(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る方法および装置による充電制御の大まかな流れを示すグラフである。
【0013】
本発明に係る方法は、充電されるバッテリの電圧に基づいて充電電流を多段階に制御する、充電電流の多段階制御方法である。充電動作を実行するための回路および制御装置の構成はとくに図示しないが、公知の構成を用いて実現することが可能である。とくに、制御装置は、演算手段および記憶手段を備えるマイクロコンピュータを用いて構成することができる。このような構成により、制御装置は、本明細書に記載される方法を実行する。
【0014】
制御装置は、バッテリへの充電に係る電流値を制御する。バッテリはたとえば液式鉛蓄電池である。制御装置は、バッテリへの充電に係る電流を多段階(
図1の例では3段階であるが、2段階以上であればよい)に制御する。
図1の例では、各段階は定電流による充電を行う定電流段階である。すなわち、各段階における充電電流の値がそれぞれ一定に維持されている。なお、
図1は大まかな流れを示すものであり、
図2以降において説明する休止区間は示していない。
【0015】
制御装置は時刻T1以前にバッテリへの充電を開始し、時刻T1までの段階では充電電流の値をI1に維持し、時刻T1後時刻T2前の段階では充電電流の値をI2に維持し、
時刻T2後時刻T3前の段階では充電電流の値をI3に維持し、時刻T3において充電動作を終了する(すなわち充電電流を0とする)。ただしI1>I2>I3>0である。
【0016】
制御装置は、最終段階以外の段階(
図1の例では、充電電流がI1である段階と、充電電流がI2である段階)と、最終段階(
図1の例では、充電電流がI3である段階)とで異なる制御を行う。
【0017】
以下では、まず最終段階以外の段階における制御について説明する。
制御装置は、充電中に休止区間を設け、この休止区間において電圧を測定し、測定された電圧に基づいて、次の段階への移行制御を行う。「次の段階への移行制御」とは、たとえば充電電流をI1からI2に変更すべき時刻T1を決定する処理と、この時刻T1において実際に充電電流の値をI1からI2に変更する(この例では減少させる)処理とを含む。
【0018】
図2は、この休止区間における充電制御を示すグラフであり、
図1における区間Xを拡大した図である。この充電制御は、たとえば最終段階以外の段階において実施される。すなわち、
図1において充電電流がI1である段階およびI2である段階において実施される。この充電制御は、現在の段階から次の段階への移行制御のために実行されるものである。
【0019】
制御装置は、充電動作において休止区間を設ける。休止区間は所定周期で設けられる。本実施形態ではこの周期をTxとする。制御装置は、この休止区間において、所定の休止時間だけ充電を休止する(すなわち充電電流を0とする)。
図2には休止区間Int1およびInt2が示されている。
【0020】
周期Txはたとえば60秒であるが、1分〜5分であればどのような値であってもよく、また1分以下または5分以上としてもよい。休止時間(すなわち休止区間の長さ)intxは一定であり、たとえば2秒であるが、1秒〜5秒であればどのような値であってもよく、また1秒以下または5秒以上としてもよい。
【0021】
各休止区間では充電動作が休止されているので、バッテリの電圧(たとえば端子間電圧)は時間とともに減少する。制御装置は、各休止区間において、所定時間における電圧降下を測定する。なお、本明細書において、「電圧降下」とは、時間の経過に伴う電圧値の減少をいう。本実施形態では、次の2種類の測定区間に対応する電圧降下(第1の測定区間において測定される第1の電圧降下、および、第2の測定区間において測定される第2の電圧降下)を測定する。
【0022】
第1の測定区間は、本実施形態では休止区間に等しい(すなわち休止区間の開始時点と終了時点との間の区間である)。
図2の例では、休止区間Int1における第1の電圧降下はΔVa(1)であり、休止区間Int2における第1の電圧降下はΔVa(2)である。
【0023】
以下、n番目の休止区間における第1の電圧降下をΔVa(n)と表記する。なおΔVa(n)>0とする。ΔVa(n)は、たとえば、休止直前(すなわち充電電流が流れている状態)に測定された電圧から、休止区間の終了直前(すなわち充電電流が流れていない状態)に測定された電圧を減算することによって算出可能である。また、「休止直前」とは、たとえば制御装置の動作サイクルにおいて当該休止区間の開始より前において最後に電圧測定を実行可能なタイミングを意味するが、厳密な精度を要求しない場合には実施形態に応じてこれより前のタイミングも含む。「終了直前」も同様に定義される。
【0024】
第2の測定区間は、休止開始時点から所定の遅延時間Δd後に開始され、測定時間Δt後に終了する区間である。本実施形態では、遅延時間Δdと、第2の測定区間の長さ(測定時間Δt)とは、いずれも休止区間の長さ(休止時間)の1/2である。すなわちΔd=Δt=intx/2=1(秒)である。
図2の例では、休止区間Int1における第2の電圧降下はΔVb(1)であり、休止区間Int2における第2の電圧降下はΔVb(2)である。
【0025】
以下、n番目の休止区間における第2の電圧降下をΔVb(n)と表記する。Δtは、本実施形態では1秒であるが、intxに比例して変更されてもよい。また、Δtは、intxより小さい値であればどのような値であってもよい。なおΔVb(n)>0とする。ΔVb(n)は、たとえば、休止区間の開始から1秒経過した時点の電圧から、休止区間の終了直前(すなわち充電電流が流れていない状態)の電圧を減算することによって算出可能である。このように、第1の電圧降下ΔVa(n)とは異なり、第2の電圧降下ΔVb(n)は、測定開始時点および測定終了時点のいずれも充電電流が流れていない状態で測定された電圧に基づいて算出される。
【0026】
制御装置は、各休止区間について測定された第1の電圧降下に基づき、連続する2つの休止区間について、第1の電圧降下の差分を計算する。たとえば、n−1番目の休止区間における第1の電圧降下ΔVa(n−1)と、n番目の休止区間における第1の電圧降下ΔVa(n)との差分ΔVA(n)を、ΔVA(n)={ΔVa(n)}−{ΔVa(n−1)}として計算する。
【0027】
制御装置は、このようにして求めた第1の電圧降下の差分ΔVA(n)と、第2の電圧降下ΔVb(n)とに基づき、次の段階への移行制御を実施する。たとえば、第2の電圧降下ΔVb(n)(負である場合には絶対値)が所定の閾値を超えており、かつ、第1の電圧降下の差分ΔVA(n)が増加から減少に転じた場合に、次の段階への移行制御を実施する(たとえば充電電流をI1からI2に減少させる)。
【0028】
ここで、第2の電圧降下ΔVb(n)に対する所定の閾値は、当業者であれば適宜設計可能である。
【0029】
また、「第1の電圧降下の差分ΔVA(n)が増加から減少に転じた」、すなわちΔVA(n)がピークに達したという状態の検出方法も、当業者であれば適宜設計可能である。たとえば、ΔVA(k−4)からΔVA(k−1)までが広義に単調増加しており(すなわちΔVA(k−4)≦ΔVA(k−3)≦ΔVA(k−2)≦ΔVA(k−1)であり)、かつΔVA(k−1)からΔVA(k)が真に減少している場合(すなわちΔVA(k−1)>ΔVA(k)である場合)に、ΔVA(n)はk番目の休止区間において増加から減少に転じたと判定することができる。このような判定方法によれば、単にΔVA(k−2)、ΔVA(k−1)およびΔVA(k)のみを比較する方法よりも誤差に強く、判定精度が高くなる。ただし、判定精度を重視しない場合には、単にΔVA(k−2)、ΔVA(k−1)およびΔVA(k)のみを比較して判定してもよい。
【0030】
制御装置は、このような充電段階の移行制御を、最終段階以外の各段階について実施する。たとえば、充電電流がI1である段階において、ΔVb(n)が所定の閾値を超えており、かつ、ΔVa(n)の差分ΔVA(n)が増加から減少に転じた場合に、充電電流をI1からI2に減少させる。ここで、充電電流が減少することにより、充電受入性がよくなり最適な充電が可能となるので、充電を継続し同様の制御を行う。すなわち、充電電流がI2である段階において、同様の休止区間に関する測定を継続し、ΔVb(n)が所定の閾値を超え、かつ、ΔVa(n)の差分ΔVA(n)が増加から減少に転じた場合に、充電電流をI2からI3に減少させる。
【0031】
以下、このような移行制御による効果を説明する。
図3および
図4は、「第1の電圧降下の差分ΔVA(n)が増加から減少に転じた」という条件を用いることによる効果の一部をそれぞれ説明する参考図である。
【0032】
図3は、段階の移行制御を行わずに充電開始から終了まで定電流による充電を継続した場合の、時間の経過に伴うバッテリの電圧、第1の電圧降下ΔVa(n)、およびΔVa(n)の差分ΔVA(n)の変化の例を示す参考グラフである(概略であり、各曲線の関係は必ずしも厳密なものではない)。充電中、電圧は単調に増加するが、その傾き(微分係数)は時間とともに増加し、時刻T100において変曲点に達し、その後電圧の傾きは減少する。この変曲点はバッテリの内部抵抗が変化し充電受入性が悪化する点であり、たとえば充電率100%の時点に相当する。充電率の定義は様々なものを用いることができる。たとえば、[それまでの充電量]/[前回の放電量]と定義してもよい。また、充電率は充電量と呼ばれる場合もある。充電率についてのこれ以外の公知の定義を用いてもよい。
【0033】
一般的に、充電動作は充電率が100%を超えても継続される。たとえば、充電を終了すべき目標充電率は、105%〜120%の間に設定される場合がある。ここで、充電終了時点での充電状態を精度良く制御するには、充電率が100%となった時点(またはその状態)を精度良く検出することが有効である。
【0034】
ここで、差分ΔVA(n)がピークに達する時点と、充電率が100%に達する時点とは、高い精度で一致する(
図3の例ではいずれも時刻T100に対応する)。したがって、差分ΔVA(n)が増加からピークに達し減少に転じたことを検出すれば、高い精度で充電率が100%となったと判定することができる。
【0035】
ここで、第1の電圧降下ΔVa(n)は、バッテリ電圧の絶対値の変動に対して比較的安定している。このため、1次側電圧の変動などの外乱により充電電流が変動し、この結果としてバッテリ電圧が変動した場合であっても、高い精度で充電率100%の時点を検出することができる。
【0036】
図4は、段階の移行制御を行わずに充電開始から終了まで定電流による充電を継続した場合の、充電率の増加に伴う差分ΔVA(n)の変化の例を示す参考グラフである。差分ΔVA(n)の値は温度によって異なり、低温の場合には高温の場合よりも大きくなる。また、差分ΔVA(n)のグラフが実質的に立ち上がりはじめる充電率は、低温ではCLであるが高温ではCHであり、低温の場合には高温の場合よりも早い時点で増加しはじめる。したがって、差分ΔVA(n)の絶対値や、差分ΔVA(n)が増加しはじめる時点のみを基準として充電率を判定したのでは、精度が低くなる場合がある。
【0037】
ここで、
図4に示すように、差分ΔVA(n)がピークに達する充電率は、温度に影響されず高い精度で100%に一致する。したがって、差分ΔVA(n)が増加からピークに達し減少に転じたことを検出すれば、温度によらず高い精度で、充電率が100%となったと判定することができる。
【0038】
次に、「第2の電圧降下ΔVb(n)が所定の閾値を超える」という条件を用いることによる効果の一部を説明する。
ΔVb(n)が小さい状態では、ΔVa(n)も小さいため、ΔVa(n)に発生した誤差が差分ΔVA(n)のピーク検出に影響を及ぼすおそれがある(ΔVa(n)に誤差が発生する例として、バッテリが複数のセルを備える場合に、セル間で充電率のアンバランスが生じている場合などが考えられる)。したがって、ΔVb(n)が比較的大きいという条件を追加することにより、このような誤差による影響を回避できる。
【0039】
とくに、上述のように、ΔVb(n)は、ΔVa(n)とは異なり、測定開始時点および測定終了時点のいずれも充電電流が流れていない状態で測定された電圧に基づいて算出される。したがって、とくに充電電流に起因する誤差を最小限に抑えることができる。
【0040】
さらに、第2の電圧降下ΔVb(n)の値は、ガスの発生量と高い精度で相関する(とくに図示しないが、広い範囲で実質的に比例する)。したがって、充電率とも高い精度で相関する。よって、第2の電圧降下ΔVb(n)を用いれば、高い精度で、充電率が100%となったと判定することができる。
【0041】
次に、最終段階(
図1の例では充電電流がI3である段階)における制御について説明する。
制御装置は、充電中に休止区間を設け、この休止区間において電圧を測定し、測定された電圧に基づいて充電の終了制御を行う。「充電の終了制御」とは、たとえば充電を終了すべき時刻T3を決定する処理と、この時刻T3において実際に充電電流を0とする処理とを含む。
【0042】
図5は、この休止区間における充電制御を示すグラフであり、
図1における区間Yを拡大した図である。この制御は、たとえば最終段階のみにおいて実施される。すなわち、
図1において充電電流がI3である段階において実施される。
【0043】
制御装置は、充電動作において休止区間を設ける。休止区間は所定周期で設けられる。本実施形態ではこの周期をTyとする。制御装置は、この休止区間において、所定の休止時間だけ充電を休止する(すなわち充電電流を0とする)。
図5には休止区間Int3およびInt4が示されている。
【0044】
周期Tyはたとえば5分であるが、3分〜10分であればどのような値であってもよく、また3分以下または10分以上としてもよい。ただし、一般的には最終段階ではそれより前の段階と比べて充電率の増加が緩やかになるため、周期Ty>周期Txとしておくと、充電率の判定精度をそれほど悪化させず、かつ休止区間を最小限に抑えて充電完了を早めることができる。
休止区間の長さintyは一定であり、たとえば2秒であるが、1秒〜5秒であればどのような値であってもよく、また1秒以下または5秒以上としてもよい。intx=intyとしてもよい。
【0045】
各休止区間では充電動作が休止されているので、バッテリの電圧(たとえば端子間電圧)は時間とともに減少する。制御装置は、各休止区間において、第3の測定区間において測定される第3の電圧降下を測定する。本実施形態では、第3の測定区間は、各休止区間に等しい(すなわち休止区間の開始時点と終了時点との間の区間である)。
図5の例では、休止区間Int3における第3の電圧降下はΔVc(1)であり、休止区間Int4における第3の電圧降下はΔVc(2)である。
【0046】
以下、n番目の休止区間における第3の電圧降下をΔVc(n)と表記する。なおΔVc(n)>0とする。ΔVc(n)は、たとえば、休止区間の開始直前(すなわち充電電流が流れている状態)に測定された電圧から、休止区間の終了直前(すなわち充電電流が流れていない状態)に測定された電圧を減算することによって算出可能である。
【0047】
制御装置は、このようにして求めた第3の電圧降下ΔVc(n)の値に応じて充電の終了制御を実施する。たとえば、ΔVc(n)の値が所定の閾値以下であり、かつ実質的に一定となった時点で充電を終了する。
【0048】
ここで、所定の閾値は、たとえば充電率の算定基準となる所定の状態において測定した第3の電圧降下の値に基づいて決定することができる。本実施形態では、この算定基準となる状態を、最終段階の開始時点すなわち充電率が100%である状態とするが、他の公知の方法によって算定基準を決定してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、算定基準となる状態において測定した第3の電圧降下のΔVc(0)の値に所定の比率0.8を乗算した値を閾値とするが、ΔVc(0)に基づいて算出される値であれば他の値を閾値としてもよい。
【0050】
また、ΔVc(n)が実質的に一定となったか否かの判定基準は、当業者であれば適宜設計することができるが、たとえば、所定時間内での最大値と最小値との差が所定の値以下となったか否かに基づいて判定することができる。
【0051】
図6は、このような条件を用いることによる効果の一部を説明する参考図である。この図は、劣化したバッテリおよび劣化していないバッテリのそれぞれについて、充電率に対するΔVc(n)および電解液の比重の変化を示すグラフである。この例では、ΔVc(n)/ΔVc(0)≦0.8となり、かつΔVc(n)が実質的に一定となった場合に充電を終了させている。
【0052】
液式鉛蓄電池では、電解液の比重がある適切な値(たとえば1.28程度であるが、当業者が適宜決定可能である)になった時点で充電を終了すると充電の過不足を回避できるが、比重を直接検出するのは困難である。
【0053】
しかしながら、充電率が100%に達した時点以降において、ΔVc(n)と電解液の比重とは相関を有する。
図6に示すように、劣化していないバッテリでは、充電率の上昇に伴って比重が比較的早く増加し、たとえば充電率C1(ただし105[%]<C1<120[%])において適切な目標値(たとえば1.28程度)に達する。この時点までにΔVc(n)/ΔVc(0)≦0.8となっており、また、この時点においてΔVc(n)が減少を終えほぼ一定となっている。
【0054】
一方、劣化したバッテリでは、充電率の上昇に伴う比重の上昇が比較的遅く、たとえば充電率C2(ただし105[%]<C1<C2<120[%])において適切な目標値(たとえば1.28程度)に達する。この時点までにΔVc(n)が減少を終えほぼ一定となっており、また、この時点においてΔVc(n)/ΔVc(0)≦0.8となる。
【0055】
以上のように、いずれのバッテリにおいても、ΔVc(n)/ΔVc(0)≦0.8かつΔVc(n)が実質的に一定となった時点で充電動作を終了することにより、充電率を最適な値とし、充電エネルギーを低減することができる。また、充電時間を短縮することができる。
【0056】
以上説明するように、本発明の実施の形態1に係る方法および装置によれば、第1の電圧降下ΔVa(n)の差分ΔVA(n)と、第2の電圧降下ΔVb(n)とに基づいて充電率が100%となったことを検出するので、外乱や温度に影響されず、より高い精度で適切に充電の制御を行うことができる。また、電解液の比重と相関する第3の電圧降下ΔVc(n)に基づいて充電を終了するので、バッテリの劣化状態に影響されず、最適な充電率で充電を終了することができる。
【0057】
また、
図3や
図4において示すように、充電した電気量によらず充電率が100%となったことを検出できるので、前回の放電における放電量を測定していなくても、過不足のない充電を実現するような充電段階の移行制御を実施できる。
【0058】
実施の形態1において、次のような変形を加えることができる。
最終段階への移行制御は、電流量の変更を伴わないものであってもよい。たとえば、
図1の時刻T2における移行制御では電流の値を減少させず、そのまま充電終了までI2を維持してもよい。このような場合であっても、最終段階への移行制御は、少なくとも、充電を終了するための終了条件を判定する基準状態(たとえば充電率100%の状態)を決定する処理を含むということができる。たとえば実施の形態1では、この終了条件が第3の電圧降下ΔVc(n)に基づいて判定される。
【0059】
実施の形態1では、すべての充電段階が定電流充電を行う定電流段階(CC)であるが、少なくとも1つの段階が定電流段階であればよい。また、定電圧充電を行う定電圧段階(CV)を含んでもよい。
【0060】
定電圧段階を含む場合の効果を以下に説明する。従来技術において、定電流(CC1)−定電圧(CV)−定電流(CC2)という3段階の充電を行う場合には、バッテリの状態により、最終段階(CC2)への移行時に充電率が異なる場合があるという問題があった。そこで、本発明の制御による定電流段階を少なくとも定電圧段階の直後に挿入し、たとえば定電流(CC1)−定電圧(CV)−定電流(CCα)−定電流(CC2)という4段階の充電を行えば、最終段階(CC2)への移行時の充電率を安定させることができる。とくに、CCαの段階において、小電流(たとえば0.05CA〜0.07CA)で充電を行いながら本発明を実施すると、安定した充電率で最終段階へ移行することができる。
【0061】
実施の形態1では、段階の移行制御はいずれも充電電流の変更を伴うが、変形例として、充電電流の変更を伴わないものであってもよい。たとえば、充電電流の値を変更する処理を含まず、充電を終了するための条件を決定または変更する処理を含むものであってもよい。充電を終了するための条件とは、たとえば特定の基準状態から所定電力量または所定時間だけ充電した時点で充電動作を終了するというように定義することができる。具体的には、
図1の時刻T2における移行制御として、I2=I3とし、時刻T2の後さらに、それまでに充電された電力量の10%(または5%〜20%のいずれか)だけ充電された時点で充電動作を終了するようにしてもよいし、I2=I3とし、時刻T2の後さらに所定時間だけ充電された時点で充電動作を終了するようにしてもよい。また、充電電流の値を変更するとともに充電終了の条件を決定または変更してもよい。
【0062】
第1の電圧降下Va(n)および第3の電圧降下Vc(n)は、休止直前から休止区間の終了時点までの電圧降下に限らず、休止直前から一定の測定時間が経過するまで(ただし休止区間が終了するより前)の電圧降下を用いてもよい。言い換えると、実施の形態1では休止時間と測定時間が等しいが、変形例として、測定時間を休止時間より短くしてもよい。
【0063】
また、第2の電圧降下Vb(n)は、休止区間の終了直前の区間に限らず、休止区間より先に終了する区間の電圧降下を用いてもよい。言い換えると、実施の形態1ではΔd+Δt=intxであるが、変形例として、Δd+Δt<intxとしてもよい。すなわち、休止開始時点から遅延時間Δdだけ経過した時点を測定区間の開始点とし、この開始点からさらに一定時間経過するまで(ただし休止区間が終了するより前)を測定区間の終了点としてもよい。
【0064】
実施の形態1では、最終段階において、第3の電圧降下ΔVc(n)が閾値以下であり、かつ実質的に一定となった時点で充電を終了するが、充電を終了する具体的な条件は当業者が適宜設計可能である。たとえば、第3の電圧降下ΔVc(n)が閾値以下となった時点で充電を終了してもよいし、または、第3の電圧降下ΔVc(n)が実質的に一定となった時点で充電を終了してもよい。上述のように第3の電圧降下ΔVc(n)は電解液の比重と相関するので、様々な条件を用いて適切な比重を実現することができる。
【0065】
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1において、最終段階以外の段階における段階の移行制御を変更するものである。
最終段階以外の段階では、公知の制御方法を含むいかなる制御を行ってもよい。たとえば、第1の電圧降下ΔVa(n)の絶対値が減少から増加に転じた場合に段階の移行制御を行ってもよい。また、定電流充電以外の方法を用いてもよく、たとえば定電圧充電を行う段階を含んでもよい。
【0066】
また、直前の放電動作に係るバッテリの放電量を測定しておき、これに基づいて最終段階に移行してもよい。たとえば、最終段階より前の段階においてこの放電量に等しい電力量を充電した時点で、最終段階に移行してもよい。
【0067】
このような構成であっても、最終段階では電解液の比重と相関する第3の電圧降下ΔVc(n)に基づいて充電を終了するので、バッテリの劣化状態に影響されず、最適な充電率で充電を終了することができる。
なお、実施の形態2においても、実施の形態1と同様の変形を施すことができる。