特許第6236965号(P6236965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236965
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】自動変速機用ドグクラッチ制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20171120BHJP
   F16D 48/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F16H61/02
   F16D28/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-157894(P2013-157894)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-28359(P2015-28359A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 啓介
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 靖久
(72)【発明者】
【氏名】甲村 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】岩田 崇司
(72)【発明者】
【氏名】森 匡輔
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−096190(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/132106(WO,A1)
【文献】 特開2002−286127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00−23/14
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
F16H 59/00−61/12
F16H 61/16−61/24
F16H 61/66−61/70
F16H 63/40−63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機の入力軸及び出力軸の一方に回転連結され軸線回りに回転可能に軸承された回転軸と、
前記回転軸に回転可能に支承され前記入力軸及び出力軸の他方に回転連結されたクラッチリング、前記回転軸に前記クラッチリングと隣接して固定されたクラッチハブ、前記クラッチハブとスプラインで前記軸線方向に移動可能に嵌合されたスリーブ、前記スリーブを前記軸線方向に移動させる軸動装置、前記クラッチリングの前記スリーブ側に突出して形成され前記スリーブの軸動に応じて前記スプラインと係脱可能に噛合するドグクラッチ部、及び前記スリーブの前記軸線方向の移動位置を検出するストローク位置センサを有し、
前記スプラインは、複数の高歯が残りの低歯より歯丈が高く形成され、
前記ドグクラッチ部は、外径が前記高歯の内径より大きくかつ前記低歯の内径より小さく前記高歯と同数のクラッチ前歯が、前記高歯と対応する位置で前記ドグクラッチ部の前端面から前記ドグクラッチ部の後端位置まで延在して形成され、
前記スプラインの歯溝と噛合可能なクラッチ後歯が、前記ドグクラッチ部の前記前端面より所定量後退した位置から前記ドグクラッチ部の前記後端位置まで延在して形成されているドグクラッチ変速機構と、
前記ストローク位置センサの検出位置に基づいて、前記軸動装置の作動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、第1推力荷重で前記スリーブを前記ドグクラッチ部側へ付勢して移動させ、前記スプラインの前記高歯の先端部が前記クラッチ後歯方向へ変位して前記クラッチ前歯の先端部に位置した第1ストローク位置に到達すると、前記スリーブの前記高歯の先端部が前記クラッチ後歯の先端部に変位可能であるとともに前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して、前記スリーブと前記ドグクラッチ部との間の相対回転を確保することが可能な第2推力荷重とし、前記スリーブの前記高歯の前記先端部が、前記クラッチ後歯の前記先端部の第2ストローク位置に到達すると、前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して前記スリーブの前記高歯の前記先端部を前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯にて形成される歯溝へ向けて変位可能な推力荷重と、前記スリーブの前記高歯の前記先端部
と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して前記スリーブと前記ドグクラッチ部との間の相対回転を確保することが可能な推力荷重と交互に加える第3推力荷重とし、前記クラッチ後歯の前記先端部で前記第2ストローク位置よりも後方に位置した第3ストローク位置に前記スリーブの前記高歯の前記先端部に到達すると、前記第3推力荷重よりも大きい第4推力荷重に増大させる自動変速機用ドグクラッチ制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記スリーブと前記クラッチリングとの相対差回転に基づき、前記スリーブの前記高歯の前記先端部が所定位置から前記第3ストローク位置に到達するに要する時間に相当した飛込み設定時間を設定し、その飛込み設定時間内に、前記スリーブの前記高歯の前記先端部が、前記所定位置から前記第3ストローク位置に到達していないことを検出した場合は、前記第3推力荷重における前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して前記スリーブの前記高歯の前記先端部を前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯にて形成される前記歯溝へ向けて変位可能な推力荷重よりも小なる推力荷重と、その推力荷重よりも小さくかつ前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して、前記スリーブと前記ドグクラッチ部との間の相対回転を確保することが可能な推力荷重とを交互に加える第5推力荷重とする請求項1に記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置。
【請求項3】
前記クラッチ前歯の前記先端部は前端面とその両側に傾斜した第1面取り面とを有し、前記第1ストローク位置は、前記第1面取り面と前記クラッチ前歯の側面との境界辺とした請求項1に記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置。
【請求項4】
前記クラッチ後歯の前記先端部は前端面を有し、前記第2ストローク位置は、前記前端面とした請求項1に記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置。
【請求項5】
前記クラッチ後歯の前記先端部は前記前端面とその両側に傾斜した第2面取り面とを有し、前記第3ストローク位置は、前記第2面り面と前記クラッチ後歯の側面との境界辺とした請求項4に記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置。
【請求項6】
前記第3推力荷重は前記第2面取り面の摩擦抵抗に打ち勝ち得る推力荷重を含むとした請求項5に記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置。
【請求項7】
前記クラッチ後歯の前記先端部は前端面を有し、前記第2ストローク位置は、前記前端面とし、
前記クラッチ後歯の前記先端部は前記前端面とその両側に傾斜した第2面取り面とを有し、前記第3ストローク位置は、前記第2面取り面と前記クラッチ後歯の側面との境界辺とし、
前記第5推力荷重は前記第2面取り面の摩擦抵抗に打ち勝ち得ない推力荷重を含む請求項に記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置。
【請求項8】
前記第3推力荷重は前記スリーブのストロークを微動推移させる請求項1に記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置。
【請求項9】
前記第5推力荷重は前記スリーブのストロークを微動推移させる請求項2に記載の自動変速機用ドグクラッチ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用自動変速機に使用されるドグクラッチの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のパワートレインには、駆動に使用されるエンジンや電動モータなどの駆動装置からの回転やトルクを、走行状況に応じて駆動輪に伝達するため、トルクや回転数を変換する変速機を備える。変速機には幾つかの種類があるが、例えば駆動輪に連結された回転軸に相対回転可能かつ回転軸線方向に移動不能に嵌合された複数の遊転ギヤと回転軸に平行に設けられたカウンタ軸に周設された複数のギヤとが常時噛み合った常時噛み合い式のものが知られている。これは、回転軸に回転軸線方向に移動可能にスプライン嵌合したスリーブを遊転ギヤに並設し、スリーブの遊転ギヤへの接合面に設けられた係合歯(スプライン)を遊転ギヤの被接合面に設けられた被係合歯(ドグクラッチ歯)に係合せ、この係合された遊転ギヤと回転軸とを一体回転させるものである。そして、回転軸と一体回転する遊転ギヤとその遊転ギヤと噛合するカウンタ軸のギヤとが連動して回転することにより、回転軸のトルクや回転数をカウンタ軸に伝達するものであり、歯数の異なった複数の遊転ギヤのうち、回転軸と一体回転させる遊転ギヤを選択してスリーブを係合させることにより、変速動作をおこなうものである。そして、スリーブと遊転ギヤとの係合が、スリーブの遊転ギヤへの押付のタイミングによっては、うまくいかない場合がある。
【0003】
このような場合にうまく係合させるため、特許文献1には、スリーブを遊転ギヤに係合できない場合に、スリーブを遊転ギヤ側へ押付けていたトルクを一旦減じ、その後、改めて大きなトルクで遊転ギヤ側に押付けることとしている。
【0004】
これによると、スリーブを遊転ギヤに係合できなかった場合に、改めて係合動作だけが実行されるので、変速操作自身を初めからやり直すことなく両者を係合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−82710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1にある変速制御方法では、スリーブが遊転ギヤのドグクラッチに係合することができないと判定するのにタイマを使用しており、一定時間経過しても所定の係合位置まで到達しない場合に、再度スリーブを遊転ギヤに係合させる再突入制御を行なっている。そのため、タイマにて設定する再突入前の突入制御終了時間は、正常に所定の位置まで移動する時間(スリーブがドグクラッチに撥ねられることなく係合する時間)以上の値に設定する必要がある。この結果、スリーブを遊転ギヤのドグクラッチに係合できないと判断された時点で、すでにドグはスリーブに押付けられてスリーブと遊転ギヤの相互の差回転数は微小になって、次に係合できる位置まで時間がかかってしまうか、連れ回ってしまって次に係合するまでの時間が長くなる。このようにして、変速時間が長くかかってしまうというおそれがあった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、変速時にスリーブを移動させてドグクラッチに係合する場合、すばやい変速動作を可能とする自動変速機用ドグクラッチ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る自動変速機用ドグクラッチ制御装置は、自動変速機の入力軸及び出力軸の一方に回転連結され軸線回りに回転可能に軸承された回転軸と、前記回転軸に回転可能に支承され前記入力軸及び出力軸の他方に回転連結されたクラッチリング、前記回転軸に前記クラッチリングと隣接して固定されたクラッチハブ、前記クラッチハブとスプラインで前記軸線方向に移動可能に嵌合されたスリーブ、前記スリーブを前記軸線方向に移動させる軸動装置、前記クラッチリングの前記スリーブ側に突出して形成され前記スリーブの軸動に応じて前記スプラインと係脱可能に噛合するドグクラッチ部、及び前記スリーブの前記軸線方向の移動位置を検出するストローク位置センサを有し、前記スプラインは、複数の高歯が残りの低歯より歯丈が高く形成され、前記ドグクラッチ部は、外径が前記高歯の内径より大きくかつ前記低歯の内径より小さく前記高歯と同数のクラッチ前歯が、前記高歯と対応する位置で前記ドグクラッチ部の前端面から前記ドグクラッチ部の後端位置まで延在して形成され、前記スプラインの歯溝と噛合可能なクラッチ後歯が、前記ドグクラッチ部の前記前端面より所定量後退した位置から前記ドグクラッチ部の前記後端位置まで延在して形成されているドグクラッチ変速機構と、前記ストローク位置センサの検出位置に基づいて、前記軸動装置の作動を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、第1推力荷重で前記スリーブを前記ドグクラッチ部側へ付勢して移動させ、前記スプラインの前記高歯の先端部が前記クラッチ後歯方向へ変位して前記クラッチ前歯の先端部に位置した第1ストローク位置に到達すると、前記スリーブの前記高歯の先端部が前記クラッチ後歯の先端部に変位可能であるとともに前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して、前記スリーブと前記ドグクラッチ部との間の相対回転を確保することが可能な第2推力荷重とし、前記スリーブの前記高歯の前記先端部が、前記クラッチ後歯の前記先端部の第2ストローク位置に到達すると、前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して前記スリーブの前記高歯の前記先端部を前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯にて形成される歯溝へ向けて変位可能な推力荷重と、前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して、前記スリーブと前記ドグクラッチ部との間の相対回転を確保することが可能な推力荷重とを交互に加える第3推力荷重とし、前記クラッチ後歯の前記先端部で前記第2ストローク位置よりも後方に位置した第3ストローク位置に前記スリーブの前記高歯の前記先端部が到達すると、前記第3推力荷重よりも大きい第4推力荷重に増大させることを要旨とする。
【0009】
これによれば、前記制御装置は、前記スリーブの前記高歯の前記先端部が、前記クラッチ後歯の前記先端部の第2ストローク位置に到達して前記クラッチ後歯の前記先端部で前記第2ストローク位置よりも後方に位置した第3ストローク位置に向けて変位させる第3推力荷重を、前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して前記スリーブの前記高歯の前記先端部を前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯にて形成される歯溝へ向けて変位可能な推力荷重が、前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して、前記スリーブと前記ドグクラッチ部との間の相対回転を確保することが可能な推力荷重と交互に加えられて、前記第2推力荷重よりも増大させることにより、前記高歯は、前記クラッチ後歯の前記先端部即ち第2ストローク位置から第3ストローク位置へとすばやく変位することができて、前記スリーブの前記スプラインと前記ドグクラッチ部とを係合させるので、変速時にスリーブを移動させて前記ドグクラッチ部に係合する場合、すばやい変速動作が可能となる。又、前記第2推力荷重及び前記第3推力荷重は、前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して、前記スリーブと前記ドグクラッチ部との間の相対回転を確保することが可能な推力荷重を含むことから、前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接にて相互の差回転数は微小になって、次に係合できる位置まで時間がかかってしまうか、連れ回ってしまって次に係合するまでの時間が長くなることを解消できるので、すばやい変速動作が可能となる。
【0010】
請求項2に係る自動変速機用ドグクラッチ制御装置は、請求項1において、前記制御装置は、前記スリーブと前記クラッチリングとの相対差回転に基づき、前記スリーブの前記高歯の前記先端部が所定位置から前記第3ストローク位置に到達するに要する時間に相当した飛込み設定時間を設定し、その飛込み設定時間内に、前記スリーブの前記高歯の前記先端部が、前記所定位置から前記第3ストローク位置に到達していないことを検出した場合は、前記第3推力荷重における前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して前記スリーブの前記高歯の前記先端部を前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯にて形成される歯溝へ向けて変位可能な推力荷重よりも小なる推力荷重と、その推力荷重よりも小さくかつ前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して、前記スリーブと前記ドグクラッチ部との間の相対回転を確保することが可能な推力荷重とを交互に加える第5推力荷重とすることを要旨とする。
【0011】
これによれば、前記スリーブを前記ドグクラッチ部側へ付勢して移動させる荷重は、第3推力荷重から、第3推力荷重よりも減じられるとともに前記スリーブの前記高歯の前記先端部と前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯の前記先端部との当接によって生じる摩擦力に抗して、前記スリーブと前記ドグクラッチ部との間の相対回転を確保することが可能な推力荷重とを交互に加える第5推力荷重へと変化することから、前記スリーブと前記クラッチ後歯の前記先端部とがそのいずれか一方の表面が荒れた状態に劣化して引っ掛かり連れ回ってしまっていたような場合にも、その推力荷重が弱められることによりその引っ掛かりを外すことができしかも前記スリーブと前記ドグクラッチ部との間の相対回転を確保されているので、前記スリーブは次のクラッチ後歯にて形成される歯溝とすばやく係合することができ、すばやい変速動作が可能となる。
【0012】
請求項3に係る自動変速機用ドグクラッチ制御装置は、請求項1において、前記クラッチ前歯の前記先端部は前端面とその両側に傾斜した第1面取り面とを有し、前記第1ストローク位置は、前記第1面取り面と前記クラッチ前歯の側面との境界辺としたことを要旨とする。
【0013】
これによれば、前記第1ストローク位置は、前記第1面取り面と前記クラッチ前歯の前記側面との境界辺に設定されるので、前記高歯が前記第1ストローク位置に到達したことを前記ストローク位置センサにて容易に検出可能となる。
【0014】
請求項4に係る自動変速機用ドグクラッチ制御装置は、請求項1において、前記クラッチ後歯の前記先端部は前端面を有し、前記第2ストローク位置は、当該前端面としたことを要旨とする。
【0015】
これによれば、前記第2ストローク位置は、前記クラッチ後歯の先端部の前端面に設定されるので、前記高歯が前記第2ストローク位置に到達したことを前記ストローク位置センサにて容易に検出可能となる。
【0016】
請求項5に係る自動変速機用ドグクラッチ制御装置は、請求項4において、前記クラッチ後歯の前記先端部は前記前端面とその両側に傾斜した第2面取り面とを有し、前記第3ストローク位置は、前記第2面り面と前記クラッチ後歯の側面との境界辺としたことを要旨とする。
【0017】
これによれば、前記第3ストローク位置は、前記第2面取り面と前記クラッチ後歯の側面との境界辺に設定されるので、前記高歯が前記第3ストローク位置に到達したことを前記ストローク位置センサにて容易に検出可能となる。
【0018】
請求項6に係る発明自動変速機用ドグクラッチ制御装置は、請求項5において、前記第3推力荷重は前記第2面取り面の摩擦抵抗に打ち勝ち得る推力荷重を含むとしたことを要旨とする。
【0019】
これによれば、前記第3推力荷重が含む前記第2面取り面の摩擦抵抗に打ち勝ち得る推力荷重の作用にて、前記スリーブの前記高歯の前記先端部が前記ドグクラッチ部の前記クラッチ後歯にて形成される歯溝に向けて前記第2面取り面を通りすばやく変位できるので、変速時に前記スリーブを移動させて前記ドグクラッチ部に係合する場合、すばやい変速動作が可能となる。
【0020】
請求項7に係る自動変速機用ドグクラッチ制御装置は、請求項において、前記クラッチ後歯の前記先端部は前端面を有し、前記第2ストローク位置は、前記前端面とし、前記クラッチ後歯の前記先端部は前記前端面とその両側に傾斜した第2面取り面とを有し、前記第3ストローク位置は、前記第2面取り面と前記クラッチ後歯の側面との境界辺とし、前記第5推力荷重は前記第2面取り面の摩擦抵抗に打ち勝ち得ない推力荷重を含むとしたことを要旨とする。
【0021】
これによれば、前記第5推力荷重が含む前記第2面取り面の摩擦抵抗に打ち勝ち得ない推力荷重の作用にて、前記スリーブと前記クラッチ後歯の前記先端部とがそのいずれか一方の表面が荒れて状態に劣化して引っ掛かり連れ回ってしまっていたような場合にも、その推力荷重が弱められることによりその引っ掛かりを外すことができしかも前記スリーブと前記ドグクラッチ部との間の相対回転を確保されているので、前記スリーブは次のクラッチ後歯にて形成される歯溝とすばやく係合することができ、すばやい変速動作が可能となる。
【0022】
請求項8に係る自動変速機用ドグクラッチ制御装置は、請求項1において、前記第3推力荷重は前記スリーブのストロークを微動推移させることを要旨とする。
【0023】
これによれば、前記高歯の先端部がクラッチ前歯間に位置する状態を保持できるため、前記スリーブと前記ドグクラッチ部との係合が完全に外れてしまうことが防止され、即ちスリーブの高歯を再び回転合わせ範囲まで入れ直すという繰り返し作業の発生を防ぐことができる。これによって、スリーブとドグクラッチ部とを迅速に噛合させることができる。
【0024】
請求項9に係る自動変速機用ドグクラッチ制御装置は、請求項2において、前記第5推力荷重F5は前記スリーブのストロークを微動推移させることを要旨とする。
【0025】
これによれば、前記高歯の先端部がクラッチ前歯間に位置する状態を保持できるため、スリーブとドグクラッチ部との係合が完全に外れてしまうことが防止され、即ちスリーブの高歯はスリーブの高歯を再び回転合わせ範囲まで入れ直すという繰り返し作業の発生を防ぐことができる。これによって、スリーブとドグクラッチ部とを迅速に噛合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るドグクラッチを有する自動変速機を備えた車両の概略図である。
図2】本発明に係るドグクラッチを有する自動変速機の概要図である。
図3】制御装置のブロック図である。
図4】ドグクラッチ変速機構の分解斜視図である。
図5】クラッチリングの正面図である。
図6】クラッチハブの正面図である。
図7】スリーブの正面図である。
図8】軸動装置の推力荷重制御を示すフローチャートである。
図9A】変速のための時間の経過におけるドグクラッチ部に対するスリーブ位置及び推力荷重の関係の一例を示す図である。
図9B】変速のための時間の経過におけるドグクラッチ部に対するスリーブ位置及び推力荷重の関係の別の例を示す図である。
図10A】スリーブがニュートラル位置にあるドグクラッチを示す断面図である。
図10B】スリーブがS1位置にあるドグクラッチを示す断面図である。
図10C】スリーブがS1位置とS4位置間にあるドグクラッチを示す断面図である。
図10D】スリーブがS2位置にあるドグクラッチを示す断面図である。
図10E】スリーブがS3位置にあるドグクラッチを示す断面図である。
図11A】ドグクラッチの動作を示す半径方向外側から見た図である。
図11B】スリーブがS1位置にあるドグクラッチの動作を示す半径方向外側から見た図である。
図11C】スリーブがS1位置とS4位置間にあるドグクラッチの動作を示す半径方向外側から見た図である。
図11D】スリーブがS3位置にあるドグクラッチの動作を示す半径方向外側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施例)
以下、本発明による自動変速機用ドグクラッチ制御装置を備えた自動変速機を車両に適用した実施形態について図面を参照して説明する。図1はその車両の構成を示す概要図である。車両Mは、図1に示すように、エンジン11、クラッチ12、自動変速機13、ディファレンシャル装置14、駆動輪(左右前輪)Wfl,Wfrを含んで構成されている。エンジン11は、燃料の燃焼によって駆動力を発生させるものである。エンジン11の駆動力は、クラッチ12、自動変速機13、及びディファレンシャル装置14を介して駆動輪Wfl,Wfrに伝達されるように構成されている(いわゆるFF車両である)。
【0028】
クラッチ12は、制御装置(ECU)10の指令に応じて自動で断接されるように構成されている。自動変速機13は、ドグクラッチ変速機構を組み込んで例えば前進6段、後進1段を自動的に選択するものである。ディファレンシャル装置14は、ファイナルギヤ及びディファレンシャルギヤの両方を含んで構成されており、自動変速機13と一体的に形成されている。
【0029】
自動変速機13は、図2に示すように、ケーシング22、入力シャフト(回転軸)24、第1入力ギヤ26、第2入力ギヤ28、第3クラッチリング(第3入力ギヤ)30、第4クラッチリング(第4入力ギヤ)32、クラッチハブ(図2示略)34、スリーブ36、ストローク位置センサ38、軸動装置40、出力シャフト(出力軸)42、第1クラッチリング(第1出力ギヤ)44、第2クラッチリング(第2出力ギヤ)46、第3出力ギヤ48及び第4出力ギヤ50を含んで構成されている。そして、第1クラッチリング(第1出力ギヤ)44、第2クラッチリング(第2出力ギヤ)46、クラッチハブ34、スリーブ36、軸動装置40等により第1のドグクラッチ変速機構が構成され、第3クラッチリング(第3入力ギヤ)30、第4クラッチリング(第4入力ギヤ)32、クラッチハブ34、スリーブ36、ストローク位置センサ38、及び軸動装置40等により第2のドグクラッチ変速機構が構成される。また、前述の第1及び第2のドグクラッチ変速機構と制御装置10等とによって自動変速機用ドグクラッチ制御装置が構成される。
【0030】
ケーシング22は、ほぼ有底円筒状に形成された本体22a、本体22aの底壁である第1壁22b、及び本体22a内を左右方向に区画する第2壁22cを含んで構成されている。
【0031】
入力シャフト24は、ケーシング22に回転自在に支承されている。すなわち、入力シャフト24の一端(左端)が軸受22b1を介して第1壁22bに軸承され、入力シャフト24の他端(右端)側が軸受22c1を介して第2壁22cに軸承されている。入力シャフト24の他端は、クラッチ12を介してエンジン11の出力軸に回転連結されている。よって、エンジン11の出力はクラッチ12が接続されているときに入力シャフト24に入力される。入力シャフト24が本願発明の回転軸である。なお、本実施形態における入力シャフト(回転軸)24は、自動変速機13の入力軸に直結して回転連結され、回転軸線(軸線)CL回りに回転可能に軸承されるものである。
【0032】
入力シャフト24には、第1入力ギヤ26、第2入力ギヤ28、第3クラッチリング(第3入力ギヤ)30、及び第4クラッチリング(第4入力ギヤ)32が設けられている。第1及び第2入力ギヤ26,28は、スプライン嵌合等で入力シャフト24に対して相対回転不能に固定されている。第3入力ギヤは、入力シャフト24に対して回転自在に支承される第3クラッチリング30の外周に形成されている。第4入力ギヤは入力シャフト24に対して回転自在に支承される第4クラッチリング32の外周に形成されている。さらに、入力シャフト24には、第3クラッチリング30と第4クラッチリング32との間にこれらと隣接して、クラッチハブ34がスプライン嵌合等で相対回転不能に固定されている。第3入力ギヤ(第3クラッチリング)30は後述する第3出力ギヤと噛合し、第4入力ギヤ(第4クラッチリング)32は、後述する第4出力ギヤと噛合する。
【0033】
ケーシング22には入力シャフト24と平行して出力シャフト42が設けられている。出力シャフト(出力軸)42は、ケーシング22に回転自在に支承されている。すなわち、出力シャフト42の一端(左端)が軸受22b2を介して第1壁22bに軸承され、出力シャフト42の他端(右端)が軸受22c2を介して第2壁22cに軸承されている。
【0034】
出力シャフト42には、第1クラッチリング(第1出力ギヤ)44、第2クラッチリング(第2出力ギヤ)46、第3出力ギヤ48、第4出力ギヤ50及び第5出力ギヤ52が設けられている。第1クラッチリング(第1出力ギヤ)44は第1入力ギヤ26と噛合するものであり、外周面には第1入力ギヤ26と噛合するヘリカルギヤが形成されている。第2クラッチリング(第2出力ギヤ)46は第2入力ギヤ28と噛合するものであり、外周面には第2入力ギヤ28と噛合するヘリカルギヤが形成されている。第3出力ギヤ48は第3クラッチリング(第3入力ギヤ)30と噛合するものであり、外周面には第3クラッチリング(第3入力ギヤ)30と噛合するヘリカルギヤが形成されている。第4出力ギヤ50は第4クラッチリング(第4入力ギヤ)32と噛合するものであり、外周面には第4クラッチリング(第4入力ギヤ)32と噛合するヘリカルギヤが形成されている。第5出力ギヤ52は、ディファレンシャル装置14の入力ギヤ(図示省略)と噛合するものであり、外周面にはその入力ギヤと噛合するヘリカルギヤが形成されている。
【0035】
第1クラッチリング44と第2クラッチリング46との間にこれらと隣接して、クラッチハブ34がスプライン嵌合等で出力シャフト42に固定されている。第1クラッチリング44、第2クラッチリング46及びクラッチハブ34等の構成は、入力シャフト24における第3クラッチリング30、第4クラッチリング32及びクラッチハブ34と同様であるので説明を省略する。第3出力ギヤ48、第4出力ギヤ50及び第5出力ギヤ52は、スプライン嵌合等で出力シャフト42に固定されている。エンジン11の駆動力は、入力シャフト24から入力し、出力シャフト42に伝達し最終的に第5出力ギヤ52を介してディファレンシャル装置14に出力される。
【0036】
入力シャフト24の第2のドグクラッチ変速機構と出力シャフト42の第1のドグクラッチ変速機構とは同様の構成なので、入力シャフト24の第2のドグクラッチ変速機構を代表して説明する。
【0037】
入力シャフト24とスプライン嵌合(図略)によって一体回転可能に支持されるクラッチハブ34は、図4及び図6に示すように、平たい円柱状に形成され、クラッチハブ34の外周面にはスプライン歯34aが形成されている。スプライン歯34aは円周方向に同一のピッチで12本形成され、各スプライン歯34aは同一の歯先円の径で形成されている。スプライン歯34aの歯底円の径は、スリーブ36の高歯36a1及び低歯36a2が、噛合可能な深さの噛合溝34a1、34a2に対応して形成されている。クラッチハブ34のスプライン歯34aにはスリーブ36の内歯(スプライン)36aがスライド自在に係合される。
【0038】
スリーブ36は略円環状に形成され、スリーブ36の外周には軸動装置40のフォーク40a(図2参照)が摺動可能に係合する外周溝36bが円周方向に形成されている。スリーブ36の内周に形成された内歯36aは、図4及び図7に示すように、歯底円の径が同一に形成されるとともに、円周方向に同一のピッチで合計12本形成されている。内歯36aは歯丈の異なる高歯36a1と低歯36a2とを備え、歯丈の高い高歯36a1は円周上に180度で対向して一対形成されている。その他10本の低歯36a2は同一の歯丈で高歯36a1よりも低い歯丈で形成されている。
【0039】
スリーブ36の第3及び第4クラッチリング30,32に対向する端面(前端面36a4)であって、高歯36a1及び低歯36a2の回転軸線CLに直角な面が回転方向の前後に有する角には、回転方向に対して45度の面取面36a3が形成されている(図7参照)。これによって、第3、第4クラッチリング30,32の後述するドグクラッチ歯との衝撃で角部が欠落しないようになっている。なお、スリーブ36の高歯36a1の先端部は前端面36a4と面取り面36a3にて構成される。
【0040】
隣り合う高歯36a1と低歯36a2との間、及び隣り合う低歯36a2の間には歯溝36a5が形成されている。これらの歯溝36a5には、後述する第3クラッチリング30のクラッチ前歯30b1及びクラッチ後歯30b2が嵌合する。スリーブ36の高歯36a1及び低歯36a2が前記クラッチハブ34の噛合溝34a1、34a2に係合する。
【0041】
入力シャフト24にはクラッチハブ34に隣接する両側には第3クラッチリング30及び第4クラッチリング32が設けられている。なお、第3クラッチリング30と第4クラッチリング32とは、クラッチハブ34を中心にして略対称の構造なので、第3クラッチリング30について代表して説明する。
【0042】
第3クラッチリング30は、入力シャフト24にベアリング30cを介して相対回転自在かつ回転軸線CL方向の相対移動不能に設けられている(図10A参照)。第3クラッチリング30の外周面に形成された第3入力ギヤは、入力シャフト24に対して相対回転自在に回転する遊転ギヤを構成する。第3クラッチリング30のクラッチハブ34と対向する面(噛合部)にはリング状の第3ドグクラッチ部30aが形成されている。第3ドグクラッチ部30aの外周にはスリーブ36の内歯36aと噛み合う複数のドグクラッチ歯30bが形成されている。ドグクラッチ歯30bは、歯丈の異なる2種類のクラッチ前歯30b1及びクラッチ後歯30b2を備えている。また、ドグクラッチ歯30bは、それぞれ同一の歯底円の径で、かつ円周方向に同じピッチで形成されている。
【0043】
クラッチ前歯30b1は、円周方向に180度回転する対向位置に一対(2本)設けられている。クラッチ前歯30b1は、歯先円の外径が、前記スリーブの高歯36a1の歯先円の内径より大きく、かつ、低歯36a2の歯先円の内径より小さく形成されている。クラッチ前歯30b1は、噛合部を構成する第3ドグクラッチ部30aの前端面FEより回転軸線CL方向に第3ドグクラッチ部30aの後端位置REまで延在して形成される。クラッチ前歯30b1の前端面30b5とクラッチ前歯30b1のスリーブ36側の両側面30b9の間には、回転方向より45度傾斜する第1面取部30b3が形成されている。第3クラッチリング30に対してスリーブ36が相対回転しながら接近した場合に、クラッチ前歯30b1は、スリーブ36の高歯36a1と係合し、低歯36a2とは係合しないようになっている。クラッチ前歯30b1のスリーブ36側の前端面30b5及び第1面取部30b3によって、クラッチ前歯30b1の先端部が構成される。
【0044】
クラッチ後歯30b2は、図4及び図5に示すように、2本のクラッチ前歯30b1間の位相位置に各5本ずつ合計10本配設され、各歯先円の外径がスリーブ36の低歯36a2の歯先円の内径より大きく形成されている。クラッチ後歯30b2は、噛合部を構成する第3ドグクラッチ部30aの前端面FEより回転軸線CL方向にスリーブ36側より所定量t後退した位置から第3ドグクラッチ部30aの後端位置REまで延在して形成される。
【0045】
クラッチ後歯30b2の前端面30b6とクラッチ後歯30b2のスリーブ36側の両側面30b7の間には、回転方向に45度傾斜する第2面取部30b4が設けられている。第3クラッチリング30に対してスリーブ36が相対回転しながら接近した場合に、第3クラッチリング30の所定量t後退した位置まで高歯36a1及び低歯36a2が進入すると、クラッチ後歯30b2はスリーブの高歯36a1及び低歯36a2と係合を開始するようになっている。クラッチ後歯30b2がスリーブの高歯36a1及び低歯36a2と係合することにより、大きな回転トルクを安全かつ確実に伝達するようになっている。クラッチ後歯30b2のスリーブ36側の前端面30b6及び第2面取部30b4によって、クラッチ後歯30b2の先端部が構成される。
【0046】
スリーブ36の先端部(高歯36a1の前端面36a4)の位置を検出するストローク位置センサ38として、例えば光位置センサやリニアエンコーダ等の各種位置センサを使用する。
【0047】
制御装置10は、図3に示すように、記憶部、演算部及び制御部を有し、ストローク位置センサ38が検出したスリーブ36の先端部(高歯36a1の前端面36a4)の第3ドグクラッチ部30aのクラッチ前歯30b1の先端部に対する位置、クラッチ後歯30b2の先端部及びドグクラッチ部30aの後端位置REに対する相対位置信号に基づいて、軸動装置40を駆動させるリニアアクチュエータ40iの推力荷重値及び高歯36a1の前端面36a4の移動位置を制御する。
【0048】
軸動装置40は、スリーブ36を軸線方向に沿って往復動させるものであり、スリーブ36を第3クラッチリング30または第4クラッチリング32に押圧させている際に、第3クラッチリング30または第4クラッチリング32から反力が加わった場合に、スリーブ36がその反力によって移動することを許容するように構成されている。
【0049】
軸動装置40は、フォーク40a、フォークシャフト40b及び駆動装置40cを含んで構成されている。フォーク40aの先端部は、スリーブ36の外周溝36bの外周形状にあわせて形成されている。フォーク40aの基端部は、フォークシャフト40bに固定されている。フォークシャフト40bは、ケーシング22に軸線方向に沿って摺動自在に支承されている。すなわち、フォークシャフト40bの一端(左端)が軸受22b3を介して第1壁22bに支承され、フォークシャフト40bの他端(右端)側がブラケット40dに固定され、ブラケット40dは第2壁22cより軸線方向に突出するガイド部材(回り止め)40eによって摺動可能であるとともに、ナット部材40fに相対回転不能に固定されている。ナット部材40fは駆動装置40cを備えた駆動シャフト40hに進退可能に螺合されている。駆動シャフト40hは軸受22c3を介して第2壁22cに支承されている。
【0050】
駆動装置40cは、リニアアクチュエータ40iを駆動源とするリニア駆動装置であり、リニアアクチュエータ40iとしては、例えば、ボールねじ式のリニアアクチュエータがある。これは例えば、円筒状に形成され内周方向に複数のコイルをステータ(図略)として配設させたケーシングと、ステータに対して回転自在に設けられ該ステータと磁気的空隙を設けて対向する複数のN極磁石とS極磁石とが外周に交互に配設されたロータ(図略)と、ステータの回転軸線を中心にロータとともに一体回転する駆動シャフト40h(ボールねじ軸)と、駆動シャフト40hに螺合されるボールナットからなるナット部材40fとから構成される。駆動シャフト40hはナット部材40fに複数のボール(図略)を介して相対回転可能に螺入されている。
【0051】
ステータの各コイルへの通電を制御することで、駆動シャフト40hが正逆双方向に任意に回転し、ナット部材40f及びフォークシャフト40bを往復動させるとともに、任意の位置に位置決め固定させる。また、この駆動装置40は、前記ボールねじ軸のリードを長く形成することで、第3クラッチリング30または第4クラッチリング32から反力が加わった場合に、スリーブ36がその反力によって移動することを許容するように構成されている。
【0052】
フォークシャフト40bの第1壁22b付近には、ディテント機構58が設けられている。ディテント機構58は、図略のばねでフォークシャフト40bの軸線に直角な方向に付勢されているストッパ58aを備え、ストッパ58aがフォークシャフト40bに軸線に沿って複数設けられている三角溝59にばね力で嵌まり込むことにより、フォークシャフト40bの軸線方向の摺動を任意の位置に位置決め可能に構成される。
【0053】
なお、本実施形態では、駆動装置としてボールねじ式リニアアクチュエータを採用したが、スリーブ36を第3クラッチリング30または第4クラッチリング32に押圧させている際に、第3クラッチリング30または第4クラッチリング32から反力が加わった場合に、スリーブ36がその反力によって移動することを許容するように構成されているものであれば、他の駆動装置であるソレノイド式駆動装置や油圧式駆動装置でもよい。
【0054】
次に、上述した自動変速機用ドグクラッチ装置の作動について、図8乃至図11に基づき以下に説明する。ここで例えばシフトアップにおいて、スリーブ36が高速かつ小さい慣性モーメントで回転し、第3クラッチリング30(第3入力ギヤ)が低速かつ大きい慣性モーメントで回転している場合には、スリーブ36は減速される。一方、シフトダウンにおいてスリーブ36が低速かつ小さい慣性モーメントで回転し、第3クラッチリング30が高速かつ大きい慣性モーメントで回転している場合、スリーブ36は増速される。以下の動作ではシフトアップするときのスリーブ36の減速動作を説明する。
【0055】
まず、スリーブ36は、第3クラッチリング30及び第4クラッチリング32の間に位置し、スリーブ36のスプライン(内歯)36aが第3クラッチリング30及び第4クラッチリング32のいずれのドグクラッチ歯30b等と係合していないニュートラルに位置決めされている(図10A参照)。
【0056】
また、図9A及び図9Bに示すように、第3クラッチリング30のクラッチ前歯30b1の第1面取部30b3とクラッチ前歯30b1の側面30b9との境界辺を第1ストローク位置S1とする。第3クラッチリング30のクラッチ後歯30b2の前端面30b6を第2ストローク位置S4とする。第3クラッチリング30のクラッチ後歯30b2の第2面取部30b4とクラッチ後歯30b2の側面30b7との境界辺を第3ストローク位置S2とする。この第3ストローク位置S2は、クラッチ後歯30b2による歯溝30b8、30b10の入口部に相当した位置である。クラッチ後歯30b2の後端面(第3ドグクラッチ部30aの後端位置RE)を第4ストローク位置S3とする。
【0057】
スリーブ36の高歯36a1の先端部を構成する第3クラッチリング30側の端面(前端面36a4)が移動する範囲を、ニュートラル位置から第1ストローク位置S1まで、第1ストローク位置S1から第2ストローク位置S4まで、第2ストローク位置S4から第3ストローク位置S2まで、第3ストローク位置S2から第4ストローク位置S3までの4つの移動範囲に区分して軸動装置40により付加する推力荷重を状況に応じてF1〜F4の四段階又はF1〜F5の五段階で制御する(図9A図9B参照)。
【0058】
制御装置10は、変速開始の信号を受けて、軸動装置40のリニアアクチュエータ40iに所定の推力荷重が付加される制御電流を印加する。リニアアクチュエータ40iにより駆動シャフト40hを伸長させることで、フォークシャフト40bを移動させ、フォーク40aによりスリーブ36を第3クラッチリング30側にスライドさせる。スリーブ36は第3クラッチリング30に対して回転差分だけ相対回転しながら接近する。この際、制御装置10は、一定の第1推力荷重F1を付加する(図8におけるステップS101、以下「S101」と記載する。)。
【0059】
そして、図10B及び図11Aに示すように、スリーブ36の高歯36a1が第3クラッチリング30のクラッチ前歯30b1の前端面30b5又は第1面取部30b3に接触する。この接触によって、スリーブ36と第3クラッチリング30との回転差は少し減少する。このとき、スリーブ36の低歯36a2は何にも接触していない。
【0060】
高歯36a1の前端面36a4が、クラッチ前歯30b1の前端面30b5又は第1面取部30b3に接触したが、第1ストローク位置S1(回転合わせ範囲)まで至らずに撥ねられたときには(図9A、9BにおけるA点)、第1推力荷重F1によりスリーブ36を再び第3クラッチリング30に接近させる。この第1推力荷重F1は、スリーブ36と第3クラッチリング30との相対回転が、高歯36a1が第3ドグクラッチ部30aの所定のクラッチ前歯30b1を係合することなく超えてしまった後、該第3ドグクラッチ部30a及び該スリーブ36がさらに相対回転して次のクラッチ前歯30b1に到達する間の時間に、回転合わせ範囲まで進入することが可能な速度を生じさせる推力荷重である。具体的には、スリーブ36及び第3ドグクラッチ部30aの外径、噛合する各歯のピッチ、スリーブ36と第3ドグクラッチ部30aの相対回転速度等によって適宜演算されて制御される。
【0061】
図10B図10C及び図11Bに示すように、スリーブ36を第3クラッチリング30に接近させることで、ストローク位置センサ38により高歯36a1の前端面36a4が、第1ストローク位置S1に到達したことが検出された場合、制御装置10は回転合わせ範囲に入ったものと判定し(S102)、スリーブ36の回転数Nsと第3クラッチリング30即ち第3ドグクラッチ部30aの回転数Ndを一般周知の回転センサ(図示略)にて確認する(S103)。このスリーブ36とクラッチリング30との相対差回転(Ns−Nd)に基づいて、スプライン36aの高歯36a1の先端部の前端面36a4がクラッチ後歯30b2における第3ストローク位置S2に到達するに要する時間に相当した飛込み設定時間Tinを算出(S104)するとともに、飛込み設定時間Tinの経過を計時するタイマのタイマ時間Tsの計時をスタート(S105)させ、軸動装置40により付加する推力荷重を第1推力荷重F1から第2推力荷重F2に変更する(S106)。なお、飛込み設定時間Tinは、スプライン36aの高歯36a1の先端部の前端面36a4が、その所定位置からクラッチ後歯30b2の第3ストローク位置S2位置に到達するに要する時間に相当するもので、従って、所定位置を第1ストローク位置S1とした場合には、飛込み設定時間Tinを、例えば、スプライン36aの高歯36a1が、このスリーブ36とクラッチリング30との相対差回転(Ns−Nd)に基づいて、クラッチ前歯30b1の側面30b9を通過してから次のクラッチ前歯30b1の側面30b9が接近して接触するまでの時間に相当した時間とすることもできる。
【0062】
この第2推力荷重F2は、スリーブ36の高歯36a1の先端部なる前端面36a4がクラッチ後歯30b2の先端部なる前端面30b6に変位可能であるとともにスリーブ36の高歯36a1の前端面36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の前端面30b6との当接によって生じる摩擦力に抗して、スリーブ36とドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重である。このように、制御装置10は、回転合わせ範囲において付加される第2推力荷重F2は、当接した高歯36a1の前端面36a4とクラッチ後歯30b2の前端面30b6との間に生じる摩擦力に抗して、スリーブ36と第3ドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重が負荷されるように軸動装置40を制御する。これによって、少ない回転差分の相対速度で移動する(或いは、高歯36a1がクラッチ後歯30b2に当接した状態で連れ回る)のを防止して、すばやい変速動作を実現させることができる。
【0063】
そして、図10C及び図11Cに示す如く、スリーブ36を第3クラッチリング30側に移動させていった場合、ストローク位置センサ38によりスリーブ36の高歯36a1の前端面36a4が、第2ストローク位置S4に到達したことが検出された場合(S107)、制御装置10は、軸動装置40により付加する推力荷重を第2推力荷重F2から第3推力荷重F4に変更して(S108)、スリーブ36の高歯36a1の前端面36a4を、ドグクラッチ部30aの歯溝30b8又は30b10に向かわせる。歯溝30b8は、クラッチ後歯30b2にて形成され、また歯溝30b10はクラッチ後歯30b2及びクラッチ前歯30b1にて形成されるもので、両歯溝30b8,30b10は、少なくともクラッチ後歯30b2にて形成される構成である。
【0064】
第3推力荷重F4は、スリーブ36の高歯36a1の先端部36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部の第2面取り面30b4との当接によって生じる摩擦力に抗してドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2にて形成される歯溝30b8、30b10へ向けてスリーブ36を変位可能な推力荷重と、スリーブ36の高歯36a1の前端面36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部の第2面取り面30b4との当接によって生じる摩擦力に抗して、スリーブ36とドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重とを交互に加える推力荷重である(参照 図9A,9B)。
【0065】
スリーブ36の高歯36a1の前端面36a4は、図9Aに示す如く、第2推力荷重F2よりも大きい推力荷重を含むとともに交互に相違する推力荷重を加えた第3推力荷重F4の作用にて、クラッチ後歯30b2の第2面取り面30b4との距離を所定値以上空けることなく微動推移しながら、第2推力荷重F2の場合よりも速度を速めて第3クラッチリング30に接近する。そして、ストローク位置センサ38により高歯36a1の前端面36a4が、図10Dに示す如く第3ストローク位置S2に到達したことが検出された場合、制御装置10は高歯36a1及び低歯36a2がクラッチ後歯30b2との噛合を開始したと判定し(S109)、軸動装置40により付加する推力荷重を第4推力荷重F3に増大する(S110)。このときに付加される第4推力荷重F3は、スリーブ36を第3クラッチリング30にスライドさせる際に、高歯36a1及び低歯36a2とクラッチ前歯30b1及びクラッチ後歯30b2との間に生じる摩擦力に抗してスリーブ36を移動させることが可能な推力荷重である。
【0066】
さらに、図10E及び図11Dに示すように、スリーブ36を第3クラッチリング30に接近させることで、ストローク位置センサ38により高歯36a1の前端面36a4が、第4ストローク位置S3に到達したことが検出された場合、制御装置10はスリーブ36と第3クラッチリング30が完全に噛合したと判定し(S111)、軸動装置40による推力荷重の付加を停止(S112)し、軸動装置40のリニアアクチュエータ40iに所定の推力荷重が付加される制御電流の通電を停止する。
【0067】
なお、S109にて、高歯36a1の前端面36a4が、第3ストローク位置S2に到達したことが検出されない場合、タイマ時間Tsを確認(S113)し、タイマ時間Tsが飛込み設定時間Tinを経過していないと判定された場合(S114)は、S108に戻る。又、S114にて、タイマ時間Tsが飛込み設定時間Tinを経過したと判定された場合(S114)は、軸動装置40により付加する推力荷重を第3推力荷重F4から第5推力荷重F5に変更する(S115)。
【0068】
この、第5推力荷重F5は、第3推力荷重F4におけるスリーブ36の高歯36a1の先端部36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部なる第2面取り面30b4との当接によって生じる摩擦力に抗してドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2にて形成される歯溝30b8、30b10へ向けて変位可能な推力荷重よりも小なる推力荷重と、その推力荷重よりも小さくかつスリーブ36の高歯36a1の先端部なる前端面36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部なる第2面取り面30b4との当接によって生じる摩擦力に抗して、スリーブ36とドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重とを交互に加えるものである。
【0069】
スリーブ36とクラッチ後歯30b2の先端部なる第2面取り面30b4とがそのいずれか一方の表面が荒れた状態に劣化して引っ掛かり連れ回ってしまっていたような場合にも、図9Bに示す如く、その推力荷重が第5推力荷重F5へと弱められることによりその引っ掛かりを外すことができしかもスリーブ36と前記ドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保されているので、スリーブ36は次のクラッチ後歯30b2にて形成される歯溝30b8、30b10とすばやく係合すること可能である。図9Bに示す如く、第5推力荷重F5へと推力が弱められてクラッチ後歯30b2の第2面取り面30b4との引っ掛かりを外されたスリーブ36は、その引っ掛かってていたクラッチ後歯30b2を交互に相違する推力荷重を加えた第5推力荷重F5の作用にてクラッチ後歯30b2の第2面取り面30b4及び前端面30b6との距離を所定値以上空けることなく微動推移しながら通過する。
【0070】
図9Bに示すように、スリーブ36は、その先端部の前端面36a4が第2ストローク位置S4を跨いでストローク位置S1方向へ変位した後、スリーブ36を第3クラッチリング30に接近させることで、ストローク位置センサ38により高歯36a1の前端面36a4が、第1ストロークS1側から第2ストローク位置S4に到達したことが検出された場合(S116)は、S108に戻り、第3推力荷重F4に変更する。なお、S116にて、高歯36a1の前端面36a4が、第2ストローク位置S4に到達したことが検出されない場合はS115に戻る。
【0071】
なお、スリーブ36を第3クラッチリング30側に移動させた場合、高歯36a1がクラッチ前歯30b1の側面30b9をガイドとしないで、ドグクラッチ歯30bのいずれかの歯溝30b8,30b10に嵌入させることは可能であるが、高歯36a1(及び低歯36a2)がクラッチ後歯30b2の間の歯溝30b8に嵌入しようとすると、隣接するクラッチ後歯30b2の歯間距離は短いので、図10Dに示すように、クラッチ後歯30b2に撥ねられることが多いと考えられる。そのため、迅速に高歯36a1をドグクラッチ歯30bと噛み合わせるため、高歯36a1をクラッチ前歯30b1の側面30b9でガイドして、クラッチ前歯30b1に隣接する歯溝30b10に高歯36a1を嵌入することが有効と考えられる。
【0072】
しかし、スリーブ36と第3クラッチリング30との回転差が少なくなった状態で、高歯36a1がクラッチ前歯30b1に隣接する歯溝30b10に入らないで撥ねられると、高歯36a1は次のクラッチ前歯30b1に至るまで、少ない回転差分の相対速度で移動する(或いは、高歯36a1がクラッチ後歯30b2に当接した状態で連れ回る)ので、長い時間を要してすばやい変速動作の実現に支障を生じるおそれがある。
【0073】
本実施形態において、制御装置10は、スリーブ36に付加される第2推力荷重F2は、当接した高歯36a1の先端部(前端面36a4)とクラッチ後歯30b2の先端部(前端面30b6)との間に生じる摩擦力に抗して、スリーブ36と第3ドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重が負荷されるように軸動装置40を制御する。これによって、少ない回転差分の相対速度で移動する(或いは、高歯36a1がクラッチ後歯30b2の前端面36a4に当接した状態で連れ回る)のを防止して、すばやく高歯36a1をクラッチ前歯30b1の側面30b9でガイドできるようにしてすばやい変速動作を実現させることができる。
【0074】
同様に、本実施形態において、制御装置10は、スリーブ36に付加される第3推力荷重F4には、当接した高歯36a1の先端部(前端面36a4)とクラッチ後歯30b2の先端部(第2面取り面30b4)との間に生じる摩擦力に抗して、スリーブ36と第3ドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重を含み、軸動装置40を制御する。これによって、少ない回転差分の相対速度で移動する(或いは、高歯36a1がクラッチ後歯30b2の第2面取り面30b4に当接した状態で連れ回る)のを防止して、すばやく高歯36a1をクラッチ前歯30b1の側面30b9でガイドできるようにしてすばやい変速動作を実現させることができる。
【0075】
同様に、本実施形態において、制御装置10は、スリーブ36に付加される第5推力荷重F5には、当接した高歯36a1の先端部(前端面36a4)とクラッチ後歯30b2の先端部(第2面取り面30b4)との間に生じる摩擦力に抗して、スリーブ36と第3ドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重含み、軸動装置40を制御する。スリーブ36とクラッチ後歯30b2の先端部(第2面取り面30b4)とがそのいずれか一方の表面が荒れた状態に劣化して引っ掛かり連れ回ってしまっていたような場合にも、その第5推力荷重F5は、第3推力荷重F4よりも弱められることによりその引っ掛かりを外すことができしかもスリーブ36とドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保されているので、これによって、少ない回転差分の相対速度で移動する(或いは、高歯36a1がクラッチ後歯30b2の第2面取り面30b4に当接した状態で連れ回る)のを防止して、すばやく高歯36a1をクラッチ前歯30b1の側面30b9でガイドできるようにしてすばやい変速動作を実現させることができる。
【0076】
なお、本実施形態において、飛込み設定時間Tinに関して、飛込み設定時間Tinを設定及びその経過時間の計時をスタートさせるに用いたスリーブ36の高歯36a1の先端部の前端面36a4が位置する所定位置を第1ストローク位置S1として、スリーブ36の高歯36a1の先端部の前端面36a4が、スリーブ36とクラッチリング30との相対差回転(Ns−Nd)に基づいて、クラッチ後歯30b2における第3ストローク位置S2に到達するに要する相当の時間を飛込み設定時間Tinとして説明した。しかしながら、これに変えて、スリーブ36の高歯36a1の先端部の前端面36a4が位置する所定位置を、例えば、第2ストローク位置S4として、スリーブ36の高歯36a1の先端部の前端面36a4が、この第2ストローク位置S4から、スリーブ36の高歯36a1の先端部の前端面36a4が、スリーブ36とクラッチリング30との相対差回転(Ns−Nd)に基づいて、クラッチ後歯30b2における第3ストローク位置S2に到達するに要する相当の時間を飛込み設定時間Tinとして、スリーブ36の高歯36a1の先端部の前端面36a4が、第2ストローク位置S4から第3ストローク位置S2にこの飛込み設定時間Tin内で到達できるか判断するように変更することも可能である。
【0077】
なお、例えばシフトダウンするときのように、スリーブ36が低速かつ小さい慣性モーメントで回転し、第3クラッチリング30が高速かつ大きい慣性モーメントで回転している場合、スリーブ36は増速され、スリーブ36と第3クラッチリング30との相対回転は上記と逆となる。そのため、高歯36a1が嵌入するクラッチ前歯30b1の歯溝30b10は、クラッチ前歯30b1に対して逆の位置の歯溝(図11Dにおけるクラッチ前歯30b1に隣接する下側の歯溝30b10)となる。その他の作用は、スリーブ36が減速する場合と同様である。
【0078】
なお、本実施形態におけるクラッチ前歯はクラッチリングの円周上に対向して2本のものとしたが、これに限定されず、例えば、クラッチリングの円周上に互いに均等な距離で3本或いはそれ以上配置されるものでもよい。ドグクラッチ変速機構として、スリーブ、第3クラッチリング及び第4クラッチリング等より構成されるものとしたが、これに限定されず、例えば、スリーブ、第1クラッチリング(第1出力ギヤ)及び第2クラッチリング(第2出力ギヤ)等より構成するものでもよい。
【0079】
また、回転軸を、クラッチ12を介してエンジン11の出力軸に回転連結される自動変速機の入力シャフト(入力軸)24としたが、これに限定されず、例えば自動変速機より駆動輪側に回転トルクを伝達する出力シャフトを回転軸としてもよい。具体的には、エンジンの出力軸にクラッチを介して連結される自動変速機の入力軸と、該入力軸に対して平行に設けられるとともに伝達ギヤを介して回転連結されるカウンタシャフトと、該カウンタシャフトに対して平行な回転軸線を有し、前記カウンタシャフトに設けられた複数の伝達ギヤに噛合する複数の遊転ギヤが設けられた出力シャフトとを有する自動変速機の構造において、この出力シャフトを回転軸としてもよい。この場合、スリーブ側が大きな慣性モーメントを有し、クラッチリング側が小さな慣性モーメント(フリー状態)とを有するものとなる。
【0080】
また、自動変速機の入力軸に回転連結する回転軸とは、本実施形態のように回転軸が入力軸に直結している場合を含むものであり、自動変速機の出力軸に回転連結する回転軸とは、回転軸が出力軸(出力シャフト)に直結している場合を含むものである。
【0081】
上述の如く、本発明の実施形態による自動変速機用ドグクラッチ制御装置によれば、自動変速機13の入力軸24及び出力軸42の一方に回転連結され軸線回りに回転可能に軸承された回転軸と、回転軸に回転可能に支承され入力軸24及び出力軸42の他方に回転連結されたクラッチリング30、回転軸にクラッチリング30と隣接して固定されたクラッチハブ34、クラッチハブ34とスプライン36aで軸線方向に移動可能に嵌合されたスリーブ36、スリーブ36を軸線方向に移動させる軸動装置40、クラッチリング30のスリーブ36側に突出して形成されスリーブ36の軸動に応じてスプライン36aと係脱可能に噛合するドグクラッチ部30a、及びスリーブ36の軸線方向の移動位置を検出するストローク位置センサ38を有し、スプライン36aは、複数の高歯36a1が残りの低歯36a2より歯丈が高く形成され、ドグクラッチ部30aは、外径が高歯36a1の内径より大きくかつ低歯36a2の内径より小さく高歯36a1と同数のクラッチ前歯30b1が、高歯36a1と対応する位置でドグクラッチ部30aの前端面FEからドグクラッチ部30aの後端位置REまで延在して形成され、スプライン36aの歯溝36a5と噛合可能なクラッチ後歯30b2が、ドグクラッチ部30aの前端面FEより所定量t後退した位置からドグクラッチ部30aの後端位置REまで延在して形成されているドグクラッチ変速機構と、ストローク位置センサ38の検出位置に基づいて、軸動装置40の作動を制御する制御装置10と、を備え、制御装置10は、第1推力荷重F1でスリーブ36をドグクラッチ部30a側へ付勢して移動させ、スプライン36aの高歯36a1の先端部36a4がクラッチ後歯30b2方向へ変位してクラッチ前歯30b1の先端部30b3に位置した第1ストローク位置に到達すると、スリーブ36の高歯36a1の先端部36a4がクラッチ後歯30b2の先端部30b6に変位可能であるとともにスリーブ36の高歯36a1の先端部36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部30b6との当接によって生じる摩擦力に抗して、スリーブ36とドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な第2推力荷重F2とし、スリーブ36の高歯36a1の先端部36a4が、クラッチ後歯30b2の先端部30b6の第2ストローク位置S4に到達すると、スリーブ36の高歯36a1の先端部36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部30b4との当接によって生じる摩擦力に抗してスリーブ36の高歯36a1の先端部36a4をドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2にて形成される歯溝30b8、30b10へ向けて変位可能な推力荷重と、スリーブ36の高歯36a1の先端部36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部30b4との当接によって生じる摩擦力に抗して、スリーブ36とドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重とを交互に加える第3推力荷重F4とし、クラッチ後歯30b2の先端部で第2ストローク位置S4よりも後方に位置した第3ストローク位置S2にスリーブ36の高歯36a1の先端部36a4が到達すると、第3推力荷重F4よりも大きい第4推力荷重F3に増大させる構成を有するので、制御装置10は、スリーブ36の高歯36a1の先端部が、クラッチ後歯30b2の先端部の第2ストローク位置S4に到達後クラッチ後歯30b2の先端部で第2ストローク位置S4よりも後方に位置した第3ストローク位置S2に向けて変位させる第3推力荷重F4を、スリーブ36の高歯36a1の先端部36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部30b4との当接によって生じる摩擦力に抗してドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2にて形成される歯溝30b8、30b10へ向けて変位可能な推力荷重が、スリーブ36の高歯36a1の先端部とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部30b4との当接によって生じる摩擦力に抗して、スリーブ36とドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重と交互に加えられて、第2推力荷重F2よりも増大させることにより、高歯36a1は、クラッチ後歯30b2の先端部即ち第2ストローク位置S4から第3ストローク位置S2へとすばやく変位することができて、スリーブ36のスプライン36aとドグクラッチ部30aとを係合させるので、変速時にスリーブ36を移動させてドグクラッチ部30aに係合する場合、すばやい変速動作が可能となる。又、第2推力荷重F2及び第3推力荷重F4は、スリーブ36の高歯36a1の先端部36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部30b6、30b4との当接によって生じる摩擦力に抗して、スリーブ36とドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重を含むことから、ドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部30b6、30b4との当接にて相互の差回転数は微小になって、次に係合できる位置まで時間がかかってしまうか、連れ回ってしまって次に係合するまでの時間が長くなることを解消できるので、すばやい変速動作が可能となる。
【0082】
上述の如く、本発明の実施形態による自動変速機用ドグクラッチ制御装置によれば、制御装置10は、スリーブ36とクラッチリング30との相対差回転に基づき、スリーブ36の高歯36a1の先端部36a4が所定位置から第3ストローク位置S2に到達するに要する時間に相当した飛込み設定時間Tinを設定し、その飛込み設定時間Tin内に、スリーブ36の高歯36a1の先端部36a4が、その所定位置から第3ストローク位置S2に到達していないことを検出した場合は、第3推力荷重F4におけるスリーブ36の高歯36a1の先端部36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部30b4との当接によって生じる摩擦力に抗してスリーブ36の高歯36a1の先端部36a4をドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2にて形成される歯溝30b8、30b10へ向けて変位可能な推力荷重よりも小なる推力荷重と、その推力荷重よりも小さくかつスリーブ36の高歯36a1の先端部36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部30b4との当接によって生じる摩擦力に抗して、スリーブ36とドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重とを交互に加える第5推力荷重F5とする構成を有するので、スリーブ36をドグクラッチ部30a側へ付勢して移動させる荷重は、第3推力荷重F4から、第3推力荷重F4よりも減じられるとともにスリーブ36の高歯36a1の先端部36a4とドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2の先端部30b4との当接によって生じる摩擦力に抗して、スリーブ36とドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保することが可能な推力荷重とを交互に繰り返えす第5推力荷重F5へと変化することから、スリーブ36とクラッチ後歯30b2の先端部30b4とがそのいずれか一方の表面が荒れた状態に劣化して引っ掛かり連れ回ってしまっていたような場合にも、その推力荷重が弱められることによりその引っ掛かりを外すことができしかもスリーブ36とドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保されているので、スリーブ36は次のクラッチ後歯30b2にて形成される歯溝30b8、30b10とすばやく係合することができ、すばやい変速動作が可能となる。
【0083】
上述の如く、本発明の実施形態による自動変速機用ドグクラッチ制御装置によれば、クラッチ前歯30b1の先端部は前端面30b5とその両側に傾斜した第1面取り面30b3とを有し、第1ストローク位置S1は、第1面取り面30b3とクラッチ前歯30b1の側面30b9との境界辺とした構成を有するので、第1ストローク位置S1は、第1面取り面30b3とクラッチ前歯30b1の側面30b9との境界辺に設定されるので、高歯36a1が第1ストローク位置S1に到達したことをストローク位置センサ38にて容易に検出可能となる。
【0084】
上述の如く、本発明の実施形態による自動変速機用ドグクラッチ制御装置によれば、クラッチ後歯30b2の先端部は前端面30b6を有し、第2ストローク位置S4は、前端面30b6とした構成を有するので、高歯36a1が第2ストローク位置S4に到達したことをストローク位置センサにて容易に検出可能となる。
【0085】
上述の如く、本発明の実施形態による自動変速機用ドグクラッチ制御装置によれば、クラッチ後歯30b2の先端部は前端面30b6とその両側に傾斜した第2面取り面30b4とを有し、第3ストローク位置S2は、第2面り面30b4とクラッチ後歯30b2の側面30b7との境界辺とした構成を有するので、高歯36a1が前記第3ストローク位置S2に到達したことをストローク位置センサ38にて容易に検出可能となる。
【0086】
上述の如く、本発明の実施形態による自動変速機用ドグクラッチ制御装置によれば、第3推力荷重F4は第2面取り面30b4の摩擦抵抗に打ち勝ち得る推力荷重を含むとした構成を有するので、第2面取り面30b4の摩擦抵抗に打ち勝ち得る推力荷重である第3推力荷重F4の作用にて、スリーブ36の高歯36a1の先端部の前端面36a4がドグクラッチ部30aのクラッチ後歯30b2にて形成される歯溝30b8,30b10に向けて第2面取り面30b4を通りすばやく変位できるので、変速時にスリーブ36を移動させてドグクラッチ部30aに係合する場合、すばやい変速動作が可能となる。
【0087】
上述の如く、本発明の実施形態による自動変速機用ドグクラッチ制御装置によれば、第5推力荷重F5は第2面取り面30b4の摩擦抵抗に打ち勝ち得ない推力荷重を含むとした構成を有するので、第2面取り面30b4の摩擦抵抗に打ち勝ち得ない推力荷重である第5推力荷重F5の作用にて、スリーブ36とクラッチ後歯30b2の先端部30b4とがそのいずれか一方の表面が荒れて状態に劣化して引っ掛かり連れ回ってしまっていたような場合にも、その推力荷重が弱められることによりその引っ掛かりを外すことができしかもスリーブ36とドグクラッチ部30aとの間の相対回転を確保されているので、スリーブ36は次のクラッチ後歯にて形成される歯溝30b8、30b10とすばやく係合することができ、すばやい変速動作が可能となる。
【0088】
上述の如く、本発明の実施形態による自動変速機用ドグクラッチ制御装置によれば、第3推力荷重F4はスリーブ36のストロークを微動推移させるので、高歯36a1の先端部36a4はクラッチ前歯30b1間に位置する状態を保持できるため、スリーブ36とドグクラッチ部30aとの係合が完全に外れてしまうことが防止され、即ちスリーブ36の高歯36a1はスリーブ36の高歯36a1を再び回転合わせ範囲まで入れ直すという繰り返し作業の発生を防ぐことができる。これによって、スリーブ36とドグクラッチ部30aとを迅速に噛合させることができる。
【0089】
上述の如く、本発明の実施形態による自動変速機用ドグクラッチ制御装置によれば、第5推力荷重F5はスリーブ36のストロークを微動推移させるので、高歯36a1の先端部36a4はクラッチ前歯30b1間に位置する状態を保持できるため、スリーブ36とドグクラッチ部30aとの係合が完全に外れてしまうことが防止され、即ちスリーブ36の高歯36a1はスリーブ36の高歯36a1を再び回転合わせ範囲まで入れ直すという繰り返し作業の発生を防ぐことができる。これによって、スリーブ36とドグクラッチ部30aとを迅速に噛合させることができる。
【0090】
本発明は、上記しかつ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【0091】
なお、複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合せることが可能であることは、明らかである。
【符号の説明】
【0092】
10・・・制御装置・自動変速機用ドグクラッチ制御装置、13・・・自動変速機、24・・・入力軸・回転軸(入力シャフト)、30・・・クラッチリング・ドグクラッチ変速機構(第3クラッチリング)、30a・・ドグクラッチ部(第3ドグクラッチ部)、30b1・・・クラッチ前歯、30b2・・・クラッチ後歯、30b3・・・第1面取り面(クラッチ前歯の先端部)、30b4・・・第2面取り面(クラッチ後歯の先端部)、30b6・・・クラッチ後歯の前端面(クラッチ後歯の先端部)、30b7・・・クラッチ後歯の側面、30b8・・・クラッチ後歯の歯溝、30b9・・・クラッチ前歯の側面、30b10・・・クラッチ後歯の歯溝、32・・・ドグクラッチ変速機構(第4クラッチリング)、34・・・クラッチハブ・ドグクラッチ変速機構、36・・・スリーブ・ドグクラッチ変速機構、36a・・・スプライン(内歯)、36a1・・・高歯、36a2・・・低歯、36a4・・・高歯の前端面(高歯の先端部)、36a5・・・歯溝(スプラインの歯溝)、38・・・ストローク位置センサ・ドグクラッチ変速機構、40・・・軸動装置・ドグクラッチ変速機構、42・・・出力軸(出力シャフト)、CL・・・軸線(回転軸線)、F1・・・第1推力荷重、F2・・・第2推力荷重、F3・・・第4推力荷重、F4・・・第3推力荷重、F5・・・第5推力荷重、FE・・・前端面(ドグクラッチ部の前端面)、RE・・・ドグクラッチ部の後端位置、S1・・・第1ストローク位置、S2・・・第3ストローク位置、S3・・・第4ストローク位置、S4・・・第2ストローク位置、t・・・所定量。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図11C
図11D