特許第6236991号(P6236991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特許6236991コーティング方法およびコーティング装置
<>
  • 特許6236991-コーティング方法およびコーティング装置 図000003
  • 特許6236991-コーティング方法およびコーティング装置 図000004
  • 特許6236991-コーティング方法およびコーティング装置 図000005
  • 特許6236991-コーティング方法およびコーティング装置 図000006
  • 特許6236991-コーティング方法およびコーティング装置 図000007
  • 特許6236991-コーティング方法およびコーティング装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236991
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】コーティング方法およびコーティング装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/28 20060101AFI20171120BHJP
   B05D 7/04 20060101ALI20171120BHJP
   B05C 1/08 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B05D1/28
   B05D7/04
   B05C1/08
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-175307(P2013-175307)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-44135(P2015-44135A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河野 祥和
(72)【発明者】
【氏名】前田 慎治
(72)【発明者】
【氏名】小西 智昭
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−121870(JP,A)
【文献】 特開平05−015825(JP,A)
【文献】 特開平07−021558(JP,A)
【文献】 特開平07−144163(JP,A)
【文献】 特開昭58−104674(JP,A)
【文献】 特開2005−144355(JP,A)
【文献】 特開2007−083199(JP,A)
【文献】 特開平08−229498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00−21/00
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に走行するウエブの少なくとも一方の面に、ウエブの速度とは相対的に速度差を持って回転するグラビアロールのセルから塗液をウエブに接触転移させ、連続的な塗布膜を形成させるコーティング方法において、
使用するグラビアロールが、ロールの表面に複数のセルが、高い土手および低い土手で囲まれてそれぞれのセルが形成されており、
前記セルの底から前記高い土手までの高さaと前記セルの底から前記低い土手までの高さbとの比率b/aが0.10以上0.60以下である、
コーティング方法。
【請求項2】
前記比率b/aのバラツキが0.30未満である請求項1のコーティング方法。
【請求項3】
前記セルの底から前記高い土手までの高さaが5μm以上150μm以下である請求項1または2のコーティング方法。
【請求項4】
前記セルの底から前記高い土手までの高さaのバラツキが0.30未満である請求項1〜3のいずれかのコーティング方法。
【請求項5】
前記高い土手の中心から隣接する前記低い土手に向かう線とグラビアロールの回転方向との線角度(鋭角)、および同じ高い土手の中心から別方向の隣接する低い土手に向かう線とグラビアロールの回転方向との線角度(鋭角)のそれぞれが85°未満である請求項1〜4のいずれかのコーティング方法。
【請求項6】
グラビアセルの表面全体に対する開口部分の面積比率が60%以上96%以下である請求項1〜5のいずれかのコーティング方法。
【請求項7】
塗布される塗液の粘度が0.6mPa・s以上1000mPa・s以下である請求項1〜6のいずれかのコーティング方法。
【請求項8】
プラスチックフィルムの製造工程内で塗布する請求項1〜7のいずれかのコーティング方法。
【請求項9】
連続的に走行するウエブの表面に、回転するグラビアロールのセルから塗液をウエブに接触転移させ、連続的な塗布膜を形成するコーティング装置であって、
前記グラビアロールが、ロールの表面に複数のセルが、高い土手および低い土手で囲まれてそれぞれのセルが形成されており、
前記セルの底から前記高い土手までの高さaと前記セルの底から前記低い土手までの高さbとの比率b/aが0.10以上0.60以下である、
コーティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布膜の平滑性に優れ、塗布厚みの経時変化が少ないコーティング方法、およびそのコーティング方法を実現するコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルム等のウエブ表面に塗液を塗布し、易接着性、易滑性等の機能を与えるコーティングが一般的に行われている。近年では、コストダウンの要求から、高速で薄膜を塗布できる方法が求められている。
【0003】
このような塗布方法としてグラビアロール方式の塗布方法が一般に知られている。この方法は、表面に微細な凹凸を有するグラビアロールを用いて塗液を計量し、ウエブ表面に塗布する方法であり、高速で塗布することができる。また、装置の構成要素が少ないため、設備コストが低く、取り扱いも簡便であり、幅広い分野で使用されている。
【0004】
しかし、近年、塗膜の高機能化が進むにしたがって、機能の均一性を保つために塗布膜の平滑性を高めることが求められており、コーティング加工における安定した塗布厚みの管理が非常に重要となっている。
【0005】
そのような中で、塗液の液面を一定に保ちながら塗工量の計測ができ、グラビアセルの目詰まりによる塗工量の低下を解決するために、一定の塗工量を維持するグラビアコート方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、各種塗工液を塗工ロール、特にグラビアロールで塗工する際に、凹部(セル部)に目詰まりが生じた後にロール洗浄するのではなく、塗工液に超音波振動を与えることにより、塗工中の塗工ロール特にグラビアロールの凹部(セル部)の目詰まりを未然に防止して、安定した塗工量を得る塗工方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−264398号公報
【特許文献2】特開平7−907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載のグラビアコート方法は、装置内の塗工液の重量が一定になるようにグラビアロール速度を制御することで、安定した時間当たりの塗工液消費量を維持することができる。しかしながら、経時におけるウエブ表面の安定した塗布厚みを維持する上では十分でなく、グラビアセル自体の目詰まりを防止する点については考慮されていない。
【0009】
特許文献2記載の塗工方法は、塗工液に超音波振動を与えることで、塗工液の硬化を防ぎ、グラビアロールの凹部(セル部)の目詰まりを抑制することができる。しかしながら、グラビアセル自体の目詰まりを防止する点については考慮されていない。
【0010】
本発明の課題は、塗布膜の平滑性に優れ、塗布厚みの経時変化が少ないコーティング方法、およびそのコーティング方法を実現するコーティング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のコーティング方法は、連続的に走行するウエブの少なくとも一方の面に、ウエブの速度とは相対的に速度差を持って回転するグラビアロールのセルから塗液をウエブに接触転移させ、連続的な塗布膜を形成させるものであり、使用するグラビアロールが、高い土手および低い土手で囲まれてセルが形成されており、セルの底から高い土手までの高さaとセルの底から低い土手までの高さbとの比率b/aが0.10以上0.60以下である。
【0012】
本発明のコーティング装置は、連続的に走行するウエブの表面に、回転するグラビアロールのセルから塗液をウエブに接触転移させ、連続的な塗布膜を形成する装置であって、そのグラビアロールが、高い土手および低い土手で囲まれてセルが形成されており、セルの底から高い土手までの高さaとセルの底から低い土手までの高さbとの比率b/aが0.10以上0.60以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、塗布膜の平滑性に優れ、塗布厚みの経時変化が少ないコーティング方法、およびそのコーティング方法を実現するコーティング装置が提供される。
【0014】
より具体的には、高速塗布が可能なグラビアロール方式の塗布方法において、塗液粘度の許容範囲が広く、塗布膜の平滑性に優れ、かつウエブに対する塗液の転移性に優れるため、グラビアセルの目詰まりによる洗浄作業を低減でき、塗布厚みの経時変化が少ないため、樹脂フィルム等のウエブ表面に各種塗液を塗布して塗布膜による高機能化を与える、様々なコーティングに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明におけるグラビアセルの概略立体図である。
図2図2は、図1の概略平面図である。
図3図3は、図1図2の断面A(点線部分)および断面B(点線部分)で分断したときの概略断面図を並べたものである。
図4図4は、グラビアロールの回転方向とセルの彫刻方向とがなす線角度を示す概略図である。
図5図5は、本発明のコーティング装置をロール回転軸に直交する方向から見た概略断面図である。
図6図6は、本発明におけるグラビアセル、および比較例で用いたセルタイプを例示説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための望ましい形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
本発明のコーティング装置は、連続的に走行するウエブの表面に、回転するグラビアロールのセルから塗液をウエブに接触転移させ、連続的な塗布膜を形成する装置である。そのグラビアロールとして、後述する特殊な表面形状を持つグラビアロールを採用している。
【0018】
そして、本発明のコーティング方法は、本発明のコーティング装置を用いて、連続的に走行するウエブの少なくとも一方の面に、ウエブの速度とは相対的に速度差を持って回転するグラビアロールのセルから塗液をウエブに接触転移させ、連続的な塗布膜を形成する。
【0019】
本発明に用いるグラビアロール方式の一例であるリバースコート方式を図5に示す。塗液供給手段13から吐出された塗液15はグラビアロール12の表面に過剰に塗布され、ドクターブレード14により掻き取られ計量される。計量された塗液15aは、グラビアロール12によりウエブ11に塗布され所定の膜厚の塗布膜15bが形成される。
【0020】
また、一定の塗液量を計量することを目的とする、グラビアロールに彫刻されるグラビアセルの形状(タイプ)としては、図6に示す通り、ハイブリッド16、ハニカム17、ヘリカル18等が挙げられる。これらの中で、本発明においては、優れた塗布膜の平滑性と塗布厚みの安定化を両立するために、ハイブリッドタイプを用いる。
【0021】
本発明で用いるハイブリッドタイプのセル形状を図1図2に示す。ハイブリッドタイプは、個々に独立したセルタイプとは異なり、高い土手5と低い土手6を有し、それらに囲まれる形でセルの底4が形成されており、山と谷の連続したオープンセル形状である。
【0022】
ここで、本発明で言う「土手」とは、塗液をグラビアロールの表面にピックアップするために凹凸形状が彫刻されたグラビアセルにおいて、塗液をピックアップする凹部の周囲を取り囲む凸部のことを指す。すなわち、グラビアセルの凹部は塗液を溜める「窪み」であって、凸部は塗液が流れ出さないように「窪み」の周囲を取り囲む「土手」である。
【0023】
一般的なハニカムタイプ、ヘリカルタイプ等のセルは凹型に彫刻され、凹部にインキを保持する。これに対し、本発明で使用するハイブリッドタイプのセルは、凸部である土手を残すように彫刻され、セルの底4から低い土手6までの間にインキを保持する。そのためハイブリッドタイプのセルは、ハニカムタイプやヘリカルタイプのセルに比べて塗液の転移性に優れている。
【0024】
本発明では、図3に示すように、セル底4から高い土手5までの高さa(以下、土手高さaという)と、セル底4から低い土手6までの高さb(以下、土手高さbという)との比率b/aが0.10以上0.60以下のグラビアロールを使用する。
【0025】
土手高さ比率b/aが0.10未満であると、塗液を溜める内壁高さ(土手高さb)が低くなるのでセル単位あたりの塗液を溜める部分の容積が小さくなる。その結果、グラビアロールの回転時に、塗液がウエブへ塗布される前にセルから流れ出てしまい、塗布ムラによる塗布膜の平滑性が損なわれることがある。土手高さ比率b/aが0.60を超えると、塗液を溜める内壁高さ(土手高さb)が高くなるのでセル内壁部に発生する表面張力も同時に高くなる。その結果、ウエブへの塗液の転移性が低下し、セル凹部に残留する塗液量が増加して経時的に目詰まりや塗液の保持量の低下が発生し、塗布厚みの安定性が損なわれることがある。
【0026】
また、本発明では土手高さ比率b/aのバラツキは、0.30未満が好ましい。土手高さ比率b/aのバラツキが0.30を超えると、ウエブの塗布膜において塗布ムラが発生することがある。
【0027】
本発明では、グラビアセルの土手高さaが5μm以上150μm以下が好ましい。土手高さaが5μm未満であると、セル加工を行う際に加工精度が悪くなる可能性がある。土手高さaが150μmを超えると、セル凹部に残留する塗液量が増加して経時的に目詰まりや塗液の保持量の低下が発生し、塗布厚みの安定性が損なわれることがある。
【0028】
本発明では土手高さaのバラツキは、0.30未満が好ましい。土手高さaのバラツキが0.30を超えると、ウエブの塗布膜において塗布ムラが発生することがある。
【0029】
本発明では、図4に示すように、グラビアセルの高い土手5の中心から隣接する低い土手6に向かう線2(a列)とグラビアロールの回転方向1との線角度(鋭角)、および同じ高い土手の中心から別方向の隣接する低い土手に向かう線2’(b列)とグラビアロールの回転方向1との線角度(鋭角)のそれぞれが85°未満であることが好ましい。線角度が85°以上の場合、グラビアロールの回転方向1に、セルの底4に対する低い土手6が位置することになるため、グラビアロールの回転により、グラビアセルの凹部から塗液の脱落を引き起こし、塗布膜の平滑性を損なうことがある。なお、図6では、グラビアロールの回転方向1が「高い土手−セルの底−高い土手−セルの底・・・」を結ぶ線に略並行に描かれているが、グラビアロールの回転方向1は必ずしもこの方向に限定される訳ではない。
【0030】
本発明では、グラビアセルの表面全体に対する開口部分の面積比率が60%以上96%以下であることが好ましい。開口部分の面積比率が60%未満の場合、グラビアセルの凹部間の距離が離れてしまい、ウエブの塗布膜において塗布ムラが発生することがある。また、開口部分の面積比率については特に上限は無いが、物理的に凹凸領域が無くなってしまうため、現実的には96%以下であることが好ましい。
【0031】
本発明においてグラビアロール12は、ウエブ11と近接しながら回転する。好ましくは、相対的に回転する。「相対的に」とは、グラビアロール12自体も回転するが、塗布面にグラビアパターン(すなわち凹部の跡)を残さないように、ウエブ11の走行速度とグラビアロール12の回転速度とを一致させないという意味である。回転方向はウエブ11の搬送方向と同じ方向または逆方向のどちらでも選べるが、本発明においては塗布膜の平滑性を実現させる観点から、図5に示した通り、逆方向(リバース方向とも呼ばれる)が好ましい。
【0032】
グラビアロール12の材質としては、鋼製を好ましく採用することができ、表面にハードクロム、銅、ニッケルメッキ、あるいはこれらの複合メッキを施したものが用いられるが、好ましくは表面にセラミックを溶射したものがよい。これによって、ドクターブレード14あるいはウエブ11によるグラビアロールの摩耗を防ぎ、凸部上面の表面が荒れるのを防止することができる。グラビアロールの表面に溝あるいは穴を形成する方法としては、切削、転造、レーザー彫刻などが有るが、本発明においては、高精度の寸法形状を形成させる観点からレーザー彫刻が好ましい方法である。
【0033】
本発明では、ウエブ11として例えば、熱可塑性樹脂フィルム等のプラスチックフィルム、紙、皮革、金属帯等の他のフィルムに好ましく用いることができる。この中でも、プラスチックフィルムを特に好ましく用いることができる。
【0034】
プラスチックフィルムとしては、ポリオレフィンフィルム(例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリエステルフィルム(例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルム等)、ポリアミドフィルム(例えばナイロン6フィルム、ナイロン66フィルム等)、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム等が例示できる。この中でも、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることがより好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは原料コストが低く、機械特性、電気特性、耐薬品性等に優れているためである。
【0035】
本発明においてウエブの厚みは、搬送性および塗布性の観点から1〜2000μmであることが好ましい。より好ましくは5〜1000μmである。ウエブの速度は、搬送性および塗布性の観点から5〜1000m/分であることが好ましい。より好ましくは10〜400m/分である。また、ウエブの張力は10〜10000N/mであることが好ましい。より好ましくは100〜3000N/mである。ウエブの張力が10N/m未満の場合、ウエブにしわが入ったりウエブが蛇行するなど、安定走行にとって障害になることがある。ウエブの張力が10000N/mを超える場合、ウエブ表面に傷が入り易くなる。ウエブの張力は、例えば、ダンサーロールや、張力計からの信号をもとに搬送ロールをサーボモーターで駆動するシステムなどにより制御することができる。
【0036】
本発明において塗液15は、ウエブ表面に機能特性、例えば接着性(含易接着性、ヒートシール性)、易滑性(走行性)、帯電防止性、導電性、耐摩耗性、耐候性、離型性、耐薬品性(含耐水性、耐溶剤性)、易印刷性、流滴性、防汚性、筆記性、遮光性、防水性、ガスバリア性等を付与する表面加工用の塗液であれば如何なるものであってもよい。これらの塗液は、公知のものを用いることができる。
【0037】
本発明では、塗布される塗液の粘度が0.6mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは10mPa・s以上500mPa・s以下である。塗液の粘度が0.6mPa・sより小さい場合、グラビアロールの回転時、塗液がウエブへ塗布される前にセルから流れ出てしまい、塗布ムラによる塗布膜の平滑性が損なわれることがある。塗液の粘度が1000mPa・sより大きい場合、グラビアセルの凹部に充填された塗液がウエブに転写され難く、セル凹部に塗液が残存して目詰まりを引き起こし易くなる。
【0038】
本発明は、特にプラスチックフィルムの製造工程内での塗布に用いることが好ましい。製造工程内のインラインコーティング工程に用いることで、製造コストを著しく低減させることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、諸特性は以下の方法により測定した。
【0040】
(1)土手高さ
ヨモタ光機(株)製ドットチェッカーα600Zを用いて、図1図3の7を測定することで、高い土手高さaを決定した。また、図1図3の8を測定することで低い土手高さbを決定した。
【0041】
(2)土手高さのバラツキ
ヨモタ光機(株)製ドットチェッカーα600Zを用いて、グラビアロールの幅方向に向かって約20cm間隔の5箇所で高い土手高さaを測定し、高い土手高さaのバラツキを下記の式で算出した。
・土手高さのバラツキ=(q max−q min)/q average
q max・・・5箇所で測定した土手高さの最大値
q min・・・5箇所で測定した土手高さの最小値
q average・・・5箇所で測定した土手高さの平均値。
【0042】
(3)土手高さ比率b/aのバラツキ
ヨモタ光機(株)製ドットチェッカーα600Zを用いて、グラビアロールの幅方向に向かって約20cm間隔の5箇所で高い土手高さaおよびそれに隣接する低い土手高さbをそれぞれ測定した。次に隣り合う高い土手高さaと低い土手高さbとの土手高さ比率b/aを算出し、土手高さ比率b/aのバラツキを下記の式で算出した。
・土手高さ比率b/aのバラツキ=x max−x min
x max・・・5箇所で算出した土手高さ比率b/aの最大値
x min・・・5箇所で算出した土手高さ比率b/aの最小値。
【0043】
(4)グラビアセルの線密度
図4の線2を1線として1インチ(2.54cm)あたりの線数を算出し、グラビアセルの線密度を決定した。
【0044】
(5)グラビアセルの線角度
ヨモタ光機(株)製ドットチェッカーα600Zを用いて、図4の3、3’を測定することで、グラビアセルの線角度を決定した。
【0045】
(6)グラビアセルの表面全体に対する開口部分の面積比率
ヨモタ光機(株)製ドットチェッカーα600Zを用いて、グラビアロールの幅方向に向かって約20cm間隔の5箇所で図1図2の5の土手面積(単位:μm)、すなわち高い土手の頂点に位置する平面部分の面積を測定した。また、グラビアロールの幅方向に向かって約20cm間隔の5箇所で線密度(線/インチ)を測定した。次に5箇所の平均土手面積をy(μm)、5箇所の平均線密度をz(線/インチ)とし、開口部分の面積比率を下記の式で算出した。
・開口部分の面積比率(%)={1−(y×z)/(2.54×10}×100。
【0046】
(7)グラビアセルのセル容積
STEINHART社製簡易セル容積測定システムキャパッチを用いて、グラビアロールの幅方向に向かって約20cm間隔の5箇所でセル容積を測定し、5箇所の平均値をとることでグラビアセルのセル容積とした。
【0047】
(8)塗液の粘度
レオメータ(レオテック社製、RC20)を用い、JIS Z8803−1996に準拠して測定した。
【0048】
(9)塗布膜の平滑性
初期塗布厚み10μmで塗布を開始し、塗布開始より10分後、倉敷紡績(株)製ファイバー式水膜厚計RF−60−Pを用いて、グラビアロールの幅方向に向かって約20cm間隔の5箇所で塗布厚みを測定し、下記の式および基準で塗布膜の平滑性を評価した。
・塗布厚みのバラツキ=(r max−r min)/r average
r max・・・5箇所で測定した塗布厚みの最大値
r min・・・5箇所で測定した塗布厚みの最小値
r average・・・5箇所で測定した塗布厚みの平均値
○:0.15未満
△:0.15以上0.20未満
×:0.20を超える。
【0049】
(10)塗布厚みの安定性
初期塗布厚み10μmで塗布を開始し、塗布開始より12時間後、倉敷紡績(株)製ファイバー式水膜厚計RF−60−Pを用いて、グラビアロールの幅方向に対して中心位置の塗布厚みを測定し、次の基準で塗布厚みの安定性を評価した。
○:9.0μm以上(初期塗布厚みの90%以上)
×:9.0μm未満(初期塗布厚みの90%未満)。
【0050】
(実施例1)
図5に示す塗布方式を用いて、幅が1000mm、厚みが500μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるウエブ11を張力1000N/mで矢印の方向に33m/分で走行させながら、ウエブに対しリバース方向に回転するグラビアロール12を使用して塗布を行った。グラビアロール12には、塗液供給手段13、ドクターブレード14を設置した。
【0051】
塗布時には、グラビアロールをその表面がウエブ走行方向に対してリバース方向に30m/分で移動するように回転させた。ウエブとグラビアロールの速度差は63m/分であった。
【0052】
グラビアロール12は直径270mmのステンレス鋼を母材とするロールからなり、その外周面にセル部として、ロール軸に対して45°の方向に傾斜した連続溝(図4の3の線角度(グラビアセルのa列・グラビアロールの回転方向)45°、図4の3’の線角度(グラビアセルのb列・グラビアロールの回転方向)45°)が回転軸方向に2.54cm当たり250本(線密度:250線/インチ)、高い土手高さaが70μm、高い土手高さaのバラツキが0.10、低い土手高さbが35μm、土手高さ比率b/aが0.50、土手高さ比率b/aのバラツキが0.20、グラビアセルの表面全体に対する開口部分の面積比率が85%、セル容積が20cm/mのハイブリッドタイプのグラビアセルとした。
【0053】
塗液には、有機スルホン酸塩基含有ポリエステル樹脂を20wt%含んだ、粘度が50.0mPa・sのポリエステル樹脂水溶液を使用し、ウエブ11の片面に塗布直後乾燥前の塗布厚みで10μmに調整して塗布を開始した。塗布直後乾燥前の塗布厚みは、倉敷紡績(株)製ファイバー式水膜厚計RF−60−Pで測定した。
【0054】
(実施例2)
塗液に増粘剤で粘度を500.0mPa・sに増大させたものを用いた以外は実施例1と同様にして、ウエブ表面にコーティングを行った。
【0055】
(実施例3)
ウエブ11を張力1000N/mで図5の矢印方向に330m/分で走行させながら、グラビアロール12の表面がフィルム走行方向に対してリバース方向に300m/分で移動するように回転させた以外は実施例1と同様にして、ウエブ表面にコーティングを行った。
【0056】
(実施例4)
グラビアロール12のセルの土手高さ比率b/aのバラツキが0.40であるものを用いた以外は実施例1と同様にして、ウエブ表面にコーティングを行った。
【0057】
(比較例1)
グラビアロール12のセルの土手高さ比率b/aが0.06であるものを用いた以外は実施例3と同様にして、ウエブ表面にコーティングを行った。
【0058】
(比較例2)
グラビアロール12のセルの土手高さ比率b/aが0.90であるものを用いた以外は実施例2と同様にして、ウエブ表面にコーティングを行った。
【0059】
(比較例3)
グラビアロール12のセルタイプが図6の18に示された通り、ヘリカルタイプであるものを用いた以外は実施例3と同様にして、ウエブ表面にコーティングを行った。
【0060】
(比較例4)
グラビアロール12のセルタイプが図6の17に示された通り、ハニカムタイプであるものを用いた以外は実施例2と同様にして、ウエブ表面にコーティングを行った。
【0061】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明により、高速塗布が可能なグラビアロール方式の塗布方法において、塗液粘度の許容範囲が広く、塗布膜の平滑性に優れ、かつウエブに対する塗液の転移性に優れるため、グラビアセルの目詰まりによる洗浄作業を低減でき、塗布厚みの経時変化が少ないため、樹脂フィルム等のウエブ表面に各種塗液を塗布して塗布膜による高機能化を与える、様々なコーティングに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1:グラビアロールの回転方向
2、2’:セルの彫刻方向
3、3':線角度
4:セルの底
5:高い土手
6:低い土手
7:高い土手高さa
8:低い土手高さb
11:ウエブ
12:グラビアロール
13:塗液供給手段
14:ドクターブレード
15:塗液
16:グラビアセルのタイプ・ハイブリッド
17:グラビアセルのタイプ・ハニカム
18:グラビアセルのタイプ・ヘリカル
図1
図2
図3
図4
図5
図6