を成している。ある信号シンボルにおいて、光位相エラーがπ/4[rad]で発生すると、復調された信号のアイ開口度はゼロとなる事や、光位相エラーの角度[rad]に応じてアイ開口度が劣化する程度は周知の範囲である。したがって、光位相エラーによって生じるアイ開口の劣化度に予めしきい値を設けて、そのしきい値を越えた場合に限り、ある利得で増幅して(もしくは減衰させて)光位相の補償を実施すれば、ある一定の信号品質を担保することが可能となる。
【0059】
例えばASEノイズによる誤差ありきで実際の信号から算出した光位相エラーを差し引く構成とすると、必ずしも信号品質が改善されるとは限らない。言い換えると、光位相エラーの算出誤差が大きくなると、その誤差を含めて光位相エラーθe(t)が重畳した信号から差し引いて補償すると、かえって信号が劣化してしまう場合がある。これを避けるために、例えば、コントローラ80は、光位相エラーの差分を算出した結果θe_12が、予め設定したしきい値θe_thを越えた場合に限り補償してもよい。
【0060】
例えば、コントローラ80は、|θe_12|>θe_thの場合に、θe_12を用いた補償を行う。それ以外の場合は、実施しない。例えば、光位相エラーの算出対象の範囲に、ASEノイズを多く含むような回線の条件下では、有意な構成といえる。また、DP−QPSK方式において隣接するチャネルの単一偏波信号にXPMによって光位相エラーが多く付与された場合、X偏波もしくはY偏波のいずれか一方に偏って光位相エラーが付与されてしまう場合がある。一方で、現在のイントラダイン検波方式のコヒーレント光受信器の構成では、入力された光信号のX偏波とY偏波の軸の方向と、光受信器内部の光干渉計(90°ハイブリッド)で定義するX偏波とY偏波の軸の方向はほぼ一致しない。したがって、光受信器にとってはX偏波に重畳された光位相エラーの成分とY偏波に重畳された位相エラーとを完全に分離して補償することは困難である。これは、例えば、光受信器でサンプリングしたADCの出力は、時間軸や振幅軸それぞれの分解能には限界があることで自明である。光受信器の従来構成においても、光位相エラーの算出誤差は生じる。それら光位相エラーの算出誤差の量をふまえて、θe_thを予め設定して補償する/しないの判定後に光位相を補償することで、光位相エラーが予め定めたしきい値より大きい場合に補償して、一定の信号品質を確保することができる。
【実施例3】
【0061】
続いて、実施例3に係る光受信器250aについて説明する。
図11は、光受信器250aの全体構成を説明するためのブロック図である。
図11を参照して、光受信器250aは、光フロントエンド部101、信号処理部102、誤り訂正装置103、制御部104などを備える。光フロントエンド部101は、主信号に対して光干渉を行う90°ハイブリッド、光電変換を行う受光素子等を含む。信号処理部102は、光電変換によって得られた光電流をデジタル化し、得られたデジタル信号から主信号を復調する。誤り訂正装置103は、復調された信号に対して誤り訂正を行う。制御部104は、誤り訂正装置103が得た誤り訂正カウント数、信号誤り率等のエラー指数に応じて、信号処理部102の光位相補償装置105を制御する。光位相補償装置105は、実施例1の光位相補償装置100または実施例2の光位相補償装置100aである。
【0062】
例えば、誤り訂正装置103が誤り訂正カウント数を取得する場合、当該カウント数を減らすことによって信号の品質が改善されたことになる。例えば、光位相補償装置105が補償する帯域や利得Gを更新する前後における誤り訂正カウンタ数の増減の方向とカウント数の量に応じて、光位相補償装置105で補償する帯域や利得Gを操作する方向と量を操作する。これを繰り返すことで信号の光位相の品質を向上させるよう光位相エラーを補償することが可能になる。なお、信号の品質モニタには、Q値モニタや誤り数やB.E.R.モニタ、軟判定を行う識別器に入力された信号の振幅レベルの分布情報等を利用することができる。
【0063】
図12は、制御部104による制御の一例を表すフローチャートである。
図12を参照して、制御部104は、現時点での光位相補償装置105の補償帯域および利得Gの設定を設定1として記録する(ステップS1)。次に、制御部104は、誤り訂正装置103が取得する誤り訂正カウント数もしくは誤り率を品質1として記録する(ステップS2)。次に、制御部104は、光位相補償装置105の補償帯域および利得Gを更新して設定2として記録する(ステップS3)。次に、制御部104は、誤り訂正装置103が取得する誤り訂正カウント数もしくは誤り率を品質2として記録する(ステップS4)。
【0064】
次に、制御部104は、品質2が品質1よりも良い結果を示しているか否かを判定する(ステップS5)。具体的には、制御部104は、訂正カウント数が少なくなっているか、誤り率が低くなっているか否かを判定する。ステップS5で「Yes」と判定された場合、制御部104は、次回に光位相補償装置105の設定を更新する際に、設定1から設定2へ更新した帯域や利得Gの量に対して、逆方向に更新すると決定する(ステップS6)。ステップS5で「No」と判定された場合、制御部104は、次回に光位相補償装置105の設定を更新する際に、設定1から設定2へ更新した帯域や利得Gの量に対して、同一方向に更新すると決定する(ステップS7)。ステップS5,S6の実行後、ステップS2が実行される。
【0065】
本実施例によれば、光位相補償装置105の設定更新の前後における信号品質を比較することによって、信号品質を向上させることができる。
【実施例4】
【0066】
実施例4においては、ネットワークマネジメントについて説明する。
図13は、ネットワームマネジメントの全体構成を説明するためのブロック図である。
図13を参照して、WDMネットワークにおいては、光送受信器/回線切替設置局400が少なくとも1つの光増幅器設置局500を経由して光ファイバなどによって接続されている。光増幅器設置局500は、中継対象の光信号を増幅する光増幅器を備えている。光送受信器/回線切替設置局400は、実施例1の光位相補償装置100または実施例2の光位相補償装置100aを有する光受信器を備える。
【0067】
ネットワームマネジメントセンター(以下、NMC)600は、これらの局を監視・制御している。NMC600は、光増幅器設置局500の光増幅率を制御する。光増幅器設置局500は、NMC600に、光増幅率を通知し、光パワーモニタ値を通知する。NMC600は、光送受信器/回線切替設置局400に対し、光送受信器の選択(Baudrate、変調方式の選択)、チャネルごとの波長選択、光回線ルートの選択を行う。光送受信器/回線切替設置局400は、NMC600に対し、光送受信器の状態(Baudrate、変調方式、光入出力パワーモニタ値)を通知し、チャネルごとの波長設定を通知し、光回線ルート設定を通知する。また、光送受信器/回線切替設置局400は、NMC600に対し、光受信器で検出された光位相エラーのモニタ結果を通知する。また、光送受信器/回線切替設置局400は、光伝送路のノードを共有する光受信器において光位相エラーを周波数分解し、得られた分析結果をNMC600に送信する。
【0068】
NMC600では、それら光受信器の光位相エラーの分析結果を集約して、ネットワークの設定及び監視状態と照合することで、光位相エラーの発生を低減するための操作を見出すことが可能となる。例えば、λ1の回線と、λ3の回線における光受信で検出された光位相エラーがある周波数帯で多く検出されたと仮定する。この場合、λ2の変調方式、Baudrate、光パワーの強度の監視情報と照らしあわせた結果、光パワーが大きいことでXPMが付与されたものと限定して予測することが可能となる。予測後、NMC600は、λ2の光パワーを低減(もしくは増加)させて、再びλ1とλ3における光位相エラーの分析結果を受信して、光パワーを変化させた前後の状態を照合して改善されたか否か判定する。NMC600は、光位相エラーを生じさせる光伝送路中の要素を限定して、光信号の品質を改善するよう繰り返すことで、WDM伝送システム全体の信号の品質を改善する。
【0069】
なお、WDM伝送システム全体の光位相エラーの補償方法は、光受信器に内蔵される位相補償装置によって提供される。光受信器内で光位相エラーの分析を行っても、WDM伝送システムの光信号には何ら影響を与えないため、サービスインされた実運用状態においても難なく補償することができる。無論、敷設時等、運用前において、実際の光ファイバ伝送路ありきで、WDM伝送システム全体の信号品質を最適化するために利用してもよい。
【0070】
以下、NMC600の制御の一例について説明する。
図14は、NMC600の制御の一例を表すフローチャートである。
図14を参照して、NMC600は、光ネットワークの構成と状態をモニタする(ステップS11)。少なくともNMC600は、WDM光ネットワークの構成(波長設定、光回線のルート)、光送受信器の変調方式とBaudrate、光受信器が検出した光位相エラー量(帯域と強度)の検出結果をモニタする。
【0071】
次に、NMC600は、光位相エラー量の検出結果から、光位相エラー量が多く、信号品質に劣化が生じているチャネルを特定する(ステップS12)。次に、NMC600は、ステップS12で特定されたチャネルと、その隣接チャネルの運用状態から、非線形光学効果による現象によって劣化が生じているチャネルを推定する(ステップS13)。
【0072】
次に、NMC600は、特定されたチャネルもしくは隣接チャネルのうち、少なくともWDM光ネットワークの構成(波長設定、光回線のルート)、光回線ごとのパワーの状態、光送受信器の変調方式とBaudrateのいずれかを操作する(ステップS14)。次に、NMC600は、特定されたチャネルもしくは隣接チャネルの光位相エラー量をモニタし、ステップS14前後で光位相エラー量を比較し、増減を検出する(ステップS15)。次に、NMC600は、光位相エラー量が増加した場合、操作前の状態に戻してから、次回は操作した対象とは別の設定を操作する(ステップS16)。なお、NMC600は、光位相エラー量が減少した場合には、そのままにする。ステップS16の実行後、再度ステップS11が実行される。
【0073】
ある光回線で異常が生じた場合は、隣接するチャネルの光位相エラーの算出結果に異常が生じる場合がある。例えば、隣接チャネルの光パワーが期待値より大きくなったり、光送信器の変調に異常が生じたり、光送信器のクロック系に異常が生じる。これにより、信号波形が見かけ上Baudrateやビットシーケンスが通常のランダム信号ではなく、周波数スペクトラムに偏りが生じたり、時間経過とともに不安定な状態に遷移する。このような異常な光信号自体を直接モニタしてその光送信器の監視を行わなくても、XPMによって生じた光位相エラーの成分を分析することで、隣接する光送信器に異常が生じていることを検出することができる。例えば、異常が生じた光送信器の故障によりその監視が困難な状態であっても、隣接チャネルの光位相エラーを分析することで、XPMによる光位相エラーを生じさせていると特定してネットワークマネジメントを可能とすることができる。
【0074】
図15は、NMC600の制御の他の例を表すフローチャートである。
図15を参照して、NMC600は、光ネットワークの構成と状態をモニタする(ステップS21)。少なくともNMC600は、WDM光ネットワークの構成(波長設定、光回線のルート)、光送受信器の変調方式とBaudrate、光受信器が検出した光位相エラー量(帯域と強度)の検出結果をモニタする。
【0075】
次に、NMC600は、光位相エラー量の検出結果から、光位相エラー量が多く、信号品質が異常であるチャネルを特定する(ステップS22)。次に、NMC600は、異常であるチャネルに隣接しているチャネルの光回線のパワーの状態、光送受信器の変調方式とBaudrate、および光送信器の光信号品質に影響する箇所の状態をモニタする(ステップS23)。
【0076】
次に、NMC600は、上記隣接しているチャネルの状態が、光位相エラーが多く信号品質が異常という劣化現象を引き起こしている可能性があるか、分析して推定する(ステップS24)。次に、NMC600は、上記可能性がある場合、上記隣接しているチャネルについて、以下の少なくとも1つを実施する(ステップS25)。具体的には、光位相エラーが異常であるチャネルに隣接しないよう、WDM光ネットワームの構成を変更(波長設定もしくは光回線のルート)、または、光回線のパワーの低下。次に、NMC600は、光位相エラー量が多く異常なチャネルの光位相エラー量を再測定し、異常が正常に変化した場合に、上記隣接チャネルが異常であると判定し、交換する(ステップS26)。ステップS26の実行後、再度ステップS21が実行される。
【0077】
本実施例によれば、光位相補償装置が取得した光位相エラーに応じて、光ネットワークを適切にマネジメントすることができる。
【0078】
上記各実施例においては、4値の位相変調を用いる偏波多重QPSK方式を用いたが、他の位相変調方式を用いてもよい。なお、実施例1,2において、コントローラ80は、信号シンボル数Lおよび信号シンボル数Mの少なくともいずれか一方を変更する変更部として機能する。また、コントローラ80は、変更部が信号シンボル数Lおよび信号シンボル数Mの少なくともいずれか一方をスイープした結果に基づいて、主信号の光位相エラーの周波数分解の結果を取得する取得部として機能する。また、実施例3において、誤り訂正装置103および制御部104は、復調された信号のエラー率を取得する取得部として機能する。また、実施例4において、NMC600は、光位相補償装置が補償する光位相エラー量に基づいて、光位相エラーを分析する分析装置として機能する。
【0079】
なお、上記DP−QPSKにおいて、X偏波とY偏波の光パワーの比は、その偏波の主信号の光電力1[W]あたりの制御信号による光強度変調の振幅[W]=N<<1と定義することができる。上記いずれかの位相補償装置を備える光受信器は、強度変調された振幅からX偏波とY偏波の光パワー比を算出する構成を有していてもよい。また、検出された振幅値が、検出処理時間中に安定しているか否か監視する構成を有していてもよい。この場合、安定していない場合はその検出値を無効とした上で、フィードバック制御の操作値の更新を一時次停止するよう、フィードバック制御の誤動作防止機能を設けてもよい。また、主信号の光パワーが上限/下限のしきい値に達したかどうかを監視し、そのしきい値に達した場合は、光伝送路中で想定するPDL(偏波依存性ロス)の量を超えた場合に、警報を発してもよい。
【0080】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。