特許第6236934号(P6236934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236934
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】増幅装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/24 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   H03F3/24
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-139033(P2013-139033)
(22)【出願日】2013年7月2日
(65)【公開番号】特開2015-12578(P2015-12578A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】馬庭 透
(72)【発明者】
【氏名】木村 重一
(72)【発明者】
【氏名】青木 信久
【審査官】 ▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−303771(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/126559(WO,A1)
【文献】 特開2008−135829(JP,A)
【文献】 特開2010−135941(JP,A)
【文献】 特開2009−213090(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0273234(US,A1)
【文献】 特開2001−257546(JP,A)
【文献】 特開平05−029851(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086015(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を、所定の振幅で、入力信号の振幅に依存した位相差を有する第1信号及び第2信号に分離する振幅位相変換部と、
前記振幅位相変換部で変換された前記第1信号を増幅する第1増幅部と、
前記第1増幅部に接続された主線路と、一端が前記主線路に接続され、前記主線路の外側に配置され、前記第1増幅部から発生する高調波をショートする線路長を有する第1高調波処理回路を含む第1整合回路と、
前記振幅位相変換部で変換された前記第2信号を増幅する第2増幅部と、
前記第2増幅部に接続された主線路と、一端が前記主線路に接続され、前記主線路の外側に配置され、前記第2増幅部から発生する高調波をショートする線路長を有する第2高調波処理回路を含む第2整合回路と、
前記第1整合回路の出力と前記第2整合回路の出力とを合成する出力合成部とを備え、
前記第1増幅部の出力側から前記主線路を介した前記第1高調波処理回路までの距離と前記第2増幅部の出力側から前記主線路を介した前記第2高調波処理回路までの距離とを異ならせる
増幅装置。
【請求項2】
前記第2整合回路と前記出力合成部との間に基本波長の1/2波長よりも短い電気長を有する伝送線路をさらに備え、
前記第1整合回路と前記合成出力部とは直接接続される
請求項1に記載の増幅装置。
【請求項3】
高周波信号が並列に入力されるキャリアアンプとピークアンプを備え、
前記キャリアアンプに並列に接続される第1高調波処理回路を含む第1整合回路と、
前記ピークアンプに並列に接続される第2高調波処理回路を含む第2整合回路と、
前記第1整合回路に接続され、基本波長の1/4波長よりも短い電気長を有する伝送線路とを備え、
前記第1整合回路における前記キャリアアンプの出力側から前記第1高調波処理回路の接続位置までの距離と、前記第2整合回路における前記ピークアンプの出力側から前記第2高調波処理回路の接続位置までの距離とが異なり、
前記第1高調波処理回路の前記接続位置は、前記キャリアアンプの高調波の反射位相が容量性となる位置であり、前記第2高調波処理回路の前記接続位置は、前記ピークアンプの高調波の反射位相が誘導性となる位置である
増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話ネットワーク等の無線基地局は、CDMA信号やOFDM信号を増幅し、送信する。これらの信号の送信電力の平均値とピーク値の差は、10dB程度から7dB程度である。通常の高周波電力増幅器では、ピーク出力電力の電源−高周波電力変換効率が高くても、平均出力電力付近の効率は低くなり、消費電力が増大するという課題があった。そのため、高周波電力増幅器の形式として、Doherty(ドハティ)型増幅器やOut Phasing(アウトフェージング)型増幅器といった形式が開発され、平均出力電力付近でも効率を高くできるようになり、消費電力が低減されている。
【0003】
一般に、無線基地局では、送信信号は、信号処理部において、ピーク電力を抑圧したり、予歪みをあたえる信号処理をされたりしてから増幅器に入力される。
【0004】
図1は、Doherty型増幅器の構成例を示す図である。信号処理部で、信号処理をされた信号は、送信する周波数に周波数変換され、2分岐された後にキャリアアンプ及びピークアンプのそれぞれに入力される。キャリアアンプは、通常、B級からAB級にバイアスされ、入力信号電力が低い領域から動作する。一方、ピークアンプは、通常、C級にバイアスされ、入力信号電力が低い領域では動作しておらず、増幅素子はオフとなって、消費電力は低く抑えられる。入力信号電力があるレベルまではキャリアアンプだけが動作している。増幅器の効率は、そのレベルで極大となる。そのレベルを越えるとピークアンプが動作し始め、出力電力は増加していく。増幅器の効率はいったん下がるが両方のアンプが飽和領域に達する時点で再び極大となる。Doherty型増幅器では、キャリアアンプと出力結合点との間にλ/4線路が挿入される。λ/4線路は、ピークアンプがオフのときに出力負荷インピーダンスをキャリアアンプの高効率動作点近くに変換する役割を有する。なお、λは一般に中心周波数における波長を意味する。
【0005】
図2は、Out Phasing型増幅器の構成例を示す図である。信号処理部で、信号処理をされた信号は、振幅位相変換部において、一定の振幅で2つの位相が異なる信号に分離される。信号は、信号の振幅が0の時は逆相の2つの信号に、信号の振幅が最大の時は同相の2つの信号に、分離される。分離された2つの信号はそれぞれ送信する周波数に周波数変換され、増幅素子に入力される。増幅素子は常に一定の振幅が入力されるので、高効率な動作が可能である。それぞれの増幅素子の出力は、合成器でベクトル合成される。その結果、出力では送信信号が増幅された信号として出力される。合成器は、通常、その長さが合計で1/2波長となる第1伝送線路、第2伝送線路を結合した構造となる。Out Phasing型増幅器の効率は、ピーク出力電力よりも低い出力電力でも高効率となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−213090号公報
【特許文献2】特開2008−135829号公報
【特許文献3】特開2012−134823号公報
【特許文献4】特開2005−57703号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S. C. Cripps, P. J. Tasker, A. L. Clarke, J. Lees, J.Benedikt, "On the Continuity of High Efficiency Modes in Linear RF Power Amplifiers, "IEEE Microwave and Wireless Components Letters, vol. 19, no. 10, pp. 665-667, Oct. 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
携帯電話では音声通信よりもデータ通信の比率が多くなり、より高速なデータ通信が期待されている。高速なデータ通信には、信号の広帯域化が求められる。Doherty型増幅器やOut Phasing型増幅器では、回路中に1/4波長線路や合計で1/2波長となる線路を含むため、広帯域化がしにくいという課題が発生している。例えば1/4波長線路ならば、帯域の中心周波数では1/4波長となるが、帯域の下端では波長に対して線路が短くなり1/4波長よりも短い線路となる。帯域の上端では波長に対して線路が長くなり1/4波長よりも長い線路となる。
【0009】
図3は、通常のOut Phasing型増幅器の構成例を示す図である。第1増幅素子、第2増幅素子は、同じ増幅素子であり、同じバイアス条件に設定されている。また、第1出力整合回路と第2出力整合回路の電気的特性は、同一である。第1出力整合回路及び第2出力整合回路は、それぞれ、主線路、基本波整合回路、高調波処理回路を有する。高調波処理回路は、基本波の負荷が実数で表されるときに効率が最も高くなる位相の条件の位置に設置される。基本波は、増幅器で増幅される信号の周波数帯の中心の周波数の波である。基本波長は、基本波の波長である。基本周波数は、基本波の周波数である。出力の結合点までに電気長α、電気長βの線路(伝送線路)を用いて接続するとそれぞれの増幅素子は低い出力電力でも高効率で動作する。なお、電気長αと電気長βとの和は、基本波の1/2波長(伝搬位相ではπ)となる。
【0010】
さらに、図4は、図3の構成例の実装を示す図である。図3に示す第1増幅素子の入力側は、入力基板1に相当する。また、第2増幅素子の入力側は、入力基板2に相当する。図3に示す第1、第2出力整合回路及び結合回路及び出力は、出力基板に形成される主線路パターンや高調波回路や基本波整合回路等に相当する。図4は、図3での増幅動作と同じである。ただし、図3図4とでは、扱う入力信号の周波数が違うため、高調波回路と基本整合回路のスタブ長に違いがあるが、実質同じ動作をする。たとえば、高調波回路を構成するスタブ長は、それら増幅素子から発生する高調波をショートする、つまり反射させるための長さとなる線路長を備えている。
【0011】
図5は、図3のOut Phasing型増幅器の増幅素子から出力側を見た場合の負荷を表すスミスチャートを示す図である。図5のスミスチャートでは、横軸方向は、反射係数の実数部で、縦軸方向は反射係数の虚数部である。反射係数と負荷とは一対一の関係にある。これ以降のスミスチャートの図でも同様である。楕円状の閉曲線10は、増幅素子負荷の効率の等高線の例で、この増幅素子に整合回路を接続した後の点から出力側の負荷を可変した場合に効率が高くなる条件(効率が所定値である位置)を示している。閉曲線10の内側ほど、効率が高い。閉曲線10で囲まれる領域は、効率が所定値より高い領域(所定値より高い効率で動作する負荷の領域)である。広い出力範囲でこの閉曲線10の内側により近い負荷が実現できれば、増幅器は高効率に動作する。
【0012】
一方、実線20は出力合成点から第1増幅素子側を見込んだ負荷の値であり、破線30は出力合成点から第2増幅素子を見込んだ負荷の値である。Out Phasing型増幅器で振幅−位相変換された信号では、位相を変化させた時の結合点からそれぞれの増幅素子を見込む負荷は、位相差が0°から180°に変わるとスミスチャートの中心から外側へ動く。閉曲線10にこの負荷軌跡を近づけようとするには、出力合成点と第1増幅素
子との間に位相角度αを実現する線路を挿入し、スミスチャート上の位相を回転させる。実線22は、回転後の、出力合成点から第1増幅素子側を見込んだ負荷の値である。実線22は、実線20に対して、出力最大点を中心に角度2α回転している。さらに、出力合成点と第2増幅素子の間に位相角度βを実現する線路を挿入し、位相を回転させる。実線32は、回転後の、出力合成点から第2増幅素子側を見込んだ負荷の値である。実線32は、実線30に対して、出力最大点を中心に角度2β回転している。
【0013】
位相角度αを実現する線路の長さと位相角度βを実現する線路の長さとを加えた通過位相は、一般的にはπとなる。通過位相は、増幅帯域の中心周波数で正しい値となるが、帯域の上限と下限の周波数では中心周波数と波長が異なるため、線路長が長いと広帯域に性能を実現するのは困難である。
【0014】
一般的な設計では、2倍波(2次高調波)の反射位相は、2つの増幅素子共に同じ値に設定されている。ここでは、2倍波(2次高調波)は、短絡状態に設定されている。
【0015】
本件開示の技術は、高効率で広帯域の増幅装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様は、
入力信号を、所定の振幅で、入力信号の振幅に依存した位相差を有する第1信号及び第2信号に分離する振幅位相変換部と、
振幅位相変換部で変換された前記第1信号を増幅する第1増幅部と、
前記第1増幅部に接続された主線路と、一端が前記主線路に接続され、前記主線路の外側に配置され、前記第1増幅部から発生する高調波をショートする線路長を有する第1高調波処理回路を含む第1整合回路と、
振幅位相変換部で変換された前記第2信号を増幅する第2増幅部と、
前記第2増幅部に接続された主線路と、一端が前記主線路に接続され、前記主線路の外側に配置され、前記第2増幅部から発生する高調波をショートする線路長を有する第2高調波処理回路を含む第2整合回路と、
第1整合回路の出力と第2整合回路の出力とを合成する出力合成部とを備え、
前記第1増幅部の出力側から前記主線路を介した前記第1高調波処理回路までの距離と前記第2増幅部の出力側から前記主線路を介した前記第2高調波処理回路までの距離とを異ならせる
増幅装置である。
【発明の効果】
【0017】
開示の技術によれば、高効率で広帯域の増幅装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、Doherty型増幅器の構成例を示す図である。
図2図2は、Out Phasing型増幅器の構成例を示す図である。
図3図3は、通常のOut Phasing型増幅器の構成例を示す図である。
図4図4は、図3の構成例の実装を示す図である。
図5図5は、図3のOut Phasing型増幅器の増幅素子から出力側を見た場合の負荷を表すスミスチャートを示す図である。
図6図6は、本実施形態の増幅装置100の構成例を示す図である。
図7図7は、図6の構成例の具体的な実装の一例を示す図である。
図8図8は、出力合成点から第1増幅素子を見た負荷の例を表すスミスチャートを示す図である。
図9図9は、出力合成点から第2増幅素子を見た負荷の例を表すスミスチャートを示す図である。
図10図10は、増幅装置100の出力と効率との関係のグラフを示す図である。
図11図11は、本実施形態の増幅装置1100の構成例を示す図である。
図12図12は、出力合成点から第2増幅素子を見た負荷の例を表すスミスチャートを示す図である。
図13図13は、本実施形態の増幅装置400の構成例を示す図である。
図14図14は、出力合成点から第1増幅素子を見た負荷の例を表すスミスチャートを示す図である。
図15図15は、出力合成点から第2増幅素子を見た負荷の例を表すスミスチャートを示す図である。
図16図16は、本実施形態の増幅装置700の構成例を示す図である。
図17図17は、図1のDoherty型増幅器のキャリアアンプの負荷の動きを表すスミスチャートを示す図である。
図18図18は、増幅装置700のキャリアアンプの負荷の動きを表すスミスチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、開示の構成は、開示の実施形態の具体的構成に限定されない。開示の構成の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0020】
〔実施形態〕
Doherty型増幅器やOut Phasing型増幅器は2つの増幅素子のそれぞれの整合回路の出力側で1/4波長線路、または、合計で1/2波長となる線路を介して出力に結合する。これらの線路の役割は、基本周波数における効率が最良となる最適負荷の実現である。一般的に、整合回路には、増幅素子をより高効率に動作させるために高調波を反射させる高調波処理回路が接続される。増幅素子の高調波処理回路の反射位相を、通常の設計法(F級増幅器、逆F級増幅器等)と異なるものにすると、高効率を実現する基本波の負荷条件が変わる。つまり、基本波の最適負荷を実現する回路の線路長は、高調波処理回路の位置で制御され得るということである。高調波処理回路の位置を線路が短くなるように決定することによって、出力での結合回路を短縮化もしくは省略でき、広帯域化を図ることができる。
【0021】
(構成例1−1)
図6は、本構成例の増幅装置100の構成例を示す図である。増幅装置100は、Out Phasing型の増幅装置である。図6の増幅装置100は、振幅位相変換部102、第1増幅素子112、第1出力整合回路150、第2増幅素子122、第2出力整合回路160、出力合成点130を含む。第1出力整合回路150は、高調波処理回路114、基本波整合回路116、主線路118を含む。第2出力整合回路160は、高調波処理回路124、基本波整合回路126、主線路128を含む。
【0022】
振幅位相変換部102は、入力される信号S(t)を、入力される信号の振幅に依存した位相差を有する2つの同一振幅の信号に変換する。振幅位相変換部102は、変換した一方の信号を第1増幅素子112に、他方の信号を第2増幅素子122に出力する。第1増幅素子112に出力される信号S1(t)及び第2増幅素子122に出力される信号S2(t)は、次のように表される。
【0023】
【数1】
ここで、Mは、入力される信号S(t)の最大値である。また、θは、信号S(t)の振幅に基づく信号S1(t)と信号S2(t)との位相差を半分にしたものである。M及びθは、次のように表される。
【0024】
【数2】
θが0のとき、増幅装置100の出力信号の振幅は最大で、θがπ/2のとき増幅装置100の出力信号の振幅は0となる。
【0025】
第1増幅素子112は、信号S1(t)を増幅する。信号S1(t)の振幅Mは、一定
である。そのため、第1増幅素子112として、振幅Mの信号を高効率に増幅できる素子が選択される。
【0026】
高調波処理回路114は、増幅装置100の2次高調波に対してインピーダンスを決定するための回路である。高調波処理回路114は、基本波の負荷が実数で表されるときに効率が最も高くなる位相の条件の位置よりも、第1増幅素子112に近い位置に配置される。このように配置されることで、高調波の反射位相は、容量性になる。高調波処理回路114は、例えば、2次高調波の場合は基本波の1/8波長のオープンスタブである。高調波処理回路114は、第1増幅素子112に並列に接続される。
【0027】
基本波整合回路116は、増幅装置100の基本波(基本周波数)に対してインピーダンス整合を取るための回路である。
【0028】
主線路118は、第1増幅素子112と出力合成点130との間に存在する。高調波処理回路114、基本波整合回路116は、主線路118に接続される。
【0029】
第2増幅素子122は、信号S2(t)を増幅する。信号S2(t)の振幅Mは、一定
である。そのため、第2増幅素子122そして、振幅Mの信号を高効率に増幅できる素子が選択される。
【0030】
ここで、第1増幅素子112の振幅Mに対する増幅率をA、第2増幅素子122の振幅Mに対する増幅率をBとすると、第1増幅素子112の出力信号S11(t)、第2増幅
素子122の出力信号S21(t)は、次のように表される。
【0031】
【数3】
高調波処理回路124は、増幅装置100の基本波の2次高調波に対してインピーダンスを決定するための回路である。高調波処理回路124は、基本波の負荷が実数で表されるときに効率が最も高くなる位相の条件の位置よりも、第2増幅素子122から遠い位置に配置される。このように配置されることで、高調波の反射位相は、誘導性になる。高調波処理回路124は、例えば、2次高調波の場合は基本波の1/8波長のオープンスタブである。高調波処理回路124は、第2増幅素子122に並列に接続される。
【0032】
高調波処理回路114の第1増幅素子112に対する位置は、高調波処理回路124の第2増幅素子122に対する位置と異なる。
【0033】
基本波整合回路126は、増幅装置100の基本波(基本周波数)に対してインピーダンス整合を取るための回路である。
【0034】
主線路128は、第2増幅素子122と出力合成点130との間に存在する。高調波処理回路124、基本波整合回路126は、主線路128に接続される。
【0035】
第1増幅素子112及び第2増幅素子122の出力は、基本波の整合をとった後、出力合成点130で、直接結合される。
【0036】
出力合成点130における第1増幅素子112側の反射係数ρ1は、次のように記載される。ここで、第1増幅素子112の出力の振幅の半分が出力合成点130で反射し、第2増幅素子122の出力の振幅の半分が出力合成点130から第1増幅素子122側に入射するとする。
【0037】
【数4】
Out Phasing型増幅器において、第1増幅素子112の増幅率Aと第2増幅素子122の増幅率Bとは、等しい。このこと(A=B)を利用すると、反射係数ρ1は、次のように記載される。
【0038】
【数5】
同様にして、第2増幅素子122側の反射係数ρ2は、次のように記載される。
【0039】
【数6】
さらに、図7は、図6の構成例の具体的な実装の一例を示す図である。図6に示す第1増幅素子112の入力側および第2増幅素子122の入力側は、入力基板140に相当する。図6に示す第1、第2出力整合回路(150、160)及び出力は、出力基板150に形成される主線路160のパターンや高調波処理回路(114、124)や基本波整合回路(116、126)等に相当する。図7は、図6での増幅動作と同じである。ただし、図6図7とでは、扱う入力信号の周波数が違うため、高調波処理回路と基本波整合回路のスタブ長に違いがあるが、実質同じ動作をする。
【0040】
図8は、出力合成点から第1増幅素子を見た負荷の例を表すスミスチャートを示す図である。楕円状の閉曲線210は、図5の閉曲線10と同様である。閉曲線212は、楕円状であり、第1増幅素子112に整合回路を接続した後の点から出力側の負荷を可変した場合に効率が高くなる領域(条件)を示している。閉曲線212の内側は、効率が所定値より高い領域である。実線220は、出力合成点130から第1増幅素子112側を見込んだ負荷の値である。破線230は、出力合成点130から第2増幅素子122側を見込んだ負荷の値である。
【0041】
第1増幅素子112側の2倍波(2次高調波)の反射位相が容量性にずらされると、閉曲線212は、閉曲線210に比べて、誘導側にずれる。閉曲線212は、実線220に近づく。したがって、Out Phasing型増幅器である増幅装置100で振幅−位相変換された信号で、位相を変化させた時の出力合成点130から第1増幅素子112を見込む負荷の近くに第1増幅素子112の最適負荷条件を設定することが可能となる。即ち、増幅装置100は、伝送線路を用いることなく、効率が高くなる領域を、出力合成点130から第1増幅素子112を見込む負荷に近づけることができる。
【0042】
図9は、出力合成点から第2増幅素子を見た負荷の例を表すスミスチャートを示す図である。楕円状の閉曲線310は、図5の閉曲線10と同様である。閉曲線312は、楕円状であり、第2増幅素子122に整合回路を接続した後の点から出力側の負荷を可変した場合に効率が高くなる領域(条件)を示している。閉曲線312の内側は、効率が所定値より高い領域である。実線320は、出力合成点から第1増幅素子112側を見込んだ負荷の値である。実線320は、上記の反射係数ρ1のθを0からπ/2まで変化させた時の軌跡である。破線330は、出力合成点から第2増幅素子122側を見込んだ負荷の値である。破線330は、上記の反射係数ρ2のθを0からπ/2まで変化させた時の軌跡である。
【0043】
第2増幅素子122側の2倍波(2次高調波)の反射位相が誘導性にずらされると、閉曲線312は、閉曲線310に比べて、容量側にずれる。即ち、閉曲線312は、破線330に近づく。したがって、Out Phasing型増幅器である増幅装置100で振幅−位相変換された信号で、位相を変化させた時の出力合成点130から第2増幅素子122を見込む負荷の近くに第2増幅素子122の最適負荷条件を設定することが可能となる。即ち、増幅装置100は、伝送線路を用いることなく、効率が高くなる領域を、出力合成点130から第2増幅素子122を見込む負荷に近づけることができる。
【0044】
図10は、増幅装置100の出力と効率との関係のグラフを示す図である。図10のグラフの横軸は出力であり、縦軸は効率である。増幅装置100は、前段の装置からの入力信号等により、出力の振幅の範囲が予め決定され得る。そのため、予め決定される出力の振幅の所定の範囲において、増幅装置の効率が最も高くなるように、高調波処理回路114、高調波処理回路124の位置が決定されることが望ましい。即ち、図10のように、出力の範囲がPからQまでであるとすると、高調波処理回路114及び高調波処理回路124の位置が、PからQまでの効率の積分が最も大きくなるように、決定されることが望ましい。
【0045】
増幅装置100は、2つの増幅素子の2倍波反射位相をそれぞれ上記のようにずらして設定することによって、出力結合点130と各増幅素子の整合回路の間に位相回転のための伝送線路を挿入せずに高効率動作が可能な最適な負荷を実現できる。線路長をゼロにできるため、広帯域に最適な動作が実現できる。
【0046】
(構成例1−2)
構成例1−2は、構成例1−1と共通点を有する。ここでは、主として、相違点について説明し、共通点については、説明を省略する。
【0047】
構成例1−1では、高効率となる負荷の範囲が出力合成点から各増幅素子側を見込んだ負荷の軌跡に近づくように、主線路に接続する高調波処理回路の一方が、容量性の方向に移動され、他方が誘導性の方向に移動される。しかしながら、主線路に接続する高調波処理回路が移動できる範囲は、主線路等の物理的形状等に依存する所定の範囲内となる。従って、増幅装置によっては、構成例1−1の構成では、高効率となる負荷の範囲を出力合成点から各増幅素子側を見込んだ負荷の軌跡に近づけることが難しいことがある。ここでは、主線路と出力合成点の間に伝送線路を挿入して負荷軌跡を回転させることによって、高効率となる負荷の範囲が出力合成点から各増幅素子側を見込んだ負荷の軌跡に近づくようにする。
【0048】
図11は、本構成例の増幅装置1100の構成例を示す図である。増幅装置1100は、Out Phasing型の増幅装置である。図11の増幅装置1000は、振幅位相変換部1102、第1増幅素子1112、第1出力整合回路1150を含む。さらに、増幅装置1100は、第2増幅素子1122、第2出力整合回路1160、伝送線路1129、出力合成点1130を含む。第1出力整合回路1150は、高調波処理回路1114、基本波整合回路1116、主線路1118を含む。第2出力整合回路1160は、高調波処理回路1124、基本波整合回路1126、主線路1128を含む。
【0049】
振幅位相変換部1102、出力合成点1130の構成は、増幅装置100の振幅位相変換部102、出力合成点130の構成と同様である。第1増幅素子1112、高調波処理回路1114、基本波整合回路1116、主線路1118の構成は、増幅装置100の第1増幅素子112、高調波処理回路114、基本波整合回路116、主線路118の構成と同様である。また、第2増幅素子1122、高調波処理回路1124、基本波整合回路1126、主線路1128の構成は、増幅装置100の第2増幅素子122、高調波処理回路124、基本波整合回路126、主線路128の構成と同様である。
【0050】
伝送線路1129は、主線路1128と出力合成点1130との間に挿入される。伝送線路1129は、電気長が位相角度γ(<π)の伝送線路(インピーダンス変換回路)である。伝送線路1129により、出力の位相が角度2γ回転する。伝送線路1129により、スミスチャートにおける出力合成点1130から第2増幅素子1122側を見込んだ負荷の軌跡は、伝送線路1129を挿入しない場合と比較して、出力最大点を中心に、角度2γ回転する。
【0051】
図12は、出力合成点から第2増幅素子を見た負荷の例を表すスミスチャートを示す図である。楕円状の閉曲線1310は、図5の閉曲線10と同様である。閉曲線1314は、楕円状であり、第2増幅素子1122に整合回路を接続した後の点から出力側の負荷を可変した場合に効率が高くなる領域(条件)を示している。実線1320は、出力合成点から第1増幅素子1112側を見込んだ負荷の値である。破線1330は、図9の破線330と同様である。破線1332は、出力合成点から第2増幅素子1122側を見込んだ負荷の値である。出力合成点1130と主線路1128の間に位相角度γを実現する伝送
線路が挿入されることにより、出力合成点1130から第2増幅素子1122側を見込んだ負荷の軌跡が、出力最大点を中心に角度2γ回転する。
【0052】
第2増幅素子1122側の2倍波(2次高調波)の反射位相が誘導性にずらされると、閉曲線1314は、閉曲線1310に比べて、容量側にずれる。即ち、閉曲線1314は、破線1330に近づく。しかし、主線路1128等の物理的形状等により、さらに誘導性に移動することが難しい場合がある。このとき、高調波処理回路の位置の調整では、効率の高い増幅装置を実現することが難しい。そこで、増幅装置1100では、電気長γの伝送線路1129を主線路1128と出力合成点1130との間に挿入することによって、負荷軌跡を出力最大点を中心に角度2γ回転させ、負荷軌跡が効率が高い位置になるように調整する。
【0053】
このようにして、増幅装置1100で振幅−位相変換された信号で、位相を変化させた時の出力合成点1130から第2増幅素子1122を見込む負荷の近くに第2増幅素子1122の最適負荷条件を設定することが可能となる。即ち、増幅装置1100は、電気長π(λ/2)より短い伝送線路を用いて、効率が高くなる領域を、出力合成点1130から第2増幅素子1122を見込む負荷の軌跡に近づけることができる。
【0054】
主線路1128と出力合成点1130との間の伝送線路1129の代わりに、主線路1118と出力合成点1130との間に伝送線路が挿入されてもよい。このとき、出力合成点1130から第1増幅素子1112を見込む負荷の軌跡が伝送線路の電気長に基づいて回転される。また、主線路1118と出力合成点1130との間、及び、主線路1128と出力合成点1130との間に、伝送線路が挿入されてもよい。
【0055】
増幅装置1100は、2つの増幅素子の2倍波反射位相をそれぞれ上記のようにずらして設定し、かつ、出力結合点1130と増幅素子の整合回路の間に位相回転のための伝送線路をすることで、高効率動作が可能な最適な負荷を実現できる。伝送線路を短くできるため、広帯域に最適な動作が実現できる。
【0056】
(構成例2)
図13は、本構成例の増幅装置400の構成例を示す図である。増幅装置400は、Out Phasing型の増幅装置である。図13の増幅装置400は、振幅位相変換部402、第1増幅素子412、第1出力整合回路450、第2増幅素子422、第2出力整合回路460、出力合成点430を含む。第1出力整合回路450は、高調波処理回路414、基本波整合回路416、主線路418を含む。第2出力整合回路460は、高調波処理回路424、基本波整合回路426、主線路428を含む。高調波処理回路414及び高調波処理回路424は、3倍波(3次高調波)に対する高調波処理回路である。
【0057】
振幅位相変換部402は、入力される信号S(t)を、入力される信号の振幅に依存した位相差を有する2つの同一振幅の信号に変換する。振幅位相変換部402は、変換した一方の信号を第1増幅素子412に、他方の信号を第2増幅素子422に出力する。第1増幅素子412に出力される信号S1(t)及び第2増幅素子422に出力される信号S2(t)は、上記の構成例1と同様である。
【0058】
第1増幅素子412は、信号S1(t)を増幅する。信号S1(t)の振幅Mは、一定
である。そのため、第1増幅素子412として、振幅Mの信号を高効率に増幅できる素子が選択される。
【0059】
高調波処理回路414は、増幅装置400の基本波の第3高調波に対してインピーダンスを決定するための回路である。高調波処理回路414は、基本波の負荷が実数で表され
るときに効率が最も高くなる位相の条件の位置よりも、第1増幅素子412から遠い位置に配置される。このように配置されることで、高調波の反射位相は、容量性になる。高調波処理回路414は、例えば、3次高調波の場合、基本波の1/12波長のオープンスタブである。高調波処理回路414は、第1増幅素子412に並列に接続される。
【0060】
基本波整合回路416は、増幅装置400の基本波(基本周波数)に対してインピーダンス整合を取るための回路である。
【0061】
第2増幅素子422は、信号S2(t)を増幅する。信号S2(t)の振幅Mは、一定
である。そのため、第2増幅素子422そして、振幅Mの信号を高効率に増幅できる素子が選択される。
【0062】
高調波処理回路424は、増幅装置400の3次高調波に対してインピーダンスを決定するための回路である。高調波処理回路424は、基本波の負荷が実数で表されるときに効率が最も高くなる位相の条件の位置よりも、第2増幅素子422に近い位置に配置される。このように配置されることで、高調波の反射位相は、誘導性になる。高調波処理回路424は、例えば、3次高調波の場合、基本波の1/12波長のオープンスタブである。高調波処理回路424は、第2増幅素子422に並列に接続される。
【0063】
基本波整合回路426は、増幅装置400の基本波(基本周波数)に対してインピーダンス整合を取るための回路である。
【0064】
第1増幅素子412及び第2増幅素子422は、基本波の整合をとった後、出力合成点430で、直接結合される。
【0065】
図14は、出力合成点から第1増幅素子を見た負荷の例を表すスミスチャートを示す図である。楕円状の閉曲線510は、図5の閉曲線10と同様である。閉曲線512は、楕円状であり、第1増幅素子412に整合回路を接続した後の点から出力側の負荷を可変した場合に効率が高くなる領域(条件)を示している。実線520は、出力合成点から第1増幅素子112側を見込んだ負荷の値である。破線530は、出力合成点から第2増幅素子122側を見込んだ負荷の値である。
【0066】
第1増幅素子412側の3倍波(3次高調波)の反射位相が容量性にずらされると、閉曲線512は、閉曲線510に比べて、誘導側にずれる。閉曲線512は、実線520に近づく。したがって、Out Phasing型増幅器である増幅装置400で振幅−位相変換された信号で、位相を変化させた時の出力合成点430から第1増幅素子412を見込む負荷の近くに第1増幅素子412の最適負荷条件を設定することが可能となる。即ち、増幅装置400は、伝送線路を用いることなく、効率が高くなる領域を、出力合成点430から第1増幅素子412を見込む負荷に近づけることができる。
【0067】
図15は、出力合成点から第2増幅素子を見た負荷の例を表すスミスチャートを示す図である。楕円状の閉曲線610は、図5の閉曲線10と同様である。閉曲線612は、楕円状であり、第2増幅素子422に整合回路を接続した後の点から出力側の負荷を可変した場合に効率が高くなる領域(条件)を示している。実線620は、出力合成点から第1増幅素子412側を見込んだ負荷の値である。破線630は、出力合成点から第2増幅素子422側を見込んだ負荷の値である。
【0068】
第2増幅素子422側の3倍波(3次高調波)の反射位相が誘導性にずらされると、閉曲線612は、閉曲線610に比べて、容量側にずれる。即ち、閉曲線612は、破線630に近づく。したがって、Out Phasing型増幅器である増幅装置400で振
幅−位相変換された信号で、位相を変化させた時の出力合成点430から第2増幅素子422を見込む負荷の近くに第2増幅素子422の最適負荷条件を設定することが可能となる。即ち、増幅装置400は、伝送線路を用いることなく、効率が高くなる領域を、出力合成点430から第2増幅素子422を見込む負荷に近づけることができる。
【0069】
2つの増幅素子の3倍波反射位相をそれぞれ上記のようにずらして設定することによって、出力結合点430と各増幅素子の整合回路の間に位相回転のための伝送線路を挿入せずに高効率動作が可能な最適な負荷を実現できる。線路長をゼロまたは短くできるため、広帯域に最適な動作が実現できる。
【0070】
構成例2においても、構成例1−2の構成と同様に、主線路と出力合成点との間に、伝送線路を挿入し、負荷軌跡を回転させて、効率が高い領域に負荷軌跡が近づくようにしてもよい。
【0071】
2倍波及び3倍波の両方の高調波処理回路が存在する場合も、同様にすることができる。また、4倍波、5倍波とどんどん高調波処理回路が増えてもよく、偶数次は2倍波の構成(構成例1−1、1−2)と同様にし、奇数次は3倍波(構成例2)の構成と同様にすればよい。
【0072】
(構成例3)
図16は、本実施形態の増幅装置700の構成例を示す図である。増幅装置700は、Doherty型の増幅装置である。図16の増幅装置700は、キャリアアンプ712、第1出力整合回路750、ピークアンプ722、第2出力整合回路760、出力合成点730、線路732を含む。第1出力整合回路750は、高調波処理回路714、基本波整合回路716、主線路718を含む。第2出力整合回路760は、高調波処理回路724、基本波整合回路726、主線路728を含む。増幅装置700は、信号処理部から信号が入力される。信号処理部は、入力信号に、ピーク電力を抑圧したり、予歪みを与えたりする。処理された信号は、キャリアアンプ712及びピークアンプ722に出力される。
【0073】
キャリアアンプ712は、入力信号電力が低い領域から動作する。キャリアアンプ712は、B級からAB級にバイアスされる。
【0074】
高調波処理回路714は、増幅装置700の基本波の高調波に対してインピーダンスを決定するをための回路である。高調波処理回路714は、基本波の負荷が実数で表されるときに効率が最も高くなる位相の条件の位置よりも、キャリアアンプ712に近い位置に配置される。このように配置されることで、高調波の反射位相は、容量性になる。
【0075】
基本波整合回路716は、増幅装置700の基本波(基本周波数)に対してインピーダンス整合を取るための回路である。
【0076】
主線路718は、キャリアアンプ712と出力合成点730との間に存在する。高調波処理回路714、基本波整合回路716は、主線路718に接続される。
【0077】
キャリアアンプ722は、入力信号電力が低い領域では動作せず、入力信号電力が所定の値を超えてから動作する。キャリアアンプ722は、C級にバイアスされる。
【0078】
高調波処理回路724は、増幅装置700の高調波に対してインピーダンスを決定するための回路である。
【0079】
基本波整合回路726は、増幅装置700の基本波(基本周波数)に対してインピーダンス整合を取るための回路である。
【0080】
主線路728は、ピークアンプ722と出力合成点730との間に存在する。高調波処理回路724、基本波整合回路726は、主線路728に接続される。
【0081】
キャリアアンプ712及びピークアンプ722は、基本波の整合をとった後、出力合成点730で、結合される。
【0082】
伝送線路732は、ピークアンプがオフの時の出力負荷インピーダンスをキャリアアンプ712の高効率動作点近くに変換する。伝送線路は、例えば、1/4波長インピーダンス変換回路である。
【0083】
図17は、図1のDoherty型増幅器のキャリアアンプの負荷の動きを表すスミスチャートを示す図である。閉曲線810は、楕円状であり、キャリアアンプの効率の等高線を示している。閉曲線810の内側ほど、効率が高い。この閉曲線810の内側に近い負荷が実現できれば、増幅器は高効率に動作する。破線840は、1/4波長線路によるインピーダンス変換を表す。1/4波長線路により、ピークアンプがオフの時の出力負荷インピーダンスがキャリアアンプの高効率動作点の近くに変換される。
【0084】
図18は、増幅装置700のキャリアアンプの負荷の動きを表すスミスチャートを示す図である。楕円状の閉曲線910は、図17の閉曲線810と同様である。閉曲線912は、楕円状であり、キャリアアンプ712の高効率動作をする負荷の領域を示している。キャリアアンプ712の高調波の反射位相を容量性にすると、キャリアアンプ712の高効率動作負荷領域(閉曲線912)が、閉曲線910よりも誘導性に移動する。破線940は、伝送線路732によるインピーダンス変換を表す。1/4波長よりも短い伝送線路732により、ピークアンプがオフの時の出力負荷インピーダンスがキャリアアンプの高効率動作点の近くに変換される。このようにすることにより、伝送線路(インピーダンス変換回路)の長さを1/4波長より短くすることができる。伝送線路を短くすることで、増幅装置700は、より広帯域で高効率の出力をすることができる。
【0085】
(実施形態の作用、効果)
増幅装置100は、第1増幅素子112に並列に接続される高調波処理回路114と、第2増幅素子に並列に接続される高調波処理回路124とを有する。高調波処理回路114及び高調波処理回路124は、基本波の負荷が実数で表されるときに効率が最も高くなる位相の条件の位置から、容量性または誘導性の位置に移動される。高調波処理回路114及び高調波処理回路124の位置が変更されることで、高調波の負荷位相(反射位相)が、誘導性または容量性の位置に移動する。高調波処理回路114及び高調波処理回路124の位置が変更されることで、第1増幅素子112及び第2増幅素子122の効率が高い領域(高効率で動作する負荷の領域)が、容量側または誘導側に移動する。効率が高い領域を、出力合成点から第1増幅素子または第2増幅素子を見込んだ負荷の軌跡に近づけることで、増幅装置100の効率が向上する。また、増幅装置100は、伝送線路を使用しないため、広帯域で高効率の増幅を実現する。
【0086】
増幅装置1100は、高調波処理回路の位置を変更することで、効率が高い領域を誘導性または容量性の位置に移動する。増幅装置1100は、伝送線路1129を主線路1128と出力合成点1130との間に挿入することにより、負荷軌跡を効率が高い領域に近づける。増幅装置1100は、高調波処理回路と伝送線路により、効率が高い領域と負荷軌跡とを近づけることができる。増幅装置1100は、伝送線路を電気長πより短くすることができるため、広帯域で高効率の増幅を実現する。
【0087】
増幅装置700では、キャリアアンプ712の高調波(2倍波、3倍波など)の負荷位相(反射位相)を容量性にずらすことにより、キャリアアンプ712の高効率で動作する負荷の領域が誘導性に移動する。増幅装置700では、高効率で動作する負荷の領域が誘導性に移動することにより、伝送線路(インピーダンス変換回路)の長さを1/4波長より短くすることができる。増幅装置700は、伝送線路の長さが短くなることで、広帯域で高効率の増幅を実現する。
【0088】
以上の各構成例は、可能な限りこれらを組み合わせて実施され得る。1つの構成例の構成に、他の構成例の構成が適用され得る。
【符号の説明】
【0089】
100 増幅装置
102 振幅位相変換回路
112 第1増幅素子
114 高調波処理回路
116 基本波整合回路
118 主線路
122 第2増幅素子
124 高調波処理回路
126 基本波整合回路
128 主線路
130 出力合成点
1100 増幅装置
1102 振幅位相変換回路
1112 第1増幅素子
1114 高調波処理回路
1116 基本波整合回路
1118 主線路
1122 第2増幅素子
1124 高調波処理回路
1126 基本波整合回路
1128 主線路
1129 伝送線路
1130 出力合成点
400 増幅装置
402 振幅位相変換回路
412 第1増幅素子
414 高調波処理回路
416 基本波整合回路
418 主線路
422 第2増幅素子
424 高調波処理回路
426 基本波整合回路
428 主線路
430 出力合成点
700 増幅装置
712 キャリアアンプ
714 高調波処理回路
716 基本波整合回路
722 ピークアンプ
724 高調波処理回路
726 基本波整合回路
730 出力合成点
732 伝送線路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18