(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る光走査装置を例示する図である。本実施の形態に係る光走査装置200は、レーザ等の光源から照射される光を走査させる光走査装置であり、例えば圧電素子によりミラーを駆動させるMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー等である。
【0015】
具体的には、光走査装置200は、ミラー110と、ミラー支持部120と、捻れ梁130A、130Bと、連結梁140A、140Bと、第1の駆動梁150A、150Bと、可動枠160と、第2の駆動梁170A、170Bと、固定枠180とを有する。又、第1の駆動梁150A、150Bは、それぞれ駆動源151A、151Bを有する。第2の駆動梁170A、170Bは、それぞれ駆動源171A、171Bを有する。第1の駆動梁150A、150B、第2の駆動梁170A、170Bは、ミラー110を上下又は左右に揺動してレーザ光を走査するアクチュエータとして機能する。
【0016】
ミラー支持部120には、ミラー110の円周に沿うようにスリット122が形成されている。スリット122により、ミラー支持部120を軽量化しつつ捻れ梁130A、130Bによる捻れをミラー110へ伝達することができる。
【0017】
光走査装置200において、ミラー支持部120の表面にミラー110が支持され、ミラー支持部120は、両側にある捻れ梁130A、130Bの端部に連結されている。捻れ梁130A、130Bは、揺動軸を構成し、軸方向に延在してミラー支持部120を軸方向両側から支持している。捻れ梁130A、130Bが捻れることにより、ミラー支持部120に支持されたミラー110が揺動し、ミラー110に照射された光の反射光を走査させる動作を行う。捻れ梁130A、130Bは、それぞれが連結梁140A、140Bに連結支持され、第1の駆動梁150A、150Bに連結されている。
【0018】
第1の駆動梁150A、150B、連結梁140A、140B、捻れ梁130A、130B、ミラー支持部120及びミラー110は、可動枠160に取り囲まれている。第1の駆動梁150A、150Bは、可動枠160にそれぞれの一方の側が支持されている。第1の駆動梁150Aの他方の側は内周側に延びて連結梁140A、140Bと連結している。第1の駆動梁150Bの他方の側も同様に、内周側に延びて連結梁140A、140Bと連結している。
【0019】
第1の駆動梁150A、150Bは、捻れ梁130A、130Bと直交する方向に、ミラー110及びミラー支持部120を挟むように、対をなして設けられている。第1の駆動梁150A、150Bの表面には、駆動源151A、151Bがそれぞれ形成されている。駆動源151A、151Bは、第1の駆動梁150A、150Bの表面上の圧電素子の薄膜の上面に形成された上部電極と、圧電素子の下面に形成された下部電極とにより構成される。駆動源151A、151Bでは、上部電極と下部電極に印加する駆動電圧の極性に応じて伸長したり縮小したりする。
【0020】
このため、第1の駆動梁150Aと第1の駆動梁150Bとで異なる位相の駆動電圧を交互に印加すれば、ミラー110の左側と右側で第1の駆動梁150Aと第1の駆動梁150Bとが上下反対側に交互に振動し、捻れ梁130A、130Bを揺動軸又は回転軸として、ミラー110を軸周りに揺動させることができる。ミラー110が捻れ梁130A、130Bの軸周りに揺動する方向を、以後、水平方向と呼ぶ。例えば第1の駆動梁150A、150Bによる水平駆動には、共振振動が用いられ、高速にミラー110を揺動駆動することができる。
【0021】
又、可動枠160の外部には、第2の駆動梁170A、170Bの一端が連結されている。第2の駆動梁170A、170Bは、可動枠160を左右両側から挟むように、対をなして設けられている。第2の駆動梁170Aは、第1の駆動梁150Aと平行に延在する梁が、隣接する梁と端部で連結され、全体としてジグザグ状の形状を有する。そして、第2の駆動梁170Aの他端は、固定枠180の内側に連結されている。第2の駆動梁170Bも同様に、第1の駆動梁150Bと平行に延在する梁が、隣接する梁と端部で連結され、全体としてジグザグ状の形状を有する。そして第2の駆動梁170Bの他端は、固定枠180の内側に連結されている。
【0022】
第2の駆動梁170A、170Bの表面には、それぞれ曲線部を含まない矩形単位毎に駆動源171A、171Bが形成されている。駆動源171Aは、第2の駆動梁170Aの表面上の圧電素子の薄膜の上面に形成された上部電極と、圧電素子の下面に形成された下部電極とにより構成される。駆動源171Bは、第2の駆動梁170Bの表面上の圧電素子の薄膜の上面に形成された上部電極と、圧電素子の下面に形成された下部電極とにより構成される。
【0023】
第2の駆動梁170A、170Bでは、矩形単位毎に隣接している駆動源171A、171B同士で、異なる極性の駆動電圧を印加することにより、隣接する矩形梁を上下反対方向に反らせ、各矩形梁の上下動の蓄積を可動枠160に伝達する。第2の駆動梁170A、170Bは、この動作により、平行方向と直交する方向である垂直方向にミラー110を揺動させる。例えば第2の駆動梁170A、170Bによる垂直駆動には、非共振振動を用いることができる。
【0024】
例えば、駆動源171Bを左側から可動枠160に向かって並ぶ駆動源を駆動源171DL、171CL、171BL、171ALを含むものとし、右側の駆動源171Aを可動枠160から右側に向かって並ぶ駆動源171AR、171BR、171CR、171DRを含むものとした場合、駆動源171Axと駆動源171Cx(4本)を同波形、駆動源171Bx、駆動源171Dx(4本)を前者と位相の異なる同波形で駆動することで垂直方向へ遥動することができる。
【0025】
駆動源151Aの上部電極及び下部電極に駆動電圧を印加する駆動配線は、固定枠180に設けられた端子群TAに含まれる所定の端子と接続されている。又、駆動源151Bの上部電極及び下部電極に駆動電圧を印加する駆動配線は、固定枠180に設けられた端子群TAに含まれる所定の端子と接続されている。又駆動源171Aの上部電極及び下部電極に駆動電圧を印加する駆動配線は、固定枠180に設けられた端子群TAに含まれる所定の端子と接続されている。又、駆動源171Bの上部電極及び下部電極に駆動電圧を印加する駆動配線は、固定枠180に設けられた端子群TBに含まれる所定の端子と接続されている。
【0026】
又、光走査装置200は、駆動源151A、151Bに駆動電圧が印加されてミラーが水平方向に遥動している状態におけるミラー110の水平方向の傾き具合を検出する圧電センサ191、192を有する。圧電センサ191、192は、連結梁140Bに設けられている。なお、本実施の形態では、圧電センサ192は、連結梁140A、140Bの重量のバランスをとるためのダミーセンサである。
【0027】
又、光走査装置200は、駆動源171A、171Bに駆動電圧が印加されてミラーが垂直方向に遥動している状態におけるミラー110の垂直方向の傾き具合を検出する圧電センサ195、196を有する。圧電センサ195は第2の駆動梁170Aの有する矩形梁の一つに設けられており、圧電センサ196は第2の駆動梁170Bの有する矩形梁の一つに設けられている。
【0028】
圧電センサ191は、ミラー110の水平方向の傾き具合に伴い、捻れ梁130Bから伝達される連結梁140Bの変位に対応する電流値を出力する。圧電センサ195は、ミラー110の垂直方向の傾き具合に伴い、第2の駆動梁170Aのうち圧電センサ195が設けられた矩形梁の変位に対応する電流値を出力する。圧電センサ196は、ミラー110の垂直方向の傾き具合に伴い、第2の駆動梁170Bのうち圧電センサ196が設けられた矩形梁の変位に対応する電流値を出力する。
【0029】
本実施の形態では、圧電センサ191の出力を用いてミラー110の水平方向の傾き具合を検出する。又、本実施の形態では、圧電センサ195、196を用いてミラー110の垂直方向の傾き具合を検出する。なお、本実施の形態では、各圧電センサから出力される電流値からミラー110の傾き具合の検出を行う傾き検出部が光走査装置200の外部に設けられていても良い。又、本実施の形態では、傾き検出部の検出結果に基づき駆動源151A、151B、駆動源171A、171Bに供給する駆動電圧を制御する駆動制御部が光走査装置200の外部に設けられていても良い。
【0030】
圧電センサ191、195、及び196は、圧電素子の薄膜の上面に形成された上部電極と、圧電素子の下面に形成された下部電極とにより構成される。本実施の形態では、各圧電センサの出力は、上部電極と下部電極とに接続されたセンサ配線の電流値となる。
【0031】
圧電センサ191の上部電極及び下部電極から引き出されたセンサ配線は、固定枠180に設けられた端子群TBに含まれる所定の端子と接続されている。又、圧電センサ195の上部電極及び下部電極から引き出されたセンサ配線は、固定枠180に設けられた端子群TAに含まれる所定の端子と接続されている。又、圧電センサ196の上部電極及び下部電極から引き出されたセンサ配線は、固定枠180に設けられた端子群TBに含まれる所定の端子と接続されている。
【0032】
図2は、本実施の形態に係る光走査ユニットを例示する図である。
図2を参照するに、本実施の形態に係る光走査ユニット100は、光走査装置200と、電圧生成回路300と、フロントエンドIC(Integrated Circuit)400と、LD(Laser Diode)440と、ミラードライバIC500とを有する。電圧生成回路300、フロントエンドIC400、LD440、及びミラードライバIC500は、光走査装置200を制御する光走査制御装置である。
【0033】
電圧生成回路300は、光走査ユニット100の各部へ電源を供給する。フロントエンドIC400は、入力されたビデオ信号に所定の信号処理を施し、LD440へ供給する。フロントエンドIC400は、ミラー110の揺動を制御する制御信号を、ミラードライバIC500を介して、光走査装置200へ供給する。フロントエンドIC400は、ビデオ信号処理部410と、LDドライバ420と、ミラー制御部430とを有する。
【0034】
ビデオ信号処理部410は、入力されたビデオ信号に含まれる同期信号と、輝度信号及び色度信号とを分離する処理を行う。ビデオ信号処理部410は、輝度信号及び色度信号をLDドライバ420へ供給し、同期信号をミラー制御部430へ供給する。LDドライバ420は、ビデオ信号処理部410から出力された信号に基づき、LD440を制御する。
【0035】
ミラー制御部430には、光走査装置200の圧電センサ191の出力S1と、圧電センサ195及び196のそれぞれの出力S2が、ミラードライバIC500を経由して入力される。ミラー制御部430は、ミラードライバIC500から入力される出力S1及びS2と、同期信号とに基づきミラー110の揺動を制御する。より具体的にはミラー制御部430は、ミラードライバIC500を介して、光走査装置200の駆動源151A,B、171A,Bの駆動電圧(以下、駆動信号)を出力する。
【0036】
ここで、光走査装置200を構成するミラー110の層構成について説明する。
図3は、ミラーの層構成を例示する断面図である。
図3を参照するに、ミラー110は、基板111と、多層膜119とを有する。多層膜119は、金属膜112と、低屈折率膜113と、高屈折率膜114と、保護膜115とを有する。但し、保護膜115は、必ずしも設けなくてもよい。
【0037】
基板111は、金属膜112等を形成するための基体となる部分であり、例えば、シリコン(Si)により形成されている。基板111の厚さは、例えば、数10〜数100μm程度とすることができる。
【0038】
金属膜112は、例えば、スパッタ法等により、基板111の上面に形成されている。金属膜112としては、ミラー110が反射する可視光域(波長400nm以上700nm以下の領域、以降同様)における反射率が高い金属を選択することが好ましい。金属膜112の材料としては、例えば、純銀(Ag)や銀合金等を用いることができる。金属膜112の厚みは、例えば、200nm程度とすることができる。
【0039】
低屈折率膜113は、例えば、ALD法(原子層堆積法)等により、金属膜112の上面に積層されている。低屈折率膜113は、高屈折率膜114との対により積層誘電体膜を構成し、この積層誘電体膜は可視光域中の低波長域(波長550nmよりも低波長側の領域、以降同様)の反射率を上げる増反射膜として機能する。そのため、低屈折率膜113としては、高屈折率膜114との屈折率差が大きい材料を選択することが好ましい。
【0040】
低屈折率膜113の材料としては、例えば、アルミナ(Al
2O
3)、二酸化珪素(SiO
2)、フッ化マグネシウム(MgF)等を用いることができる。なお、アルミナ(Al
2O
3)の屈折率は1.7程度、二酸化珪素(SiO
2)の屈折率は1.4程度、フッ化マグネシウム(MgF)の屈折率は1.4程度である。低屈折率膜113の厚さは、光学膜厚で、例えば、0.51×λ/4(λ=550nm)程度とすることができる。
【0041】
高屈折率膜114は、例えば、ALD法(原子層堆積法)等により、低屈折率膜113の上面に積層されている。高屈折率膜114は、低屈折率膜113との対により積層誘電体膜を構成し、この積層誘電体膜は可視光域中の低波長域の反射率を上げる増反射膜として機能する。そのため、高屈折率膜114としては、低屈折率膜113との屈折率差が大きい材料を選択することが好ましい。
【0042】
高屈折率膜114の材料としては、例えば、酸化チタン(TiO
2)、酸化タンタル(Ta
2O
3)、酸化ジルコニア(ZrO
2)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)等を用いることができる。なお、これらの屈折率は、何れも2.0〜2.4程度である。高屈折率膜114の厚さは、光学膜厚で、例えば、0.82×λ/4(λ=550nm)程度とすることができる。
【0043】
保護膜115は、例えば、ALD法(原子層堆積法)等により、高屈折率膜114の上面に積層されている。保護膜115は、高屈折率膜114の屈折率が温湿度変化等により変動することを防止する機能を有する。従って、このような問題が懸念されない場合は、設けなくても構わない。
【0044】
保護膜115の材料としては、例えば、アルミナ(Al
2O
3)、二酸化珪素(SiO
2)等を用いることができる。保護膜115の厚さは、光学膜厚で、例えば、0.25×λ/4(λ=550nm)程度とすることができる。
【0045】
このように、基板111上に、可視光域における反射率が高い金属膜112を形成し、更に、増反射膜として機能する低屈折率膜113及び高屈折率膜114を積層することにより、可視光域中の低波長域の反射率を上げることができると共に、可視光域の反射率の入射角度依存性を低減することができる。
【0046】
但し、入射光はP偏光である場合とS偏光である場合とがあるため、P偏光入射及びS偏光入射の各場合において、可視光域中の低波長域の反射率を上げることができると共に、可視光域の反射率の入射角度依存性を低減することが好ましい。
【0047】
なお、多層膜119を、金属膜112、高屈折率膜114、低屈折率膜113、保護膜115が順次積層された構成としても同様の効果を奏する。つまり、低屈折率膜113と高屈折率膜114の積層される順番を反対にしてもよい。但し、高屈折率膜114の材料である酸化チタン(TiO
2)等は、金属膜112との密着性があまりよくない。一方、低屈折率膜113であるアルミナ(Al
2O
3)等は、金属膜112との密着性が良好である。従って、金属膜112との密着性の観点からすれば、金属膜112、低屈折率膜113、高屈折率膜114、保護膜115が順次積層された構成とする方が好ましい。
【0048】
[実施例1]
図3に示す多層膜119を作製し、P偏光入射及びS偏光入射の各場合において、反射率及び反射率の入射角度依存性を評価した。入射角度は、5°、30°、50°の3種類とした。
【0049】
ここで、入射角度とは、ミラー110が初期状態(揺動されていない状態)にあるときの、多層膜119の最表面の法線方向に対してレーザ光が入射する角度である。つまり、レーザ光が多層膜119の最表面の法線方向から入射する場合は、入射角度=0°である。なお、ミラー110が揺動(例えば、±10°程度)することで、入射角度は変動する。
【0050】
実施例1で作製した多層膜119の層構成は以下の通りである。基板111の材料としてはシリコン(Si)を用いた。金属膜112としては、スパッタ法により、厚み約200nmの純銀(Ag)の膜を形成した。低屈折率膜113としては、ALD法(原子層堆積法)により、光学膜厚約0.51×λ/4(λ=550nm)=約40nmのアルミナ(Al
2O
3)の膜を形成した。高屈折率膜114としては、ALD法(原子層堆積法)により、光学膜厚約0.82×λ/4(λ=550nm)=約47nmの酸化チタン(TiO
2)の膜を形成した。保護膜115としては、ALD法(原子層堆積法)により、光学膜厚約0.25×λ/4(λ=550nm)=約20nmのアルミナ(Al
2O
3)の膜を形成した。
【0051】
又、比較例として、シリコン基板上に金属膜のみを形成したサンプルを作製し、同様の評価を行った。金属膜としては、スパッタ法により、厚み約200nmの純銀(Ag)の膜を形成した。比較例に係る金属膜(純銀膜)は、シリコン基板上に形成された単一の層であり、その上には何も形成されていない。
【0052】
以下、
図4〜
図9を参照しながら、評価結果について説明する。
図4は、実施例1に係る多層膜の反射率の入射角度依存性(P偏光入射)を例示する図である。
図5は、比較例に係る金属膜の反射率の入射角度依存性(P偏光入射)を例示する図である。
図4及び
図5を参照すると、何れの入射角度についても、実施例1に係る多層膜119は比較例に係る金属膜に比べて、P偏光入射における可視光域中の低波長域の反射率が向上していることがわかる。又、特に可視光域中の低波長域において、P偏光入射における入射角度依存性が改善していることがわかる。
【0053】
図6は、実施例1に係る多層膜の反射率の入射角度依存性(S偏光入射)を例示する図である。
図7は、比較例に係る金属膜の反射率の入射角度依存性(S偏光入射)を例示する図である。
図6及び
図7を参照すると、何れの入射角度についても、実施例1に係る多層膜119は比較例に係る金属膜に比べて、S偏光入射における可視光域中の低波長域の反射率が向上していることがわかる。又、特に可視光域中の高波長域(波長550nmよりも高波長側の領域、以降同様)において、S偏光入射における入射角度依存性が改善していることがわかる。
【0054】
図8は、実施例1及び比較例の平均反射率の入射角度依存性(P偏光入射)を比較する図である。
図9は、実施例1及び比較例の平均反射率の入射角度依存性(S偏光入射)を比較する図である。なお、平均反射率とは、可視光域全体において各波長での反射率を平均したものである。
図8より、何れの入射角度についても、実施例1に係る多層膜119は比較例に係る金属膜に比べて、P偏光入射における可視光域の平均反射率が向上していることがわかる。又、
図9より、何れの入射角度についても、実施例1に係る多層膜119は比較例に係る金属膜に比べて、S偏光入射における可視光域の平均反射率が向上していることがわかる。
【0055】
このように、実施例1に係る多層膜119は比較例に係る金属膜に比べて、P偏光入射及びS偏光入射において、何れの入射角度についても、可視光域の平均反射率が向上するが、特に、可視光域中の低波長域の反射率が向上する。又、特に可視光域中の低波長域においてP偏光入射における入射角度依存性が改善し、可視光域中の高波長域においてS偏光入射における入射角度依存性が改善する。
【0056】
[実施例2]
実施例2では、高屈折率膜114の材料として酸化チタン(TiO
2)を用いる場合において、酸化チタン(TiO
2)の好適な膜厚について検討した。実施例2では、実施例1と同様にして多層膜119を作製した。但し、酸化チタン(TiO
2)からなる高屈折率膜114の光学膜厚を、それぞれ約17nm、約27nm、約37nm、約47nm、約57nmとした5種類のサンプルを作製した。そして、P偏光入射及びS偏光入射の各場合において、反射率の高屈折率膜の膜厚依存性を評価した。入射角度は、5°、50°の2種類とした。
【0057】
以下、
図10〜
図17を参照しながら、評価結果について説明する。
図10は、入射角度が5°の場合における、実施例2に係る多層膜の反射率の高屈折率膜の膜厚依存性(P偏光入射)を例示する図である。
図11は、入射角度が50°の場合における、実施例2に係る多層膜の反射率の高屈折率膜の膜厚依存性(P偏光入射)を例示する図である。
図12及び
図13は、
図10及び
図11から所定の波長のデータを抜き出してプロットした図である。なお、所定の波長は、レーザプロジェクションにおいて通常用いられる450nm(B)、520nm(G)、638nm(R)の3波長とした。
【0058】
図10〜
図13より、何れの入射角度についても、高屈折率膜114の膜厚が薄くなるとP偏光入射における特定の波長域の反射率が低下する傾向となり、高屈折率膜114の膜厚が厚くなるとP偏光入射における高反射領域(例えば、反射率が90%以上の領域)が長波長側にシフトする傾向となることがわかった。
【0059】
図14は、入射角度が5°の場合における、実施例2に係る多層膜の反射率の高屈折率膜の膜厚依存性(S偏光入射)を例示する図である。
図15は、入射角度が50°の場合における、実施例2に係る多層膜の反射率の高屈折率膜の膜厚依存性(S偏光入射)を例示する図である。
図16及び
図17は、
図14及び
図15から
図12及び
図13と同様の波長のデータを抜き出してプロットした図である。
【0060】
図14〜
図17より、何れの入射角度についても、高屈折率膜114の膜厚が薄くなるとS偏光入射における特定の波長域の反射率が低下する傾向となり、高屈折率膜114の膜厚が厚くなるとS偏光入射における高反射領域(例えば、反射率が90%以上の領域)が長波長側にシフトする傾向となることがわかった。
【0061】
特に450nm(B)、520nm(G)、638nm(R)の3波長に注目して
図10〜
図17のデータを総合的に判断すると、高屈折率膜114の膜厚が47nm以上57nm以下の範囲であれば、P偏光入射及びS偏光入射の何れの場合においても、所定の入射角度範囲で高反射率を確保でき好適である。
【0062】
このように、基板111上に、可視光域における反射率が高い金属膜112を形成し、更に、増反射膜として機能する低屈折率膜113及び高屈折率膜114を積層することにより、P偏光入射及びS偏光入射の何れの場合においても、可視光域中の低波長域の反射率を上げることができると共に、可視光域の反射率の入射角度依存性を低減することができる。又、反射率が向上した結果、入射するレーザ光の光量を下げることが可能となり、LDドライバ等で消費される電力を低減できる。
【0063】
又、多層膜119は少ない膜構成で高反射率を実現できるため、多層膜119の総厚を従来よりも薄くできる。これにより、基板111自体が変形するおそれを低減できる。但し、基板111自体が変形しない範囲において、低屈折率膜113及び高屈折率膜114の組を複数組積層してもよい。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施の形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施の形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。