特許第6236995号(P6236995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236995排気ガス浄化用触媒及びその製造方法並びにそれを用いた排気ガス浄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236995
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化用触媒及びその製造方法並びにそれを用いた排気ガス浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20171120BHJP
   B01J 29/068 20060101ALI20171120BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20171120BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20171120BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20171120BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20171120BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B01J23/63 AZAB
   B01J29/068 A
   B01J37/02 301L
   B01D53/86 222
   B01D53/86 241
   B01D53/86 245
   B01D53/86 280
   B01D53/94 222
   B01D53/94 241
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   F01N3/10 A
   F01N3/28 301P
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-176649(P2013-176649)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-44157(P2015-44157A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 誉士
(72)【発明者】
【氏名】山田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】原田 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義志
(72)【発明者】
【氏名】重津 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 明秀
【審査官】 大城 公孝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−528119(JP,A)
【文献】 特開2003−093887(JP,A)
【文献】 特開平11−104462(JP,A)
【文献】 特表2012−515087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86−53/90
B01D 53/94−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体上に形成され、ゼオライト、アルミナ、セリア、並びにPt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を含む酸化触媒層と、
前記酸化触媒層の上に形成され、NOx吸蔵材としてのアルカリ土類金属と、Pt及びRhのうちの少なくとも1種の触媒金属とを含むLNT層と、
前記LNT層の上に形成され、アルミナ及びジルコニアのうちの少なくとも1つ並びに触媒金属としてのRhを含むNOx還元層とを備え、
前記酸化触媒層は、前記Pt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属、アルミナ及びセリアを含む第1酸化触媒層と、該第1酸化触媒層の上に形成された前記Pt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属及びゼオライトを含む第2酸化触媒層とを含み、
前記NOx還元層は、前記酸化触媒層及びLNT層よりも前記Rhの含有量が大きいことを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記LNT層は、アルミナ及びセリアをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記酸化触媒層におけるゼオライトの平均粒径は、0.5μm以上4.8μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排気ガス浄化用触媒。
【請求項4】
担体上に、ゼオライト、アルミナ、セリア、並びにPt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を含む酸化触媒層を形成する工程と、
前記酸化触媒層の上に、アルミナ及びセリアを含むLNTサポート材層を形成する工程と、
前記LNTサポート材層の上に、アルミナ及びジルコニアのうちの少なくとも1つを含むRh用サポート材層を形成する工程と、
前記LNTサポート材層及びRh用サポート材層を、NOx吸蔵材としてのアルカリ土類金属及び触媒金属としてのRhを含む溶液に含浸することにより、前記LNTサポート材層を前記NOx吸蔵材が含有されたLNT層にすると共に、前記Rh用サポート材層を前記酸化触媒層及びLNT層よりもRh含有量が大きいNOx還元層にする工程とを備え、
前記酸化触媒層を形成する工程では、前記アルミナ及びセリアの混合物に前記Pt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を担持してなる粉末を含むスラリーを前記担体に担持して乾燥させた後、その上に、前記ゼオライトに前記Pt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を担持してなる粉末を含むスラリーをコーティングし、乾燥、焼成することにより、当該触媒金属、アルミナ及びセリアを含む第1酸化触媒層と、該第1酸化触媒層の上の当該触媒金属及びゼオライトを含む第2酸化触媒層とを形成することを特徴とする排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項5】
担体上に、ゼオライト、アルミナ、セリア、並びにPt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を含む酸化触媒層を形成する工程と、
前記酸化触媒層の上に、アルミナ及びセリアを含むLNTサポート材層を形成する工程と、
前記LNTサポート材層の上に、触媒金属としてのRhが担持されたアルミナ及び触媒金属としてのRhが担持されたジルコニアのうちの少なくとも1つを含むNOx還元層を形成する工程と、
前記LNTサポート材層を、NOx吸蔵材としてのアルカリ土類金属を含む溶液に含浸することにより、前記LNTサポート材層をNOx吸蔵材が含有されたLNT層にする工程とを備え、
前記酸化触媒層を形成する工程では、前記アルミナ及びセリアの混合物に前記Pt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を担持してなる粉末を含むスラリーを前記担体に担持して乾燥させた後、その上に、前記ゼオライトに前記Pt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を担持してなる粉末を含むスラリーをコーティングし、乾燥、焼成することにより、当該触媒金属、アルミナ及びセリアを含む第1酸化触媒層と、該第1酸化触媒層の上の当該触媒金属及びゼオライトを含む第2酸化触媒層とを形成し、
前記NOx還元層が前記酸化触媒層及び前記LNT層よりもRh含有量が大きくなるように各層を形成することを特徴とする排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項6】
エンジンの排気ガス通路に設けられたパティキュレートフィルタの排気ガス流れ方向上流側に請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気ガス浄化用触媒を配設し、
排気ガスの空燃比をリーンにして、排気ガス中のNOxを前記NOx吸蔵材に吸蔵させ、
前記NOx吸蔵材のNOx吸蔵量が所定値以上になったときに、前記エンジンの燃焼室に圧縮行程上死点付近で燃料を噴射供給する主噴射後に、膨張行程又は排気行程において燃料を噴射供給する後噴射させて排気ガス中へHCを含ませて、排気ガスの空燃比がリッチ状態になるように制御して前記NOx吸蔵材からNOxを放出させて、放出されたNOxを、前記NOx還元層を通過する際に前記Rhにより還元浄化させ、
前記パティキュレートフィルタへのパティキュレートマターの堆積量が所定値以上になったときに、排気ガスがリーン状態のままで前記主噴射後に前記後噴射させて、排気ガス中のHCを前記Pt及びPdにより酸化燃焼させて、前記パティキュレートフィルタに流入する排気ガス温度を昇温することにより、パティキュレートマターを燃焼することを特徴とする排気ガスの浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化用触媒及びその製造方法並びにそれを用いた排気ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置は、一般に酸化触媒(DOC)とその下流に配設されたディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)によって構成されている。DOCによって、排気ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)が酸化浄化され、窒素酸化物(NOx)のうちのNOがNOに酸化される。DOCでの触媒反応熱によりDPFの昇温が図れ、NOの有する強い酸化力によりDPFに堆積したパティキュレートマター(PM)の燃焼が促進される。エンジン始動直後はDOCの活性が低いことから、HCが未浄化のまま排出されないように、DOCにゼオライトをHCトラップ材として設けることが行われている。
【0003】
一方、NOxの浄化のために、リーンバーンガソリンエンジンやディーゼルエンジンではリーンNOxトラップ触媒(LNT触媒)も利用されている。このLNT触媒は、NOx吸蔵材によって排気ガスの空燃比がリーンであるときにNOxを吸蔵する。そして、エンジンの空燃比をリッチに変調するリッチパージにより、NOx吸蔵材からのNOxの放出、及び未燃ガスによるNOxの還元が行われる。NOx吸蔵材としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属を利用することが可能である。但し、アルカリ金属は触媒担体を形成するコージェライトの粒界にガラス相を形成して担体強度を低下させることから、実際にはそのような問題がないアルカリ土類金属が一般に採用されている。
【0004】
また、特許文献1に記載されているように、ガソリンエンジンの排気ガス浄化用触媒においては、一体構造型担体にゼオライトを含有するHC吸着材層とNOx吸蔵材を含有する触媒金属層とを積層状態に設けるという提案がある。このようにすることで、エンジン始動直後の排気ガス中のHC及びNOxを共に吸着することができ、触媒金属の活性化後に、HC及びNOxの排出と共にそれらを反応させることでHC及びNOxの両方を浄化可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−113173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、HC吸着材層とNOx吸蔵材を含有する触媒金属層とを有し、HC吸着性能及びLNT性能を併せ持つ触媒は既に提案されている。これは、下層で脱離したHCが上層に達し、上層にトラップされているNOxと反応することによりNOxを浄化させるものであるが、HCの脱離温度範囲には限りがあり、多様な運転条件において、脱離するHC量がNOxを浄化させるのに十分なHC量となるかは明らかでない。このため、脱離HCを用いてNOxを還元浄化させる場合、未浄化のNOxが残存する可能性が高い。
【0007】
また、今後の厳しい自動車排出ガス規制に鑑み、高いHC及びCO酸化性能を維持、又は改善しつつ、より効率良くLNT性能を発揮できる触媒が求められる。このためには、HC脱離を用いたNOx浄化という既存技術だけでなく、HC吸着・浄化性能の向上や、NOxの還元浄化をも考慮した触媒層の層構造及びその組成の工夫が必要となる。
【0008】
そこで本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、HC及びCO酸化能を有する触媒層と、NOx還元能を有する触媒層とを備えた排気ガス浄化触媒において、高効率でHC、CO及びNOxを浄化できる触媒を得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の排気ガス浄化用触媒では、酸化触媒層の上にLNT層が積層された構造とし、さらにLNT層の上に、NOxの還元性能が高い触媒金属としてのRhを多く含有するNOx還元層を設けた。
【0010】
具体的に、本発明に係る排気ガス浄化用触媒は、担体上に形成され、ゼオライト、アルミナ、セリア、並びにPt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を含む酸化触媒層と、前記酸化触媒層の上に形成され、NOx吸蔵材としてのアルカリ土類金属と、Pt及びRhのうちの少なくとも1種の触媒金属を含むLNT層と、前記LNT層の上に形成され、アルミナ及びジルコニアのうちの少なくとも1つ並びに触媒金属としてのRhを含むNOx還元層とを備え、前記酸化触媒層は、前記Pt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属、アルミナ及びセリアを含む第1酸化触媒層と、該第1酸化触媒層の上に形成された前記Pt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属及びゼオライトを含む第2酸化触媒層とを含み、前記NOx還元層は、前記酸化触媒層及びLNT層よりも前記Rhの含有量が大きいことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る排気ガス浄化用触媒において、触媒温度が低いときは排気ガス中のHCが酸化触媒層のゼオライトに吸着され、触媒温度が上昇すると、ゼオライトからHCが放出される。放出されたHCは、排気ガス中のCOと共に温度上昇によって活性が高くなっている触媒金属により酸化浄化される。また、排気ガスの空燃比がリーンであるときは、NOxがLNT層のNOx吸蔵材に吸蔵され、その空燃比が理論空燃比近傍又はリッチになったときにNOx吸蔵材からNOxが放出される。放出されたNOxは、NOx還元層の触媒金属であるRhにより還元浄化される。また、NOx還元層は、LNT層の上、すなわち排気ガス通路側に設けられており、NOxがLNT層から排気ガス通路に放出される際にNOx還元層を通り、NOx還元層には他の層よりも多くRhが含有されているため、放出されたNOxを効率良く還元浄化することができる。また、NOx還元層は、Rhとの親和性が高いジルコニア及びアルミナを含むため、Rhを効率良くNOx還元層に含有させるのに有利である。
【0012】
また、ゼオライトが酸化触媒層のうちの上側に配置されているから、排気ガス中のHCの吸着に有利になり、さらに、ゼオライトから脱離するHCが該ゼオライトに担持された触媒金属によって効率良く浄化される。また、第1酸化触媒層のセリアによるNOxの吸着によって全体のNOx吸蔵、吸着量が増大するとともに、セリアを介する水性ガスシフト反応によってNOx還元剤としての水素が生成し、NOxの還元が促進される。さらに、空燃比をリッチ側にしたときに、セリアに吸蔵された酸素と還元剤(HC及びCO)との反応熱による触媒の活性促進が図れ、NOx浄化率が向上する。
【0013】
本発明に係る排気ガス浄化用触媒において、LNT層は、アルミナ及びセリアをさらに含むことが好ましい。
【0014】
このようにすると、アルミナを含有することで耐熱性が向上し、上記と同様に、セリアによるNOxの吸着によって全体のNOx吸蔵、吸着量が増大するとともに、セリアを介する水性ガスシフト反応によってNOx還元剤としての水素が生成し、NOxの還元が促進される。さらに、空燃比をリッチ側にしたときに、セリアに吸蔵された酸素と還元剤(HC及びCO)との反応熱による触媒の活性促進が図れ、NOx浄化率が向上する。
【0015】
本発明に係る排気ガス浄化用触媒において、酸化触媒層におけるゼオライトは、平均粒径が0.5μm以上4.8μm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る排気ガス浄化用触媒の製造方法は、担体上に、ゼオライト、アルミナ、セリア、並びにPt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を含む酸化触媒層を形成する工程と、前記酸化触媒層の上に、アルミナ及びセリアを含むLNTサポート材層を形成する工程と、前記LNTサポート材層の上に、アルミナ及びジルコニアのうちの少なくとも1つを含むRh用サポート材層を形成する工程と、前記LNTサポート材層及びRh用サポート材層を、NOx吸蔵材としてのアルカリ土類金属及び触媒金属としてのRhを含む溶液に含浸することにより、前記LNTサポート材層を前記NOx吸蔵材が含有されたLNT層にすると共に、前記Rh用サポート材層を前記酸化触媒層及びLNT層よりもRh含有量が大きいNOx還元層にする工程とを備え、前記酸化触媒層を形成する工程では、前記アルミナ及びセリアの混合物に前記Pt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を担持してなる粉末を含むスラリーを前記担体に担持して乾燥させた後、その上に、前記ゼオライトに前記Pt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を担持してなる粉末を含むスラリーをコーティングし、乾燥、焼成することにより、当該触媒金属、アルミナ及びセリアを含む第1酸化触媒層と、該第1酸化触媒層の上の当該触媒金属及びゼオライトを含む第2酸化触媒層とを形成することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る排気ガス浄化用触媒の製造方法によると、Rhとの親和性が高いアルミナ及びジルコニアの少なくとも1つを含むRh用サポート材層を最上層に設けた後に、触媒層をRh及びNOx吸蔵材を含む溶液に含浸するため、Rhが選択的にRh用サポート材層に多く含まれるようになる。このようにして、上述した効果を発揮できる最上層にRhを多く含む触媒を簡便に製造することができる。
【0018】
また、NOx吸蔵材が溶液中に溶出してLNT層から酸化触媒層に浸透すると、酸化触媒層に含まれるゼオライトのHC吸着性能が低下する、或いは酸化触媒性能が低下することが知られているが、上記製造方法では、酸化触媒層の上に、アルミナ及びセリアを含むLNTサポート材層及びRh用サポート材層を形成する。このため、酸化触媒層よりも上層に、NOx吸蔵材との親和性が高いセリア及びアルミナを含む層に多くNOx吸蔵材が含まれるので、酸化触媒層のNOx吸蔵材の含有量を低減できる。その結果、HC吸着性能及びHC浄化性能の低減を防止できる。
【0019】
本発明に係る排気ガス浄化用触媒の他の製造方法は、担体上に、ゼオライト、アルミナ、セリア、並びにPt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を含む酸化触媒層を形成する工程と、前記酸化触媒層の上に、アルミナ及びセリアを含むLNTサポート材層を形成する工程と、前記LNTサポート材層の上に、触媒金属としてのRhが担持されたアルミナ及び触媒金属としてのRhが担持されたジルコニアのうちの少なくとも1つを含むNOx還元層を形成する工程と、前記LNTサポート材層を、NOx吸蔵材としてのアルカリ土類金属を含む溶液に含浸することにより、前記LNTサポート材層をNOx吸蔵材が含有されたLNT層にする工程とを備え、前記酸化触媒層を形成する工程では、前記アルミナ及びセリアの混合物に前記Pt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を担持してなる粉末を含むスラリーを前記担体に担持して乾燥させた後、その上に、前記ゼオライトに前記Pt及びPdのうちの少なくとも1種の触媒金属を担持してなる粉末を含むスラリーをコーティングし、乾燥、焼成することにより、当該触媒金属、アルミナ及びセリアを含む第1酸化触媒層と、該第1酸化触媒層の上の当該触媒金属及びゼオライトを含む第2酸化触媒層とを形成し、前記NOx還元層が前記酸化触媒層及び前記LNT層よりもRh含有量が大きくなるように各層を形成することを特徴とする。
【0020】
この排気ガス浄化用触媒の製造方法を用いても、予めRhが担持されたアルミナ及びジルコニアの少なくとも1つを含むNOx還元層を最上層に形成するため、上述した効果を発揮できる最上層にRhを多く含む触媒を簡便に製造することができる。また、本製造方法においても、酸化触媒層よりも上層のNOx吸蔵材との親和性が高いセリア及びアルミナを含む層に多くNOx吸蔵材が含まれるので、酸化触媒層のNOx吸蔵材の含有量を低減できる。その結果、HC吸着性能及びHC浄化性能の低減を防止できる。
【0021】
また、本発明に係る排気ガスの浄化方法では、エンジンの排気ガス通路に設けられたパティキュレートフィルタの排気ガス流れ方向上流側に上記の排気ガス浄化用触媒を配設し、排気ガスの空燃比をリーンにして、排気ガス中のNOxをNOx吸蔵材に吸蔵させた後、NOx吸蔵材のNOx吸蔵量が所定値以上になったとき、エンジンの燃焼室に圧縮行程上死点付近で燃料を噴射供給する主噴射後に、膨張行程又は排気行程において燃料を噴射供給する後噴射させて排気ガス中へHCやCOを含ませて、排気ガスの空燃比がリッチ状態になるように制御して前記NOx吸蔵材からNOxを放出させる。放出されたNOxを、前記NOx還元層を通過する際に前記Rhにより還元浄化させる。また、下流に配置したパティキュレートフィルタへのパティキュレートマターの堆積量が所定値以上になったときには、排気ガスがリーン状態のままでエンジンの燃焼室に圧縮行程上死点付近で燃料を噴射供給する主噴射後に、膨張行程は又は排気行程において燃料を噴射供給する後噴射させて、排気ガス中のHCを前記Pt及びPdにより酸化燃焼させて、パティキュレートフィルタに流入する排気ガス温度を昇温することにより、パティキュレートマターを燃焼する。
【0022】
本発明に係る排気ガスの浄化方法によると、用いる触媒が上述の通り一つの触媒で酸化性能とLNT性能を併せ持っており、リーン状態のときに吸蔵したNOxを、リッチ状態に制御してNOxを放出して還元浄化でき、パティキュレートフィルタの再生持には、燃料の後噴射により発生するHCやCOを酸化燃焼させることで排気ガス温度を昇温できるため、それぞれの機能を有する触媒を個別に配置する必要がなくなり、触媒の容量を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る排気ガス浄化用触媒によると、高効率でHC、CO及びNOxを浄化することができ、また、本発明に係る排気ガス浄化用触媒の製造方法によると、上記触媒を簡便に得ることができる。また、本発明に係る排気ガス浄化用触媒を用いた排気ガスの浄化方法によると、リーンでのNOx吸蔵、リッチでのNOx還元、及びパティキュレートフィルタの再生時に酸化熱を利用した排気ガス温度の上昇が一つの触媒で賄えるため、触媒容量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の参考形態に係る排気ガス浄化用触媒の一部を示す断面図である。
図2】本発明の参考形態に係る排気ガス浄化用触媒の触媒層構成を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の触媒層構成例を示す断面図である。
図4】HC浄化性能の評価試験における触媒から流出するガスのトータルHC濃度及び触媒入口温度の変化を示すグラフ図である。
図5】本発明の実施例及び比較例のHC浄化率を示すグラフ図である。
図6】NOx浄化性能の評価試験における触媒から流出するガスのNOx濃度の変化を示すグラフ図である。
図7】本発明の実施例及び比較例のNOx吸蔵量を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものでない。
【0026】
(触媒の構成について)
まず、本発明の参考形態に係る排気ガス浄化用触媒の構成について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の一部を示す断面図であり、図2は該排気ガス浄化用触媒の触媒層構成を示す断面図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、本参考形態に係る排気ガス浄化用触媒は、不図示のディーゼルエンジンから排出される排気ガス浄化用触媒であり、ハニカム担体のセル壁1の上に、酸化触媒層であるDOC層2、リーンNOxトラップ触媒層であるLNT層3、及びNOx還元層4が順次形成されてなり、その内側の空間が排気ガス通路5となっている。ハニカム担体は、そのセル断面形状が六角形である六角セルハニカム構造となっている。図1では、図の簡略化のため、1つのセルにのみ上記触媒層を描いているが、全てのセルに上記触媒層が形成されている。
【0028】
参考形態において、DOC層2は、担体のセル壁1の上に形成されており、それはゼオライトにそれぞれPt及びPd等の触媒金属が担持されてなる。なお、DOC層2は、上記触媒金属が担持された活性アルミナ及びセリアの混合物をさらに含んでいてもよい。DOC層2の上に形成されたLNT層3は、NOx吸蔵材並びにPt及びRh等の触媒金属が担持されてなる。なお、LNT層3において、上記NOx吸蔵材及び触媒金属は、活性アルミナ及びセリアに担持されていることが好ましい。活性アルミナは、ZrやLa等で安定化された複合酸化物でもよく、セリア、Zr、NdやPr等との複合酸化物でもよい。また、LNT層3の上に形成されたNOx還元層4は、アルミナ及びジルコニアのうちの少なくとも1つに触媒金属としてのRhが担持されてなる。なお、NOx還元層4は、DOC層2及びLNT層3よりもRh含有量が大きくなるように構成されている。これにより、排気ガスの空燃比がリーンのときにLNT層3のNOx吸蔵材に吸蔵されたNOxが、リッチ状態となったときにLNT層3からNOx還元層4を通って排気ガス通路5に放出されるため、NOx還元層4に多く含まれたRhの働きにより効率良くNOxを還元浄化することができる。
【0029】
ここでは、DOC層2が1層構造の触媒について説明したが、本発明の実施形態では、図3に示すように、DOC層2が下層の第1DOC層2aと上層の第2DOC層2bとの2層構造になっている。このとき、第1DOC層2aは、活性アルミナ及びセリアの混合物にPt及びPd等の触媒金属が担持されてなり、第2DOC層2bは、ゼオライトにPt及びPd等の触媒金属が担持されてなる。このようにすると、ゼオライトがDOC層2のうち上側に配置されているから、排気ガス中のHCの吸着に有利になり、さらに、ゼオライトから脱離するHCが該ゼオライトに担持された触媒金属によって効率良く浄化される。
【0030】
また、上記DOC層2の構成成分であるゼオライトの平均粒径(D50)は0.5μm以上4.8μm以下であることが好ましい。ゼオライトの平均粒径が大きすぎると粒子の露出表面積が小さくなって、HCの吸着量が低減するため、上記のような粒径の範囲であることが好ましい。
【0031】
(触媒の製造方法について)
次に、排気ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。
【0032】
まず、参考形態に係る、触媒成分としてゼオライト、活性アルミナ、セリア並びに触媒金属であるPt及びPdを含むDOC層2を形成するための材料となるDOC粉末の調製について説明する。DOC粉末の調製としては、まず、ゼオライト、活性アルミナ及びセリアを混合し、その混合物にPt及びPd等の触媒金属を蒸発乾固法により担持する。具体的に、ゼオライト、活性アルミナ及びセリアの混合物に水を加え、撹拌してスラリー状にする。このスラリーを撹拌しながら、これに触媒金属の硝酸塩水溶液を滴下する。その後、加熱しながらさらに撹拌を続けて、水分を完全に蒸発させる。得られた乾固物を大気中で焼成し、粉砕することにより、DOC粉末が得られる。ここで、DOC粉末の粉砕は、ゼオライトの平均粒径(D50)が0.5μm以上4.8μm以下になるまで行うことが好ましい。
【0033】
上記のように調製したDOC粉末を用いて、ハニカム担体のセル壁1の上にDOC層2を形成する。そのために、まず、得られたDOC粉末をバインダー及び水と混合し、さらにスラリー粘度調整用の硝酸水溶液を添加して撹拌することにより、スラリー状にする。このスラリーをハニカム担体のセル壁1の上にコーティングし、乾燥し、その後に焼成する。これにより、担体のセル壁の上にDOC層2が形成される。
【0034】
3に示す本実施形態に係る2層構造のDOC層2を形成する場合は、ゼオライトと、活性アルミナ及びセリアの混合物とを、別々に蒸発乾固法により触媒金属を担持し、それぞれの粉末を得る。その後、それらをスラリー状にし、まず、活性アルミナ及びセリアの混合物を含むスラリーを担体のセル壁1上にコーティングし、乾燥した後に、ゼオライトを含むスラリーをその上にコーティングし、乾燥、焼成することにより担体のセル壁1上に第1DOC層2aが形成され、該第1DOC層2aの上に第2DOC層2bが形成される。その結果、2層構造のDOC層2が形成される。
【0035】
次に、DOC層2の上に、後にLNT層3となるLNTサポート材層を形成する。LNT用サポート材層の形成のために、まず、活性アルミナとセリアとを混合する。この混合物にバインダーと水とを加え、撹拌してスラリー状にする。このスラリーをDOC層2の上にコーティングし、乾燥し、その後に焼成する。これにより、DOC層2の上にLNTサポート材層が形成される。
【0036】
次に、LNTサポート材層の上に、後にNOx還元層4となるRh用サポート材層を形成する。Rh用サポート材層の形成のために、まず、塩基性の活性アルミナ又はジルコニアにバインダーと水とを加え、撹拌してスラリー状にする。このスラリーをLNTサポート材層の上にコーティングし、乾燥し、その後に焼成する。これにより、LNTサポート材層の上にRh用サポート材層が形成される。なお、Rh用サポート材層の材料として活性アルミナ又はジルコニアを用いたが、活性アルミナとジルコニアとの混合物を用いても構わない。
【0037】
次に、Pt及びRhの触媒金属とアルカリ土類金属からなるNOx吸蔵材との混合溶液を調製し、この溶液に上記各層が形成された担体を含浸させる。その後、上記混合溶液が含浸されたハニカム担体を乾燥し、焼成する。これにより、LNTサポート材層に触媒金属及びNOx吸蔵材が含浸担持されたLNT層3と、Rh用サポート材層に触媒金属として特にRhが含浸担持されたNOx還元層4が形成される。なお、このとき、NOx吸蔵材には、アルカリ土類金属の酢酸塩又は硝酸塩の水溶液を用いる。上記製造方法において、乾燥は、例えば大気雰囲気において100℃〜250℃程度の温度に所定時間保持することによって行うことができる。また、焼成は、例えば大気雰囲気において400℃〜600℃程度の温度に数時間保持することによって行うことができる。
【0038】
本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の製造方法では、LNTサポート材層とRh用サポート材層とを形成した後に、Pt及びRhの触媒金属とNOx吸蔵材とを含浸担持させており、Rh用サポート材層の材料である塩基性のジルコニア及び活性アルミナはRhとの親和性が高いため、Rhが選択的にRh用サポート材層に多く担持され、その結果、簡便に触媒の最上層であるNOx還元層に他層よりもRhを多く含有させることができる。このため、排気ガスがリーン状態のときにLNT層のNOx吸蔵材に吸蔵されたNOxが、リッチ状態のときに放出される際にRhを多く含むNOx還元層を通るため、放出されたNOxを効率良く還元浄化することができる。
【0039】
本実施形態では、LNTサポート材層及びRh用サポート材層を形成した後に、Rh及びNOx吸蔵材を含む溶液を含浸することにより、LNT層及びNOx還元層を形成したが、この方法に限らず、上記のようにDOC層及びLNTサポート材層を形成した後に、LNTサポート材層の上に直接にRhを含有するNOx還元層を形成してもよい。
【0040】
具体的には、予め上記蒸発乾固法により、アルミナ、ジルコニア又はそれらの混合物にRhを担持することにより得られた粉末をスラリーにして、LNTサポート材層の上にコーティングする。その後、それを乾燥及び焼成することにより、Rhを含むNOx還元層を形成することができる。なお、このとき、NOx還元層のRhの量を他層よりも大きくなるように調製する。NOx還元層を形成した後に、LNTサポート材層を、NOx吸蔵材を含む溶液に含浸、乾燥及び焼成することにより、LNT層を得ることができ、その結果、本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0041】
このような方法を用いても、触媒の最上層であるNOx還元層に他層よりもRhが多く含有された触媒を簡便に得ることができる。
【0042】
本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒は、上記のような効果を示すが、それらの他に、排気ガス通路におけるパティキュレートフィルタの上流に配置され、排気ガスの空燃比を制御することにより、パティキュレートフィルタに堆積したパティキュレートマター(PM)の燃焼効率を向上することもできる。このような本実施形態の触媒を用いた排気ガス浄化方法について以下に説明する。
【0043】
(触媒の使用態様の一例)
エンジンの排気ガス通路に設けられたパティキュレートフィルタの排気ガス流れ方向上流側に本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒を配設し、その下流側にNOx濃度を検出するNOxセンサを設け、フィルタの入口側と出口側とに圧力センサを設ける。これにより、触媒を通過した排気ガスのNOx濃度に基づいて、触媒中のNOx吸蔵材に吸蔵されたNOx吸蔵量を測定でき、また、フィルタの入口側と出口側とに設けられた圧力センサにより検出された差圧に基づいて、フィルタにおけるPM堆積量を測定できる。また、予め、NOx吸蔵材におけるNOx吸蔵量及びパティキュレートフィルタへのPM堆積量を決定しておき、そのNOx吸蔵量又はPM堆積量以上になったときに、エンジンの燃焼室に圧縮行程上死点付近で燃料を噴射供給する主噴射後に、膨張行程又は排気行程おいて燃料を噴射供給する後噴射を行うように制御する。これにより、NOxを還元浄化させる際には、排気ガス中へHCやCOを含ませて排気ガスの空燃比をリッチ状態にする。PMの酸化燃焼をさせる際には、排気ガス中へHCやCOを含ませながら、空燃比はリーンのままで、酸化熱を利用して触媒温度を上昇させる。なお、上記NOxセンサ及び圧力センサと接続された、燃料噴射制御をするためのコントローラを設けることが好ましい。
【0044】
まず、排気ガスの空燃比がリーン状態のとき、上記の通り排気ガス中のNOxがNOx吸蔵材に吸蔵され、排気ガス中のHCがゼオライトに吸着される。その後、NOx吸蔵量が上記設定した所定値以上となったときに、上記のように後噴射させて排気ガスの空燃比をリッチ状態にすることで、NOx吸蔵材からNOxを放出し、放出されたNOxがNOx還元層を通過する際にNOx還元層におけるRhにより還元浄化される。また、下流に配置したパティキュレートフィルタへのPMの堆積量が所定値以上になったときには、排気ガスがリーン状態のままで後噴射を行うことによって、排気ガス中のHCをPt及びPd等の触媒金属により酸化燃焼され、ゼオライトに吸着していたHCを脱離及び酸化燃焼される。そうすると、パティキュレートフィルタに流入する排気ガス温度が昇温し、これによりパティキュレートマターを高効率で燃焼できる。
【0045】
このように、リーンでのNOx吸蔵、リッチでのNOx還元、及びパティキュレートフィルタの再生時に酸化熱を利用した排気ガス温度の上昇が一つの触媒で賄えるため、触媒容量を小さくすることができる。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明に係る排気ガス浄化用触媒を詳細に説明するための実施例を示す。本実施例では、セル壁の厚さが4.5mil(1.143×10−1mm)であり、1平方インチ(645.16mm)当たりのセル数が400のコージェライト製六角セルハニカム担体(直径25.4mm、長さ50mm)を用いて、上記排気ガス浄化用触媒の製造方法により排気ガス浄化用触媒を調製した。その触媒に対して、HC浄化性能及びNOx吸蔵性能を評価した。
【0047】
以下に、実施例1〜3及び比較例1〜5に係る排気ガス浄化用触媒の構成について説明する。実施例1〜3では、DOC層を図3に示すような2層構造とし、上述した製造方法によりそれぞれの触媒を作製した。DOC層の下層である第1DOC層の触媒成分の担持量(担体1L当たりの担持量のこと。以下、同じ。)は、60g/Lの活性アルミナ、40g/Lのセリア、1.2g/LのPt、0.6g/LのPdである。一方、上層である第2DOC層の触媒成分の担持量は、100g/Lのゼオライト、0.4g/LのPt、0.2g/LのPdである。また、LNTサポート材層の触媒成分の担持量は、40g/Lの活性アルミナ、40g/Lのセリアであり、Rh用サポート材層の触媒成分の担持量は、実施例1では20g/Lの活性アルミナ、実施例2では20g/Lのジルコニア、実施例3では20g/Lの活性アルミナとジルコニアとの複合酸化物である。なお、それぞれの重量比は、アルミナ:ジルコニア=60:40(重量%)である。この複合酸化物は、アルミニウムイオンとジルコニウムイオンとを含む酸性溶液中にアンモニア水等の塩基性溶液を添加してアルミナの前駆体とジルコニアの前駆体とを共沈させ、乾燥、焼成を行って得ることができ、アルミナの一次粒子とジルコニアの一次粒子とが略均一に混合された複合酸化物粒子である。これらの層を形成した後に、担体に4.3g/LのPt、0.5g/LのRh、NOx吸蔵材として30g/LのBa及び10g/LのSrを含浸担持して、LNTサポート材層及びRh用サポート材層をそれぞれLNT層及びNOx還元層とした。
【0048】
また、比較例1の触媒は、担体上に1層構造のDOC層のみを設けた構成とした。1層構造のDOC層の触媒成分の担持量は、100g/Lのゼオライト、60g/Lの活性アルミナ、40g/Lのセリア、1.6g/LのPt、0.8g/LのPdである。比較例2の触媒は、上記1層構造のDOC層の上に20g/Lの活性アルミナを構成成分とするRh用サポート材層を形成し、担体に4.3g/LのPt、0.5g/LのRh、NOx吸蔵材として30g/LのBa及び10g/LのSrを含浸担持したものである。比較例3の触媒は、比較例2と比較して、DOC層を上記2層構造にしたことのみ異なり、他は同一の構成である。比較例4は、比較例2と比較して、Rh用サポート材層の構成成分として20g/Lのジルコニアを用いたことのみ異なり、他は同一の構成である。比較例5は、比較例3と比較して、Rh用サポート材層の構成成分として20g/Lのジルコニアを用いたことのみ異なり、他は同一の構成である。
【0049】
なお、実施例1〜3及び比較例1〜5において、ゼオライトとしてはβ−ゼオライトを用いた。また、各触媒粉末の調製における焼成、及び触媒粉末のコーティング後の焼成は、いずれも大気中で行い、いずれも焼成温度を500℃、焼成時間を2時間とした。
【0050】
これらの実施例1〜3及び比較例1〜5の触媒に対して行ったHC浄化性能の測定試験及びNOx吸蔵量の測定試験とそれらの結果とについて、以下に説明する。
【0051】
HC浄化性能の測定試験において、まず、実施例1〜3及び比較例1〜5の各ハニカム触媒に対して、Oが2%、HOが10%、残部がNのガス雰囲気において750℃の温度に24時間保持するエージング処理を行った。そのハニカム触媒をモデルガス流通反応装置に取り付け、ハニカム触媒にNガスを流通させた状態で触媒入口ガス温度を100℃に保持し、次いでHC浄化性能評価用のモデルガスを導入した。
【0052】
モデルガス組成は、n−オクタンが600ppmC、エチレンが150ppmC、プロピレンが50ppmC、COが1500ppm、NOが30ppm、Oが10%、HOが10%、残部がNであり、空間速度は72000/hである。
【0053】
モデルガス導入開始後、2分を経過した時点から触媒入口ガス温度を上昇させていき、ハニカム触媒から流出するガスのトータルのHC濃度(THC)を測定した。その結果の一例を図4に示す。
【0054】
モデルガスの導入開始から暫くは触媒温度が低いため、モデルガス中のHCがゼオライトに吸着される。そのため、流出ガスのTHCは、モデルガスのTHCである800ppmCよりも低い。そうして、触媒温度の上昇に伴ってゼオライトによるHCの吸着量が漸減する。触媒入口ガス温度が200℃近くになると、ゼオライトへのHCの吸着量よりHCの脱離量が多くなり、THCが急増して800ppmCよりも高くなる。触媒温度が上昇していくと、触媒が活性を呈するようになり、脱離するHCのDOC層による浄化が始まる。このため、THCが急減して800ppmCよりも低くなる。
【0055】
そうして、上記実施例1〜3及び比較例1〜5の各ハニカム触媒の、モデルガス導入開始から当該ガス温度が300℃になるまでのHC浄化率を求めた。HC浄化率は、図4に示すHCの吸着に伴うTHC低減量(A)とHCの浄化に伴うTHC低減量(B)との和から、HC脱離量(C)を差し引いて計算した。その結果を図5に示す。
【0056】
図5に示すように、実施例1〜3と比較例1〜5とを比較すると、DOC層、LNT層及びNOx還元層により構成された実施例1〜3の触媒の方が、比較例1〜5の触媒よりもHC浄化率が高いことがわかる。なお、実施例1〜3を互いに比較すると、それらの間で大きな差は見られなかった。
【0057】
一方、NOx吸蔵性能の測定試験においては、実施例1〜3及び比較例1〜5の各ハニカム触媒に対して、上記HC浄化率測定の場合と同じエージング処理を行った後、ハニカム触媒をモデルガス流通反応装置に取り付けた。ハニカム触媒に空燃比リッチのモデルガスを流通させた状態で触媒入口ガス温度を200℃に保持し、該温度を保った状態で空燃比リーンのモデルガスに切り替え、このモデルガスの切替えから180秒を経過した時点で空燃比リッチのモデルガスに切り替えた。
【0058】
ハニカム触媒から流出するガスのNOx濃度を測定した結果の一例を図6に示す。モデルガスがリッチからリーンに切り替わった直後からNOx濃度が時間の経過と共に上昇していき、NOx吸蔵量が飽和に近づくにつれてモデルガスのNOx濃度が220ppmに漸近している。モデルガスがリーンからリッチに切り替わると、NOx吸蔵材からNOxが放出されるが、リッチへの切り替わりによる還元剤(HC及びCO)の供給により、Pt及びRhによるNOxの還元が急激に進むため、上記流出ガスのNOx濃度が急減する。
【0059】
図6に示すリーン180秒間のNOx吸蔵によるNOx低減量(A)とリッチ10秒間のNOx還元によるNOx低減量(B)とに基づいて、190秒間トータルでのNOx浄化率を求めた。また、触媒入口温度を250℃として、同様に190秒間トータルでの平均NOx浄化率を求めた。
【0060】
リッチモデルガスの組成は、NOが220ppm、HCが3400ppmC、COが1.0%、Oが0.5%、COが6%、HOが10%、残部がNである。リーンモデルガスの組成は、NOが220ppm、HCが400ppmC、COが0.15%、Oが10%、COが6%、HOが10%、残部がNである。NOx吸蔵性能の測定試験の結果を図7に示す。
【0061】
図7に示すように、実施例1〜3と比較例1〜5とを比較すると、DOC層、LNT層及びNOx還元層により構成された実施例1〜3の触媒の方が、比較例1〜5の触媒よりもNOx浄化率が高いことがわかる。なお、実施例1〜3を互いに比較すると、それらの間で大きな差は見られなかった。
【0062】
上記HC浄化性能試験及びNOx浄化性能試験の結果から、DOC層、LNT層及びNOx還元層により構成された触媒は、DOC層のみ又はDOC層とNOx還元層とのみからなる触媒よりもHC浄化性能及びNOx浄化性能が高いことがわかる。HC浄化性能が高い理由としては、ゼオライトを含むDOC層の上に、NOx吸蔵材との親和性が高いセリア及びアルミナを含む層を形成した後に、NOx吸蔵材を含む溶液に含浸させたため、DOC層に含まれるNOx吸蔵材の量を低減でき、NOx吸蔵材によるゼオライトのHC吸着性能の低減を抑制できるためであると考えられる。これにより多くのHCを吸着でき、高温で触媒が活性となったときに、その多くが酸化反応を起こすため、HC浄化性能が高いと考えられる。一方、NOx浄化性能が高い理由としては、リーン状態のときにLNT層中のNOx吸蔵材がモデルガス中のNOxを吸蔵し、リッチ状態にしたときにNOxが放出され、Rhを多く含むNOx還元層により高効率で還元されるためであると考えられる。
【0063】
以上の通り、本発明に係る排気ガス浄化用触媒を用いると、HCの酸化浄化及びNOxの還元浄化に有利である。
【符号の説明】
【0064】
1 担体(セル壁)
2 DOC(酸化触媒)層
2a 第1DOC(酸化触媒)層
2b 第2DOC(酸化触媒)層
3 LNT(リーンNOxトラップ)層
4 NOx還元層
5 排気ガス通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7