【実施例1】
【0017】
この発明の実施例1に係るギヤポンプを図面にしたがって説明する。
図1と
図2に示すように、ギヤポンプは、ポンプボディ10と、ポンプカバー20と、アウタロータ40と、インナロータ45と、駆動軸1とを備える。
ポンプボディ10は、円板状の底壁11と、この底壁11の周縁部に沿って円筒状に形成された周壁13とを備え、これら底壁11と周壁13によって一端側に開口する凹部14が形成されている。
また、底壁11には、その中心から次に詳述するアウタロータ40とインナロータ45との偏心量Aに相当する分だけ偏心した位置に中心をもつ貫通孔12が形成されている。
ポンプカバー20は、ポンプボディ10の周壁13の端面にボルト等(図示しない)によって密封状に取り付けられ、ポンプボディ10の凹部14を閉じてロータ組込室15を構成する。
【0018】
図1と
図2に示すように、アウタロータ40は、ロータ組込室15に回転可能に嵌込まれる。このアウタロータ40の内周面の周方向には複数の内歯41が形成される。
インナロータ45は、アウタロータ40の内周面に偏心量Aだけ偏心した状態で組み込まれ、その外周面の周方向には、アウタロータ40の複数の内歯41に噛み合う複数の外歯46が形成されている。そして、アウタロータ40の内歯41とインナロータ45の外歯46との間にはギヤ室50が拡開及び縮小可能に形成される。
インナロータ45の中心部には非円形の軸孔47が形成され、この軸孔47には、ポンプボディ10の貫通孔12を通して駆動軸1の先端軸部2がトルク伝達可能に嵌挿される。
この実施例1において、駆動軸1の先端軸部2外周面の軸方向に面取り加工された平坦面3が形成され、軸孔47の内周面には、平坦面3に対向する位置において軸孔47の円弧の弦をなすようにして平坦部分48が形成されている。
そして、駆動軸1のトルク伝達を受けてインナロータ45が回転することで、このインナロータ45の外歯46にアウタロータ40の内歯41が噛み合った状態でアウタロータ40が追従回転し、これによってポンプ作用をなす。
【0019】
図2に示すように、ポンプボディ10と、ポンプカバー20とのうち、少なくとも一方の部材、この実施例1ではポンプボディ10及びポンプカバー20の両部材に対し、吸入ポートを構成する正面形状が円弧形状をなす吸入ポート溝22と、吐出ポートを構成する正面形状が円弧形状をなす吐出ポート溝31とがそれぞれ形成されている。
なお、吸入ポート溝22は、図示しない吸入系経路に接続され、吐出ポート溝31は、図示しない吐出系経路に接続される。
【0020】
図3と
図4に示すように、吸入ポート溝22の終端壁部27に近い外周側壁部25の部分には、吸入ポート溝22の内周側壁部26に向けて突出することで径方向の溝幅を狭める絞り部60が形成されている。
この実施例1において、
図3〜
図5に示すように、絞り部60は、半円弧状の山形状をなして突出されている。そして、絞り部60の頂部をなす最大絞り部61と終端壁部27との間には、終端壁部27から吸入ポート溝22側で最も近い位置に構成される内歯41と外歯46との間のギヤ室50内のオイルを高圧化する高圧化領域62が設けられている。
【0021】
また、高圧化領域62は、吸入ポート溝22の終端壁部27から複数の内歯41の1ピッチ分に相当する距離を隔てる範囲に設けられるように、吸入ポート溝22の外周側壁部25に対する絞り部60の突出位置が設定されている。
また、吸入ポート溝22は、絞り部60の最大絞り部61から終端壁部27に向かって径方向の溝幅がしだいに大きく形成されている。
【0022】
この実施例1に係るギヤポンプは上述したように構成される。
したがって、ポンプ作動時には、駆動軸1のトルク伝達を受けてインナロータ45が、
図1に向かって時計回り方向の矢印P方向へ回転駆動され、これに伴ってアウタロータ40が追従回転する。そして、アウタロータ40の内歯41とインナロータ45の外歯46との間のギヤ室50が拡開及び縮小されることで、吸入ポート溝22に供給されたオイルがアウタロータ40の内歯41とインナロータ45の外歯46との間のギヤ室50に吸入された後、ギヤ室50のオイルが吐出ポート溝31に吐出される。
【0023】
ポンプ作動時の吸入ポート溝22の終端壁部27の近傍のオイルの流れは、
図5に示す矢印ようにして流れる。
すなわち、吸入ポート溝22側の低圧のオイルがギヤ室50内に吸入されると、吸入されたオイルは遠心力の作用を受けて外周側へ流れ、高圧化される。
この高圧化されたオイルの一部が吸入ポート溝22の絞り部60に沿って終端壁部27に向けて流れ、終端壁部27を経て再び、絞り部60に向けて流れる。
したがって、吸入ポート溝22の終端壁部27に近い外周側壁部25に突出された絞り部60によって設けられた高圧化領域62内においては、オイルが高圧化されて高圧化状態に保たれる。
【0024】
前記したようにして、吸入ポート溝22の終端壁部27から吸入ポート溝22側で最も近い位置に構成される内歯41と外歯46との間のギヤ室50内のオイルを高圧化することができる。これによって、ギヤ室50内のオイル中にキャビテーションが発生することを良好に抑制することができる。
この結果、キャビテーションが原因となるオイルの吐出量の低下、油圧振動、異音等の発生を抑制することができる。
【0025】
また、この実施例1において、高圧化領域62は、吸入ポート溝22の終端壁部27から複数の内歯41の1ピッチ分に相当する(1ピッチよりも若干小さくてもよく、大きくてもよい)距離を隔てる範囲に設けられるように、吸入ポート溝22の外周側壁部25に対する絞り部60の最大絞り部61の突出位置が設定されている。このため、吸入ポート溝22の終端壁部27から吸入ポート溝22側で最も近い位置に構成される内歯41と外歯46との間のギヤ室50内のオイルを効率よく高圧化することができる。
【0026】
また、この実施例1において、
図3と
図4に示すように、吸入ポート溝22は、絞り部60の最大絞り部61から終端壁部27に向かって径方向の溝幅がしだいに大きく形成されている。
このため、吸入ポート溝22の終端壁部27から吸入ポート溝22側で最も近い位置に構成される内歯41と外歯46との間のギヤ室50内に対しオイルが円滑に吸入され、オイルの吸入不足の発生を抑制することができる。
【実施例2】
【0027】
次に、この発明の実施例2の
図6と
図7にしたがって説明する。
図6と
図7に示すように、この実施例2においては、吸入ポート溝22の外周側壁部25に対する絞り部60によって設けられる高圧化領域62内に溝深さが浅い部分が設けられるものである。
この実施例2において、吸入ポート溝22の絞り部60の最大絞り部61において溝底面の径方向に断面円弧状の突出部70が突出されている。
この実施例2のその他の構成は、実施例1と同様にして構成されるため、同一構成部分に対し同一符号を付記してその説明は省力する。
【0028】
したがって、この実施例2においても実施例1と同様の作用効果を奏する。
特に、高圧化領域62内において高圧化されたオイルが高圧化領域62の外側に位置する吸入ポート溝22の部分へ流れることを溝深さが浅い部分を構成する突出部70によって抑制することができる。
これによって、吸入ポート溝22の終端壁部27から吸入ポート溝22側で最も近い位置に構成される内歯41と外歯46との間のギヤ室50内のオイルが効率よく高圧化され、キャビテーションの発生をより一層良好に抑制することができる。
【0029】
なお、この発明は前記実施例1及び2に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1及び2においては、吸入ポート溝22の終端壁部27に近い外周側壁部25の部分から吸入ポート溝22の内周側壁部26に向けて突出されて径方向の溝幅を狭める絞り部60が半円弧状の山形状をなす場合を例示したが、
図8に示すように、吸入ポート溝22の絞り部160の最大絞り部161から外周側壁部25に向かってしだいに溝幅が拡大されるよう傾斜形状に絞り部160を形成してもよい。
さらに、
図9に示すように、吸入ポート溝22の絞り部260の最大絞り部261から外周側壁部25に向かって急激に溝幅が拡大される形状に絞り部260を形成してもよい。
また、前記実施例1及び2においては、ポンプボディ10及びポンプカバー20の両部材に対し、吸入ポートを構成する吸入ポート溝22と、吐出ポートを構成する吐出ポート溝31とがそれぞれ形成される場合を例示したが、ポンプボディ10と、ポンプカバー20とのうち、一方の部材に対し、吸入ポート溝22と吐出ポート溝31とが形成される場合においてもこの発明を実施することができる。