特許第6236960号(P6236960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236960火花点火式内燃機関の制御装置および制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236960
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】火花点火式内燃機関の制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/04 20060101AFI20171120BHJP
   F02B 37/18 20060101ALI20171120BHJP
   F02B 37/12 20060101ALI20171120BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20171120BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20171120BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20171120BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20171120BHJP
   F02D 23/00 20060101ALI20171120BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20171120BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F02B37/04 C
   F02B37/18 A
   F02B37/12 302A
   F02B37/00 302A
   F02B37/00 302G
   F01N3/20 J
   F01N3/24 R
   F02D13/02 B
   F02D13/02 J
   F02D13/02 H
   F02D23/00 K
   F02D23/00 N
   F02D23/00 H
   F02D23/00 E
   F02D23/00 P
   F02D41/04 305Z
   F02D41/04 330M
   F02D43/00 301B
   F02D43/00 301R
   F02D43/00 301H
   F02D43/00 301Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-154193(P2013-154193)
(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-25386(P2015-25386A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 尚純
(72)【発明者】
【氏名】古賀 正揮
(72)【発明者】
【氏名】赤木 三泰
(72)【発明者】
【氏名】露木 毅
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−191686(JP,A)
【文献】 特開2013−108479(JP,A)
【文献】 特開2009−197758(JP,A)
【文献】 特開2005−220891(JP,A)
【文献】 特開2011−163307(JP,A)
【文献】 特開平09−317520(JP,A)
【文献】 特開2009−103041(JP,A)
【文献】 特開2000−038951(JP,A)
【文献】 特開2008−095542(JP,A)
【文献】 特開2012−077706(JP,A)
【文献】 特開2008−101519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/04
F01N 3/20
F01N 3/24
F02B 37/00
F02B 37/12
F02B 37/18
F02D 13/02
F02D 23/00
F02D 41/04
F02D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路中に配置されるコンプレッサと排気通路中に配置される排気タービンと、を有し、かつ上記排気タービンにウェストゲートバルブが設けられたターボ過給機と、
上記排気通路において上記排気タービンの下流側に配置された触媒コンバータと、
上記吸気通路に配置された電動過給機と、
を備えてなる火花点火式内燃機関の制御装置であって、
上記触媒コンバータの昇温が要求される冷機時に、上記電動過給機を駆動するとともに、上記ウェストゲートバルブを開作動させ、かつ内燃機関の冷却水温が低いほど上記電動過給機の目標回転数を高く設定し、さらに、要求トルクに沿うように点火時期のリタードを行う、ことを特徴とする火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項2】
上記内燃機関は、吸気弁および排気弁の少なくとも一方に可変動弁機構を備えており、
上記制御装置は、上記冷機時に、さらに、吸気弁と排気弁とのバルブオーバラップが生じるように上記可変動弁機構を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項3】
上記制御装置は、上記冷機時に、さらに、空燃比を理論空燃比よりもリッチ側に制御する、ことを特徴とする請求項2に記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【請求項4】
吸気通路中に配置されるコンプレッサと排気通路中に配置される排気タービンと、を有し、かつ上記排気タービンにウェストゲートバルブが設けられたターボ過給機と、
上記排気通路において上記排気タービンの下流側に配置された触媒コンバータと、
上記吸気通路に配置された電動過給機と、
を備えてなる火花点火式内燃機関において、
上記触媒コンバータの昇温が要求される冷機時に、上記電動過給機を駆動するとともに、上記ウェストゲートバルブを開作動させ、かつ内燃機関の冷却水温が低いほど上記電動過給機の目標回転数を高く設定し、さらに、要求トルクに沿うように点火時期のリタードを行う、ことを特徴とする火花点火式内燃機関の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ターボ過給機と電動過給機とを備えてなる内燃機関に関し、特に、これらの過給機を利用して排気浄化用触媒コンバータの早期昇温を行う制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の冷機始動後に触媒コンバータを早期に昇温させることは、従来から知られた技術課題の一つである。特許文献1には、ターボ過給機を備えた内燃機関において、触媒温度が所定温度よりも低いときに、ターボ過給機の排気タービンをバイパスするウェストゲートバルブを開状態に維持することが開示されている。このようにウェストゲートバルブを開くことで、排気は排気タービンを経由せずに触媒コンバータに直接に流入するようになり、排気タービンに排気熱を奪われることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−95542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、ターボ過給機の排気タービンが排気通路に介在することによる触媒コンバータの暖機の遅れを回避しようとするものに過ぎず、機関冷機時に触媒コンバータの昇温を積極的に促進する技術ではない。
【0005】
従って、本発明は、過給技術を利用して、冷機時の触媒コンバータの昇温をより効果的に行うようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吸気通路中に配置されるコンプレッサと排気通路中に配置される排気タービンと、を有し、かつ上記排気タービンにウェストゲートバルブが設けられたターボ過給機と、
上記排気通路において上記排気タービンの下流側に配置された触媒コンバータと、
上記吸気通路に配置された電動過給機と、
を備えてなる火花点火式内燃機関の制御装置であって、
上記触媒コンバータの昇温が要求される冷機時に、上記電動過給機を駆動するとともに、上記ウェストゲートバルブを開作動させ、かつ内燃機関の冷却水温が低いほど上記電動過給機の目標回転数を高く設定し、さらに、要求トルクに沿うように点火時期のリタードを行う、ことを特徴としている。
【0007】
上記のように、冷機時に電動過給機を駆動することで実質的な過給が行われ、燃焼ガス量が増加する。そして、ウェストゲートバルブが開いているため、排気ガスは、排気タービンを経由せずに触媒コンバータへ流入する。従って、触媒コンバータへ与えられる熱量が増大し、早期に昇温する。
【0008】
因みに、ターボ過給機を備えた内燃機関において、仮に、機関冷機時にターボ過給機の作動によって過給つまり燃焼ガス量の増量を行おうとしても、ターボ過給機の場合には、ターボ過給機の駆動のために排気エネルギが消費されてしまうので、触媒コンバータへ与える熱量を増大することはできない。これに対し、本発明では、電動過給機によって過給つまり燃焼ガス量の増量を行うので、排気熱を消費することがない。
【0009】
そして、電動過給機による過給によって要求トルク以上のトルクが生じようとするが、これは、点火時期のリタードによって吸収される
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、冷機時に触媒コンバータの昇温を効果的に行うことができ、触媒の早期活性化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の一実施例のシステム構成を示す構成説明図。
図2】この実施例の冷機時の制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は、この発明の一実施例として、電動過給機2とターボ過給機3とを備えた内燃機関1を示している。この内燃機関1は、例えば4ストロークサイクルの火花点火式ガソリン機関であって、その排気通路6には、ターボ過給機3の排気タービン4が配置され、該排気タービン4の下流側に、例えば三元触媒を用いた上流側触媒コンバータ7および下流側触媒コンバータ8が配置されている。排気通路2のさらに下流側には、排気消音器9が設けられており、該排気消音器9を介して排気通路6は外部へ開放されている。上流側触媒コンバータ7は、実際には、排気タービン4の排気出口部直下に接続されている比較的小容量のものであり、また、下流側触媒コンバータ8は、車両の床下に配置される比較的大きな容量のものである。
【0014】
上記排気タービン4は、過給圧制御のためにバイパス通路10aを開閉するウェストゲートバルブ10を備えている。このウェストゲートバルブ10の開度は、過給圧センサ22の検出信号に基づき目標過給圧となるようにエンジンコントロールユニット21によって制御される。
【0015】
内燃機関1は、例えば筒内直噴型の構成であり、シリンダ内に燃料を噴射する図示せぬ燃料噴射弁が各気筒毎に設けられているとともに、点火プラグ20をそれぞれ備えている。上記燃料噴射弁の噴射時期ならびに噴射量、および上記点火プラグ20の点火時期は、エンジンコントロールユニット21によって制御される。
【0016】
さらに、上記内燃機関1は、吸気弁31の開閉時期を可変制御できる吸気側可変動弁機構32と、排気弁33の開閉時期を可変制御できる排気側可変動弁機構34と、を備えている。これらの可変動弁機構32,34は、開時期および閉時期を個々に独立して変更できるものであってもよく、開時期および閉時期が同時に遅進する構成のものであってもよい。本実施例では、吸気側カムシャフトおよび排気側カムシャフトのクランクシャフトに対する位相を遅進させる後者の形式のものが用いられている。これらの可変動弁機構32,34の遅進量によってバルブオーバラップ量を可変制御することが可能である。なお、吸気弁31および排気弁33のいずれか一方のみに可変動弁機構を備えた構成であってもよい。
【0017】
内燃機関1の吸気通路11には、上記ターボ過給機3のコンプレッサ5が配置されており、このコンプレッサ5よりも下流側に、吸入空気量を制御する電子制御型のスロットル弁12が配置されている。上記スロットル弁12は、電動モータ等のアクチュエータを具備したものであり、上記エンジンコントロールユニット21からの制御信号によって、その開度が制御される。またスロットル弁12は、コレクタ部11aの入口部に位置し、このコレクタ部11aよりも下流側では、吸気通路11は、吸気マニホルドとして各気筒毎に分岐している。上記吸気通路11の上記コンプレッサ5と上記スロットル弁12との間には、過給吸気を冷却するインタークーラ13が設けられている。前述した過給圧センサ22は、インタークーラ13より下流の吸気通路11、例えばコレクタ部11aに配置されている。
【0018】
一方、上記吸気通路11の最上流部には、エアクリーナ14が配置されており、このエアクリーナ14の下流側に、吸入空気量の検出を行うエアフロメータ15が配置されている。そして、上記エアフロメータ15と上記コンプレッサ5との間に、上記電動過給機2が配置されている。つまり、ターボ過給機3のコンプレッサ5と電動過給機2とは、吸気通路11において、電動過給機2が相対的に上流側となるように互いに直列に配置されている。
【0019】
また、上記電動過給機2の入口側と出口側とを電動過給機2を経由せずに接続するように、バイパス通路16が設けられている。つまり、エアフロメータ15とコンプレッサ5との間において、吸気通路11の一部が、互いに並列となる主吸気通路11bとバイパス通路16とに分岐しており、一方の主吸気通路11bに電動過給機2が配置されている。そして、他方のバイパス通路16には、該バイパス通路16を開閉するバイパス弁17が設けられている。
【0020】
上記電動過給機2は、主吸気通路11bに介在するコンプレッサ部2aと、このコンプレッサ部2aを駆動する電動モータ2bと、を有している。なお、図1には、コンプレッサ部2aがターボ過給機3のコンプレッサ5と同様に遠心形コンプレッサとして図示されているが、本発明においては、ルーツブロアやスクリュー形コンプレッサなど任意の形式のコンプレッサを利用することが可能である。
【0021】
上記電動過給機2は、エンジンコントロールユニット21によって、回転速度を含めて駆動制御されるものであり、基本的には、ターボ過給機3の過給の応答遅れ(いわゆるターボラグ)を補うように、機関加速時に一時的に駆動される。バイパス弁17は、同じく、エンジンコントロールユニット21によって開閉制御されるものであり、電動過給機2が作動しているとき(電動過給機2による過給時)にはバイパス通路16を閉路し、電動過給機2の非作動時にはバイパス通路16を開路して、電動過給機2が通気抵抗とならないようにしている。
【0022】
上記エンジンコントロールユニット21には、上述したセンサ類の検出信号のほか、機関回転速度Neを示すクランク角センサ23からの検出信号、内燃機関1の冷却水温Twを示す水温センサ24からの検出信号、図示せぬアクセルペダルの開度が0のときにONとなるアイドルスイッチ25からのアイドル検出信号Isw、などが入力されている。なお、アイドルスイッチ25としては、物理的なスイッチのほか、アクセル開度からアイドル状態の判定を行ういわゆるソフトアイドルスイッチであってもよい。
【0023】
次に、図2は、上記エンジンコントロールユニット21において実行される機関冷間時の触媒コンバータ昇温制御を示すフローチャートであり、以下、これを説明する。なお、このルーチンは、内燃機関1の運転中、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0024】
ステップ1では、エアフロメータ15により検出される吸入空気量Qaと、クランク角センサ23により検出される機関回転速度Neと、水温センサ24により検出される冷却水温Twと、アイドルスイッチ25が出力するアイドル検出信号Iswと、を読み込む。ステップ2では、内燃機関1の吸入空気量Qaと機関回転速度Neとに基づき、理論空燃比相当の基本燃料噴射量(基本燃料噴射パルス幅)Tpを設定し、ステップ3では、同じく、吸入空気量Qaと機関回転速度Neとに基づき、基本点火時期ADV0を設定する。
【0025】
さらに、ステップ4では、吸入空気量Qaと機関回転速度Neとに基づき、吸気側可変動弁機構32の進角量を示す吸気VTC基本位相角VTCi0と、排気側可変動弁機構34の遅角量を示す排気VTC基本位相角VTCe0と、を設定する。吸気VTC基本位相角VTCi0が大きいほど、吸気弁31の開閉時期が進角し、排気VTC基本位相角VTCe0が大きいほど、排気弁33の開閉時期が遅角する。
【0026】
ステップ5では、アイドル検出信号IswがONであるか否か、つまりアイドル状態であるか否かを判定する。アイドル状態でなければ、ステップ16へ進み、通常制御を行う。アイドル状態のときは、さらにステップ6で、冷却水温Twが所定の暖機完了判定閾値Twth未満であるか否かを判定する。暖機完了判定閾値Twth以上であれば、ステップ16へ進み、通常制御を行う。
【0027】
ステップ6でNOつまりアイドル状態でかつ機関冷機時の場合には、ステップ7以降の触媒コンバータ昇温のための処理を行う。ステップ7では、目標スロットル弁開度tTVOを全開とする。なお、スロットル弁12は、目標スロットル弁開度tTVOに沿って開度が制御される。
【0028】
ステップ8では、冷却水温Twに基づいて、電動過給機2の回転数つまり目標電動過給機回転数tNecを設定する。具体的には、冷却水温Twが低いほど、目標電動過給機回転数tNecが高く与えられる。電動過給機2は、この目標電動過給機回転数tNecに沿って駆動される。なお、電動過給機2が作動するときには、前述したように、バイパス弁17が閉となる。
【0029】
ステップ9では、吸入空気量Qaおよび冷却水温Twに基づいて、点火時期遅角補正量RTDを求める。つまり、スロットル弁開度TVOを全開としかつ電動過給機2により過給を行うことによる吸入空気量Qaの増加分を相殺するように、点火時期ADVをリタードして、トルクを低下させるのである。
【0030】
また、ステップ10において、空燃比のリッチ化を行うために、冷却水温Twに基づいて目標当量比TFBYAを求める。ここでは、空燃比をリッチ化するために、目標当量比TFBYAが1よりも大きい値となる。
【0031】
さらに、ステップ11では、バルブオーバラップの拡大のために、吸気側可変動弁機構32の吸気VTC進角補正量VTCihと、排気側可変動弁機構34の排気VTC遅角補正量VTCehと、を冷却水温Twに基づいて設定する。吸気VTC進角補正量VTCihが大であるほど吸気弁31の開時期が進角してバルブオーバラップが拡大し、同様に、排気VTC遅角補正量VTCehが大であるほど排気弁33の閉時期が遅角してバルブオーバラップが拡大する。
【0032】
上記のように種々のパラメータを求めた上で、ステップ12において、燃料噴射パルス幅Tiを、Ti=Tp×TFBYAとして算出し、ステップ13において、点火時期ADVを、ADV=ADV0−RTDとして算出する。さらに、ステップ14において、吸気側可変動弁機構32の目標吸気VTC位相角tVTCiおよび排気側可変動弁機構34の目標排気VTC位相角tVTCeを、それぞれ、tVTCi=VTCi0+VTCih、tVTCe=VTCe+VTCeh、として算出する。そして、ステップ15では、ウェストゲートバルブ10の目標ウェストゲートバルブ開度tWGを、全開とする。
【0033】
上記のような処理により、この実施例では、アイドル状態でかつ機関冷機時には、スロットル弁12が全開となり、かつ電動過給機2による過給が実行される。これにより吸入空気量Qaは増加し、これに応じた量の燃料が噴射供給されるが、同時に、空燃比が理論空燃比よりもリッチとなるため、吸入空気量Qaに対し過剰な燃料が供給される。そして、ターボ過給機3におけるウェストゲートバルブ10が全開となる。
【0034】
従って、燃焼室内で生じる燃焼ガスの量が過給およびスロットル弁12の全開により増大し、かつこの燃焼ガスが排気タービン4を経由せずに上流側触媒コンバータ7に流入する。そのため、排気タービン4で温度低下することなく上流側触媒コンバータ7に多量の排気熱が与えられる。また、空燃比のリッチ化によって燃料の一部が燃焼室内で燃えずに未燃燃料として排気通路6に流出するが、可変動弁機構32,34によるバルブオーバラップの拡大さらには過給によって、吸気通路11から排気通路6へ吹き抜ける空気(新気)が増大するため、排気通路6内での未燃燃料成分の酸化反応(いわゆる後燃え)が促進され、上流側触媒コンバータ7に流入する排気の温度がさらに上昇する。
【0035】
また、過給およびスロットル弁12を全開とすることによるトルク上昇を抑制するために、点火時期がリタードされる。この点火時期リタードによっても、排気温度が上昇する。
【0036】
従って、上流側触媒コンバータ7の昇温を効果的に行うことができ、上流側触媒コンバータ7は、短時間で活性化温度に到達する。
【0037】
このように、上記実施例では、電動過給機2を用いて燃焼ガス量の増量を実現するので、ターボ過給機3のように燃焼ガス量の増量のために排気エネルギを使用することがなく、燃焼により生じた熱を上流側触媒コンバータ7に最大限に与える上で有利となる。また、バルブオーバラップの拡大と過給との組み合わせによって排気通路6に比較的多量の新気を導入することができ、排気系へのいわゆる二次空気の導入のために専用の二次空気導入装置を設ける必要がない。
【0038】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0039】
例えば、上記実施例では、可変動弁機構32,34によってバルブオーバラップを可変制御できる構成となっているが、バルブオーバラップが固定的に設定されているものであってもよく、この場合も電動過給機2による過給によって新気の吹き抜けが増えるため、排気通路6での酸化反応が促進される。
【0040】
また上記実施例では、ターボ過給機3のコンプレッサ5と電動過給機2とが吸気通路11において直列に配置されているが、ターボ過給機3のコンプレッサ5と電動過給機2とが並列に配置された構成であっても本発明は同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…内燃機関
2…電動過給機
3…ターボ過給機
4…排気タービン
5…コンプレッサ
10…ウェストゲートバルブ
21…エンジンコントロールユニット
24…水温センサ
図1
図2