(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発泡樹脂ブロックを積層状に積上げてなる盛土部と、少なくとも盛土部の上面に積層状に施工するとともに、必要に応じて上下に隣接する特定の発泡樹脂ブロック間に積層状に施工したコンクリート床版と、前記盛土部及びコンクリート床版の外側面を覆う保護壁面材と、前記盛土部と保護壁面材間に立設配置した、前記保護壁面材を支持する支柱と、前記支柱とコンクリート床版とを連結する連結金具とを備えた軽量盛土構造であって、
前記連結金具として、前記コンクリート床版に埋設したアンカー部と、前記アンカー部からコンクリート床版の外側面外へ突出して、前記支柱に上下方向に移動可能に係合するフック部とを有するものを用い、
前記連結金具の施工位置においてコンクリート床版の外面部に、前記コンクリート床版の施工用の型枠の一部を構成する埋込型枠を設け、
前記アンカー部におけるコンクリート床版の外面側部分に、前記埋込型枠の貫通孔を回転不能に貫通することで前記埋込型枠に係合して、前記コンクリート床版の施工時にアンカー部を中心としたフック部の回転を規制する回転規制部を設け、
前記フック部における少なくとも支柱との圧接部分に弾性体を設けた、
ことを特徴とする軽量盛土構造。
発泡樹脂ブロックを積層状に積上げてなる盛土部と、少なくとも盛土部の上面に積層状に施工するとともに、必要に応じて上下に隣接する特定の発泡樹脂ブロック間に積層状に施工したコンクリート床版と、前記盛土部及びコンクリート床版の外側面を覆う保護壁面材と、前記盛土部と保護壁面材間に立設配置した、前記保護壁面材を支持する支柱と、前記支柱とコンクリート床版とを連結する連結金具とを備えた軽量盛土構造であって、
前記連結金具として、前記コンクリート床版に埋設したアンカー部と、前記アンカー部からコンクリート床版の外側面外へ突出して、前記支柱に上下方向に移動可能に係合するフック部とを有するものを用い、
前記連結金具の施工位置においてコンクリート床版の外面部に、コンクリート床版の施工用の型枠の一部を構成する、前記支柱よりも軟質な埋込型枠を、前記支柱に当接可能に設け、
前記フック部における少なくとも支柱との圧接部分に弾性体を設けた、
ことを特徴とする軽量盛土構造。
【背景技術】
【0002】
地山の斜面に道路を構築したり、地山の斜面に施工した道路や駐車スペース等を拡幅したりする場合の軽量盛土構造として、発泡ポリスチレン(EPS)のような発泡樹脂ブロックを用いた軽量盛土構造が、土による盛土構造に代わって広く利用されている。
【0003】
この軽量盛土構造を施工する場合には、地山を削って支持地盤を形成し、該支持地盤の下端部の略水平な水平部に基礎コンクリートを施工し、この基礎コンクリート上にH型鋼等からなる支柱を適当間隔で立設施工し、押出成形セメント板などの耐候性を付与する保護壁面材を前記支柱の外面側に固定して擁壁部を構築し、該擁壁部と地山側の傾斜面との間に発泡樹脂ブロックを積み上げて盛土部を形成し、少なくとも盛土部の上面に積層状にコンクリート床版を施工するとともに、例えば高さ3m毎(高さ0.5mの発泡樹脂ブロックにおいては6層毎)に、不陸調整、荷重分散、発泡樹脂ブロックの固定および浮力対策のために、上下に隣接する発泡樹脂ブロック間にも積層状にコンクリート床版を施工し、コンクリート床版と支柱とを連結金具で連結し、盛土部上面のコンクリート床版上に路盤やアスファルト舗装などを施工することになる。
【0004】
前記軽量盛土構造では、発泡樹脂ブロックが弾塑性体であることから、路盤やアスファルト舗装などの上載荷重により発泡樹脂ブロックが圧縮変形して、盛土部上のコンクリート床版が沈下する。しかし、基礎コンクリートに立設施工した支柱はほとんど沈下しないので、コンクリート床版の沈下により、コンクリート床版と支柱とを連結する連結金具に過大な引っ張り荷重が作用し、支柱の損傷、連結金具のせん断破壊、連結金具の抜けなどの問題の発生が懸念される。そこで、このような問題の発生を防止するため、連結金具の先端部にH型鋼からなる支柱のフランジ部の両端部を上下方向に摺動可能に係止する1対の係止部を設けたり(例えば、特許文献1参照。)、連結金具の先端部にH型鋼からなる支柱のフランジ部に線接触により係止可能な係止部を設けたり(例えば、特許文献2参照。)、連結金具の先端部に上下方向に細長い長穴を有する移動金具を設け、支柱に固定した支持金具に前記長穴に沿ってスライド可能なスライド部材を設けたりして(例えば、特許文献3参照。)、連結金具の先端部を支柱に対して上下方向に移動可能に連結したものが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記特許文献1、2記載の発明では、連結金具の係止部と支柱間におけるスライドにより、また特許文献3記載の発明では、移動金具の長穴と支持金具のスライド部材間におけるスライドにより、それぞれコンクリート床版を支柱に対して上下方向に移動可能に連結しているが、いずれの場合においても、鋼材同士の摺動による上下方向への移動なので、摺動部間に異物が挟まったり、連結金具のスライド方向が上下方向に対して傾くことにより、鋼材同士が強く噛み合って上下移動不能にロックし、係止部やスライド部材に過大な引張り荷重が加わって、支柱の損傷、連結金具のせん断破壊、連結金具の抜けなどの問題の発生が懸念される。
【0007】
特に、地山の斜面に道路を構築したり、地山の斜面に施工した道路や駐車スペース等を拡幅したりする場合の軽量盛土構造においては、発泡樹脂ブロックからなる盛土部の厚さが地山側程薄くなることから、前記コンクリート床版の上載荷重による盛土部の沈下は、一様な沈下量で沈下するわけではなく、地山から離間するにしたがって沈下量が大きくなるように沈下するので、コンクリート床版は保護壁面側へ行くにしたがって低くなるように傾斜状に沈下することになる。このため、特許文献1〜3記載の発明では、連結金具がコンクリート床版とともに、コンクリート床版の地山側の端部を中心に傾斜して、連結金具の係止部の支柱に対する圧接部分が地山側へ移動しようとし、係止部が支柱に食い込んで上下移動不能にロックしたり、スライド部材が長穴の内面に食い込んで上下移動不能にロックしたりして、係止部やスライド部材に過大な引張り荷重が加わり、支柱の損傷、連結金具のせん断破壊、連結金具の抜けなどの問題の発生が大いに懸念される。
【0008】
また、特許文献1、3記載の発明では、連結金具を構成する部品点数が多く、連結金具の重量も重たくなることから、コンクリート床版の施工時における連結金具の施工作業が煩雑になるとともに、施工作業の作業負荷が大きくなるという問題がある。また、連結金具を構成する部品点数が増えるので、その分軽量盛土構造の製作コストも高くなるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上載荷重によるコンクリート床版の沈下で、連結金具のフック部が支柱に食い込んで上下移動不能にロックすることを防止でき、しかも連結金具の部品点数が少なく、軽量で、連結金具の製作コストを低減できるとともに、連結金具の施工性を向上可能な軽量盛土構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る軽量盛土構造は、発泡樹脂ブロックを積層状に積上げてなる盛土部と、少なくとも盛土部の上面に積層状に施工するとともに、必要に応じて上下に隣接する特定の発泡樹脂ブロック間に積層状に施工したコンクリート床版と、前記盛土部及びコンクリート床版の外側面を覆う保護壁面材と、前記盛土部と保護壁面材間に立設配置した、前記保護壁面材を支持する支柱と、前記支柱とコンクリート床版とを連結する連結金具とを備えた軽量盛土構造であって、前記連結金具として、前記コンクリート床版に埋設したアンカー部と、前記アンカー部からコンクリート床版の外側面外へ突出して、前記支柱に上下方向に移動可能に係合するフック部とを有するものを用い、前記フック部における少なくとも支柱との圧接部分に弾性体を設けたものである。なお、発泡樹脂ブロック間に積層状に施工するコンクリート床版は、不陸調整、荷重分散、発泡樹脂ブロックの固定および浮力対策のために設けられ、例えば高さ3m毎(高さ0.5mの発泡樹脂ブロックにおいては6層毎)に盛土部に施工することになり、盛土部の高さが3m未満の場合には省略することになる。
【0011】
この軽量盛土構造では、連結金具のフック部を支柱に対して上下方向に移動可能に係合させているので、盛土部上のコンクリート床版上に施工される路盤やアスファルト舗装などの上載荷重により、発泡樹脂ブロックが圧縮変形してコンクリート床版が沈下した場合でも、連結金具がコンクリート床版とともに下側へ移動するので、フック部に無理な引っ張り荷重が作用して、連結金具が破損したり、支柱が損傷したり、コンクリート床版から連結金具が抜けたりするという不具合を防止できる。しかも、フック部の少なくとも支柱との圧接部分に弾性体を設けているので、フック部と支柱間に異物が挟まったり、連結金具のスライド方向が上下方向に対して多少傾いたりした場合でも、連結金具及び支柱を構成する鋼材同士が直接的に強く噛み合うことを防止して、フック部が直接的に支柱に食い込んで上下移動不能にロックすることを防止でき、フック部に過大な引張り荷重が加わることによる、支柱の損傷、連結金具のせん断破壊、連結金具の抜けなどを効果的に防止できる。特に、この軽量盛土構造を用いて、地山の斜面に道路を新設したり、地山の斜面に施工した道路や駐車スペース等を拡幅したりした場合には、上載荷重によりコンクリート床版が保護壁面側下がりの傾斜状に沈下して、連結金具がコンクリート床版とともに、コンクリート床版の地山側の端部を中心に傾斜して、連結金具の係止部の支柱に対する圧接部分が地山側へ移動しようとするが、連結金具のフック部と支柱との圧接部分に弾性体が設けられているので、弾性体の圧縮変形により、フック部が直接的に支柱に食い込んで上下移動不能にロックすることを防止でき、フック部に過大な引張り荷重が加わることによる、支柱の損傷、連結金具のせん断破壊、連結金具の抜けなどの効果的な防止が期待できる。更に、連結金具として、フック部とアンカー部とを有する一体成形品を採用できるので、特許文献1、3に記載の連結金具と比較して、連結金具の部品点数を少なくできるとともに重量を軽減でき、コンクリート床版の施工時における、連結金具の施工作業の作業性を向上できるとともに、施工作業の作業負荷を軽減できる。しかも、連結金具の部品点数が少なくなることから、その分軽量盛土構造の製作コストも低減できる。なお、支柱とフック部間に配置される弾性体の厚さは、軽量盛土構造の大きさなどに応じて、コンクリート床版が傾斜状に沈下しても、フック部が支柱に食い込まない厚さに設定することになる。
【0012】
ここで、前記フック部に前記弾性体を一体的に被覆することが好ましい実施の形態である。前記弾性体は、連結金具に接着剤などで固定することもできるが、フック部に一体的に被覆すると、連結金具の施工性や取扱性を向上できるとともに、フック部に対する取付強度を容易に向上でき、弾性体のフック部からの剥離を防止できるので好ましい。弾性体の素材としては、圧縮変形可能で、滑り性に優れ、安価に入手可能で、フック部に対して溶融状態で容易に被覆可能な軟質塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂を好適に採用できる。
【0013】
前記連結金具に、前記コンクリート床版の施工用の型枠とコンクリート床版に埋設施工した鉄筋の少なくとも一方に係合して、前記コンクリート床版の施工時にアンカー部を中心としたフック部の回転を規制する回転規制部を設けることが好ましい実施の形態である。この場合には、回転規制部により連結金具の施工作業を一層効率的に行うことが可能となる。つまり、この軽量盛土構造では、支柱に対してフック部を側方より係合させるため、コンクリート床版の施工時には、連結金具のフック部が水平になるように、連結金具を型枠内にセットして、型枠内にコンクリートを打設することになる。しかし、連結金具は、型枠内の鉄筋上に載置しただけでは、フック部が下側になるように回転しようとするので、鉄筋に対する連結金具の番線による固定作業が煩雑になる。そこで、この軽量盛土構造では、連結金具に回転規制部を設けて、フック部が水平に保持されるように、連結金具を型枠と鉄筋の少なくとも一方に回転規制した状態で、番線などにより連結金具を鉄筋に固定できるので、コンクリート床版の施工時における、連結金具の施工作業を一層効率的に行うことが可能となる。
【0014】
前記連結金具の施工位置においてコンクリート床版の外面部に埋込型枠を施工し、前記連結金具のアンカー部における外面側部分に、前記埋込型枠の貫通孔を回転不能に貫通する回転規制部を形成することも好ましい実施の形態である。この場合には、連結金具の回転規制部を埋込型枠に形成した貫通孔に嵌合させることで、連結金具の回転を規制できるので、部品点数を増やすことなく、コンクリート床版の施工時における、連結金具の施工作業を効率的に行うことが可能となる。また、この軽量盛土構造では、コンクリート床版の施工位置以外においては発泡樹脂ブロックが支柱に当接し、コンクリート床版の施工位置においても、支柱を構成する金属材料よりも軟質な、合成樹脂材料や木材などの素材からなる埋込型枠が支柱に当接することになるので、コンクリート部分が支柱に対して直接的に摺接することによる支柱の損傷を防止できる。
【0015】
前記連結金具として、熱間鍛造品を用いることも好ましい実施の形態である。熱間鍛造品からなる連結金具は、金属組織が緻密で、引っ張り強度や曲げ強度などの機械的強度に優れているので好ましい。
【0016】
前記支柱とコンクリート床版との連結部分に、前記支柱を挟んでその両側に、前記連結金具を1対設けることも好ましい実施の形態である。前記支柱とコンクリート床版との連結部分に1本の連結金具を配置して、支柱とコンクリート床版とを連結することも可能であるが、本発明では連結金具として端部にフック部を有するものを用いているので、支柱を挟んでその両側に1対の連結金具を配置することで、該1対の連結金具をバランスよく支柱に係合させることができ、支柱に対して偏荷重が作用することを防止できる。
【0017】
前記アンカー部に引き抜き抵抗となる抵抗部材を設けることも好ましい実施の形態である。このように構成すると、コンクリート床版に対する連結部材の引き抜き強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る軽量盛土構造によれば、連結金具のフック部を支柱に対して上下方向に移動可能に係合させているので、盛土部上のコンクリート床版上に施工される路盤やアスファルト舗装などの上載荷重により、発泡樹脂ブロックが圧縮変形してコンクリート床版が沈下した場合でも、連結金具がコンクリート床版とともに下側へ移動するので、フック部に無理な引っ張り荷重が作用して、連結金具が破損したり、支柱が損傷したり、コンクリート床版から連結金具が抜けたりするという不具合を防止できる。しかも、フック部の少なくとも支柱との圧接部分に弾性体を設けているので、フック部と支柱間に異物が挟まったり、連結金具のスライド方向が上下方向に対して多少傾いたりした場合でも、連結金具及び支柱を構成する鋼材同士が直接的に強く噛み合うことを防止して、フック部が直接的に支柱に食い込んで上下移動不能にロックすることを防止でき、フック部に過大な引張り荷重が加わることによる、支柱の損傷、連結金具のせん断破壊、連結金具の抜けなどを効果的に防止できる。特に、この軽量盛土構造を用いて、地山の斜面に道路を新設したり、地山の斜面に施工した道路や駐車スペース等を拡幅したりした場合には、上載荷重によりコンクリート床版が保護壁面側下がりの傾斜状に沈下して、連結金具がコンクリート床版とともに、コンクリート床版の地山側の端部を中心に傾斜して、連結金具の係止部の支柱に対する圧接部分が地山側へ移動しようとするが、連結金具のフック部と支柱との圧接部分に弾性体が設けられているので、弾性体の圧縮変形により、フック部が直接的に支柱に食い込んで上下移動不能にロックすることを防止でき、フック部に過大な引張り荷重が加わることによる、支柱の損傷、連結金具のせん断破壊、連結金具の抜けなどの効果的な防止が期待できる。更に、連結金具として、フック部とアンカー部とを有する一体成形品を採用できるので、特許文献1、3に記載の連結金具と比較して、連結金具の部品点数を少なくできるとともに重量を軽減でき、コンクリート床版の施工時における、連結金具の施工作業の作業性を向上できるとともに、施工作業の作業負荷を軽減できる。しかも、連結金具の部品点数が少なくなることから、その分軽量盛土構造の製作コストも低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1〜
図3に示すように、この軽量盛土構造1は、地山Mの斜面に施工した道路や駐車スペース等を拡幅する拡幅盛土構造であって、支持地盤2上に発泡樹脂ブロック3を積層状に積上げて施工した盛土部4と、盛土部4の上面及び盛土部4の高さ方向の途中部の発泡樹脂ブロック3間に積層状に施工したコンクリート床版5と、盛土部4及びコンクリート床版5の外側面を覆う保護壁面材6と、盛土部4と保護壁面材6間に立設配置した、保護壁面材6を支持する支柱7と、支柱7とコンクリート床版5とを連結する連結金具8と、最上部のコンクリート床版5を地山Mに固定するグランドアンカー9と、最上部のコンクリート床版5の上面の谷側部分に沿って設けた笠コンクリート10と、最上部のコンクリート床版5上に施工した路盤11と、路盤11上に施工したアスファルト舗装12とを備えている。
【0021】
支持地盤2は、既設の擁壁20を含む既設の傾斜面21と、該傾斜面21の下側の地山Mを掘削して構築した傾斜面22と、傾斜面22の下端部から略水平に外側(谷側)へ延びる支持面23とで構成されている。ただし、既設の擁壁20を備えていない地山M1に対して支持地盤2を新設することも可能である。
【0022】
支柱7は、H形鋼で構成され、フランジ部7aを地山M側及び谷側に配置させるとともに、ウェブ部7bを地山側へ向けて前後方向に配置させて、下半部を地山Mに埋設させて支持面23の幅方向の途中部に立設され、地山Mに向かって左右方向に延びる支持面23の長さ方向に沿って相互に間隔をあけて複数本設けられている。支柱7としては、角形鋼や溝型鋼で構成することも可能であるが、連結金具8を係合させ易いことからH形鋼を採用することが好ましい。
【0023】
支柱7の外面側には盛土部4の外面側及びコンクリート床版5の外面側の略全体を覆う保護壁面材6がボルト等の固定具(図示略)で固定されている。この保護壁面材6としては、金属板や合成樹脂板、水硬性結合材など、周知の構成の外壁材を採用できるが、軽量盛土構造1の外壁として用いることを考慮すると、耐環境性及び持ち運び性、施工性等に優れた、押出成形セメント板等の窯業系外装材からなるものを好適に採用できる。
【0024】
保護壁面材6の厚さは任意に設定可能であるが、厚すぎると重たくなって持ち運び性及び施工性が低下し、薄すぎると外壁としての十分な強度剛性が得られない。このため、保護壁面材6が窯業系外装材からなる場合には、その厚さは5mm〜70mm程度が好ましい。
【0025】
支持面23上には基礎コンクリート24が施工され、保護壁面材6と傾斜面21、22間には発泡樹脂ブロック3が複数段に積み上げて積層状に設けられ、これら複数の発泡樹脂ブロック3により盛土部4が構成されている。上下に配置される発泡樹脂ブロック3は傾斜面21、22に向かって前後方向及び左右方向に配設位置をずらして千鳥状に積み上げられ、隣接する発泡樹脂ブロック3は横ズレを防止するための止め金具(図示略)により相対移動不能に連結されている。
【0026】
発泡樹脂ブロック3のサイズは任意に設定可能であるが、例えば縦2m、横1m、高さ0.5mの直方体状の発泡樹脂ブロック3を基本サイズとし、この発泡樹脂ブロック3をそのまま、或いは所望長さに切断して施工されている。このようなサイズの発泡樹脂ブロック3は、例えば1個当たりの重量が10kg〜50kgとなり、持ち運びやすく軽量盛土構造1の施工作業の作業性に優れていることから好適に採用できる。発泡樹脂ブロック3の素材は、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂からなる発泡体を採用できる。なお、発泡樹脂ブロック3の積段個数は、軽量盛土構造1の大きさなどに応じて任意に設定できる。
【0027】
傾斜面21、22と発泡樹脂ブロック3間には、砕石などからなる透水性を有する裏込め材25が充填され、発泡樹脂ブロック3と傾斜面21間に侵入した雨水等が基礎コンクリート24側へ円滑に排水されるように構成されている。
【0028】
コンクリート床版5は、1段目と2段目の発泡樹脂ブロック3間と、7段目と8段目の発泡樹脂ブロック3間と、最上段の発泡樹脂ブロック3の上側に施工され、最上段のコンクリート床版5は、グランドアンカー9により地山Mに固定されている。これら3枚のコンクリート床版5は、平面寸法は異なるが、平面寸法以外は同様に構成されている。コンクリート床版5は、少なくとも盛土部4の上面(最上段の発泡樹脂ブロック3の上面)に施工され、盛土部4の高さ方向の途中部に配置されるコンクリート床版5は、不陸調整、荷重分散、発泡樹脂ブロック3の固定および浮力対策のために、例えば高さ3m毎(高さ0.5mの発泡樹脂ブロック3においては6層毎)に設けられ、積段個数の少ない軽量盛土構造においては省略することになる。グランドアンカー9は、軽量盛土構造1が小型な場合には、省略することも可能である。
【0029】
コンクリート床版5は、
図5に示すように、盛土部4の上側の外周部に型枠30を施工し、型枠30内に鉄筋31及び連結金具8を施工した後、コンクリート34を打設して、養生固化することで、現場施工されている。コンクリート床版5の厚さは任意に設定可能であるが、十分な強度を得るために、例えば100〜200mmに設定できる。鉄筋31は、地山側へ向かって左右方向に延びる鉄筋31aと、前後方向に延びる鉄筋31bとを格子状に溶接固定したもので、コンクリート床版5の厚さ方向の略中央部に埋設施工されている。ただし、鉄筋31としては、任意の構成のものを採用できる。
【0030】
連結金具8は、熱間鍛造品で構成され、
図2〜
図6に示すように、コンクリート床版5に埋設施工されるアンカー部8aと、アンカー部8aからコンクリート床版5の外側面から保護壁面材6側へ突出して、支柱7のフランジ部7aに上下方向に移動可能に係合するフック部8bとを有しており、各支柱7に対応させてその左右両側に左右対称にそれぞれ1対設けられ、支柱7の地山M側のフランジ部7aの両側部に左右のフック部8bを係合させて支柱7に連結され、支柱7から地山M側へ向けて略平行に水平配置されている。なお、本実施の形態では、支柱7をバランス良く保持できるように、コンクリート床版5の支柱7に対応する位置に1対の連結金具8を設けたが、コンクリート床版5の支柱7に対応する位置に1本だけ連結金具8を設けることも可能である。
【0031】
フック部8bの先端部には、少なくとも支柱7のフランジ部7aとの接触部分を含むように、合成樹脂材料を被覆してなる弾性体13が一体的に設けられている。弾性体13を構成する合成樹脂材料としては、支柱7との摺動抵抗が少なく、支柱7に対する連結金具8の圧接荷重で圧縮変形可能な合成樹脂材料であれば任意のものを採用できるが、フック部8bの先端部に対して容易に被覆できることから、熱可塑性合成樹脂材料からなるものが好ましく、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、軟質塩ビ樹脂、硬質塩ビ樹脂、ポリエステル樹脂、天然ゴム、合成ゴムなどを採用でき、特に安価に入手可能で、耐候性に優れ、しかも厚塗りが可能なことから、軟質塩化ビニル樹脂で構成することが好ましい。
【0032】
弾性体13の厚さtは、発泡樹脂ブロック3の圧縮変形によりコンクリート床版5が地山M側の端部を中心に傾斜したときにおける、支柱7に対するフック部8bの接触部の地山M側への移動距離以上の厚さに設定することが好ましく、例えば1〜5mmに設定することになる。なお、弾性体13は、連結金具8のフック部8bに一体的に被覆することが好ましいが、連結金具8のフック部8bや支柱7のフランジ部7aに接着剤等で現場施工するように構成することも可能である。
【0033】
連結金具8のアンカー部8aにおけるフック部8bとは反対側の端部にはネジ部8dが形成され、ネジ部8dには抜け止め用のナット部材からなる抵抗部材14が螺合され、抵抗部材14により、コンクリート床版5からの連結金具8の引き抜き強度が高められている。
【0034】
ただし、抵抗部材14に代えて、
図7(a)に示すように、ネジ部8dに螺合した1対のナット部材15と、ネジ部8dを挿通可能な挿通孔16aを有し、発泡樹脂ブロック3の上面まで延びる金属製の細長い板状部材16とからなる抵抗部材14Aを用いてもよい。この場合には、挿通孔16aをネジ部8dに挿通させて、ナット部材15よりもフック部8b側のアンカー部8aに板状部材16を取り付け、左右方向に延びる鉄筋31aの地山側に板状部材16が当接するように、抵抗部材14を組付けることになる。抵抗部材14としては、長方形状や正方形状や円形などの任意の形状のものを採用することができる。また、
図7(b)に示すように、板状部材16に代えてL字状の金属板からなる板状部材16Bを用い、板状部材16Bが左右方向に延びる鉄筋31aの山側に係合するように、板状部材16Bをアンカー部8aに取り付け、抵抗部材14に代えて、1対のナット部材15と板状部材16Bとからなる抵抗部材14Bを用いることもできる。この場合には、板状部材16Bと鉄筋31aとの係合によっても、コンクリート床版5からの連結金具8の抜けを防止できる。更に、連結金具8の板状部材16の取付位置に、前記板状部材16に代えてメガネ釘を、メガネ釘の穴にネジ部8dを挿通させるとともに、メガネ釘の先端部を発泡樹脂ブロック3に突き刺して設け、メガネ釘により連結金具8の施工時における姿勢を安定化させるとともに、メガネ釘によりコンクリート床版5からの連結金具8を抜け止めすることもできる。
【0035】
また、
図8(a)に示すように、ネジ部8dを省略し、抵抗部材14に代えて、フック部8bとは反対側のアンカー部8aの端部に、該アンカー部8aの端部をL字状に屈曲させてなる抵抗部14Cを設けたり、
図8(b)に示すように、ネジ部8dを省略し、抵抗部材14に代えて、フック部8bとは反対側のアンカー部8aの端部に、該アンカー部8aの端部をU字状に屈曲させてなる抵抗部14Dを設けたりすることもできる。
【0036】
連結金具8のアンカー部8aにおけるフック部8b側の端部には角柱状の回転規制部8cが形成され、支柱7及び連結金具8の配設位置に対応させてコンクリート床版5の外面側(保護壁面材6側)には支柱7を構成する金属材料よりも軟質な合成樹脂材料や木材からなる長方形状の埋込型枠32が埋設状に設けられ、埋込型枠32には、左右の連結金具8の回転規制部8cが相対回転不能に挿通する角孔状の1対の貫通孔32aが形成されている。
【0037】
このように埋込型枠32として支柱7を構成する金属材料よりも軟質な素材からなるものを用いているので、コンクリート床版5と支柱7との接触による支柱7の損傷を防止することができる。また、連結金具8の回転規制部8cを埋込型枠32の貫通孔32aに相対回転不能に嵌合させているので、コンクリート床版5を施工するときにおける、連結金具8の施工性を向上できる。つまり、コンクリート床版5の施工時には、支柱7のフランジ部7aに対してフック部8bを係合させるため、フック部8bが略水平に配置されるように、連結金具8を鉄筋31に番線33で仮固定する必要があるが、フック部8bはその自重によりアンカー部8aを中心として下側へ回転しようとするので、鉄筋31に対する連結金具8の施工作業が煩雑であった。しかし、前述のように埋込型枠32の貫通孔32aに連結金具8の回転規制部8cを嵌合させると、連結金具8の回転を埋込型枠32で規制した状態で、連結金具8を番線33で鉄筋31に仮固定できるので、鉄筋31に対する連結金具8の仮固定作業を効率的に行うことができる。ただし、鉄筋31のうちの左右方向に延びる鉄筋31aが前後方向に延びる鉄筋31bの下側に配置されるように、鉄筋31を施工した場合には、埋込型枠32の上下を反転させることで、適正な位置に貫通孔32aが配置されるように、埋込型枠32に対して貫通孔32aを形成することが好ましい。
【0038】
なお、回転規制部8cと埋込型枠32の貫通孔32aとは、相対回転不能に嵌合可能であれば任意の横断面形状に構成することができ、例えば正方形状や長方形状、六角形状などの多角形状に形成したり、楕円形状や小判型に形成したり、周方向に1乃至複数の凸部や凹部を形成したりすることができる。
【0039】
また、埋込型枠32を省略し、コンクリート床版5を施工するための型枠30に、連結金具8の回転規制部8c又はフック部8bにおけるアンカー部8a側の断面長方形状の基部を相対回転不能に嵌合させることもできる。具体的には、
図9、
図10に示すように、型枠30の端部30aを支柱7の地山側のフランジ部7aの側端部に突き合わせて設け、型枠30の端部30aの高さ方向の途中部に連結金具8のフック部8bの基部が相対回転不能に嵌合する角形の切込部30bを形成することもできる。この場合には、フック部8bの基部を切込部30bに嵌合させた状態においても、切込部30b内には型枠30の内外を連通する孔35が形成されるので、この孔35を閉塞してノロが漏れないようにするとともに、支柱7がコンクリート床版5のコンクリート34に密着して、支柱7とコンクリート床版5とが相対移動できなくなることを防止するため、コンクリート床版5の施工位置に対面する支柱7の地山側に、支柱7から左右両側へ延びる合成樹脂シートや発泡樹脂シートなどからなるシート材36を配置させることになる。なお、このようにフック部8bの基部を切込部30bに嵌合させる場合には、回転規制部8cを省略して、フック部8bを回転規制部として機能させることができる。
【0040】
更に、連結金具8を回転規制する構造としては、型枠30又は埋込型枠32に相対回転不能に連結金具8を係合させる構造以外に、鉄筋31に対して連結金具8を相対回転不能に係合させる構造を採用することもできる。具体的には、
図11に示す連結金具40のように、左右方向に延びる隣接する鉄筋31aの間隔よりも大きな長さの細長い金属板からなる回転規制板41を、アンカー部40aの下面に溶接等により固定し、コンクリート床版5の施工時に、この回転規制板41を鉄筋31上に載置して、回転しないように連結金具40を鉄筋31上に載置できる。この場合には、回転規制板41が、コンクリート床版5からの連結金具40の抜け止めとしても機能することになる。
【0041】
なお、本実施の形態では、連結金具8を熱間鍛造品で構成して、その引っ張り強度や曲げ強度などの機械的強度を高めるように構成したが、十分な機械的強度を確保できるのであれば、丸形断面や角形断面の金属棒を折曲して、焼き入れなどの熱処理を施してなる連結金具を採用することも可能である。丸形断面の金属棒で構成する場合には、例えば
図11に示す連結金具40のように、金属棒からなるアンカー部40aとフック部40bとを有し、金属棒の一端部を折曲してフック部40bを形成し、アンカー部40aの途中部の下面に回転規制板41を溶接等により固定し、フック部40bとは反対側のアンカー部40aの端部にネジ部40dを形成し、このネジ部40dにナット部材からなる1対の抵抗部材14を螺合させたものを採用することができる。ただし、回転規制板41により連結部材40の引き抜き抵抗が十分に得られる場合には、ネジ部40d及び抵抗部材14は省略できる。
【0042】
また、連結金具8としては、コンクリート床版5に埋設されるアンカー部と、アンカー部からコンクリート床版5の外側面外へ突出して、支柱7に上下方向に移動可能に係合するフック部とを有するものであれば任意の構成のものを採用することができる。なお、型枠30又は埋込型枠32と鉄筋31の少なくとも一方に相対回転不能に係合する回転規制部は、設けることが好ましいが、省略したものも本発明の範疇である。
【0043】
次に、軽量盛土構造1の施工方法について説明する。
先ず、
図1に示すように、地山M1を掘削して支持地盤2を構築し、支持地盤2の支持面23に不陸調整用の基礎コンクリート24を施工するとともに、基礎コンクリート24の長さ方向に沿って複数の支柱7を立設施工する。なお、地山Mが軟弱な場合などにおいては、支柱7の施工強度を高めるため、支柱7の下半部を地山Mに埋設施工することも好ましい。
【0044】
次に、1段目の保護壁面材6を支柱7に固定して、隣接する支柱7間を保護壁面材6で覆ってから、1段目の発泡樹脂ブロック3を基礎コンクリート24上に敷設施工するとともに、隣接する発泡樹脂ブロック3を止め金具で連結し、その後、発泡樹脂ブロック3と傾斜面21間に裏込め材25を充填して、裏込め材25を転圧して締め固める。
【0045】
こうして、1段目の発泡樹脂ブロック3を敷設してから、該1段目の発泡樹脂ブロック3の上側にコンクリート床版5を施工すべく、
図5に示すように、先ず1段目の発泡樹脂ブロック3の層の外周縁に沿って型枠30を施工し、型枠30内に鉄筋31を施工する。次に、連結金具8のアンカー部8aを埋込型枠32の貫通孔32aにそれぞれ挿通させ、1対の連結金具8を埋込型枠32に取り付けて、ネジ部8dにナット部材からなる抵抗部材14を螺合させて、埋込型枠32を型枠30に組み付ける。次に、連結金具8のフック部8bが支柱7のフランジ部7aに係合するように、フック部8bを水平に位置させて、連結金具8の回転規制部8cを埋込型枠32の貫通孔32aに相対回転不能に嵌合させ、フック部8bを水平に保持する。次に、フック部8bが支柱7のフランジ部7aに当接するように、連結金具8を地山M側へ移動させてから、連結金具8のアンカー部8aを番線33で鉄筋31に固定する。こうして型枠30内に鉄筋31を施工するとともに、支柱7に対応する位置に1対の連結金具8を順次施工してから、コンクリート34を打設して、コンクリート床版5を施工する。
【0046】
次に、1段目のコンクリート床版5の養生固化後、2段目の保護壁面材6を支柱7に固定して、隣接する支柱7間を保護壁面材6で覆ってから、コンクリート床版5上に2段目の発泡樹脂ブロック3を敷設施工して、隣接する発泡樹脂ブロック3を止め金具で相互に連結し、その後、最も傾斜面21側の発泡樹脂ブロック3と傾斜面21間に裏込め材25を充填して、裏込め材25を転圧して締め固める。こうして、2段目の発泡樹脂ブロック3を敷設し、その後2段目と同様にして、3段目〜7段目までの保護壁面材6と発泡樹脂ブロック3と裏込め材25を順次施工する。
【0047】
こうして、7段目の発泡樹脂ブロック3を敷設してから、1段目のコンクリート床版5と同様にして、7段目の発泡樹脂ブロック3の層の外周縁に沿って型枠30を施工し、鉄筋31と埋込型枠32と連結金具8とを施工した後、コンクリート34を打設して、2段目のコンクリート床版5を施工する。
【0048】
次に、2段目のコンクリート床版5の養生固化後、8段目の保護壁面材6を支柱7に固定して、隣接する支柱7間を保護壁面材6で覆ってから、コンクリート床版5上に8段目の発泡樹脂ブロック3を敷設施工して、隣接する発泡樹脂ブロック3を止め金具で相互に連結し、その後、最も傾斜面21側に配置される発泡樹脂ブロック3と傾斜面22間に裏込め材25を充填して、裏込め材25を転圧して締め固める。こうして、8段目の発泡樹脂ブロック3を敷設し、その後8段目と同様にして、9段目〜13段目までの保護壁面材6と発泡樹脂ブロック3と裏込め材25を順次施工する。
【0049】
次に、13段目の発泡樹脂ブロック3を敷設してから、グランドアンカー9を施工するとともに、1段目のコンクリート床版5と同様に、13段目の発泡樹脂ブロック3の層の上面の外周縁に沿って型枠30を施工し、鉄筋31と埋込型枠32と連結金具8とを施工した後、コンクリート34を打設して、コンクリート床版5を施工し、3段目のコンクリート床版5の上側の外縁部に笠コンクリート10を施工するとともに、3段目のコンクリート床版5の上側に路盤11及びアスファルト舗装12を施工して軽量盛土構造1を構築する。なお、保護壁面材6は、それに対面する地山M側の発泡樹脂ブロック3が施工される前であれば、任意のタイミングで支柱7に施工することができる。
【0050】
この軽量盛土構造1では、連結金具8のフック部8bを支柱7に対して上下方向に移動可能に係合させているので、盛土部4上のコンクリート床版5上に施工される笠コンクリート10、路盤11、アスファルト舗装12などの上載荷重により、発泡樹脂ブロック3が圧縮変形してコンクリート床版5が沈下した場合でも、連結金具8がコンクリート床版5とともに下側へ移動するので、フック部8bに無理な引っ張り荷重が作用して、連結金具8が破損したり、支柱7が損傷したり、コンクリート床版5から連結金具8が抜けたりするという不具合を防止できる。しかも、フック部8bの少なくとも支柱7との圧接部分に弾性体13を設けているので、フック部8bと支柱7間に異物が挟まったり、連結金具8のスライド方向が上下方向に対して多少傾いたりした場合でも、連結金具8及び支柱7を構成する鋼材同士が直接的に強く噛み合うことを防止して、フック部8bが直接的に支柱7に食い込んで上下移動不能にロックすることを防止でき、フック部8bに過大な引張り荷重が加わることによる、支柱7の損傷、連結金具のせん断破壊、連結金具8の抜けなどを効果的に防止できる。特に、上載荷重によりコンクリート床版5が保護壁面材6側下がりの傾斜状に沈下すると、
図1に示すように、連結金具8がコンクリート床版5とともに、コンクリート床版5の地山M側の端部Pを中心として傾斜して、連結金具8のフック部8bの支柱7に対する圧接部分Cが地山M側へ移動しようとするが、連結金具8のフック部8bと支柱7との圧接部分Cに弾性体13が設けられているので、弾性体13の圧縮変形により、フック部8bが支柱7に食い込んで上下移動不能にロックすることを防止でき、フック部8bに過大な引張り荷重が加わることによる、支柱7の損傷、連結金具8のせん断破壊、連結金具8の抜けなどの効果的な防止が期待できる。更に、連結金具8として、フック部8bとアンカー部8aと回転規制部8cとを有する一体品を採用しているので、連結金具8の部品点数を少なくできるとともに重量を軽減でき、コンクリート床版5の施工時における、連結金具8の施工作業の作業性を向上できるとともに、施工作業の作業負荷を軽減できる。しかも、連結金具8の部品点数が少なくなることから、その分軽量盛土構造の製作コストも低減できる。また、連結金具8に回転規制部8cを設けることにより、連結金具8の施工作業を一層効率的に行うことが可能となる。
【0051】
なお、前記実施の形態では、既設の道路を拡幅する際の軽量盛土構造に、本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、傾斜地等に道路や駐車場を新設する際の軽量盛土構造に対しても適用できる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてその構成を変更し得ることは勿論である。