特許第6236954号(P6236954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236954運転支援システム、方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236954
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】運転支援システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20171120BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20171120BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G01C21/36
   G09B29/00 F
   G09B29/10 A
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-152302(P2013-152302)
(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-21918(P2015-21918A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100117466
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕司
(72)【発明者】
【氏名】森 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】中尾 功一
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−072778(JP,A)
【文献】 特開2005−308543(JP,A)
【文献】 特開平10−132598(JP,A)
【文献】 特開2003−215228(JP,A)
【文献】 特開2007−067487(JP,A)
【文献】 特開2008−202987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 − 21/36
G08G 1/00 − 1/16
G09B 29/00 − 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の前方の風景に目的地を示す目的地アイコンを重畳した画像を表示部に表示する運転支援システムであって、
前記移動体が存在する道路沿いの前記目的地の間口の長さを取得する間口長取得手段と、
前記目的地アイコンの表示位置が前記間口内の位置となるように、前記移動体の推定位置に基づいて前記目的地アイコンの表示位置を特定する表示位置特定手段と、
前記移動体の前方の風景における前記目的地アイコンの表示位置に前記目的地アイコンを重畳した画像を前記表示部に表示する画像表示手段と、
前記移動体が存在する道路の方向に発生し得る前記移動体の推定位置と実際の位置との誤差の最大値である最大誤差を取得する最大誤差取得手段とを備え、
前記表示位置特定手段は、
前記誤差が0である場合に前記目的地アイコンの表示位置が前記間口内の位置となり、かつ、前記誤差が前記最大誤差である場合に前記目的地アイコンの表示位置が前記間口内の位置または前記目的地よりも手前の位置となるように、前記移動体の推定位置に基づいて前記目的地アイコンの表示位置を特定する、
を備える運転支援システム。
【請求項2】
前記表示位置特定手段は、
前記移動体が存在する道路の方向において前記移動体の推定位置と実際の位置との前記誤差が生じていたとしても、前記目的地アイコンの表示位置が前記間口内の位置または前記目的地よりも手前の位置となるように、前記移動体の推定位置に基づいて前記目的地アイコンの表示位置を特定する、
請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記表示位置特定手段は、
前記間口の長さの1/2が前記最大誤差未満である場合、前記移動体が存在する道路の方向における前記間口の奥側の端点から前記最大誤差だけ手前側の位置を前記目的地アイコンの表示位置とする、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記表示位置特定手段は、
前記間口の長さの1/2が前記最大誤差以上である場合、前記移動体が存在する道路の方向における前記間口の手前側の端点から前記最大誤差だけ奥側の位置を前記目的地アイコンの表示位置とする、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記表示位置特定手段は、
前記目的地の敷地の形状を示す敷地形状データが存在する場合、前記敷地形状データに基づいて前記間口の端点を特定し、
前記敷地形状データが存在しない場合、前記目的地について予め規定された前記間口の長さの1/2だけ、前記目的地の前記間口の中央から前記移動体が存在する道路の方向における奥側および手前側に移動した位置を前記間口の端点として特定する、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の運転支援システム。
【請求項6】
前記間口の長さは、前記目的地の種別毎に予め規定されている、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の運転支援システム。
【請求項7】
移動体の前方の風景に目的地を示す目的地アイコンを重畳した画像を表示部に表示する運転支援方法であって、
前記移動体が存在する道路沿いの前記目的地の間口の長さを取得する間口長取得工程と、
前記目的地アイコンの表示位置が前記間口内の位置となるように、前記移動体の推定位置に基づいて前記目的地アイコンの表示位置を特定する表示位置特定工程と、
前記移動体の前方の風景における前記目的地アイコンの表示位置に前記目的地アイコンを重畳した画像を前記表示部に表示する画像表示工程と、
前記移動体が存在する道路の方向に発生し得る前記移動体の推定位置と実際の位置との誤差の最大値である最大誤差を取得する最大誤差取得工程とを含み、
前記表示位置特定工程では、
前記誤差が0である場合に前記目的地アイコンの表示位置が前記間口内の位置となり、かつ、前記誤差が前記最大誤差である場合に前記目的地アイコンの表示位置が前記間口内の位置または前記目的地よりも手前の位置となるように、前記移動体の推定位置に基づいて前記目的地アイコンの表示位置を特定する、
運転支援方法。
【請求項8】
移動体の前方の風景に目的地を示す目的地アイコンを重畳した画像を表示部に表示する運転支援プログラムであって、
前記移動体が存在する道路沿いの前記目的地の間口の長さを取得する間口長取得機能と、
前記目的地アイコンの表示位置が前記間口内の位置となるように、前記移動体の推定位置に基づいて前記目的地アイコンの表示位置を特定する表示位置特定機能と、
前記移動体の前方の風景における前記目的地アイコンの表示位置に前記目的地アイコンを重畳した画像を前記表示部に表示する画像表示機能と、
前記移動体が存在する道路の方向に発生し得る前記移動体の推定位置と実際の位置との誤差の最大値である最大誤差を取得する最大誤差取得機能とをコンピュータに実現させ、
前記表示位置特定機能は、
前記誤差が0である場合に前記目的地アイコンの表示位置が前記間口内の位置となり、かつ、前記誤差が前記最大誤差である場合に前記目的地アイコンの表示位置が前記間口内の位置または前記目的地よりも手前の位置となるように、前記移動体の推定位置に基づいて前記目的地アイコンの表示位置を特定する
機能をコンピュータに実現させる運転支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前方の風景を示す風景画像内に目的地の画像が含まれる場合に、所定のアイコンを風景画像内に重畳することによって利用者を目的地に着目させる技術が知られている。例えば、特許文献1においては、カメラで撮影された画像に、目的風景位置を指し示す矢印の画像を合成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−154041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術においては、車両の現在地に基づいてカメラで撮影された画像内での目的風景位置を特定する。従って、画像内での目的風景位置は車両の現在地に依存する。ところが、車両の現在地を特定する技術において、位置の誤差が発生することは避けられないため、誤差が発生した場合には目的風景位置を指し示す矢印が目的風景位置と異なる位置に表示される場合があり、このような場合には利用者に誤解を与えてしまう。特に、目的風景位置を指し示す矢印が目的風景位置よりも奥側に表示されている場合、目的風景位置を指し示す矢印を利用して車両を運転している利用者が、目的地を通過している場合が発生してしまう。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、風景に目的地を示す目的地アイコンを重畳する構成において、目的地を通過してしまう状況が発生することを抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、運転支援システムは、移動体の前方の風景に目的地を示す目的地アイコンを重畳した画像を表示部に表示するナビゲーションシステムであって、移動体が存在する道路沿いの目的地の間口の長さを取得する間口長取得手段と、移動体が存在する道路の方向に発生し得る移動体の推定位置と実際の位置との誤差の最大値である最大誤差を取得する最大誤差取得手段と、誤差が0である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置となり、かつ、誤差が最大誤差である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置または目的地よりも手前の位置となるように、移動体の推定位置に基づいて目的地アイコンの表示位置を特定する表示位置特定手段と、移動体の前方の風景における目的地アイコンの表示位置に目的地アイコンを重畳した画像を表示部に表示する画像表示手段と、を備える。
【0006】
また、上記の目的を達成するために、運転支援方法は、移動体の前方の風景に目的地を示す目的地アイコンを重畳した画像を表示部に表示する運転支援方法であって、移動体が存在する道路沿いの目的地の間口の長さを取得する間口長取得工程と、移動体が存在する道路の方向に発生し得る移動体の推定位置と実際の位置との誤差の最大値である最大誤差を取得する最大誤差取得工程と、誤差が0である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置となり、かつ、誤差が最大誤差である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置または目的地よりも手前の位置となるように、移動体の推定位置に基づいて目的地アイコンの表示位置を特定する表示位置特定工程と、移動体の前方の風景における目的地アイコンの表示位置に目的地アイコンを重畳した画像を表示部に表示する画像表示工程と、を含むように構成されている。
【0007】
さらに、上記の目的を達成するために、運転支援プログラムは、移動体の前方の風景に目的地を示す目的地アイコンを重畳した画像を表示部に表示する機能をコンピュータに実現させる運転支援プログラムであり、前記移動体が存在する道路沿いの前記目的地の間口の長さを取得する間口長取得機能と、前記移動体が存在する道路の方向に発生し得る前記移動体の推定位置と実際の位置との誤差の最大値である最大誤差を取得する最大誤差取得機能と、前記誤差が0である場合に前記目的地アイコンの表示位置が前記間口内の位置となり、かつ、前記誤差が前記最大誤差である場合に前記目的地アイコンの表示位置が前記間口内の位置または前記目的地よりも手前の位置となるように、前記移動体の推定位置に基づいて前記目的地アイコンの表示位置を特定する表示位置特定機能と、前記移動体の前方の風景における前記目的地アイコンの表示位置に前記目的地アイコンを重畳した画像を前記表示部に表示する画像表示機能と、をコンピュータに実現させるように構成されている。
【0008】
すなわち、移動体の推定位置に基づいて画像内での目的地の位置を特定し、当該位置に目的地アイコンを重畳する構成において、移動体が存在する道路の前方あるいは後方に誤差が生じていると、目的地アイコンが意図通りの位置からずれた位置に表示された状態になる。この場合、誤差の大きさによっては、目的地アイコンが目的地の間口外に表示されることになる。そこで、上述の運転支援システムまたは運転支援方法または運転支援プログラムは、誤差が0である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置となり、かつ、誤差が最大誤差である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置または目的地よりも手前の位置となるように、移動体の推定位置に基づいて目的地アイコンの表示位置を特定する。この構成によれば、誤差が0である場合には目的地アイコンが間口内の位置に表示され、誤差が最大誤差であったとしても目的地アイコンの表示位置が目的地の間口内の位置または目的地よりも手前の位置となる。従って、目的地アイコンが目的地よりも奥の位置に表示されることはなく、目的地を通過してしまう状況が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】運転支援システムを含むナビゲーションシステムを示すブロック図である。
図2】運転支援処理を示すフローチャートである。
図3】車両と目的地との位置関係および表示画像の例を示す図ある。
図4】車両と目的地との位置関係および表示画像の例を示す図ある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーションシステムの構成:
(2)運転支援処理:
(3)他の実施形態:
【0011】
(1)ナビゲーションシステムの構成:
図1は、本発明にかかる運転支援システムを含むナビゲーションシステム10の構成を示すブロック図である。ナビゲーションシステム10は、移動体としての車両に備えられており、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えている。ナビゲーションシステム10は、記録媒体30やROMに記憶されたナビゲーションプログラム21等のプログラムを制御部20で実行することができる。
【0012】
また、本実施形態にかかる車両は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とカメラ44とユーザI/F部45とを備えている。GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の推定位置を算出するための信号を示す信号を出力する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は、車速センサ42、ジャイロセンサ43等の出力情報を自立航法情報として取得する。
【0013】
ナビゲーションプログラム21は、当該自立航法情報に基づいてマップマッチング処理を行って道路上における車両の推定位置(ナビゲーションシステム10の推定位置)を特定し、当該推定位置を地図上に表示させる機能を制御部20に実行させることができる。さらに、ナビゲーションプログラム21は、推定位置から利用者が設定した目的地までの予定経路を探索し、推定位置周辺の地図や予定経路を表示部に表示しつつ予定経路に沿って車両を誘導することによって利用者を目的地まで案内する機能を制御部20に実行させることができる。
【0014】
そして、制御部20は、ナビゲーションプログラム21の処理により、車速センサ42およびジャイロセンサ43の出力情報である自立航法情報と地図情報30aとに基づいて車両の推定位置が存在し得る比較対象道路を複数設定し、GPS受信部41にて取得されたGPS信号の誤差円に基づいて比較対象道路を絞り込んだ上で、当該比較対象道路の形状と自立航法軌跡とが最も一致する道路を車両が走行している道路とみなすマップマッチング処理を行い、当該マップマッチング処理によって特定された道路上で推定位置を特定する。
【0015】
記録媒体30には、予め地図情報30aおよび誤差情報30bが記録されている。地図情報30aは、車両の位置や案内対象の施設の特定に利用される情報であり、車両が走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する施設を示す施設データ等を含んでいる。本実施形態において、施設データには、施設の種別や施設の位置(本実施形態においては、施設が存在する敷地の中央の点)、名称等の情報が対応づけられている。
【0016】
さらに、施設の中の一部(例えば、目的地として設定される可能性が高い施設として予め決められた施設)に対しては、施設の敷地の形状を示す情報である敷地形状データが対応づけられている。なお、本実施形態において敷地形状データは、目的地が存在する敷地の形状および当該敷地上の建築物の形状を複数の多角形によって表現するためのポリゴンデータである。すなわち、敷地形状データは、敷地および建築物の表面を分割して形成された多角形を示すデータであり、各多角形の形状および基準の位置(地図情報30aに規定された施設の位置)に対する相対的な位置を示すデータである。従って、制御部20は、当該データに従って仮想的な3次元空間上に多角形を配置することにより、目的地が存在する敷地の形状および当該敷地上の建築物の形状を再現することができる。
【0017】
また、地図情報30aには、複数の施設の種別のそれぞれに間口の長さを対応づけた情報が含まれている。具体的には、コンビニエンスストア、ガソリンスタンド、スーパーマーケット、デパートメントストア、これら以外の施設のそれぞれに、20m,30m,40m,60m,10mを対応づけた情報が含まれている。誤差情報30bは、ナビゲーションプログラム21の処理によって取得される推定位置と車両の実際の位置との誤差の最大値であって、当該車両が存在する道路の方向に発生し得る誤差の最大値である最大誤差を示す情報である。すなわち、上述のマップマッチング処理等によって車両の推定位置を特定する技術において推定位置と実際の位置とが異なり得るが、この位置の相違によって、車両が存在する道路の方向に誤差が発生する。そして、当該誤差の最大値は予め見積もることができる。
【0018】
例えば、GPS受信部41によるGPS信号の受信状況(信号の大きさや信号が取得できた衛星の数、周囲の建築物の状況)等によって推定位置の精度が変動する。また、車速センサ42やジャイロセンサ43によって推定した推定位置に基づいてマップマッチング処理を行った場合において、特定の道路形状(カーブ等)を通過した後の経過時間が長いほど推定位置の精度が低下すると見なすことが可能である。さらに、カメラによって既知の地物(路面上のペイント等)を撮影し、撮影した画像に基づいてから車両の推定位置を特定する構成において、推定位置を特定した後の経過時間が長いほど推定位置の精度が低下すると見なすことが可能である。そこで、このような各種の誤差の要因に基づいて、誤差の最大値を予め見積もることが可能である。
【0019】
なお、誤差は、車両が存在する道路の前後方向のいずれにも発生し得るが、一般的には、いずれの方向に誤差が生じているのか不明であることが多い。この場合、車両が存在する道路上での方向を誤差として規定せず、誤差の大きさのみを定義することが好ましい。そこで、本実施形態においては、上述の見積もりによって車両が存在する道路の前後方向に生じる誤差の最大値を特定し、方向を規定せずに誤差の大きさのみによって固定値の最大誤差を定義している。例えば、最大誤差1mである場合、車両が存在する道路の前後方向のいずれかに最大1mずれていることが想定されることになる。
【0020】
カメラ44は、車両のフロントガラスの内側の天井部分に取り付けられており、車両の前方の風景を一定時刻毎に撮影し、撮影された風景を示す画像情報を生成して出力する。制御部20は、カメラ44が出力する画像情報を取得し、画像解析や表示部で表示するための画像処理等を行うことができる。ユーザI/F部45は、運転者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しない表示部やスピーカ、入力部等を備えている。制御部20は、当該表示部にカメラ44で撮影された風景を示す画像の画像情報を出力し、表示部に当該風景を表示させることができる。また、制御部20は、当該風景の画像情報に対して任意の画像(案内図等)を重畳した画像情報を生成して表示部に出力することで、当該風景に任意の画像を重畳して表示させることができる。
【0021】
制御部20は、図示しないナビゲーションプログラム21の機能によりユーザI/F部45の入力部を介して運転者による目的地の入力を受け付け、車両の現在地から目的地までの予定経路を探索する。また、制御部20は、当該ナビゲーションプログラム21の機能により、車両の運転者に対して予定経路を指示する経路案内を行うことが可能である。本実施形態において当該ナビゲーションプログラム21は、目的地の周辺において車両の前方の風景を示す画像に目的地を示す目的地アイコンを重畳してユーザI/F部45の表示部に表示する機能を制御部20に実行させることができる。この機能を実現するため、ナビゲーションプログラム21は、間口長取得部21aと最大誤差取得部21bと表示位置特定部21cと画像表示部21dとを備えている。
【0022】
間口長取得部21aは、車両が存在する道路沿いの目的地の間口の長さを取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、利用者によって目的地として設定された施設の間口の長さを取得する。本実施形態においては、一部の施設に対して敷地形状データが対応づけられている。そこで、目的地の施設に当該敷地形状データが対応づけられている場合、制御部20は、当該敷地形状データを参照して目的地の間口の長さを取得する。一方、目的地の施設に当該敷地形状データが対応づけられていない場合、制御部20は、地図情報30aに含まれる施設データに基づいて当該目的地の施設の種別を取得する。さらに、制御部20は、施設の種別のそれぞれに間口の長さを対応づけた情報を参照し、目的地の施設の種別の間口の長さを取得する。
【0023】
最大誤差取得部21bは、車両が存在する道路の方向に発生し得る車両の推定位置と実際の位置との誤差の最大値である最大誤差を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、最大誤差取得部21bの処理により、誤差情報30bを参照して最大誤差を取得する。
【0024】
表示位置特定部21cは、誤差が0である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置となり、かつ、誤差が最大誤差である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置または目的地よりも手前の位置となるように、車両の推定位置に基づいて目的地アイコンの表示位置を特定する機能を制御部20に実現させるモジュールである。本実施形態においては、目的地の周辺において車両の前方の風景を示す画像に目的地を示す目的地アイコンを重畳する際に、目的地アイコンの表示位置が意図した位置からずれることによって車両が目的地を通過することがないように構成されている。
【0025】
すなわち、車両の推定位置と地図情報30aが示す目的地の位置とに基づいて目的地アイコンが目的地の間口内に表示されるように表示位置が特定される構成においては、車両の推定位置と実際の位置とで誤差が生じていなければ目的地アイコンが目的地の間口内に表示される。この場合、当該表示に基づいて目的地を目指す利用者が目的地を通過する可能性は低い。
【0026】
しかし、車両の推定位置と実際の位置とで誤差が生じている場合、目的地アイコンの表示位置が意図通りの位置にならず、車両が存在する道路の前後方向にずれる。そこで、誤差が最大誤差である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置または目的地よりも手前の位置となるように、車両の推定位置に基づいて目的地アイコンの表示位置を特定すれば、誤差が最大誤差である場合に、目的地アイコンが目的地よりも奥の位置に表示される可能性を抑制することができる。
【0027】
そこで、制御部20は、誤差が0である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置となり、かつ、誤差が最大誤差である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置または目的地よりも手前の位置となるように、車両の推定位置に基づいて目的地アイコンの表示位置を特定する。なお、当該表示位置は、実空間上の座標として特定される。
【0028】
画像表示部21dは、車両の前方の風景における目的地アイコンの表示位置に目的地アイコンを重畳した画像を表示部に表示する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、目的地アイコンの表示位置は実空間上の座標で特定されているため、制御部20は、カメラ44が撮影した車両の前方の風景を示す画像内で目的地アイコンの表示位置がいずれの画素に相当するのかを解析する。具体的には、本実施形態においては、カメラ44が撮影した風景に含まれる画像において、任意の位置の画素で撮影された道路と車両との実空間内での距離がカメラ44の視野角から予め特定され、画素と距離とが予め対応づけられている。
【0029】
そこで、制御部20は、表示位置特定部21cの処理によって取得された表示位置と車両との距離を特定し、道路と目的地との境界線上で当該距離に対応する画素を特定する。そして、制御部20は、当該画素に予め決められた形状の目的地アイコンを重畳してカメラ44による撮影画像を表示するための制御信号を生成し、ユーザI/F部45の表示部に対して出力する。この結果、ユーザI/F部45の表示部においては、カメラ44による撮影画像に目的地アイコンが重畳された画像が表示される。
【0030】
以上の構成において、車両の推定位置と実際の位置との誤差が0である場合には目的地アイコンが間口内の位置に表示され、誤差が最大誤差であったとしても目的地アイコンの表示位置が目的地の間口内の位置または目的地よりも手前の位置となる。従って、目的地アイコンが目的地よりも奥の位置に表示されることはなく、目的地を通過してしまう状況が発生することを抑制することができる。なお、本実施形態において、手前側は車両が存在する道路における車両の進行方向の後方側を示し、奥側は車両が存在する道路における車両の進行方向の前方側を示している。
【0031】
(2)運転支援処理:
次に、ナビゲーションプログラム21による運転支援処理を説明する。図2はナビゲーションプログラム21が実行する運転支援処理を示すフローチャートであり、図3図4は、車両が存在する道路Rの例を左側に示し、当該道路R上で表示部に表示され得る画像の例を右側に示している。ここでは、図3図4に示す例を適宜参照して図2に示す運転支援処理を説明する。なお、本実施形態においては、ナビゲーションプログラムの処理により制御部20が目的地の設定を受け付け、当該目的地までの予定経路を決定した状態において所定期間(例えば、100ms)毎に運転支援処理が実行される。また、本実施形態において、目的地は、施設を指定することによって設定することが可能であり、また、実空間上の任意の座標(緯度および経度)によって設定することも可能である。
【0032】
運転支援処理が開始されると、制御部20は、ナビゲーションプログラム21の処理により、現在地から目的地までの距離を取得する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号および地図情報30aに基づいて車両の現在地を特定する。さらに、目的地が施設を指定することによって設定されていた場合、制御部20は、地図情報30aに含まれる当該目的地の施設の施設データを参照し、施設の位置を目的地として特定する。一方、目的地が実空間上の座標によって設定されていた場合、制御部20は、当該座標の位置を目的地として特定する。そして、制御部20は、車両の現在地と目的地との距離を取得する。なお、図3図4においては、車両が存在する道路R沿いに目的地の施設Gが存在する例を示している。
【0033】
次に、制御部20は、ナビゲーションプログラム21の処理により、目的地までの距離が所定距離以下であるか否かを判定し(ステップS105)、目的地までの距離が所定距離以下であると判定されない場合、制御部20は、運転支援処理を終了する。本実施形態においては、所定期間毎に運転支援処理を実行しているため、目的地までの距離が所定距離以下であると判定されるまでステップS100,S105を繰り返すことになる。
【0034】
一方、ステップS105において、目的地までの距離が所定距離以下であると判定された場合、制御部20は、最大誤差取得部21bの処理により、最大誤差を取得する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、誤差情報30bを参照し、最大誤差を取得する。
【0035】
次に、制御部20は、表示位置特定部21cの処理により、目的地が座標で指定されたか否かを判定する(ステップS115)。ステップS115において、目的地が座標で指定されたと判定されない場合、すなわち、施設を指定することによって目的地が設定された場合、制御部20は、表示位置特定部21cの処理により、目的地の敷地形状データが存在するか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、目的地として設定された施設に対して対応づけられた敷地形状データが地図情報30aに含まれている場合に目的地の敷地形状データが存在すると判定する。
【0036】
ステップS120において、目的地の敷地形状データが存在すると判定された場合、制御部20は、表示位置特定部21cの処理により、敷地形状データに基づいて間口の手前側の端点と奥側の端点を取得する(ステップS125)。すなわち、本実施形態において想定する仮想的な3次元空間上での単位距離と、実空間上での単位距離との関係は予め決められており、制御部20は、敷地形状データに基づいて仮想的な3次元空間上で施設の敷地の形状を特定して間口の端点を特定することにより、実空間上での間口の端点の位置を特定する。
【0037】
具体的には、制御部20は、仮想的な3次元空間上の任意の位置に目的地である施設の位置を設定する。さらに、制御部20は、当該施設の位置を基準にして敷地形状データが示す多角形を仮想的な3次元空間上に配置することで、目的地の敷地の形状および当該敷地上の建築物の形状を仮想的な3次元空間上に再現する。ここで、敷地の形状の周は、道路と施設との境界線であるため、制御部20は、敷地の境界線の中から車両が存在する道路に沿った境界線を特定し、当該境界線において道路の進行方向の後方側に位置する端点を手前側の端点、前方側に位置する端点を奥側の端点として取得する。
【0038】
そして、制御部20は、地図情報30aに基づいて目的地である施設の実空間上での位置(座標)を特定し、仮想的な3次元空間上での単位距離と実空間上での単位距離との関係から手前側の端点および奥側の端点の位置を実空間上で特定する。例えば、図3図4の左側の道路R沿いに示す目的地Gの敷地は矩形の形状であり、道路Rと矩形の1辺とが接して形成する境界線が間口(太い直線)を形成している。これらの例においてステップS125が実行されると、図3においては手前側の端点P13の位置が実空間上で取得され、奥側の端点P12の位置が実空間上で取得される。図4においては手前側の端点P23の位置が実空間上で取得され、奥側の端点P22の位置が実空間上で取得される。
【0039】
次に、制御部20は、間口長取得部21aの処理により、目的地の間口の長さを取得する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、ステップS125において取得された実空間上での端点間の距離を間口の長さとして取得する。例えば、図3においては端点P13,P12間の距離L11が取得され、図4においては端点P23,P22間の距離L21が取得される。
【0040】
一方、ステップS120において、目的地の敷地形状データが存在すると判定されない場合、制御部20は、表示位置特定部21cの処理により、目的地の種別を取得する(ステップS135)。すなわち、制御部20は、地図情報30aに含まれる当該目的地の施設の施設データを参照して目的地である施設の種別を取得する。
【0041】
次に、制御部20は、間口長取得部21aおよび表示位置特定部21cの処理の処理により、目的地の間口の長さおよび間口の手前側の端点および奥側の端点を取得する(ステップS140)。すなわち、制御部20は、間口長取得部21aの処理により、地図情報30aに含まれる、複数の施設の種別のそれぞれに間口の長さを対応づけた情報を参照し、ステップS135で取得された目的地の種別に対応づけられた間口の長さを特定し、目的地の間口の長さとして取得する。例えば、図3に示す目的地Gの種別がコンビニエンスストアである場合、制御部20は、20mを目的地Gの間口の長さL11として取得する。さらに、制御部20は、表示位置特定部21cの処理により、地図情報30aの施設データに基づいて目的地である施設の位置を取得し、施設の位置から道路の境界線に延ばした垂線が道路の境界線と交わる位置を目的地の間口の中央と見なす。そして、制御部20は、当該間口の中央から間口の長さの1/2だけ奥側および手前側に移動した位置を間口の端点として特定する。
【0042】
次に、制御部20は、表示位置特定部21cの処理により、間口の長さの1/2が最大誤差以上であるか否かを判定する(ステップS145)。そして、ステップS145において、間口の長さの1/2が最大誤差以上であると判定されない場合、すなわち、間口の長さの1/2が最大誤差未満である場合、制御部20は、表示位置特定部21cの処理により、間口の奥側の端点から最大誤差だけ手前側の位置を目的地アイコンの表示位置として設定する(ステップS150)。例えば、図3に示す例においては最大誤差がEmaxであり、間口の長さL11の1/2は最大誤差Emax未満である。従って、この例においては、間口の奥側の端点P12から最大誤差Emaxだけ手前側の位置P11が目的地アイコンの表示位置として設定される。
【0043】
一方、ステップS145において、間口の長さの1/2が最大誤差以上であると判定されない場合、制御部20は、表示位置特定部21cの処理により、間口の手前側の端点から最大誤差だけ奥側の位置を目的地アイコンの表示位置として設定する(ステップS155)。例えば、図4に示す例においては最大誤差がEmaxであり、間口の長さL21の1/2は最大誤差Emax未満である。従って、この例においては、間口の手前側の端点P21から最大誤差Emaxだけ奥側の位置P21が目的地アイコンの表示位置として設定される。
【0044】
なお、ステップS115において、目的地が座標で指定されたと判定された場合、制御部20は、表示位置特定部21cの処理により、目的地の座標から最大誤差だけ手前側の位置を目的地アイコンの表示位置として設定する(ステップS160)。すなわち、目的地が座標で指定された場合、目的地が施設であるとは限らないため、目的地を通過してしまう可能性を抑制するように、制御部20は、目的地の座標から最大誤差だけ手前側の位置を目的地アイコンの表示位置として設定する。
【0045】
ステップS150,S155,S160のいずれかにおいて目的地アイコンの表示位置が設定されると、制御部20は、画像表示部21dの処理により、表示位置を風景の画像内で特定し、目的地アイコンを表示する(ステップS165)。すなわち、ステップS150,S155,S160において目的地アイコンの表示位置は実空間上の座標で特定されている。また、カメラ44が撮影した風景に含まれる画像において、任意の位置の画素で撮影された道路と車両との実空間内での距離がカメラ44の視野角から予め特定され、画素と距離とが予め対応づけられている。
【0046】
そこで、制御部20は、GPS受信部41、車速センサ42、ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両の現在地を取得し、当該車両の現在地と目的地アイコンの表示位置との間の距離を取得する。さらに、制御部20は、カメラ44が撮影した車両の前方の風景を示す画像に基づいて所定の画像処理(ハフ変換等)を実行し、目的地と道路との境界線上の画素を特定する。また、制御部20は、当該境界線上の画素であって、車両の現在地と目的地アイコンの表示位置との間の距離が対応づけられた画素を取得し、当該画素を目的地アイコンが表示されるべき画素として特定する。
【0047】
そして、制御部20は、当該画素に予め決められた形状の目的地アイコンを重畳してカメラ44による撮影画像を表示するための制御信号を生成し、ユーザI/F部45の表示部に対して出力する。この結果、ユーザI/F部45の表示部においては、カメラ44による撮影画像に目的地アイコンが重畳された画像が表示される。なお、本実施形態においては、目的地アイコンを重畳する対象の画素が画像の下側に近いほど(画素に示される像が車両に近いほど)目的地アイコンの大きさが大きくなるように、目的地アイコンの大きさが画素毎に予め規定されている。従って、制御部20は、画素の位置に応じて目的地アイコンの大きさを拡大あるいは縮小してカメラ44による撮影画像に目的地アイコンを重畳する。
【0048】
図3の右側においては、間口の長さの1/2が最大誤差未満である場合において目的地アイコンが重畳された画像の例を示している。図3に示す画像I11,I12,I14はユーザI/F部45の表示部に表示される画像の例であり、画像I11は、車両の推定位置と実際の位置P15との誤差が0である場合の例である。すなわち、車両の推定位置と実際の位置との誤差が0である場合、目的地アイコンの表示位置P11をカメラ44で撮影した場合における撮影画像内での表示位置P11の像の位置Ip1(目的地の像との関係で意図通りの位置)に目的地アイコンIdが表示される。
【0049】
一方、車両の推定位置と実際の位置との誤差が0ではない場合、カメラ44で撮影した場合における撮影画像内で目的地アイコンは目的地の像との関係で意図通りの位置には表示されない。例えば、車両の実際の位置が車両の推定位置P15よりも最大誤差Emaxだけ奥側の位置P16である場合を想定する。この場合、車両の推定位置P15は上述の例と同一であるため、画像I12に示すように、カメラ44の撮影画像内で目的地アイコンIdが表示される位置Ip1は、画像I11と同一の位置である。しかし、車両の実際の位置P16は推定位置P15よりも奥側であるため、画像I12内における目的地Gの像Igは画像I11内における目的地Gの像Igよりも画面の端側(手前側)に移動した状態となる。
【0050】
そして、図3に示す例の場合には、間口の奥側の端点P12から最大誤差Emaxだけ手前側の位置P11が目的地アイコンの表示位置であるため、車両の推定位置P15と表示位置P11との相対位置関係は車両の実際の位置P16と端点P12との相対位置関係と等しい。従って、車両の実際の位置P16が車両の推定位置P15よりも最大誤差Emaxだけ前方にずれていたとしても、図3の画像I12に示すように、目的地の間口の奥側の端点に目的地アイコンが表示され、目的地の間口の奥側の端点よりもさらに奥に目的地アイコンが表示されることはない。このため、画像I12における当該目的地アイコンを目印にして目的地Gを目指した利用者が当該目的地Gを通過する可能性を抑制することができる。
【0051】
さらに、車両の実際の位置が車両の推定位置P15よりも最大誤差Emaxだけ後方の位置P17である場合を想定する。この場合、車両の推定位置P15は上述の例と同一であるため、画像I14に示すように、カメラ44の撮影画像内で目的地アイコンIdが表示される位置Ip1は、画像I11と同一の位置である。しかし、車両の実際の位置P17は推定位置P15よりも後方であるため、画像I14内における目的地Gの像Igは画像I11内における目的地Gの像Igよりも画面の中央側(奥側)に移動した状態となる。
【0052】
そして、図3に示す例の場合において、位置P11よりも道路Rに沿って最大誤差Emaxだけ後方の位置P14を想定すると、車両の実際の位置P17と位置P14との相対位置関係が車両の推定位置P15と表示位置P11との相対位置関係に等しくなる。従って、車両の実際の位置P17が車両の推定位置P15よりも最大誤差Emaxだけ後方にずれている場合、図3の画像I14に示すように、目的地の手前側に目的地アイコンが表示される。このように、目的地アイコンが目的地の手前に表示されていたとしても、当該表示は目的地の周辺でなされるため、実際の風景を視認している利用者が目的地を通過してしまう可能性は少ない。
【0053】
図4の右側においては、間口の長さの1/2が最大誤差以上である場合において目的地アイコンが重畳された画像の例を示している。図4に示す画像I21,I24,I23はユーザI/F部45の表示部に表示される画像の例であり、画像I21は、車両の推定位置と実際の位置P25との誤差が0である場合の例である。すなわち、車両の推定位置と実際の位置との誤差が0である場合、目的地アイコンの表示位置P21をカメラ44で撮影した場合における撮影画像内での表示位置P21の像の位置Ip2(目的地の像との関係で意図通りの位置)に目的地アイコンIdが表示される。
【0054】
一方、車両の推定位置と実際の位置との誤差が0ではない場合、カメラ44で撮影した場合における撮影画像内で目的地アイコンは目的地の像との関係で意図通りの位置には表示されない。例えば、車両の実際の位置が車両の推定位置P25よりも最大誤差Emaxだけ奥側の位置P26である場合を想定する。この場合、車両の推定位置P25は上述の例と同一であるため、画像I24に示すように、カメラ44の撮影画像内で目的地アイコンIdが表示される位置Ip2は、画像I21と同一の位置である。しかし、車両の実際の位置P26は推定位置P25よりも奥側であるため、画像I24内における目的地Gの像Igは画像I21内における目的地Gの像Igよりも画面の端側(手前側)に移動した状態となる。
【0055】
そして、図4に示す例の場合において、位置P21より最大誤差Emaxだけ奥側の位置P24を想定すると、車両の実際の位置P26と位置P24との相対位置関係が車両の推定位置P25と表示位置P21との相対位置関係に等しくなる。また、位置P24は間口内に位置する。従って、車両の実際の位置P26が車両の推定位置P25よりも最大誤差Emaxだけ前方にずれていたとしても、図4の画像I24に示すように、目的地の間口内に目的地アイコンが表示される。このため、画像I24における当該目的地アイコンを目印にして目的地Gを目指した利用者が当該目的地Gを通過する可能性を抑制することができる。
【0056】
さらに、車両の実際の位置が車両の推定位置P25よりも最大誤差Emaxだけ後方の位置P27である場合を想定する。この場合、車両の推定位置P25は上述の例と同一であるため、画像I23に示すように、カメラ44の撮影画像内で目的地アイコンIdが表示される位置Ip2は、画像I21と同一の位置である。しかし、車両の実際の位置P27は推定位置P25よりも後方であるため、画像I23内における目的地Gの像Igは画像I21内における目的地Gの像Igよりも画面の中央側(奥側)に移動した状態となる。
【0057】
そして、図4に示す例の場合において、間口の手前側の端点P23から最大誤差Emaxだけ奥側の位置P21が目的地アイコンの表示位置であるため、車両の推定位置P25と表示位置P21との相対位置関係は車両の実際の位置P27と端点P23との相対関係に等しい。従って、車両の実際の位置P27が車両の推定位置P25よりも最大誤差Emaxだけ後方にずれている場合、図4の画像I23に示すように、目的地の手前側の端点に目的地アイコンが表示される。このため、画像I23における当該目的地アイコンを目印にして目的地Gを目指した利用者が当該目的地Gを通過する可能性を抑制することができる。以上のように、間口の長さの1/2が最大誤差以上である場合においては、誤差がどのような値であったとしても、間口内に目的地アイコンを表示させることができる。さらに、目的地アイコンが表示され得る範囲の中心は、間口の中心の位置あるいは間口の中心よりも後方の位置になる。従って、車両の前方の風景を示す画像内で早期に目的地アイコンに着目させることが可能になり、利用者が目的地に到達することが容易になる。
【0058】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、ナビゲーションシステム10は、車両に固定的に搭載されていても良いし、持ち運び可能なナビゲーションシステム10が車両内に持ち込まれて利用される態様であっても良い。また、移動体は四輪車の他にも種々の形態が想定され、二輪車であってもよいし、歩行者であっても良い。移動体が歩行者である場合、GPS受信部41、カメラ44等が組み込まれたナビゲーションシステム10を歩行者が携帯する構成等を想定可能である。
【0059】
さらに、ユーザI/F部45の表示部に表示される画像は、風景の画像に目的地アイコンが重畳された画像であれば良く、他の画像が併記されても良い。例えば、移動体が存在する道路の周辺の地図が併記されても良い。
【0060】
さらに、目的地アイコンの表示位置は、目的地と道路との境界線上である構成の他、当該境界線から道路に垂直な方向に所定距離だけ目的地側に移動させた位置であっても良いし、道路上であっても良い。また、歩道が存在する場合、歩道上であってもよいし、歩道と目的地との境界線上であっても良い。
【0061】
さらに、ナビゲーションシステムにおいては、移動体の前方の風景に目的地を示す目的地アイコンを重畳した画像を表示部に表示することができればよく、風景は、実風景であってもよいし、風景を描写した絵であってもよい。前者は移動体の前方の風景を撮影するカメラによって画像を生成する構成として実現可能であり、後者は移動体の前方に存在する建築物や道路等の地物を描画した画像を生成する構成として実現可能である。目的地アイコンは、風景に重畳されることによって目的地を示すように構成されていれば良く、旗や矢印の画像等によって構成可能である。
【0062】
間口長取得手段は、移動体が存在する道路沿いの目的地の間口の長さを取得することができればよい。すなわち、目的地アイコンが目的地の奥に表示されないようにするための指標として移動体が存在する道路沿いの目的地の間口の長さを取得することができればよい。従って、間口の長さは、目的地アイコンが目的地の奥に表示される可能性を抑制することができるように定義されれば良く、移動体が存在する道路と目的地の敷地とが接触する辺の長さを間口の長さとして特定しても良いし、間口の長さを推定することによって当該間口の長さを特定しても良い。
【0063】
最大誤差取得手段は、移動体が存在する道路の方向に発生し得る移動体の推定位置と実際の位置との誤差の最大値である最大誤差を取得することができればよい。すなわち、経路案内等のために移動体の推定位置を特定する技術において推定位置と実際の位置とが異なり得るが、この位置の相違によって、移動体が存在する道路の方向に誤差が発生する。そして、当該誤差の最大値は予め決められた規則で見積もることができる。
【0064】
例えば、推定位置をGPS信号に基づいて特定する場合にGPS信号の受信状況(信号の大きさや信号が取得できた衛星の数、周囲の建築物の状況)等によって推定位置の精度が変動する。また、車速センサやジャイロセンサによって推定した推定位置に基づいてマップマッチング処理を行った場合において、特定の道路形状(カーブ等)を通過した後の経過時間が長いほど推定位置の精度が低下すると見なすことが可能である。さらに、カメラによって既知の地物(路面上のペイント等)を撮影し、撮影した画像に基づいて移動体の推定位置を特定する構成において、推定位置を特定した後の経過時間が長いほど推定位置の精度が低下すると見なすことが可能である。そこで、このような各種の誤差の要因に基づいて、誤差の最大値を予め見積もることが可能であり、最大誤差取得手段においては、当該見積もりの結果としての最大誤差を取得することができればよい。なお、最大誤差は予め決められた固定の値であっても良いし、GPS信号の受信状況等に応じて変化する値であっても良い。
【0065】
なお、誤差は、移動体が存在する道路の前後方向のいずれにも発生し得るが、一般的には、いずれの方向に誤差が生じているのか不明であることが多い。この場合、移動体が存在する道路上での方向を誤差として規定せず、誤差の大きさのみを定義することが好ましい。例えば、最大誤差1mである場合、移動体が存在する道路の前後方向のいずれかに最大1mずれていることが想定されることになる。
【0066】
表示位置特定手段は、誤差が0である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置となり、かつ、誤差が最大誤差である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置または目的地よりも手前の位置となるように、移動体の推定位置に基づいて目的地アイコンの表示位置を特定することができればよい。すなわち、推定位置に基づいて目的地アイコンが目的地の間口内に表示されるように表示位置を特定した場合、移動体の推定位置と実際の位置とで誤差が生じていなければ目的地アイコンが目的地の間口内に表示される。しかし、移動体の推定位置と実際の位置とで誤差が生じている場合、目的地アイコンの表示位置が意図通りの位置にならず、移動体が存在する道路の前後方向にずれる。そこで、誤差が最大誤差である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置または目的地よりも手前の位置となるように、移動体の推定位置に基づいて目的地アイコンの表示位置を特定すれば、目的地アイコンが目的地よりも奥の位置に表示される可能性を抑制することができる。
【0067】
なお、目的地の間口の位置は、目的地の位置と目的地の敷地の形状から特定されても良いし、間口の位置が予め地図情報として規定されてもよく種々の構成が採用可能であり、いずれにしても、移動体の推定位置と目的地との相対関係から間口の位置が特定されて誤差が0である場合の表示位置が特定されれば良い。そして、間口の長さおよび位置から誤差が最大誤差である場合における表示位置のずれを想定すれば、誤差が最大誤差である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置または目的地よりも手前の位置となるように目的地アイコンの表示位置を特定することができる。なお、手前側は、移動体が存在する道路における移動体の進行方向の後方側を示し、奥側は、移動体が存在する道路における移動体の進行方向の前方側を示している。また、間口内の位置は目的地の間口の内側の位置であるため、移動体が存在する道路に沿って存在する目的地の前方側の端点と後方側の端点との間の位置が間口内の位置となる。さらに、目的地よりも手前の位置は、移動体が存在する道路に沿って存在する目的地の後方側の端点よりもさらに後方側の位置であり、目的地よりも奥の位置は、移動体が存在する道路に沿って存在する目的地の前方側の端点よりもさらに前方側の位置である。
【0068】
画像表示手段は、移動体の前方の風景における目的地アイコンの表示位置に目的地アイコンを重畳した画像を表示部に表示することができればよい。すなわち、当該表示位置に目的地アイコンを重畳することによって、当該目的地アイコンによって、少なくとも移動体が目的地の奥まで達することがないように利用者を誘導することができればよい。
【0069】
さらに、表示位置を特定するための構成例として、間口の長さの1/2が最大誤差未満である場合、表示位置特定手段が、移動体が存在する道路の方向における間口の奥側の端点から最大誤差だけ手前側の位置を目的地アイコンの表示位置とするように構成してもよい。すなわち、一般的には、移動体が存在する道路において前後方向のいずれに誤差が生じているのか不明であることが多い。従って、目的地の間口の中央を目的地アイコンの表示位置とすれば、誤差が前後方向のいずれに発生していた場合であっても目的地アイコンが間口内に表示される可能性が高くなる。
【0070】
しかし、目的地の間口の長さの1/2が最大誤差未満である場合、目的地の間口の中央を目的地アイコンの表示位置としても目的地アイコンが目的地の間口内に表示されない場合が発生し得る。そこで、間口の長さの1/2が最大誤差未満である場合に、移動体が存在する道路の方向における間口の奥側の端点から最大誤差だけ手前側の位置を目的地アイコンの表示位置とする構成とする。この構成によれば、誤差が奥側に最大誤差だけ生じていたとしても間口の奥側の端点に目的地アイコンが表示され、誤差が手前側に最大誤差だけ生じていた場合には、間口よりも手前の位置に目的地アイコンが表示されることになる。
【0071】
さらに、表示位置を特定するための構成例として、間口の長さの1/2が最大誤差以上である場合、表示位置特定手段が、移動体が存在する道路の方向における間口の手前側の端点から最大誤差だけ奥側の位置を目的地アイコンの表示位置とするように構成しても良い。この構成によれば、誤差が手前側に最大誤差だけ生じていたとしても間口の手前側の端点に目的地アイコンが表示され、誤差が奥側に最大誤差だけ生じていた場合であっても間口内に目的地アイコンが表示されることになる。従って、誤差がどのような値であったとしても、間口内に目的地アイコンを表示させることができる。さらに、目的地アイコンが表示され得る範囲の中心は、間口の中心の位置あるいは間口の中心よりも手前側の位置になる。従って、移動体の前方の風景を示す画像内で早期に目的地アイコンに着目させることが可能になり、利用者が目的地に到達することが容易になる。むろん、間口の長さの1/2が最大誤差以上である場合には、目的地アイコンの表示位置を他の位置にすることも可能であり、目的地の間口の中央を目的地アイコンの表示位置とする構成等を採用可能である。
【0072】
さらに、間口の端点を特定するための構成例として、目的地の敷地の形状を示す敷地形状データが存在する場合に、表示位置特定手段が、敷地形状データに基づいて間口の端点を特定し、目的地の敷地形状データが存在しない場合に、表示位置特定手段が、目的地について予め規定された間口の長さの1/2だけ、目的地の座標から移動体が存在する道路の方向における奥側および手前側に移動した位置を間口の端点として特定する構成としても良い。
【0073】
ここで、敷地形状データは、目的地の敷地の形状を特定することができるように定義されたデータであり、運転支援システムによって参照可能な記録媒体に当該敷地形状データが記録されている場合には、敷地形状データが存在すると見なされる。そして、敷地形状データが存在する場合には、当該敷地形状データに基づいて目的地の敷地の形状を特定することが可能であり、当該敷地の形状に基づいて間口の長さおよび間口の端点を特定すればよい。むろん、敷地形状データは、少なくとも目的地の敷地の形状が特定できるように定義されていれば良く、目的地の3次元形状を特定することに伴って敷地の形状が特定できるように定義されたポリゴンデータであってもよい。
【0074】
一方、敷地形状データが存在しない場合、間口の形状を正確に特定することができない。この場合は、間口の長さを特定することにより、目的地の間口の中央から移動体が存在する道路の方向における奥側および手前側に間口の長さの1/2だけ移動した位置を間口の端点と見なすことが可能になる。従って、目的地の全てについて敷地形状データを定義しなくても、間口の端点を特定することが可能になる。
【0075】
なお、この場合における間口の長さは予め規定され、運転支援システムによって参照可能な記録媒体に当該長さを示す情報が記録されていれば良い。また、間口の長さは各目的地について定義されても良いし、目的地の属性から間口の長さが推定されても良い。後者としては、間口の長さが目的地の種別毎に予め規定されている構成を採用可能である。すなわち、各目的地に予め目的地の種類を示す情報が対応付けられているように構成し、任意の目的地についての目的地アイコンを表示する際に、当該目的地の種別から間口の長さを特定し、間口の端点を特定する構成を採用可能である。
【0076】
さらに、本発明のように、誤差が最大誤差である場合に目的地アイコンの表示位置が間口内の位置または目的地よりも手前の位置となるように目的地アイコンの表示位置を特定する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合や、複数の装置によって実現される場合、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合が想定可能であり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーションシステムや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0077】
10…ナビゲーションシステム、20…制御部、21…ナビゲーションプログラム、21a…間口長取得部、21b…最大誤差取得部、21c…表示位置特定部、21d…画像表示部、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…誤差情報、41…GPS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…カメラ、45…ユーザI/F部
図1
図2
図3
図4