特許第6236966号(P6236966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シヤチハタ株式会社の特許一覧

特許6236966電波吸収体製造用ペースト、それを用いた電波吸収体の製造方法、電波吸収体及び構造体
<>
  • 特許6236966-電波吸収体製造用ペースト、それを用いた電波吸収体の製造方法、電波吸収体及び構造体 図000003
  • 特許6236966-電波吸収体製造用ペースト、それを用いた電波吸収体の製造方法、電波吸収体及び構造体 図000004
  • 特許6236966-電波吸収体製造用ペースト、それを用いた電波吸収体の製造方法、電波吸収体及び構造体 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236966
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】電波吸収体製造用ペースト、それを用いた電波吸収体の製造方法、電波吸収体及び構造体
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   H05K9/00 M
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-158089(P2013-158089)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-29017(P2015-29017A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】石川 宏敏
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 勝徳
【審査官】 征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−233834(JP,A)
【文献】 特開2001−077585(JP,A)
【文献】 特開2004−297005(JP,A)
【文献】 特開2009−263645(JP,A)
【文献】 特開昭63−039938(JP,A)
【文献】 特開2003−162991(JP,A)
【文献】 特開2006−045276(JP,A)
【文献】 特開昭58−188196(JP,A)
【文献】 特開2010−118552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K9/00
H01Q17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫シリコーンゴムと、カーボンナノチューブを含む混合物を混練して混練物を得る工程と、 前記混練物を、ロールを通してシート化する工程と、 前記シートをペースト化する工程と、を含む電波吸収体製造用ペーストの製造方法。
【請求項2】
前記ペースト化は、溶剤により行う請求項1に記載の電波吸収体製造用ペーストの製造方法。
【請求項3】
前記溶剤のSP値が7〜10(cal/cm1/2である請求項に記載の電波吸収体製造用ペーストの製造方法
【請求項4】
前記溶剤が飽和環状炭化水素、飽和炭化水素、塩素系溶媒からなる群から選択される1種以上を含む請求項又はに記載の電波吸収体製造用ペーストの製造方法
【請求項5】
前記飽和環状炭化水素がシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン又はエチルシクロヘキサン、前記飽和炭化水素がn−オクタン又はガソリン、前記塩素系溶媒が四塩化炭素である請求項に記載の電波吸収体製造用ペーストの製造方法
【請求項6】
請求項いずれか1項中の電波吸収体製造用ペーストを特定箇所に配置し、前記溶剤を電波吸収体製造用ペーストから揮発させる工程を含む電波吸収体の製造方法。
【請求項7】
前記配置は、物品表面への塗布により行う請求項に記載の電波吸収体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波吸収体製造用ペースト、それを用いた電波吸収体の製造方法、電波吸収体及び皮膜を形成した構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ITS(Intelligent
Transport System)の分野ではETC(自動料金収受システム)における5.8GHz、車間距離を測定して運転者に伝えるAHS(走行支援道路システム)における76GHz等の電波が利用されており、今後も、利用範囲は急速に高周波領域へ拡大していくことが予想される。
【0003】
これらの用途で用いられるマイクロ波は、高周波であるために高出力・高密度の信号搬送を可能にする反面、ノイズとして他の機器に取り込まれると、他の電子機器の誤作動、通信の混線等、各種の電波障害を引き起こす懸念があるため、電子機器や通信機器が外部から侵入する電波に干渉されないように、入射してきた電波を熱エネルギーに変換して、透過あるいは反射する電波の強度を大幅に減衰する電波吸収体が用いられる。
【0004】
ETCやAHSにより発生する電波による誤作動防止用の電波吸収体としては、使用される場所の多様化に伴い、パネルタイプ、シートタイプ、塗料タイプ等に大別できるが、現在の所、ビル等の建造物の壁面やETC通過ゲート付近に設置されるのはパネルタイプが一般的で、一部シートが使用されている。また、AHS用のミリ波レーダーの吸収体は、シート状のものが多く使用される。
【0005】
上記電波吸収体の材料として、従来フェライトあるいは磁性金属等の磁性材料が使用されてきた。これらは、粉末状の磁性材料として樹脂、ゴムあるいは塗料等のマトリックス材料中に分散、複合化した状態とし、電波を吸収したい部位に貼付又は塗布する形態で用いられている。しかしながら、磁性材料は比重が大きいため、有機材料中に分散する際に比重差によって沈降が生じやすく、均一な複合材料の成形性に難があった。
【0006】
そのため、例えば、特許文献1のように有機高分子体の表層に強磁性体が埋入し複合化してシート状にしたもの、特許文献2のように炭化ホウ素粉末と軟磁性材料粉末とからなる混合粉を熱可塑性樹脂中に分散複合化してシート状にしたもの、特許文献3のように炭化ホウ素、導電性カーボン粉末及び炭化珪素の中から選ばれる導電性材料を熱可塑性樹脂中に分散複合化してシート状にしたものと磁性粉を有するシートを積層したもの等が提案されている。
【0007】
また、パネル型のものは重量が大きく、適用する建物等の形状毎に成形する必要があるためコスト高でもある。シート状のものは軽量で建物等の凹凸に応じ変形が可能なため好ましいが、様々な形状や凹凸に応じ十分に変形可能とするためには、磁性体やカーボン等の充填材の含有量を低減する必要があり、これらの充填材の含有量を低減した場合に電波吸収性が十分でないことがあった。
【0008】
特許文献4には、シリコーンゴムにカーボンナノチューブを分散し成形することにより、軽量で電波遮蔽性の高いシートとすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−310898号公報
【特許文献2】特開2005−347302号公報
【特許文献3】特開2007−019287号公報
【特許文献4】特開2011−233834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記シリコーンゴムにカーボンナノチューブを分散させたシート状の電波吸収体は適用対象物の形状を選ばず薄物化も可能であるものの、マイクロ波の電波吸収特性は未だ十分なものとはいえなかった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、近傍界又は遠方界のいずれにおいてもマイクロ波の電波を充分吸収する電波吸収体を製造するためのペースト及びこれを用いた電波吸収体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、未加硫のシリコーンゴム及びカーボンナノチューブを含有するペーストを用いることにより、より高い電波吸収性を発揮できる電波吸収体を製造可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0013】
本発明の第一の態様は、未加硫シリコーンゴムと、カーボンナノチューブを含む混合物を混練して混練物を得る工程と、前記混練物を、ロールを通してシート化する工程と、前記シートをペースト化する工程と、を含む電波吸収体製造用ペーストの製造方法である。
【0014】
前記ペースト化は、溶剤により行う電波吸収体製造用ペーストの製造方法である。
【0015】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様の製造方法で得られる電波吸収体製造用ペーストを特定箇所に配置し、前記溶剤を電波吸収体製造用ペーストから揮発させる工程を含む電波吸収体の製造方法である。
【0016】
前記配置は、物品表面への塗布により行う電波吸収体の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、近傍界のみならず、ETCやAHSにより発生する遠方界の電波対策として使用でき、いずれのマイクロ波の電波吸収性にも優れた軽量な電波吸収体を製造するためのペースト及びこれを用いた電波吸収体や構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の未加硫の電波吸収体の電波吸収特性を示す図である。
図2】加硫した本発明の電波吸収体の電波吸収特性を示す図である。
図3】フィルム上に成形した電波吸収体の電波吸収特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
<電波吸収体製造用ペースト>
本発明の第一の態様である電波吸収体製造用ペーストは、未加硫シリコーンゴムと、カーボンナノチューブと、溶剤とを含有する。
【0021】
本発明において用いられるシリコーンゴムは、電波吸収体の母材として使用され、シリコーン樹脂のうち常温でゴム状のものであれば、従来から知られたもののなかから、特に限定されること無く適宜選択して用いることができる。
【0022】
シリコーンゴムの主骨格はオルガノポリシロキサンであり、そのケイ素原子に結合する基として様々な基を有するのが一般的である。ここで、ケイ素原子に結合する基は特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基のほか、これらの基の水素原子が部分的に他の原子又は結合基で置換されたものを挙げることができる。これらの官能基を選択することにより、例えば、加熱硬化型あるいは常温硬化型のもの、硬化機構が縮合型あるいは付加型のものとして用いることができる。本発明に用いられるシリコーンゴムは、特に加硫される前の未架橋のものを使用する。
【0023】
従来、母材としては天然ゴム、エチレン−プロピレンゴムやポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂系材料を使用するのが普通であった。しかしながら、これら従来の樹脂系材料のみでは、カーボンナノチューブを分散させて厚みの薄いフィルム状にすることは非常に困難であった。本発明では、カーボンナノチューブの分散性が高い未加硫シリコーンゴム及び溶剤を採用することにより、均一性の高い電波吸収体とすることができるため、特にキャスティング等の塗布による薄膜皮膜の形成を行うために好適である。
【0024】
本発明に用いられるシリコーンゴムの配合は、カーボンナノチューブを十分に分散して母材として機能する範囲であれば、特に限定されることなく設定することが可能である。固形分中におけるシリコーンゴムの含有量としては、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。40質量%以上であれば、カーボンナノチューブを十分に分散し得て希望する厚みの電波吸収体又は皮膜を成形することができる。上限については、電波吸収体の電波吸収性能を考慮すれば、90質量%以下、好ましくは80質量%以下の範囲である。
【0025】
カーボンナノチューブは、一般的に、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱分解法等の気相生長法により製造され、連続したグラファイト面が円筒状に丸まった中空の管状体から構成されている。本発明に用いられるカーボンナノチューブは、これら公知のものが特に限定されること無く使用可能である。また、本発明に用いられるカーボンナノチューブは、単層、二層、多層の何れでも良いが、二層以上の多層のものを使用することがコスト及び電波吸収性の点から好ましい。
【0026】
ペーストの固形分中におけるカーボンナノチューブの含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。5質量%以上であれば、希望する電波吸収性能を得ることができる。上限については、溶剤の含有量によっても異なるが、製膜性及びコストを考慮すると、40質量%以下、好ましくは30質量%以下の範囲である。更に、15質量%未満の範囲であることがより好ましい。
【0027】
上記カーボンナノチューブの含有量は、JIS K6227:1998(ゴム−カーボンブラックの定量−熱分解法及び化学分解法)に準拠して評価することができる。
【0028】
本発明に用いられる溶剤は、未加硫シリコーンゴムを溶解し、カーボンナノチューブをよく分散するものであれば特に限定されることなく公知のものが使用できる。例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の飽和環状炭化水素、n−オクタン、ガソリン等の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、四塩化炭素等の塩素系溶媒が挙げられ、これらのうち1種以上を選択して使用することができる。なかでも、未加硫シリコーンゴムの溶解性の点から、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、n−オクタン、ガソリン、四塩化炭素を用いることが好ましい。
【0029】
上記溶剤は、特にSP値(溶解度パラメータ)が、7〜10(cal/cm1/2であるものを採用することが好ましい。SP値がこの範囲にあれば、未加硫シリコーンゴムを十分に溶解することができる。特に好ましいのは、7.2〜9.0(cal/cm1/2である。その値は、定法によって測定してもよいし、分子構造からFedorsの方法により求めてもよい。
【0030】
ペースト中における上記溶剤の含有量は、特に限定されないが、未加硫シリコーンゴムの分子量やカーボンナノチューブの含有量に応じ、また、最終的なペーストの粘度や流動性、使用方法等を勘案して適宜設定することができる。
【0031】
また、本発明の電波吸収体製造用ペーストは、電波吸収体の製造後あるいは物品へ適用後未加硫のままとすることも可能であるが、ペースト中に公知の架橋剤等を含有させることで、室温で放置又は加熱処理を行って架橋(加硫)しても構わない。本発明におけるシリコーンゴムの架橋(加硫)方法は、未加硫のシリコーンゴムの有する官能基に応じて適宜選択されるものである。官能基の示す反応機構としては、(1)有機過酸化物加硫剤による架橋方法、(2)付加反応による方法等が知られており、それぞれ、好適な硬化用触媒若しくは架橋剤が公知である。
【0032】
例えば、有機過酸化物加硫剤としては、公知のパーオキサイドが使用でき、例えばベンゾイルパーオキサイド、2,4ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、2,5ジメチル2,5ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルクミルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエート等を用いることができ、ビニル基等の不飽和の官能基を有す未加硫シリコーンゴムに対し適量配合することができる。
【0033】
ビニル基等の不飽和の官能基を有す未加硫シリコーンゴムに対しては、付加反応型の架橋剤であるハイドロジェン基含有ポリオルガノシロキサンを採用することも可能である。その際、白金化合物等の周知の硬化用触媒を併用することが好ましい。これらは、未加硫シリコーンゴムに対し適量配合すればよい。
【0034】
未加硫の電波吸収体は、上記したいずれかの溶剤への浸漬を行って溶剤への溶出を確認することにより判断することが可能である。
【0035】
本発明の電波吸収体製造用ペーストには、柔軟性等の性能の向上を目的として、未加硫シリコーンゴム以外の合成ゴム若しくは天然ゴムを、更に添加することもできる。このような合成ゴム若しくは天然ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、各種天然ゴム等が挙げられる。ただし、これらのゴムは必須ではなく、含まれなくても構わない。
【0036】
更に、本発明の電波吸収体製造用ペーストには、公知の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、クレー、珪藻土等の補強性充填剤、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱剤、顔料、耐熱性向上剤、酸化防止剤、離型剤、加工助剤、接着性付与剤、有機溶媒等を挙げることができる。
【0037】
本発明の電波吸収体製造用ペーストの調製方法としては、溶剤にその他溶剤以外の各成分を分散ないし溶解させる公知の方法が特に制限されることなく採用できる。
【0038】
一例を示すに、溶剤以外の各成分を配合した未加硫シリコーンゴム組成物を通常のロールで軽く混練してシートを成形し、これを短冊状に切断する。短冊状物を所定量の溶剤に、室温で一晩浸漬し膨潤させる。その後、ホモディスパーで、例えば5分〜10分程度攪拌しペーストとする。濃度や粘度を調節するために、更に溶剤を加えてもよい。
【0039】
最終的なペースト中の溶剤の含有量を加減して、ペーストの使用目的や物品への適用方法に応じて好適な粘度範囲に適宜調整することができる。例えば、30〜100Pa・sの範囲にすることにより、好適に塗布を行うことができる。
【0040】
<電波吸収体の製造方法>
本発明の第二の態様の電波吸収体の製造方法は、上記の本発明の電波吸収体製造用ペーストを特定箇所に配置し、溶剤を電波吸収体製造用ペーストから揮発させる工程を含む。
【0041】
ここで、特定箇所とは、本発明のペーストを適用できるものであれば特に限定されず、例えば、フィルムや物品等の表面や特定の形状を有す型内を挙げることができる。配置とは、上記特定箇所へペーストをおくことであり、例えば、塗布、散布、印刷、注入等の公知の方法の中から適宜選択して行うことができる。
【0042】
配置された電波吸収体製造用ペーストから溶剤を揮発させて取り除く方法としては、例えば、自然乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥等、公知の方法が特に限定されること無く使用できる。また、これらを複数組み合わせることも可能である。
【0043】
具体的には、例えば、ロール状のフィルムの上に電波吸収体製造用ペーストを公知のコーター等を用いてコーティングした後、フィルムを乾燥機内に導入して加熱し、フィルム上に設けられたコーティング層から溶剤を揮発させて取り除く方法を挙げることができる。また、所望の深さの金型中に電波吸収体製造用ペーストを流し込み、金型を乾燥機内で加熱して電波吸収体製造用ペーストから溶剤を取り除くことも可能である。
【0044】
このようにして成形した場合、基本的にシート状の電波吸収体が得られる。その厚さは、0.1〜10mmの範囲とすることが好ましい。厚さ0.1mm以上であれば電波吸収性能が十分であり、10mm以下の厚さであれば被圧着体の形状に追従できる。シート状の電波吸収体の場合、複数のシートを重ねて使用することで、電波吸収性能をより向上することも可能である。
【0045】
但し、フィルム等にコーティングする場合、シート状の電波吸収体の厚さは、通常は0.1〜1.0mmの範囲に収まる。
【0046】
なお、本発明においてシートの平均厚さは、成形して得られたシートの任意に選んだ異なる10点の位置における厚さを、JIS K6250に準拠して定圧をかけられるダイヤルゲージ・マイクロメーターで測定し、得られた値を平均して求めた。
【0047】
また、本発明においてシートの厚さのバラツキは、極力小さい方が好ましい。具体的には、平均値を求める際と同様にしてシートの異なる部分の厚さを求めた場合に、得られた値のバラツキが平均値から±10%の範囲内に入るとよい。
【0048】
また、上記以外に物品をペーストへ浸漬してその表面に皮膜を形成する塗布法、刷毛を用いたシートやその他物品への塗布法、スクリーン印刷等によるシートやその他物品への印刷法等を行うことができる。これらの方法を用いれば、多様な形状の物品や電波吸収対象物に電波吸収体皮膜を形成し電波吸収体とすることが可能である。また、屋外の構造物への適用も可能である。
【0049】
上記の電波吸収体若しくは物品又は電波吸収対象物上の皮膜は、少なくとも未加硫シリコーンゴムと、カーボンナノチューブとを含有する。そのままで使用してもよいし、湿気硬化、加熱硬化等を行って架橋(加硫)させてもよい。架橋(加硫)することにより、堅牢でより丈夫な電波吸収体又は皮膜とすることができる。
【0050】
<電波吸収体及び構造体>
本発明の電波吸収体は優れた電波吸収を有するため、その用途は特に限定されず、電波の遮蔽が必要とされる様々な用途に使用することができる。例えば、携帯電話やデジタルカメラ等の電子機器内に配置することで、回路基板等のEMC対策を有効に行うことができる。これらの用途には、前述した近傍界用のカーボンナノチューブを使用することが好ましい。
【0051】
更に、ビル、橋、鉄塔、トンネル、高速道路等の建造物の壁面やETC通過ゲート付近に設置される電波吸収体あるいはこれらに直接塗布形成された構造体として使用することも可能である。これらの用途には、前述した遠方界用のカーボンナノチューブを使用することが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0053】
<実施例1>
未加硫シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング社製、SH851U)79.5質量%に対し、パーオキサイド(東レ・ダウコーニング社製、RC−4(50P)FD)0.5質量%、多層カーボンナノチューブ(保土ヶ谷化学工業(株)社製、NT−7)20質量%となるように配合し、更に均一に混練した。ここで使用した多層カーボンナノチューブは、平均長さ0.7μm、平均直径70nmであった。
【0054】
上記混練物をロールにとおしてシート状とした後、短冊状に切断した。エチルシクロヘキサン中に、この短冊状物を20質量%となるように加え一晩静置した。短冊状物が膨潤したところで、ホモディスパーを用い5〜10分間攪拌して均一なペーストとした。得られた電波吸収体製造用ペーストの粘度は、73〜77Pa・sであった。
【0055】
上記電波吸収体製造用ペーストを定法に従い、乾燥後に平均厚さ0.1mmとなるようにフィルム上にキャストした後自然乾燥を行った。乾燥終了後フィルムからサンプルを剥離して、未加硫の電波吸収体シートとした。これを、エチルシクロヘキサン中に浸漬したところ、膨潤を起こし加硫していないことが確認できた。
【0056】
その後、160℃、15分間加硫を行った後、昇温して200℃、2時間のアフターキュアを行った。これを、エチルシクロヘキサン中に浸漬したところ、膨潤や溶解せず加硫されていることを確認した。
【0057】
得られた未加硫及び加硫後シートの伝送減衰率(Rtp)を、マイクロストリップライン法により測定した。その結果を、図1及び2に示す。
【0058】
<実施例2>
長さ0.5〜1.5μm、外径5〜15nmの多層カーボンナノチューブ(宇部興産(株)社製、AMC)を使用したほかは、実施例1と同様にして電波吸収体製造用ペースト及びシート状の電波吸収体を製造した。得られたペーストの粘度は、43〜48Pa・sであった。問題なくキャストでき、未加硫の電波吸収体シートを製造することができた。
【0059】
<比較例>
実施例1で製造したロールにとおした混練物を、更に加熱ロールに通して平均厚さ0.1mmのシート状に成形して使用したほかは実施例1と同様にして、シート状の電波吸収体を得た。本比較例を、エチルシクロヘキサン(SP値:8.2(cal/cm3)1/2)中に浸漬したところ、膨潤や溶解せず加硫していることを確認した。得られたシートの伝送減衰率(Rtp)を、マイクロストリップライン法により測定した。その結果を、図3に示す。
【0060】
[評価方法]
<伝送減衰率Rtpの測定>
IEC62333に準拠して、マイクロストリップライン法により伝送減衰率Rtpを測定した。ここで伝送減衰率Rtpとは下式(1)で表され、値が大きいほど伝送ノイズ抑制能が高いことを表している。式中、S11は反射係数、S21は透過係数である。
【数1】
【0061】
実施例から、本発明のペーストを用いることにより、フィルム状電波吸収体の製造が可能であることが確認できた。また、図1〜3に示す伝送減衰率(Rtp)の結果から、本発明のペーストから得られたフィルム状電波吸収体は、成形により製造した電波吸収体と比較して周波数の広い範囲で十分に高い伝送減衰率(Rtp)を示すことが確認できた。
図1
図2
図3