特許第6236964号(P6236964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6236964リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物、リチウムイオン二次電池用セパレーター、リチウムイオン二次電池用電極、及びリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236964
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物、リチウムイオン二次電池用セパレーター、リチウムイオン二次電池用電極、及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20171120BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M4/13
   H01M2/16 M
【請求項の数】7
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2013-156770(P2013-156770)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-26572(P2015-26572A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智一
(72)【発明者】
【氏名】高松 裕美
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−008966(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/057324(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/005796(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/042965(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/165578(WO,A1)
【文献】 特開2012−014994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性粒子、重合体及びイミノ基含有化合物を含むリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物であって、
前記重合体が、酸基含有単量体単位を、0.1重量%〜50重量%、及びアミド単量体単位を0.1重量%〜20重量%含み、
前記イミノ基含有化合物の量が、前記重合体100重量部に対して、0.01重量部〜100重量部である、リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
【請求項2】
前記酸基含有単量体単位が、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の酸基を含有する単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である、請求項1記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
【請求項3】
前記イミノ基含有化合物の重量平均分子量が、10000〜2000000である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
【請求項4】
セパレータ基材と、
前記セパレータ基材上に請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を塗布することを経て形成された多孔膜とを備える、リチウムイオン二次電池用セパレーター。
【請求項5】
集電体及び前記集電体上に設けられた電極活物質層とを備える極板と、
前記極板上に請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を塗布することを経て形成された多孔膜とを備える、リチウムイオン二次電池用電極。
【請求項6】
正極、負極、電解液及びセパレーターを備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記セパレーターが、請求項記載のリチウムイオン二次電池用セパレーターである、リチウムイオン二次電池。
【請求項7】
正極、負極及び電解液を備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、請求項記載のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物、並びに、そのリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を用いて形成された多孔膜を備えるリチウムイオン二次電池用セパレーター、リチウムイオン二次電池用電極及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコン、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末の普及が著しい。これら携帯端末の電源として用いられている二次電池には、リチウムイオン二次電池が多用されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池では、一般に、正極と負極との間の短絡を防ぐために、セパレーターが設けられる。また、このセパレーターには、必要に応じて、多孔膜が設けられることがある(特許文献1参照)。セパレーターに多孔膜を設けることにより、異物によるセパレーターの破損を防止できるの、リチウムイオン二次電池の安全性を高めることができる。
また、前記の多孔膜を、電極の極板上に設けることも提案されている。電極が多孔膜を備える場合、電極から脱落した電極活物質が異物となってセパレーターを破損させることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−248442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウムイオン二次電池では、使用時に、ガスが生じることがある。このガスの原因としては様々なものが考えられ、その一例としては、電解質及び電極バインダーの分解物等から発生した電解液中のハロゲン化物イオンが挙げられる。
電池にハロゲン化物イオンが含まれる場合、例えば、次のようなことが考えられる。一般に電極活物質の近傍では、電解液が分解してガスが発生し易いが、電解液の分解物により電極活物質が覆われることで、それ以上に電解液が分解してガスが発生することが抑制されている。しかし、ハロゲン化物イオンが電解液中に存在することで、電極活物質を覆っていた被膜が壊れる場合があり、それにより電解液が電極活物質と再び接し、電解液が分解してガスを発生する。
【0006】
リチウムイオン二次電池においてガスが発生すると、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が低下し、寿命が短くなる傾向がある。そのため、リチウムイオン二次電池においてガスの発生を抑制できる技術が求められていた。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、ガスの発生を抑制できサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を製造できるリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物、リチウムイオン二次電池用セパレーター及びリチウムイオン二次電池用電極;並びに、ガスの発生を抑制できサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、非導電性粒子と、酸基を含有する単量体単位を所定の割合で含む重合体と、前記重合体に対して所定の量のイミノ基含有化合物とを含むリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を用いて製造された多孔膜を用いることにより、リチウムイオン二次電池においてガスの発生を抑制でき、そのサイクル特性を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
〔1〕 非導電性粒子、重合体及びイミノ基含有化合物を含むリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物であって、
前記重合体が、酸基含有単量体単位を、0.1重量%〜50重量%含み、
前記イミノ基含有化合物の量が、前記重合体100重量部に対して、0.01重量部〜100重量部である、リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
〔2〕 前記酸基含有単量体単位が、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の酸基を含有する単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である、〔1〕記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
〔3〕 前記重合体が、アミド単量体単位を含む、〔1〕又は〔2〕記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
〔4〕 前記イミノ基含有化合物の重量平均分子量が、10000〜2000000である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物。
〔5〕 セパレータ基材と、
前記セパレータ基材上に〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を塗布することを経て形成された多孔膜とを備える、リチウムイオン二次電池用セパレーター。
〔6〕 集電体及び前記集電体上に設けられた電極活物質層とを備える極板と、
前記極板上に〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物を塗布することを経て形成された多孔膜とを備える、リチウムイオン二次電池用電極。
〔7〕 正極、負極、電解液及びセパレーターを備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記セパレーターが、〔5〕記載のリチウムイオン二次電池用セパレーターである、リチウムイオン二次電池。
〔8〕 正極、負極及び電解液を備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、〔6〕記載のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物、リチウムイオン二次電池用セパレーター及びリチウムイオン二次電池用電極によれば、ガスの発生を抑制できサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を製造できる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、ガスの発生を抑制できサイクル特性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸を含む。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを含む。さらに、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを含む。
【0013】
さらに、ある物質が水溶性であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が0.5重量%未満であることをいう。また、ある物質が非水溶性であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が90重量%以上であることをいう。
【0014】
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
【0015】
さらに、「極板」とは、剛性のある板状部材だけでなく、可撓性のあるシート及びフィルムも含む。
【0016】
[1.リチウムイオン二次電池用多孔膜組成物]
本発明のリチウムイオン二次電池用多孔膜組成物(以下、適宜「多孔膜組成物」ということがある。)は、非導電性粒子、重合体(以下、適宜「特定重合体」ということがある。)及びイミノ基含有化合物を含む。また、前記の特定重合体は、酸基含有単量体単位を特定の割合で含む。ここで、酸基含有単量体単位とは、酸基含有単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を示す。また、酸基含有単量体とは、酸基を含む単量体を示す。さらに、本発明の多孔膜組成物が含むイミノ基含有化合物の量は、特定重合体の量に対して特定の範囲に収まっている。
【0017】
このような多孔膜組成物を用いることにより、下記のような利点(1)〜(7)を得ることができる。
(1)本発明の多孔膜組成物を用いて製造されるリチウムイオン二次電池におけるガスの発生を抑制できる。
(2)通常は、本発明の多孔膜組成物を用いて製造されるリチウムイオン二次電池において負極における金属の析出を抑制できる。
(3)通常は、本発明の多孔膜組成物を用いて形成される多孔膜の機械的強度を向上させることができるので、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレーター(以下、適宜「セパレーター」ということがある。)及び本発明のリチウムイオン二次電池用電極(以下、適宜「電極」ということがある。)の機械的強度を高めることができる。
(4)通常は、本発明の多孔膜組成物を用いて形成される多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着性を向上させることができる。
(5)通常は、本発明の多孔膜組成物を用いて形成される多孔膜の水分量を低減させることができる。
(6)通常は、本発明の多孔膜組成物を用いて形成される多孔膜からの、その多孔膜を形成する成分の電解液への溶出を防止できるので、前記の利点(1)〜(5)を長期間にわたって発揮することができる。
(7)通常は、本発明の多孔膜組成物は、高い分散性を有し、且つ、その高い分散性を長期間にわたって保つことができる。
【0018】
このように優れた利点が得られる理由は定かではないが、本発明者の検討によれば、以下のように推察される。ただし、本発明は、以下に説明する理由によって制限されるものではない。
【0019】
利点(1):
本発明の多孔膜組成物は、前記の特定重合体とイミノ基含有化合物とを組み合わせて含む。そのため、この多孔膜組成物を用いて形成される多孔膜は、特定重合体及びイミノ基含有化合物を含み、これらの成分が、ハロゲン化物イオンをトラップすることができる。そのため、電解液中のハロゲン化物イオンの量を少なくすることができる。ハロゲン化物イオンが電池に含まれていると、充放電に伴って電解液が分解され、ガスが生じることがありえる。しかし、本発明の多孔膜組成物を用いた電池では、電解液中のハロゲン化物イオンを減らすことができるので、ハロゲン化物イオンを原因としたガスの発生が抑制されているものと推察される。
【0020】
利点(2):
本発明の多孔膜組成物を用いて形成される多孔膜が含むイミノ基含有化合物は、電解液中の金属イオンをトラップすることができる。そのため、充放電に伴う負極での金属の析出を抑制できているものと推察される。
【0021】
利点(3):
特定重合体が含む酸基とイミノ基含有化合物が有するイミノ基とは、多孔膜組成物を用いて多孔膜を形成する過程において架橋反応を生じうる。例えば、多孔膜組成物を基材に塗布した後、乾燥のために加熱する工程において、架橋反応が進行しうる。そのため、得られた多孔膜は、架橋構造を有する重合体成分を含むので、高い機械的強度を有する。したがって、本発明のセパレーター及び電極の機械的強度を高めることができるものと推察される。
【0022】
利点(4):
本発明の多孔膜組成物を用いて形成される多孔膜が含む特定重合体は、バインダーとして機能しうる。また、イミノ基含有化合物は、大きい分子量を有する場合には、バインダーとして機能しうる。よって、これらの成分がバインダーとして機能することにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着性が向上しているものと推察される。
【0023】
利点(5):
前記のように特定重合体とイミノ基含有化合物とが架橋した場合、特定重合体及びイミノ基含有化合物が有する酸基及びイミノ基等の極性基の量が減る。そうすると、多孔膜中に水を保持する能力が低下するので、多孔膜から水を排出しやすくなる。したがって、多孔膜を形成するために乾燥を行う場合、乾燥によって効果的に水を除去できるので、多孔膜の水分量を低減させることができるものと推察される。なお、ハロゲン元素を含む電解質は、水と反応することで分解して、ハロゲン化物イオンを生じる可能性がある。したがって、多孔膜中の水分を除去することで、ガス発生をより効果的に抑制できる。
【0024】
利点(6):
前記のように特定重合体とイミノ基含有化合物とが架橋した場合、これらの前記のように特定重合体及びイミノ基含有化合物は電解液に溶出し難くなる。そのため、多孔膜からの、その多孔膜を形成する成分の溶出を防止できるので、前記の利点を長期間にわたって発揮できるものと推察される。
【0025】
利点(7):
特定重合体が酸基含有単量体単位を含むことにより、特定重合体は水等の極性溶媒に対して高い親和性を有する。また、イミノ基を有することにより、イミノ基含有化合物は水等の極性溶媒に対して高い親和性を有する。このため、本発明の多孔膜組成物は、高い分散性を有し、且つ、その高い分散性を長期間にわたって保つことができるものと推察される。
【0026】
本発明の多孔膜組成物を用いて製造されるリチウムイオン二次電池は、ガスの発生を抑制できるので、正極及び負極での電池反応を円滑にでき、また、ガスによる電極間距離の増大、導電パスの切断、電池要素の破壊等のような電池容量の低下の原因の発生を抑制できる。さらに、本発明の多孔膜組成物を用いて製造されるリチウムイオン二次電池では、通常、前記のように充放電による負極での金属の析出を抑制できる。したがって、このリチウムイオン二次電池は、優れたサイクル特性を有し、更に、通常は優れた低温出力特性を有する。
【0027】
〔1.1.非導電性粒子〕
非導電性粒子は、多孔膜に充填される成分であり、この非導電性粒子同士の隙間が多孔膜の孔を形成しうる。非導電性粒子が非導電性を有するので、多孔膜を絶縁性にでき、そのため、リチウムイオン二次電池における短絡を防止することができる。また、通常、非導電性粒子は高い剛性を有し、これにより、多孔膜の機械的強度を高めることができる。そのため、熱によってセパレータ基材に収縮しようとする応力が生じた場合でも、多孔膜がその応力に抗することができるので、セパレータ基材の収縮による短絡の発生を防止することが可能である。
非導電性粒子としては、無機粒子を用いてもよく、有機粒子を用いてもよい。
【0028】
無機粒子は、通常、媒体中での分散安定性に優れ、多孔膜組成物において沈降し難く、均一なスラリー状態を長時間維持することができる。また、無機粒子を用いると、通常は多孔膜の耐熱性を高くできる。
【0029】
非導電性粒子の材料としては、電気化学的に安定な材料が好ましい。このような観点から、非導電性粒子の無機材料として好ましい例を挙げると、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アルミニウムの水和物(ベーマイト(AlOOH)、ギブサイト(Al(OH))、酸化ケイ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン(チタニア)、BaTiO、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化硼素等の窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイト等の粘土微粒子;などが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、電解液中での安定性と電位安定性の観点から酸化物粒子が好ましく、中でも吸水性が低く耐熱性(例えば180℃以上の高温に対する耐性)に優れる観点から酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの水和物、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムがより好ましく、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの水和物、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムがより好ましく、酸化アルミニウムが特に好ましい。
【0031】
有機粒子としては、通常は重合体の粒子を用いる。有機粒子は、当該有機粒子の表面の官能基の種類及び量を調整することにより、水に対する親和性を制御でき、ひいては多孔膜に含まれる水分量を制御できる。また有機粒子は、通常は金属イオンの溶出が少ない点で、優れる。なお、有機粒子は、前記の特定重合体以外の有機粒子をいう。
【0032】
非導電性粒子の有機粒子に用いられる重合体として好ましい例を挙げると、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の各種重合体などが挙げられる。粒子を形成する上記重合体は、例えば、混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体、架橋体等であっても使用しうる。有機粒子は、2種以上の高分子化合物の混合物により形成されていてもよい。
【0033】
非導電性粒子として有機粒子を用いる場合、当該有機粒子はガラス転移温度を持たなくてもよいが、当該有機粒子を形成する有機材料がガラス転移温度を有する場合、そのガラス転移温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、特に好ましくは250℃以上である。
【0034】
非導電性粒子としての有機粒子の製造方法は特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの、いずれの方法を用いてもよい。中でも、水中で重合をすることができ、そのまま多孔膜組成物の材料として使用できるので、乳化重合法および懸濁重合法が好ましい。また、有機粒子を製造する際、その反応系には分散剤を含ませることが好ましい。有機粒子は、通常、実質的に当該有機粒子を構成する重合体からなるが、重合に際して添加した添加剤等の任意の成分を同伴していてもよい。
【0035】
非導電性粒子は、必要に応じて、例えば元素置換、表面処理、固溶体化等が施されていてもよい。また、非導電性粒子は、1つの粒子の中に、前記の材料のうち1種類を単独で含むものであってもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含むものであってもよい。さらに、非導電性粒子は、異なる材料で形成された2種類以上の粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
非導電性粒子の形状は、例えば、球状、楕円球状、多角形状、テトラポッド(登録商標)状、板状、鱗片状などが挙げられる。中でも、多孔膜の空隙率を高くして多孔膜によるイオン伝導性の低下を抑制する観点では、テトラポッド(登録商標)状、板状、鱗片状が好ましい。
【0037】
非導電性粒子の体積平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。非導電性粒子の体積平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜組成物における非導電性粒子の分散性を高めることができるので、均一性に優れた多孔膜を得ることができる。また、上限値以下にすることにより、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を向上させることができる。ここで、粒子の体積平均粒子径とは、レーザー回折法で測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
【0038】
非導電性粒子のBET比表面積は、例えば0.9m/g以上、さらには1.5m/g以上であることが好ましい。また、非導電性粒子の凝集を抑制し、多孔膜組成物の流動性を好適化する観点から、BET比表面積は大き過ぎないことが好ましく、例えば150m/g以下であることが好ましい。
【0039】
多孔膜における非導電性粒子の量は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは65重量%以上であり、好ましくは95重量%以下である。多孔膜における非導電性粒子の量をこの範囲内とすることにより、非導電性粒子同士が接触部を有しつつ、イオンの移動が阻害されない程度に、非導電性粒子同士の隙間を形成できる。したがって、非導電性粒子の量を前記範囲に納めることで、多孔膜の強度を向上させ、リチウムイオン二次電池の短絡を安定して防止することができる。
【0040】
〔1.2.特定重合体〕
特定重合体は、酸基含有単量体単位を含む重合体であり、多孔膜において通常はバインダーとして機能する。そのため、特定重合体は非導電性粒子に強固に結着でき、多孔膜の機械的強度を向上させることができる。また、特定重合体は、通常、セパレータ基材及び極板に対する結着性に優れる。そのため、多孔膜とセパレータ基材及び極板との結着性を向上させることができる。
【0041】
酸基含有単量体単位に係る酸基のうち、好適な酸基としては、例えば、−COOH基(カルボキシル基);−SOH基(スルホン酸基);−PO基及び−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)等のリン酸基;などが挙げられる。したがって、酸基含有単量体単位は、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の酸基を含有する単量体を重合して形成される構造を有する構造単位が好ましい。このような酸基含有単量体単位を有する特定重合体を用いることにより、多孔膜の機械的強度の向上効果と、リチウムイオン二次電池におけるガス発生の抑制効果とを、バランス良く発揮させることができる。
【0042】
酸基含有単量体としては、例えば、前記の酸基を有する単量体が挙げられる。さらに、例えば、加水分解により前記の酸基を生成しうる単量体も、好適な酸基含有単量体として挙げられる。そのような酸基含有単量体の具体例を挙げると、加水分解によりカルボキシル基を生成しうる酸無水物などが挙げられる。
【0043】
カルボキシル基を有する単量体(カルボン酸単量体)としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物、及びこれらの誘導体などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸などが挙げられる。ジカルボン酸の酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。これらの中でもモノカルボン酸が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
【0044】
スルホン酸基を有する単量体(スルホン酸単量体)としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(N−アクリロイル)アミノ−2−メチル−1,3−プロパン−ジスルホン酸などが挙げられる。これらの中でも、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が好ましい。
【0045】
リン酸基を有する単量体(リン酸単量体)としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
【0046】
また、上述した単量体の塩を、酸基含有単量体として用いてもよい。このような塩としては、例えば、p−スチレンスルホン酸等のスチレンスルホン酸のナトリウム塩などが挙げられる。
【0047】
酸基含有単量体及び酸基含有単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0048】
特定重合体における酸基含有単量体単位の割合は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。特定重合体における酸基含有単量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、リチウムイオン二次電池においてガスの発生を抑制することができる。また、特定重合体における酸基含有単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着性を高めることができる。さらに、上限値以下にすることにより、多孔膜の耐久性を高めることができる。
【0049】
特定重合体は、アミド単量体単位を含むことが好ましい。アミド単量体単位とは、アミド単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。また、アミド単量体とは、アミド基を有する単量体であり、アミド化合物だけでなく、イミド化合物も含む。非導電性粒子がアミド単量体単位を含むことにより、リチウムイオン二次電池においてガスの発生を更に効果的に防止できる。このようにガスの発生を抑制できる理由は必ずしも定かではないが、アミド単量体単位を含む特定重合体が電解液中のハロゲン化物イオンをトラップすることにより、ハロゲン化物イオンを原因としたガスの発生を抑制できるものと推察される。
【0050】
アミド単量体としては、例えば、カルボン酸アミド単量体、スルホン酸アミド単量体、リン酸アミド単量体などが挙げられる。
【0051】
カルボン酸アミド単量体は、カルボン酸基と結合したアミド基を有する単量体である。カルボン酸アミド単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、α−クロロアクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の、不飽和カルボン酸アミド化合物;N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N−2−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−3−アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−3−メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の、不飽和カルボン酸アミドのN−アミノアルキル誘導体;などが挙げられる。
【0052】
スルホン酸アミド単量体は、スルホン酸基と結合したアミド基を有する単量体である。スルホン酸アミド単量体としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−t−ブチルアクリルアミドスルホン酸などが挙げられる。
【0053】
リン酸アミド単量体は、リン酸基と結合したアミド基を有する単量体である。リン酸アミド単量体としては、例えば、アクリルアミドホスホン酸、アクリルアミドホスホン酸誘導体などが挙げられる。
【0054】
これらのアミド単量体の中でも、カルボン酸アミド単量体が好ましく、不飽和カルボン酸アミド化合物がより好ましく、(メタ)アクリルアミド及びN−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。これらのアミド単量体を用いることにより、多孔膜組成物の分散性向上効果と、リチウムイオン二次電池におけるガス発生の抑制効果とを、バランス良く発揮させることができる。
【0055】
アミド単量体及びアミド単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0056】
特定重合体におけるアミド単量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。特定重合体におけるアミド単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、リチウムイオン二次電池においてガスの発生を効果的に抑制することができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の耐久性を向上させることができる。
【0057】
特定重合体は、架橋性単量体単位を含むことが好ましい。ここで、架橋性単量体単位とは、架橋性単量体を重合して得られる構造を有する構造単位である。また、架橋性単量体とは、加熱又はエネルギー線の照射により、重合中又は重合後に架橋構造を形成しうる単量体である。架橋性単量体単位を含むことにより、特定重合体を架橋させることができるので、多孔膜の強度及び安定性を更に高めることができる。これにより、特定重合体による作用を安定して発揮させることが可能となる。また、電解液による特定重合体の膨潤度が過度に高くならないようにできるので、通常は、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を良好にできる。
【0058】
架橋性単量体としては、重合した際に架橋構造を形成しうる単量体を用いうる。架橋性単量体の例としては、1分子あたり2以上の反応性基を有する単量体を挙げることができる。より具体的には、熱架橋性の架橋性基及び1分子あたり1つのオレフィン性二重結合を有する単官能性単量体、及び1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体が挙げられる。
【0059】
単官能性単量体に含まれる熱架橋性の架橋性基の例としては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、エポキシ基が、架橋及び架橋密度の調節が容易な点でより好ましい。
【0060】
熱架橋性の架橋性基としてエポキシ基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテル等の不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン等のジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセン等のアルケニルエポキシド;並びにグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル等の不飽和カルボン酸のグリシジルエステル化合物;などが挙げられる。
【0061】
熱架橋性の架橋性基としてオキセタニル基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−トリフロロメチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、及び2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−4−トリフロロメチルオキセタンなどが挙げられる。
【0062】
熱架橋性の架橋性基としてオキサゾリン基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、及び2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられる。
【0063】
2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体の例としては、アリル(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−トリ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリグリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、トリメチロールプロパン−ジアリルエーテル、前記以外の多官能性アルコールのアリルまたはビニルエーテル、トリアリルアミン、及びジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0064】
中でも特に、架橋性単量体としては、エチレンジメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、及びエチレングリコールジメタクリレートが好ましく、エチレンジメタクリレート、アリルグリシジルエーテル及びグリシジルメタクリレートがより好ましい。
また、架橋性単量体及び架橋性単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0065】
特定重合体における架橋性単量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.15重量%以上、特に好ましくは0.2重量%以上であり、好ましくは2.0重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、特に好ましくは1.0重量%以下である。特定重合体における架橋性単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、特定重合体の機械的強度を強くできるので、多孔膜とセパレータ基材又は極板への結着性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の耐久性を高めることができる。
【0066】
特定重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含みうる。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は強度が高いので、特定重合体の分子を安定化させることができる。
【0067】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;並びにメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0068】
特定重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、特に好ましくは58重量%以上であり、好ましくは98重量%以下、より好ましくは97重量%以下、特に好ましくは96重量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の量を上記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜のセパレータ基材又は極板への結着性を高くすることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の柔軟性を高めることができる。
【0069】
特定重合体は、前記の酸基含有単量体単位、アミド単量単位、架橋性単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位以外に、任意の構造単位を含んでいてもよい。任意の構造単位の例としては、下記の単量体を重合して形成される構造を有する構造単位が挙げられる。即ち、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル化合物単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン単量体;並びにN−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物単量体;の1以上を重合して形成される構造を有する構造単位が挙げられる。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0070】
多孔膜組成物における特定重合体の形態は、任意である。特定重合体は、例えば、粒子状の形態を有していてもよく、溶媒に溶解していてもよい。中でも、特定重合体が粒子状の形態を有する粒子状重合体となっていると、通常は多孔膜においてもその特定重合体は粒子状の形態を有する。その場合、特定重合体が多孔膜中において高度に分散できたり、非導電性粒子に面ではなく点で結着して多孔膜の多孔性を向上させたりできるので、その多孔膜のイオン伝導性を向上させることができる。
【0071】
特定重合体が粒子状の形態を有している場合、その特定重合体の粒子の体積平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。特定重合体の粒子の体積平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、特定重合体の分散性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着性を高めることができる。
【0072】
特定重合体のガラス転移温度は、好ましくは−75℃以上、より好ましくは−55℃以上、特に好ましくは−35℃以上であり、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらにより好ましくは20℃以下、特に好ましくは15℃以下である。特定重合体のガラス転移温度を上記範囲に収めることにより、多孔膜を備えたセパレーター及び電極の柔軟性及び捲回性、並びに多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着性などの特性が高度にバランスされ、好適である。特定重合体のガラス転移温度は、例えば、様々な単量体を組み合わせることによって調整可能である。
【0073】
特定重合体の量は、非導電性粒子100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。特定重合体の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜組成物及び多孔膜における特定重合体の分散性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の耐久性を向上させることができる。
【0074】
特定重合体は、例えば、上述した単量体を含む単量体組成物を、水系溶媒中で重合して、製造しうる。この際、単量体組成物中の各単量体の比率は、通常、特定重合体における構造単位の比率と同様にする。
【0075】
水系溶媒としては、特定重合体の分散が可能なものを用いうる。通常、常圧における沸点が、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、且つ、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下の水系溶媒から選ばれる。以下、その水系溶媒の例を挙げる。以下の例示において、溶媒名の後のカッコ内の数字は常圧での沸点(単位℃)であり、小数点以下は四捨五入または切り捨てられた値である。
水系溶媒の例としては、水(100);ダイアセトンアルコール(169)、γ−ブチロラクトン(204)等のケトン化合物;エチルアルコール(78)、イソプロピルアルコール(82)、ノルマルプロピルアルコール(97)等のアルコール化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル(120)、メチルセロソルブ(124)、エチルセロソルブ(136)、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル(152)、ブチルセロソルブ(171)、3−メトキシ−3メチル−1−ブタノール(174)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(150)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(230)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(271)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(188)等のグリコールエーテル化合物;並びに1,3−ジオキソラン(75)、1,4−ジオキソラン(101)、テトラヒドロフラン(66)等のエーテル化合物が挙げられる。中でも水は可燃性がなく、重合体の分散体が容易に得られやすいという観点から特に好ましい。また、主溶媒として水を使用して、重合体の分散状態が確保可能な範囲において上記記載の水以外の水系溶媒を混合して用いてもよい。
【0076】
重合方法は、特に限定されず、例えば溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いうる。重合方法としては、例えばイオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの方法も用いうる。高分子量体が得やすいこと、並びに、重合物がそのまま水に分散した状態で得られるので再分散化の処理が不要であり、そのまま多孔膜組成物の製造に供することができることなど、製造効率の観点から、中でも乳化重合法が特に好ましい。
【0077】
乳化重合法は、通常は常法により行う。例えば、「実験化学講座」第28巻、(発行元:丸善(株)、日本化学会編)に記載された方法で行う。すなわち、攪拌機および加熱装置付きの密閉容器に、水と、分散剤、乳化剤、架橋剤などの添加剤と、重合開始剤と、単量体とを所定の組成になるように加え、容器中の組成物を攪拌して単量体等を水に乳化させ、攪拌しながら温度を上昇させて重合を開始する方法である。あるいは、上記組成物を乳化させた後に密閉容器に入れ、同様に反応を開始させる方法である。
【0078】
重合開始剤の例としては、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の有機過酸化物;α,α’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過硫酸アンモニウム;並びに過硫酸カリウムが挙げられる。重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0079】
乳化剤、分散剤、重合開始剤などの添加剤は、これらの重合法において一般的に用いられるものであり、通常はその使用量も一般に使用される量とする。
【0080】
重合温度および重合時間は、重合方法及び重合開始剤の種類などにより任意に選択しうる。通常、重合温度は約30℃以上、重合時間は0.5時間〜30時間程度である。
また、アミンなどの添加剤を重合助剤として用いてもよい。
【0081】
重合により、通常は特定重合体を含む反応液が得られる。得られた反応液は通常は酸性であり、特定重合体は水系溶媒に分散していることが多い。このように水溶性溶媒に分散した特定重合体は、その反応液のpHを、例えば7〜13に調整してもよい。これにより、ハンドリング性を向上させることができる。また、特定重合体の単量体の種類及び重量平均分子量などによっては、反応液のpHを前記の範囲に調整することにより、特定重合体を水系溶媒に溶解させられる場合がありえる。こうして得られた反応液から特定重合体を取り出してもよい。しかし、通常は、水系媒体として水を用い、この水に溶解した状態の特定重合体を用いて本発明の多孔膜組成物を製造する。
【0082】
反応液をpH7〜pH13にアルカリ化する方法としては、例えば、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属水溶液;水酸化カルシウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液等のアルカリ土類金属水溶液;アンモニア水溶液などのアルカリ水溶液を混合する方法が挙げられる。前記のアルカリ水溶液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0083】
〔1.3.イミノ基含有化合物〕
本発明の多孔膜組成物は、イミノ基含有化合物を有する。このイミノ基含有化合物を特定重合体と組み合わせて含むことにより、本発明の多孔膜組成物を用いたリチウムイオン二次電池において、ガスの発生を抑制でき、サイクル特性を向上させることができる。
【0084】
イミノ基含有化合物は、イミノ基を有する化合物であり、そのイミノ基が有する窒素原子は、同一の炭素原子と二重結合で結合していてもよく、別々の炭素原子と単結合で結合していてもよい。
イミノ基含有化合物としては、低分子イミノ基含有化合物を用いてもよく、高分子イミノ基含有化合物を用いてもよい。低分子イミノ基含有化合物としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等の鎖状イミノ基含有化合物;エチレンイミン、プロピレンイミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン等の環状イミノ基含有化合物、などが挙げられる。また、高分子イミノ基含有化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン;ポリN−ヒドロキシルエチレンイミン、カルボキシメチル化ポリエチレンイミン・ナトリウム塩等のポリエチレンイミン誘導体;ポリプロピレンイミン;ポリN−2−ジヒドロシキルプロピレンイミン等のポリプロピレンイミン誘導体、などが挙げられる。これらの中でも、高分子イミノ基含有化合物が好ましく、ポリエチレンイミンがより好ましい。また、イミノ基含有化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0085】
イミノ基含有化合物は、前記のように、高分子量であることが好ましい。イミノ基含有化合物が高い分子量を有する場合、その重量平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは80,000以上、さらに好ましくは100,000超過であり、好ましくは2,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下、さらに好ましくは800,000以下である。イミノ基含有化合物の重量平均分子量を前記範囲の下限値以上にすることにより、リチウムイオン二次電池におけるガスの発生を効果的に抑制できる。また、上限値以下にすることにより、イミノ基含有化合物の分散性を良好にできる。
【0086】
イミノ基含有化合物の重量平均分子量は、光散乱法によって測定しうる。測定の際、測定条件は、以下のように設定しうる。
測定装置は、示唆屈折率計と多角度光散乱検出器(MALS)を組み合わせたものを用いうる。また、カラムとしては、昭和電工社製「Shodex OHpak SB−806M HQ」を、直列で2本繋いて使用しうる。また、溶離液は、酢酸(濃度0.5M)と硫酸(濃度0.15M)の混合水溶液を用いうる。さらに、溶離液の流量は1.0ml/分、カラム温度は40℃としうる。また、測定試料のサンプル濃度は0.2重量%とし、サンプル注入量を100μlとする。
【0087】
イミノ基含有化合物の量は、特定重合体100重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは0.2重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。イミノ基含有化合物の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、リチウムイオン二次電池におけるガスの発生を効果的に抑制できる。また、上限値以下にすることにより、特定重合体の凝集を防止できるので、特定重合体の分散性を良好にできる。そのため、多孔膜の組成が均一となりガス発生の抑制効果を安定して発揮させることができる。
【0088】
また、イミノ基含有化合物の量は、非導電性粒子100重量部に対して、好ましくは0.01部以上、より好ましくは0.02部以上、特に好ましくは0.05部以上であり、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.8重量部以下、特に好ましくは0.5重量部以下である。イミノ基含有化合物の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、リチウムイオン二次電池におけるガスの発生を効果的に抑制できる。また、上限値以下にすることにより、イミノ基含有化合物の分散性を良好にできる。
【0089】
イミノ基含有化合物の製造方法は、任意である。例えば、ポリエチレンイミンは、エチレンイミンを開環重合してなる重合体であり、特開平11−158271合公報又は特開2012−214596号公報に記載の方法に従って製造しうる。具体例としては、エチレンエチレンイミンを塩酸、硫酸等の酸触媒の存在下で開環重合することにより、ポリエチレンイミンを製造しうる。また、ポリエチレンイミンは市販されており、例えば、BASF社製「Lupasol」、日本触媒社製「エポミン」などの商品名で販売されている。さらに、ポリエチレンイミンは、純正化学株式会社及びシグマアルドリッチ社からも販売されている。
【0090】
また、所望の重量平均分子量を有するポリエチレンイミンを製造する場合には、重合触媒量等の条件を適切に設定することにより、分子量を調整して所望の重量平均分子量を有するポリエチレンイミンを得ることができる。また、市販のポリエチレンイミンを用いる場合には、市販されているポリエチレンイミンの重量平均分子量を測定し、所望の重量平均分子量を有するポリエチレンイミンを用いうる。
【0091】
〔1.4.溶媒〕
本発明の多孔膜組成物は、溶媒を含みうる。溶媒としては、多孔膜組成物において非導電性粒子を分散させ、且つ、特定重合体及びイミノ基含有化合物を溶解又は分散させうるものを用いうる。このような溶媒としては、水を用いてもよく、有機溶媒を用いてもよい。例えば、特定重合体を溶解させうる溶媒を用いると、特定重合体の一部が非導電性粒子の表面に吸着することによって非導電性粒子が特定重合体の層で覆われるので、非導電性粒子の分散性を向上させることができ、好ましい。
【0092】
溶媒としては、例えば、水;シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素化合物;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のエステル化合物;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル化合物;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール化合物;N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド化合物;などが挙げられる。中でも、水及びN−メチルピロリドンが好ましい。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0093】
多孔膜組成物における溶媒の量は、多孔膜組成物の固形分濃度が所望の範囲に収まるように設定することが好ましい。具体的な多孔膜組成物の固形分濃度は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。ここで、固形分とは、多孔膜組成物の乾燥を経て残留する物質のことをいう。
【0094】
〔1.5.任意の成分〕
本発明の多孔膜組成物は、上述した非導電性粒子、特定重合体、イミノ基含有化合物及び溶媒以外に、任意の成分を含みうる。このような任意の成分としては、電池反応に過度に好ましくない影響を及ぼさないものを用いうる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0095】
例えば、多孔膜組成物は、カルボキシメチルセルロース塩を含むことが好ましい。カルボキシメチルセルロース塩は多孔膜組成物において増粘剤として作用する。そのため、カルボキシメチルセルロース塩により、多孔膜組成物の粘度を高めることができるので、多孔膜組成物の塗布性を良好にすることができる。また、カルボキシメチルセルロース塩により、通常は、多孔膜組成物における非導電性粒子の分散安定性を高めたり、多孔膜とセパレータ基材又は極板との結着性を高めたりすることができる。カルボキシメチルセルロース塩としては、例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。また、カルボキシメチルセルロース塩は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0096】
カルボキシメチルセルロース塩の量は、非導電性粒子100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。カルボキシメチルセルロース塩の量を前記の範囲にすることにより、多孔膜組成物の分散性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の耐久性を良好にすることができる。
【0097】
また、多孔膜組成物は、例えば、イソチアゾリン系化合物、キレート化合物、ピリチオン化合物、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤、増粘剤、消泡剤、湿潤剤、及び、電解液分解抑制の機能を有する電解液添加剤などを含んでいてもよい。
【0098】
〔1.6.その他の事項〕
多孔膜組成物は、通常、例えばスラリーのような流体状の組成物である。また、本発明の多孔膜組成物は、通常、当該組成物に含まれる各成分の分散性に優れる。そのため、本発明の多孔膜組成物の粘度は、容易に低くできる。多孔膜組成物の具体的な粘度は、多孔膜を製造する際の塗布性を良好にする観点から、10mPa・s〜2000mPa・sが好ましい。ここで、前記の粘度は、E型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
【0099】
また、本発明の多孔膜組成物は、通常、分散安定性に優れる。ここで多孔膜組成物の分散安定性とは、その組成物の分散性が経時的に変化し難いことを表し、具体的には時間が経過しても組成物の粘度が変化し難いことを表す。そのため、長期間保存した多孔膜組成物を用いた場合でも、高品質の多孔膜を得ることができる。
【0100】
〔1.7.多孔膜組成物の製造方法〕
多孔膜組成物は、例えば、上述した各成分を混合して製造しうる。混合順序には特に制限は無い。また、混合方法にも特に制限は無い。通常は、非導電性粒子を速やかに分散させるため、混合装置として分散機を用いて混合を行う。
【0101】
分散機は、上記成分を均一に分散及び混合できる装置が好ましい。分散機の例を挙げると、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。中でも、高い分散シェアを加えることができることから、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置が特に好ましい。
【0102】
[2.多孔膜]
本発明の多孔膜組成物を適切な基材上に塗布する工程を経て、多孔膜を製造することができる。具体的には、多孔膜組成物を基材上に塗布して当該多孔膜組成物の膜を得る工程と、その膜を必要に応じて乾燥して水等の溶媒を除去する工程とを含む製造方法により、多孔膜を製造できる。この多孔膜は、通常、多孔膜組成物に含まれていた固形分により形成された膜である。また、多孔膜において、特定重合体の分子とイミノ基含有化合物の分子とは架橋していてもよい。
【0103】
基材は、多孔膜組成物の膜を形成する対象となる部材である。基材に制限は無く、例えば剥離フィルムの表面に多孔膜組成物の膜を形成し、その膜から溶媒を除去して多孔膜を形成し、剥離フィルムから多孔膜を剥がしてもよい。しかし、通常は、多孔膜を剥がす工程を省略して製造効率を高める観点から、基材として電池の構成要素を用いる。このような電池の構成要素の例としては、セパレータ基材及び極板などが挙げられる。
【0104】
塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。中でも、均一な多孔膜が得られる点で、ディップ法及びグラビア法が好ましい。
【0105】
また、乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風等の風による乾燥;真空乾燥;赤外線、遠赤外線、及び電子線などの照射による乾燥法;などが挙げられる。
【0106】
乾燥の際の温度は、溶媒及びイミノ基含有化合物の種類に応じて設定しうるものであり、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは150℃以下である。乾燥温度を前記範囲の下限以上にすることにより多孔膜組成物からの溶媒及び低分子化合物を効率よく除去できる。さらに、特定重合体とイミノ基含有化合物との架橋反応を促進することができる。また、上限以下とすることにより基材の熱による変形を抑えることができる。
【0107】
乾燥時間は、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上、特に好ましくは15秒以上であり、好ましくは3分以下、より好ましくは2分以下、特に好ましくは1分以下である。乾燥時間を前記範囲の下限以上にすることにより、多孔膜組成物から溶媒を十分に除去できるので、電池の出力特性を向上させることができる。また、上限値以下とすることにより、製造効率を高めることができる。
【0108】
多孔膜の製造方法においては、上述した以外の任意の操作を行ってもよい。
例えば、金型プレス及びロールプレス等のプレス方法によって、多孔膜に加圧処理を施してもよい。加圧処理を施すことにより、基材と多孔膜との結着性を向上させることができる。ただし、多孔膜の空隙率を好ましい範囲に保つ観点では、圧力および加圧時間が過度に大きくならないように適切に制御することが好ましい。
また、残留水分除去のため、例えば真空乾燥やドライルーム内で乾燥することが好ましい。
さらに、例えば加熱処理することも好ましく、これにより重合体成分に含まれる熱架橋基を架橋させて、結着力を高めることができる。
【0109】
多孔膜の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。多孔膜の厚みを前記範囲の下限値以上とすることにより、多孔膜の耐熱性を高くすることができる。また上限値以下とすることにより、多孔膜によるイオン伝導性の低下を抑制することができる。
【0110】
また、単位面積当たりの多孔膜の重量は、好ましくは0.1mg/cm以上、より好ましくは0.5mg/cm以上、特に好ましくは1mg/cm以上であり、好ましくは20mg/cm以下、より好ましくは15mg/cm以下、特に好ましくは10mg/cm以下である。単位面積当たりの多孔膜の重量を前記範囲の下限値以上とすることにより、多孔膜の耐熱性を高くすることができる。また上限値以下とすることにより、多孔膜によるイオン伝導性の低下を抑制することができる。
【0111】
[3.二次電池用セパレーター]
本発明のセパレーターは、セパレータ基材と多孔膜とを備える。本発明のセパレーターでは、多孔膜が設けられていることにより、異物によるセパレータ基材の破損、並びに、熱によるセパレータ基材の収縮を防止できる。したがって、このセパレーターを備えるリチウムイオン二次電池の内部短絡を防止して、電池の安全性を高めることができる。また、本発明のセパレーターが本発明に係る多孔膜を備えるので、当該セパレーターを備えるリチウムイオン二次電池においてガスの発生を抑制することができ、そのリチウムイオン二次電池のサイクル特性を改善することができる。
【0112】
〔3.1.セパレータ基材〕
セパレータ基材としては、例えば、微細な孔を有する多孔性基材を用いうる。このようなセパレータ基材を用いることにより、二次電池において電池の充放電を妨げることなく短絡を防止することができる。セパレータ基材の具体例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などを含む微孔膜または不織布などが挙げられる。
【0113】
セパレータ基材の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。この範囲であると二次電池内でのセパレータ基材による抵抗が小さくなり、また、電池製造時の作業性に優れる。
【0114】
〔3.2.二次電池用セパレーターが備える多孔膜〕
本発明のセパレーターは、セパレータ基材上に上述した多孔膜を備える。すなわち、本発明のセパレーターは、セパレータ基材と、前記セパレータ基材上に多孔膜組成物を塗布することを経て形成された多孔膜とを備える。このようなセパレーターは、例えば、基材としてセパレータ基材を用いて上述した多孔膜の製造方法を行うことにより、製造することができる。この際、多孔膜は、セパレータ基材の片方の面だけに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよい。
【0115】
[4.二次電池用電極]
本発明の電極は、極板と多孔膜とを備える。また、極板は、通常、集電体及び電極活物質層を備える。本発明の電極では、多孔膜が設けられていることにより、電極活物質層からの電極活物質等の粒子の脱離、電極活物質層の集電体からの剥離、並びに電池の内部短絡を防止することができる。また、本発明の電極が本発明に係る多孔膜を備えるので、当該電極を備えるリチウムイオン二次電池においてガスの発生を抑制することができ、そのリチウムイオン二次電池のサイクル特性を改善することができる。
【0116】
〔4.1.集電体〕
集電体は、電気導電性を有し、且つ、電気化学的に耐久性のある材料を用いうる。通常、この集電体の材料としては、金属材料を用いる。その例を挙げると、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などが挙げられる。中でも、正極に用いる集電体としてはアルミニウムが好ましく、負極に用いる集電体としては銅が好ましい。また、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0117】
集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001mm〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。
【0118】
集電体は、電極活物質層との密着強度を高めるため、表面に予め粗面化処理して使用することが好ましい。粗面化方法としては、例えば、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、例えば、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、電極活物質層の密着強度や導電性を高めるために、集電体の表面に中間層を形成してもよい。
【0119】
〔4.2.電極活物質層〕
電極活物質層は、集電体上に設けられた層であり、電極活物質を含む。
リチウムイオン二次電池の電極活物質は、電解液中で電位をかけることにより可逆的にリチウムイオンを挿入又は放出できるものを用いうる。電極活物質は、無機化合物を用いてもよく、有機化合物を用いてもよい。
【0120】
正極活物質は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。無機化合物からなる正極活物質としては、例えば、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、例えば、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVO等のリチウム含有複合金属酸化物;TiS、TiS、非晶質MoS等の遷移金属硫化物;Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13等の遷移金属酸化物などが挙げられる。一方、有機化合物からなる正極活物質としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性重合体が挙げられる。
【0121】
さらに、無機化合物及び有機化合物を組み合わせた複合材料からなる正極活物質を用いてもよい。
また、例えば、鉄系酸化物を炭素源物質の存在下において還元焼成することで、炭素材料で覆われた複合材料を作製し、この複合材料を正極活物質として用いてもよい。鉄系酸化物は電気伝導性に乏しい傾向があるが、前記のような複合材料にすることにより、高性能な正極活物質として使用できる。
さらに、前記の化合物を部分的に元素置換したものを正極活物質として用いてもよい。
これらの正極活物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、前述の無機化合物と有機化合物との混合物を正極活物質として用いてもよい。
【0122】
正極活物質の粒子径は、リチウムイオン二次電池の他の構成要件との兼ね合いで選択されうる。負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、正極活物質の体積平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。正極活物質の体積平均粒子径がこの範囲であると、充放電容量が大きい電池を得ることができ、かつ電極用スラリー組成物および電極を製造する際の取扱いが容易である。
【0123】
電極活物質層における正極活物質の割合は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上であり、また、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99重量%以下である。正極活物質の量を上記範囲とすることにより、リチウムイオン二次電池の容量を高くでき、また、正極の柔軟性並びに集電体と正極活物質層との結着性を向上させることができる。
【0124】
負極活物質は、例えば、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メゾカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維等の炭素質材料;ポリアセン等の導電性重合体;などが挙げられる。また、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄およびニッケル等の金属並びにこれらの合金;前記金属又は合金の酸化物;前記金属又は合金の硫酸塩;なども挙げられる。また、金属リチウム;Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金;リチウム遷移金属窒化物;シリコン等を使用してもよい。さらに、電極活物質は、機械的改質法により表面に導電材を付着させたものを使用してもよい。これらの負極活物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0125】
負極活物質の粒子径は、リチウムイオン二次電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択される。初期効率、負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、負極活物質の体積平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0126】
負極活物質の比表面積は、出力密度向上の観点から、好ましくは2m/g以上、より好ましくは3m/g以上、さらに好ましくは5m/g以上であり、また、好ましくは20m/g以下、より好ましくは15m/g以下、さらに好ましくは10m/g以下である。負極活物質の比表面積は、例えばBET法により測定しうる。
【0127】
電極活物質層における負極活物質の割合は、好ましくは85重量%以上、より好ましくは88重量%以上であり、また、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。負極活物質の量を上記範囲とすることにより、高い容量を示しながらも優れた柔軟性及び結着性を示す負極を実現できる。
【0128】
電極活物質層は、電極活物質の他に、電極用バインダーを含むことが好ましい。電極用バインダーを含むことにより、電極活物質層の結着性が向上し、電極の撒回時等の工程においてかかる機械的な力に対する強度が上がる。また、電極活物質層が集電体及び多孔膜から剥がれにくくなることから、剥れた脱離物による短絡の危険性が小さくなる。
【0129】
電極用バインダーとしては、例えば重合体を用いうる。電極用バインダーとして用いうる重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などを用いてもよい。
【0130】
さらに、以下に例示する軟質重合体の粒子を、電極用バインダーとして使用してもよい。軟質重合体としては、例えば、
(i)ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート共重合体などの、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体の単独重合体またはそれと共重合可能な単量体との共重合体である、アクリル系軟質重合体;
(ii)ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;
(iii)ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などジエン系軟質重合体;
(iv)ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;
(v)液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;
(vi)ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などビニル系軟質重合体;
(vii)ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;
(viii)フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素含有軟質重合体;
(ix)天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体;などが挙げられる。これらの中でも、ジエン系軟質重合体及びアクリル系軟質重合体が好ましい。また、これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、変性により官能基を導入したものであってもよい。
また、電極用バインダーとして使用しうる重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0131】
電極用バインダーとして使用しうる重合体の重量平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。電極用バインダーとして使用しうる重合体の重量平均分子量を上記範囲に収めることにより、電極活物質層の強度及び分散性を良好にし易い。ここで、電極用バインダーとして使用しうる重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、テトラヒドロフランを展開溶媒としたポリスチレン換算の値として求めうる。
【0132】
電極用バインダーとして使用しうる重合体のガラス転移温度は、好ましくは−75℃以上、より好ましくは−55℃以上、特に好ましくは−35℃以上であり、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらにより好ましくは20℃以下、特に好ましくは15℃以下である。電極用バインダーとしての重合体のガラス転移温度を上記範囲に収めることにより、電極の柔軟性及び捲回性、並びに電極活物質層と集電体との結着性などの特性が高度にバランスされ、好適である。重合体のガラス転移温度は、例えば、様々な単量体を組み合わせることによって調整可能である。
【0133】
電極用バインダーとして粒子状重合体を用いる場合、その体積平均粒径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは70nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下である。粒子状重合体の体積平均粒径を上記範囲に収めることにより、電極活物質層の強度及び柔軟性を良好にできる。
【0134】
電極活物質層における電極用バインダーの量は、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。電極用バインダーの量が前記範囲であることにより、電池反応を阻害せずに、電極から電極活物質が脱落するのを防ぐことができる。
【0135】
電極活物質層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、電極活物質及び電極用バインダー以外にも、任意の成分が含まれていてもよい。その例を挙げると、導電材、補強材などが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0136】
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の導電性カーボン;黒鉛等の炭素粉末;各種金属のファイバー及び箔;などが挙げられる。導電材を用いることにより、電極活物質同士の電気的接触を向上させることができ、サイクル特性等の電池特性を改善できる。
【0137】
導電材の比表面積は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは60m/g以上、特に好ましくは70m/g以上であり、好ましくは1500m/g以下、より好ましくは1200m/g以下、特に好ましくは1000m/g以下である。導電材の比表面積を前記範囲の下限値以上にすることにより、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、電極活物質層と集電体との結着性を高めることができる。
【0138】
補強材としては、例えば、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。補強材を用いることにより、強靭で柔軟な電極を得ることができ、優れた長期サイクル特性を得ることができる。
【0139】
導電材及び補強剤の使用量は、電極活物質100重量部に対して、それぞれ、通常0重量部以上、好ましくは1重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。
【0140】
電極活物質層の厚みは、正極及び負極のいずれも、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下である。
【0141】
電極活物質層の製造方法は特に制限されない。電極活物質層は、例えば、電極活物質及び溶媒、並びに、必要に応じて電極用バインダー及び任意の成分を含む電極用スラリー組成物を集電体上に塗布し、乾燥させて製造しうる。溶媒としては、水及び有機溶媒のいずれも使用しうる。
【0142】
〔4.3.二次電池用電極が備える多孔膜〕
本発明の電極は、前記の極板上に、上述した多孔膜を備える。すなわち、本発明の電極は、極板と、極板上に多孔膜組成物を塗布することを経て形成される多孔膜とを備える。このような電極は、例えば、基材として極板を用いて上述した多孔膜の製造方法を行うことにより、製造することができる。この際、多孔膜は、極板の片方の面だけに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよい。ただし、通常は、多孔膜が電極活物質層上に設けられるので、本発明の電極は、集電体、電極活物質層及び多孔膜をこの順に備える。
【0143】
[5.リチウムイオン二次電池]
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極及び電解液を備える。また、本発明の二次電池は、下記の要件(A)を満たすか、要件(B)を満たすか、要件(A)及び(B)の両方を満たす。
(A)本発明のリチウムイオン二次電池の正極及び負極の少なくとも一方が、本発明の電極である。
(B)本発明のリチウムイオン二次電池がセパレーターを備え、且つ、そのセパレーターが本発明のセパレーターである。
【0144】
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の多孔膜組成物を用いて製造される多孔膜を備えるため、充放電によるガスの発生を抑制できる。そのため、サイクル特性を改善することができるので、長寿命化を実現することができる。
【0145】
〔5.1.電極〕
本発明のリチウムイオン二次電池は、原則として、正極及び負極の一方又は両方として、本発明の電極を備える。ただし、本発明のリチウムイオン二次電池がセパレーターとして本発明のセパレーターを備える場合には、正極及び負極の両方として本発明の電極以外の電極を備えていてもよい。
【0146】
〔5.2.セパレーター〕
本発明のリチウムイオン二次電池は、原則として、セパレーターとして本発明のセパレーターを備える。ただし、本発明の二次電池が正極及び負極の少なくとも一方として本発明の電極を備える場合には、セパレーターとして本発明のセパレーター以外のセパレータを備えていてもよい。また、本発明の電極が備える多孔膜はセパレーターとしての機能を有するので、本発明の電極を備える二次電池においてはセパレーターを省略してもよい。
【0147】
〔5.3.電解液〕
電解液としては、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものを使用しうる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF、LiClO、CFSOLiは好適に用いられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0148】
支持電解質の量は、電解液における濃度として、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。支持電解質の量をこの範囲に収めることにより、イオン導電度を高くして、二次電池の充電特性及び放電特性を良好にできる。
【0149】
電解液に使用する溶媒としては、支持電解質を溶解させうるものを用いうる。このような溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等のアルキルカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが用いられる。特に高いイオン伝導性が得易く、使用温度範囲が広いため、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートが好ましい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0150】
また、電解液は必要に応じて添加剤を含みうる。添加剤としては、例えばビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート系の化合物が好ましい。添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0151】
〔5.4.ハロゲン化物イオンの発生源〕
上述したように、本発明のリチウムイオン二次電池では、特定重合体又はイミノ基含有化合物がハロゲン化物イオンをトラップすることによりガスの発生が抑制されていると考えられる。このようなハロゲン化物イオンの発生源と考えられる成分としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0152】
例えば、フッ化物イオンの発生源としては、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLi等の電解液の支持電解質;ポリフッ化ビニリデン等の電極のバインダーなどが挙げられる。
また、例えば、塩化物イオンの発生源としては、LiAlCl、LiClO等の電解液の支持電解質;カルボキシメチルセルロース塩等の添加剤;電極活物質の残留HClなどが挙げられる。
【0153】
本発明のリチウムイオン二次電池は、前記のようなハロゲン化物イオンを生じうる成分を含む構成であっても、そのハロゲン化物イオンによる電池の性能低下を抑制できる点で、意義がある。
【0154】
〔5.5.リチウムイオン二次電池の製造方法〕
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、特に限定されない。例えば、上述した負極と正極とをセパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口してもよい。さらに、必要に応じてエキスパンドメタル;ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子;リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、ラミネートセル型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などいずれであってもよい。
【実施例】
【0155】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0156】
[評価方法]
〔1.セルの体積変化の測定方法〕
実施例及び比較例で製造した800mAh捲回型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行った。その後、電池のセルを流動パラフィンに浸漬し、その体積V0を測定した。
【0157】
さらに、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電を1000サイクル繰り返した。その後、電池のセルを流動パラフィンに浸漬し、その体積V1を測定した。
【0158】
充放電を1000サイクル繰り返す前後での電池のセルの体積変化ΔVを、「ΔV=(V1−V0)/V0×100(%)」にて計算した。この体積変化ΔVの値が小さいほど、ガスの発生を抑制する能力に優れていることを示す。
【0159】
〔2.セパレータ基材と多孔膜とのピール強度の測定方法〕
実施例及び比較例において製造した多孔膜を備えるセパレーターを、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して、試験片を得た。この試験片を、多孔膜の表面を下にして、多孔膜の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、セパレーターの一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度とした。測定されたピール強度が大きいほど、セパレータ基材と多孔膜との結着力が大きいことを示す。すなわち、測定されたピール強度が大きいほど、密着強度が大きいことを示す。
【0160】
〔3.極板と多孔膜とのピール強度の測定方法〕
実施例において製造した多孔膜を備える電極を、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して、試験片を得た。この試験片を、多孔膜の表面を下にして、多孔膜の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、集電体の一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値を求めて、当該平均値をピール強度とした。測定されたピール強度が大きいほど、電極活物質層と多孔膜との結着力が大きいことを示す。すなわち、測定されたピール強度が大きいほど、密着強度が大きいことを示す。
【0161】
〔4.高温サイクル特性の評価方法〕
実施例及び比較例で製造した800mAh捲回型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。
【0162】
さらに、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電の操作を1000サイクル繰り返し、1000サイクル後の容量C1を測定した。
【0163】
容量維持率ΔCを「ΔC=C1/C0×100(%)」にて計算した。この容量維持率ΔCの値が高いほど、リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性が優れ、電池が長寿命であることを示す。
【0164】
〔5.多孔膜組成物の粘度変化率の測定方法〕
実施例及び比較例で製造した多孔膜組成物について、B型粘度計により、25℃、回転数60rpmにおける粘度η0を測定した。
その後、多孔膜組成物を25℃で7日間静置した後、再び前記と同様にして粘度η1を測定した。
測定された粘度η0及び粘度η1から、粘度変化率={(η1−η0)/η0}×100(%)を計算した。粘度変化率が小さいほど、その多孔膜組成物は経時的に粘度変化を生じ難く、分散安定性に優れることを示す。
【0165】
〔6.溶出率の測定方法〕
実施例及び比較例で製造した二次電池用セパレーター又は二次電池用電極を、長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して、試験片を得た。そして、この試験片の重量M0を測定した。
その後、試験片を電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF)に60℃、72時間浸漬し、25℃にて24時間乾燥させた。その後、乾燥させた試験片の重量M1を測定した。
溶出率を、「溶出率(%)=(M0−M1)/M0×100(%)」にて計算した。溶出率が小さいほど、多孔膜からの特定重合体及びイミノ基含有化合物の溶出の程度を小さくできるので、サイクル特性の向上が期待できる。
【0166】
〔7.負極におけるコバルト析出量の測定方法〕
実施例及び比較例で製造した800mAh捲回型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、0.1Cで4.35Vまで充電し0.1Cで2.75Vまで放電する充放電の操作を行った。さらに、このリチウムイオン二次電池に、60℃環境下で、前記と同様の条件で充放電の操作を1000サイクル繰り返した。
その後、リチウムイオン二次電池を分解して負極を取り出し、負極におけるコバルトの重量割合を測定した。測定は、ICP発光分光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「SPS3000」)を用いて行った。負極におけるコバルトの重量が大きいほど、負極において金属析出が大きく起こっていることを示す。
【0167】
[実施例1]
(1−1.特定重合体の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、単量体としてブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、アリルメタクリレート1部及びアクリルアミド1部;乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部;イオン交換水150部;及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状重合体を含む混合物を得た。前記の粒子状重合体を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。その後、その混合物から加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った後、30℃以下まで冷却し、特定重合体として粒子状重合体を含む水分散液を得た。
【0168】
(1−2.多孔膜組成物の製造)
非導電性粒子としてアルミナ粒子(日本軽金属社製「LS256」;体積平均粒子径0.5μm)100部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(ダイセル社製「1220」)2部、イミノ基含有化合物としてポリエチレンイミン(シグマアルドリッチ社製、重量平均分子量750000)0.2重量部、及び、前記にて製造した粒子状重合体を含む水分散液を粒子状重合体換算の量で5部混合し、更に水を加えて固形分濃度を40重量%に調整して、スラリー状の多孔膜組成物を製造した。
こうして得られた多孔膜組成物について、上述した方法で、粘度変化率を測定した。
【0169】
(1−3.多孔膜の形成)
単層のポリプロピレン製セパレータ基材(セルガード社製「セルガード2500」)の片面に、前記にて製造した多孔膜組成物を、グラビアコーターで、乾燥後の塗布量が6mg/cmとなるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、セパレーターを20m/分の速度で100℃のオーブン内を1分間かけて搬送することにより行った。これにより、セパレータ基材及びそのセパレータ基材上に形成された多孔膜を備えるリチウムイオン二次電池用セパレーターを得た。
こうして得られたセパレーターについて、上述した方法で、セパレータ基材と多孔膜とのピール強度、及び溶出率を測定した。
【0170】
(1−4.負極用の粒子状バインダーの製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33.5部、イタコン酸3.5部、スチレン62部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、粒子状バインダー(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状バインダーを含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。その後、この混合物から加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った後、30℃以下まで冷却し、所望の粒子状バインダーを含む水分散液を得た。
【0171】
(1−5.負極用スラリー組成物の製造)
人造黒鉛(体積平均粒子径:15.6μm)100部、及び、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部混合し、さらにイオン交換水を加えて固形分濃度を68%に調製した後、25℃で60分間混合した。さらにイオン交換水を加えて固形分濃度を62%に調製した後、さらに25℃15分間混合した。こうして得られた混合液に、前記の粒子状バインダーを含む水分散液を固形分相当で1.5部加え、更にイオン交換水を入れて最終固形分濃度が52%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
【0172】
(1−6.負極の製造)
上記で得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極活物質層の厚みが80μmのプレス後の負極を得た。
【0173】
(1−7.正極用スラリー組成物の製造)
正極活物質として体積平均粒子径12μmのLiCoOを100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を2部、及び、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、#7208)を固形分相当で2部混合し、更にN−メチルピロリドンを加えて全固形分濃度が70%となるように調整した。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を調製した。
【0174】
(1−8.正極の製造)
上記で得られた正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミニウム箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、正極を得た。
【0175】
(1−9.リチウムイオン二次電池)
電池の外装として、アルミニウム包材外装を用意した。
前記の正極を5×39.5cmの長方形に切り出し、アルミニウム包材外装内に、集電体側の表面がアルミニウム包材外装に接するように配置した。
前記のリチウムイオン二次電池用セパレーターを6×45cmの長方形に切り抜き、これを正極の正極活物質層の面上に、セパレータ基材側の表面が正極に向かい合うように配置した。
さらに、前記の負極を5.5×40cmの長方形に切り出し、これをセパレーター上に、負極活物質層側の表面がセパレーターに向かい合うよう配置し捲回した。
【0176】
このアルミニウム包材外装の中に電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF)を空気が残らないように注入した。さらに、このアルミニウム包材外装の開口を密封するために、150℃のヒートシールを施してアルミニウム外装を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。
こうして得られたリチウムイオン二次電池について、上述した方法で、セルの体積変化ΔV、容量維持率ΔC、及び、負極におけるコバルトの重量割合を測定した。
【0177】
[実施例2]
前記工程(1−1)において、ブチルアクリレートの量を94.8部に変更し、アクリルアミドの量を0.2部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0178】
[実施例3]
前記工程(1−1)において、ブチルアクリレートの量を76部に変更し、アクリルアミドの量を19部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0179】
[実施例4]
前記工程(1−1)において、アクリルアミドの代わりにメタクリルアミドを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0180】
[実施例5]
前記工程(1−1)において、アクリルアミドの代わりにN,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミドを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0181】
[実施例6]
前記工程(1−1)において、アクリルアミドの代わりにN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0182】
[実施例7]
前記工程(1−2)において、アルミナ粒子100部に対するポリエチレンイミンの量を0.02部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0183】
[実施例8]
前記工程(1−2)において、アルミナ粒子100部に対するポリエチレンイミンの量を0.8部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0184】
[実施例9]
重量平均分子量750000のポリエチレンイミン(シグマアルドリッチ社製)50重量部を水1000重量部に溶解した。その後、溶液を60℃に加温し、撹拌しながら、35%過酸化水素水55重量部を15分間かけて滴下し、その後1時間攪拌させた。こうして得られた反応液を減圧濃縮し、乾燥することにより、ポリN−ヒドロキシルエチレンイミン50重量部を得た。
【0185】
前記工程(1−2)において、ポリエチレンイミンの代わりに前記のポリN−ヒドロキシルエチレンイミンを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0186】
[実施例10]
前記工程(1−2)において、ポリエチレンイミンとして重量平均分子量が110000のものを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0187】
[実施例11]
前記工程(1−2)において、ポリエチレンイミンとして重量平均分子量が2000000のものを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0188】
[実施例12]
前記工程(1−1)において、メタクリル酸の代わりにスチレンスルホン酸のナトリウム塩を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0189】
[実施例13]
前記工程(1−1)において、メタクリル酸の代わりにモノメチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェートを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0190】
[実施例14]
前記工程(1−1)において、ブチルアクリレートの量を95.8部に変更し、メタクリル酸の量を0.2部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0191】
[実施例15]
ブチルアクリレートの量を66部に変更し、メタクリル酸の量を30部に変更したこと以外は実施例1の工程(1−1)と同様にして、特定重合体として水溶性重合体を含む水溶液を得た。
【0192】
前記工程(1−2)において、粒子状重合体を含む水分散液の代わりに実施例15で製造した前記水溶性重合体を含む水溶液を水溶性重合体換算の量で5部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0193】
[実施例16]
前記工程(1−1)において、単量体として、ブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、アリルメタクリレート1部及びアクリルアミド1部の代わりに、スチレン49部、1,3−ブタジエン47.5部、メタクリル酸2.5部及びアクリルアミド1部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0194】
[実施例17]
前記工程(1−2)において、アルミナ粒子100部に対する粒子状重合体を含む水分散液の量を、粒子状重合体換算の量で0.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0195】
[実施例18]
前記工程(1−2)において、アルミナ粒子100部に対する粒子状重合体を含む水分散液の量を、粒子状重合体換算の量で18部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0196】
[実施例19]
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、スチレン79部、メチルメタクリレート20部、エチレングリコールジメタクリレート1部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、非導電性粒子を含む混合物を得た。上記非導電性粒子を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。その後、この混合物から加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った後、30℃以下まで冷却し、所望の非導電性粒子を含む水分散液を得た。
【0197】
前記工程(1−2)において、アルミナ粒子の代わりに実施例19で製造した非導電性粒子を含む水分散液を、非導電性粒子換算の量で100部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0198】
[実施例20]
前記工程(1−6)で得た負極を極板として用意した。この極板上に、前記工程(1−2)で得た多孔膜組成物を、グラビアコーターで、乾燥後の塗布量が6mg/cmとなるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、極板を20m/分の速度で100℃のオーブン内を1分間かけて搬送することにより行った。これにより、銅箔及び負極活物質層を備える極板とその極板上に形成された多孔膜とを備えるリチウムイオン二次電池用負極を得た。こうして得られた負極について、上述した方法で、極板と多孔膜とのピール強度、及び溶出率を測定した。
【0199】
前記工程(1−9)において、セパレーターとして単層のポリプロピレン製セパレーター(セルガード社製「セルガード2500」)を用い、また、負極として実施例20で製造した前記のリチウムイオン二次電池用負極を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0200】
[実施例21]
ブチルアクリレートの量を92部に変更し、メタクリル酸の量を4部に変更したこと以外は実施例1の工程(1−1)と同様にして、粒子状重合体を含む水分散液を得た。この水分散液の溶媒をN−メチルピロリドンに置換することにより、N−メチルピロリドンに溶解した特定重合体を含むN−メチルピロリドン溶液を得た。
【0201】
前記工程(1−2)において、粒子状重合体を含む水分散液の代わりに実施例21で製造した前記特定重合体を含むN−メチルピロリドン溶液を特定重合体換算の量で5部用い、固形分濃度調整用の溶媒として水の代わりにN−メチルピロリドンを用い、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を使用しなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0202】
[比較例1]
前記工程(1−1)において、ブチルアクリレートの量を95部に変更し、アクリルアミドを使用しなかった。
また、前記工程(1−2)において、ポリエチレンイミンを使用しなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0203】
[比較例2]
前記工程(1−1)において、ブチルアクリレートの量を96部に変更し、メタクリル酸を使用しなかった。
また、前記工程(1−2)において、ポリエチレンイミンとして重量平均分子量が1800のものを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0204】
[比較例3]
前記工程(1−2)において、アルミナ粒子100部に対するポリエチレンイミンの量を0.0025部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0205】
[比較例4]
前記工程(1−2)において、アルミナ粒子100部に対するポリエチレンイミンの量を5.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造しようとしたが、多孔膜組成物において凝集が生じ、多孔膜組成物の塗布ができなかったため、前記工程(1−3)において多孔膜を形成することができなかった。
【0206】
[比較例5]
前記工程(1−1)において、ブチルアクリレートの量を95.95部に変更し、メタクリル酸の量を0.05部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0207】
[比較例6]
ブチルアクリレートの量を31部に変更し、メタクリル酸の量を65部に変更したこと以外は実施例1の工程(1−1)と同様にして、特定重合体として水溶性重合体を含む水溶液を得た。
【0208】
前記工程(1−2)において、粒子状重合体を含む水分散液の代わりに比較例6で製造した前記水溶性重合体を含む水溶液を水溶性重合体換算の量で5部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造し、評価した。
【0209】
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。
下記の表の「他の単量体」の欄において、単量体を示す略称の横の数値は、全単量体中に占めるその単量体の量を示す。また、下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
MV:体積平均粒子径
PEI:ポリエチレンイミン
PHEI:ポリN−ヒドロキシルエチレンイミン
Mw:重量平均分子量
単量体I:アミド単量体
AAm:アクリルアミド
MAAm:メタクリルアミド
DMAEAAm:N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド
DMAPAAm:N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
単量体II:酸基含有単量体
MAA:メタクリル酸
NaSS:スチレンスルホン酸のナトリウム塩
MMAOEP:モノメチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート
BA:ブチルアクリレート
AN:アクリロニトリル
AMA:アリルメタクリレート
I/P量:特定重合体100部に対するイミノ基含有化合物の量
CMC塩:カルボキシメチルセルロースの塩
NMP:N−メチルピロリドン
セパ:セパレータ基材
【0210】
【表1】
【0211】
【表2】
【0212】
【表3】
【0213】
【表4】
【0214】
【表5】
【0215】
【表6】
【0216】
[検討]
実施例において、比較例に比べて体積変化ΔVが小さく、また、容量維持率ΔCが大きい。このことから、本発明により、リチウムイオン二次電池の充放電に伴うガスの発生を抑制でき、サイクル特性を向上させられることが確認された。また、特定重合体及びイミノ基含有化合物の一方のみを用いた比較例1及び2において体積変化ΔVが大きくなっていることから、前記のようにガスの発生を抑制できるとの効果は、特定重合体及びイミノ基含有化合物を組み合わせてはじめて得られる効果であることが分かる。
また、実施例においては、イミノ基含有化合物を用いていない比較例1よりもコバルト析出量が小さい。このことから、本発明により、負極における金属の析出を抑制できるリチウムイオン二次電池が実現できることが確認された。
また、実施例においては、溶出率の値は小さくなっている。このことから、本発明の多孔膜組成物を用いることにより、電解液に溶出し難い多孔膜を製造できることが確認された。
さらに、上記の実施例の結果から、本発明により分散性及び分散安定性に優れる多孔膜組成物を実現できること、並びに、本発明の多孔膜組成物を用いることにおりセパレータ基材又は極板との結着性にするれる多孔膜を製造できることが確認された。