【実施例】
【0072】
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、転写用波長選択的反射フィルム及び転写成型物についての評価として以下の項目の評価を行った。
【0073】
分光反射率:波長選択的反射フィルムの裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計(「UV-1600PC」、島津製作所株式会社製)により、350〜1100nmの分光反射率(5°−5°正反射スペクトル)を測定した。
【0074】
膜厚:高屈折率層(H)及び低屈折率層(L)、加熱接着性を有する高屈折率層(TH)、加熱接着性を有する低屈折率層(TL)の乾燥硬化後の膜厚の測定は、光学積層体の断面をTEM写真で観察することにより行った。
【0075】
屈折率:一方の面に易接着層が付与されている屈折率1.65のPETフィルム〔商品名:「A4100」、東洋紡(株)製〕を基材として、易接着層が付与されていない面上に測定したい被膜を100nm程度の膜厚で形成し、反射分光膜厚計(大塚電子(株)製「FE3000」を持いてフィルム上に形成された被膜について270〜1040nmの範囲で絶対反射率を測定した。
得られた絶対反射率のスペクトルの実測値から、代表的な波長分散の近似式としてn-Cauchyの分散式を引用し、未知のパラメーターを絶対反射率のスペクトル非線形最小二乗法によって求めて、波長589nmにおける屈折率を算出した。
【0076】
加熱接着性を有する高屈折率層(TH)または加熱接着性を有する低屈折率層(TL)に含まれる熱可塑性樹脂の体積比率:
層形成用組成物に含まれる硬化前の熱可塑性樹脂(A)の体積を(VA)、比重を(dA)、配合した質量部を(WA)、熱可塑性樹脂以外の固形分(B)の体積を(VB)、平均比重を(dB)、配合した固形分の質量部を(WB)、とした場合、該組成物に含まれる熱可塑性樹脂の体積比率VA/(VA+VB)×100(%)=(WB/dA)/{(WA/dA)+(WB/dB)}×100として計算した。
【0077】
全光線透過率:NDH2000〔日本電色工業(株)製〕を用いてヘイズ値(%)を測定した。
【0078】
密着性:JISK5400に準拠し、一辺が1mmの碁盤目状に100のマス目を作り、粘着テープを全面に付着させた後、粘着テープの一端を転写物に直角に保ち、瞬間的に引き離し、剥がれないで残ったマス目の数を調べた。
【0079】
<<製造例>>
(加熱接着性を有する高屈折率層塗布液(a-1)の調製)
高屈折率層塗布液(a-1)は、酸化チタン(TiO2)微粒子分散液〔(シーアイ化成(株)製、RTTMIBK15WT%−N24、粒子径15nm)を固形分換算で78質量部、メタクリル酸メチルポリマー〔n≒7000〜7500、PMMA、東京化成工業(株)製〕22質量部を混合し、固形分濃度が10質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)を混合して得た。なお、メタクリル酸メチルポリマーは、目視で溶け残りなく溶解していることを確認した。
【0080】
(加熱接着性を有する高屈折率層塗布液(a-2)〜(a-4)の調製)
高屈折率層塗付液(a−2)〜(a−4)を、表1に示す配合(質量部及び成分)にて、高屈折率層塗布液(a-1)と同様に調製した。
【表1】
なお、表中の略称は以下の成分を示す。
TiO2:酸化チタン(TiO2)微粒子分散液、シーアイ化成(株)製、RTTMIBK15WT%−N24、粒子径15nm
ZrO2:酸化ジルコニウム(ZrO2)微粒子分散液、シーアイ化成(株)製、ZRMEK25%−F47、粒子径15nm
UV7600B:ウレタンアクリレート〔紫光(株)製、紫光UV−7600B〕
I−907:紫外線重合開始剤(BASFジャパン株式会社製、Irugacure−907)
【0081】
(重合性二重結合をもつ含フッ素ポリマーδ1の製造)
四つ口フラスコにパーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビスフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)104部とビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイドの8質量%パーフルオロヘキサン溶液11部を入れた。そして、その中空部を窒素置換した後、窒素気流下20℃で24時間撹拌して高粘度の固体を得た。得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離後に真空乾燥させて無色透明なポリマーを得た。
【0082】
このポリマーを19F−NMR(核磁気共鳴スペクトル)、1H−NMR、IR(赤外線吸収スペクトル)により分析したところ、上記アリルエーテルの構造単位からなる側鎖末端に水酸基を有する含フッ素ポリマーであった。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により測定した数平均分子量は72,000、質量平均分子量は118,000あった。
【0083】
得られたヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルポリマー5部とメチルエチルケトン(MEK)43部、ピリジン1部を四つ口フラスコ中に仕込み、5℃以下に氷冷した。そして、窒素気流下で撹拌しながらα−フルオロアクリル酸フルオライド1部をMEK9部に溶解したものを10分間かけて滴下した。そして、重合性二重結合をもつ含フッ素ポリマーδ1の溶液を得た。
【0084】
(加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b-1)の調製)
加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b-1)は、粒子径が60nmの中空シリカ微粒子55質量部と、溶媒可溶性のメタクリル酸メチルポリマー〔n≒7000〜7500、東京化成工業(株)製〕を固形分換算で45質量部とを混合し、固形分濃度が5質量%となるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)を混合して得た。
なお、メタクリル酸メチルポリマー〔n≒7000〜7500、東京化成工業(株)製〕については、目視で溶け残りなく溶解していることを確認した。
【0085】
(加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b-2)〜(b-6)の調製)
加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b−2)〜(b−6)を、表2に示す配合(質量部及び成分)にて、高屈折率層塗布液(b-1)と同様に調製した。なお、表2中のDPHAはジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの略称である。
【表2】
【0086】
(高屈折率層塗布液(c-1)の調製)
高屈折率層塗布液(c-1)は、酸化チタン(TiO2)微粒子分散液〔(シーアイ化成(株)製、RTTMIBK15WT%−N24、粒子径15nm)を固形分換算で78質量部、ウレタンアクリレート〔紫光(株)製、紫光UV−7600B〕17質量部、紫外線重合開始剤Irugacure−907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリンプロパン−1−オン)5質量部を混合し、固形分濃度が5質量%となるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)を混合して得た。
【0087】
(高屈折率層塗布液(c-2)〜(c-6)の調製)
高屈折率層塗付液(c−2)から(c−6)を、表3に示す配合(質量部及び成分)にて、高屈折率層塗布液(c-1)と同様に調製した。なお、製造例(c-1)、(c-3)には、酸化チタン(TiO2)微粒子分散液としてシーアイ化成(株)製、RTTMIBK15WT%−N24、粒子径15nmを使用した。また、製造例(c-2)、(c-4)、には、酸化ジルコニウム(ZrO2)微粒子分散液としてシーアイ化成(株)製、ZRMEK25%−F47、粒子径15nmを使用した。
なお、(c-5)、(c-6)は蒸着プロセスによって成膜できる材料((c-5)が酸化チタン(TiO2)、(c-6)が酸化ジルコニウム(ZrO2))であり、メチルイソブチルケトン(MIBK)などの溶剤を含まない。
【表3】
【0088】
(低屈折率層塗布液(d-1)の調製)
低屈折率層塗布液(d-1)は、粒子径が60nmの中空シリカ微粒子55質量部と、溶媒可溶性の含フッ素ポリマー(δ1)を固形分換算で45質量部と、光重合開始剤〔Irugacure−907〕5質量部とを、固形分濃度が5質量%となるようにイソプロピルアルコール(IPA)を混合して得た。
【0089】
(低屈折率層塗布液(d-2)〜(d-3)の調製)
低屈折率層塗布液(d−2)及び(d−3)を表4に示す配合(質量部及び成分)にて、低屈折率層塗布液(d-1)と同様に調製した。なお、(d-3)、(d-4)については、イソプロピルアルコール(IPA)の代わりにメチルイソブチルケトン(MIBK)を使用して固形分濃度が5質量%となるように調製した。
なお、(d-5)及び(d-6)は、蒸着プロセスによって成膜できる材料((d-5)はフッ化マグネシウム(MgF2)、(d-6)は酸化ケイ素(SiO2)の単一化合物)であり、イソプロピルアルコール(IPA)やメチルイソブチルケトン(MIBK)などの溶剤を含まない。
【表4】
【0090】
(転写用波長選択的反射フィルムの作製)
(
参考例1−1)
離型性を有する支持フィルムの形成:支持フィルムとして厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム片面上に、アクリルシリコーン樹脂、トルエン、メチルイソブチルケトンからなる溶液をグラビアリバースコートにより塗工し、乾燥時0.7μmの厚さの離型層を形成した。
【0091】
加熱接着性を有する高屈折率層の形成:前記離型性を有する支持フィルム上に加熱接着性を有する高屈折率層塗付液(a-1)を塗布後、乾燥し、厚さ100.00nmの加熱接着性を有する高屈折率層を形成した。
【0092】
加熱接着性を有する低屈折率層の形成:前記加熱接着性を有する高屈折率層上に加熱接着性を有する低屈折率層塗付液(b-1)を塗布後、乾燥し、厚さ145.99nmの加熱接着性を有する低屈折率層を形成した。
【0093】
以上のようにして転写用波長選択的反射フィルムを得た。得られた転写用波長選択的反射フィルムは、表面にタックの発生がなく、取扱いが容易であった。
【0094】
(
参考例1−2)
加熱接着性を有する高屈折率層を形成するために、塗布液(a−2)を用いて、乾燥後の膜厚を111.73nmとした以外は実施例1−1と同様にして転写用波長選択的反射フィルムを得た。
【0095】
(実施例2-1)
離型性を有する支持フィルム及び加熱接着性を有する高屈折率層の形成:実施例1-1と同様に、離型性を有する支持フィルム上に加熱接着性を有する高屈折率層塗布液(a-2)を塗布、乾燥し、厚さ111.73nmの加熱接着性を有する高屈折率層を形成した。
【0096】
低屈折率層の形成:前記加熱接着性を有する高屈折率層上に、低屈折率層塗布液(d-1)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ152.67nmの低屈折率層を形成した。
【0097】
高屈折率層の形成:前記低屈折率層上に、高屈折率層塗付液(c-1)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ100.00nmの高屈折率層(H12)を形成した。
【0098】
加熱接着性を有する低屈折率層の形成:前記高屈折率層上に加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b-2)を塗布し、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ141.84nmの加熱接着性を有する低屈折率層を形成した。
【0099】
以上のようにして転写用波長選択的反射フィルムを得た。得られた転写用波長選択的反射フィルムは、表面にタックの発生がなく、取扱いが容易であった。
(実施例2−2)
離型性を有する支持フィルム及び加熱接着性を有する高屈折率層の形成:実施例1-1と同様に、離型性を有する支持フィルム上に加熱接着性を有する高屈折率層塗布液(a-3)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ114.94nmの加熱接着性を有する高屈折率層を形成した。
【0100】
第1の低屈折率層の形成:前記加熱接着性を有する高屈折率層上に、低屈折率層塗布液(d-2)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ147.06nmの第1の低屈折率層を形成した。
【0101】
第1の高屈折率層の形成:第1の低屈折率層上に、高屈折率層塗付液(c-2)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ117.65nmの第1の高屈折率層を形成した。
【0102】
第2の低屈折率層の形成:第1の高屈折率層上に、低屈折率層塗布液(d-3)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ141.84nmの第2の低屈折率層を形成した。
【0103】
第2の高屈折率層の形成:第2の低屈折率層上に、高屈折率層塗付液(a-4)を塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ127.39nmの第2の高屈折率層を形成した。
【0104】
加熱接着性を有する低屈折率層の形成:第2の高屈折率層上に加熱接着性を有する低屈折率層塗布液(b−3)を塗布し、乾燥後、紫外線照射により硬化し、厚さ143.88nmの加熱接着性を有する低屈折率層を形成した。以上のようにして転写用波長選択的反射フィルムを得た。
【0105】
(実施例2−3)
表5に示される態様とした以外は実施例2−2と同様にして転写用波長選択的反射フィルムを得た。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗布液(a−1、d−4、c−3、b−4)を用いた場合は、乾燥及び紫外線照射により硬化を行った。また、塗布液(c−5、d−5)は、DCマグネトロンスパッタ法で、それぞれの材料TiO2又はMgF2(純度99.9%)をターゲットとし、純度99.5%のアルゴンをスパッタガスとして、TiO2又はMgF2が所定膜厚になるように層を形成した。
【表5】
【0106】
(
参考例3−1)
離型性を有する支持フィルムの形成:支持フィルムとして厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム片面上に、アクリルシリコーン樹脂、トルエン、メチルイソブチルケトンからなる溶液をグラビアリバースコートにより塗工し、乾燥時0.7μmの厚さの離型層を形成した。
【0107】
加熱接着性を有する低屈折率層の形成:離型性を有する支持フィルム上に加熱接着性を有する低屈折率層塗付液(b-5)を塗布、乾燥後、紫外線照射して硬化し、厚さ86.21nmの加熱接着性を有する低屈折率層を形成した。
【0108】
加熱接着性を有する高屈折率層の形成:加熱接着性を有する低屈折率層上に加熱接着性を有する高屈折率層塗付液(a−1)を塗布後、乾燥し、厚さ62.50nmの加熱接着性を有する高屈折率層を形成した。以上のようにして転写用波長選択的反射フィルムを得た。
【0109】
(実施例4−1〜4−3)
表6に示される態様とした以外は、実施例3−1と同様にして、転写用波長選択的反射フィルムを得た。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗付液(a−3、a−4、b−3、c−2、c−3、c−4、d−1)を用いた場合は、乾燥及び紫外線照射により硬化を行い、活性エネルギー線硬化性樹脂以外の樹脂を含む塗付液(a−2、b−1、b−6)を用いた場合は、乾燥のみによって硬化を行った。また、樹脂を含まない塗付液(c−6、d−6)は、DCマグネトロンスパッタ法で、それぞれの材料ZrO2又はSiO2(純度99.9%)をターゲットとし、純度99.5%のアルゴンをスパッタガスとして、ZrO2又はSiO2が所定膜厚になるように形成した。以上のようにして転写用波長選択的反射フィルムを得た。
【表6】
【0110】
(転写用波長選択的反射フィルムを用いた転写成型物の作製)
(
参考例5−1)
アクリル樹脂板よりなる転写対象物(平面転写物)への波長選択的反射層の転写:
参考例1−1にて得られた転写用波長選択的反射フィルムの最表面に位置する加熱接着性を有する低屈折率層が転写対象物に接するようにして表面が鏡面状のステンレス鋼板で挟み込んだ。ステンレス鋼板の上から加圧(3923kPa)し、130℃で5分間加熱した。加熱後常温に戻し、支持フィルムを剥がした。このようにして、転写対象物の下面に、加熱接着性を有する低屈折率層を介して、加熱接着性を有する高屈折率層が転写され、加熱接着性を有する低屈折率層及び加熱接着性を有する高屈折率層の2層からなる反射層が1単位だけ設けられた転写物を得た。
【0111】
反射層が1単位設けられた転写対象物への反射層の繰り返し転写:前記転写物の加熱接着性を有する高屈折率層上に、2枚目の転写用波長選択的反射フィルムの加熱接着性を有する低屈折率層が接するようにして、表面が鏡面状のステンレス鋼板で挟み込んだ。ステンレス鋼板の上から加圧(3923kPa)し、130℃で5分間加熱した。加熱後常温に戻し、支持フィルムを剥がした。このようにして、波長選択的反射層が2単位設けられた転写物を得た。
【0112】
以下、波長選択的反射層が設けられた転写物を転写対象物として、同様の手法で波長選択的反射層が5単位設けられた波長選択的反射物品を得た。
表7に示すように、得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が94.1%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0113】
(
参考例5−2)
参考例1-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに
参考例1−2で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用し、樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層(6)の積層単位)を5回から7回へと変更した以外は、実施例5−1と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が93.8%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0114】
(実施例5−3)
参考例1-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例2−1で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用し、転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を5回から3回へと変更した以外は、実施例5−1と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が95.1%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0115】
(実施例5−4)
参考例1-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例2−2で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用して、転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を5回から3回へと変更した以外は、実施例5−1と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が90.8%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0116】
(実施例5-5)
参考例1-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例2−3で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用して、転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を5回から3回へと変更した以外は、実施例5−1と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が98.8%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0117】
(比較
参考例5−1)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を5回から1回へと変更した以外は、
参考例5−1と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が27.1%と実施例5-1よりも低いことを確認した。
【0118】
(比較
参考例5−2)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を7回から1回へと変更した以外は、
参考例5−2と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が19.0%と実施例5-2よりも低いことを確認した。
【0119】
(比較例5−3)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を3回から1回へと変更した以外は、実施例5−3と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が48.6%と実施例5-3よりも低いことを確認した。
【0120】
(比較例5−4)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を3回から1回へと変更した以外は、実施例5−4と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が40.7%と実施例5-4よりも低いことを確認した。
【0121】
(比較例5−5)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を2回から1回へと変更した以外は、実施例5−5と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である800nmの波長光に対する反射率が83.6%と実施例5-5よりも低いことを確認した。
【0122】
そして、得られた波長選択的反射層の転写物について、ヘイズ、密着性、反射率を測定した。その結果を表7に示した。
【表7】
【0123】
表7に示したように、実施例5-1〜実施例5−5では800nmの波長光に対する反射率が選択的に高く、かつ、ヘイズの値も小さいため透明性に優れ、密着性も良好であった。
【0124】
(
参考例6−1)
参考例1-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに
参考例3−1で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用して、樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を5回から6回へと変更した以外は、実施例5−1と同様の条件で転写成型物を得た。
ただし、実施例5-1では、実施例1−1にて得られた転写用波長選択的反射フィルムの離型性を有する支持フィルムとは反対側の最表面に配する加熱接着性を有する低屈折率層が転写対象物に接するようにして熱圧着したが、実施例3-1の転写用波長選択的反射フィルムは、加熱接着性を有する高屈折率層(TH)が離型性を有する支持フィルムとは反対側の最表面に配するされているため、低屈折率層(TL)ではなく、加熱接着性を有する高屈折率層(TH)を転写対象物へ接するようにして熱圧着した。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である500nmの波長光に対する反射率が93.6%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0125】
(実施例6−2)
参考例3-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例4−1で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用して、樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を6回から4回へと変更した以外は、実施例6−1と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である500nmの波長光に対する反射率が97.6%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0126】
(実施例6−3)
参考例3-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例4−2で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用して、樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を6回から4回へと変更した以外は、実施例6−1と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である500nmの波長光に対する反射率が97.4%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0127】
(実施例6−4)
参考例3-1で作製した転写用波長選択的反射フィルムの代わりに実施例4−3で作製した転写用波長選択的反射フィルムを使用して、樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を6回から3回へと変更した以外は、実施例6−1と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である500nmの波長光に対する反射率が97.8%と最も高く、透明性があり、膜の密着性が良好な波長選択的反射物品であることを確認した。
【0128】
(比較
参考例6−1)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を6回から1回へと変更した以外は、
参考例6−1と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である500nmの波長光に対する反射率が1.5%と実施例6-1よりも低いことを確認した。
【0129】
(比較例6−2)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を4回から1回へと変更した以外は、実施例6−2と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である500nmの波長光に対する反射率が20.4%と実施例6-2よりも低いことを確認した。
【0130】
(比較例6−3)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を4回から1回へと変更した以外は、実施例6−3と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である500nmの波長光に対する反射率が19.7%と実施例5-1よりも低いことを確認した。
【0131】
(比較例6−4)
樹脂板への転写回数(=樹脂板への波長選択的反射層の積層単位)を3回から1回へと変更した以外は、実施例6−4と同様の条件で転写成型物を得た。
得られた転写成型物は、ターゲット波長である500nmの波長光に対する反射率が38.7%と実施例6-4よりも低いことを確認した。
【0132】
そして、得られた波長選択的反射層の転写物について、ヘイズ、密着性、反射率を測定した。その結果を表8に示した。
【表8】
【0133】
表8に示したように、
参考例6−1、実施例
6-2〜実施例6−4では500nmの波長光に対する反射率が選択的に高く、かつ、ヘイズの値も小さいため透明性に優れ、密着性も良好であった。
【0134】
更に、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
前記加熱処理の温度は、80℃以上であることを特徴とする転写用波長選択的反射フィルムの転写方法である。この転写方法によれば、加熱処理により離型性を有する支持フィルムとは反対側の最表面に配する加熱接着性を有する層を転写対象物に確実に密着させることができる。具体的には、熱可塑性樹脂シートに対して加熱されたシリコンゴムロールや鏡面金属ロールを利用してロールトゥーロールで転写用波長選択的反射フィルムを熱圧着する方法や、インモールド成型と呼ばれる金型のキャビティ面に前記転写用波長選択的反射フィルムを設定して溶融した熱可塑性樹脂を射出成型し、転写用波長選択的反射層を成型と同時に一体化する方法などが挙げられる。
【0135】
前記転写対象物に対してコロナ処理や大気プラズマ処理をすることで、転写対象物への密着性を向上させることができるとともに、加熱接着性を有する層と転写対象物との一体化を十分に行うことができる。