(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板の面に配置される1つの電子部品に対応する領域内の点を原点とし、前記原点から前記1つの電子部品に接続される前記複数のランドの各ランドの中心までの距離と、前記各ランドから引き出される前記配線の引き出し方向の力とから導出した前記各ランドにおけるモーメントの総和を部品のモーメントとし、前記各ランドの引き出し配線幅の平均値で引き出し配線幅を均等とした場合の前記各ランドにおけるモーメントの総和を基準モーメントとし、前記部品のモーメントの絶対値を前記基準モーメントの絶対値より小さくするように、前記配線の引き出し方向及び引き出し配線幅を規定したことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
前記部品のモーメントの絶対値が、前記基準モーメントの絶対値の0から16パーセント以内となるように配線の引き出し方向及び引き出し配線幅を規定したことを特徴とする請求項2に記載のプリント基板。
前記基板の面に配置される電子部品の中心に対して、前記複数のランドと前記配線からなる配線パターンを点対称及び/または線対称に形成したことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
複数の基板を積層した積層基板の外面または内部に形成したスペースに、前記ランドからの配線の引き出し方向及び配線幅を規定した配線パターンを形成し、前記電子部品を実装したことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
電子部品との接続のためのはんだ部材が載せられる複数のランドを基板の面に配置し、前記複数のランドそれぞれから配線を引き出す方向及び引き出し配線幅を決める上で、前記はんだ部材を溶融させて前記電子部品と前記複数のランドとを接続する際に溶融したはんだが流れる方向の力に応じて各々の前記引き出し配線幅を変え、かつ前記はんだ部材が溶融して前記配線の引き出し方向に流れることで前記電子部品に加わる複数の力を1つの電子部品内で打ち消すように前記配線の引き出し方向及び引き出し配線幅を規定したことを特徴とするプリント基板のパターニング方法。
前記配線を引き出す方向及び引き出し配線幅を決める方法は、前記配線を引き出す方向を規定した後、前記引き出し配線幅を前記部品のモーメントを減少させるように規定したことを特徴とする請求項6に記載のプリント基板のパターニング方法。
【背景技術】
【0002】
プリント基板のランドに、例えばチップコンデンサ、チップ抵抗、ICチップ(半導体部品)などの表面実装型の電子部品(チップ部品ともいう)をリフロー実装する場合、ランドにペースト状のはんだ(はんだペースト)を印刷した上でチップ部品の端子を載せ、それをリフロー炉に通すことで、はんだペーストが溶融してランドとチップ部品の端子が接合される(リフロー工程ともいう)。
【0003】
この際、溶融したはんだが隣接するランドのはんだと繋がる、いわゆるブリッジ現象や、チップ部品がはんだが溶融して流れる方向に引っ張られてズレる部品ズレや、ひどいときはチップ部品の端子が隣のランドに接続される端子の誤接続などの実装不良が発生し得る。
【0004】
このような実装不良は、隣接するランドどうしの形状を考慮し、ランド間のブリッジし易い場所や、はんだが溶融して流れ出し易いランドから延びる配線部分について、溶融したはんだの広がりを抑制するソルダレジストで被覆することで改善できる(例えば特許文献1参照)。
【0005】
図7(a)は、従来のプリント基板におけるソルダレジスト9の使用方法を例示した斜視図である。
図7(a)に示すようにランド2と配線3からなる導体部のうち、ランド2にから延びる配線部分をソルダレジスト9で被覆することで、リフロー工程で溶融したはんだがランドから延びる配線3の引き出し部に広がるのを防ぎ、チップ部品の端子5が溶融したはんだの流れる方向に引っ張られてチップ部品がズレることを防ぐことが出来る。
【0006】
図7(b)は、
図7(a)で示した構成のプリント基板からソルダレジスト9を除いた構成のプリント基板において、リフロー工程での加熱により、ランドから延びる配線の引き出し部にはんだ6が溶融して濡れ広がった状態を示す斜視図である。はんだ6が配線の引き出し部に濡れ広がると、チップ部品の端子5には、はんだの表面張力T[N/m]と配線幅W[mm]に比例した引っ張り力F[N](F=T×W)が加わり、部品の位置をズラす原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年では、部品の実装密度を向上するため、多層基板の内部に電子部品を実装することが行われている。このような部品内蔵基板では、ソルダレジストと基板材料の接着性不足による層間の剥離強度の低下や、工数増加などの問題から、基板の内部の部品実装エリアに設けるランドや、配線部分にはソルダレジストを塗布しないのが一般的である。
【0009】
このような構造のプリント基板には、ランドから延びる配線部分や、ランド間のブリッジし易い場所をソルダレジストで被覆できないため、ブリッジ現象、部品ズレ、端子の誤接続などの実装不良に対して何らかの対策を講じなければならない。また、チップ部品は2端子だけのものとは限らずICチップのように多端子部品も多くあり、このような多端子部品への対応も必要である。さらに通常の表面実装においてもソルダレジストを用いないで実装不良対策が可能であればその方がよいことはいうまでもない。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、表面実装型の電子部品をプリント基板にリフロー実装する際にソルダレジストを用いることなくブリッジ現象、部品ズレ及び端子の誤接続などの実装不良対策を講じることができるプリント基板及びプリント基板のパターニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様のプリント基板は、基板と、前記基板の面に配置され、電子部品とはんだ部材を用いて接続される複数のランドと、前記複数のランドそれぞれから引き出される引き出し配線幅及び引き出し方向を有して前記ランドに接続される配線とを備え、
前記はんだ部材を溶融させて前記電子部品と前記複数のランドとを接続する際に溶融したはんだが流れる方向の力に応じて各々の前記引き出し配線幅を変え、かつ前記はんだ部材が溶融して前記配線の引き出し方向に流れることで前記部品に加わる複数の力を1つの電子部品内で打ち消すように規定したことを特徴とする。
さらに、1つの電子部品に接続される複数のランドの各々の前記配線は、前記引き出し配線幅が異なる。すなわち、1つの電子部品に対応する前記配線の前記引き出し配線幅は2種類以上であることを特徴とする。
【0012】
また本発明の一態様のプリント基板は、前記基板の面に配置される1つの電子部品に対応する領域内の点を原点とし、前記原点から前記1つの電子部品に接続される前記複数のランドの各ランドの中心までの距離と、前記各ランドから引き出される前記配線の引き出し方向の力とから導出した前記各ランドにおけるモーメントの総和を部品のモーメントとし、前記各ランドの引き出し配線幅の平均値で引き出し配線幅を均等とした場合の前記各ランドにおけるモーメントの総和を基準モーメントとし、前記部品のモーメントの絶対値を前記基準モーメントの絶対値より小さくするように、前記配線の引き出し方向及び引き出し配線幅を規定したことを特徴とする。
【0013】
また本発明の一態様のプリント基板のパターニング方法は、電子部品とはんだ部材を用いて接続される複数のランドを基板の面に配置し、前記複数のランドそれぞれから配線を引き出す配線の引き出し方向及び引き出し配線幅を決める上で、
前記はんだ部材を溶融させて前記電子部品と前記複数のランドとを接続する際に溶融したはんだが流れる方向の力に応じて各々の前記引き出し配線幅を変え、かつ前記はんだ部材が溶融して前記配線の引き出し方向に流れることで前記部品に加わる複数の力を1つの電子部品内で打ち消すように
前記配線の引き出し方向及び引き出し配線幅を規定したことを特徴とする。
さらに、本発明の一態様のプリント基板のパターニング方法は、前記配線を引き出す方向及び引き出し配線幅を決める方法において、前記配線を引き出す方向を規定した後、前記引き出し配線幅を前記部品のモーメントを減少させるように規定したことを特徴とする。
【0014】
本発明では、電子部品とランドとを、はんだペーストなどのはんだ部材を溶融させて接続する際に、はんだ部材が溶融して配線の引き出し方向に流れることで部品に加わる複数の力を打ち消すように配線の引き出し方向及び引き出し配線幅を規定したことで、はんだの表面張力の不均衡によって電子部品が回転したりズレたりする現象を抑えられるので、ソルダレジストを用いずにブリッジ現象、部品ズレ及び端子の誤接続などの実装不良の発生を抑制する対策を講じることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子部品を基板にリフロー実装する際にソルダレジストを用いずにブリッジ現象、部品ズレ及び誤接続などの実装不良の発生を抑制する対策を講じることができるプリント基板及びプリント基板のパターニング方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明のプリント基板及びプリント基板のパターニング方法に係る一つの実施の形態のプリント基板を詳細に説明する。
図1は第1実施形態のプリント基板の構成及びICチップの実装状態を示す図、
図2ははんだペーストが溶融したときのはんだが流れる方向と電子部品に働く力の関係を示す図である。
【0018】
図1(b)はi番目のランドとランド及びランドから引き出された配線部分を詳細に説明した図である。
図1(c)は、
図1(a)の線AAに沿ったランド2a、ランド2b部分の断面図であり、ランド2a、2bにはんだペースト6を塗布し、ICチップ4の端子5a、5bをランド2a、2bに位置合わせして載せた様子を断面で図示している。
図1(a)でランド2や配線3の添え字a、b、〜hに対し配線幅Wの添え字は1、2、〜8が対応しており、これらの添え字(整数)をiと記し、配線幅をWiと表現する場合がある。端子に働く力Fi、端子に働く力のモーメント成分Fim、力の放射方向成分Firの添え字iも同様の表現である。さらに、
図1(b)の配線の引き出し方向の角度θi、δiの添え字iも同様の表現である。
【0019】
(第1実施形態)
図1(a)に示すように、第1実施形態のプリント基板は、実装対象の電子部品を、例えば8ピンなどのICチップ4であるものと仮定する。
プリント基板は、基板1と、例えば8つの複数のランド2a〜2hと、配線3a〜3hとを備える例を示している。
【0020】
基板1は、例えばエポキシ樹脂等を用いた絶縁性の板材である。ランド2a〜2hは基板の一面に形成されている。ランド2a〜2hは、例えばICチップ4などの電子部品の端子を接続するための金属箔のパターンであり、電子部品の各端子に対応した形状に設計される。
【0021】
基板1に電子部品を実装するときにランド2a〜2hには、はんだペースト6などのはんだ部材がメタルマスクを用いた印刷などにより載せられる。このランド2a〜2hには、部品実装時に、はんだペースト6の上にICチップ4の端子5a〜5hが対応して載せられ、その状態で基板1をリフロー炉内に搬入し、はんだペースト6を加熱して溶融させることで、端子5a〜5hとランド2a〜2hが接合(接続)される。
【0022】
配線3a〜3hは、
図1(b)に示すように各ランド2a〜2hからそれぞれの引き出し方向(角度θ1〜θ8)に引き出されており、引き出し位置の引き出し配線幅W1〜W8が規定されている。ここで、配線の引き出し方向θiは、水平軸(図でx軸とする)から配線の引き出し方向までを反時計方向に測った角度である。
【0023】
例えば配線3aはランド2aから図面に向かって左方向(θ1=180°)に引き出され、引き出し配線幅はW1とされている。また配線3bはランド2bから図面に向かって下方向(θ2=−90°)に引き出され、引き出し配線幅はW2とされている。他の配線3c〜3hも同様である。
【0024】
図1(a)では、配線3aの引き出し配線幅W1は、配線3bの引き出し配線幅W2よりも狭く設定されている。引き出し配線幅W1及び引き出し配線幅W2は、それぞれにはんだが流れる方向の力を調節するように設定される。
【0025】
この例の場合、ランド2aとランド2bでは、部品中心からの方向が類似しているが、配線3aと配線3bの引き出し方向が異なり、モーメントF1m,F2m(矢印)の方向が逆になり、モーメントF1mとモーメントF2mは互いに相殺する方向を有する。
【0026】
配線3a〜3hは、ICチップ4の中心(重心)または各ランド2a〜2hの中心の平均値の位置を原点Oに定め、原点Oから各ランド2a〜2hの中心点P1〜P8までの距離r1〜r8に応じて生じるICチップ4を回転させる複数の力F1m〜F8m(モーメントの働き)を相殺するように各ランド2a〜2hとの接続位置における配線3a〜3hの引き出し配線幅W1〜W8と引き出し方向(角度θ1〜θ8)を規定して形成したものである。
【0027】
すなわち、配線3a〜3hは、配線3a〜3hの引き出し方向(角度θ1〜θ8)及び引き出し配線幅W1〜W8を、ICチップ4の端子5a〜5hとランド2a〜2hとの接続時に、はんだペースト6が溶融して配線の引き出し方向に流れることで電子部品に加わる複数の力を相互に打ち消すように規定している。
【0028】
ここで、この第1実施形態のプリント基板のパターニング方法について説明する。
それぞれの配線3a〜3hのランド2a〜2hの上に印刷して載せられたはんだペーストが溶融したときの表面張力をT[N/m]と表記し、それぞれの配線幅をW1〜W8すると、はんだが個々の配線3iへ流れる方向の力Fiは、Fi=T×Wi[N]と表わされる。
【0029】
例えばICチップ4に対応する各ランド2a〜2hの中心P1〜P8の平均値の位置を原点Oとし、原点Oからランド2a〜2hの中心P1〜P8までの距離をr1〜r8と表記し、原点Oと各ランドの中心Piを結ぶ線と、各ランドの配線の引き出し方向(すなわちFiの方向)の成す角度をδ1〜δ8とする。ここでδiは、配線の引き出し方向の角度θiから、原点Oとランドの中心Piを結ぶ直線が水平方向(x軸方向)と成す角度を差引いて求めることができる。
【0030】
それぞれのランド2a〜2hの位置でICチップ4の端子5iに働くモーメントFimは、Fim=Fi×ri×sinδi(iは任意の数)と表される。1つのICチップ4の各端子5にそれぞれに働くモーメントの総和M=F1m+・・・+F8mが小さくなるように個々の引き出し配線幅W1〜W8を調整して設定する。
【0031】
すなわち、基板1の主面におけるICチップ4に対応する各ランド2a〜2hの中心P1〜P8の平均値の位置を原点Oとし、原点Oから各ランド2a〜2hの中心Piまでの距離r1〜r8と各ランド2a〜2hから引き出される配線3a〜3hの引き出し方向(角度θ1〜θ8)の力F1〜F8とから導出した各ランド2a〜2hにおけるモーメントF1m〜F8mの総和Mをゼロまたはゼロに近づけるように配線3a〜3hの引き出し方向及び引き出し配線幅W1〜W8を規定している。
【0032】
一般に、
図2に示すように、はんだ6の表面張力をT[N/m]、配線幅をWi[m]としたときに、はんだ6が配線3の引き出し方向へ流れることで電子部品4の端子5iに働く力Fiは、Fi=T×Wi[N]となる。従って、電子部品4の端子5iに働く力Fiは、配線幅Wiに比例して増加または減少するといえる。
【0033】
ICチップ4の各端子5iに働くモーメントの総和MにFi=T×Wiの関係を代入してWiの関数として表現すると、M=T×r1×sinδ1×W1+T×r2×sinδ2×W2+・・・+T×r8×sinδ8×W8(=T×Σ(ri×sinδi×Wi)・・・式1と呼ぶ)となる。この式1から、各端子に働くモーメントの正負はsinδi(すなわち配線の引き出し方向)で決まり、大きさは引き出し配線幅Wiで増減できることがわかる。
【0034】
モーメントの総和Mを十分小さくする引き出し配線幅Wiを求める方法としては各種の方法があるが、簡単な方法としては、モーメントの総和Mの式1の各項でsinδiが正のランドの引き出し線幅Wiに(W+ΔW)を代入し、sinδiが負のランドの引き出し線幅Wiに(W−ΔW)を代入し、Wを定数として与え、モーメントMの絶対値を最小もしくは零とするΔWを求めればよい。ΔWが決まれば、2種類の引き出し配線幅は(W+ΔW)と(W−ΔW)とのように求まる。
モーメントの総和Mを十分小さくする引き出し配線幅Wiを求める別の方法としては、モーメントの総和Mの2乗を評価関数とし、Wiをパラメータとして最小二乗法を用い、配線幅の制約条件を満たして上記評価関数の極小値を与えるWiの組みを求めることで、モーメントの総和Mの大きさを最も小さくする各引き出し線幅Wiの組み合わせが求まる。
【0035】
本発明は、リフロー工程で溶融したはんだの表面張力に起因した各チップ部品に加わる力を、各ランドから引き出される配線の引き出し方向と、引き出し配線幅を調整して前記部品に加わる力を相殺して減少させ、リフロー工程でチップ部品が移動して端子が誤接続されたりブリッジが発生するのを防ぐ手段を提供することを目的としている。このとき、各チップ部品ごとに各端子に加わるモーメントの和を十分減少させることが端子の誤接続やブリッジの発生を防ぐ上で有効であることを見出した。この理由としては、モーメントの和を減少させることが、チップ部品が回転し、端子が隣接するランドに接触して発生する誤接続を効果的に防止しているためと考えられる。
【0036】
さらに、配線の引き出し方向をモーメントが正と負に分かれて相殺するように設定し、引き出し配線幅を調整してモーメントの和を減少させる方法を検討するなかで、引き出し配線幅の微調整が重要であることを見出した。すなわち、プリント基板の設計で配線の引き出し方向はデザインルールで制限されている(例えば垂直、水平、45度)のに加え、配線の引き回しからくる制約があるため、配線の引き出し方向を微調整してモーメントの和を十分に減少させることは困難であるのに対し、引き出し配線幅は設計上の最大線幅と最小線幅の間で微調整が可能であり、モーメントを相殺して十分小さくし、端子の誤接続やブリッジの発生を防ぐことが可能であることを見出した。
【0037】
(実施例)
図3に示すように、例えば8端子のICチップ(2×4ピンのIC)用の配線パターンを基板に形成し、各ランドA1〜A8の位置及び形状を変えずに、各ランドA1〜A8からの配線の引出位置の配線幅W1〜W8を4通り(例1,例2,例3,例4)に変えてパターニングしたプリント基板にて電子部品を実装し、そのリフローによるはんだ付けの結果について部品ズレやブリッジの発生率を実測してみた。
【0038】
具体的には、各配線のランドA1〜A8とし、実装するICチップの中心を原点Oに定め、複数のランドA1〜A8の中心点におけるモーメントの総和Mを求める。
実測に用いたICチップのパッケージはWLCSP8と呼ばれる型番で、8個の端子が0.4mmの格子上に2行4列に配置されている。ランドA1〜A8も対応して0.4mmの格子上に配置されている。使用したはんだペーストはSn−3Ag−0.5Cuと呼ばれる組成の半田ぺーストで、溶融時の表面張力Tは0.45〜0.55[N/m]である。以下のモーメントの計算では表面張力を数値ではなく、記号T[N/m]で表記して扱う。
【0039】
例1は複数のランドA1〜A8のモーメント和が0.006T[μN・m](モーメント比は6%)となるように、引き出し配線幅W1〜W8を決定した。例2はモーメント和が−0.017T[μN・m](モーメント比は16%)となるように引き出し配線幅Wを決定した。例3はモーメント和が−0.030T[μN・m](モーメント比は28%)となるように引き出し配線幅Wを決定した。例4はモーメントの和が−0.052T[μN・m](モーメント比は52%)となるように引き出し配線幅Wを決定した。
【0040】
ここでモーメント比とは、注目する部品に関連して設定された引き出し配線幅W1〜W8の平均値をW0とし、その部品に対応する引き出し配線幅をすべてW0とした場合のモーメントの和M0(基準モーメントと呼ぶことがある)を求め、配線幅がW1〜W8である場合のモーメント和M(部品のモーメントと呼ぶことがある)の基準のモーメントM0に対する比率M/M0の絶対値をパーセントで示した値である。このように定義したモーメント比は、配線幅W1〜W8を調整したことによる部品のモーメントMの減少の程度を、基準のモーメントM0に対する比(パーセント)で表現している。モーメント比によれば、はんだの表面張力Tが比を取ることで相殺されて消えるため、引き出し配線幅Wiの調整によるモーメントの減少を、配線パターンのみで決まるモーメントの相対値で評価できる。
【0041】
上記の例1から例4で求めた引き出し配線幅を有するプリント基板を作成し、はんだリフロー工程による部品実装を実施して、部品ズレ発生率及びブリッジ発生率を実測した結果を
図4の表1に示す。表1によれば、例4ではモーメント比が52%であるプリント基板の部品ズレ発生率が8.3%、ブリッジ発生率6.3パーセントである。例3は、モーメント比を28%に減少させたが、部品ズレ発生率は6.4%、ブリッジ発生率は4.5%と改善効果は小幅であった。例2でモーメント比を16%まで減少させたところ、部品ズレ発生率が1.2%、ブリッジ発生率が2.4%と例4に比較し部品ズレ発生率で1/6、ブリッジ発生率で1/2.6と大幅に改善した。さらに例1に示すようにモーメント比を6%まで減少させると、部品ズレ発生率が0%、ブリッジ発生率が0.75%と顕著な実装不良削減効果が得られた。
【0042】
上記の表1の結果から、例2に示したようにモーメント比が0〜16パーセント以内となるように引き出し配線幅Wiを決定した配線パターンのプリント配線板が、リフロー工程での部品ズレ発生率やブリッジ発生率が大幅に改善されており好ましい。さらに好ましくは例1に示したようにモーメント比が0〜6パーセント以内となるように配線幅Wを決定したパターンのものが部品ズレ発生率、ブリッジ発生率が顕著に改善され、最も望ましい結果となることを示すことができた。
【0043】
以上のようにこの第1実施形態によれば、ランド2a〜2hから引き出される配線3a〜3hの引き出し方向θ1〜θ8と配線幅W1〜W8とを、リフロー工程におけるはんだペースト溶融時のはんだの表面張力でICチップ4がズレたり回転しないよう表面張力の効果を抑制するように規定したことで、ブリッジ発生率、部品ズレ発生率などの実装不良対策を講じることができ、高い歩留りを維持することができる。
【0044】
すなわち、基板1にランド2a〜2h及び配線3a〜3hを配置する際のデザインの工夫によりリフロー実装時にソルダレジストを塗布することなく、ブリッジ現象、部品ズレ及び誤接続などの実装不良対策を講じることができる。
【0045】
(第2実施形態)
図5に示すように、この第2実施形態は、配線パターンを対称に形成した例である。
【0046】
この例では、プリント基板への部品実装用の配線デザインの例として、端子(ピン)の数がn本、例えば24ピンなどの多数の端子を備える電子部品(フラットパッケージ51等)を想定して、配線パターンをデザインする(nは任意の数)。フラットパッケージ51は例えばBGA(Ball Grid Array)などである。
【0047】
この場合、フラットパッケージ51の中心点Oに対して配線パターンを点対称にパターニングしている。なお中心点Oは重心と一致するものとする。
【0048】
また、この例の場合、中心点Oを通る長手方向の中心軸Qx及びこの中心軸Qxと直交する中心点Oを通る軸Qyに対しても配線パターンを線対称にパターニングしている。
【0049】
また、この例では、フラットパッケージ51の外縁付近のランドから引き出される配線の引き出し配線幅を太く形成し、フラットパッケージ51の外縁から遠い場所(中心に近い場所)に位置するランドから引き出される配線の引き出し配線幅を細く形成している。なお配線の引き出し配線幅の許容範囲は±10%以内とする。
【0050】
すなわち、この実施形態では、基板1の主面に配置されるフラットパッケージ51の中心点Oに対して、複数のランドと引き出し配線からなる配線パターンを点対称及び/または線対称に形成している。
【0051】
この例の場合、配線パターンが線対称に形成されているため、例えば中心軸Qxを介して対向する配線パターンどうしで、はんだの表面張力により、ランドから引き出される配線の方向に働く力f1,f2,f3,f4,f9,f10と力f5,f6,f7,f8,f11,f12とが相殺(打ち消)される。また中心軸Qyを介して対向する配線パターンどうしで、はんだの表面張力により、ランドから引き出される配線の方向に働く力f1,f2,f5,f6,f11と力f3,f4,f7,f8,f10,f12が相殺(打ち消)される。
【0052】
したがって、このプリント基板にフラットパッケージ51を実装しリフロー工程において、はんだペーストを加熱し溶融させた場合、はんだの表面張力がフラットパッケージ51にほぼ均等に加わるようになり、位置ズレや回転が抑制される。
【0053】
このようにこの第2実施形態によれば、配線パターンを対称に配置したことで、第1実施形態の力のモーメントだけでなく、電子部品の中心軸の左右及び上下で引き合う力も相殺されるので、リフロー工程におけるはんだペースト溶融時のはんだの表面張力がフラットパッケージ51にほぼ均等に加わるようになり、フラットパッケージ51の位置ズレや回転が抑制され、ソルダレジストを用いることなくブリッジ現象、部品ズレ及び誤接続などの実装不良対策を講じることができる。
【0054】
(第3実施形態)
図6に示すように、この第3実施形態のプリント基板は、複数の基板61〜67を積層した積層基板の内層の4枚の基板63〜66に開口68を設け、これら基板63〜66の開口68により形成されたスペースに電子部品としての半導体部品81を実装した電子部品内蔵基板である。
【0055】
最下層の基板61の一面には、ソルダレジスト層69が形成されている。最上層の基板67には配線パターン70が形成されている。また最上層の基板67には配線パターン70の一部に重なるようにソルダレジスト層71が形成されている。
【0056】
基板62のスペースに露出した部分には、配線パターン72が形成されている。この配線パターン72は、第1実施形態で示したランド2a〜2hからの配線3a〜3hの引き出し方向θi及び引き出し配線幅Wiを規定したものである。配線パターン72には、リフローで実装された半導体部品81の端子83が、はんだ85により接合(接続)されている。
【0057】
すなわち、この第3実施形態のプリント基板は、基板の内層の部品実装スペース(空間)に一つ以上の半導体部品81(能動部品)や受動部品を実装し、一つ以上の半導体部品81や受動部品を、配線パターン72を介して電気的に接続したものである。
【0058】
この第3実施形態では、複数の基板61〜67を積層した積層基板の外面または内部に形成した部品実装スペースに、ランドからの配線の引き出し方向及び引き出し配線幅を規定した配線パターンを形成し、電子部品を実装したことで、積層基板の内層に設けた部品実装スペースに、ソルダレジスト層を形成することなく、半導体部品81を実装することができる。
【0059】
なお、本願発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形(要素の一部削除、実施形態間の要素の組み合わせの変更など)してもよい。
【0060】
上記実施形態では、積層基板の内部に形成したスペースにランド2a〜2hからの配線3a〜3hの引き出し方向θi及び引き出し配線幅Wiを規定した配線パターン72を形成したが、この他、積層基板の外面(外層)に配線パターン72を形成してもよい。
【0061】
また、上記実施形態で説明したプリント基板のパターニング方法を、コンピュータのメモリなどのストレージにインストールしたプログラムで実現してもよく、また上記プログラムを、コンピュータ読取可能な電子媒体に記憶しておき、プログラムを電子媒体からコンピュータに読み取らせることでプリント基板のパターニング方法をコンピュータが実現するようにしてもよい。
【0062】
電子媒体としては、例えばCD−ROM等の記録媒体やフラッシュメモリ、リムーバブルメディア(Removable media)等が含まれる。さらに、ネットワークを介して接続した異なるコンピュータに構成要素を分散して記憶し、各構成要素を機能させたコンピュータ間で通信することで実現してもよい。